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徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

2020年Benoit「歳暮(としのくれ)特別プラン」他特選情報のご案内です。

 降り注ぐ太陽の陽射しが万物を育て上げ、四季折々の風はその土地土地に味わいをもたせる。その風のもたらした美味しさこそ「風味」であり、我々はここに「口福な食時」を見出すのです。そして、旬を迎える食材は、人が必要としている栄養に満ちています。そして、人の体は食べたものでできています。「美しい(令)」季節に冬食材が「和」する逸品に出会い、食することで無事息災に年末を迎えていただきたい。この想いを込め、Benoitのご案内をお送りさせていただきます。

 

≪「歳暮(としのくれ)特別プラン」のご案内です。≫

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 「美しい(令)」季節の冬食材が「和」する料理の数々。これを美味しく食べることで、人は笑顔になり、体の内側から湧き出でる力となる。そして、我々をウイルス災禍から守ってくれることでしょう。「口福な食時」のひとときこそ、我々の心身を活力ある本来の姿へと導いてくれるのです。

 そこで、日頃より並々ならぬご愛顧を賜っている上に、自分よりご案内している長文レポートに目を通していただけている皆様の労に報いるため、少し気が早いですが≪歳暮(としのくれ)特別プラン≫をご案内させていただきます。期間は、メールを受け取っていただいた日より、20211月末まで。ご予約は、このメール(kitahira@benoit.co.jp)への返信をご利用ください。お急ぎの場合には、Benoitメールアドレス(benoit-tokyo@benoit.co.jp)より、もちろん電話でもご予約は快く承ります。

 

ランチ

前菜+メインディッシュ+デザート

4,500円→4,000円(税サ別)

前菜x2+メインディッシュ+デザート

5,500円→5,000円(税サ別)

前菜+メインディッシュx2+デザート

6,800円→6,000円(税サ別)

ディナー

前菜+メインディッシュ+デザート

6,800円→6,200円(税サ別)

前菜x2+メインディッシュ+デザート

7,800円→7,200円(税サ別)

前菜+メインディッシュx2+デザート

9,100円→8,200円(税サ別)

プリ・フィックスメニューの料理内容は、当日にメニューをご覧いただきながらお選びいただきます。ご希望人数が8名様以上の場合は、ご相談させてください。

 

2020年のクリスマスはBenoitメニューをご自宅で!≫

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 ご自宅で、ご家族や大切な方と素敵なクリスマスをお過ごしいただきたく、クリスマス限定テイクアウトメニューをご用意いたします。自慢の料理とデザートを全てセットにしたクリスマスを彩る華やかなメニューです。Benoit自慢の本格的なビストロ料理をお楽しみください。

 提供期間 : 2020年12月23日(水)~26日(土)

価格:2名様セット 24,000円(税別) ※3名様のご用意も可能

申込方法 : このメール(kitahira@benoit.co.jp)への返信もしくは、電話(03-6419-4181)でご予約ください。

最終受付  : 2020年12月15日(火)

Menu

・フォアグラのコンフィ 柑橘のコンディマン

オマールエビ カブ 甲殻類ソース

・牛ホホ肉の赤ワイン煮込み “ドーブ” クリーミーなポレンタ

・ビュッシュ・ド・ノエル ブノワ風

・パン・ド・カンパーニュ

シャンパーニュやワインのご用意もございます。何かご要望・質問などございましたら、何気兼ねなくご連絡ください。

  メニューは上記の通りですが、字面からでは分からない料理ばかりです。そこで、詳細をブログに書いてみました。どれほどの特選料理であるのか。テイクアウトをご検討の方も、検討されていない方も、少しばかりお時間を割いていただき、ご訪問いただけると幸いです。

kitahira.hatenablog.com

 

≪営業終了時間変更のお願い≫

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 東京都の要請を受け、営業終了時間を22時とさせていただきます。皆様にはご不便をおかけいたしますが、ご理解のほどなにとぞよろしくお願いいたします。

 

Benoit何末年始のご案内です。≫

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 2020年のBenoitは、12月31日まで駆け抜けようと思います。30日までは通常営業ですが、31日は20時ラストオーダーの22時クローズとさせていただきます。ランチの営業は変わりません。迎えし2021年は5日より、万全の準備をもって皆様をお迎えいたします。何かご要望・疑問な点などございましたら、何気兼ねなく返信ください。

 

≪北平のBenoit不在の日≫

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 私事で恐縮なのですが、自分がBenoitを不在にしなくてはならない12月の日程を書き記させていただきます。滞りがちだったご案内を充実させるべく、執筆にも勤しませていただきます。ご不便をおかけいたしますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。

13日(日)

19日(土)

21日(月)

28日(月)・29日(火)

 上記日程以外は、Benoitを優雅に駆け回る所存です。自分への返信でのご予約はもちろん、BenoitのHPや、他ネットでのご予約の際に、コメントの箇所に「北平」と記載いただけましたら、自慢の料理の数々を語りに伺わせていただきます。

 皆様にお会いする機会を賜りながら、自ら放棄する無礼、ご容赦のほどよろしくお願いいたします。自分が不在の日でも、お楽しみいただけるよう万全の準備をさせていただきます。何かご要望・質問などございましたら、何気兼ねなくご連絡ください。

 

≪季節のお話「柞に想うこと」のご案内です。≫

 其処彼処で目にする雑木林の黄葉に紅葉。「八入の雨」が一入一入と木の葉を色付かせてゆきます。そして、一足先に黄葉が見事な姿を我々に披露してくれています。「柞(ははそ)」とは、今では馴染みのない言葉ですが、なかなかに奥深いものでした。さあ、皆様を柞原へとご案内させていただきます。

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12月特選食材のご案内です。≫

 太陽の恩恵を十二分に受け、風味豊かに育ったものこそ、旬の食材であり、美味しいばかりではなく、いま我が欲している栄養をも持ち合わせています。2020年冬の特選食材をご紹介させていただきます。

kitahira.hatenablog.com

 

一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com

季節のお話「柞(ははそ)に想うこと」

 「雑木林(ぞうきばやし)」とは、落葉広葉樹で構成された人が作り上げた林のことです。整備された庭園とは違い、樹は薪(まき)や炭としての原材料となり、落ち葉は農産物の肥料として堆肥へと活用されるばかりか、降り積もることで、豊かな土壌を形成することになります。江戸時代、広大なススキ原に植樹して作り上げたのが「武蔵野の雑木林」だといいます。江戸っ子にとっては、生活するうえで欠かすことのできない資源となっていたはずです。

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 この雑木林を形成する樹々の中で、身近なものといえば、コナラとクヌギです。その果実は総称して「ドングリ」と言いまとめ、

 子供の頃にドングリ拾いを大いに楽しんだのではないでしょうか。我々が食べることはないですが、小動物にとっては貴重な食資源であることは、今も昔も変わりません。ドングリ拾いの際には、振ってからからと音がしないかご確認ください。音がするドングリには、すでに住み家としているハイイロチョッキリがいるかもしれません。

 このコナラとクヌギに、ミズナラを加えた樹々を総称して、古人は「柞(ははそ)」と呼んで親しんでいたようです。雑木林に限らず、其処彼処で出会うことのできる樹々。晩秋ともなると見事な黄葉の姿で我々を魅了します。銀杏(いちょう)の黄葉とは異なり、控えめな緑がかった黄色となり、葉が枯れ落ちる前には明るい茶色へ。この色の移ろいが同居する姿を目にすると、惜秋の念に包まれます。

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 晴れ澄み渡った空にもかかわらず、はらはらっと肌に感じる軽やか雨を「時雨(しぐれ)」と言います。湿気のある風が山にぶつかり、雨粒を落とす。それが風に乗って晴れている地にもたらされるもので、盆地のような地理的環境が整っていないと、なかなか出会えないものです。京都の「北山時雨」などは、ぜひとも体験したいものです。

 万葉の時代から読まれ続けているこの時雨も、なかなか出会えないがために、やっかみが加味されたのでしょうか。時代とともに少しずつ意味合いを変えてゆき、冬の小雨のことを時雨と表現するようになり、初冬の季語としての確固たる地位を確立しました。

 後撰集の中に書き記されたこの一首、「神無月ふりみふらずみ定めなき時雨ぞ冬の初めなりけり ~詠み人しらず~」は、時雨なのか小雨なのか、詠み人しらずなだけに、確認しようもありません。しかし、この秀歌によって、名言が生まれたのです。

冬は時雨から始まる

 

ははそはら 染むる時雨も あるものを しばしな吹きそ 木枯らしの風  藤原経家(つねいえ)

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 晩秋から初冬にかけて、彩りを見せる「黄葉」に「紅葉」。古人は、時雨が葉に≪染み入る≫ことで、色付くと考えていたようです。生地を染色する際に染料に浸すことを、「一入(ひとしお)」といいます。時雨が幾度となく降り重ねることで、黄葉・紅葉へと色濃く深い色合いへと葉を染めあげるかのよう。この時期の雨を「八入(やしお)の雨」と呼ぶには、このような理由があるのです。

 「柞(ははそ)が生い茂る野原に、木立を一入一入と染めるかのように時雨が降っているではないか。柞の黄葉が染め上がるまで、しばらくは吹かないでくれ、木枯らしの風よ、聞いているかい?」とは自分の勝手な解釈です。≪染(し)む≫は≪初(し)む≫かもしれません。ともすると、黄葉したての早い時期、翠色濃い葉が、時雨にあたり葉一枚の所々が黄葉している姿を詠ったのでしょうか。

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 今でこそ馴染みのない「柞」ですが、かつては身近な存在であり、多くの歌人に、黄葉の移ろいの美しさをもって晩秋から初冬にかけての趣きを教えてくれていたようです。万葉の時代は、樹々の葉が色を変えることを「もみつ」(動詞)といい、これが名詞のかたちをとり「もみち」なのだといいます。

 この時代に「ひらがな」は誕生しておらず、万葉仮名は漢字の音読みを利用して書き記されています。≪もみつ≫は≪毛美都≫や≪もみち≫は≪毛美知≫と。しかし、古人の美的感覚はこれを許さなかったのでしょう。≪もみつ≫は≪黄変≫や≪もみち≫は≪黄葉≫と書き残しているのです。≪もみぢ≫が≪紅葉≫を指し示すようになるには、平安時代まで待たねばなりません。

 自分がこの≪柞≫という漢字と出会うも、≪ははそ≫などと読めたわけではなく、もちろん調べたことは言うに及ばないでしょう。その最中、以下の一句に出会いました。偶然なのか必然なのか?

 

散らすなよ 老木(おいき)の柞 いまひとめ あひ見むまでの 露の秋風  正徹(しょうてつ)

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 「露」とは、空気中の水分が夜半の冷え込みによって地上の物体の上に水滴となって表れたもの。「朝露」は、陽が昇るにつれて消えてしまうため、無情ではかないものの比喩。「無情な秋風よ、老木の柞の葉を散らさないでくれ。今ひとめ対面しようと約束している、その日までは。」と、秋風に願っているのか。はたまた、「老木の柞よ、今いちど出会うまで葉を散らさないように頑張ってくれ。吹いているのは、それぐらい虚しい秋風なのだから」と、老木の柞を鼓舞しているのか。

 31文字の中に、正徹はどれほどの想いを込め、組み立てたのでしょうか。素直に受け止める自然や感情の機微に感嘆を覚え、識者があれやこれやと分析し解説することで、さらに歌の輝きが増す。これが秀歌であり、時代が変わってもなお輝き続けている理由なのでしょう。

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 ところが、この一句にはさらに深い意味が込められているといいます。「柞」という言葉には、語頭の2音、「は・は」が同じ読みであることから、「母」に掛けられて詠まれているのではないかというのです。そう考えると、この一句が「母の延命」を願っていたのではないかと。正徹が詠んだ時が、どのような状況であったかは知る由がありません。しかし、母と別居していたのであれば、今ほどの交通の便がないからこそ、いつ会えるともしれない中、今いちど会うまでの延命を切に願ったのではないでしょうか。

 今では、飛行機や新幹線といった交通網が日本全国に張り巡らされることで、物理的な距離は変らずとも、気持ちの上では大いに縮まりました。さらに、携帯電話の普及は、時間を問わず相手との意思疎通を可能とし、インターネットにいたっては地球規模です。昔と比べて飛躍的に進んだ技術は大いに生活を便利にそして豊にしてきました。それと同時に、古き良き「人間関係」を失っていった気がいたします。「いつでも会いに行ける」という錯覚が、「いまひとめ あい見む」感覚を希薄にしたような気がいたします。

 偉そうに言う自分も見失った一人です。母親から最後に教わったことは、「機会を見誤るな」でした。必要な時に必要なコミュニケーションをとること。いい歳になってもなお足りないことを教わるも、「いつでも会いに行ける」という心に隙があったがために、感謝を伝える最後の機会を逸しました。

 かつて、自分からの「ご案内(長文レポートと呼ばれています)」を受け取っていただける方から、「終焉を迎える前のお礼」が届きました。余命宣告を受け、どれほど苦悩したかは、想像を絶するものでしょう。その後も継続して手紙を送り続けたのですが、なんとか自分の気持ちを失礼の無いようお伝えしようと模索している最中に、訃報を受け取ったのです。あれほど母親から叱責を受けながら、「いつでも連絡できる」という思いから、またしても同じ過ちをおかしました。

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 どんなに努力したとしても、後悔しないことはありません。しかし、今一度「できること」を再確認し、機会を見誤らないようにすること。仏教では「生者必滅(しょうじゃひつめつ)会者定離(えしゃじょうり)」といい、その言葉の通りの世の中の無常観を言い表しています。いつの時代にあっても、この考えは変りません。便利になることで希薄になりがちな「人間関係」を忘ないように、そんなメッセージを正徹の秀歌に込められている気がしてなりません。

 コロナウイルス災禍により希薄となっている今だからこそ、今までを振り返りながら自らを省み、新年に同じ轍を踏まぬように心に刻みこもうと思います。皆様も、ご家族をお世話になった方々への想いを考えるのも良いかもしれません。タイミングを見計らい、お礼の手紙や電話をするのもいいかもしれません。皆様にとって大切な「機会を見誤らない」ことを切に願っております。

 

≪「歳暮(としのくれ)特別プラン」他、12月のご案内です。≫

「美しい(令)」季節の冬食材が「和」する料理の数々。これを美味しく食べることで、人は笑顔になり、体の内側から湧き出でる力となる。そして、我々をウイルス災禍から守ってくれることでしょう。「口福な食時」のひとときこそ、我々の心身を活力ある本来の姿へと導いてくれるのです。

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12月特選食材のご案内です。≫

太陽の恩恵を十二分に受け、風味豊かに育ったものこそ、旬の食材であり、美味しいばかりではなく、いま我が欲している栄養をも持ち合わせています。2020年冬の特選食材をご紹介させていただきます。

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一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com

Benoit 2020年 ≪クリスマスメニュー≫テイクアウトのご案内です。

コツコツコツ…

 子供たちの楽し気な声が響く公園の中で、片隅の木立に立っていると、熟練の大工さんが細い木槌で樹を連打してるかのような音が耳に入ってきました。この澄んだ音色は、金属と金属が当たる音ではありません。いったい何の音なのか、意識して耳をそばだててみると、意外にも脇にある樹から響いていた。

コツコツコツ…

 樹の幹から伝え響くかのような音。よくよく聞いてみると、なにやら樹の上のほうから伝わってくる。音を頼りに、今度は目を凝らしてみると、なにやら動くものがある。陽射しに邪魔されながらも、小鳥の姿がそこにはあった。

 この小鳥の名は?続きはブログに書いています。お時間のある時にご訪問いただけると幸いです。

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 連綿と繰り返される自然のサイクルは、その年ごとに何かしらの変化をもたらすことになり、遅いだ早いだなどと我々はその機微に一喜一憂するものです。しかし、四季折々の移ろいを、我々が勝手にカレンダーなるものにあてはめること自体がおこがましいのでしょう。自然はしっかりと語りかけている。それを真摯に受け止めているのが、野生の生き物たちです。

 野生に生きとし生けるもの、あるものは花を咲かせ実を成すことで、あるものは鳴き声で、我々に季節が変わってゆくことを教えてくれています。この小鳥のコツコツコツ…にせかされるように、冬支度をしなければなりません。まもなく、「冬至(とうじ)」を迎えます。そして、時同じくしてクリスマスもやってきます。

 

2020年のクリスマスはBenoitメニューをご自宅で!≫

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 ご自宅で、ご家族や大切な方と素敵なクリスマスをお過ごしいただきたく、クリスマス限定テイクアウトメニューをご用意いたします。自慢の料理とデザートを全てセットにしたクリスマスを彩る華やかなメニューです。Benoit自慢の本格的なビストロ料理をお楽しみください。

 

提供期間 : 2020年12月23日(水)~26日(土)

価格:2名様セット 24,000円(税別) ※3名様のご用意も可能

申込方法 : このメール(kitahira@benoit.co.jp)への返信もしくは、電話(03-6419-4181)でご予約ください。

最終受付  : 2020年12月15日(火)

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Menu

・フォアグラのコンフィ 柑橘のコンディマン

オマールエビ カブ 甲殻類ソース

・牛ホホ肉の赤ワイン煮込み “ドーブ” クリーミーなポレンタ

・ビュッシュ・ド・ノエル ブノワ風

・パン・ド・カンパーニュ

シャンパーニュやワインのご用意もございます。何かご要望・質問などございましたら、何気兼ねなくご連絡ください。

 

 メニューは上記の通りですが、字面からでは分からない料理ばかりです。そこで、詳細をブログに書いてみました。どれほどの特選料理であるのか。テイクアウトをご検討の方も、検討されていない方も、少しばかりお時間を割いていただき、ご訪問いただけると幸いです。

kitahira.hatenablog.com

 

≪北平のBenoit不在の日≫

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 私事で恐縮なのですが、自分がBenoitを不在にしなくてはならない12月の日程を書き記させていただきます。滞りがちだったご案内を充実させるべく、執筆にも勤しませていただきます。ご不便をおかけいたしますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。

4日(金)

13日(日)

19日(土)

21日(月)

28日(月)・29日(火)

 上記日程以外は、Benoitを優雅に駆け回る所存です。自分への返信でのご予約はもちろん、BenoitのHPや、他ネットでのご予約の際に、コメントの箇所に「北平」と記載いただけましたら、自慢の料理の数々を語りに伺わせていただきます。

皆様にお会いする機会を賜りながら、自ら放棄する無礼、ご容赦のほどよろしくお願いいたします。自分が不在の日でも、お楽しみいただけるよう万全の準備をさせていただきます。何かご要望・質問などございましたら、何気兼ねなくご連絡ください。

 

 降り注ぐ太陽の陽射しが万物を育て上げ、四季折々の風はその土地土地に味わいをもたせる。その風のもたらした美味しさこそ「風味」であり、我々はここに「口福な食時」を見出すのです。そして、旬を迎える食材は、人が必要としている栄養に満ちています。そして、人の体は食べたものでできています。「美しい(令)」季節に冬食材が「和」する逸品に出会い、食することで無事息災に年末を迎えていただきたい。この想いを込め、Benoit12月のお勧め情報をご紹介させていただきます。

 

 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com

2020年のクリスマスはBenoitメニューをご自宅で!

 今から11年のさかのぼった2009年頃のこと。フランスで「Best of Chef」シリーズのレシピブックが刊行されました。10€という価格ながら、詳細な解説に幾枚もの写真が、素人の自分でも作れるのではないかという錯覚へと陥れる。1刊目は、BOCUSEさん。3刊目はROBUCHONさん。ともに夭亡しているが、カリスマシェフとして、今なおその名声は衰えを知らない。では、この二人の間に割って入る刊目は誰だったのか…

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 アラン・デュカスです。Benoitに10年近くも在籍することで、幾度となく話す機会に恵まれました。優しいのだが、ひとたび試食となると、得も言われぬオーラを発する。エグゼクティブシェフが、「もっと気軽に話しなさい!」といわれても…。

 超一流の料理人であることは間違いありません。Benoitの若いキッチンスタッフが、挨拶の握手をするのに手が震えていたことが、いかに憧れの存在であるかを物語っています。しかし、後世にまで語り継がれるであろう彼の偉業は、煩雑であったフランス料理を体系づけて、まとめ上げたことではないでしょうか。そして、持ちうる料理のノウハウを包み隠さず公開もしています。

 そのひとつが、このレシピ本。この本の刊行にあたり、アラン・デュカスが一番先にもってきた料理、それが「鴨のフォアグラのコンフィ」です。

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 初めてこのフォアグラの料理を口にした時、あまりの美味しさに、当時Benoitのシェフだった小島景から事細かに作り方を聞いたものです。なんと手間暇のかかる逸品なのかと感じ入ったことを今でも鮮明に覚えています。それが、このレシピ本では、家でも作れるのではないかとも思うほど詳細に、作り方が記載されていたのです。

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 鴨のフォアグラは、塩・コショウをふって冷蔵庫で休ませます。そして、カットすることもなく、そのまま鴨のぬるめの脂の中へ。ゆっくりゆっくりと脂の温度を上げてゆく。揚げるわけではないので≪ぐつぐつ≫ではなく、鍋を覗き込むと、熱で脂が対流しているかのよう。何時間を要するだろうか…

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 湯に、いや油に浸かるフォアグラの中心温度が70℃に達した時点で、温度を維持するのではなく、そのまま脂から取り出し、粗熱をとります。この状態でも美味しそうなのですが、アラン・デュカスが求めるフォアグラのコンフィは、気の遠くなるほどの時を要求してくるのです。

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 「コンフィ」とは、今では生活に欠かすことのできない冷蔵庫が無かった時代、先人たちが考えた食材の保存方法でした。水ではなく油で煮ることで、低温でじっくり熱が入り、素材の美味しさを逃がしません。そして、油に浸かったままにしておくことで、空気に触れいないため酸化せず、あらに悪玉菌が増殖することもなく保存が可能となるのです。ちなみに「フルーツのコンフィ」は、油ではなく砂糖漬けです。ばい菌が活動できないほど甘く仕上げるのです。この先人の知恵は、保存性ばかりではなく、あらたな旨味をひきだすとして、調理方法へと発展してゆきました。

 先述したフォアグラは、粗熱を取った後に、冷ました鴨の脂とともにパックし、そのまま冷蔵庫で眠りにつきます。何もしない…こと3週間。フォアグラは、そのまま調理してゆくため、1週間ではまだまだフォアグラのもつ内臓の荒々しさが残っています。それが、3週間という時が経過することで、口中でとろけてゆくような滑らかさのある、さらに旨味に満ちた逸品に仕上がるのです。

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 まさに「時がなせる美味しさ」とでも表現しましょうか。ここに「Benoit自慢のフォアグラのコンフィ」が完成するのです。今まで何人をも魅了し、問い合わせを受けている前菜です。もちろん、Benoitのプリ・フィックスメニューにも名を連ねることもしばしば。しかし、この12月だけは、クリスマステイクアウトのみで仕込ませていただきます。3週間前に…

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 テイクアウトを考えた時、大いに悩んだのがメインディッシュでした。温かいお料理は、いつもBenoitのプリ・フィックスメニューで提供しております。しかし、時間が経っても美味しく、さらにお家で簡単にお召し上がりいただけるものとなると、なかなか難題なものです。

 ≪焼く≫というお料理は、ただ焼くのではなく、素材の本質を見極め、絶妙なる焼き加減でこそ、美味しさの本領を発揮します。これぞ、経験が成し得る職人技というもの。一度焼いたものを、時間が過ぎた中で、再度焼くことは、焼きすぎとなります。半生でお渡し、焼き加減を皆様にお任せするわけにもいきません。まして、電子レンジでは中から熱が入ってしまします。

 そこで、シェフ野口は≪茹でる≫≪煮込む≫という調理方法であれば、温かいメインディッシュを皆様のお家でお楽しみいただけると考えました。さらに、12月ならではの、贅沢な食材を使いながら…

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 フランス料理の中で、エビといえば間違いなく「オマールエビ」でしょう。海のギャングと称される巨大な姿とは裏腹に、美味しさも群を抜いています。プリっとした身質は、茹で上げることでその本領を発揮します。そこへ、オマールエビの頭や殻からじっくりと煮だした濃厚な、まるでオマールエビの旨味を凝縮したかのようなソースがまた格別なり。ともに同じ食材だけに、相性が悪いわけがありません。

 ショートパスタを少しだけ茹るという、お家で一手間をかけても良いかと思いますで、オリーブオイルを絡めたものを添えるアレンジをしても良いと思います。

 お肉は煮込みます。「牛のホホ肉のドーブ」という、南フランスの伝統的な煮込み料理をご用意いたします。丁寧にトリミングされた牛ホホ肉を、赤ワインと香味野菜でコトコトと煮込んでゆきます。しかし、これでは赤ワイン煮込みでしかありません。ドーブという伝統料理では、煮込む際にオレンジとトマトが入るのです。トマトのコクと酸味、オレンジの柑橘の甘さとほろ苦さ、香味野菜が肉の旨味を引き出すかのように、じっくりじっくりと煮込んでゆきます。

 ホホ肉が崩れんばかりにやわらかくなった時、肉を避難し、その旨味の溶け込んだスープを少しばかり煮詰めてゆきます。そして、ホホ肉にまとわせるかのように絡めるのです。全てが相まったとき、そこにドーブという美味なる逸品が完成します。なぜ、伝統が今なお健在なのか。理油は美味しいからに他なりません。

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 添えるのは、乾燥冴えてトウモロコシの粉末を、湯で練りシーズを加えたポレンタです。滑らかながら、ざらっとした粗挽きのポレンタ粉だからこその食感と、トウモロコシの香ばしさ、チーズのコク。ドーブとの相性は抜群です。一手間を加えるのであれば、青もの野菜や根菜を湯で、塩コショウをふりオリーブオイルを絡めたものをご用意すると、色合い地味な今回の料理に彩りをあたえることになり、さらに美味しさが引き立つことでしょう。

 

 岐阜県を流れる木曽川を上流へとの上ってゆくと、渓谷の斜面を利用した、見事な棚田に出会うことができます。江戸時代に中期の頃に切り拓いたという歴史を持ち、いまなおその棚田の役割を全うしているのです。急峻な地形は、生半可な開拓では成しようもなく、大小さまざまな石によって組まれた頑強な石垣は一見の価値あり。随所にみられる石垣に気付かれた石の階段は、先人たちの知恵そのもの。ここは「栃久保(とちくぼ)棚田」と名付けられ、岐阜県恵那市笠置町で我々を迎えてくれます。

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 この地は、斜面ならではのその水はけの良さ、渓谷だからこその川面の照り返し、そして山ならではの寒暖の差があるため、稲作はもちろんですが、果樹の栽培にも適しているのです。そこで、彼らは棚田を利用してユズを植栽していったのです。先人たちの先見の明は、さすがとしか言いようがありません。見事なまでのユズが実ったのです。人々からは「笠置ゆず」と呼ばれ、ひとつのブランドを造り上げたのです。

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 しかし、棚田という立地は、耕作面積をたやすく増やせるというものではなく、収量には限りがありました。どれほど名声を得たとしても、生産量の少なさを補うことはできません。県外や他の地域が、植栽面積をぐんぐん広げるなかで、一歩も二歩も遅れをとることになり、全国で名を馳せることが難しくなってゆきます。

 それでも、地元の人々はユズの栽培を辞めることはありませんでした。手間暇かけて育て上げた「笠置ゆず」は、他地域にも負けないユズに育つということを知っているからです。棚田は、ユズにとっては好立地ですが、栽培者にとっては難儀なもの。そのような苦労など、百も承知といわんばかりに、彼らは無農薬栽培を徹底しているのです。

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 笠置の人々が丹精込めて育て上げた、ユズがBenoitに届いています。太陽をさんさんと浴びることで、生い茂る葉は光合成をすることで、美味しさをなす栄養を果実に送り続けます。果実は、暴風雨にあたるために傷がつきやすい。しかし、この自然に鍛え抜かれることで、農薬に頼ることなく自らが持ちうる病原菌への抵抗力を生かしながら熟してゆきます。

 

 この「笠置ゆず」は、前述した牛ホホ肉のドーブに加わるのではありません。Benoitで「ル・ショコラ・アラン・デュカス 東京工房」より直送されるショコラと出会うのです。これが、今年の2020年Benoitの「ビュッシュ・ド・ノエル」です。

 「ル・ショコラ・アラン・デュカス 東京工房」のショコラの美味しさをすでにご存じの方も多いのではないでしょうか。アラン・デュカスが、最高のショコラを作るために、原料であるカカオ豆の産地まで赴き探し当てた逸品です。美味しくないわけがありません。ただ甘いだけではなく、ほろ苦い中に心地よい酸味が後を引きます。

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 このチョコレートで生地を作り、クリームを作り、丸めてゆく中に、笠置ゆずのマルムラードが加わります。生半可なユズでは、ショコラに呑まれてしまい、まったく風味を感じなくなってしまうことでしょう。笠置の人々が、途方もない手間暇をかけ、笠置の自然環境が育んだ、力強い風味が必要なのです。さらに、無農薬だからこそ安心して果皮まで使用することで、ユズのコクとほろ苦さが加味される。

 ショコラとユズ、どちらも特選食材でありながら、どちらが突出しても美味しくはなりまん。ここはBenoitパティシエチームだからこその、絶妙なるバランスで組みあげることで、お互いの美味しさ際立つことはもちろん、食感の違いも生み出すことになるのです。2020年のBenoit「ビュッシュ・ド・ノエル」、気になりませんか?

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 ご自宅で、ご家族や大切な方と素敵なクリスマスをお過ごしいただきたく、クリスマス限定テイクアウトメニューをご用意いたします。前述した自慢の料理とデザートを全てセットにしたクリスマスを彩る華やかなメニューです。Benoit自慢の本格的なビストロ料理をお楽しみください。

 提供期間 : 2020年12月23日(水)~26日(土)

価格:2名様セット 24,000円(税別) ※3名様のご用意も可能

申込方法 : このメール(kitahira@benoit.co.jp)への返信もしくは、電話(03-6419-4181)でご予約ください。

最終受付  : 2020年12月15日(火)

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Menu

・フォアグラのコンフィ 柑橘のコンディマン

オマールエビ カブ 甲殻類ソース

・牛ホホ肉の赤ワイン煮込み “ドーブ” クリーミーなポレンタ

・ビュッシュ・ド・ノエル ブノワ風

・パン・ド・カンパーニュ

 

 降り注ぐ太陽の陽射しが万物を育て上げ、四季折々の風はその土地土地に味わいをもたせる。その風のもたらした美味しさこそ「風味」であり、我々はここに「口福な食時」を見出すのです。そして、旬を迎える食材は、人が必要としている栄養に満ちています。そして、人の体は食べたものでできている。「美しい(令)」季節に冬食材が「和」する逸品に出会い、食することで無事息災に年末を迎えていただきたい。この想いを込め、2020年Benoitのテイクアウト・クリスマスメニューをご紹介させていただきました。

 

 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com

 

季節のお話「冬の到来を告げる初音」

コツコツコツ…

 子供たちの楽し気な声が響く公園の中で、片隅の木立に立っていると、熟練の大工さんが細い木槌で樹を連打してるかのような音が耳に入ってきました。この澄んだ音色は、金属と金属が当たる音ではありません。いったい何の音なのか、意識して耳をそばだててみると、意外にも脇にある樹から響いていた。

コツコツコツ…

 樹の幹から伝え響くかのような音。よくよく聞いてみると、なにやら樹の上のほうから伝わってくる。音を頼りに、今度は目を凝らしてみると、なにやら動くものがある。陽射しに邪魔されながらも、小鳥の姿がそこにはあった。

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音の主は「コゲラ」だ!

 キツツキの仲間で、コゲラは日本にいるキツツキ中で、もっとも小さく、スズメほどの大きさ。全国に広く分布し、一部の寒冷地を除き、季節によって移動をしない「留鳥(とどめどり)」です。鋭いかぎ爪のような足は、なかなかの握力らしく、両足と尾を起用に使い、垂直に伸びる樹をひょいひょいと上下にすばやく移動するため、目で追いかけるにはせわしない。

 雑食で、木の実はもちろん、虫を好んで捕食しているようです。春夏には生い茂る葉にいつく虫を、冬には樹の幹に巣食う虫を、高速連打で穴を開ける、はたまた虫が驚いて顔を出したところを捕まえる。

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 「暦(こよみ)」を手に入れた人類は、これに支配されてしまうことになりました。スケジュールに支配される息苦しさは皆様も感じているのではないですか。ただ、暦は人類史上の大発見であり、どれほど便利で日々の生活に欠かせないものであるか。これは今も昔も変わりはありません。

 かつては、農作業の目安は、草木の芽吹きやら花開く時期、小動物や鳥たちの鳴き声や行動パターン、遠く望める山々の冠雪の有無など、自然に教わるものでした。今でも十分に活用でき、気象庁の定める「生物規則観測」などは興味深いものです。通勤途中や散歩などの外出中に、人々の喧騒にもまれる中で、ふっと息つくひとときに、耳に入ってくる「初音(はつね)」には、感慨深いものがあります。

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コツコツコツ…

 ウグイスやホトトギスは、鳴き声で我々に季節の到来を教えてくれます。コゲラは「ギイー、ギイー」と鳴きます。初音は何も鳴き声にばかりではないと思うのです。コゲラの初音は樹をつつく音色でしょう。コゲラのつつきだす澄んだ音色が、冬間近であることを教えてくれています。

 

 連綿と繰り返される自然のサイクルは、その年ごとに何かしらの変化をもたらすことになり、遅いだ早いだなどと我々はその機微に一喜一憂するものです。しかし、四季折々の移ろいを、我々が勝手にカレンダーなるものにあてはめること自体がおこがましいのでしょう。自然はしっかりと語りかけている。それを真摯に受け止めているのが、野生の生き物たちです。

 野生に生きとし生けるもの、あるものは花を咲かせ実を成すことで、あるものは鳴き声で、我々に季節が変わってゆくことを教えてくれています。コゲラは季節の機微を感じ取り、越冬するため糧を得ようと樹をつつく。コツコツコツ…とせかされるようなその音色は、我々に冬の到来を教えてくれています。我々も冬支度をしなければなりません。まもなく、「冬至(とうじ)」を迎えます。そして、時同じくしてクリスマスもやってきます。

 そこで、2020年のクリスマスの提案をさせていただきます。

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一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

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Benoit11月のご案内です。

 日本の四季は風にのってやってくる。この齢(とし)になって、少しばかり理解できるようになってきた気がします。秋晴れの昼下がり、心地良く吹き抜ける「涼風(すずかぜ/りょうふう)」に癒される。夕暮れともなると、肌寒さを覚える「冷風」となり、我々を得も言われぬ幽愁(ゆうしゅう)の思いで包みこみます。

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 薫風(くんぷう)とは、夏の季語になっている言葉ですが、それぞれの季節に「香り」があると感じています。先日の台風接近による大雨によって花散らされるまでは、金木犀(きんもくせい)の芳しい香りを、秋風が我々に届けてくれました。しかし、この草木の香りではない、季節それぞれに「香り」がある気がしてなりません。言い当て妙なる言葉が見つからないので、今後の課題にさせていただきますが、皆様もそのように思いませんか?

 

 さて、季節の風は香りばかりを運んでくるのではりません。目に映る自然景観のことを「風景」と言います。「景」には、≪日の光≫という意味があり、さらに≪明るく照らす場所には境限(きょうげん)があるため、「景」は「境」である。≫と語源辞典「漢辞海」は説いている。風と陽の光による四季折々の境に「風景」がある。そこに自然美を感じると、「風光明媚(ふうこうめいび)な」という形容詞がついてきます。「明媚」とは清らかで美しい「景色(けしき)」のこと。

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 「風景」が「風」と「日の光」であるならば、「景色」は、「日の光」と「風の色」のことを言うのではないでしょうか。そう考えると、太陽の陽射しと風の色が相まって「風景」や「景色」となり、我々に四季のそれぞれの到来を教えてくれることに。では、この「風の色」とは何色なのでしょうか?

 

≪秋風の色は何色?≫

 黄葉・紅葉で彩られる「秋の色」は、深まりゆく秋を我々に教えてくれます。寒暖差が大きいほど美しく色づくのだといいます。この寒暖差は、秋という季節がもたらすもの。そして、秋は風が導いてくる。では、「秋風の色」は何色なのでしょう?季節のお話として、ブログに書き記しております。お時間のある時に以下よりご訪問いただけると幸いです。

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≪惜秋特別プランのご案内です。≫

 「秋の野」にゆかずとも、其処彼処(そこかしこ)で響き渡る「虫時雨」。マツムシは「待つ・虫」であると、古人はなかなか粋なことをいう。マツムシは、我々の訪れを待っていたのでしょうか?きっと違う。マツムシは美しい音色に、ついつい我々が忘れがちな「時は過ぎてゆく」というメッセージを込めているのではないかと思う。

 虫時雨に気付くことで、秋過ぎてゆくことを察する。うかうかしてはなりません、「秋はとまらぬものにぞありける」と教えてくれているのです。向かう先は秋の野ではありません。いざ、Benoitへ訪(ろぶら)はむ!

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≪秋のお勧め料理・デザートのご紹介です。≫

 降り注ぐ太陽の陽射しと風が「風景」を生み出し、万物の成長を促します。風景は画一的(かくいつてき)ではなく、四季折々に加え土地土地に特別な「風土」をもたらします。そして、この風土によって育まれた味わいが「風味」です。風味が満ち満ちたものが旬の食材です。

 秋が我々をそ知らぬ顔で過ぎ去ってゆくのと同じように、秋の食材も我々が楽しむまで待ってくれるという「情け」は持ち合わせていないようです。「秋はとまらぬものにぞありける」であれば、秋に旬を迎える食材もまた、「とまらぬものにぞありける」。11月の特選食材とお勧めの料理・デザートのご紹介です。

kitahira.hatenablog.com

 

≪北平のBenoit不在の日≫

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 私事で恐縮なのですが、自分がBenoitを不在にしなくてはならない11月の日程を書き記させていただきます。10月は滞りがちだったご案内を充実させるべく、執筆にも勤しませていただきます。ご不便をおかけいたしますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。

9日(月)

12日(木)

15日(日)

19日(木)

22日(日)・23日(月)

28日(土)

 上記日程以外は、Benoitを優雅に駆け回る所存です。自分への返信でのご予約はもちろん、BenoitのHPや、他ネットでのご予約の際に、コメントの箇所に「北平」と記載いただけましたら、自慢の料理の数々を語りに伺わせていただきます。

 皆様にお会いする機会を賜りながら、自ら放棄する無礼、ご容赦のほどよろしくお願いいたします。自分が不在の日でも、お楽しみいただけるよう万全の準備をさせていただきます。何かご要望・質問などございましたら、何気兼ねなくご連絡ください。

 

 「憂愁(ゆうしゅう)の秋」かと思いきや、「幽愁(ゆうしゅう)の秋」とも表現します。辞書には「憂愁=幽愁」と記載があります。憂愁は、「悩み苦しむこと、悲しみ」とある。では、幽愁は「心の奥底の憂い、悲しみ」なのだと。分かったようで分からない、同じような気もします。

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 両者に共通する「愁」は、「愁(うれ)い」とも読み、思い悩むことを意味します。「憂」もまた「憂(うれ)い」と読み、同意です。そうすると、憂愁は、ダブルで思い悩むことで苦しい、日々の生活の中で起きうる人間関係や、金銭関係などで苦しみながら思い悩むこと。「幽」には奥深いという意があります。そうすると、自分ではどうすることもできない自然の摂理への、手の届かないどうしようもないことへ思い悩むことなのか。こう考えると、過ぎ去る秋への想いは、「幽愁」こそあい相応しいのでしょう。

 Benoit特選食材で仕上げた美味なる料理の数々を逃してしまうことは、憂愁なのか幽愁なのか?ここは、皆様の判断にお任せいたします。よく見ると、「愁」の字は、秋に心と書いています。思い悩むことが多いのが秋なのかもしれません。

 ここはいっそのこと、足の赴くままにBenoitへお越しいただき、愁うことなく旬の食材をお楽しみいただく。そうすれば、憂愁でも幽愁でも、どちらもお構いなしという、全て万事解決となることでしょう。皆様との再会を、愁うことなく心待ちにしております。

 

 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com

2020年晩秋 ≪Benoit特選料理・デザート≫ご案内です。

たづねみる ふもとの里は もみぢ葉に これよりふかき 奥ぞしらるる 藤原俊成

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 日ごとに届く、北からの紅葉のお知らせ。都内ではまだまだと思いきや、ニシキギが鮮やかな紅葉の姿を見せてくれていました。周囲の樹々の葉が色濃い緑な上に低木なので、群を抜いた美しい紅葉がいっそう映えるように思います。「錦木(にしきぎ)」とは、なんと的を射た命名でしょうか。

 紅葉は、山奥の峰から始まり麓(ふもと)に下りてきます。冒頭の一首は、藤原俊成が麓の里で紅葉を目にしたことで、これから山深くに分け入ろうとするその先に、いかほどの色鮮やかな景色が広がっていることだろうという、余りある期待感が詠まれています。紅葉狩りに出かける時には、共感を覚えるのではないでしょうか。

 山の麓にゆかずとも、ニシキギの美しい紅葉を目にすると、山の奥深くや、名立たる紅葉の景勝地ともなれば、どれほど息をのむ景色が広がっていることかと、想像を膨らませてしまうものです。

 

 「景色」とは、四季を感じる自然景観のことだと、語源辞典「漢辞海」が教えてくれます。その中で、釈名(しゃくみょう/古代中国の賢人が書き遺した語源辞典)では、「景」とは「境である。明るく照らす場所に境限(=かぎり)があるから。」という。境限があるからこそ、四季があり一年にメリハリがでるのかもしれません。その時々に境限があり、その時々に姿を見せてくれる自然景観が景色であるという。

 旬の食材とは、ある意味で景色なのかもしれません。そして、時は進む一方で戻ることはできません。秋が我々をそ知らぬ顔で過ぎ去ってゆくのと同じように、秋の食材も我々が楽しむまで待ってくれるという「情け」は持ち合わせていないようです。

「秋はとまらぬものにぞありける」

秋に旬を迎える食材もまた、「とまらぬものにぞありける」と。

 

飛騨高山に鬼神「両面宿儺(りょうめんすくな)」を冠した野菜あり!

 

「六十五年 飛騨國有一人 曰宿儺」 日本書紀より

 65年、飛騨の国にひとりの人がいた。名を「両面宿儺(りょうめんすくな)」という。身の丈は3mはあろうか、それぞれに反対側を向いている顔を持ち、4本の腕を持つという。日本書紀によれば、暴れ鬼として書き記され、大和朝廷に敵対したとして、武振熊(たけふるくま)によって討伐されています。

 しかし、ご当地である美濃・高山・飛騨では、人々を苦しめていた鬼神を退治してくれたこともあり、祀られているのです。数々の仏像を彫ったとされる、飛騨出身の円空の作品が、岐阜県高山市の千光寺(せんこうじ)に現存しています。2つある顔の優し気な表情が表に彫られているため、鬼神という印象はうけません。円空は、両面宿儺は彼の地を救った守り神なのだと喝破する。

 だからこそ、両面宿儺の名を冠する伝統野菜、「宿儺かぼちゃ」が今でも丹精込めて栽培されています。そして、今年もBenoitに届いています。大きなサイズになればなるほど、栽培が難しくなると言われるなかで、この見事なサイズにまで育て上げられるには、どれほど手間暇をかけねばならないことか。

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 表皮は薄く、中は見事なほどの詰まった黄色がかったオレンジ色が姿を見せます。和かぼちゃの多くは、味わいが素朴であるのに対し、この宿儺かぼちゃは一線を画します。優しいカボチャ特有の甘みの中に、ねっとりとしながらも、きれいな旨味の余韻が後を引く。洋かぼちゃにはない和かぼちゃの美味しさに舌鼓を打つこと間違いありません。

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 なぜ、美味しいカボチャなのに、日本全国に出回らないのか。栽培が難しい上に、表皮が薄く日持ちがしないこと。そして、この大きさゆえなのでしょう。ご家庭で1本購入しようものならば、1週間はカボチャ料理が続くことになります。しかし、今なお栽培が続いている理由は、「美味しいから」の一言に尽きるでしょう。

 

「宿儺かぼちゃ」のスープは11月末まで!

 高山市で「かぼちゃ名人」と称される若林さん率いる、熟練の栽培者の方々よりBenoitへ送っていただいている品質の高さには脱帽するばかり。しかし、今年は天候不順の影響もあり、収量が3割減といいます。Benoitでは、若林さんにお願いし、なんとか200kgを確保し、10月からメニューに加えさせていただきました。この量は、11月末まで皆様にご提供できるかどうかのギリギリの量ではないかと考えています。

 この伝統野菜をたっぷりと使い、黄金色美しい、なめらかなスープに仕上げました。そそがれた時にはなたれる、かぼちゃの甘い香り、余計なものは何も入らない、かぼちゃそのものの旨味を凝縮したような美味しさをお楽しみください。11月末まで、ランチのプリ・フィックスメニューの前菜としてお選びいただけます。

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Velouté de POTIRON et fromage frais

宿儺かぼちゃ"のスープ リコッタチーズ

※ディナーでご希望の際には、ご予約の際に希望数をお伝えいただけると幸いです。

 

≪栗で始まり栗で終わるためには、栗のスープから!≫

 この時期になると、必ず問い合わせがくるのが、「栗のスープ」です。ビロードのようなという意味の「ヴルーテ」という名前にてディナープリ・フィックスメニューに名を連ねています。

 フランスの栗らしい甘さとコク。これをふんだんに使用して仕上げるのですが、これだけではデザートのように甘くなりすぎてしまうものです。濃く甘くなるからといって、薄くする発想はフランスには無いようです。味わいを足し算するかのように、加えるのが栗の渋皮です。赤ワインのタンニンと同じ「渋味」を加えることで、前菜として立ち位置を獲得したのです。

 皆様に惜しまれつつ、11月末にて終わりを迎えてしまいます。栗で始まり、栗で終わる。このようなメニュー構成にするのも一興ではないでしょうか。。

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Velouté de CHÂTAIGNE, garniture mijotée

フランス産栗のスープ

※ランチでご希望の際には、+800円にてご用意させていただきます。要予約です!

 

フランスから「キノコいろいろ」が飛行機に乗って到着しています!

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 秋の味覚の代表ともいえる「キノコ」が、フランスから飛行機でやってきています。冬本番を迎えるに前に、ぜひとも味わっておかねばなりません。今届いているものは、プルーロット(ヒラタケの仲間)、ジロール(アンズ茸の仲間)とトランペット・ドゥ・ラ・モー(「死のトランペット」という名前ですが毒キノコではありません)、それとマッシュルームの4種類。ひとつひとつの香りこそ地味ですが、ちゃっちゃと熱を加えることで放たれることで芳しい香りをはなつようになり、風味豊かになります。

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 ここまで国産の食材にこだわりを見せながら、どうしてフランス産を購入するのか?シイタケやシメジにように、風味豊かな個性的なキノコが国産にはあります。ことフランス料理との相性となると、どうしてもフランス産に軍配があがるのです。さあ、どのような料理へ姿を変えるのでしょうか?

 

フランス伝統料理「ヴォローヴァン」は、11月末まで!

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 Benoitのミルフィーユがいかほどのものか、すでにご存じの方も多いのではないでしょうか。この生地はフィユタージュというのですが、フランス産の小麦を練ったものを、たっぷりのバターで包み込み、丁寧に生地を伸ばして休ませる。作製日数は、ゆうに3日を要します。これをくり抜き、2枚重ねるようにくっつけて、さらに休憩させること1日。そしてオーブンへ。

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 焼き上がりの上の画像をご覧いただきたいです。5日間もかけて仕上げた一個を切らせていただきました。どうですか!この見事な断面が、いかにサクサクな食感に仕上がっているかを物語っています。ここまでが、Benoitパティシエチームの仕事です。焼き上がったヴォローヴァンの土台は、料理担当者へと引き継がれます。

 皆様より、ご注文が入ったタイミングで、3種のキノコ、プルーロット、トランペット・ドゥ・ラ・モー、それとマッシュルームをちゃっちゃと炒めることで、キノコの旨味と香りを引き立てます。そこへ、フランスのブルターニュ地方から届いたホロホロ鳥のモモ肉を加え、少しばかりのクリームを加えます。まさにキノコクリームソースに鶏肉という、これだけでも十分に料理として通用する美味しさ。これを、温めたヴォローヴァンをくり抜いた中へ、中へと詰めてゆく…

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 バターの芳しい香りを楽しみつつ、ヴォローヴァンにナイフを入れると、「サクサクッ」と軽快な美味しい音が聞こえる。そして、ナイフを通して、心地良い感触が指先に伝わってきます。生地だけでも香ばしく美味しい。さらに、ホロホロ鳥の旨味が加わったキノコクリームソースを絡めようものならば…もう語る必要はないでしょう。

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VOL-AU-VENT DE PINTADE et champignons

ホロホロ鳥とフランス産キノコのパイ詰めヴォローヴァン

※プリ・フィックスメニューの前菜の選択肢として、ランチ+1,500円、ディナー+1,200円でお選びいただけます。生地が大量生産できないため、一日にご用意できる数に限りがございます。ご希望の際は、ご予約時にご希望数をお伝えいただけると幸いです。

 

ジビエのテリーヌが、ディナーに登場です。≫

 京都北部の山林を駆け抜けていた丹波のイノシシを、フランス伝統のテリーヌへと仕立て上げてゆきます。さすが駆け回っているだけに、イノシシだけでは単調な味わいになりがちです。そこで、粗挽きイノシシの句の中へ、豚の背脂とレバーも加えることで、旨味となめらかさを与えるのです。そして、テリーヌ断面の中央には、まるで雲間から顔を覗かす満月のように、鴨のフォアグラが姿を現します。

 全てが合いまった時、そこには深まりゆく秋にあい相応しい美味しさをお楽しみいただけます。赤ワインが呼んでいます。

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Terrine de GIBIER, pain toasté

ジビエのテリーヌ

※ランチでご希望の際には、+800円にてご用意させていただきます。要予約です!

 

ノルウェーサーモンがランチに登場!11月末までです。

 太平洋サーモンを代表するのが白鮭であるならば、大西洋サーモンは間違いなくノルウェーサーモンでしょう。すでに馴染みの食材なので詳細を語ることはいたしません。この食材を美味しくいただくには、焼き加減が要(かなめ)となります。焼きすぎればパサパサなため、ゆっくりとじんわりと、休ませながら熱を加えてゆきます。

 エストラゴンの香草を利かした緑のコンディモン(味わいに必要不可欠な薬味のようなもの)。エシャロットを白ワインを使い甘みを引き出すように煮詰めた茶色のソース。卵黄をほわほわに仕上げたソース。この3つを合わせることで、お好みのベアルネーズソースが姿を現します。

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Pavé de SAUMON, légumes de saison, sauce béarnaise

サーモンのオーブン焼き 季節野菜 ベアルネーズソース

 

カレイの美味しさは、マツカワカレイにあり!11月末までです。

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 背びれを上に置き、白い腹目を地につけた時、「左ヒラメに右カレイ」なのだといいます。ヒラメとカレイを見分ける時の決まり文句ですが仲間の中でも例外がいる上に、自然界のか中では稀にひねくれものもいるようです。どちらにせよ、ともに美味しい魚に変わりはありません。と、コメントしていては、飲食業を生業とはできません。

 眼の向きは、やはり美味しさに違いをもたらしますが、エビ・カニ・小魚を捕食することで蓄えられる旨味は甲乙つけがたいもの。しかし、その肉質には大きな違いがあります。カレイ目ヒラメ科の仲間がぷりっと堅めであるならば、カレイ目カレイ科はふわりとして柔らかい。

 今回は、カレイの仲間の中で、美味であることで群を抜いている「マツカワカレイ」が、北海道からBenoitに届いています。見事なまでに美しい背ビレに腹ビレに描かれる帯模様。これぞマツカワカレイなり!ヒラメにも負けないほどの肉厚さながら、やはり肉質は繊細で、優しい旨味に満ち満ちています。

 3枚に捌いてしまうと、美味しくなる前に焼き上がってしまうため、中骨を残すように切り身にしてゆきます。ふつふつと泡立つバターをふりかけながら、ふりかけながらゆっくりと焼き上げるのです。そのまま旨味の加わったバターに、少しばかりのアンチョビを加えたものがソースへと姿を変えます。添えるジャガイモとの相性も抜群とくれば、何も言うことはないでしょう。

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Tronçon de CARRELET à la meunière, pommes de terre écrasées

カレイのムニエル じゃがいものエクラゼ

※調理の都合上、ディナーのみしかご用意できません。

 

仔牛のブランケット単なるクリーム煮込みだと思うことなかれ。

 仔牛のブランケットと聞くと、シチューのようなクリーム煮込みを想い描いてしまうものです。しかし、Benoitがそれでは芸がありません。そこで、シェフ野口は考えたのです。Benoitらしさを表現してみようと。

 仔牛のスネ肉を丁寧にトリミングし、白ワインと香味野菜の中で90分煮込んでゆきます。ほろっと崩れんばかりになったところで、スネ肉を避難し、残りの旨味の煮出たスープを煮詰めてゆき、少しばかりのクリームを加える。これを、スネ肉にまとわせるように仕上げるのです。クリームで煮込まず、煮込み過ぎないことで、肉そのものに美味しさを残すように。さらに、ミルクをふわふわに泡立てたところへ、香辛料であるクローブを加え、香り立たせたものと盛り付けるのです。

 さあ、どれほど美味しく仕上がっているのか、気になりませんか?すっかり画像を撮るのを失念しておりました。このお料理の姿は、出会うまでのお楽しみください。

Blanquette de VEAU, légumes en beaux morceaux

仔牛の煮込みブランケット季節野菜

※調理の都合上、ディナーのみしかご用意できません。

 

スペインから仔豚チョップがBenoitへ!これも11月末までです。

 日本ではなかなかお目にかかれない、仔豚骨付きロース肉です。丁寧にトリミングをして、ゆっくりと焼き上げてゆきます。骨付きだからこそ、時間をかけて熱を通すことができ、そして美味しさも引き出せる。しかし、生では食せない豚肉だからこそ、職人技を求められる。シンプルながら、仔豚そのものが美味なり。

 添えているのは、カボチャの輪切りにカボチャのピューレをのせ、パルメザンチーズをふりかけて焼き上げたもの。これぞ、フランス流グラタン、いやいやグラチネなり。突き刺さっているチップスもカボチャです。何のカボチャなのか?もうお察しいただいたのではないでしょうか。今秋の特選食材の、あのカボチャです。

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Côte de COCHON DE LAIT rôtie, gratin de potiron

スペイン産仔豚のロースト宿儺かぼちゃ"のグラタン

※調理の都合上、ディナーのみしかご用意できません。

 

ジビエを代表する食材「蝦夷鹿」もまた、11月末までです!

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 Benoitのプリ・フィックスメニューには、通年を通して牛肉のランプステーキが鎮座しています。それに、対抗するかのように、日本のジビエ料理の代表格ともいえるエゾシカが、名を連ねました。のんびり歩いている牛とは違い、北海道を駆け回っているからエゾシカ。この行動パターンの違いは、赤身の肉質とはいえ、まったくの別物です。

 丁寧にトリミングした、エゾシカのモモ肉を、多目に黒こしょうをまぶして焼いてゆきます。表面に焼き色がついた時点で、肉が休憩するための、Benoit秘密の温かい小部屋へ。ゆっくりとゆっくりと、内包している旨味を逃がさないように。このトリミングの焼きという職人技が、固くなりがちなモモ肉を、やわらかく美味しく仕上げることになるのです。

 ジビエだからこそ、ビーツのように大地を思わせる甘みのある野菜であり、柿やリンゴ、さらには栗を添えて皆様の元へお持ちいたします。Benoitで楽しむジビエ料理の締めは、これを食せずして秋を終えることはできません。さあ、我々をそ知らぬ顔で駆け抜けてゆく秋に追いつきましょう!

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Noisettes de CHEVREUIL rôties, garniture d’automne, sauce poivrade

蝦夷鹿のロースト 秋野菜と果実 ソースポワヴラード

※プリ・フィックスメニューのメインディッシュの選択肢として、ランチ+1,500円、ディナー+1,200円でお選びいただけます。一日にご用意できる数に限りがございます。ご希望の際は、ご予約時にご希望数をお伝えいただけると幸いです。

 

山形県の遠藤農園さんからりんご「紅玉」」が届いています!

 山形県の西に聳(そび)える山々は、新潟県との県境をなしています。その山より湧き出でる清らかな水は、落合い落合いせせらぎとなり、さらに川幅を大きくし、山間(やまあい)の沿うように蛇行しながら海を目指す最上川となる。その上流域に朝日町があり、大谷(おおや)という地に遠藤農園さんがリンゴ畑を拓(ひら)いているのです。「今はシナノゴールドの収穫に追われています!」というコメントともに、美しいリンゴ畑の画像が送られてきました。

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 馴染み深いフルーツのリンゴは、いともやたやすく購入することができます。しかし、「紅玉」という品種となると、栽培している方が少ない上に、植栽本数も激減するのです。生食にて、しゃくっとした心地良い食感と甘みに満ちた新品種が続々と登場し、昔ながらの硬く酸っぱいりんごである「紅玉」は敬遠されてしまうのでしょう。しかし、ことデザートとしてリンゴを選ぶ場合、生食にて美味なる日本のリンゴでは、加熱した際に甘すぎて酸味がないため適しません。ことデザートにおいて、紅玉を勝るものは、まだありません。

 昨年、遠藤農園さんのリンゴ「紅玉」と出会うことができました。彼のリンゴを試食したBenoitシェフパティシエール田中は、「見事なバランスで素晴らしい!」と太鼓判を押したのです。自分が、今まで紅玉探しに苦労していたため、この出会いに感謝し、安堵したのもつかの間でした。希望数の確保を失念していたのです。案の定、2019年は一か月をもって終わりを迎えました。

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 2020年は、この大失敗を繰り返さないよう、10月7日の収穫開始早々に、希望数確保を打診します。その量は200kgなり。ただでさえ収穫を迎えて多忙極まりない時期にもかかわらず、遠藤さんは畑の実付きの状況把握に数日かけた後に、快諾してくれたのです。

 確保したリンゴも、残り半数となりました。予想では、12月早々に山形県朝日町大谷の紅玉は尽きてしまうことでしょう。その後は、豊洲市場を経由した別産地へと引き継がれ、来年1月末まで継続いたします。しかし、Benoitパティシエチームを唸らせた「遠藤農園さんの紅玉」を、ぜひお楽しみいただきたく、ここにご紹介させていただきました。

 

≪リンゴのオーブン焼きとは、ただ焼いただけではありません!≫

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 この遠藤農園さんの美味しそうなリンゴ!この可愛い小柄な紅玉を、1人2玉ほど使用して、デザートに仕上げます。果物は、果皮の内側に美味しさが集結します。そのため、一玉一玉丁寧に皮を剥(む)き、スライスしてゆきます。

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 このデザートで欠かすことができないものが2つあります。一つは、美味しい紅玉。素材以上の美味しさは、いかに腕の立つ調理人であろうとも、錬金術師でもない限り不可能です。もう一つが、素焼きのこの器です。Benoitでは、Romertöph(ロメルトフ)という、ドイツ生まれの可愛い器を使用します。2~3時間、しっかりと水に浸けておき、水分を十分に含ませておいた器の中へ、遠藤さんの紅玉を一枚一枚と丁寧に盛りつけてゆきます。

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 リンゴの盛り付けの最中(さなか)、数度にわたりサトウキビ由来のカソナードと呼ばれるブラウンシュガーと、香辛料をふりかけながら。香辛料?ここが昨年と大きく変わったところです。シナモンではありません。カルダモンとアニス、さらに白コショウ・ナツメグクローブ・ショウガの絶妙なるブレンドでフランスでは定番のキャトル・エピスを少々と。

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 水分を含んだ蓋をし、180℃のオーブンの中でゆっくりと焼き上げること約60分。ロメルトフ自体に水分を含んでいるため、当初は、この水分が蒸発することで、器の中はじわじわと温度が上がります。蒸発しきった時点から、温度がぐんぐんと高くなるという、勝手に温度調節をしてくれる優れものが、このロメルトフという器なのです。

 60分間、オーブンに入れっぱなしでじっくりと焼いてゆくのかと思いきや、パティシエはオーブンから離れるわけには行きません。15分おきに、カソナードを振りかけねばならないのです。この作業によって、この長い焼時にもかかわらず、リンゴが焦げることはありません。

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 焼き上がったリンゴは、ロメルトフに入れたまま、冷ますように休ませます。この休憩時間は、味わいを落ち着かせると同時に、美味しさを引き出すことにつながるのです。そして、皆様からのご注文があった際に、温め直してお持ちいたします。

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 このロメルトフという器無くして作ることができず、遠藤農園さんの美味なる紅玉だからこそ、今の美味しいデザートに仕上がっているのです。蓋を開けた時の姿に驚き、爽やかな甘酸っぱい香りに魅せられることに。この長い工程があればこその、美味しさがロメルトフの中に詰まっている、これがBenoitの「リンゴのオーブン焼き」です。

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POMME au four, crème fraiche

リンゴのオーブン焼き

※プリ・フィックスメニューのメインディッシュの選択肢として、ランチ・ディナーともに+800円でお選びいただけます。一日にご用意できる数に限りがございます。ご希望の際は、ご予約時にご希望数をお伝えいただけると幸いです。

 

岐阜県恵那の老舗和菓子処から“和栗”がBenoitへ!そして、2020年版モン・ブラン登場です!

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 昨年に引き続き、岐阜県恵那市の「恵那川上屋」さんより、和栗を炊きほぐしていただいた栗のペーストを送っていただきます。60年近くもの間、栗に向き合ってきた彼らの慧眼は本物です。岐阜県恵那の地は昔から中山道の宿場町として栄えていました。旅人が秋に立ち寄る理由は、美味しい栗料理に栗菓子を提供していたからです。

 この連綿と受け継がれてきた「和の技法」をもって仕上げらえた栗のペースト2種類がBenoitに届きます。恵那川上屋さんの代名詞的な「栗きんとん」そのもの。それと、Benoit用に和栗を炊き上げ、加糖せずに仕上げたもの。この風味の異なる2つ和栗ペーストが、Benoitでフランスの栗と出会い、2020年のモン・ブランへと姿を変えるのです。

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 今期のブレンド比率は、恵那川上屋さんの栗きんとんと無糖の栗ペースト半々の和栗ブレンドが7割、フランス産が3割です。ヒヤムギほどの細さの金口でたっぷりと絞り込みます。中には軽やかな生クリームと、心地良い食感と甘さのメレンゲがあり、ひっそりと教えてくれる柚子の風味。

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 丹精込めて育ててくれる栽培家、栗を知り尽くした熟練した技術工房スタッフ、そして栗を愛するお客様。恵那川上屋さんは、栗を愛する皆様を「栗人(くりうど)」と名付けました。栗を通して大きな喜びの和となることを目指しています。その和に、快くBenoitを加えていただけたのです。

 我々が栗の栽培ができないのはもちろん、栗の選別や下ごしらえなどは、経験に裏打ちされている経験がものをいい、さらに途方もない手間暇がかかります。その貴重な栗のペーストを、Benoitへ送っていただくのです。皆様、Benoitの栗のデザートを通し、「栗人の和」への仲間入りをいたしませんか?

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MONT BLANC à notre façon

モンブラン ブノワ風

※プリ・フィックスメニューのメインディッシュの選択肢として、ランチ・ディナーともに+1,000円でお選びいただけます。

 

≪北平のBenoit不在の日≫

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 私事で恐縮なのですが、自分がBenoitを不在にしなくてはならない11月の日程を書き記させていただきます。10月は滞りがちだったご案内を充実させるべく、執筆にも勤しませていただきます。ご不便をおかけいたしますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。

9日(月)

12日(木)

15日(日)

19日(木)

22日(日)・23日(月)

28日(土)

 上記日程以外は、Benoitを優雅に駆け回る所存です。自分への返信でのご予約はもちろん、BenoitのHPや、他ネットでのご予約の際に、コメントの箇所に「北平」と記載いただけましたら、自慢の料理の数々を語りに伺わせていただきます。

 皆様にお会いする機会を賜りながら、自ら放棄する無礼、ご容赦のほどよろしくお願いいたします。自分が不在の日でも、お楽しみいただけるよう万全の準備をさせていただきます。何かご要望・質問などございましたら、何気兼ねなくご連絡ください。

 

≪秋風の色は何色?≫

 黄葉・紅葉で彩られる「秋の色」は、深まりゆく秋を我々に教えてくれます。寒暖差が大きいほど美しく色づくのだといいます。この寒暖差は、秋という季節がもたらすもの。そして、秋は風が導いてくる。では、「秋風の色」は何色なのでしょう?季節のお話として、ブログに書き記しております。お時間のある時に以下よりご訪問いただけると幸いです。

kitahira.hatenablog.com

 

≪惜秋特別プランのご案内です。≫

 「秋の野」にゆかずとも、其処彼処(そこかしこ)で響き渡る「虫時雨」。マツムシは「待つ・虫」であると、古人はなかなか粋なことをいう。マツムシは、我々の訪れを待っていたのでしょうか?きっと違う。マツムシは美しい音色に、ついつい我々が忘れがちな「時は過ぎてゆく」というメッセージを込めているのではないかと思う。

 虫時雨に気付くことで、秋過ぎてゆくことを察する。うかうかしてはなりません、「秋はとまらぬものにぞありける」と教えてくれているのです。向かう先は秋の野ではありません。いざ、Benoitへ訪(ろぶら)はむ!

kitahira.hatenablog.com

 

 降り注ぐ太陽の陽射しが万物を育て上げ、四季折々の風はその土地土地に味わいをもたせる。その風のもたらした美味しさこそ「風味」であり、我々はここに「口福な食時」を見出すのです。そして、旬を迎える食材は、人が必要としている栄養に満ちています。そして、人の体は食べたものでできています。「美しい(令)」季節に秋食材が「和」する逸品に出会い、食することで無事息災に秋をお過ごしください。

 

 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com