kitahira blog

徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

2021年5月 Benoit「首夏の夕暮れ特別プラン」のご案内です。

小山田(をやまだ) 水のながれを しるべにて せき入るるなへに 鳴くかはづかな  藤原定家

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 稲作は豊富な水資源を必要とするため、平野一面の田園風景とするには、高度な灌漑技術が求められました。昔々の日本において、皆がこの技術を習得できていようはずもなく、多くの田は「水は高き所から低き所へ流れる」という理を利用するために、山間(やまあい)に開墾されてゆきます。だからこそ「山田」と表現する。

 定家の目前にあるのは、高低差の少ない棚田のような光景なのでしょうか。小川から流れを止めているのは、石なのか土なのか。塞(せ)き外すことで、田へ流れ込む清らかな水。これを合図とするように、蛙が鳴き始めたのでしょう。

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 桜の開花を目安とし、「田起こし」を行います。この田起こしとは、その字の如く、休眠していた田を目覚めさせるように、鍬(くわ)で鋤(す)くこと。桜の開花が日を違(たが)えながら北上してゆくことで、田起こしは南から始まります。東北地方では、桜の開花を待っていると稲の生育期間が取れないため、コブシの花が目安となるといい、この樹を「田打ち桜」とも呼んでいます。

 田起こしによって空気を土壌に含め、苗代の早苗(さなえ)の成長を見守りながらしばしの休養をとります。そして機を見計らい、田へ水を引き込み一大イベントである「田植え」が始まります。耕運機を引っさげたトラクターや田植機の出現が、どれほど稲作を楽にし、田植の期間を短くしたことか。とはいえ、田植機で植えきれなかった田の隅や、早苗が間抜けしてしまった箇所は手作業であるため、家族総出の作業であることに変わりはありません。自分が新潟県出身なだけに、この田植えの光景はGWの時期と重なります。

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 今では灌漑用の水路が張り巡らされ、川の近辺でなくとも田を広げることができるようになり、一面の田園風景も珍しくはありません。早生、中生(なかて)に晩生(おくて)と田植えをすることで、田起こし後の休眠中の田の隣には水を引いた田があり、そのまた隣では早生の稲が植えられています。

 田起こしは、田を起こすのみならず、越冬するために土中に眠っていた小動物をも起こします。そして、田への引水(いんすい)は、まどろむカエルは覚醒したかのように鳴き始める。長い冬の眠りを邪魔された嘆きの声なのか?それとも、待ちわびた夏の到来を、川の清らかな水が教えてくれたことへの感謝の声なのか?

 

首夏の夕暮れ特別プランのご案内です!

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 陽が西の山の端(は)に沈みゆく頃、Benoitのディナーはしめやかにディナー営業を始めます。GWが始まり、「酒類提供の中止」の寂しさが、これほど身に染みるものかと思い知る日々。「ワインとフランス料理とのマリアージュ」とは、単にアルコールと食事という関係ではなく、歴史に裏打ちされた確固たるもので、切っても切り離せないものでした。とはいうものの、今Benoitが、都の要請に背きワインを提供すべき時ではない、耐え忍ばねばならない時と理性が教えてくれています。きっと皆様も同感していただけるものと考えております。

 Benoitは「休業」ではなく「営業」という選択肢を選びました。Benoitに鎮座する酒の神バッカス慟哭をよそに、「酒類の提供を中止」しています。それでも営業している理由は、季節に「待つ」という優しさはなく、旬の食材も時の経過とともに終わりを迎えてゆくことを、手をこまねいて見過ごすことができなかったからです。

 そこで、Benoitの料理を通して、今我々の欲している栄養に満ち満ちた旬の食材を体の中に摂りこんでいただき、体の中から元気になっていただきたい。そして、騒ぐではない「語らい」によって心満たされることで、このコロナ災禍を乗り越えていただきたいとの願いを込めて、ディナー限定「首夏(しゅか)の夕暮れ特別プラン」をご紹介させていただきます。 

首夏の夕暮れ特別プラン

ディナー

前菜+メインディッシュ+デザート

7,500円→5,000円(税込/サービス料別)

※プリ・フィックスメニューの料理内容は、当日にメニューをご覧いただきながらお選びいただきます。ご希望人数が8名様以上の場合は、ご相談させてください。

  期間は緊急事態宣言下の、土日を含めた2021511()までです。私事で恐縮なのですが、5日水曜日だけ、自分がBenoitを不在にいたします。ご不便をおかけいたしますが、ご理解のほどなにとぞよろしくお願いいたします。笑顔で「語らう」食事は、心身ともに活力をみなぎらせることとなり、昨今のウイルス災禍に対抗する最良の手法かもしれません。お一人様でのご利用も喜んで承ります。適度に自分が「語らい」に伺わせていただきます。

 ご予約は、自分へ(kitahira@benoit.co.jp)ご連絡ください。お急ぎの場合には、Benoitメールアドレス(benoit-tokyo@benoit.co.jp)より、もちろん電話でもご予約は快く承ります。何かご要望・質問などございましたら、何気兼ねなくご連絡ください。

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 夕刻ともなり、静寂の田園風景に響き渡る初夏の蛙の声は、まさに「蛙の初音(はつね)」であり、今も昔も変わりません。夏の盛りの鳴き声とは少しばかり違った音色は、いつの時代であれ、耳にした人を郷愁の念へと誘(いざな)います。季節と同じように、食材の旬もめぐってきます。いつでも美味しい食材であるかもしれませんが、「旬」が加味されることで、格別な美味しさとなります。いつの時代であれ、それを口にした人を「口福な食時」へと誘(いざな)います。

 

 今年の辛丑が始まりました。その「辛」の字の如く優しい年ではないかもしれません。しかし、時は我々に新地(さらち)を用意してくれている気がいたします。思い思いの種を植えることで、そう遠くない日に、希望の芽が姿をみせることになるでしょう。

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 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご多幸とご健康を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com

2021年5月 Benoit特別プランとお勧め料理のご案内です。

酒類提供中止のお知らせです。

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 Benoitに鎮座するバッカスの慟哭が聞こえてくる…

Avec bon pain, bonne chère et bon vin, on peut envoyer promener la medecine.

「美味しいパン、美味しい料理、美味しワインがあれば、我々は薬を手放すことができる(医者いらず)」

 

 日本でも「酒は百薬の長」とはよく言いますが、このフランスの格言は酒(ワイン)だけではなく、美味しいパンと料理が必要不可欠だという。料理もワインもフランスでは歴史深いだけに、この比類なき関係は大いに共感いたします。ワインは飲むというよりも、料理とともに嗜(たしな)むものなのでしょう。料理との相性を「マリアージュ」と呼び話題になることからもお分かりいただけるのではないでしょうか。

 先日、緊急事態宣言が発出されました。昨今のコロナウイルス災禍が収束することを期し、Benoitも宣言に準ずる「酒類提供なしで、時短営業の継続」を選ばせていただきます。「休業」という言葉がちらついたことは確かです。しかし、旬の食材は、美味しく栄養抜群であるばかりで、我々を「待つ」という優しさを持ち合わせておりません。そこで、Benoitは「美味しいパン」と「美味しい料理」で皆様をお迎えすることにいたしました。

ランチ

1130分から1530 (1400 ラストオーダー)

ディナー

1700から2000 (1900 ラストオーダー)

 

La viande fait la chair, le pain fait le ventre et le vin même la danse.

「肉料理は体を作り、パンは空腹を満たし、ワインはダンスを踊らせる。」

 期間限定お食事処Benoitで、今我々が欲している栄養が満ち満ちた旬の食材で体の中から元気になっていただき、美味なる料理でお腹と心を満たし、ワインが無いのでダンスは踊らず「心躍る心地」なひとときをお楽しみいただきたいと思います。

※期限につきましては、都の要請に従わせていただきます。

  

惜春特別プランのご案内です!

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 杜若(かきつばた)が、垣となり去りゆく春という季節ばかりか、旬の食材をも留めてくれています。2021年5月5日に「立夏(りっか)」を迎え、暦の上では夏を迎えますが、「けふのみ春とみてや帰らむ」と藤原定家が教えてくれています。「今日だけは春であり、口福なひとときを楽しんで家路に就こう」とまでは言ってはいないが、意図的に歌意を汲み取りたい…

 そこで、季節の変わり目である今の不安定な天気の日々を、皆様には無事息災に乗り切っていただきたいとの思いを込め、「八十八夜特別プラン」から「惜春特別プラン」と名を改めご案内させていただきます。さらに、去りゆく春を大いに惜しんでいただきたく、期間をメールを受け取っていただいた日より、2021531()までに延長させていただきます。

ご予約は、自分への返信(kitahira@benoit.co.jp)をご利用ください。お急ぎの場合には、Benoitメールアドレス(benoit-tokyo@benoit.co.jp)より、もちろん電話でもご予約は快く承ります。

 

惜春特別プラン

ランチ

前菜x2+メインディッシュ+デザート

6,000円→5,000円(税込/サービス料別)

ディナー

前菜x2+メインディッシュ+デザート

8,600円→6,800円(税込/サービス料別)

※プリ・フィックスメニューの料理内容は、当日にメニューをご覧いただきながらお選びいただきます。ご希望人数が8名様以上の場合は、ご相談させてください。

 

 笑顔で「語らう」食事は、心身ともに活力をみなぎらせることとなり、昨今のウイルス災禍に対抗する最良の手法かもしれません。お一人様でのご利用も喜んで承ります。適度に自分が「語らい」に伺わせていただきます。

 

北平のBenoit不在の日

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 私事で恐縮なのですが、自分がBenoitを不在にしなくてはならない5月の日程を書き記させていただきます。滞りがちだったご案内を充実させるべく、執筆にも勤しませていただきます。ご不便をおかけいたしますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。

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 上記日程以外は、Benoitを優雅に駆け回る所存です。自分への返信でのご予約はもちろん、BenoitのHPや、他ネットでのご予約の際に、コメントの箇所に「北平」と記載いただけましたら、自慢の料理の数々を語りに伺わせていただきます。自分が不在の日でも、お楽しみいただけるよう万全の準備をさせていただきます。何かご要望・質問などございましたら、何気兼ねなくご連絡ください。

 

≪旬の魚「メバル」と仏産「ホワイトアスパラガス」が一堂に会します!≫

 魚を知り尽くしたフランス漁師さんの料理と言えば、南仏のブイヤベースが有名です。しかし、漁師さんは南フランスだけに存在するのではありません。北フランスのロワール地方にもいる。彼らの伝統料理「ショードレ」はどのようなものなのでしょうか。今回は旬のウスメバルを使い、この伝統を踏襲した一皿がBenoitに登場します。それも、5月からはフランス産のホワイトアスパラガスとともに!

kitahira.hatenablog.com

 

旬の食材とお勧めの料理・デザートのご案内です。

 万物を育て上げ、四季折々の風はその土地土地に味わいをもたせる。その風のもたらした美味しさこそ「風味」であり、我々はここに「口福な食時」を見出します。そして、旬を迎える食材は、人が必要としている栄養に満ちています。そして、人の体は食べたものでできています。「美しい(令)」季節に春食材が「和」する逸品をお楽しみください。

 詳細は、ブログに綴らせていただきます。お時間のある時に以下よりご訪問いただけると幸いです。

kitahira.hatenablog.com

 

≪季節のお話「杜若(かきつばた)の役割とは?」≫

 群青と称される「杜若(かきつばた)」が花笑い始めました。花びらを3つ上向きに、うてなを3つ垂れ下がるように、この独特な花姿のこの美しい花は「三英の花」と称され、今も昔も姿はかわりません。古人はこの美しさを見逃しませんでした。多くの歌人が和歌に詠いこんでいます。その中から一首だけご紹介させていただきます。

沼水の あたりも匂ふ かきつばた けふのみ春と みてや帰らむ  藤原定家

 今回の季節のお話は、この「杜若」です。定家はどのような思いでこの花を詠ったのでしょう。勝手気ままな自分の解釈ですが、間違ってもいないような気もいたします。お時間のある時に、以下よりブログをご訪問いただけると幸いです。

kitahira.hatenablog.com

 

 最後まで読んでいただき、誠にありがとうございます。

 今年の辛丑が始まりました。その「辛」の字の如く優しい年ではないかもしれません。しかし、時は我々に新地(さらち)を用意してくれている気がいたします。思い思いの種を植えることで、そう遠くない日に、希望の芽が姿をみせることになるでしょう。

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 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご多幸とご健康を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com

2021年5月限定!旬の魚「メバル」と仏産「ホワイトアスパラガス」が一堂に会します。

 磯釣りでも人気を博すメバル。赤・白・黒メバルと見た目にはなかなか区別のつきにくい魚です。Benoitには、これらのメバルよりも、深場に生息しており、ひときわ美味しいと称される「ウスメバル」が青森県下北半島より届いています。津軽海峡の早い潮の流れの中で育ったウスメバルは、クセの無い淡白な白身で、カサゴの仲間らしいぷりぷりの肉質。今旬を迎えている魚で、あまりにも美味なため、和食でも煮付けで人気を博している魚です。

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 この美しく輝くオレンジ色と黒の模様が特徴であり、これが鮮度の目安ともなり、時が経つと色がくすんでくるといいます。別称に「筍(たけのこ)メバル」とあるのですが、ウスメバルが筍を食していることはなく、もちろん似ているというわけでもない。ウスメバルの美味しい時期が、ちょうど筍の美味なる時期と重なることもあり、魚の知識に長けた日本人ならではの旬を迎えた美味しい食材につけてしまう「愛称」のようです。とはいえ、ウスメバルと筍はきっと相性もいいのではないかと思わずにはいられません。

 Benoitでは、フランスの伝統料理にならい調理してゆきます。魚を知り尽くしたフランス漁師さんの料理と言えば、南仏のブイヤベースが有名です。しかし、漁師さんは南仏だけに存在するのではありません。北仏のロワール地方にもいる。彼らの伝統料理は「ショードレ」と名付けられ、トマトではなく、酪農の産地だからこそ、乳製品を使います。

 ウスメバルは、旬だからこその旨味に満ちており、煮てしまってはもったいない。そこで、ぷりっとした身質を生かすように、オリーブオイルを使って表面をパリっと焼き上げ、その後にオーブンを使ってしっとりと焼き上げます。さらに、ハマグリとホッキガイは、白ワインで口を開かせる。この貝の旨味が煮出たジュに、魚のガラから旨味を煮出したジュを加え、軽くクリームを合わせたものが、今回のショードレのソースとなります。

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 さらに、5月限定でフランスから飛行機の乗って届けられるホワイトアスパラガスが、添える旬野菜の仲間に加わります。ホワイトアスパラガスはロワール地方の特産であり、同郷のよしみではないですが、相性は抜群です。

 全ての食材が一堂に会した時、ただ魚介のごった煮のような料理とは一線を画すBenoitのショードレが姿を現します。旬だからこその美味しさを、この機会にお楽しみください。

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Chaudrée de MEBARU et COQUILLAGES

メバルと貝類のショードレ

 プリ・フィックスメニューの魚料理の選択肢の中で、ランチは+1,500円、ディナーでは+1,000円にてお選びいただけます。しかし、入荷に限りがあるため、ご予約の際にご希望の数量をお伝えいただけると幸いです。※青森県下北半島のウスメバル、貝類のハマグリとホッキガイは、天候などによる諸状況により産地変更や貝の種類変更の可能性がございます。自然のものゆえ、ご理解のほどなにとぞよろしくお願いいたします。

 

旬の食材とお勧めの料理・デザートのご案内です。

 万物を育て上げ、四季折々の風はその土地土地に味わいをもたせる。その風のもたらした美味しさこそ「風味」であり、我々はここに「口福な食時」を見出します。そして、旬を迎える食材は、人が必要としている栄養に満ちています。そして、人の体は食べたものでできています。「美しい(令)」季節に春食材が「和」する逸品をお楽しみください。

 詳細は、ブログに綴らせていただきます。お時間のある時に以下よりご訪問いただけると幸いです。

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≪季節のお話「杜若(かきつばた)の役割とは?」≫

 群青と称される「杜若(かきつばた)」が花笑い始めました。花びらを3つ上向きに、うてなを3つ垂れ下がるように、この独特な花姿のこの美しい花は「三英の花」と称され、今も昔も姿はかわりません。古人はこの美しさを見逃しませんでした。多くの歌人が和歌に詠いこんでいます。その中から一首だけご紹介させていただきます。

沼水の あたりも匂ふ かきつばた けふのみ春と みてや帰らむ  藤原定家

 今回の季節のお話は、この「杜若」です。定家はどのような思いでこの花を詠ったのでしょう。勝手気ままな自分の解釈ですが、間違ってもいないような気もいたします。お時間のある時に、以下よりブログをご訪問いただけると幸いです。

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惜春特別プランのご案内です!

杜若(かきつばた)が、垣となり去りゆく春という季節ばかりか、旬の食材をも留めてくれています。2021年5月5日に「立夏(りっか)」を迎え、暦の上では夏を迎えますがまだまだ名残惜しい春の味覚をお楽しみいただきたく、「惜春特別プラン」をご案内させていただきます。心ゆくまで、杜若の想いをお受け取り下さい!

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 最後まで読んでいただき、誠にありがとうございます。

 今年の辛丑が始まりました。その「辛」の字の如く優しい年ではないかもしれません。しかし、時は我々に新地(さらち)を用意してくれている気がいたします。思い思いの種を植えることで、そう遠くない日に、希望の芽が姿をみせることになるでしょう。

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 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご多幸とご健康を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

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2021年4月 季節のお話「杜若 (かきつばた)の役割?」

 宇宙は誕生したのか?自分などには皆目見当が尽きません。その宇宙の中に、無数の惑星が集まり銀河系を形成し、その中に太陽系があり、我々の住んでいる地球があります。地球誕生以来、太陽の周りを公転していることは、この悠久の時の流れのなかで、なんら変わることが無かったはずです。そして、自転することで昼夜があり、公転することで季節というものが生まれました。さらに、地球の地軸が傾いてることで、我々は4つの季節を得ることができたのです。

 このような壮大な話のことなど全く分からなくとも、我々は地球から「季節」という贈り物をいただき、四季折々の移ろいを楽しんでいます。どれほど時が経とうが、多少の温暖化の影響があるものの、季節は毎年のように巡りに巡ってきます。古代日本人もほぼ同じ気候風土の中で生き抜いてきたことを思うと、感慨深いものがあります。

 人類の英知の結晶でもある「暦」があまりにも便利なため、我々は頼りききっています。暦は古代中国から百済を経由して日本に伝来したといい、飛鳥時代の604年に日本最初の暦が作られたと言われています。しかし、かつては月が基準の「太陰暦」であったがために、公転することで生まれる四季とは大きなズレが生じていたはずです。

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 そこで、古人は暦を参考にしつつ、自然の機微を本能で知ることのできる草木や野生動物の動きをかん参考にし、四季の移ろいを捉えていたはずです。和歌に多く詠われる題材であること、そして我々日本人に根付いている「花鳥風月」の想いが、なによりの証ではないでしょうか。

 かつて、今のように暖房機器が充実していない時の冬時期は、日々の生活をするのことがさぞ難儀だったことと思う。火鉢などは気休めであり、手は温められても部屋の気温を上げるほどの力はありません。お屋敷といえども、外界との境は障子(しょうじ)であり、隙間風を思うと今では考えられないほどの寒さの一冬を過ごさなければならなかったはずです。だからこそ、春を待ちわびた。

 

 春の陽射しに誘われるかのように花々は笑い、人々は笑みがこぼれたことでしょう。順を追って花開いてゆく花の中で、日本人にとっての心の花ともいえる「桜」が咲き誇ります。桜が散りゆく時は、すでに晩春であり、待望の春も終わりを迎えることになります。桜から引き継がれた花の笑みは、山吹そして藤の花へ。もう一つ、杜若(かきつばた)へ。

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 夏は、もうすぐそこまで来ている。しかし、春を待ちわびる思いが強いからこそ、喪失感も大きい。この惜春の想いを慰(なぐさ)めてくれるのが、杜若でした。古人は、「かきつばた」の「かき」を「垣(かき)」とみた。生垣、石垣、竹垣のように、仕切りとして意味を持つ「垣」。杜若の「かき」が、春の去りゆくのを引き留めているのだという。

沼水の あたりも匂ふ かきつばた けふのみ春と みてや帰らむ  藤原定家

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 花が美しく輝いていることを「匂(にほ)ふ」といい、ただ咲いているだけではない。湖沼の周りの新緑の「群(むら)」の中に、紫がかった濃い「青」色の杜若が咲き誇っている。夏を迎えたものの、今日は杜若がまだ春を引き留めてくれているではないか。この「群青(ぐんじょう)」に安心したように、定家は家路に就いたのでしょう。惜春の想いが強いからこその、杜若へ願っているのか。定家は、杜若の脇に晩春を見出したのか?見出したかったのか?

 

 気象庁が実施している「生物季節観測」というものがあります。「桜の開花宣言」のように花の開花であったり、ウグイスやセミの初音であったりと、気象庁のスタッフが自らの目と耳を使った確認方法というアナログなもの。この発想と、今まで継続されてきたことは、古人が花鳥風月に季節の機微を捉えようとしたことの名残なのかもしれません。

 昨年末に、この「生物季節観測」の観察対象となる動植物の大幅な削減が発表されました。日本各地に点在する観測地点の自然環境の変化から、観察対象を見つけることが困難になったことが要因です。寂しい気もするのですが、昨今の環境を考えると致し方ないのかもしれません。

 そこで、新型コロナウイルス災禍によって旅行もままならない今だからこそ、家の周りを散策しながら、皆様だけの「生物季節観測」をしてみるのも一興ではないでしょうか?メモにして残しておき、毎年比較することで四季折々の動向を予見できるようになるかもしません。

 杜若の群青、今まさに見ごろなり。さらに、菖蒲(あやめ)も咲き誇っています。どちらも素晴らしく甲乙つけがたいことを称(たた)えるときの表現に、「いずれ菖蒲か杜若」というのがあります。さあ皆様、下の画像は「杜若か菖蒲か」どちらだと思いますか?

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 「菖蒲(あやめ)」と同じ漢字の「菖蒲(しょうぶ)」と「花菖蒲(はなしょうぶ)」もあり、さらに「杜若」が加わると、何が何だか分からなくなってきます。この中で仲間外れは「菖蒲(しょうぶ)」です。この違いは後日にご紹介させていただきますが、5月5日の端午の節句が近いので一言だけ。「菖蒲湯(しょうぶ)」に使う剣先のような葉は、この仲間外れの菖蒲の葉です。

 

惜春特別プランのご案内です!

 杜若(かきつばた)が、垣となり去りゆく春という季節ばかりか、旬の食材をも留めてくれています。2021年5月5日に「立夏(りっか)」を迎え、暦の上では夏を迎えますがまだまだ名残惜しい春の味覚をお楽しみいただきたく、「惜春特別プラン」をご案内させていただきます。心ゆくまで、杜若の想いをお受け取り下さい!

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≪旬の魚「メバル」と仏産「ホワイトアスパラガス」が一堂に会します!≫

 魚を知り尽くしたフランス漁師さんの料理と言えば、南仏のブイヤベースが有名です。しかし、漁師さんは南フランスだけに存在するのではありません。北フランスのロワール地方にもいる。彼らの伝統料理「ショードレ」はどのようなものなのでしょうか。今回は旬のウスメバルを使い、この伝統を踏襲した一皿がBenoitに登場します。それも、5月からはフランス産のホワイトアスパラガスとともに!

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 最後まで読んでいただき、誠にありがとうございます。

 今年の辛丑が始まりました。その「辛」の字の如く優しい年ではないかもしれません。しかし、時は我々に新地(さらち)を用意してくれている気がいたします。思い思いの種を植えることで、そう遠くない日に、希望の芽が姿をみせることになるでしょう。

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 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご多幸とご健康を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

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2021年4月 Benoit特別プランとお勧め料理のご案内です。

〽 夏もち~かづく♫ は~ちじゅうはちや♪ 野にもや~まにも♩ わ~か葉が茂る♬

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 日本の唱歌でもある、この「茶摘み」の歌は、誰しもが子供のころに耳にしたことがあるのではないでしょうか。丘陵に理路整然と植栽されている茶畑。春の陽射しによって輝きをはなつ、その淡い緑の美しさを目にした時、ついつい口ずさんでしまうのが、この歌なのではないでしょうか。ところで、この歌の中にある「はちじゅはちや」は「八十八夜」と書くのですが、何が八十八夜なのでしょう。

 中国から伝わった「二十四節気(にじゅうしせっき)」とは、1年を24に分割し、それぞれの期間の特徴を漢字二文字で言い表したものです。「立春」や「春分」などが、これにあたります。これをさらに細分化され、日本風にアレンジされたものが「七十二侯(しちじゅうにこう)」です。例えば、3月20日に迎える「春分」は、初侯(3月20~24日)「雀始巣(雀が巣を作り始める)」、次侯(25~29日)「桜始開(桜が咲き始める)」、末侯(30~4月4日)「雷乃発声(雷が鳴り始める)」というように。

 これらは、暦の中で農耕の目安となるように自然の機微を捉えて作り上げた、古代中国の賢人の英知の結晶ともいえるもの。この二十四節「気」と、七十二「侯」がもととなり、「気候」という言葉が生まれているのだといいます。古代中国から伝来したこの概念は、日本で更なる発展を遂げることになります。古代日本の賢人は、「雑節(ざつせつ)」を暦に加筆したのです。

 「暑さ寒さも彼岸まで」とはよく耳にします。この「彼岸(ひがん)」というのは、なんとなく仏教の色濃くインドから伝わったかのようですが、実は日本独自の考え方であり、雑節なのです。2021年は3月17日に「春の彼岸」を迎えました。そして、立春から数えて88日目の日、2021年は5月1日、この日を古人は雑節「八十八夜」としたのです。

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 日本の先人は、日本の気候風土を鑑み、この雑節というものをこしらえることで、我々にメッセージを遺しました。極楽浄土がある「彼岸」は東にあると考えられていたため、今我々が生きている地「此岸(しがん)」から見て、太陽が真東から上ってくる春分秋分の前後3日間、計7日間を「彼岸」としています。お墓参りでご先祖様に感謝を伝えることばかりではなく、「暑さ寒さも彼岸まで」というように、季節の変わり目であることを我々に教えてくれる。とかく体調を崩しやすいからこそ、体調管理に留意するように、と。では、「八十八夜」は何を伝えようとしているのでしょうか。

 春の陽気に誘われるかのように樹々の芽はほころび、花開いていく時期で、冬の記憶も遠くなる頃です。そこで、先人は農を生業とする人々に「油断することなかれ」と教えてくれるのが、この雑節です。「八十八夜の別れ霜」や「八十八夜の泣き霜」といい、まだまだ遅霜には気をつけなけなさいと、注意喚起をしていたのです。

 遅霜ということは、気温が急に下がることであり、体調を崩しやすくもなる。八十八夜に摘んだお茶を飲むと長生きするという言い伝えは、新茶が美味しいというばかりではなく、殺菌効果もあるお茶を飲むことを推奨しているのかもしれません。なんという先人達の知恵なのでしょうか。

 

営業時間変更のお知らせです。

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 12日より発動された「蔓延防止等重点措置」を鑑み、誠に勝手ながら、Benoitの「営業時間を短縮」させていただきます。皆様には、ご不便をおかけいたしますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。期限につきましては、都の要請に従わせていただきます。

ランチ

1130分から1530 (1400 ラストオーダー)

ディナー

1700から2000 (1900 ラストオーダー)

 

八十八夜特別プランのご案内です。

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 春の不安定な寒暖な日々を、皆様には無事息災に乗り切っていただきたいとの思いを込め、「八十八夜特別プラン」をご案内させていただきます。先人の知恵にならうも、新茶ではなく春の食材でこしらえた料理の数々は、今我々が欲している栄養が満ち満ちており、それを美味しくお召し上がりいただきたい。笑顔で「語らう」食事は、心身ともに活力をみなぎらせることとなり、昨今のウイルス災禍に対抗する最良の手法かもしれません。お一人様でのご利用も喜んで承ります。適度に自分が「語らい」に伺わせていただきます。

 そこで、日頃より並々ならぬご愛顧を賜っている上に、自分よりご案内している長文レポートに目を通していただけている皆様の労に報いるため、特別価格でのご案内です。期間は、メールを受け取っていただいた日より、202151()まで。ご予約は、自分へのメール(kitahira@benoit.co.jp)をご利用ください。お急ぎの場合には、Benoitメールアドレス(benoit-tokyo@benoit.co.jp)より、もちろん電話でもご予約は快く承ります。

八十八夜特別プラン

ランチ

前菜x2+メインディッシュ+デザート

6,000円→5,000円(税込/サービス料別)

ディナー

前菜x2+メインディッシュ+デザート

8,600円→6,800円(税込/サービス料別)

※プリ・フィックスメニューの料理内容は、当日にメニューをご覧いただきながらお選びいただきます。ご希望人数が8名様以上の場合は、ご相談させてください。

 

シャンパーニュAYALAのミレジメを特別価格でいかがですか?

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 旧名シャンパーニュ地方のアイ村に1860年から本拠地を持つ老舗シャンパーニュメゾン「AYALA(アヤラ)」。彼らのシャンパーニュの特徴はシャルドネ種にあり。アイ村のシャルドネは果実味があり、酸味が柔らか。そこに、ピノ・ノワール種を合わせてつくる、その作りは常にエレガントであり人々を魅了し続けています。

 そこで、Benoitシェフソムリエ永田からのお誘いがございます。この美味なるシャンパーニュをBenoitの料理とともに楽しまれませんか、それも特別価格にて…

AYALA BRUT MILLÉSIMÉ 2007  11,000(税込/サービス料別)

 良年のみ醸されるミレジム。2007年の出来は称賛に値する、素晴らしい香りと堂々とした味わいピノ・ノワールの力強さとアルコール感に、シャルドネによる魅力的なフレッシュ感とエレガントさが加わっています。 ハチミツ・アカシア・トースト香・クリのデリケートな香りです。このミレジムはアイ村・特級のピノ・ノワール種をベースとしており、熟成感も感じられ、素晴らしい香りと堂々とした味わいの見事なシャンパーニュです。

※本数に限りがございます。ご希望の際には、このメールへの返信でご希望本数をお伝えいただけると幸いです。

 

北平のBenoit不在の日

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 私事で恐縮なのですが、自分がBenoitを不在にしなくてはならない4月の日程を書き記させていただきます。滞りがちだったご案内を充実させるべく、執筆にも勤しませていただきます。ご不便をおかけいたしますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。

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 上記日程以外は、Benoitを優雅に駆け回る所存です。自分への返信でのご予約はもちろん、BenoitのHPや、他ネットでのご予約の際に、コメントの箇所に「北平」と記載いただけましたら、自慢の料理の数々を語りに伺わせていただきます。自分が不在の日でも、お楽しみいただけるよう万全の準備をさせていただきます。何かご要望・質問などございましたら、何気兼ねなくご連絡ください。

 

旬の食材とお勧めの料理・デザートのご案内です。

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 万物を育て上げ、四季折々の風はその土地土地に味わいをもたせる。その風のもたらした美味しさこそ「風味」であり、我々はここに「口福な食時」を見出します。そして、旬を迎える食材は、人が必要としている栄養に満ちています。そして、人の体は食べたものでできています。「美しい(令)」季節に春食材が「和」する逸品をお楽しみください。

 詳細は、ブログに綴らせていただきます。お時間のある時に以下よりご訪問いただけると幸いです。

kitahira.hatenablog.com

 

最後まで読んでいただき、誠にありがとうございます。

今年の辛丑が始まりました。その「辛」の字の如く優しい年ではないかもしれません。しかし、時は我々に新地(さらち)を用意してくれている気がいたします。思い思いの種を植えることで、そう遠くない日に、希望の芽が姿をみせることになるでしょう。

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 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご多幸とご健康を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com

2021年4月5月 Benoitの特選食材とお勧め料理のご案内です。

ぬしなくて 荒れにし屋戸の 庭のおもに ひとり菫の 花さきにけり  藤原公重(きんしげ)

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 春の陽気に誘われるかのように順を追って咲き誇る花々は、名にし負うものばかり。あまりにも豪華絢爛であるからか、足元にひっそりと花笑っている「菫(すみれ)」を見落としてしまいがちです。日本では北海道から沖縄県までの広範囲に自生していながら、その紫色の小さな花は、あまりにも控えめな姿のため、園芸品種として育種されている「パンジー」の方が馴染み深いものです。

 しかし、春の花々が咲き花落とす中に、ひっそりと咲くスミレの美しさを、古人は見逃しませんでした。日本最古の歌集「万葉集」にも、しっかりと名が遺されています。さらに、美しいばかりではなく、葉や花は食することができるため、山菜採りのひとつとして人気を博していたのではないかとも思う。

 藤原公重は、平安時代後期に活躍を見せた歌人です。自分の住居を言い表す場合は「宿(やど)」ではなく「屋戸(やど)」という。お役目で地方に赴任していたのでしょうか、長きにわたり留守にしていた我が家に帰り着いた時に、手入れのされていない庭に、ひっそりと咲いている紫色の小さな花が目に留まる。あ~スミレだけが私を待っていてくれたのだ…

 荒れ放題の庭ではあるものの、何かしらの花は咲いていたであろうに、スミレに心奪われるのは、何か奥ゆかしく咲いている姿に、得も言われぬ感慨深さ、可憐な美しさを見出したのだと思う。

 ひそやかに咲くスミレの花は、それに気づいた人の心を慰(なぐさ)める。

 

 誰に語りかけるわけでもなく、ひっそりと収穫を待つ旬の食材は、それに気づいた人の心を慰める。そして、「口福な食時」のひとときは、私たちの心の豊かさをもたらしてくれる。そこへ「語らい」が加わることで、さらなる効果をもたらすことでしょう。

 では、旬の食材とお勧めの料理/デザートをご紹介させていただきます。

 

イタリアから飛行機に乗って「グリーンピース」が届いています。

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 日本でもお馴染みの春食材の「グリーンピース」。ところが、缶詰の普及がこの食材への偏見を導き、好き嫌いの多い食材になってしまったことは否めません。しかし、鮮度の良いグリーンピースの美味しさは格別で、春にしか楽しむことができない旬の味わいです。

 グリーンピースが完熟すると「えんどう豆」。未熟だから栄養が貧弱かと思いきや、このグリーンピースの栄養価はまさにエリート級です。豊富なビタミンB群は糖質や脂質の代謝を盛んにし抵抗力を、さらにビタミンCとの相乗効果で感染症から守ってくれます。特筆すべきはカリウムと食物繊維の豊富さです。便秘解消、生活習慣病の予防にも最適。まさに春の美容と健康のためにあるような食材です。

 国産の食材を愛する自分ですが、今回ばかりは驚きの美味しさを誇る、地中海の太陽をさんさんと浴びて育ったイタリア産に席を譲るしかありません。船便では間に合わないため、飛行機で運んできた逸品です。もちろん、品種が違うといえば違うのですが、あまりにも国産を凌駕する甘みのある美味しさは、一食の価値あり。生の鞘(さや)を口にすると、鞘の筋が口中に残るものの、春らしい甘さを堪能しながらポリポリと食べることができるのです。鞘がそれほどまでに美味しいということは、中の粒粒はいかほどのものか。

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Délicat velouté de PETITS POIS et fromage frais

グリーンピースのスープ リコッタチーズ

※ランチとディナー、ともにプリ・フィックスメニューの前菜の選択肢に名を連ねております。

 

≪さっぱり分かり難い料理「ブランダード」、しかしこれが美味なり。≫

 ヨーロッパでは、北欧を主として、塩をたっぷりとまぶし釘が打てるほどに乾燥させ保存性を高めたタラ、「Morue(モリュ)」と名付けられた食材があります。これをいかに美味しく食べようかという、フランスの伝統と知恵が作り上げたのが、ブランダードという料理です。同じような料理が、ヨーロッパ各国にあり、大航海時代で言語が伝播するように、世界中に拡がっていきました。いったいどの地が発祥なのか、今となっては知る由もありません。

 日本は周囲を海に囲まれており、鮮度良く美味しいマダラが手に入る環境にあるため、Benoitのブランダードは塩干タラを使用しません。北海道のマダラに塩をまぶし一晩お休みです。これにより、、身が引きしまるのと同時に、旨味が出てきます。このタラを少しばかり塩抜きし、牛乳とニンニクの中で煮たものを、ほぐしたジャガイモと混ぜ合わせます。これに半熟卵をのせる。ジャガイモの甘さとホクホクの食感、そこにタラ特有の繊維っぽい身質と旨さが絡みあう。半熟卵のとろりとくる黄身との相性も抜群です。さらに、クリームにニンニクを風味付けしたものをソースとする。これがBenoitスタイルです。

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Œuf mollet, brandade de MORUE

鱈のブランダードと半熟卵

※ランチのプリ・フィックスメニュー、前菜としてお選びいただけます。

 

≪マダイのギリシャ風…どんなものがギリシャ風?≫

 マダイは、表面を炙るようにすることで、香ばしさを加え旨味を引き出します。しかし、この前菜は、マダイを凌駕する野菜の美味しさが際立っているのです。セロリ、ニンジン、タマネギ、カリフラワー、それにラディッシュ。レモンにコリアンダーの種を使い、絶妙な火加減で調理してゆき、冷蔵庫で一晩休ませます。コリアンダーパクチーのことで、苦手の方の多い香草かと思います。しかし、このコリアンダーの種は、うんともすんともいわない味気ない食材。ところが、野菜とともに熱を加えることで、野菜本来の甘さを引き出すのです。

 野菜それぞれの食感がリズミカルに口中に響き、野菜それぞれが甘さ旨さの旋律を奏でます。さらに、グレープフルーツの甘ほろ苦さ、マダイの美味しさが一加わることで、皆様を「口福な食時」へと誘(いざな)います。Benoitの窓越しから、エーゲ海を望めるかもしれません。

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DORADE marinée, légumes à la grecque

真鯛と野菜のマリネ ギリシャ

※ディナーのプリ・フィックスメニュー、前菜としてお選びいただけます。

 

Benoit、春の目覚めは讃岐から!

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 香川県農業試験場で試験栽培を重ねた末、2005(平成17)年にオリジナル品種として誕生したのが「さぬきのめざめ」です。アスパラガスは、種をまいて数ヶ月で収穫できる野菜ではなく、植えてから収穫までに3年間を要します。この期間、アスパラガスはわさわさとした葉を成し、香川県ならではの陽射しを十二分に受けることで、根に栄養を蓄えていき枯れてゆく。これを3年繰り返すことで、大地に根を広げてゆかねばなりません。そう、まだ産声を上げたばかりの特選食材なのです。

 今回Benoitに送っていただいているアスパラガスは、県庁所在地のある高松市の南に位置している香南町から。この地の畑を展開している、「薫る農園」さんからです。栽培者は、香川の農業女子として活躍中の河田薫さん。女性だからもてはやされているのではない。彼女の名声が名ばかりでないことは、丹精込めて育てあげた野菜を手にした時に実感し、口にした時には本物であること確信を得ることになる。穂先がきゅっと締まった美しい姿、根元までやわらかいが歯ごたえはシャクシャク。そこに、鮮度の良さが加味されます。

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 河田さんは、「さぬきのめざめ」栽培方法のポイントは、「高畝(たかうね)」と「畝間(うねま)」、そして「灌漑と温度」だと教えてくれました。この品種は、日本全国で栽培されている品種(ウェルカム種)に比べて表皮が薄く柔らかいため、病気に弱く、ハウスで栽培しなくてはなりません。さらに、香川県独自の高畝栽培です。通常、県外での栽培方法は、地面からにょきにょきとアスパラガスが姿を見せる「平畝(ひらうね)」での栽培。しかし、香川県では、「高畝」にして栽培しています。地面から60cmの高さまで土を盛り、そこにアスパラガスの苗を植えて栽培します。高畝にすることによって、アスパラガスはのびのびと根を張ることができ、地下茎が広範囲に広がり、地中の栄養分をより多く蓄えることを可能とします。

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 いただいた畑の画像、見事なアスパラガスに目を奪われてしまいますが、畑の様子をご覧いただきたいです。高畝の様子に加え、この広々とした空間ですよ。効率を重視するのであれば、畝(うね)と畝の間隔を狭くすることで、苗をより多く植栽し、葉を剪定するように育てていきます。しかし、彼女は畝の間を広げる方法を選んでいます。通気性を重視し、さらには、余計な剪定はせずアスパラガス本体がのびのび元気に育つ。それにより、自然に持ちうる病虫害への抵抗力が増すことになる。さらに、通気性の良さは害虫がつきにくいという利点もあるようです。

 畝を高く畝間を大きくとることで、アスパラガスはのびのびと地下茎を拡げることができる上に、成長したアスパラガスは剪定する必要が無いため、心置きなくわさわさと茂ることを許されます。だからこそ、ぐんぐんと育ち、より美味しくジューシーなアスパラガスが育つのだといいます。

 そして、もう一つ重要なことが「灌漑と温度」です。品種改良の末に生み出された「さぬきのめざめ」ではあっても、もとは地中海東部が原産の野菜です。特に夏場は、少量をこまめに灌漑を実施する必要があり、気を抜けないといいます。さらに、ハウス栽培だからこその夏場の温度管理も忘れてはいけないのです。

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 河田さんは、アスパラガスの芽吹きを促すことを、「起こす」と表現しています。この野菜は平均気温が15℃を越えないと、新芽が動き出さないといいます。叱咤激励の下でたたき起こすのではなく、外気を取り入れながらハウスの温度を調節し、その年の天候を見極めながら、ハウスごとに優しく春芽を「起こす」てゆくのです。そして、目覚めたアスパラガスは、ここぞというタイミングで収穫され、選別し、一晩冷蔵庫で休憩することで勇んだ成長を落ち着かせ、Benoitへ向けて旅立ちます。

 香川県の自然と、河田さんの弛まぬ努力が育んだ「春一番の美味しいめざめ」は、東京のBenoitで出会うのは、北海道の天然サクラマスなり。

 

≪大海原から戻ってきたサクラマス!≫

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 北海道の雄大な河川で生まれた稚魚が、1年ほど母なる川で育まれた後に、川を下り大海原へと泳ぎ進みます。この時、川に居残る河川滞在型と海に向かう降海型に分かれるのです。サクラマスは降海型であれば、この種の滞在型はヤマメと呼ばれます。どうゆう理由で2つの型に分かれるのか?いまだ謎のまま…これがサケ目サケ亜科に分類される「鱒(マス)」の面白いところ。仲間にイワナがいるのですが、これは一生を川で過ごすため陸封型などだといいます。

 鮭はサケ目サケ科であり、鱒のサケ亜科との違いは何なのか?簡潔に言ってしまうと、川で孵化した稚魚が、稚魚のままもれなく全てが海に下るものが鮭で、稚魚が川に居残り成長してゆくのが鱒。前述したように、鱒の一部は海に降り立ちますが、鮭が3年を要して戻ってくるのに対し、鱒は1年であること。そして、共通しているのは、頑(かたく)なな母川回帰であること。鮎はきれいな川を選んで遡上するのに対し、鮭の仲間はどんな困難が待ち受けようとも生まれ故郷(母川)に帰ってくるのです。

 海に降り立ったサクラマスの向かう先は、ベーリング海峡です。荒れ狂う海でありながら、餌となるオキアミが豊富であることで、多くの魚を呼び込むようです。このオキアミや小魚をパクパクと食し、河川滞在型とは雲泥の差ほどの体格へと大きく成長し、1年後に戻ってくるのです。この行動は範囲と、食してるものの違いこそが、天然と養殖との差を生み出します。

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 皆様よりサクラマスのメインディッシュのご要望が入り、サービススタッフが希望料理とコースの流れをキッチンに伝えます。これを合図に、前菜の仕上げが始まります。順番にもよりますが、ひとつ手前の料理がキッチンを旅立ったと同時に、サクラマス料理の準備が始まります。切り身に塩をふって一呼吸。焼の担当のスタッフが、皮目から鉄板をつかって焼きを入れます。

 びちびちと心地よい音色を奏でながら、熱が入ることで切り身の色が変わってゆく。さあ、ここでひっくり返す、鉄板の外で。反対側は焼かずに、バットに移して、温かい小部屋へ移動します。オーブンではなく、温かい小部屋で一休みです。この段階では、皮目からしか焼いていないので、下の画像の通り2トーンの色彩です。

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 皆様が、食事のペースを見計らい、サービススタッフがキッチンへ、サクラマス料理の仕上げを伝えます。付け合わせのアスパラガス担当者から、仕上がりまでの時間がシェフへ伝えられる。傍らで、その時間を耳にした焼き担当者が動き出す。温かい小部屋で休息中のサクラマスを取り出し、皮目から再度鉄板で焼きを入れる。先ほどとは音が違う。パリっとしたところで、ひっくり返し、数秒で鉄板からバットへ移す。これで、焼きの作業が終了です。

 焼き過ぎない、生ではない。この余熱を使いながらの絶妙な火加減こそ、サクラマスの美味しさを十二分に楽しむことのできる調理方法。パリッとしながら、身はほろっとしつつも、中はしっとりとしている。サケとは違う、優しい旨味を感じ取ることができるのです。

 「桜」を冠するサクラマスだからこそ、旬の食材グリーンアスパラガス「さぬきのめざめ」を合わせたい。塩ゆでにしたものと、生のもの。春の息吹を感じることのできるアスパラガスの新芽には、得も言われぬ旨味があるものです。湯がいただけでも美味しいですが、今回はさらに、スライスした生のアスパラガスを添えます。しゃりしゃりとした食感と、爽やかな生だからこその味わいは、単調になりがちな料理に、心地良い春の風を吹き込ませたかのよう。

 ソースは2種類です。卵黄をホワホワにしたサバイヨンという黄色のソース。もうひとつはエシャロットをバターとともにゆっくりと熱を加え、甘さと旨味を十二分に引き出すように仕上げ、ヴィネガーで心地良い酸味を加味した茶色のソース。それぞれが、サクラマスとの相性は抜群です。さらに、この2つのソースをお皿の上で合わせることで、また違った美味しさをお楽しみいただけることができるのです。あえてシェフが、2種のソースを混ぜ合わせないことには、理由がありました。

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SAKURAMASU sur la peau, asperges vertes cuites et crues

サクラマスポワレ グリーンアスパラガスさぬきのめざめ

※ランチとディナー、ともにプリ・フィックスメニューの魚料理の選択肢に名を連ねております。

 

≪春を告げる「ホワイトアスパラガス」がBenoitに登場です!≫

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 春を代表する食材であり、なかなか自宅では調理しない食材の代表が、この「ホワイトアスパラガス」ではないでしょうか。3年以上かけて地下茎に栄養を蓄えたアスパラガスが、春の陽射しに誘われるかのように、地表に顔をのぞかせます。アスパラガス新芽の成長は目に見えて早く、ぐんぐん背丈をのばしてゆきます。太陽の恩恵を十二分に受けたものが、グリーンアスパラガスであれば、陽射しをシャットアウトし、軟白化するように育てあげたものがホワイトアスパラガス。緑にはない、軟白化の独特なほど苦さは、冬眠の余韻にひたっている我々の体を目覚めさせてくれるようです。

 国産でも、美味しいホワイトアスパラガスが収穫されています。しかし、あまりにも優しい風味なために、フランス料理へと姿を変えた時には、他の食材に埋もれてしまい、春らしさを感じなくなるのです。そこでBenoitでは、鮮度を犠牲にしてでもフランスから空輸されてきた逸材を選びました。春らしい味わいでもある「エグさ」が、フランス料理のソースと相まった時、そこには春を実感できるマリアージュが誕生しています。

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≪「ホワイトアスパラガス」には「清流美どり」、そしてこれです!≫

 フランスから届くホワイトアスパラガスは、鶏肉とペアを組むようにBenoitのメニューに登場しています。ホワイトアスパラガスとの相性を考えながらシェフ野口は、鶏肉を選びました。しかし、お互いの味を引き立て合うようなマリアージュを成すには、それ相応の鶏肉の美味しさが必要だったのです。そこに名乗り出たのが、岐阜県の特別飼育鶏「清流美どり」でした。

 岐阜県濃尾平野にとって不可欠な岐阜三川の一つ、「揖斐川」の上流域で育まれた、真っ白な美しい羽並をもつ「清流美どり」。育てる過程で、一切の抗生物質や抗菌物質などを与えることなく育ててゆきます。自然に近い環境を整えた鶏舎は、内外を問わず除草剤も使用せず、徹底した清掃を行うことで、鶏にストレスを与えないように心がけています。

 地鶏にはない「清流美どり」の美味しさが、そこにあります。やわらかさで旨味に満ちたムネ肉に、ジューシーで弾力のあるモモ肉。大きい鶏にもかかわらず、シェフは何のためらいもなく、ムネ肉とモモ肉をともに盛り付けるのです。美味しさの違う2つの部位を知ることこそが、この鶏の本来の美味しさを知ることになる。

 ホワイトアスパラガスとウイキョウをピューレを盛りつける。そして、低温調理でしっとりと焼き上げた「清流美どり」のムネ肉とモモ肉。軽く茹で、焼き色を付けることで香ばしさをくわえたホワイトアスパラガスとウイキョウを忘れてはいけない。全てを結び付けるのに必須なのが、レモンでした。

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 広島県、瀬戸内海に浮かぶ離島「大崎上島(おおさきかみじま)」。サンサンと降り注ぐ陽光に温暖な気候という恵まれた環境の中、飽くなき探求心と努力を積み重ね、類まれなる品質のレモンを育て上げているのが、岩﨑さんご一家です。陽射しばかりでなく、愛情もたっぷり受けて育ったレモンは、まろやかな酸味が特徴で、そのまま食すると皮のほろ苦さと相まって、なんと美味しいことか。すっぱさに顔をしかめる必要はありません。さらに、摘んだそのままを届けていただくため、表皮のワックスを取り除く必要もありません。美しい輝かんばかりの黄色の果皮。レモン同士をこすった時に、透きとおった爽やかな香りが放たれる。そのまま目を閉じると、遠く潮騒(しおさい)が耳に届き、レモン畑から一望できる瀬戸内海に浮かぶ島々の美しさが脳裏に浮かぶ。この食材無くして今回の料理はなかった、そう言い切ってもよいかもしれません。

 春の陽射しが漏れ入る昼時には、あ~白ワインが呼んでいる…

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VOLAILLE rôtie aux agrumes, asperges blanches

鶏のロースト 柑橘風味 ホワイトアスパラガスとウイキョウ

※ランチとディナー、ともにプリ・フィックスメニューの肉料理の選択肢に名を連ねております。

 

≪西の「あまおう」、東の「とちおとめ」、やはりBenoitは「紅ほっぺ」。

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 多くのイチゴ品種が誕生する中で、1980年代には≪東(栃木県)の「女峰」、西(福岡県)の「とよのか」≫」という二大勢力が台頭するも、ここに「章姫」が割り込んできます。時が過ぎ、2000年前後ともなると、≪東(栃木県)の「とちおとめ」、西(福岡県)の「あまおう」≫へと移り行く。そして、ここに章姫と「紅ほっぺ」が姿を見せます。日本のイチゴ生産量の1位栃木県2位福岡県に負けじと健闘しているのが、地理的にも中間に位置している静岡県(4位)。イチゴ勢力図を二分する中に、割って入るかのように登場する≪章姫≫と≪紅ほっぺ≫という品種を生み出したのも、静岡県。甘さでは「あまおう<とちおとめ」、酸味では「あまおう>とちおとめ」。「紅ほっぺ」はどちらも中間に位置しているのだといいます。甘みと酸味を兼ね揃え、酸味があるからこそ甘みも冴えるのです。

 静岡県掛川の「赤ずきんちゃんおもしろ農園」の赤堀さんが丹精込めて育て上げた「紅ほっぺ」は、みずみずしくしゃくしゃくの食感であることはもちろん、心地良い酸味がイチゴの優しい甘さを引き立てています。甘いだけではない、イチゴの優劣はこのバランスによって決まる。Benoitに送っていただいているイチゴの品質にはただただ脱帽するのみ。豊潤な香りをはなちながら、美しい輝かんばかりの赤い色、口中いっぱいに広がる豊潤な甘さに心地よい酸味、いかに丁寧に育てられた「紅ほっぺ」であることか。自分のみならず、パティシエチーム皆が「美味しい」と納得の逸品です。

 今年は、イチゴパフェにように盛り付けてゆきます。既製品のイチゴのシロップもピューレも使用しない、赤堀さんの「紅ほっぺ」だけを使用する徹底ぶり。イチゴを潰してゆきマルムラード、煮出すようにとろみのあるジュース、これでもかとイチゴのみで仕上げたソルベ、何ためらうことなく贅沢に「紅ほっぺ」を使うからこその美味しさがります。

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 バニラビーンズをたっぷり加えた濃厚なバニラアイスクリーム一食の価値あり!さらに、軽やかな生クリームが味わいをまとめてくれているようです。そのままでも十分に美味しいデザートですが、添えているイチゴを煮出したジュースを加えると、はなたれる芳醇な香りに魅せられることとなるのです。

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FRAISE MELBA

静岡県産イチゴ紅ほっぺのメルバ

※ランチとディナー、ともにプリ・フィックスメニューのデザートとして、+800円でお選びいただけます。

 

≪三役揃い踏み、旬の柑橘が一堂に会します!≫

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 毎年のようにこの時期になるとBenoitのメニューに登場するのが、柑橘のデザート。今まさにこの時期だからこそ可能な3つの柑橘が、一堂に会するのです。

 熊本県天草の「不知火(しらぬい)」。彼の地は、県下随一の柑橘の産地であり、Benoitでは毎年のようにお世話になっております。今は太陽をさんさんと浴びた路地ものが届いています。どれほどの産地で、どれほどの美味しい柑橘を育んでいるのか。詳細は以前に綴ったブログを以下より参照ください。

kitahira.hatenablog.com

 宮崎県綾町は、完熟キンカン「たまたま」。県内での栽培が沿海部に集中している中で、Benoitは内陸の綾町です。なぜ彼の地を選んだのか?歴然とした理由がありました。話の内容は「日向夏」ですが、綾町のことをブログでご紹介させていただきました。

kitahira.hatenablog.com

 この完熟キンカン「たまたま」と広島県大崎上島の「瀬戸内レモン」はコンフィという調理方法をとります。「瀬戸内レモン」は、ホワイトアスパラガスと鶏肉の料理のご案内を参照ください。ここでは、コンフィをご紹介させていただきます。料理とデザートのそれぞれを担う両者が、同じ食材でもいかに違うのか?コンフィも手順によってここまで変わるのか?気になる方はぜひ以下よりブログをご訪問いただけると幸いです。

kitahira.hatenablog.com

 

2021年、新作の柑橘デザート!≫

 今年の柑橘デザートは一味も二味も違います。

 特選食材の柑橘3点まとめて果皮の風味を生かしたマルムラードを下に、「不知火」の果肉、「瀬戸内レモン」と完熟キンカン「たまたま」のコンフィと、順に盛り付けた後に、ぷるぷるの3種の柑橘ゼリーを中央にあしらいます。これだけでも春を感じることのできる柑橘の風味が満ち満ちた、甘さとほろ苦さの相まったデザートです。

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 さらに、今回はミントの登場です。一枚一枚とミントの葉を手で摘んだ後に、ミントが香る爽やかさたっぷりのソルベと、粒の大きいかき氷のようなグラニテに、さらにミントペーストへと仕上げ、盛り付けた柑橘の上にのせてゆくのです。

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 フルーツの盛り合わせにミントを飾ることはあっても、ここまでミントで仕上げた主張あるものを柑橘と盛り付けることは、ありそうでなかった気がします。「日本の柑橘はやはり美味しいな…」と感じながら、思いのほか柑橘とミントの相性が良いことに気付かされます。

 ん?Benoitシェフパティシエールの田中が、試食の際にこんなことを言っていた。「交互に試してください」と。柑橘とミントのことかと思いきや、彼女が伝えたかった「交互」とは、この「柑橘とミントのペア」と「ガトー・バスク」のことだったのです。

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 バターをしっかりと使って焼き上げた生地は香ばしく、外はサクサク、中はしっとりとしており、さらに柑橘の風味が生きている。このガトー・バスクだけでも十分に美味しい。しかし、「交互」に口にした時、田中が我々に伝えたかったことを理解することになるのです。マリアージュとはかくなるものか、と。いったいどう考えたら、このような発想が生まれてくるのでしょうか。

 今はフレッシュの果肉は「不知火」ですが、時おいて同じ天草の「天草晩柑」へと変更いたします。これはこれで「不知火」とは違った風味のデザートに仕上がる予定です。

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AGRUMES D'ICI, granité à la menthe

シトラスのコンフィ ミントのグラニ ガトー・バスク

※ランチとディナー、ともにプリ・フィックスメニューのデザートとして、+500円でお選びいただけます。

 

 最後まで読んでいただき、誠にありがとうございます。

 今年の辛丑が始まりました。その「辛」の字の如く優しい年ではないかもしれません。しかし、時は我々に新地(さらち)を用意してくれている気がいたします。思い思いの種を植えることで、そう遠くない日に、希望の芽が姿をみせることになるでしょう。

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 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご多幸とご健康を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com

2021年3月 Benoit特別プランとお勧めシャンパーニュ、そして旬の食材のご案内です。 

 2021年3月14日、例年よりも早く東京都の開花宣言が発せられました。靖国神社の境内にある標本木を、気象庁の方が「1、2…5輪。開花ですね」と数えてゆく光景は、この時期の風物詩といっても良いのではないでしょうか。この桜の開花宣言や、ウグイスやセミなどの初音などは、「生物季節観測」という名称で気象庁が実施している公式発表です。アナログとも思える目視や耳を使った確認方法ですが、桜の花を見ることで春の訪れを実感することを思うと、あながち的外れなことでもありません。

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 昔々の日本では、いつどのようなタイミングで農作業を始め、終えれば良いかを、自然の動植物に頼っていたようです。桜の開花は、田起こしを始めることを教えてくれます。東北の方では桜の開花が遅いため、コブシの花が咲いたこを目安としていたといいます。そのため、この樹は「田打ち桜」という別称を持っています。

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 「さ」は「農耕の神」を、「くら」は「座」を意味します。そう、山より舞い下りた神が宿る場が、「さ・くら」です。農耕民族である日本人が桜の開花に一喜一憂する理由は、日本人のDNAに刻み込まれた、古代の「田の神」信仰なのでしょう。神が舞い降りたことへの感謝の気持ちを表した「お祭り」こそ、「花見」のルーツなのだといいます。

 現代人は、「暦(こよみ)」という世紀の大発明があまりにも便利なために、この暦に支配されている感があります。それに対して、自然界に生きる動植物は、我々が見失ってしまっている四季折々の機微を察して行動しています。そこで、彼らの助けを得ながら季節の移ろいを捉えてゆこうというのが、今の「生物季節観測」です。

 気象庁管轄下の全国の気象台と測候所を合わせた58地点で、鳥や昆虫などの動物23種と草木の植物34種を、場所によって観測対象は違えども、1950年年代より70年もの歳月を観測し続けてきたのです。その中でも最重要な植物がサクラであることは、58地点全てで見届けてきたことが物語っています。

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 昨年の2020年11月10日、この生物季節観測の対象が大幅に縮小することが発表されました。開花についてはウメとサクラはもちろん、アジサイとススキを残しました。黄葉・紅葉の対象としてイチョウとカエデ。この6種のみです。動物については、全廃が決定されました。

 昨今の住環境の変貌に加え、地球温暖化も影響しているのでしょう。動物を探すことが困難になったことが原因のようです。確かに、都内でウグイスの鳴き声を耳にしたことはありません。生物学的に言えば、ウグイスの生息数が激減しているか、すでに他地域へ移り住んだという結論で良いですが、生物季節観測では生存地域の確認が目的でないので、致し方ないのかもしれません。

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 今年中に、気象庁はどのような基準で生物季節観測を続けてきたのかを公表してくれると言います。我々が四季の機微を捉えるためのひとつの指針としたいものです。そして、マスクを付けながらの散策ではありますが、周囲に芽吹く、花開く草木を、皆様自身でそのリストに加筆してゆくことをお勧めいたします。翌年には、そのリストが皆様に移ろいゆく四季の美しさを教えてくれるはずです。

 

営業時間変更のお知らせ。

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 昨今の新型コロナウイルス災禍は、飲食店の弱さをまざまざと見せつけられました。人生を豊かにする上で、飲食店はなくてはならないものですが、平穏無事な状況下でしか成り立たないということ。順風満帆とは程遠い状況下に陥りました。今のBenoitは、この災禍の嵐に抗すべく、急ぎ帆を閉じ荒海の中に漂っている帆船のようなものでしょうか。

 自走できる船とは違い、風を頼りに進む帆船は、港に停泊するさいに錨をおろし、出発の際にこの碇を巻き上げる力を利用して、行き足をつけます。海が凪(な)いでいるとき、いざ出発しようにも、行き足のつかない帆船では、弱弱しい風ではどうすることもできません。そこで、Benoitは暴風雨の際には帆をたたみ、碇を海に沈めることで耐え抜き、少しでも海が穏やかになったときに、碇を巻き上げることで行き足を付け、皆様のご期待という風を受けとめるように、真帆片帆(まほかたほ)と大海原を進んでゆこうと思います。

 昨今の日本の状況を鑑み、誠に勝手ながら、Benoitの「営業時間を短縮」させていただきます。皆様には、ご不便をおかけいたしますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。期限につきましては、緊急事態宣言および、都の要請に従わせていただきます。

ランチ

1130分から1530 (1400 ラストオーダー)

ディナー

1700から2100 (1930 ラストオーダー)

 

花より団子特別プランのご案内です。

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 万物を育て上げ、四季折々の風はその土地土地に味わいをもたせる。その風のもたらした美味しさこそ「風味」であり、我々はここに「口福な食時」を見出します。そして、旬を迎える食材は、人が必要としている栄養に満ちています。そして、人の体は食べたものでできています。「美しい(令)」季節に春食材が「和」する逸品に出会い、

 そこで、日頃より並々ならぬご愛顧を賜っている上に、自分よりご案内している長文レポートに目を通していただけている皆様の労に報いるため、旬の食材をつかった美味なる料理を食することで、無事息災に日々を過ごしていただきたい、との想いを込め、花より団子特別プランをご案内させていただきます。期間は、メールを受け取っていただいた日より、2021331()まで。ご予約は、このメール(kitahira@benoit.co.jp)への返信をご利用ください。お急ぎの場合には、Benoitメールアドレス(benoit-tokyo@benoit.co.jp)より、もちろん電話でもご予約は快く承ります。

花より団子特別プラン

ランチ

前菜x2+メインディッシュ+デザート

5,500円→4,200円(税サ別)

ディナー

前菜x2+メインディッシュ+デザート

7,800円→6,200円(税サ別)

※プリ・フィックスメニューの料理内容は、当日にメニューをご覧いただきながらお選びいただきます。ご希望人数が8名様以上の場合は、ご相談させてください。

 

シャンパーニュAYALA≫を特別価格でいかがですか?

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 旧名シャンパーニュ地方のアイ村に1860年から本拠地を持つ老舗シャンパーニュメゾン「AYALA(アヤラ)」。彼らのシャンパーニュの特徴はシャルドネ種にあり。アイ村のシャルドネは果実味があり、酸味が柔らか。そこに、ピノ・ノワール種を合わせてつくる、その作りは常にエレガントであり人々を魅了し続けています。

 そこで、Benoitシェフソムリエ永田からのお誘いがございます。この美味なるシャンパーニュをBenoitの料理とともに楽しまれませんか、それも特別価格にて…

AYALA BRUT MAJEUR  6,000(税サ別)

 「フレッシュでエレガント、控えめなドサージュ」というメゾンスタイルを最も表したスタンダード・キュヴェ。平均3年の瓶内熟成を行い、打栓後さらに4~6ヵ月間の瓶熟後、リリースされるためまろやかなピノ・ノワールの味わいが前面に感じられます。そこにシャルドネが生き生きとした風味を与えているため、重さを感じない仕上がりです。アヤラの名刺代わりの1本。

  そして、ディナー限定で2007年のヴィンテージシャンパーニュをご案内させていただきます。

AYALA BRUT MILLÉSIMÉ 2007  10,000(税サ別)

 良年のみ醸されるミレジム。2007年の出来は称賛に値する、素晴らしい香りと堂々とした味わいピノ・ノワールの力強さとアルコール感に、シャルドネによる魅力的なフレッシュ感とエレガントさが加わっています。 ハチミツ・アカシア・トースト香・クリのデリケートな香りです。このミレジムはアイ村・特級のピノ・ノワール種をベースとしており、熟成感も感じられ、素晴らしい香りと堂々とした味わいの見事なシャンパーニュです。

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※本数に限りがございます。ご希望の際には、このメールへの返信でご希望本数をお伝えいただけると幸いです。

 

イタリアから飛行機に乗って「グリーンピース」が届いています。

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 日本でもお馴染みの春食材の「グリーンピース」。ところが、缶詰の普及がこの食材への偏見を導き、好き嫌いの多い食材になってしまったことは否めません。しかし、鮮度の良いグリーンピースの美味しさは格別で、春にしか楽しむことができない旬の味わいです。

 グリーンピースが完熟すると「えんどう豆」。未熟だから栄養が貧弱かと思いきや、このグリーンピースの栄養価はまさにエリート級です。豊富なビタミンB群は糖質や脂質の代謝を盛んにし抵抗力を、さらにビタミンCとの相乗効果で感染症から守ってくれます。特筆すべきはカリウムと食物繊維の豊富さです。便秘解消、生活習慣病の予防にも最適。まさに春の美容と健康のためにあるような食材です。

 国産の食材を愛する自分ですが、今回ばかりは驚きの美味しさを誇る、地中海の太陽をさんさんと浴びて育ったイタリア産に席を譲るしかありません。船便では間に合わないため、飛行機で運んできた逸品です。もちろん、品種が違うといえば違うのですが、あまりにも国産を凌駕する甘みのある美味しさは、一食の価値あり。生の鞘(さや)を口にすると、鞘の筋が口中に残るものの、春らしい甘さを堪能しながらポリポリと食べることができるのです。鞘がそれほどまでに美味しいということは、中の粒粒はいかほどのものか。

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Délicat velouté de PETITS POIS et fromage frais

グリーンピースのスープ リコッタチーズ

※ランチとディナー、ともにプリ・フィックスメニューの前菜の選択肢に名を連ねております。

 

Benoitの春の目覚めは讃岐から!

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 香川県農業試験場で試験栽培を重ねた末、2005(平成17)年にオリジナル品種として誕生したのが「さぬきのめざめ」です。アスパラガスは、種をまいて数ヶ月で収穫できる野菜ではなく、植えてから収穫までに3年間を要します。この期間、アスパラガスはわさわさとした葉を成し、香川県ならではの陽射しを十二分に受けることで、根に栄養を蓄えていき枯れてゆく。これを毎年繰り返すことで、大地に根を広げてゆかねばなりません。そう、まだ産声を上げたばかりの特選食材なのです。

 今回Benoitに送っていただいているアスパラガスは、県庁所在地のある高松市の南に位置している香南町から。この地の畑を展開している、「薫る農園」さんからです。栽培者は、香川の農業女子として活躍中の河田薫さん。Benoitに届けられる、彼女の手掛けた「さぬきのめざめ」は、穂先がきゅっと締まった美しい姿、根元までやわらかいが歯ごたえはシャクシャク。鮮度が良いので、みずみずしいのはもちろん、にじみ出でるアスパラガスのジュースには野菜特有の甘さを感じとれます。

 香川県の自然と、河田さんの弛まぬ努力が育んだ「春一番の美味しいめざめ」は、東京のBenoitで出会うのは、北海道の天然サクラマスなり。

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SAKURAMASU sur la peau, asperges vertes cuites et crues

サクラマスポワレ グリーンアスパラガスさぬきのめざめ

※ランチとディナー、ともにプリ・フィックスメニューの魚料理の選択肢に名を連ねております。

 

≪西の「あまおう」、東の「とちおとめ」、やはりBenoitは「紅ほっぺ」。

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 多くのイチゴ品種が誕生する中で、1980年代には≪東(栃木県)の「女峰」、西(福岡県)の「とよのか」≫」という二大勢力が台頭するも、ここに「章姫」が割り込んできます。時が過ぎ、2000年前後ともなると、≪東(栃木県)の「とちおとめ」、西(福岡県)の「あまおう」≫へと移り行く。そして、ここに章姫と「紅ほっぺ」が姿を見せます。日本のイチゴ生産量の1位栃木県2位福岡県に負けじと健闘しているのが、地理的にも中間に位置している静岡県(4位)。イチゴ勢力図を二分する中に、割って入るかのように登場する≪章姫≫と≪紅ほっぺ≫という品種を生み出したのも、静岡県。甘さでは「あまおう<とちおとめ」、酸味では「あまおう>とちおとめ」。「紅ほっぺ」はどちらも中間に位置しているのだといいます。甘みと酸味を兼ね揃え、酸味があるからこそ甘みも冴えるのです。

 静岡県掛川の「赤ずきんちゃんおもしろ農園」の赤堀さんが丹精込めて育て上げた「紅ほっぺ」は、みずみずしくしゃくしゃくの食感であることはもちろん、心地良い酸味がイチゴの優しい甘さを引き立てています。甘いだけではない、イチゴの優劣はこのバランスによって決まる。Benoitに送っていただいているイチゴの品質にはただただ脱帽するのみ。豊潤な香りをはなちながら、美しい輝かんばかりの赤い色、口中いっぱいに広がる豊潤な甘さに心地よい酸味、いかに丁寧に育てられた「紅ほっぺ」であることか。自分のみならず、パティシエチーム皆が「美味しい」と納得の逸品です。

 今年は、イチゴパフェにように盛り付けてゆきます。既製品のイチゴのシロップもピューレも使用しない、赤堀さんの「紅ほっぺ」だけを使用した逸品です。バニラビーンズをたっぷり加えた濃厚なバニラアイスクリームをアクセントに、軽やかな生クリームが味わいをまとめてくれているようです。

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FRAISE MELBA

静岡県紅ほっぺのメルバ

※ランチとディナー、ともにプリ・フィックスメニューのデザートとして、+800円でお選びいただけます。

 

北平のBenoit不在の日

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 私事で恐縮なのですが、自分がBenoitを不在にしなくてはならない3月の日程を書き記させていただきます。滞りがちだったご案内を充実させるべく、執筆にも勤しませていただきます。ご不便をおかけいたしますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。

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 上記日程以外は、Benoitを優雅に駆け回る所存です。自分への返信でのご予約はもちろん、BenoitのHPや、他ネットでのご予約の際に、コメントの箇所に「北平」と記載いただけましたら、自慢の料理の数々を語りに伺わせていただきます。自分が不在の日でも、お楽しみいただけるよう万全の準備をさせていただきます。何かご要望・質問などございましたら、何気兼ねなくご連絡ください。

 

≪季節のお話 「雪や氷がとける、どう書きますか?」≫

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 昨今のコロナウイルス災禍で身動きが取れない中で、故郷新潟から一枚の写真が送られてきました。春の陽射しが「雪どけ」を促し、その合間からフキノトウが芽吹いていました。懐かしい、恋しいと思いつつ、「とける」という言葉が気なってしまったのです。雪や氷が「とける」と書く時、「溶ける」、「融ける」、はたまた「解ける」?

 皆様はどう思われますか。今の時期に…そう、この難問に何とか答を見出そうと悪戦苦闘しておりました。あくまでも推測の域を出ませんが、自分なりに結論が出たような気がいたします。詳細はブログに綴っております。以下よりご訪問いただけると幸いです。

kitahira.hatenablog.com

 

 最後まで読んでいただき、誠にありがとうございます。

 今年の辛丑が始まりました。その「辛」の字の如く優しい年ではないかもしれません。しかし、時は我々に新地(さらち)を用意してくれている気がいたします。思い思いの種を植えることで、そう遠くない日に、希望の芽が姿をみせることになるでしょう。

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 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご多幸とご健康を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com