kitahira blog

徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

12月の特選情報≪ダイジェスト版≫です。

 かつては、其処彼処で目にすることができた雑木林。整備された庭園とは違い、落葉広葉樹で構成された人が作り上げた林です。樹は薪(まき)や炭としての原材料となり、落ち葉は農産物の肥料として堆肥へと活用されるばかりか、降り積もることで、豊かな土壌を形成することになります。成長の早いクヌギやコナラは雑木林にとって欠かすことのできない木なのだといいます。江戸時代に、一面のススキ原に植樹して作り上げたのが「武蔵野の雑木林」。江戸っ子にとっては、生活するうえで欠かすことのできない資源だったことでしょう。

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  コナラとクヌギは子供たちには大人気の樹々です。きっと皆様も、子供の頃に果実を集めることに夢中になったのではないですか?そう、ブナ科の樹々の果実は「ドングリ」です。人の生活圏に隣接する雑木林を形成する、コナラとクヌギ、さらにはミズナラを総称して、古人は「柞(ははそ)」と呼んでいました。この身近な樹々を時雨が黄葉へと導いてゆく様を楽しみ、遠く山々で鮮やかに色付く黄葉と紅葉を想ったことでしょう。生地を染色する際に、染料に浸すことを「一入(ひとしお)」といいます。何度となく降る冬の時雨が、柞の葉を黄色へと染めあげ、その度ごとに色が深まるかのよう。そのため、この時期の雨を「八入(やしお)の雨」と呼んでいます。

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ははそはら 染むる時雨も あるものを しばしな吹きそ 木枯らしの風  藤原経家(つねいえ)

 「柞(ははそ)が生い茂る野原に、木立を一入一入と染めるかのように時雨が降っているではないか。柞の黄葉が染め上がるまで、しばらくは吹かないでくれ、木枯らしの風よ、聞いているかい?」とは自分の勝手な解釈です。「染(し)む」は「初(し)む」やもしれません。ともすると、今の時期よりももう少し早い時期、翠色濃い葉が、時雨にあたり葉一枚の所々が黄葉している姿を詠ったのでしょうか。2017年には、関東地方では10月30日に「木枯らし1号」が吹き荒れました。2018年は、藤原経家の願いが叶ったのでしょうか。木枯らしが吹くことなく、冬本番へと向かうようです。

  

 「木枯らし」もなく、暖冬のため冬の始まりを感じ取りにくい2018年。しかし、冬は一歩一歩着実に歩みを進めています。そして、12月は「師走」と書くほど、多忙を極める時期です。「人の体は食べのものでできている」、「旬の食材には、人が必要としている栄養に満ちている」のです。そこで、晩秋・初冬の旬の食材を食することで、無事息災に新年を迎えていただきたとの想いを込め、Benoitの12月のダイジェスト版を作成いたしました。まだ知らぬ食材もあるため、一部予想の域を脱しませんが、その点はご理解のほど、なにとぞよろしくお願いいたします。皆様にご紹介したい内容は、以下の12件です。

「特選食材」のご案内 9件

「クリスマス期間と年末年始」のご案内 1件

このメールでは、情報を簡単にご紹介させていただき、詳細は後ほど「長文レポート」にまとめさせていただきます。

 

 ≪下関唐戸市場より「トラフグ」が届きます。≫

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 山口県下関市関門海峡のたもとに位置している唐戸市場。下関を代表する海の食材といえば、真っ先に思い浮かぶのが「トラフグ」ではないでしょうか。美味なる食材であるにもかかわらず、随所に猛毒をもつため、日本人ですらうかつに手を出せない食材です。シェフのセバスチャンに話を聞いたところ、地中海でもフグは生息しているようですが、「フグには猛毒がある」ことが周知されているため、調理されることはないようです。確かに、フレンチではきいたことがありません。

 今回、下関の唐戸市場に昭和24年に創業したフグの老舗「道中」さんの全面協力のもと、Benoit史上初、いやアランデュカスグループで初となる「フレンチでフグ」の逸品をご用意いたします。競り落とされた鮮度の良いトラフグを、道中さん率いるフグの職人チームに捌いていただき、「身がき」の状態でBenoitに送っていただきます。これをシェフが「グジョネット」という揚げ物のようなスタイルに仕上げ、皆様のテーブルへ。フグの味わいを生かすように改良したタルタルソースとの相性は抜群。それと、トラフグの骨より引き出したコンソメスープもまた美味なり。和食とは一味も二味も違うトラフグの魅力を、Benoitを通して皆様にお楽しみいただこうと思います。

 12月より2019年1月末までの期間、プリ・フィックスメニューの前菜の選択肢の中で、ランチ+2,000円、ディナー1,500円にてお選びいただけます。唐戸市場より直送するため数に制限がございます。そこで、ご希望の場合は、ご予約の際に「トラフグの前菜希望」とお伝えいただけると幸いです。

 

≪下関角島産の「寒サワラ」のご案内です。≫

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 10月からBenoitのメニューに加わっていた下関の角島近海で水揚げされた「寒サワラ」が、美味なる脂がのってくる旬の最盛期を迎えるにあたり、追加料金なくディナーのプリ・フィックスメニューの選択肢に加わります。鮮度と群を抜いた美味しさの逸品を唐戸市場より送っていただくため、他産地からの購入はいたしません。そのため、海の神への「神頼み」のような食材であり、ご希望の日にご用意できないこともございます。2018年最後の運試しのようなご案内となってしまいますが、皆様のご理解のほど、なにとぞよろしくお願いいたします。脂ののった寒サワラを、エスカベッシュというスタイルで仕上げる前菜です。ご期待ください。

 

≪千葉県勝山漁港の「キンメダイ」が届いています。≫

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 千葉県房総半島の先端から、少し内房に入ったところに「勝山漁港」があります。東京湾への入り口に位置しているため、内房外房の豊かな漁場から、網で巻き上げられた魚、釣り上げられた魚と多くの種類が集められています。その中から、Benoitが選んだ魚は「キンメダイ」です。夜中に千葉沖で釣り上げられた勝山漁港のキンメダイは、脂ののりがほどほどに、海流にもまれているからなのでしょう、プリっとする食感と旨味は抜群です。さらに、漁港よりBenoitへ直送するため、前述した寒サワラ同様に、水揚げ無しというリスクはあるものの、それ以上に「鮮度抜群」という大きな大きなメリットがあるのです。Benoitへ届けられたキンメダイ大きな目の、吸い込まれそうなほどの透明感が全てを物語っています。

 プリ・フィックスメニューのディナーのみ、魚料理の選択肢として追加料金なくお選びいただけます。以下に記載いたしますが、フランスより美味しいキノコと組み合わせます。あまりにもキンメダイもキノコも美味しさをうったえてくるため、白身のお魚料理にも関わらず赤ワインのソースです。いったいどのような味わいのマリアージュとなっているのか、気になりませんか?

 

≪フランスより「キノコいろいろ」秋の締めくくりです。≫

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 秋の味覚の代表ともいえる「キノコ」。冬本番を迎えるにまえに、ぜひとも味わっておかねばなりません。今は、ピエ・ブルー(シメジの仲間)、プルーロット(ヒラタケの仲間)、ジロール(アンズ茸の仲間)とトランペット・ドゥ・ラ・モー(「死のトランペット」という名前ですが毒キノコではありません)の4種類が、フランスから飛行機に載せられBenoitへ届けられています。ひとつひとつは地味ですが、ちゃっちゃと熱を加えることで放たれる芳しい香りと味わいは、4種それぞれが個性豊かに奏でることで、得も言われぬ美味しさへと変貌いたします。

 プリ・フィックスメニューの前菜では、ランチは+1,500円、ディナーでは+1,000円にて、サン・フェリシアンというチーズとジャガイモと組み合わせます。アランデュカスがデザインしたCOOKPOT(クックポット)という器で、焼き上げた、この3つのマリアージュ。牛乳から仕上げるとろりとしたミルクのコクを楽しめるチーズのサン・フェリシアンが、ふつふつとオーブンで焼きあがる。下にはジャガイモが並び、この相性は間違いなし。さらに下に敷き詰められたキノコとの組み合わせが美味しくないわけがありません。

 メインディッシュでは、ランチはマダイと、ディナーは前述したキンメダイと組みわせ、追加料金なくお選びいただけます。「海の幸と森の幸」がどれほどの出会いを見せるのか。さらに、ともに白身の魚にも関わらず、なぜ赤ワインを使ったソースを組み合わせるのか。きっとこの解答を導きだせることでしょう。

 

福井県の「六条大麦」のご案内です。≫

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 自然食品への回帰が叫ばれている昨今にあり、食文化を築き上げているフランスももちろん例外ではありません。フランスのアランデュカスグループのレストランでも「スペルト小麦」や「キヌア」などの食材が多用されています。その潮流の中、Benoitのシェフであるセバスチャンは、四季折々の食材が豊かな日本での食材探しが始まったのです。彼のこだわりは「国産」。そこで出会うことができたのが、福井県の「六条大麦」です。

 麦茶はもちろん、白米とともに炊き上げ食感と栄養を補う役割を担う「六条大麦」。もちろん、ビールや焼酎の原料となる「二条大麦」とは別品種です。二条種は穂を実らせたときの粒の配列が「2列」、ということは六条種は「6列」。六条大麦は二条種よりも小ぶりで、食すのには最適です。食物繊維を含めた栄養価も抜群であり、「グルテン」を含まないことも特筆すべきでしょう。この六条大麦の生産量日本一を誇るのが、福井県です。そこで、その主産地である福井県の「大麦倶楽部」さんよりBenoitへ送っていただいております。

 プリ・フィックスメニューの魚料理の「大海老」でランチ・ディナーともにご用意しております。美味しいお料理ですが、もっと多くの方に「六条大麦」の美味しさを楽しんでいいただきたいと考え、シェフとの相談の結果、ランチ・ディナーともに、800円でリゾットのようなスタイルでご用意いたします。大麦そのものの美味しさを生かすため、ほぼ透明に近い鶏から引き出したブイヨンで炊き、ほんの少しのパルメザンチーズとオリーブオイルで仕上げたものです。プチプチとした食感と、大麦由来のとろみに旨味、チーズとオリーブオイルとの相性は抜群です。メインディッシュの際に、1品を皆さんで分けてお楽しみいただくことが良いか思います。

 

≪世界一美味と評されるフランスの「ブレス鶏」のご案内です。≫

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 「世界一美しく、世界一美味しく、世界一値段の高い鶏」と評されているのが、フランスの「ブレス鶏」です。美しく白い羽毛をまとい、トサカは真っ赤、足は青い色という、まるでフランス国旗のような鶏肉は、厳しい審査の下に、一羽一羽に番号があてがわれ、飼育者はもちろん、エサの状況まで把握できるといいます。ワインと同じように、原産地地を名乗ることのできる唯一のAOPの鶏肉なのです。肉質は締まっており、ほどよい脂は、その筋肉に入り込むため、調理に失敗すると肉がぱさぱさという無残な結果に。そのため「調理人を選ぶ食材」とも呼ばれています。

 12月より2019年1月末までの期間、プリ・フィックスメニューのメインディッシュの選択肢の中で、ランチ+2,000円、ディナー1,500円にてお選びいただけます。フランスの唯一無二の食材を、これまたフランスの伝統に習い、相性抜群の軽めのクリームのソースを絡めるように仕上げたフリカッセのスタイル。全てはブレス鶏の美味しさを、十二分にご堪能いただきたいとおもいます。ご希望の場合は、ご予約の際に「ブレス鶏希望」とお伝えいただけると幸いです。

 前述した「六条大麦」との組み合わせも、お忘れなきように。皆様を「口福な食事」のひとときへとご案内いたします。

 

≪北海道のフレッシュチーズ「Brise de mer Faisselle (ブリーズ・ドゥ・メール フェッセル)のご案内です。≫

 今回は、寒さ厳しい地、北海道から届く特選食材はフレッシュチーズ、それもフランスのフロマージュ・ブランに習い誕生した至高の逸品、「Brise de mer Faisselle (ブリーズ・ドゥ・メール フェッセル)」のご紹介です。暑さに弱い「牛」だけに、すでに寒さ厳しい根釧台地では、牛たちが元気いっぱいに牧草を食んでいることでしょう。秋までに牧草を刈り、牧場の代名詞的な建造物であるサイロに貯蔵されることで、牛にとっては(きっと)美味しく、栄養を吸収しやすく仕上げたもの。これを夏バテを解消した元気な牛たちが食む。そのミルクが美味しくないわけがありません。そして、そのミルクで仕上げたフレッシュチーズは、これは言うに及ばずでしょう。

 どれほど特選食材なのか?以下のブログに思いのたけを記載させていただきました。お時間のある時に訪問いただけると幸いです。

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≪福岡県「井上さんの富有柿」デザートを継続いたします。≫

 10月から、Benoitでは初の試みである「柿」のデザートを始めました。Benoitシェフパティシエール田中真理が、恋焦がれ10月に福岡県久留米市田主丸まで見に行ってしまった井上果樹園さんの「こいひめ柿」。井上さんご夫妻が丹精込めて育て上げた「こいひめ柿」は逸品でした。当初は11月末で終える予定でしたが、次に続く「富有柿」もまた、あまりにも美味しいので、12月末まで延長することにいたしました。

 減農薬自然栽培を実践しているこだわりの「露地」栽培の柿です。どれほど特選食材なのか?どのようなデザートに仕上がっているのか?以下のブログに思いのたけを記載させていただきました。お時間のある時に訪問いただけると幸いです。

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岐阜県恵那川上屋さんの和栗」デザートのご案内です。≫

毎年この時期になると登場する栗のデザート。2018年は、「モンブラン」とはメニューに表記したくはない、まったくの別次元のデザートに仕上がっております。栗は岐阜県中津川に居を構える老舗の「恵那川上屋」さんから。栗の収穫は9月半ばから始まるのですが、Benoitのメニューに栗のデザートが登場するのは11月からでした。なぜか?広島県大崎上島の岩﨑さんの路地物ノーワックス「瀬戸内レモン」を待っていたからです。

恵那川上屋さんの栗がどれほどのこだわりのものであるか?このマリアージュがどれほどのものか?以下のブログに思いのたけを記載させていただきました。お時間のある時に訪問いただけると幸いです。栗デザート特別プランも記載しています。

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≪クリスマス期間と年末年始ののご案内です。≫

1222日土曜日から1225Beno火曜日の期間、ディナーはBenoitクリスマスメニューのみのご用意です。通常のプリ・フィックスメニューはご用意がございません。クリスマスメニューの詳細については、BenoitHPをご参照下さい。

 年末年始の営業についてのご案内です。今年2018年は1231()のディナーまで、営業を行います。この日のディナーはラストオーダーが20:00と通常よりも早く、皆様にはご不便をおかけいたしますが、ご理解のほどなにとぞよろしくお願いいたします。新年2019年は15()のランチより、通常営業を始めます。心機一転、万全の準備をもって皆様をお迎えいたします。

  

 「冬至、冬中、冬はじめ」 今年は暖冬のようですが、冬至に向けて日増しに寒さが厳しくなることと思います。さらに、12月は師走と書くように、多忙を極める時期です。皆様、無理は禁物、十分な休息と睡眠をお心がけください。インフルエンザ対策もお忘れなきように。2018年残るもひと月です。皆様にとって素晴らしい年となるよう、青山の地よりお祈り申し上げます。いつも温かいお心遣い本当にありがとうございます。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

150-0001 東京都渋谷区神宮前5-51-8 ラ・ポルト青山10階

TEL 03-6419-4181

www.benoit-tokyo.com