kitahira blog

徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

年末を迎えて

 師走も終わりを迎えようとしております。地球が太陽の周りを1周する、その区切りとして定められた1年の終わりの日が、12月31日。陽が西の稜線に姿を消し、静まり返る闇夜に迎える1月1日午前零時に新年を迎えるも、やはり、陽が顔をのぞかせた時に「新年を迎えた」という実感がわくものです。生きとし生けるものに欠かせない「陽の光」、もちろん我々にとっても。皮膚に太陽が当たらないとビタミンDが形成されないなどと言われますが、それ以上に「心に与える影響」が大きいのではないでしょうか。世界各国に太陽信仰が存在するということが如実に物語っています。

f:id:kitahira:20181231114131j:plain

 なんとも懐かしさを感じる「日向ぼっこ」という言葉。冬は太陽が天高くまで昇らず、陽射しが低い角度で部屋の奥まで差し込むため、寒々しい中に暖かい「陽だまり」ができています。屋外でも、日当たりの良いところでは陽だまりが。まだまだ、今年にやり残したことがあるかと思いますが、ここはひとつ「割り切る」ことで区切りをつけ、太陽の恩恵を十二分に享受いたしませんか。陽だまりでほっこりと温まるひとときは、何か心まで満たされる気になってしまいます。今年一年の自らを省みる時、暗闇よりも「陽だまり」のほうが、何か明るい未来を見出すことができるような気がいたします。時世の波を乗り切るためには、挫けない心の強さが必要不可欠であり、その根本は自らの展望に希望があるかどうかということなのでないでしょうか。

 12月の大雪の初侯は「閉塞成冬(そらさむくふゆとなる)」。空が閉ざされ、本格的な冬になると教えてくれています。ここ数日、東北地方や日本海側では、寒波に覆われ大雪となり、年末年始に郷里は帰る方々はご苦労されたのではないでしょうか。天を塞ぐかのように、厚い雲に覆われた重苦しい空。陽だまりなど求めることはできません。古人は、冬に陽射しが降り注ぐ日を、恋しいからでしょう「愛日(あいじつ)」と呼んでいます。春秋左氏伝の「冬の日は愛すべし」からできた言葉のようです。年末年始に「陽だまり」を期待することは難しいやもしれません。しかし、愛日には「時を惜しむ」や「親に孝行する日々」という意味もあるようです。「陽だまり」の代わりに、「家族の絆」が心の拠り所となり、時世の波を乗り切る活力へとなることでしょう。

 

 2018年は「戌」年です。犬は、有史以来、時代と地域によって対応に違いがあるものの、人類と共存しているだけに全世界規模であることは間違いありません。日本でも、歴史書の中に、絵巻物の中に数多く登場することが、よほど馴染みの動物だったことを物語っています。さらに、一般に犬は出産が軽いことから、これにあやかって戌の日に安産を願い、犬張子や帯祝いの慣習が健在です。今では、盲導犬聴導犬として、厳しい訓練を乗り越え、パートナーとして人生ならに犬生を生きるものもいます。愛玩動物としていまや確固たる地位を築き、家族の一員として欠かせない存在になっている犬もいます。しかし、多くの外来種のなかで、日本固有の犬を忘れてはいけません。今や天然記念物の指定を受けている日本犬(にほんいぬ)です。

 先日、長野県茅野市の青木和夫さん「日本ミツバチの蜂蜜」ご紹介させていただきました。

kitahira.hatenablog.com

その中で登場する「愛犬」、青木さんから伺ったので2018年は戌年の締めくくりとして書かせていただきます。まずは、青木さんの山のパートナーをご紹介です。

 

f:id:kitahira:20181231114156j:plain

 青木さんの愛犬軍団を率いる高知県生まれの6歳の四国犬(しこくいぬ)「リン」。2018年の2月に150kgのイノシシに勇猛果敢に挑み、みごと止めるも前足を噛まれ骨折という名誉の負傷。今や、この達観したかのような表情は、多くの修羅場を乗り切ってきたからこそなのでしょう。

f:id:kitahira:20181231114223j:plain

 そして、大先輩に続けと若手の登場です。和歌山県生まれの2歳半、熊野犬(くまのいぬ)の「マル」※画像上。同郷の1歳ちょいの熊野犬「タロウ」※画像下。凛とした熊野犬らしい風格を感じますが、まだ少しあどけなさを残しているでしょうか。しかし、猟犬の血を引き継ぐからでしょう、「噛みついたら放しません」とのことです。

f:id:kitahira:20181231114238j:plain

 

 イノシシの狩猟では、猟犬がイノシシを寝床から起こし、徐々に距離を詰めるように進み、隙があれば噛みつき留めます。そして、最後は猟師が撃ち獲ります。猟犬が噛みつき留めると、いとも簡単に書きましたが、相手は野生のイノシシだけに、そう簡単なことではありません。相手が強いと、イヌは強靭な牙をもって切られ、噛まれ、放り飛ばされる。ケガで済めばよいですが、一命を失うこともある。なぜ自分よりも数段体のでかい獲物に果敢に挑むのか?紀州犬・熊野犬の本能であり、猟犬として生まれた宿命なのでしょう。

 青木さんからのコメントに加筆させていただいたものです。「イヌが噛みついているときに撃つことはできません。撃つと、衝撃で犬の歯が折れたり、顎の骨が割れたりするのです。もちろん、跳弾によって負傷する危険がある。さらに至近距離での発砲は、銃癖(銃を見ると逃げてしまう)になります。だから、イヌが離れるのを待つしかありません。理想的な猟犬は、イノシシの周りで吠えて逃がさない、吠え留めをする犬です。最初からこのような芸当を成す猟犬はおらず、何度かイノシシから傷を負わされなければなりません。そして、そのたびに獣医さんのお世話になるのです。」と。

  狩猟目的に限らず、日本ミツバチの採蜜や様子見、四季折々の変化を確認するために、日に3度は山に入るという青木さん。「バディ」のように付き添う犬たちとは、我が子のような思いでいるのでしょう。犬がイノシシに噛みついているとき、どれほどの危険な状況であるかは、経験豊富な青木さんには十分わかっていること。イノシシから離れなければ、撃つことはできない。時に撃たなければイヌの生死にかかわる。しかし、その後の犬生に禍根を残すことになるかもしれない。この重責を、青木さん双肩に担っている。そして、こう話を締めてくれました。「マルとタロウの若手犬はどのような仕事をするのか?獲物を得ることの喜びだけではなく、犬たちの成長の過程、良い仕事をするかどうかを見ることが、狩猟の楽しみでもあります。」

 

 「冬日」は一日の最低気温が0℃未満の日。「冬日」は最高気温が0℃未満の日のこと。天気予報での言葉の変化に注意し、日々お過ごしください。イヌがイノシシを追いかけるお話でしたが、時代は「イノシシ(亥)がイヌ(戌)」を追いかけています。そして、まもなく亥の年が幕開けいたします。「難を転じる」、ナンテンを実をもって、今年最後のご挨拶とさせていただきます。

f:id:kitahira:20181231114318j:plain

皆様が無事息災に新年を迎えることができるよう、お祈り申し上げます。

  

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

150-0001 東京都渋谷区神宮前5-51-8 ラ・ポルト青山10階

TEL 03-6419-4181

www.benoit-tokyo.com