kitahira blog

徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

Benoit特選情報「3月のダイジェスト版」のご案内です。

衣更着(きさらぎ)の 冴えつる風の よのまにも また薄こほる 池のおもかな  藤原家隆

  懐かしき中学生の時に、旧暦2月は「如月(きさらぎ)」と学びました。しかし、同じ読みのまま別の漢字表記もあるようです。その一つが今回ご紹介した歌にある「衣更着」。ようやく暖かくなってきたと着衣を一枚脱いだところへ、寒さがぶり返し、あらためて着重ねをする。その更着をする月だから「衣更着」なのだというのです。さらに、「よのま」には2つの意をもたしているのです。寒々しい風の吹く「夜の間」であり、竹の節間のように短い間隔を意味する「節(よ)の間」でもある。寒さはいっとき、時間的な短さなのだと知りながら。

 天気が不安定で、寒暖の差が激しい時期が2月です。なんという遊び心のある、的を射た表現なのかと思いませんか。昼間は春の暖かさを感じるも、池が凍ることはありませんが、夜半は肌寒さを感じる日々です。昼の陽気に誘われるように薄着で外出しようものなら、陽が沈むやいなや、じわりじわりと気温が下がってゆく。つかの間の寒さとはいえ、もう一枚多めに着ておけば良かったと後悔の念にかられるものです。一日一日と暖かくはなってきているような気がしつつも、この時期は三寒四温と言うとおり、まだまだ厚手の上着をしまえずにいる自分がいます。

 朝の陽射しに光り輝く、ほわほわのコートをまとったような冬芽が特徴の「ハクモクレン」、少しずつですが芽が膨らんできました。冬の厳しい寒さから春芽を守るためのプロテクターの役割を成す冬のコート、今か今かと脱ぎ捨てるタイミングを計っているかのようです。人は衣更着できても、ハクモクレンはそうはいきません。このタイミングを計る能力は、カレンダーの虜になっている我々が失ったものの一つ。そこで、古人は草木が自然の機微を捉える能力の助けを借りることを考えます。その萌芽や開花をつぶさに観察し、四季の移ろいを見極め、農作業の目安にしていました。

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 ハクモクレンが冬のコートを脱ぎ捨てる時は、この樹が本格的な春の暖かさを感じ取った時なのでしょう。やはり衣更着(2月)ではありませんでした。3月のいつぞやなのか。お天気の良い時など、草木それぞれが見出す春の兆しを探しながらの散策も一興ではないでしょうか。しかし、前述したように、不安定な天気に加え、寒暖の差が知らず知らずのうちに体力を奪ってゆくものです。十分な防寒対策をお忘れなきように。そして、気の赴くまま、足の赴くままに、Benoitへ。病は気から、健康は食事から。旬の食材を使った自慢の料理の数々で、皆様をお迎えいたします。新暦の3月15日は、旧暦の2月9日であることを言い訳に、3月なのに「衣更着」のお話から始めさせていただきました。

 

 今の時期は、「春に三日の晴れなし」と言われているように、不安定な天気が続きます。雨の日などは、何とも憂鬱な気持ちになってしまうものです。ところが、古人はこの「春の雨」に愛おしさを感じとったのか、多彩で美しい名前を遺しました。草木に潤いを与える「甘雨(かんう)」とは、ここ数日の雨のことではないでしょうか。穀物の成長を促す「瑞雨(ずいう)」、花の開花を呼ぶ「催花雨(さいかう)」、しとしとと3・4日続く「菜種梅雨(なたねつゆ)」、糸引くような細かい雨は「春雨(はるさめ)」、霧のごとく立ち込める「霞(かすみ)」。五穀豊穣をもたらす恵の雨は、二十四節気にもなっている「穀雨(こくう)」です。すべてが春を指し示す雨の表現であり、総称して「春の雨」です。

 まだまだ続く「余寒」と「春の雨」。無理をせずに上手にお付き合いいただきながら、旬を迎える食材を食することで、無事息災に春を過ごしていただきたい。旬の食材は、人が必要としている栄養に満ちています。そして、人の体は食べのものでできていいます。この想いを込め、Benoitの3月のダイジェスト版を作成いたしました。皆様にご紹介したい内容は、以下の23件です。

「特選食材」のご案内 10件

「料理/デザート」のご案内 11件

「ミュージックディナー」のご案内 1件

「余談」 1件

 

香川県まんのう町からグリーンアスパラガス「さぬきのめざめ」が届きます。≫

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 香川県仲多度(なかたど)郡まんのう町より届けられる逸品は、春を代表する食材「グリーンアスパラガス」です。国内で栽培されている多くは「ウエルカム」という海外育成品種です。香川県では、県農業試験場で試験栽培を重ねた末、2005(平成17)年にオリジナル品種として誕生したのが「さぬきのめざめ」。他の品種に比べ春の萌芽が早く、まさに「春一番の美味しいめざめ(萌芽)」な特選食材です。

 アスパラガスは、種をまいて数ヶ月で収穫できる野菜ではなく、植えてから収穫までに3年間を要します。この期間、アスパラガスはわさわさとした葉を成し、香川県ならではの陽射しを十二分に受けることで、根に栄養を蓄えていき枯れてゆく。これを毎年繰り返すことで、根を大地に広げてゆくのです。香川県まんのう町の気候風土が育んだ逸品。穂先がきゅっと締まった美し姿、根元までやわらかいが歯ごたえはシャキシャキ。鮮度が良いので、みずみずしいのはもちろん、にじみ出でるアスパラガスのジュースには野菜特有の甘さを感じます。太陽をさんさんと浴び、まんのう町の皆様が守り抜いた自慢の大地があるからこそ、この美味しさを生みだすのでしょう。

 地面よりすらっと姿を現したアスパラガス、穂先と根元で食感も違えば特有の甘みも違います。根に蓄えられた養分が萌芽と同時に伸び行く1本にどんどん送られます。この養分こそ、アスパラガスの「旨味のジュース」。鮮度が良いとは、このジュースを失っていないこと。アスパラガスの穂先と根元でどちらに旨味が多いかとの質問は、間違いなく根本です。しかし、この萌芽し伸びた芽は、収穫すると同時に大きなストレスを感じ、すぐに「木質化」が始まってしまいます。根本が筋っぽくなるのはこの木質化のためなのです。旨味の多い根元から固くなる。美味しいアスパラガスの必須条件は、間違いなく「鮮度」。どんなに美味しい品種であれ、こだわりの栽培者であれ、時が経ったものは、そのアスパラガス本来の美味しさを失います。

 鮮度が要(かなめ)の食材ゆえに、随時収穫してゆかなければなりません。Benoitの希望の数をまかなうため、今回は、「まんのう町」でアスパラガスを長年にわたり育て上げている、彼の地のプロフェッショナルの皆様にご協力をいただきました。朝に収穫し、昼には旅立ち、翌日にはBenoitに「春一番の美味しいめざめ」が届きます。この特選食材を、Benoitシェフのセバスチャンはどのように調理し、皆様を「Benoitの美味なるめざめ」へと導くのでしょうか。

 

Benoitシェフのお勧めは「グリーンアスパラガスと半熟卵」の前菜です。≫

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 鮮度の良いアスパラガス「さぬきのめざめ」の美味しさをどう表現したものでしょうか。長年にわたり丹精込めて育て上げることで、アスパラガスが根を地に張り巡らせ、降り注ぐ太陽の恩恵を根に蓄える。香川県の気候はもちろんですが、栽培する方の「土」に対する想いなくして、やはり美味なる逸品には育ちません。

 シェフが「さぬきのめざめ」を手にした時、あまりの品質の良さゆえ余計なことはしてはいけないと感じたようです。アスパラガスの旨味を引き立てるように、海水ほどの塩分濃度の中で茹で上げるのみ。穂先を左に向けるのは、穂先から皆様にお楽しみいただきたいからです。心地良い食感の穂先を楽しみ、根本に向かうほどアスパラガスの旨味が濃くなってゆく。このままでも十分に美味しいですが、セルフィーユとイタリアパセリのハーブのアクセント、エシャロットの甘さとシャリシャリを加えたまろやかな酸味のヴィネグレットが、アスパラガスの美味しさをさらに際立たせます。今回は、アスパラガス「生」のスライスを添えることで、シャクシャクの食感と、春らしい優しい甘さとほろ苦さを。ここに半熟卵の黄身のまろやかな味わいが加わることで、茹で上げるだけではないアスパラガスの魅力をお楽しみいただきたいと思います。

 プリ・フィックスメニューの前菜の選択肢の中で、ランチ・ディナーともに+1,000円にてお選びいただけます。

 

≪イタリアから「グリーンピース」が飛行機でBenoitに。≫

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 日本でもお馴染みの春食材の「グリーンピース」。ところが、缶詰の普及がこの食材への偏見を導き、好き嫌いの多い食材になってしまったことは否めません。しかし、鮮度の良いグリーンピースの美味しさは、春にしか味わうことができません。国産の食材を愛する自分ですが、今回ばかりは驚きの美味しさを誇る、地中海の太陽をさんさんと浴びて育ったイタリア産を、飛行機に載せて運んできたという逸品です。もちろん、品種が違うといえば違うのですが、あまりにも国産を凌駕する甘みのある美味しさは、一食の価値あり。生の鞘を口にすると、鞘の筋が口中に残るものの、春らしい甘さを堪能しながらポリポリと食べることができるのです。鞘がそれほどまでに美味しいということは、中の粒粒は言うに及ばずでしょう。

 グリーンピースそのものをお楽しみいただきたいので、余計なことはしない、その美味しさを十二分に引き出した、とろりとした緑美しいスープへと仕上げます。コクのある甘みに満ちた味わいは、過去何人もの「グリーンピース嫌い」の方々を「好き」へと導いた実績があります。今回は、さらなる美味しさを追求するがために、北海道のフレッシュチーズ、それもフランスのフロマージュ・ブランに習い誕生した至高の逸品、「Brise de mer Faisselle (ブリーズ・ドゥ・メール フェッセル)」とのマリアージュをお楽しみいただこうと思います。このフレッシュチーズの詳細は昨年に投稿したブログを参照ください。

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 グリーンピースが完熟したものが「えんどう豆」。グリーンピースの前、まだまだ実がなりたての若さやの状態が「絹さや」です。まさに出世魚ならぬ出世豆なのです。未熟だから栄養が貧弱かと思いきや、このグリーンピースの栄養価はまさにエリート級です。豊富なビタミンB群は糖質や脂質の代謝を盛んにし抵抗力を、さらにビタミンCとの相乗効果で感染症から守ってくれます。特筆すべきはカリウムと食物繊維の豊富さです。便秘解消、生活習慣病の予防にも最適です。まさに春の美容と健康のためにあるような食材です。

 プリ・フィックスメニューの前菜の選択肢の中で、ランチ・ディナーともに追加料金なくお選びいただけます。

 

Benoitシャルキュトリーに「豚肉のリエットと鴨のフォアグラ」が仲間入りです。≫

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 「charcutrie(シャルキュトリー)」とは、ハムやソーセージなどの豚肉を加工した製品の総称です。Benoitで不動の地位を獲得しているテリーヌ・ドゥ・カンパーニュやパテ・アン・クルートも、同じ分類に属します。ここに、今月からニューフェイス「豚肉のリエットとフォアグラ」が登場いたします。豚肉のリエットといえば、フランスで食の都としての名声を誇る「リヨン」の家庭料理。伝統料理が家庭料理となり今なお引き継がれている理由はただ一つ。美味しいからです。

 ニンニクと香草の香りと旨味を豚の脂に移し込み、豚すね肉をたっぷりと加え低温でゆっくりと熱を加えていきます。このすね肉をほぐし冷ますことで、風味が落ち着くのと同時に、リエット特有の粘りが生まれるのです。しかし、今回はテリーヌの型に詰めて冷ましていくのです。なぜか?「鴨のフォアグラ」とのマリアージュを求めたからです。粗びきの生肉を型でまとめて熱を加えるテリーヌとは違うリエットの調理方法。姿は似れども味わいは別物です。

 プリ・フィックスメニューのディナーのみ、前菜料理の選択肢として追加料金なくお選びいただけます。

 

≪千葉県保田漁港直送の「ナナメノヒラメ」は、3月末までです。≫

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 千葉県房総半島の先端から、少し内房に入ったところに「保田漁港」があります。東京湾への入り口に位置しているため、内房外房の豊かな漁場から、網で巻き上げられた魚、釣り上げられた魚と多くの種類が集められているその中から、今回皆様にご紹介す るのは「ヒラメ」です。

 日本最大の漁獲量を誇る北海道が群を抜いていますが、千葉県は第6位と、なかなかの好位置に名を連ねます。房総半島の内房外房と最高の漁場に恵まれ、さらに都心に近いことで鮮度が抜群。その千葉県で、Benoitが白羽の矢を立てたのが、「保田漁港」です。ここで水揚げされるヒラメが、知る人ぞ知る「ナナメノヒラメ」。いったい何が「ナナメ」なのか?画像に見る、斑点のような「目が七つ」あるからか?それとも性格が「ナナメ」なのか?

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 すでにご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、「ナナメノヒラメ」は「七目のヒラメ」という意味で、魚の模様でもなく性格でもありません。網の目が「七つ目」ということなのです。砂地にたたずんでいるヒラメの漁獲方法は、底引き網漁か刺し網漁です。前者は、袋状の網を海の底に這わせるように船で曳き上げる漁法。ヒラメに限らず。多くの魚が網にかかることになり、船上に揚がるまでの間に、多くの魚が押し合いへし合い、まるで通勤時の満員電車のような状態。さらに水面近くでは、網の袋状が小さくなるので、魚たちのストレスは計り知れません。その時に、お互いがぶつかり合ことで、傷つくことになるのです。対する、保田漁港で採用している刺し網漁は、網を海の底に沈めヒラメが網に絡まるのを待つ方法。底引き網漁にくらべ、ヒラメにとってはストレスフリーなのです。この刺し網の「目が七つ」といいます。素人の我々には分かりにくいのですが、簡単にいうと「網の目が大きい」ということなのです。この漁は、大物のヒラメを対象にした仕掛け網なのです。確かに効率は悪い、しかしストレスフリーの美しく美味しいヒラメを漁獲できるのです。

 丁寧に船上に引き上げられた「ナナメノヒラメ」は、保田漁港の生簀にて心落ち着かせた後に、〆られます。有名な「関サバ」や「岬(はな)サバ」もそうなのですが、網にかかることで受けるストレスを、少しでも軽減するためにも、生簀に放たれるのです。そして、ヒラメはBenoitへ直送されます。画像から、どれほどの大きさかお分かりいただけるかと思います。このヒラメを捌いた時の断面の厚さは、まるでフッコ(小ぶりのスズキ)と変わらないのではと思うほど。

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 話は変りますが、ヒラメとカレイの見分け方を少し。目を上にして「左向きがヒラメ、右向きがカレイ」です。しかし、人間界同様、ヒラメの世界にもひねくれものがいるようで、右向きヒラメもいるのだとか。そこで、口を開いていただけると、カレイはイソメやゴカイなどを食す分、歯が細やか。対するヒラメは、魚食だからこそのキバキバしい歯を持っています。悩まれたときには口をあんぐりとさせ、ご確認ください。

 

≪ぷりぷりの「ナナメノヒラメ」のメインディッシュは、3月末まで。≫

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 今回、保田漁港より直送の「 ナナメノヒラメ」の肉質はブリブリです。あまりの鮮度の良さもあり、焼こうものなら身が弾けるのです。そのため、シェフ・セバスチャンは、中骨を付けたまま、分厚い切り身とし、表面の焼きをいれてから、休ませるようにゆっくりと熱を加えていきます。ポロっと身がほぐれ、見事なまでの弾力のあるぷりぷりの食感、溢れんばかりのヒラメの旨味。バターに卵を加え、さらにレモンの酸味を小気味よくきかせ、ふんわりと泡立てるように仕上げたオランデーズソースが、ナナメノヒラメの美味しさを際立たせます。皆様を「口福な食事」のひとときへとご案内いたします。

 プリ・フィックスメニューのメインディッシュの選択肢の中で、ランチ・ディナーともに+1,200円にてお選びいただけます。保田漁港より直送するため数に制限がございます。そこで、ご希望の場合は、ご予約の際に「ナナメノヒラメ希望」とお伝えいただけると幸いです。

 

≪ヒラメがぷりぷりならば、北海道「アンコウ」はブリブリです。≫

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 「東のアンコウに西のフグ」とは、冬を代表する美味なる食材の代表をうたったものです。アンコウはつぶれたように平たく、表面ぬるっと触るとぶよぶよ。大きな「がまぐち」のような口には鋭い歯が並びます。深い海に生息しているからなのか、この独特の風貌は、およそ食材とは遠い存在かと思いきや、「東のアンコウ」と評されるほど美味。柔らかい巨体を自由に動かす筋肉部位は、見事なまでの身の締まりよう。画像は豚の棒フィレよりも大きなサイズ。一口淡白な味わいかと思いきや、旨味は抜群。さらにコラーゲンたっぷりといいます。

 

≪「アンコウのブーリッド風」もまた、3月末まで。≫

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 厚めにカットしたアンコウの身を、蒸し焼くように熱を加えることで、旨味逃がさずぷりぷりの食感へ。ここへBourride(ブーリッド)に仕上げたソースを合わせます。ブーリッドとは、Languedoc(ラングドック)地方Montpellier(モンペリエ)群の「Sète(セット)町」の伝統料理なのだといいます。魚の旨味を香味野菜とともに煮出すように仕上げた「Soup de Poisson(スープ・ド・ポワソン)」にニンニクマヨネーズのようなアイオリでのばす。今回はさらに、「あん肝」をこのソースに潰し入れることで、コクと肝の旨味を加え、日本の食材「アンコウ」と、フランスの伝統料理「ブーリッド」とを引きあわせ、相乗効果を生み出します。このマリアージュは一食の価値あり。

 プリ・フィックスメニューのディナーのみ、魚料理の選択肢として追加料金なくお選びいただけます。

 

≪ビストロ料理の王道「鴨モモ肉のコンフィ」が、ランチメニューに。≫

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 フランスのビストロ料理で、欠かすことのできない王道の逸品は、間違いなく「鴨モモ肉のコンフィ」ではないでしょうか。なぜBenoitのメニューに登場しないのかと不思議に思っていたのは自分だけではないはずです。そこで、ランチのみ、肉料理の選択肢としてプリ・フィックスメニューに、追加料金なく加わりました。

 ニワトリと違い、普通に焼くと固くなる食材です。そこで、鴨の油を使い、高温では揚がってしまうので、70℃といいう低温を維持しながら煮るように仕上げる、コンフィという伝統方法で調理していきます。鴨特有の旨味を逃がさず、ほろっとした食感を生み出し、仕上げに表面をパリっとオーブンで焼き上げます。そのままでも美味ですが、添えるディジョンマスタードとの相性は抜群、さらに、別添えで皆様のテーブルへお持ちする、鴨の旨味を凝縮したようなソースと合わせれば、三度もお楽しみいただけます。

 

≪馴染みがないのですが美味なり、「豚ほほ肉」。≫

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 牛のほほ肉の煮込み料理は、其処彼処で目にするかと思います。確かにほろっと崩れる牛ほほ肉の赤ワイン煮込みは美味しい。ところが、今回の「豚ほほ肉」の煮込みを知ってしまうと、「牛肉は独特の風味があるため赤ワインで煮込むのか」と感じ入ってしまいます。そう、豚ほほ肉はその優しい風味を生かすため、白ワインで煮込んでいくのです。

 ことこと煮込むこと1時間ちょっと、豚ほほ肉が崩れ始めるため、鍋の外へ避難させ、残った旨味のスープは煮詰めていきます。フォン・ド・ヴォーでコクを与えた後に、豚ほほ肉にまとわせるように仕上げをします。肉ナイフは必要ないスプーンほぐしながら白いんげん豆と味わおうものなら、「なぜ、豚ほほ肉は食材として売っていないのだろうか?」と思わずにはいられないはずです。

 プリ・フィックスメニューのランチのみ、肉料理の選択肢として追加料金なくお選びいただけます。

 

≪フランスのラングドック地方の伝統料理「カスレ」のご案内です。≫

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 南 フランスProvence(プロヴァンス)地方の左隣に位置している、Languedoc(ラングドック)地方。彼の地を代表する伝統料理といえば、異論の余地なくCassoulet(カスレ)です。簡単に言ってしまうと、お肉いろいろを白インゲン豆とともに煮込んでいった料理。では、カスレに使うのは何の肉なのか?実は、これほどの伝統料理にも関わらず、町々によってレシピが違うという困った逸品なのです。参考までに、我々がカスレの発祥の地だと主張している3つの街は、Castelnaudary(カステルノーダリー)、Carcassonne(カルカッソンヌ)、そしてToulouse(トゥールーズ)。

 どのレシピが正解か?全てが正解というカスレ。それでは困るので、Benoit東京では、Benoitパリの伝統を踏襲することにいたしました。仔羊の肩肉、鴨のモモ肉のコンフィ、プラチナポークのソーセージ、そして塩漬けにした豚バラ肉を塩抜きしたもの。全てを白インゲン豆と煮込んでいきます。それぞれの肉よりしみ出る旨味。これをインゲン豆が吸い上げる。肉が主役か?豆が主役か?という質問には、豆が主役ですと即答する逸品です。どこからどう撮ってもインスタ映えしない、Benoitらしい美味しい「茶色」の料理です。

 プリ・フィックスメニューのディナーのみ、肉料理の選択肢として追加料金なくお選びいただけます。フランスの歴史を感じながらいただく伝統の茶色の逸品。フランスのレシピより豆の量は1/2、安心してお楽しみいただけるのではないでしょうか。

 

≪スペインより「仔豚の骨付きリブ」がディナーに登場です。≫

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 ヨーロッパの中で、豚の飼育数ナンバー 1の国がスペインです。イベリコ豚の生ハムをはじめ、サラミやソーセージ、もちろん豚肉自体も美味。飼育に適した気候風土、長年培われてきたノウハウによって、世界屈指の豚肉を産する国との名声を博することになったのでしょう。

そのスペインから仔豚のリブが届きました。丁寧に余計な部分は取り除いていき、ハーブをまぶして少しばかりお休みを。仔豚ならでは優しい肉質と脂の甘さを生かすため、必要最低限の短さで鉄板で焼きを入れ、キッチン内の温かい小部屋で休ませます。内包された温かい肉汁を利用して、時間をかけながらしっとりと余熱を使いながら焼き上げる職人技。仔豚ならではの美味しさを十二分にご堪能いただきます。

プリ・フィックスメニューのディナーのみ、肉料理の選択肢として追加料金なくお選びいただけます。

 

≪フランス・ロワール地方、モローさん「Selles-sur-Cher (セル・スュル・シェル)のご案内です。≫

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 ロワール河の中流域は、古城が多くある観光名所。その周りに広がるブドウ畑と広大な牧草地が、彼の地を風光明媚なものへと演出しているかのようです。その牧草地で放牧されているのが山羊(やぎ)。この地域は、フランスで抜群の品質と美味しさ、種類の多さを誇る山羊チーズの一大産地です。

多々ある山羊チーズの中でも、最高傑作だといわれているのが、なんとも発音の難しい「Selles-sur-Cher (セル・スュル・シェル)」。その産地にあり、山羊のスペシャリストとして名を馳せるのがMOREAU(モロー)さんです。

山羊ミルクらしい優しさの中に心地よい酸味、チーズに仕上げた時の、しっとりとした水分を含みながら、きめの細やかな食感。一口ほおばると、かすかな甘みと程よい塩加減が、きれいな余韻となって続きます。切った時の断面の美しさは必見です。さらに、若草が牧草地を輝かんばかりに美しい緑色に染める春。山羊がその春の草を食むことで生み出されるミルクは、一年で一番爽やかな味わいをもっています。そのミルクでモローさんが仕上げたセル・スュル・シェルがBenoitに届いています。

ふつうに食しても美味しいですが、今回は「春」を意識し、後述する熊本県天草産「不知火」と「パール柑」の柑橘のほろ苦さと甘さを生かしたマルムラードとともに。日仏のマリアージュをお楽しみいただこうと思います。ご希望の際にはお気軽にお声がけください。

 

≪「Pulpe de CACAO(ピュルプ・ドゥ・カカオ)」がBenoitに届きました。≫

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 長らくこの飲食の業界に身を置いていますが、 この食材を口にしたのは初めてです。この名前を耳にした時も、味わいがどんなものか全く想像がつかなかったことはもちろん、ホロホロなのかペタペタなのかすら分からず。ただただ、試食した時の想像とのギャップに、さらにあまりの美味しさに言葉を失いました。それは、何か?

「Pulpe(果肉) de CACAO(カカオ)」

カカオの果実はラグビーボールよりも一まわりほど小さな大きさで、画像のように樹から花梨のように実をつけます。外皮はご想像の通り、ガチガチです。この種(たね)は、発酵させ、さらに乾燥させることでチョコレートの原料になることは、すでに皆様ご存知のことと思います。今回は「種」ではなく「果肉」。カカオの果実から5%ほどしか取れない希少なものなのなのだといいます。さらに、通常は「種子」とともに発酵させてしまうため、チョコレートの風味を作る一要素であり、流通することはほとんどありません。「なるほど」と思いつつも、あまりにもこの果実に馴染みのない我々は、大きなカカオ果実のどこが果肉なのか皆目見当もつきません。

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 そこで、ブラジルよりお送りいただいたこの画像。カカオ果実から飛び出しているのは「種子」。それと、「果肉」です。この種子にまとわりついている「白いものが果肉」なのです。どこが果肉かわかったところで、まったく味わいに想像がつかないかと思います。そこで、少しだけ自分の口にした時の感想を書いてみると。ライチのような優しくも甘い味わい、これに続くようにバナナのようなコクのある風味、きれいな甘酸っぱさの余韻は南国のフルーツであることを教えてくれています。「カカオフルーツ」と呼ばれている所以は、美味しい果肉があるからなのでしょう。

 このカカオフルーツそのものの美味しさを、皆様にお楽しみいただきたい。そこで、真っ先に思い当たったのが、北海道のフレッシュチーズ「Brise de mer Faisselle (ブリーズ・ドゥ・メール フェッセル)」でした。爽やかなフレッシュチーズとカカオフルーツが、お互いに美味しさを引き立て合う、まさに「未知なる世界へ誘(いざな)うマリアージュ」を皆様には体感していただきたいと思います。このセットは1,000円で昼夜問わずご用意しておりますが、このblogを読んでいただけた方には800円でのご案内です。フレッシュチーズの入荷数には限りがございます。ご予約の際に、「フレッシュチーズとカカオ希望」とお伝えいただけると幸いです。このフレッシュチーズがどれほどの逸品かは以下をご参照ください。

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≪「ル・ショコラ・アラン・デュカス 東京工房のショコラ ブノワ風」がスタンダードメニューへ。≫

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 2018年4月、「ル・ショコラ・アラン・デュカス」の海外初工房が東京日本橋にオープンいたしました。この日本橋の工房が軌道に乗った今、待ちに待ったショコラがBenoitに届いたのです。購入はカカオ含有率75%と45%のショコラブロックと、カカオ豆をローストして砕いたGrué de Cacao(グリュエ・ドゥ・カカオ)。このショコラを贅沢に使い、8年もの間、Benoitの重鎮のごとくメニューに君臨していた「BENOIT CHOCOLAT/CARAMEL(ショコラとキャラメルのブノワ風)」が、ついに変貌を遂げたのです。

 食感の異なる4層は、下からアーモンドやヘーゼルナッツを加えて仕上げたプラリネをカリっと焼き上げたもの、さくっとショコラのビスキュイ、カカオの風味豊かながら甘さ控えめ濃厚なショコラにクリーム、ほのかに甘さを感じるように艶やかなショコラのシロップ。それぞれが異なる美味しさのヴァリエーションが、口中で奏でられる。さらに、一番下のカリっとしたプラリネの中には、2種類のパリパリとした食感がアクセントを加える。グリュエ・ドゥ・カカオは得も言えぬカカオのほろ苦さを、蕎麦(ソバ)の実は香ばしさをもたらします。ショコラは濃厚だが、全体的に甘さを抑えている分、風味豊かに軽やかささえ感じるように仕上げています。そして口休めに、蕎麦の実をふんだんに使ったアイスクリームを。

 Benoitはビストロなのか?これがビストロのデザートなのか?そのような疑問が脳裏をよぎる逸品に仕上がっています。最後の判断は、皆様ご自身で。ランチでもディナーでも、プリ・フィックスメニューのデザートの選択肢として、追加料金なくお選びいただけます。

 

≪長野県戸隠より、探し求めた最高の「蕎麦の実」がBenoitに。≫

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 新しいBenoitのショコラデザート が、満を持して今月からプリ・フィックスメニューに加わりました。「ル・ショコラ・アラン・デュカス」の工房からBenoitへ納品されたのは、昨年末でした。え?今までの1月ほど何をしていたのか?決してサボっていたわけではありません。シェフパティシエールの田中がフランスのエグゼクティブ・シェフパティシエと協議を重ね、レシピが固まりつつある中で、自分に対して指令が発せられたのです。デュカスショコラに相負けない逸品を探してほしいと。何を?

「蕎麦(そば)の実」

 長野県の戸隠といえば、岩戸伝説で知られている通り、神話の里です。平安から鎌倉時代には、日本三大霊場として栄え、五穀断ち(難行苦行)の修験者たちの体力を支えたのが、栄養豊富な「蕎麦」だったといいます。この地に居を構え、自らも戸隠高原に蕎麦畑を所有し、信州内に契約している農家さんは多数にのぼる。国産の蕎麦の扱いに関してはプロ中のプロです。この時期にあり、画像の蕎麦の実を見ての通り、美しく緑がかった色合いは、鮮度の良さの証です。香り高く蕎麦本来の風味を損なっていない、美味しく食感の心地よさ。この逸品をBenoitへおおくりいただいているのが「おびなた」さんです。

 この「蕎麦の実」無くして、今回のBenoitのショコラデザートは成しえなかったことでしょう。

 

静岡県掛川から直送、赤ずきんちゃんおもしろ農園さんの「紅ほっぺ」。≫

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  栽培地域は、ほぼ日本全土を網羅し、新品種育成を目指し、各都道府県が鎬(しのぎ)を削る。美味なるものであれば、彼の地を代表する品種となります。しかし、この熾烈を極める戦いの中で、全国に名を馳せるにいたるものは、ごく僅か。毎年どれほどの新種が生まれ、淘汰されていったことか。それもこれも、誰しもが愛してやまない「イチゴ」だからなのでしょう。

 みずみずしく、しゃくしゃくの食感。心地良い酸味がイチゴの優しい甘さを引き立てる。甘いだけではない、イチゴの優劣はこのバランスによって決まるように思います。鮮度を維持することが難しいため、収穫は随時行わなくてはなりません。さらに、水分が多いからこそ輸送に耐え得ないフルーツでもあります。Benoitの席数を考えると、一農家さんからの購入では、イチゴの確保がかなり厳しいのです。

 シェフパティシエールの田中が、フランスとのやり取りの中で決まりつつあるレシピを知った時、あまりの驚愕に言葉を失いました。デザートに使用するイチゴの量、一人分がMサイズで約20粒ほど必要であること。さらに、イチゴの品質がそのままデザートの味わいに反映してしまうこと。つまり、高品質のイチゴを、定期的に過不足なく購入し続けなければなりません。

 この難問を、いとも簡単に解決へと導いてくれたのが、静岡県掛川市にて広大な農園を構えている「赤ずきんちゃんおもしろ農園」さんでした。Benoitへ送っていただく品種は、誰しもが知る静岡県を代表する「紅ほっぺ」。サイズ指定も購入量も、担当してくださった方の「大丈夫です」という一言に、どれほど安堵したことか。さらに、届いたイチゴの品質にはただただ脱帽するのみ。豊潤な香りをはなちながら、美しい輝かんばかりの赤い色、口中いっぱいに広がる豊潤な甘さに心地よい酸味、いかに丁寧に育てられた「紅ほっぺ」か。自分のみならず、パティシエチーム皆が「美味しい」と納得の逸品です。

 

静岡県掛川の「紅ほっぺ」をつかった真っ赤なデザートが登場です。≫

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 紅ほっぺMサイズを、お一人様10粒分は半分にカットしてオリーブオイルと塩少々。もう10粒分は、広島県大崎上島の岩﨑さんの瀬戸内レモンとともに、軽く火にかけザルの上に。ゆっくりと滴り落ちる紅ほっぺのジュース。ザルに残ったイチゴは、そのままマルムラードへ姿を変え、ジュースはオリーブオイルが加えられてソースへ。そのままを盛り付ける中に、心地良い酸味とほろ苦さを演出する瀬戸内レモンの皮のコンフィ。さらに爽やかなミルクの風味を生かしたフレッシュチーズのソルベを一番上に。イチゴの調理方法を変えることで、それぞれ違った魅力を引き出すように。

 皆様お察しの通り、「イチゴそのもの美味しさ」が、今回のデザートのポイントになります。だからこそ、彼の地を代表する品種を選び、その中でもこだわりの農園から直送しなければならなかったのです。違った表情をみせるイチゴに、レモンとソルベが加わり、オリーブオイルを加えたイチゴジュースをそそぐ。一つの器の中で、それぞれが奏でられた時、このデザートが皆様を「口福な食時」へと誘(いざな)うことになるでしょう。

 プリ・フィックスメニューのデザートの選択肢の中で、ランチ・ディナーともに+1,000円にてお選びいただけます。

 

熊本県を代表する柑橘「不知火」」が天草より直送です。≫

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 熊本県の天草の島々を横断する道のりは、別名「柑橘ロード」とも呼ばれ、周辺では多くの柑橘フルーツが植樹され、美味なる逸品を世に送りだしています。その中でも、画像のフルーツこそ、彼の地を代表する柑橘でしょう。「デコポン」と皆様お思いかもしれませんが、これは「不知火(しらぬい)」です。

 不知火とデコポンは、これほどまでに酷似している姿にもかかわらず何が違うのか?実は同じといえば同じもの。「不知火」の品種の中で、JAが定めた糖度と酸度をクリアしたものが「デコポン」です。では「デコポン」が優良品種なのか?そうとも言えますが、そうでないとも言えます。この2つの名称を、数値によって分けることは、我々消費者には分かりやすく、斬新な試みだと思います。だからといって「不知火<デコポン」ではありません。消費者から見れば、デコポンの方が品質に安定感がある。しかし、不知火の中には、デコポンを凌駕する品質のものもある、ということです。

 熊本県の天草は、「不知火」発祥の地。数々の失敗を繰り返し、自然の辛酸を舐め、淘汰され、生み出された品種です。彼らには不知火を世に生み出したプライドがある。だからこそ、中途半端な不知火は出荷いたしません。天草の柑橘を購入し始めたのは3年前。これほど暖秋暖冬の影響下で、毎年安定感のある「天草の不知火」の美味しさには、ただただ驚くばかりです。熊本県産「デコポン」も市場にあります。ここで、ひねくれものの自分がふと思う。「不知火」発祥の地でもある熊本県天草で、「デコポン」を名乗る理由が見つからない。言い換えると、熊本県産で「デコポン」名乗るには、何か理由がある。不知火として勝負する自信がないためにデコポンの名を利用するのか?何はともあれ、天草の不知火は美味であることに間違いはありません。

 

≪まだまだある、熊本県の柑橘「パール柑」が天草より直送です。≫

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 3年ほど前から、自分が「フルーツの」食材探しを本格的に始めました 。いろいろ試行錯誤する中で、身近な同僚に相談してみようと考えたのです。Benoitがそこそこ大きなレストランなため、地方から上京している仲間が多くいます。そこで、熊本県出身の仲間に、「今の時期で熊本県特産の柑橘はないかな?」と聞いたところ、「不知火ですかね。特に他には思いつきません」と。苦心に苦心を重ね、探し求めた逸品です。Benoitに届いたとき、あまりの嬉しさに熊本県出身の仲間に「ほら、届いたよ」と自慢する。すると彼の返答は「あ!パール柑じゃないですか」と。知ってるのであれば教えてくれよ、と思うものの、彼にとってあまりにも身近な柑橘だけに、特産だとは考えなかったようなのです。そう、自分の聞き方が間違っていた。「いつもどんな柑橘をこの時期に食べているの?」

 かつて、日本原産の柑橘フルーツのことを、「橘(たちばな)」と総称していました。一年を通して緑美しい丈夫な葉を成すことから、不老長寿の象徴でもあったようです。その中で大きな実を成すことから名付けられたのでしょう、文旦(ぶんたん)と同じ種に属する、「大橘(オオタチバナ)」です。熊本県の宇城・天草地域の特産で、「天草文旦」とも呼ばれていますが、現地では天草列島と九州本土とを結ぶ天草五橋(パールライン)にちなみ、「パール柑」という名前で親しまれています。輝くような黄色のぽちゃっとしたまん丸の可愛い姿をしており、グレープフルーツを想わせるような爽やかさ、甘さと酸味の見事なまでのバランス、特筆すべきは放たれる芳しい香りです。心地よく爽快な黄色い柑橘特有の香りは、手の取った指にまで残るほど。今まさに旬を迎えている熊本県を代表する逸品が、熊本県の天草からBenoitに送られてきています。

 

≪「不知火」と「パール柑」で至高の柑橘デザート。≫

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 今まさに旬を迎えている、 熊本県を代表する柑橘「不知火」と「パール柑」を惜しげもなく使用し、冬眠気味の我々の体を目覚めさせてくれる今の時期ならではの至高の逸品。今回は、イタリアンメレンゲを軽やかにぱりっと焼き上げたものとアーモンドのシャーベット、これ以外は全て熊本県天草から届いた柑橘のみ。メレンゲを使うことで、デザートの名称は「ヴァシュラン」です。

 不知火とパール柑色味の違う果肉と果皮は、見た目にも美しいばかりではなく、味わいや香りの違いを生み出します。それぞれの果実はそのままに、果皮は甘さ控えめのシロップで煮るようにコンフィへ、さらに果肉と果実をつかって甘ほろ苦いマルムラードへ。さらに、果汁を絞り、そこへ果肉と果皮を加えて仕上げた、輝かんばかりに美しいオレンジ色を放つシャーベットは、今回の特選食材2種類の柑橘の魅力を凝縮したかのよう。余計な甘さは一切なし。アラン・デュカスの料理哲学は、素材を厳選し、その素材の持ちうる香りと味わいを十二分に引き出し、表現すること。旬の柑橘のもつ「甘さ」「酸味」「苦さ」が、見事なまでのハーモニーを奏でることで、ひとつの作品へと仕上がります。熊本県天草がはなつ「春の魅力」を我々に教えてくれることになるでしょう。

 プリ・フィックスメニューのデザートの選択肢の中で、ランチ・ディナーともに+800円にてお選びいただけます。

 

≪ミュージックディナー「三味線プレイヤー 史佳」のご案内です。≫

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 津軽三味線の楽曲の原型は新潟県にあるといいます。それがためなのか、初代高橋竹山師の竹山流津軽三味線を正しく継承していこうと「新潟高橋竹山会」が誕生し、今は二代目会主の高橋竹育さんが100名近い会員を束ねています。その高橋竹育さんを母にもち、さらに師匠として9歳より三味線の世界に入りました。音の響きを大切にする「弾き三味線」を得意とし、古典を大切なベースとしながらも、伝統芸能の枠を超えた新しい「ニッポンの音楽」を求め、国内外の演奏活動・公演活動を行っている三味線プレイヤー「史佳 Fimiyoshi」さん。2019年10月5日にカーネギーホールでの演奏が決まっています。その前にBenoitで奏でます。前哨戦?いえいえ、史佳さんは本気です。

Benoitミュージックディナー 「三味線プレイヤー 史佳Fumiyoshi ≫」

日時:2019612()18:30より受付開始 19:00開演

会費:18,000(パフォーマンス・ワイン・お食事代・サービス料込、税別)

※ご予約を受け付けております。電話もしくは、Benoitへメールにてご連絡をお願いいたします。質問などございましたら、何気兼ねなくお問い合わせ、もしくは返信をお願いいたします。

≪史佳Fumiyoshi プロフィール≫

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≪余談ですが、2019年の「干支」のお話です。≫

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 古代中国の賢人の英知の結晶でもある「干支」。なぜこの漢字なのか?もちろん、自分は占い師ではなく、漢字の語源から読み解いてみたものです。添付の画像は、今年早々に撮影したものです。そして、ブログの中には昨年の初夏の画像。なぜ「ユズリハ」を干支の話で選んだのか?この理由も理解していただけるはずです。

kitahira.hatenablog.com

 

 3月21日に、太陽が顔を出す時間と隠す時間が同じになる、季節の分岐点「春分」を迎えます。太陽の周期を基本に組まれたのが、今使用しているグレゴリオ暦。人類の英知の結晶でもありますが、人間が勝手に利便性を数字にあてはめているため、太陽がそういうことを聞いてくれるわけではありません。太陽は365日ちょっとで太陽の周りを1周します。そこで閏年がでてくるのです。そのため、日本の祝日のなかで、振替休日を除き、唯一変動するのが「春分の日」です。とはいえ、ほぼ21日、たまに20日ですが。この春分を中日とし、前後3日間が彼岸(春の彼岸)です。「暑さ寒さも彼岸まで」とはよく言ったもので、いま少しこの寒暖の差と上手に付き合っていかなければなりません。

 見方を変えれば雨もまた風情のあるもの。「春雨じゃ、濡れてまいろう…」という名台詞もありますが、やはり濡れては風邪のもとです。天気予報を参考に、傘の準備を怠らず、春を愛でながらの散策をお楽しみください。などもまた一興かと。桜の花をはじめ、春の花々が皆様をお出迎えしてくれると思います。

 

いつもながらの長文を読んでいいただき、誠にありがとうございます。

末筆ではございますは、ご健康とご多幸を、イノシシ(風水では無病息災の象徴)が皆様をお守りくださるよう、青山の地よりお祈り申し上げます。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com