kitahira blog

徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

Benoit特選情報「4月のダイジェスト版」のご案内です。

待てというふに 散らしで止まる ものならば 何を桜に 思ひまさまし 「古今集より」よみ人しらず

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  「待ってくれ」と言うことで、散らないでいてくれる花であれば、誰がこれほどまでに桜に対して思いを募らせようか。夏から秋にかけて葉を茂らせ、越冬するための栄養を蓄える。冬の間は、余計なエネルギーを使わないようにと葉を落とし眠りにつく。春の陽射しが桜の目覚めを誘(いざな)い、花開く。桜の花ひとつの開花の期間は2~3日だといいます。実を食用としない花桜の場合は、このいっときの開花のために1年間を費やすといってもいいのではないでしょうか。この潔く散ってゆく「はかなさ」こそ、人々がこれほどまでに花開く時を待ち焦がれ、花散る時を惜しむのでしょう。

 満開の桜は、人々に笑顔をもたらし、かつては農作業の始まりを教えてくれました。今では新しい人生の門出を演出してくれています。日本の学校の卒業と入学の時期が、桜花咲く時期の前後に位置していることは、世界の多く初秋であるのために、海外に目を向ける学生たちには不自由なものです。それでも、日本では変えることがありません。「桜」という花の存在が、どれほど我々日本人にとって大切であるのか。もちろん、理由はこれだけではないはずですが、理屈ではない「日本人の心」のなかでは密接に関係している気がいたします。「別れ」があるからこそ「出会い」がある。逆もまた真なり。

 「出会い」が無ければ、「別れ」もありません。人世には悲喜こもごもありますが、「出会い」の無い人生は全く平凡なもので、つまらないものだと思いませんか。食の世界でも同じことで、季節折々で旬を迎える食材の無い、食事では飽きてしまうことでしょう。旬の食材の美味しさを知っていために、旬の短い「ひととき」を待ち焦がれ、大いに楽しみます。いずれは終わりを迎える食材の美味しさを見逃さないように。そして、我々はここに、「口福な食時」を見出すのです。

 「美しい(令)」季節に春食材が「和」する逸品は、令和元年にこそふさわしい。そこで、皆様に旬の食材に出会い、食することで無事息災に春を過ごしていただきたい。旬を迎える食材を旬の食材は、人が必要としている栄養に満ちています。そして、人の体は食べのものでできていいます。この想いを込め、Benoitの4月のダイジェスト版を作成いたしました。

皆様にご紹介したい内容は、以下の15件です。

「特選食材」のご案内 8件

「料理/デザート」のご案内 4件

「イベント」のご案内 2件

「余談」 1件

 

香川県まんのう町と香南町からグリーンアスパラガス「さぬきのめざめ」が届いています。≫

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 Benoitの春は「讃岐から目覚める」、香川県の生み出した至高のグリーンアスパラガスが「さぬきのめざめ」と名付けられました。

 香川県仲多度(なかたど)郡まんのう町と高松市香南町より届けられる逸品は、春を代表する食材「グリーンアスパラガス」です。国内で栽培されている多くは「ウエルカム」という海外育成品種です。香川県では、県農業試験場で試験栽培を重ねた末、2005(平成17)年にオリジナル品種として誕生したのが「さぬきのめざめ」。他の品種に比べ春の萌芽が早く、まさに「春一番の美味しいめざめ(萌芽)」な特選食材です。

 アスパラガスは、種をまいて数ヶ月で収穫できる野菜ではなく、植えてから収穫までに3年間を要します。この期間、アスパラガスはわさわさとした葉を成し、香川県ならではの陽射しを十二分に受けることで、根に栄養を蓄えていき枯れてゆく。これを毎年繰り返すことで、根を大地に広げてゆくのです。香川県の気候風土が育んだ逸品。穂先がきゅっと締まった美しい姿、根元までやわらかいが歯ごたえはシャクキシャク。鮮度が良いので、みずみずしいのはもちろん、にじみ出でるアスパラガスのジュースには野菜特有の甘さを感じます。瀬戸内に降り注ぐ太陽の恩恵を十二分に受け、まんのう町そして香南町の皆様が守り抜いた自慢の大地があるからこそ、この美味しさを生みだすのです。

 香川県の自然と、栽培にあたる人々の弛まぬ努力が育んだ、「春一番の美味しいめざめ」がBenoitに届きます。この特選食材を、Benoitシェフのセバスチャンが「Benoitの美味なるめざめ」となるよう、もう一つの特選食材と出会うことで、さらなる高みへと導くのです。

 

≪春に旬を迎える珍しいキノコ「モリーユ茸」が届いています。≫

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 多くのキノコが秋に旬を迎えるのに対し、このモリーユ茸は春に旬を迎える珍しいキノコです。ご覧のように、キノコの傘の部分が網のような姿のため、日本では「あみがさ茸」と名付けられました。そう、日本にも自生しているのです。都内でも見ることができるのですが、素人がキノコに手を出すことは、あまりにも危険極まりないこと。それらしい姿のキノコを見かけても、鑑賞するにとどめてください。なぜ、国産が流通しないのか?和食では美味しさを見出せなかったのでしょう。

 対するヨーロッパでは、春を代表する高級食材の位置付けにあり、モリーユ茸食せずして春は終われないのです。これほどの食材のため、多くの人が「栽培」に取り組むも、いまだ成功例はなく、大自然が育んだ天然のものしかありません。そのため、天候に左右されることはもちろんですが、天気にも大きな影響を受けるのです。適度な雨は大地よりモリーユ茸が顔を出すことを促すも、キノコゆえに雨が降り続くことで、子供の手ほどにいっきに成長してしまうのです。大人の親指の指先ほどの大きさが、食感はもちろん味わい深く美味しいサイズ。大きくなると大味になってしまうのです。この気難しさもまた、この茸の価格を上げてしまう要因のひとつなのです。

 なぜ、日本では見向きもされないキノコが、ヨーロッパではこれほどまでに珍重されるのか。やはり、相性の良い調理法になるのです。生の時にはうんともすんとも美味しさの「お」の字も香らないモリーユ茸が、バターやクリームによって熱を加えられることで、豹変するのです。この驚嘆すべき芳しさと美味しさだからこそ、春を代表する食材の地位を確固たるものにしているのです。

 

≪日欧の春を代表する食材が一堂に会する「アスパラガスとモリーユ茸のフリカッセ」が前菜に。≫

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 前菜ではありますが、今回の主役たりうる一皿であり、自分が心待ちにしていた料理が、「モリーユ茸とグリーンアスパラガスのフリカッセ」です。日欧の春を代表する食材が一堂に会する、フランスと日本との育ちの違いこそあれ、ともに太陽の恵みを十二分に受けた春の食材が一堂に会する。2019年の春は「讃岐で目覚め」た「さぬきのめざめ」が、東京Benoitで、ヨーロッパの山々で目覚めた「モリーユ茸」と出会います。

 香川県の生み出した至高のグリーンアスパラガス「さぬきのめざめ」は、瀬戸内海を想わせる塩分の湯の中で、職人ならではのしゃくっという心地よい食感を残すように湯でられます。さらに、モリーユ茸はもちろんフレッシュが届きます。生の時にはパッとしない香りが、熱を加えることで豹変するのです。芳しい香りを放つこの茸に、相性の良いクリームを加え、旨味を十二分に引き出した中に、フランスのSavoie(サヴォア)県の特産でもあるVin Jaune(ヴァン・ジョーンヌ)と呼ばれる黄色いワインを香りづけに使用。なかなか独特な風味のワインですが、モリーユ茸とクリーム、さらにグリーンアスパラガスとを全て調和させる力を持っている山のワインです。

 プリ・フィックスメニューのメインディッシュの選択肢の中で、ランチは+2,000円、ディナーでは+1,500円にてお選びいただけます。天気・天候に左右されやすいこの2つの春食材のため、ご希望の場合は、ご予約の際に「アスパラガスとモリーユ茸希望」とお伝えいただけると幸いです。春が萌えてくる山を想い描きながら、この美味しさのマリアージュをご堪能いただきたいと思います。

 

≪千葉県勝山漁港より「桜鯛」が直送です。≫

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 千葉県房総半島の先端から、少し内房に入ったところに「勝山漁港」があります。東京湾への入り口に位置しているため、内房外房の豊かな漁場から、網で巻き上げられた魚、釣り上げられた魚と多くの種類が集められているその中から、今回皆様にご紹介するのは「真鯛」。天然の真鯛であることはもちろんですが、今の時期ならでは選ばれし真鯛が、「桜鯛(さくらだい)」です。

 「腐っても鯛」といわれるほど美味しい魚のため、日本では真鯛は魚の王者として君臨し続け、料理の食材としてはもちろん、お祝い事にも欠かすことのできない逸品です。だからなのでしょう、季節のよって愛称がつけられ、産卵後から夏にかけての期間は、特になし。秋は「紅葉鯛(もみじだい)」、冬は「寒鯛(かんだい)」、そして春が「桜鯛(さくらだい)」です。

 言葉というものは、話し手である人々の生活習慣や趣味嗜好が密接にかかわっているようです。今でこそ焼肉ブームの影響から、肉の部位の細かな名称が馴染みになっていますが、肉食が伝播していった時期が明治のことなので、そこまでの歴史がありません。これに対して魚食文化は、四方を海に囲まれ、長細い形をしている日本だからこそ、多種多様雄海産物に恵まれていることもあり、地方色豊かな特産を生みだし、ひいては調理法までをも確立していくことに。さらに、魚が季節を表現することも。だからこそ、学名ではない魚の名前が、我々の生活の中で確固たる地位を得ることになります。

 生活に根付いた魚文化に加え、魚の王者「真鯛」が美味しいがために、日本人は姿が似ていて美味しい魚を「~鯛」と名付けています。今でこそ、魚類図鑑で細かな分類がなされていますが、美味しい魚は美味しい魚であり、細かな学術的な分類など野暮というもの。「イトヨリダイ」や「アマダイ」など、美味しいけれども「マダイ」の仲間ではありません。後に鯛の仲間ではないとわかっても、名を変えることはなく、「もどきダイ」だと一蹴するところが、世界に誇る魚食文化の日本人気質というのでしょう。日本には「サクラダイ」という名の付いた魚がいます。これも「もどきダイ」であり、「桜鯛」とは全く別物。混乱をきたすようですが、このあたりの違いが分かる人が、粋(いき)というもの。

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 さて、今回は正真正銘の天然真鯛で「桜鯛」です。海深く、美味しい海老をたらふく食べている真鯛が、産卵に向けて浅瀬に姿を現す時期が「春」。エビをむしゃむしゃいただいているということで、身の色がピンク色になるのだといい、まさに春色。日本人の心に花咲く「桜」にぴったりという、古人の名付けのセンスに感服です。縦横無尽に大海原を泳いでいるため、身が締まり格別な旨味をもち、運動不足と飽食の養殖とは違い適度な脂によって美味しさを増しています。今この「時」を逃しては、来年を待たねばなりません。4月いっぱいの特選食材です。

 

≪フランスのロワール地方から「ホワイトアスパラガス」が飛行機で旅立ちました。≫

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 春を迎えると、なんとなく山菜を口にしたくなるのが 日本でるならば、ヨーロッパの人々にとって、ホワイトアスパラガスを食せずして春尽きることはないのでしょう。マルシェ(朝市)に山積みにされるこの食材が、人々がいかに待ち望んでいた食材であるかを物語っています。

 アスパラガスの原産は地中海東部。3000年前のエジプト文明の時すでに野生のアスパラガスが食されていたといいます。古代ギリシャ古代ローマ時代には栽培が始まり、フランスがルネッサンスを迎えると同時に、イタリアから持ち込まれたのだといいます。この時代に、丘陵地での栽培方法が確立したことで、ホワイトアスパラガスが世に登場したのだとか。

 アスパラガスの栽培には軽い砂地が適しており、フランスではパリ北西に位置しているArgenteuil(アルジャントゥイユ)町から始まりました。今でも栽培されている最古参の品種にその名を遺しています。そして、Val de Loire(ロワール地方)、Aquitaine(アキテーヌ地方)、そしてBassin Méditeranéen(南フランス)へと栽培ノウハウが伝わっていきます。

 今回、Benoitに送っていただく地は、ロワール地方のロワール河の中流域に位置しているIndre et Loire(アンドル・エ・ロワール)県です。旧地方名はTouraine(トゥーレーヌ)。この地に居を構えるBellorr(ベルオール)研究所は、地元の栽培者を選抜することで、高品質のアスパラガスを栽培し続けています。そこで、彼らが出会った栽培者が、フレデリック・プーパー氏でした。この地の生まれで、70ヘクタールの農地を引き継ぎ、2009年からオーガニック栽培を実践している新進気鋭の若者です。先祖代々続いた栽培ノウハウを踏襲しつつ、積極的に最新技術を取得する。多品種のアスパラガスを選別して植栽し、地熱をうまくコントロールすることで、2月から6月までの長期間、高品質のアスパラガスの供給を可能にしています。彼の年間収穫量は250トンにも及びます。

 ホワイトアスパラガスは、陽射しに当たらない状況で収穫しなければなりません。遮光フィルムを使って栽培することも可能ですが、やはり健全な土壌を維持するには、陽の光は欠かせません。そう、ホワイトアスパラガスはまだ表土から顔を出さない状態で収穫するのです。熟練した者は、見事なまでに土中にあるアスパラガスを見つけるといいます。そして、グージュという特殊な器具ひとつきで、横の芽を傷つけることなく収穫するのです。

 アスパラガスの芽の勢いは強く、日に10cmも伸びるのだといいます。そこで、収穫した後すぐに冷たい水で冷やすことで勢いを止めると同時に、新鮮さを維持しながら穂先がピンク色になるのを防ぐ。傷は酸化によって品質を著しく損なうため、専任のプロフェッショナルが厳しい目で選別を行い、木箱へ納められ、すぐに世界に向けて旅立ちます。

 フランス国王として全盛を極めた太陽王ルイ14世は、ヴェルサイユ宮殿の庭師に、「一年中収穫できる栽培方法を模索するように」と命じたという。それほどまでに愛してやまないアスパラガス。いつの時代もどの国も、権力者はいいたい放題です。旬があるからこそ美味しいのであり、収穫が待ち遠しい。時期が決まっているからこそ、失う前に楽しもうと。まさに桜と同じ、「終わるなよ」といって素直に聞いてくれるようでは、食す楽しさも美味しさも半減するというものでしょう。冒頭の句のいう、「思いまさまし」です。

 

勝山漁港直送「桜鯛」のグルノーブル風とロワール産ホワイトアスパラガス≫

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 千葉県勝山漁港直送の「桜鯛」は、表面に焼き色を付けるようにし、オーブンを使ってふんわりと焼き上げます。大海原が育んだ真鯛は、身質の見事なまでの食感に加え、海深いところで美味しいものを食べているのでしょう、溢れんばかりの旨味に満ちています。さらに、この時期らしいきれいな脂を持ち合わせているため、火入れには細心の注意を払わなければなりません。Benoitキッチンスタッフの焼きの職人技が、桜鯛の美味しさを十二分に引き出すのです。

 そして、フランスからは春食材の代名詞的な逸品、ロワール地方Indre et Loire(アンドル・エ・ロワール)県から送られてくる「ホワイトアスパラガス」です。フランスの大地が育んだ独特の春の苦みと優しく甘い味わい。これこそ、日本でなかなか内包できないフランスのホワイトアスパラガスの美味しさです。この特徴を生かすように、シンプルに茹であげたものを真鯛の下に。

 バターを火にかけ、香り立つ一瞬を見極めた後に、レモンの心地良い酸味とケッパーの旨味を加り。日仏を代表する2つの特選食材が、Benoitで一堂に会した時、お皿の上でどのようなハーモニーを奏でるのでしょうか。最後に、Benoitシェフのセバスチャンが、味わいのアクセントとして選んだ「ラディッシュ(はつか大根)」。まるで、満開に咲き誇る桜の花々の中に、次なる出番の桜の深い紅色の若葉を想わせます。いや、幹(桜鯛)に枝(ホワイトアスパラガス)が伸び、そこに桜(ラディッシュ)が咲くイメージなのか。はたまた、別か。これは、皆様の判断にゆだねようと思います。

 プリ・フィックスメニューのメインディッシュの選択肢の中で、ランチは+1,500円、ディナーでは+1,200円にてお選びいただけます。天気・天候に左右されやすいこの2つの春食材のため、ご希望の場合は、ご予約の際に「桜鯛とホワイトアスパラガス希望」とお伝えいただけると幸いです。

 

愛媛県宇和島より「樹成完熟デコポン」」が届きました。≫

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 不知火(しらぬい)という品種の中でも、甘味と酸味が基準値を超えたもののみに与えられる名称のため、この名を名乗ることができるだけでも、美味しさは保証されたようなもの。日本屈指のミカンの産地である愛媛県の中にありながら、海より隆起した地形ゆえにミネラル分を多く含み、急斜面だからこそ水はけの良さを誇ると同時に、恵まれた日照条件を満たす地。温暖だからという理由以外に、数々の条件を兼ねそろえた、愛媛県の西側に位置する宇和島市の吉田町の産物です。

 今回は愛媛県東部、瀬戸内海に面している西条市、JA周桑(しゅうそう)のもと、県下最大級の直売所として2006年にオープンした「周ちゃん広場」。他の直売所と異なることは、地元の食材のみならず、県内の素晴らし食材を探し集めていること。いうなれば、愛媛県の農について知らぬことはないプロ中のプロが選んだ逸品がそろう直売所なのです。前述した宇和島吉田町の多種にわたる柑橘を育む山ひとつ分の全量を買い取り販売しているといいます。この柑橘フルーツを指揮しているのが、皆より柑橘のプロと称された武田さんです。

 彼女の見立てにより、吉田町で完熟まで収穫せずに樹に実らせておく「樹成完熟デコポン」がBenoitに届いています。完熟に向かえば向かうほど、糖度が上がり酸味が減るため、劣化・腐敗というリスクが高まります。その危険を冒してまでも、美味しさを追求することを求めたのが「樹成完熟」なのです。天気との駆け引きの中で、どこまで耐えることができるのかを見極めることは、経験なくして成しえないもの。彼らがここまで求めるにはそれなりの理由が存在します。どれほどの美味しさなのか、この機会にぜひご賞味ください。来週いっぱいご用意できるかどうかは、このデコポンに祈るのみ。

 

愛媛県宇和島の「樹成完熟デコポン」と熊本県天草の「不知火」「パール柑」で至高の柑橘デザート≫

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 デザートは、これを以外に春を語るものは無いのではないでしょうか。今まさに旬を迎えている、熊本県を代表する柑橘「不知火」と「パール柑」を惜しげもなく使用し、冬眠気味の我々の体を目覚めさせてくれる今の時期ならではの至高の逸品。不知火とデコポンはパール柑、それぞれ色味の違う果肉と果皮は、見た目にも美しいばかりではなく、味わいや香りの違いを生み出します。果実はそのままに、果皮は甘さ控えめのシロップで煮るようにコンフィへ、さらに果肉と果実をつかって甘ほろ苦いマルムラードへ。さらに、果汁を絞り、そこへ果肉と果皮を加えて仕上げた、輝かんばかりに美しいオレンジ色を放つシャーベットは、今回の特選食材2種類の柑橘の魅力を凝縮したかのよう。さらに愛媛県から「樹成(きなり)完熟デコポン」が加わることになりました。

 余計な甘さは一切なし。旬の柑橘のもつ「甘さ」「酸味」「苦さ」が、見事なまでのハーモニーを奏でることで、ひとつの作品へと仕上がります。アーモンドのシャーベットを添え、イタリアンメレンゲを軽やかにぱりっと焼き上げたものを飾る。メレンゲを使うことで、デザートの名称は「ヴァシュラン」です。熊本県天草と愛媛県宇和島がはなつ「春の魅力」を我々に教えてくれることになるでしょう。

 樹成完熟デコポンでのご用意は、時間との勝負です。この機会をお見逃し無きように。プリ・フィックスメニューのデザートの選択肢の中で、ランチ・ディナーともに+800円にてお選びいただけます。

 

≪イタリアの「グリーンピース」が飛行機でBenoitに。≫

kitahira.hatenablog.com

 

≪フランス・ロワール地方、モローさん「Selles-sur-Cher (セル・スュル・シェル)のご案内です。≫

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 ロワール河の中流域は、古城が多くある観光名所。その周りに広がるブドウ畑と広大な牧草地が、彼の地を風光明媚なものへと演出しているかのようです。その牧草地で放牧されているのが山羊(やぎ)。この地域は、フランスで抜群の品質と美味しさ、種類の多さを誇る山羊チーズの一大産地です。

 多々ある山羊チーズの中でも、最高傑作だといわれているのが、なんとも発音の難しい「Selles-sur-Cher (セル・スュル・シェル)」。その産地にあり、山羊のスペシャリストとして名を馳せるのがMOREAU(モロー)さんです。

 山羊ミルクらしい優しさの中に心地よい酸味、チーズに仕上げた時の、しっとりとした水分を含みながら、きめの細やかな食感。一口ほおばると、かすかな甘みと程よい塩加減が、きれいな余韻となって続きます。切った時の断面の美しさは必見です。さらに、若草が牧草地を輝かんばかりに美しい緑色に染める春。山羊がその春の草を食むことで生み出されるミルクは、一年で一番爽やかな味わいをもっています。そのミルクでモローさんが仕上げたセル・スュル・シェルがBenoitに届いています。

 

≪「Pulpe de CACAO(ピュルプ・ドゥ・カカオ)」がBenoitに届きました。≫

kitahira.hatenablog.com

 

静岡県掛川特産「紅ほっぺ」の真っ赤なデザートは4月末までです。≫

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 静岡県を代表するイチゴの品種「紅ほっぺ」を、Mサイズ指定でBenoitへ送っていただいております。これを、一人20粒ほど使用。10粒分は半分にカットしてオリーブオイルと塩少々。もう10粒分は、レモンとともにスチームオーブンんにかけザルの上に。ゆっくりと滴り落ちる紅ほっぺのジュース。ザルに残ったイチゴは、そのままマルムラードへ姿を変え、ジュースはオリーブオイルが加えられてソースへ。そのままを盛り付ける中に、心地良い酸味とほろ苦さを演出するレモンの皮のコンフィ。さらに爽やかなミルクの風味を生かしたフレッシュチーズのソルベを一番上に。

 皆様お察しの通り、「イチゴそのもの美味しさ」が、今回のデザートのポイントになります。だからこそ、彼の地を代表する品種を選び、その中でも高品質を栽培し続ける「赤ずきんちゃんおもしろ農園」さんから直送しなければならなかったのです。違った表情をみせるイチゴに、レモンとソルベが加わり、オリーブオイルを加えたイチゴジュースをそそぐ。一つの器の中で、それぞれが奏でられた時、このデザートが皆様を「口福な食時」へと誘(いざな)うことになるでしょう。

 プリ・フィックスメニューのデザートの選択肢の中で、ランチ・ディナーともに+1,000円にてお選びいただけます。

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シャンパーニュメーカーズディナー「THIÉNOT(ティエノー)のご案内です。≫

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 シャンパーニュ地方・ランスに1985年に誕生したシャンパーニュメゾン「ティエノー」。そのシャンパーニュは保守的ではなく、常に新しい独創性を求める現代的スタイルです。創業者・アラン・ティエノ、長男スタニスラス、長女ガランスの3名による家族経営のシャンパーニュメゾンで、それぞれの名を冠したシャンパーニュがあるのも特徴のひとつです。また、アーティスト「スピーディー・グラフィット」とコラボレーションしたマグナムボトルはそのデザイン性から多くの反響を生みました。今回が初来日のガランス女史をお迎えし、豪華シャンパーニュディナーを行います。ラインナップはデザインの異なる1stと2ndの「スピーディーグラフィット」。また、それぞれの名前を冠したファミリーシャンパーニュをお楽しみいただきます。

 

Benoitシャンパーニュメーカーズディナー「THIÉNOT(ティエノー)

日時:2019530()18:30より受付開始 19:00開演

会費:18,000(ワイン・お食事代・サービス料込、税別)

※ご予約を受け付けております。電話もしくは、Benoitへメールにてご連絡をお願いいたします。質問などございましたら、何気兼ねなくお問い合わせ、もしくは返信をお願いいたします。

<ラインナップ>

NV  SPEEDY 1st Edition Magnum

NV  SPEEDY 2nd Edition Magnum

2008  Millesimé

2007  Cuvée Stanislas, Blanc de Blancs

2008  Cuvée Garance, Blanc de Noirs

2007  Cuvée Alain Thiénot

 

≪ミュージックディナー「三味線プレイヤー 史佳」のご案内です。≫

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 津軽三味線の楽曲の原型は新潟県にあるといいます。それがためなのか、初代高橋竹山師の竹山流津軽三味線を正しく継承していこうと「新潟高橋竹山会」が誕生し、今は二代目会主の高橋竹育さんが100名近い会員を束ねています。その高橋竹育さんを母にもち、さらに師匠として9歳より三味線の世界に入りました。音の響きを大切にする「弾き三味線」を得意とし、古典を大切なベースとしながらも、伝統芸能の枠を超えた新しい「ニッポンの音楽」を求め、国内外の演奏活動・公演活動を行っている三味線プレイヤー「史佳 Fimiyoshi」さん。2019年10月5日にカーネギーホールでの演奏が決まっています。その前にBenoitで奏でます。前哨戦?いえいえ、史佳さんは本気です。

 

Benoitミュージックディナー 「三味線プレイヤー 史佳Fumiyoshi ≫」

日時:2019612()18:30より受付開始 19:00開演

会費:18,000(パフォーマンス・ワイン・お食事代・サービス料込、税別)

※ご予約を受け付けております。電話もしくは、Benoitへメールにてご連絡をお願いいたします。質問などございましたら、何気兼ねなくお問い合わせ、もしくは返信をお願いいたします。

≪史佳Fumiyoshi プロフィール≫

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≪余談ですが、2019年の「干支」のお話です。≫

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 古代中国の賢人の英知の結晶でもある「干支」。なぜこの漢字なのか?もちろん、自分は占い師ではなく、漢字の語源から読み解いてみたものです。添付の画像は、今年早々に撮影したものです。そして、ブログの中には昨年の初夏の画像。なぜ「ユズリハ」を干支の話で選んだのか?この理由も理解していただけるはずです。

kitahira.hatenablog.com

 

 早乙女(さおとめ)、早苗(さなえ)など、「さ」を冠するものは、田の神がかかわる神聖なものという意味が込められているそうです。「桜」は「サ(田の神)・クラ(座る)」であり、春に山から舞い降りた田の神が降り立つ木なのだといいます。これを祝うお祭りこそ、今の「花見イベント」のルーツなのだとか。その後、田の神はカカシに宿り田を見守る、そして10月の神嘗祭で山に帰るのです。農耕民族の日本人にとって、稲作が生活の糧、この桜の開花が、田植え前の田起こしの目安であり、まさに仕事始めお知らせです。桜咲く中での学校の卒業式、桜の花びらが舞う中での入学式、会社での入社や異動など…この時期につきものの出会いと別れ。感情が交錯する節目として日本人が選んだのが、春でした。海外では夏前に卒業、9月に入学することが多いシステムの中で、日本人が春に固辞する理由がこの辺りにある気がいたします。

 桜もソメイヨシノから八重桜へ移りつつある今日この頃。十人十色の想いの詰まった百人百様の人生がスタートしていることと思います。このような時だからこそ、自分の人生はもちろん、身近な方の人生にも溢れんばかりの幸せが訪れるように、声に出して祝してみてはいかがでしょうか。日本には「言祝ぐ(ことほぐ)」という美しいことばがあります。声に出すことで実現するという、古来より信じられてきた言霊思想。新たな門出を、出会いを言祝いでください。きっと素晴らしい一年を迎えることができると思います。「言祝ぐ」は「寿ぐ(ことほぐ)」へ、そして「寿(ことぶき)」と姿を変え、今に生き続けています。

 

いつもながらの長文を読んでいいただき、誠にありがとうございます。

末筆ではございますは、皆様の新たな門出が幸多きことを、遠く青山の地よりお祈り申し上げます。書くだけでは効果は不十分でしょう。続きは皆様と再会した際に、お会いできる時を、心待ちにしております。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com