kitahira blog

徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

Benoit特別プラン「四月尽」のご案内です。

 春の陽気に誘われるかのように花開いた「桜」も、すでに葉桜へ。春を代表する桜の開花は、我々に田を耕す「田打ち」のタイミングを教えてくれます。東北では、桜の開花が遅いためコブシの花を基準にしていたようで、その名残が「田打ち桜」という栄冠を手に入れています。稲作では、田打ちが仕事始め。日本では4月に入学式などの「新たな旅立ち」を迎えるのは、このあたりに理由があるのでしょうか。それとも、厳しい冬を乗り切り、美しく花開く桜に魅了されるも、その花期の短さにある種の「潔さ」に感じ入る日本人の感性なのでしょうか。はたまた、萌芽し花開くも、すぐに花散り葉が生い茂る。短い期間に移り行く桜の姿に、出会いと別れを見いだしたからなのでしょうか。 

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さくら色に 衣はふかく 染めて着む 花の散りなむ のちの形見に  紀有朋(ありとも) 古今和歌集より

 「 惜花(せきか)」の想いは、今も昔も変わることはありません。それが、開花を待ち望んだ桜であればなおのこと。散るを惜しむがあまりに、桜色を染め込んだ着衣を、さらにはお化粧に桜色を取り入れるのも、この時期ならではのこと。古人も観桜の際に、花散ってからも思い出として脳裏に焼き付けんばかりに、桜色の衣を身につけることが風流だったのだといいます。江戸時代には、頬がぽっと色付くような桜色で染める、「うっきり」というお化粧がありました。彼の時代はおしろいを使うも紙で抑えることで化粧をしていないような素肌を演出し、「紅花(べにばな)」で頬を染めていました。血色良く見え艶やかな「うっきり」を演出するのが「桜色」であり、下の画像の色合いです。

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 ところが、古今和歌集の編纂された平安時代は、少し色合いが違っていたようなのです。今の「桜色」であれば、「衣に深く染める」という表現に違和感を覚えます。染料を生地に一回染め込むことが「一入(ひとしお)」であれば、桜色は深く染め込む「八入(やしお)」ではないか。では、紀有朋が詠う「深く染めた着物」は、いったい「どのような色」だったのでしょうか。染織を生業とする人が継承してきた伝統色、八入の「さくら色」は、今の桜色とは別の色合いのようです。

 桜は桜でも、「染井吉野(ソメイヨシノ)」ではなく、「山桜(ヤマザクラ)」の若葉の色なのだと。若葉だからといって「透けるようで、やわらかい緑色」ではありません。百聞は一見に如かず、ご覧ください。

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 決して枯れているわけではなく、これが「山桜の若葉」であり、紅葉といえば紅葉ですが、この色から美しい深緑へと色変わりしてゆきます。これが山桜の「葉萌ゆる色」であり、この色を染織したものを身につけ、桜の花を愛でることが風雅の慣わしであったのだといいます。花散りし後に、咲き誇る姿を思い起こさせてくれるようにと、さくら色の染めた衣をまとう。その姿で観桜することは、花の姿を脳裏に焼き付けると同時に、八入に染められたさくら色の着衣に、桜の姿を憑依させるかのように。そして惜花を偲びながら、初夏を迎える準備をする。まるで四季の色彩の機微を、自然に習いながら楽しんでいるかのようです。

 今、Benoitで皆様にお勧めしている「千葉県勝山漁港直送“桜鯛”とホワイトアスパラガス」の逸品。画像に見る「二十日大根」を、お皿の上に花咲く桜色の花と見るか?それとも、山桜のように白い花咲く中に萌える若葉と見るか?Benoitシェフ、セバスチャンが、知ってか知らずか、なかなか趣き深いことを我々に問うてきています。

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 「桜色」もしくは「さくら色」を身にまとい、Benoitで夜桜(ディナーの桜鯛)を鑑賞(ご賞味)いただくというのも一興なのではないか。そこで、皆様には、特別プライスの「4月尽(しがつじん)特別プラン」をご案内させていただきます。期間は、メールを受け取っていただいた日より、430日までです。各コース料理の内容は、プリ・フィックスメニューからお選びいただけます。ご予約人数が8名様を超える場合は、ご相談させてください。

 

4月尽特別プラン≫

ディナー

前菜x2+メインディッシュ+デザート

7,100円→6,100円(税サ別)

ディナー

前菜+メインディッシュ+デザートx2

夢のダブルデザート→6,100円(税サ別)

※ご予約は、電話もしくは、Benoitへメールにてご連絡をお願いいたします。質問などございましたら、何気兼ねなくお問い合わせ、もしくは返信をお願いいたします。

 

 今回の桜鯛の逸品は、+1,200円の追加料金でお選びいただけます。それ以外にも、春に旬を迎えている逸品をそろえております。今月で終わりを迎えるものもございます。特選食材とお勧めの逸品の詳細をご紹介する「4月のダイジェスト版」は、「はてなブログ」に掲載いたしました。お時間のある時に、以下のURLよりご訪問いただけると幸いです。27日28日以外は、自慢の料理の数々を、自分が皆様に大いに語らせていただきます。

kitahira.hatenablog.com

 

 この時期になるとよく質問をいただくのが、自分が座右の銘としている、「観梅の心、観桜の目」の意味です。正直にいうと正確な意味は分かっていません。この名文との出会いは7年ほど前のことでした。どの本の中だったかも思い出せません。歳時記を長文レポートの題材としていることもあり、意味深で気になるものの、そのまま放置されたまま月日は流れ、再度出会うことになったのが5年前の某新聞のコラムでしたの中。運命を感じ、調べてみたものの、はっきりとは分からず、こうなれば自分で解釈してみようという結論にいたったのです。

 梅と桜とは春を代表する花であることは、周知の事実。白梅、紅梅とありますが、やはり主役は白。桜に関しても、白から淡い紅色まで、さらには黄色に緑と多種多様にわたりますが、やはり桜は淡い白です。花びらに違いはありますが、色や一見の姿は似た者同士。「花」といえば、万葉の時代は「梅」を指し、以降は「桜」を意味します。どちらも時代時代を反映する春の代表花。まだ日本固有の仮名文字(ひらがな)の無かった万葉の時代。中国から伝わってきた漢字が書き言葉です。舶来へのあこがれからでしょうか、中国から伝わってきたのが「梅」です。対する「桜」は日本固有の品種、一時は「花」の地位を梅に奪われるも、今では確固たる地位を確立しています。

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 さて、本題です。この画像は白梅の花です。2月のまだまだ寒い頃より、春の訪れを告げるかのように、ぽつりぽつりと花開いていくため、比較的長い期間を楽しめます。まだ冬枯れの閑散とした景色の中で、おだやかな春風に香りを漂わせながら、順を追って花開く姿に、何か奥ゆかしさを感じます。ただ舶来もの、それだけではない魅力があります。

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 そして、 桜の花は、咲き始めると一気に満開へ。その姿に圧巻するも、見ごたえのある期間は1週間ほど。一輪一論の花は決して長く花開いていることはなく、3~4日にて花の生涯を閉じることになります。春の陽気に誘われるかのように多くの花が咲き誇る時期にあり、桜の満開の姿は他を圧倒しています。古の時代、今のように食が豊かではありませんでした。しかし、美味しく食せる実を成さない桜がもてはやされたことの理由は、満開の姿が言葉にならないほどの美しさを誇るからではないでしょうか。

 「梅」は一輪一輪時間をかけながら咲き続けます。顔を近づけながら香りや花の姿を愛でるように。「桜」は近くで鑑賞するもよし、ですが、遠めに眺める満開に咲き誇る姿にこそ、得も言えぬ美しさがあります。ということは、「観梅の心」は「小さなことも見逃さずない、細やかな心遣い」を、「観桜の目」は「大局を見誤らない、時世を見極めの目」のことを意味しているのだと。

 人と人との助け合いで成り立つ社会における処世術を、我々に教えてくれている気がいたします。特に自分のように接客を生業にしている者にとっては、各テーブルのお客様お一人お一人の所作や言葉から、その機微を捉え最善を尽くさねばなりません。さらに、日ごと月ごとに変わる食材、それによって仕上げられる料理の数々。そこへ、レストランの雰囲気が加わることで、料理が輝きをまといます。飽くなき探求心と、目先の欲に囚われずに時世を読み解くことで、魅力あるBenoitが姿を見せるのです。前者が「観梅の心」であれば、後者は「観桜の目」。これを身につけなければならない。そこで、自分の座右の銘としたのです。勝手な解釈ではありますが、なかなかに説得力があるのではないでしょうか。

 毎年、梅を見、桜を見ることで、再認識させられ忘れることない座右の銘です。こう考えると、やはり身を引き締め、事始めとする新年度を4月とするのは、自分にはちょうど良いタイミングなのかもしれません。

 

 古代中国を発祥とする二十四節気では、四季の始まりを「立春」「立夏」「立秋」「立冬」と記しています。このそれぞれの日を迎えるまでの18日間の「季節の移り変わる期間」が「土用」です。「土用」は「土旺」とも書き、大地の勢いが旺盛になる時というのです。そのため、土をいじくるような、地鎮祭上棟式なイベントは行わず、さらに昔の土葬なども避けていたようです。農耕民族らしい、大地への畏敬の表れでもあるようです。土用は、変化に伴う強大なエネルギーに満ち。大地は、人が太刀打ちできないほどの自然の力を備えている期間。何やら新興宗教のような話になってきていますが、土用の期間というのは「季節の変わり目」であり、とかく寒暖・乾湿が大きく、不安定な天気が続きます。ここで無理をすると、大病を患いますよ、という先人たちからの我々へのメッセージなのでしょう。我々は農耕民族ですから、土をいじくるなということは、「無理に農作業をしないで、体を休めなさい」ということに。

 同じ中国で誕生した「五行説」では、1年は春夏秋冬の「四季」に、季節の変わり目である「土用」が加わり、5つに分けられ、それぞれに色があてがわれています。暑さの盛りでもある「夏は赤」、寒さ厳しい「冬は黒」。待望の実りの時期であり、紅葉・黄葉と彩り豊かですが「秋は白」。若葉青々しいというように、かつては緑も青に含まれていましたので、「春は青」。ちなみに「青春」はここから誕生したようです。では、土用は何色なのか?寒暖乾湿の差が激しい季節の移り変わる時期は、健康管理に注意しなさいよとの警告でしょうか、「土用は黄」です。

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 ここは先人たちのアドバイスに従い、「働き方改革」も施行されたことですし、十分な休養と睡眠を意識してみてはいかがでしょうか。そして、「美しい(令)」季節に春食材が「和」する逸品は、令和元年にこそふさわしい。そこで、皆様に旬の食材に出会い、食することで無事息災に春を過ごしていただきたい。旬を迎える食材を旬の食材は、人が必要としている栄養に満ちています。そして、人の体は食べたものでできていいます。さあ、Benoitへ。皆様を「口福な食時」なひとときへとご案内いたします。何かご要望・疑問な点などございましたら、何気兼ねなく返信ください。いつも温かいお心遣い本当にありがとうございます。再会を心待ちにしております。

 

いつもながらの長文を読んでいいただき、誠にありがとうございます。

末筆ではございますは、ご健康とご多幸を、イノシシ(風水では無病息災の象徴)が皆様をお守りくださるよう、青山の地よりお祈り申し上げます。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com