kitahira blog

徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

Benoit「一夜限りの≪夏食材の饗宴≫」のご案内です。

 2019年6月7日に気象庁が「関東梅雨入り」を発表いたしました。艶やかに咲き誇った春の花々の色は、晩春を迎えるにつれ黄色へ、そして紫へ。そして、初夏の梅雨時期前後は、なにかと白い花が目に入るものです。街路樹で目にする「ヤマボウシ」、地表を飾る梅雨を告げる花「ドクダミ」、そして今まさに咲き誇っているのが「クチナシ」。厚みのある花びらを、濃い緑の葉が生い茂る中でいっぱい広げる大きな花は、まるで和菓子の「ねりきり」のようです。

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 日本の「三大香木」とは、春の「ジンチョウゲ」、夏が「クチナシ」、秋は「キンモクセイ」。「ジンチョウゲ」と「キンモクセイ」は芳しく、ある種の爽やかさを感じる香りのため、芳香剤などでも採用されているのを目にすると思います。「クチナシ」はというと、この花の前に立ち止まった時、その理由がわかっていただけるのではないでしょうか。曇天の中、色濃い緑の葉が生い茂る中に、白さ輝く花びらを大きく開く美しさ。その花のまわりに漂う甘い香りは、バニラビーンズを贅沢に加えて作ったカスタードクリームのような…まだクリームが温かい時のあの香り。湿気の多い時期だからこそ、濃密に感じるのでしょうか。うっとりとする妖艶なこの香りが、部屋中に満ち満ちていることを想像すると、やる気の全てを削いでゆき、リラックスしすぎる、ただただこの香りに溺れてゆく自分の姿が目に浮かびます。

 日本原産のクチナシ。秋には結実するも、果実が裂けないために、「口無し」な実なのだと。これが命名の由来だともいいます(※もちろん諸説あり)。この実を乾燥させたものは、「山梔子(さんしし)」や「梔子(しし)」とよばれ、漢方の生薬として活用され、真っ白な花からは想像もつかない、赤みがかった黄色の「梔子(くちなし)色」の染料へ。さらには、染物ばかりではなく、和菓子やたくあんなどの色付けにも使用されています。

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 残念ながら、花から魅惑の香の成分は抽出できていません。しかし、その果実は漢方薬に、染料に、食品添加物へと、用途は多岐にわたります。さらに、花も果実も樹本体も、まったく使用せず、ただ実を象(かたど)ったものが、将棋盤の足に。「クチナシ」は「口無し」であり、第三者は口出し無用という意味が込められているといいます。

 棋士にとって今後の明暗を分かつことになる真剣勝負に、自由気ままに口出すことの煩(わずわら)わしさ。何も将棋の世界に限らず、何か真剣に取り組んでいるときに、横から茶々を入れられる経験をされている方は多いのではないでしょうか。レベルの違いはありますが、想いは同じです。聞き流せば良いのですが、なかなかそうはいかないものです。なぜか?言葉の持つ力を、我々日本人が信じているから、煩わしさに加えて何かの想いに駆られるのでは?「言霊(ことだま)」という考え方です。

 言葉には霊力が宿ったおり、口に出すことで実現してゆくという、「言霊信仰(ことだましんこう)」というものを、知らず知らずに信じているからなのでしょう。「祝詞(のりと)」や「忌言葉(いみことば)」のような宗教的な雰囲気は薄くなりつつも、今なお我々の生活に根付いているものです。例えば、結婚式などで「別れる」「割れる」、何かの契約の時に「流れる」などの言葉の使用を避けるようにします。宴席の時においても、「終わり」ではなく、これから発展する意味を含む「お開き」と。何の確証もないのですが、口に出すことはもちろん、書面に「書く」場合にも同じような思いを抱いているのです。オリンピック選手やプロスポーツ選手の小学校の時の寄せ書きなどを振り返ると、しっかりと「将来の夢」に、今の姿を書いている。口に出す、書き記すことで、夢が夢ではなくなり、実現してゆくのです。努力を続けチャンスを掴みと本人の実力の賜物ではありますが、何か「言霊」の力を信じたくはなりませんか?

 

 「言祝ぐ(ことほぐ)」とは、言葉によって祝福の気持ちを伝えること。ここから「寿(ことぶき)」が誕生しています。そこで、四季折々に姿を見せる旬の食材には精霊が宿り、その満ち満ちた栄養によって我々を養ってくれる。栄養ばかりではなく、その美味しさも言うに及ばず。Benoitシェフのセバスチャンが、アラン・デュカスの料理哲学「素材を厳選し、その素材の持ちうる香りと味わいを十二分に引き出し、表現すること」を踏襲しながら、旬の食材を使い、一夜限りの「夏食材の饗宴」を、Benoitで開催することを、クチナシではなく「言霊の力」を借りて皆様に言祝がせていただきます。

 開催といっても、ミュージックディナーのように、何かイベントがあるわけでありません。通常通りのディナー営業です。しかし、この一夜だけは、シェフのセバスチャンが、「今、これを食せずして夏は始まらない」という思いを込めて旬の食材を使い組み立てたコース料理のみご用意いたします。Benoitディナーの営業時間内のご都合の良い時をご指定いただき、ご予約いただけると幸いです。

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Benoit特選メニュー「一夜限りの≪夏食材の饗宴≫」

日時:201971()17:30より(21:00LO)Benoitの営業時間内にお越しください。

コース料金:お一人様 9,800(税サ別)

※ご予約をご希望の際は、自分へメールをお送りいただくか、Benoitへご連絡をいただけると幸いです。何か質問などございましたら、何気兼ねなくお問い合わせください。

いったいどのような饗宴となるのか。夏を代表する旬の食材は、日持ちのするものが少なく、食材を厳選し、手に入るかどうかの確認をとるのもなかなか難儀な作業でした。よほど天候不順などの問題がなければですが、食材が決まり、シェフのイメージするコース料理「夏食材の饗宴」メニューをご紹介させていただきます。食材の都合により、直前に変更になる場合もございます。ご理解のほど、なにとぞよろしくお願いいたします。

 

Menu de saison du CHEF “C’est l’ÉTÉ !! ”

≪一口の前菜≫

スウィートコーントマトのスープ

≪前菜≫

(仮称) イタリア産アーティチョークのバリグール

≪魚料理≫

(仮称) Benoit風ブイヤベース オマール海老/カサゴ/シマアジ/ホタテ貝

≪肉料理≫

(仮称) ウサギモモ肉の煮込み マスタード風味 福井県六条大麦

≪デザート≫

(仮称) 宮崎県綾町より完熟マンゴーのタルト

 

※苦手な食材や、アレルギー食材が組み込まれている場合には、お教えいただけると幸いです。アレンジするか、別の料理を提案させていただきます。

 

 今回のメニューを鑑み、シェフソムリエの永田から、「料理とワインのマリアージュ」の提案です。シャンパーニュ、白・ロゼ・赤ワインの計4杯のセットで、お一人様7,000(税サ別)にてペアリングをご用意しようと思います。

NV  Louis Roederer   Brut Premier 

2012  Pessac-Léognan  Cteau Latour Martillac

2015  Côtes de Provence rosé « Garrus »  Château D'Esclans

1995  Charmes-Chambertin grand cru  Charles Noëllat

 最初のシャンパーニュと、殿(しんがり)を担う赤ワインについては、コメントの必要はないでしょう。シャンパーニュの中でも確固たる地位を得ている逸品「ルイ・ロデレール」。そして、ブルゴーニュ地方のChambertin村で、特級を名乗ることのできる「シャルム・シャンベルタン」というだけでも心躍るものですが、今回は24年前にブドウを摘み醸されたもの。もともとが美味なるワインを醸す地に加え、「時」だけが成せる魔法によって、どのような「旨味」に変わってゆくのか?皆様に教えてくれるはずです。

 2つ目のボルドーの白ワイン。ボルドー地方に於いて赤ワイン銘醸地で名を馳す「Médoc」地区。1855年のワインの格付けが行われた中で、Château Haut-Brion以外は全てこの地区から選ばれました。では、前出のワインはどの地域かというと、Médocから少し河を上ったところに「Grave」地区があり、この中でも美味しい赤ワインを醸す地が「Pessac-Léognan」です。ボルドー=赤ワインという図式が我々を占有する中で、赤ワインだけで「商売は成り立つ」でしょう。しかし、白ワインを醸すのはなぜか?美味なるワインに仕上げる自信があるからです。

 世界で醸されているロゼワインの9割以上が「辛口」。その頂点に君臨しているのではないかと思う逸品を醸しているのが、プロヴァンスに居を構えるChâteau D'Esclansです。金持ちが道楽で作っている、名ばかりの商売っ気の無いワインではありません。商売のため、多種多様に及ぶワインを買い付けるのが「バイヤー」であり、彼らの審美眼が価格に反映されます。そのプロがGarrusというロゼワインに、世界最高値をつけました。ネットで調べてみてください、きっと驚かれることでしょう。最高のロゼワインを追い求め、辿り着いた境地ともいうべき逸品です。

 この豪華なラインナップのご用意のため、14名様限定です。ご希望の場合はご予約の際にお伝えいただくと幸いです。当夜にご希望の旨をお伝えいただけることも可能ですが、前回はご希望に添えない方が多くいらっしゃったため、事前にお伝えいただくことをお勧めいたします。

 

 以下に今回のメニューや食材について、どれほどのものか自慢をさせていただきます。参考までに、Benoitシェフのセバスチャンは、生まれはBretagne(ブルターニュ)地方ですが、育った地はProvence-Alpes-Côte d’Azur(以下プロヴァンス)地方。そう、人は、食べたもので成り立つとはよく言ったもので、幼少の頃より口にしてきたものが、そのまま料理のお手本となるのです。これは、セバスチャンに限ったことではありません。巨匠アラン・デュカスも例外ではなく、ランド地方の四季折々の食材豊かな地で、子供のころに食べ馴染んだ母親の手料理が基本になっているのだと、本人も言っているのです。彼の料理哲学である「素材を厳選し、その素材の持ちうる香りと味わいを十二分に引き出し、表現すること」の原点は、幼少時代に育まれていったのでしょう。アラン・デュカスの元で研鑽に励み、食に対するノウハウを叩き込まれるも、根本になるのはセバスチャンの育った地であるプロヴァンス地方です。あらましは以下を参照ください。

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今回は道のりの長いコースを組み立てたため、前菜の前の「小さな一品」としてご用意するのは、「トウモロコシ」のスープです。初夏を代表する食材であり、甘く美味しいトウモロコシの美味しさは、誰しもが知るところ。しかし、収穫後1日経つと、糖度が0.5度も落ちるといいます。そう、鮮度を最も意識しなければなりません。そこで、すでに始まっているトウモロコシは、宮崎県綾町から始まり。香川県観音寺市へ移ろうとしています。桜前線ならぬ「Benoitトウモロコシ前線」の詳細は、以下のURLより「はてなブログ」をご訪問いただけると幸いです。

kitahira.hatenablog.com

 ただし、トウモロコシの冷たいスープでは芸がありません。やはり夏ということもあり、旬の食材であるトマトを加えます。スウィートコーンの甘さとコクに、「トマト」特有の心地良い酸味とみずみずしさを加えます、いったいどのようなスープに仕上がっているのか、この美味しさの想像がつきますか。

 

 前菜は、初夏を代表する食材である「アーティチョーク」です。これまた初夏を代表する食材です。ホワイトアスパラガスを食せずして春は終われず、アーティチョークを食せずして夏は迎えられない、まさにヨーロッパの人々にとっての季節を迎えるための旬の食材です。日本でも栽培され始めていますが、まだまだ日本では馴染みの食材ではないため、栽培ノウハウが確立していないといいます。そして、栽培品種もぽてっとまるまるしたものが主流です。

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 今回は、海外の力を借り、南フランスの代表的なÉpineux(エピノー)という品種がイタリアから届きます。前述したぽてっとしたものは、湯がかれ後に、苞片(ほうへん)と呼ばれる花を包む一片一片を歯でしごくように楽しみます。今回の品種は、生のままで苞片はむしり取り、中央の花托(かたく)と呼ばれているところのみを調理していきます。ほくっとしながらそら豆のような風味があり、なんともいえぬ優しいほろ苦さを持ち合わせます。このアーティチョークと他の旬食材とともに鶏のスープで湯がかれ、心地良い酸味とコク、ブドウ特有の甘さをもつバルサミコヴィネガーで風味づけされます。北半球の古今東西を問わず、これから迎える夏を乗り切るために我々が必要としている栄養に満ち満ちた、それでいて野菜それぞれが美味しさを奏でる逸品です。

 

 今回の1つ目のメインディッシュは、南フランスを代表する伝統料理「ブイヤベース」を、Benoit風にアレンジしたものです。簡単に言ってしまうと、濃厚な魚の旨味を煮出したスープに、旨味の抜けきった魚介ではなく、別に用意していたものを旨味を逃がさないように焼き上げたものを具として組み合わせたものです。今回は、「Benoit風」なので、「オマール海老」に登場していただき、シェフ曰く「ブイヤベースの必須条件となるカサゴ」、そしてホタテ貝。今までにBenoitメニュー初登場の「シマアジ」が一堂に会するのです。

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 千葉県鋸南町(きょなんちょう)の勝山漁港は、房総半島の南端から西側に少し入った東京湾外湾に位置し、日本でも数少ない「シマアジ」養殖に成功した港です。この港からBenoitに直送されるシマアジは、鮮度があまりにも良いために、身の締まりと旨味は抜群で、お刺身でおおいにお楽しみいただきたい逸品です。これを、焼いてしまうという贅沢さ。オマール海老にカサゴとホタテ貝と、美味しい魚介として名を馳せた逸品の中で、遜色ない美味しさを放つ、いや勝るかもしれぬシマアジ美味しさを、ぜひBenoit風ブイヤベースの中で見出していただきたいと思います。

 

 メインディッシュ2つ目は、ウサギのモモ肉の煮込みの登場です。野ウサギではなく、もちろん愛玩動物でもありません。我々日本人には、ウサギを食す習慣に対する驚きとともに、敬遠する食材だと思います。ところが、フランスはもちろん、ヨーロッパの中では何も違和感のない食材のひとつなのです。フランス語では、lapin(ウサギ) とlièvre(野ウサギ)、まったく違う単語を使用するということは、日本のように、ただ単に「野」がつくのとはわけが違いうほどの馴染みの現れでしょう。Benoit東京では、過去に一度だけ「ウサギのモモ肉」がメニューに登場しました。時のシェフはダヴィット・ブラン、フランスのPoitou-Chanrentes出身です。

 日本人には、なかなか理解しにくい「ウサギ」という食材は、フランスでは馴染みのものであり、言うなれば「ソウルフード」なのです。ダヴィッドシェフ(現グランドハイアット東京副料理長)も、今のBenoitセバスチャンに話を聞いても、「昔懐かしい家庭的な食材」だといいます。鶏肉よりも脂が無く旨味が多いウサギモモ肉を、ブイヨンで煮込んでいく中で、ディジョンマスタードを少々。今回は、初夏に収穫を迎える旬の食材、福井県の「六条大麦」と共に皆様へ。ほろっと崩れるかのような肉質に、噛むほどに旨味が口中に広がる。さらに、リゾットのように仕上げた六条大麦が、ぷちぷちの食感と麦の香ばしい美味しさ、ソースと合わせた時の相乗効果は抜群です。

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「郷に入っては郷に従え」ということで、この機会のぜひお試しいただきたいと思い、メニューに組み込みました。

 

 デザートは初夏の食材を代表する、それも美味しいことであまりにも有名な、宮崎県綾町の「完熟マンゴー」の登場です。この食材の美味しさは、言うに及ばずでしょう。6月のBenoitでは、沖縄県西表島のピーチパインと組み合わせましたが、今回のイベントを含め7月は、「マンゴーのタルト」と銘打ち、綾町の完熟マンゴーを一人半分使用しようと思います。

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 今、Benoitシェフパティシエールの田中が、フランスと調整しているため、詳細を語ることはできません。しかし、今まで彼女の仕上げたデザートが、あまりにも美味しかったことを考えると、今回は昨年を上回る美味しさを誇る逸品に仕上げてくるのではないでしょうか。知りえる情報の中では、沖縄県糸満市の「パッションフルーツ」も組み合わせるようです。ご期待ください。

 

 梅雨によって目覚めた食材を使い、7月1日の一夜限りの「夏食材の饗宴」をご用意いたします。それぞれが個性的であり、夏の美味しさを内包した逸品食材が、一堂に会するこの一夜は、皆様を「口福な食時」へと誘(いざな)うことでしょう。何かご要望・疑問な点などございましたら、何気兼ねなくご連絡ください。

次回の開催日は未定ですが、10月に「秋食材の饗宴」を考えております。

 

以下は「言霊」について思うこと、余談です。

 自分が、サービス業を生業と定めて、はや20年ほど経つでしょうか。この職は、調理人のような「クチナシ(口無し)」な職人気質ではまかり通りません。今の時代を鑑みても、「美味しい料理」を調理すれば、店が成り立つ時代ではなくなっている気がいたします。都内星の数ほどもあるレストラン、美味しい料理を提供するお店を探すことには困りません。そう考えると、Benoitが美味しい料理やデザートを準備するも、皆様にお伝えしBenoitにお越しいただく、さらにはメニューの中より勧めの逸品をお選びいただくには、やはり自分のような職業が必要なのでしょう。

 実際に、自分は何も調理することもなく、タマネギの皮をむくような手伝いもしていません。調理人のこだわりや苦労を見聞きし、どのような料理に仕上がっているかを、分かりやすく面白くお伝えすることを目指します。料理とは「理(ことわり)」を「料(し)る」ことだといいます。自分の職業は、ただただ「言霊」の力を借りて、皆様に料理人の「料理への想い」を伝えること。こう考えると、言葉遣いには注意しなくてはなりません。言霊は、話し言葉はもちろん、その延長にある書き言葉にも宿るはず。この長文レポートもまたしかり。

 

しきしまの 大和の国は 言霊(ことだま)の 幸(さき)わう国ぞ ま幸(さき)くありこそ  柿本人麻呂万葉集より~

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 日本という国は、言霊によって幸せになっている国です。これからも幸多きことを願います、と伝えたいのでしょうか。古人は、「美しい心から生まれる言葉は、その言葉通りの良い結果を実現する。しかし、乱れた心から生まれた粗暴な言葉は災いをもたらす。」と信じていました。今回の歌は、スケールが違うようです。柿本人麻呂は「日本国」は言霊によって幸福を得ているというのです。八百万の神々への感謝、四季折々の自然への感謝、その恩恵に授かる山の幸に海の幸に感謝する。この美しい心を持った皆々が、美しい言葉を口にしているという自負があるからこそ、大和(やまと)は「幸わっている国」なのだというのです。※画像は勝山港から望む夕日です。

 時代時代に、新しい言葉が生まれるのはもちろん、多少の文法や言葉遣いが崩れるのも、よほど行き過ぎでなければ理解できるものです。しかし、誹謗中傷がはびこるネットの世界や、やじの飛び交う会合など、およそ「幸わう国」とは乖離したものに感じます。「令和」とは「美しい(令)」「調和(和)」ともとれます。古人の英知を鑑み、美しい言葉を意識して日々過ごしてみてはいかがでしょうか。きっと住み良い環境が、生まれてくる気がいたします。皆で「言祝ぐ」ことも、また一興かと。

 

いつもながらの長文を読んでいいただき、誠にありがとうございます。

末筆ではございますは、ご健康とご多幸を、そして新しい人生の門出を、イノシシ(風水では無病息災の象徴)が皆様をお守りくださるよう、青山の地よりお祈り申し上げます。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com