kitahira blog

徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

Benoit特選情報「10月ダイジェスト版」のご案内です。

花すすき まねく袂(たもと)は あまたあれど 秋はとまらぬ ものにぞありける  藤原元真(もとざね)

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 其処此処で我々に秋の到来を教えてくれる「ススキ」。月とは群を抜いた相性も見せており、過日の仲秋の名月では皆様のご家庭でも活躍したのではないでしょうか。たわわに実る稲穂に似ていることからも、五穀豊穣を祝う祭事でも欠かせない存在です。平安時代に生を受けた藤原元真の頃には、ススキの草原が広々と根を張っていたことでしょう。今では限られた地でしか見かけないものの、それでも自生している立派な秋の風物詩。風になびくように穂を垂れたような姿は、こっちこっちと、まるで我々を手招きしているかのようではないですか。ホラー映画にも出てきそうな場面でもありますが、ここは、秋晴れの下での清々しい光景を思い起こしてください。

 大海原を想わせるようなススキの群生が、我々を秋の玄関口へと手招きしている。それにもかかわらず、秋という季節は、そ知らぬふりをして立ち止まることなく足早に過ぎ去ってゆくものですね。移ろいゆく秋の景色は、一刻一刻と姿を変えてゆく。その変わりゆく美しさに心惹かれるも、もう少しゆっくりと秋を満喫したいものだよ。そのような幽愁(ゆうしゅう)の想いのこもった一句のような気がいたします。

 秋が我々をそ知らぬ顔で過ぎ去るのと同時に、秋の食材もまた待ってはくれません。降り注ぐ太陽の陽射しが万物を育て上げ、四季折々の風はその土地土地に味わいをもたせる。その風のもたらした美味しさこそ「風味」であり、我々はここに「口福な食時」を見出すのです。そして、旬を迎える食材は、人が必要としている栄養に満ちています。そして、人の体は食べたものでできています。「美しい(令)」季節に秋食材が「和」する逸品に出会い、食することで無事息災に秋を過ごしていただきたい。この想いを込め、Benoitの10月のダイジェスト版を作成いたしました。

 

皆様にご紹介したい内容は、以下の17件です。

「特別プラン」のご案内 1件

「特選食材/料理/デザート」のご案内 15件

「イベント」のご案内 1件

 

「トレ・ボン!日本のテロワール 特別プラン」のご案内です

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 Benoitシェフのセバスチャンが、アラン・デュカスの料理哲学「素材を厳選し、その素材の持ちうる香りと味わいを十二分に引き出し、表現すること」を踏襲しながら、日本のテロワールの魅力を「トレ・ボン!日本のテロワール」と銘打って、皆様にご紹介していこうと思います。日本の各地方が育んだ食材を通し、まるで彼の地を旅しているかのようにお楽しみいただけると幸いです。

 日頃より並々ならぬご愛顧を賜っている上に、さらにはこの長文レポートに目を通していただけている皆様の労に報いなければなりません。そこで、特別価格のご案内です。期間は、メールを受け取っていただいた日より、1130日までの平日限定。各コース料理の前菜とメインディッシュは、プリ・フィックスメニューからお選びいただけます。ご予約人数が8名様以上の場合は、ご相談させてください。

ランチ

前菜x2+メインディッシュ+デザート

4,800円→4,300円(税サ別)

ディナー

前菜x2+メインディッシュ+デザート

7,100円→6,100円(税サ別)

 ご予約は、Benoitへのメール、もしくは電話にてお願いいたします。何かご要望・疑問な点などございましたら、何気兼ねなくお問い合わせください。

www.benoit-tokyo.com

 秋風が育んだ風味豊かな食材は、他にも多数Benoitのプリ・フィックスメニューに名を連ねます。岐阜県を代表する「飛騨牛」はもちろん、「奥美濃古地鶏」や「郡上クラシックポーク」。香川県のハモや宮城県のサバなどなど。詳細は、このメールの後半でご紹介させていただきます。長い長いメールですが、そのままスクロールしていただけると幸いです。

  今回の「トレ・ボン!日本のテロワール第一回目を記念し、ディナーのプリ・フィックスメニューをお選びいただいた方の中で、岐阜県の特選食材をお選びいただいた方には、飛騨高山の民芸品「さるぼぼ」などの記念品をプレゼントさせていただきます。そう、「うしぼぼ」もあります!さあ今宵の旅路は、いざ岐阜へ!※数に限りがあるので、なくなり次第終了させていただきますこと、ご了承ください。

 

シャンパーニュ・メーカーズディナー「「DEUTZ(ドゥーツ)のご案内です。

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 1838年、ウィリアム・ドゥーツ氏によってピノ・ノワールの聖地、シャンパーニュ地方・アイ村に設立された、シャンパーニュ・メゾン。個性に富んだ魅力的な生産者で、骨格のしっかりとした洗練されたシャンパーニュとして知られています。1996年の社長就任以来、積極的な設備投資と着実なブランディングを行い、ドゥーツ社の名を確固たるものとしたファブリス・ロセ氏。当夜は彼をBenoitへお迎えし、皆様に美味なる理由を語っていただきます。

 彼がコンセプトに大きく関わった「アムール・ド・ドゥーツ」は多くのシャンパーニュファン憧れの1本。それを含むドゥーツ社の誇る5種のシャンパーニュをお楽しみいただく豪華シャンパーニュディナー。DEUTZの魅力を十二分にお楽しみいただける、またとない機会です。

 

Benoitシャンパーニュ・メーカーズディナー「DEUTZ(ドゥーツ)

日時:20191029()18:30より受付開始 19:00開演

会費:18,000(ワイン・お食事代・サービス料込、税別)

※ご予約を受け付けております。電話もしくは、Benoitへメールにてご連絡をお願いいたします。質問などございましたら、何気兼ねなくお問い合わせください。

www.benoit-tokyo.com

ラインナップ

NV Brut Classic

2012 Brut Vintage

2009 Amour de Deutz

2007 William Deutz

NV Brut Rosé

 

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 日本のテロワールテロワールとは、その土地をとりまく自然環境であり気候風土のこと。地方地方で違うのはもちろん、細かく言うと畑の場所場所で違ってくるといいます。斜面や平面、土壌や土壌微生物などもひっくるめて、間違いなく同じ環境などありえません。ブドウの品質に差異が生じるのは、このテロワールが大きな要因である、とはワイン愛好家の常套句でもある便利な言葉です。日本人の場合、「お米」が分かりやすいかもしれません。コシヒカリという品種は、日本全国津々浦々で栽培されていますが、地方ごとに味わいに違いがあります。米どころ新潟県に限定しても、各地区だけではなく、同地区でも田ごとに違いがあり、格付けがなされています。日本でもテロワールという概念は古来より存在していました。土があり、四季折々の風が吹く、テロワールとは「風土」ということなのではないでしょうか。そして「風土」が育んだ味わいが「風味」となるのです。

 秋風吹き抜ける風土で育まれた風味は、旬そのものの味わいであり美味しくないわけがありません。それを、フランス料理という「技」をもって姿を変えた時、皆様の体の中に、得も言えぬ美味しさに満ちた風が吹き抜ける。「口福な食時」のひとときへとご案内いたします。それでは、10月の特選食材をダイジェスト版としてご紹介させていただきます。ランチ限定、ディナー限定とありますが、ご予約の際にご希望をお伺いできれば、ご用意が可能です。お気軽にお問い合わせください。

 

飛騨高山の伝統野菜「宿儺かぼちゃ」が届いています。

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 岐阜県の 飛騨高山に伝承される鬼神「宿儺(すくな)」の名を冠する伝統野菜がBenoitに届いています。大きなサイズになればなるほど栽培が難しくなると言われるなかで、この見事なサイズにまで育て上げられた逸品は、高山市で「かぼちゃ名人」と称される若林さんの手によるもの。シェフ曰く、「かぼちゃ個々にムラが無い」と。

薄い表皮を削ると、見事なほどの黄色がかったオレンジ色が姿を見せます。和かぼちゃの多くは、味わいが素朴であるのに対し、この宿儺かぼちゃはそれとは一線を画します。コクのある甘さを持ちながら、後引く旨さに和かぼちゃらしい優しさがあります。ここに、タマネギの甘さとバターのコクを加え、黄金色のとろりとしたスープに仕上げます。

 洋かぼちゃにはない和かぼちゃの美味しさに舌鼓を打つこと間違いありません。ランチのプリ・フィックスメニューで、前菜の選択肢に入っています。

 

≪フランス産「栗のスープ」が満を持しての登場です。≫

 この時期になると、必ず問い合わせがくるのが、「栗のスープ」です。ビロードのようなという意味の「ヴルーテ」という名前にてメニューに名を連ねます。滑らかでフランスの栗らしい甘さとコクがある。洋栗だけではちろん甘くなる。そこで、味わいを引き締めるために加えるのは、栗の渋皮です。赤ワインのタンニンと同じ「渋味」を加えることで、前菜として立ち位置を獲得したのです。なぜ、毎年秋にBenoitのメニューに登場するのか?あまりにも美味しいからです。お問い合わせをいただく理由をご理解いただけるのではないでしょうか。

 ディナーのプリ・フィックスメニューで、前菜の選択肢に入っています。

 

Benoitのサラダが秋バージョンです。

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 ランチは不動のスタイルを堅持している中で、ディナーは季節を追うようにBenoitサラダが様変わりしてきました。秋も深くなる昨今、ここはシェフのたっての希望もあり、山羊チーズをサラダの上に。フランスのロワール川の中流域は、言わずと知れた山羊チーズの名産地です。チーズ図鑑を紐解くと、出るわ出るわの山羊ミルクのチーズばかりです。その中から、シェフが選んだものが、Sainte Maure(サント・モール)という長細く筒状に整形し、型崩れしないように中央に藁を通した独特の姿。山羊ミルクは、他の牛や羊と違い、酸味が特徴の飲み口の良いミルク。そこで、この酸味を和らげるためにも、ポプラの炭を表面にまぶして熟成させるのです。しかし、今回は料理に使用するため、このミルクの酸味を生かしたい。そこで、炭のまぶしていない真っ白な種類を、シェフは選んだのです。

 このチーズを、2cm程の厚さの円柱状にカットしたあとに、コロッケのようにパン粉をまぶします。サラダを盛りつけると同時に、揚げ油の中へ。熱々を半分にカットしたものを盛りつけます。クルミの香ばしさと食感とのコントラストも、食欲をそそります。秋らしいBenoitサラダは、ディナーのプリ・フィックスメニューの前菜として、お選びいただけます。

 

≪「奥美濃古地鶏とフォアグラのプレッセ」が前菜として登場です。

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 昔も昔の物語。天照大神を岩戸の中に身を隠し、世は闇の中へ。これは一大事と多くの神々が天照大神を岩戸から引き出すために、試行錯誤した様子が古事記に書き記されています。その時に、肌もあらわに踊った天宇受賣命(あまのうずめりみこと)は、芸能の神様として飛騨市河合町の鈿女(うずめ)神社に祀られています。その鳥居の下には「金の鶏」が埋められた。この鶏は天照大神を自ら「天の岩戸」を開けさせるため、気を引くために鳴かせたという「常世の長鳴鳥」だと。そして、この鶏こそ「岐阜地鶏(天然記念物)」の祖先であると。岐阜県養鶏試験場が、この「岐阜地鶏」をもとに、「神代の味」の再現しようと研究を重ね、並々ならぬ努力の末に生み出したのが、「奥美濃古地鶏(おくみのこじどり)」なのです。

 雄大大自然のなかで、のびのびと育てあげられる奥美濃古地鶏。すべての生産者の鶏が、この名を名乗れるわけではありません。岐阜県では奥美濃古地鶏普及推進協議会を発足し、厳しい基準を順守する生産者のみに与えられるもので、定期的に調査を行うことで品質の維持に努めています。この徹底した管理のもとで育てられた鶏肉は、ほんのり赤みを帯びた歯ごたえのある肉質を生み出し、深みのある旨味に満ち満ちています。

 今回は、奥美濃古地鶏の美味しさを十二分にお楽しみいただきたく、シェフのセバスチャンは型の中で重ねていくように仕上げる「プレッセ」という前菜に仕上げました。コクがあり心地良い食感のモモ肉の小ブロックと旨味溢れる胸肉のミンチ、さらにはフランスから届いたフォアグラとトリュフを少々加えたものを、ミンチにしない胸肉で挟み込むように肩に詰めてゆきます。上から軽く押すようにゆっくりと低温で熱加え、冷ますことで完成です。いうなれば、奥美濃古地鶏の奥美濃古地鶏ばさみ。部位の違いは食感や美味しさの違いを生み出し、口に運ぶ場所場所によって、旨さの表情を変えてゆきます。鶏肉の持つ、美味しさを損なうことなくしっとりと仕上げたこの逸品は、「神代の味」を十二分にお楽しみいただけるはずです。時代を超えた神々の世界へ皆様を誘(いざな)うでしょう。

 プリ・フィックスメニューの前菜の選択肢の中で、ランチは+1,500円、ディナーでは+1,200円にてお選びいただけます。

 

Benoitのシャルキュトリーに「フランシュ・コンテ地方のパテ」が仲間入りしています。

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 Benoitシェフのセバスチャンが、満を持してメニューに加えてきたシャルキュトリー(肉の加工品)の新作です。このカテゴリーはフランス料理ではなくてはならない伝統の逸品であり、地方地方で特産が加わることで、味わいも千差万別。今回はフランス中央から東部に向かった国境沿いに位置している、旧フランシュ・コンテ地方。彼の地の伝統にならって仕上げた「パテ」です。

 今までの「テリーヌ」と何か違うのか?このフランシュ・コンテ地方のパテは、鶏と鴨のレバーを主体に仕上げるため、柔らかい食感にレバーの旨いがねっとりとくる美味しさがあります。そこへ、豚バラ肉の塩漬けやモリーユ茸、忘れてはいけない彼の地の特産であるコンテチーズが加わるのです。ゆっくりと熱を加えた後に、1週間ほど冷蔵庫で休ませることで、味を落ち着かせ、皆様の下へ。カットした場所場所によって、口中に広がる美味しさの変化もお楽しみください。

 ディナーのプリ・フィックスメニューで、前菜の選択肢に加わっております。

 

宮城県志津川より南三陸産サバが届きました。

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 海水温が下がってゆき、美味しくなるのは秋鮭やサンマばかりではありません。サバをお忘れではないですか?今期は、「南三陸のマサバ」です。宮城県志津川漁港で水揚げされた鮮度抜群の逸品が、Benoitに直送されているのです。見事なサイズに加え、パンパンな胴回り。捌いているキッチンスタッフは、「脂の乗りも素晴らしいですよ」と話しています。これほどの鮮度の良いものが手に入るのであれば、とシェフが考えたのが、生食でした!生食?

 毎年話題になるのは、サバなどを生食することで起こる食中毒です。原因は「アニサキス」によるもの。もちろん、そんな危険なものをBenoitで皆様に供することはできません。では焼くのか?生とかいているが?ということなのです。この食中毒の対処方法は、60℃以上で1分以上加熱すること。と、もう一つ、-20℃で24時間以上凍らすこと。そうなのです、後者の方法をとるのです。24時間以上凍らせた後に、旨味を逃がさぬようゆっくり解凍します。そして、営業直前に表面をバーナーで焙り香ばしさを加えた後に、すぐに冷やすことで中は生のまま。オーダーが入った時に、このマサバの切身に、心地良い甘酸っぱさに仕上げたエスカベッシュのソースを絡めるのです。

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 鮮度抜群の南三陸の旬のマサバ、生でいただけるこの美味しさは、一食の価値あり。ディナーのプリ・フィックスメニューで、前菜の選択肢に入っています。ランチでご希望の方は、ご予約の際にお伝えいただけると幸いです。

 

千葉県勝山漁港の「キンメダイ」が届いています。

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 千葉県房総半島の先端から、少し内房に入ったところに位置している「勝山漁港」。東京湾への入り口に位置しているため、内房外房の豊かな漁場から、網で巻き上げられた魚、釣り上げられた魚と、多くの種類が水揚げされる名立たる漁港。しかし、過日の台風15号の惨禍は、例外なくこの漁港にももたらされたのです。漁船はひっくり返る、電気は止まる。早朝から続く暴風雨になすすべもなく、ただ過ぎ去るのを待つことしかできない漁港の人々の苦悩は想像を絶するものでしょう。その惨禍を目の当たりにしたときは…。しかし、勝山の人々の漁師魂は屈強なもので、彼らに諦めるという選択肢はありません。1週間もかからずに、漁船の出港を可能とします。後は通電を待つのみ。そして、この界隈でいち早く復興を成しえたのです。

 養殖業は、壊滅的なダメージを負うも、天然の漁場は豊かなまま。 その中から、Benoitが選んだ魚は「キンメダイ」です。夜中に千葉沖で釣り上げられた勝山漁港のキンメダイは、脂ののりがほどほどに、海流にもまれているからなのでしょう、プリっとする食感と旨味は抜群です。さらに、漁港よりBenoitへ直送するため、水揚げ無しというリスクはあるものの、それ以上に「鮮度抜群」という大きな大きなメリットがあるのです。Benoitへ届けられたキンメダイ大きな目の、吸い込まれそうなほどの透明感が全てを物語っています。

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 プリ・フィックスメニューのディナーのみ、魚料理の選択肢として追加料金なくお選びいただけます。以下に記載いたしますが、フランスより美味しいキノコと組み合わせます。あまりにもキンメダイもキノコも美味しさをうったえてくるため、白身のお魚料理にも関わらず赤ワインのソースです。いったいどのような味わいのマリアージュとなっているのか、気になりませんか?

 

フランスから「キノコいろいろ」が飛行機に乗って到着です。

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 秋の味覚の代表ともいえる「キノコ」。冬本番を迎えるにまえに、ぜひとも味わっておかねばなりません。今は、ピエ・ブルー(シメジの仲間)、プルーロット(ヒラタケの仲間)、ジロール(アンズ茸の仲間)とトランペット・ドゥ・ラ・モー(「死のトランペット」という名前ですが毒キノコではありません)の4種類が、フランスから飛行機に載せられBenoitへ届けられています。ひとつひとつは地味ですが、ちゃっちゃと熱を加えることで放たれる芳しい香りと味わいは、4種それぞれが個性豊かに奏でることで、得も言われぬ美味しさへと変貌いたします。

 メインディッシュでは、ランチはマダイと、ディナーは前述したキンメダイと組みわせ、追加料金なくお選びいただけます。「海の幸と森の幸」がどれほどの出会いを見せるのか。さらに、ともに白身の魚にも関わらず、なぜ赤ワインを使ったソースを組み合わせるのか。きっとこの解答を導きだせることでしょう。

 

香川県小豆島から「島鱧」がBenoit初登場です。

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 香川県小豆島(しょうどしま)。穏やかで温暖な瀬戸内海に浮かぶ県下最大の島です。オリーブ栽培で有名な地ですが、島だけに海産物も豊富。一見穏やかに見える瀬戸内海ですが、小豆島近海は海流が早い。そして、ここはエビが多い海域でもある。ということは、この小豆島近海のハモは、筋肉質で実が締まり、美味しい海老をたらふく食すことで、ハモ自らが旨味をもつことになるのです。そこで、島の北西に位置している四海(しかい)漁港では、乱獲を防ぎつつ、厳しい基準を設けることでハモの品質保持し、他に類を見ない美味なるハモとして、「小豆島・島鱧(しまはも)」の確固たる地位を得ることになるのです。

 では、この美味しい島鱧を、Benoitのシェフはどうするか?もちろん、フランスではお目にかからないハモは、シェフのセバスチャンにとって初めてのこと。焼いたり煮たりと試行錯誤の末、ふっと脳裏に浮かぶフランス伝統の逸品、「リヨンのクネル」だ!フランスでは淡水に棲むカワカマスを使用します。我々には馴染みのないこの魚は、小骨が多く、取り除こうとは微塵にも考えたくないもの。そこで、フランス人は考えたのです、「骨ごとミンチにしよう」と。そして、リヨンが内陸の地ゆえにエビはいない。では、代わりにザリガニで濃厚なソースに仕上げ、カワカマスと合わせようとなるわけです。この発想と同じく、小骨の多いハモは、ミンチにし、団子に姿を変えます。しかし、味わいは雲泥の差ほどにハモが勝る。そこで、海には海のエビでソースを仕上げようと。誕生!「島鱧のクネルBenoit風」です。

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 プリ・フィックスメニューのメインディッシュの選択肢の中で、ランチは+1,000円、ディナーでは+800円にてお選びいただけます。

 

郡上明宝牧場“クラシックポーク”で仕上げるバラ肉のコンフィと自家製ソーセージがランチに。

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 岐阜市から清流長良川を上流へと上がった先に、山間(やまあい)から突如姿を現す古京都を思わせるような街並み、これぞ奥美濃の小京都と称される「郡上八幡(ぐじょうはちまん)」です。県のほぼ中央、飛騨高地の南側に位置し、山々より湧きいずる美しきせせらぎが落ち合い長良川へ。郡上市のほぼ全域が長良川流域ということもあり、この豊富な水資源は、水路として街並みに引き込まれ、「水の町」としての名声は今でも健在です。

 この郡上市の片隅に、明宝牧場の広大な地が広がっています。澄んだ清らかな水と空気という、この類稀なる自然環境中で、さらにモーツアルトを聴きながら、ストレスなく健やかに育った「クラシックポーク」が特選食材です。最初にBenoitに届いたバラ肉が、あまりの美味しさに、シェフを始めスタッフ一同が絶賛。脂と肉のバランスが良く、特に脂の美味しさは「甘く澄んだ美しさ」です。そのまま食してもかなりの美味なるものを、フランスのシャルキュトリーの「技」にて、姿を変えさせていただきます。

 今回は、肩肉とバラ肉を使い、バラ肉は塩ふって一晩置いた後に塩抜きして焼き上げる。この塩でマリネする一手間が、バラ肉の美味しさを引き出すのです。さらに、肩肉を6割以上加えてバラ肉とともに仕上げるBenoit自家製の生ソーセージ。食品添加物を全く使用しない、クラシックポークそのものの旨味を、フランス伝統のシャルキュトリーの手法で引き出したバラ肉のコンフィとソーセージが、美味しくないわけがありません。

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 プリ・フィックスメニューのランチのみ、肉料理の選択肢としてお選びいただけます。

 

仔牛のバロタンが登場、いったいどんな料理?

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 バロタンとは、なんと馴染みのない名前でしょうか。簡潔明快に説明するならば、「肉の肉巻き」です。ゴボウやアスパラガスなどを豚バラ肉などで巻いて焼き上げた料理はよく見かけるのではないでしょうか。それの肉々しいバージョンとでも言いましょうか。

 仔牛のやさしい旨味に、コクと脂の旨味を足すかのように豚バラ肉を加えひき肉に。さらに、ジロール茸とトランペット・ドゥ・ラ・モーで秋らしい森の風味を加え、イタリアンパセリで緑の味わいを足します。全てまとめたものを、仔牛のバラ肉でくるくると巻き上げる。ゆっくりと低温調理の後に、焼き上げるという、なんと手間暇のかかる料理でしょうか。

 食感の違い、旨味の違いを、シェフによって見事なまでにまるめ上げた、仔牛の仔牛巻き。プリ・フィックスメニューのディナーのみ、肉料理の選択肢としてお選びいただけます。

 

フランスのシャランなる地から「鴨胸肉」が届いております。

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 自分が若かりし頃、フランス料理といえば「鴨料理」だったような気がいたします。鴨南蛮蕎麦などもありますが、あまり和食では馴染みのない食材だけに、絶妙なる火加減で焼き上げた鴨胸肉の美味しさに感動を覚えたものです。今では、鴨肉の美味しさを求めるあまりに、フランスのCharente(シャラント)県へ辿り着くまでになりました。ここは、フランスでも有数の美味なる鴨を育て上げる地域なのです。

 フランス中央から西へ向かい、大西洋に面した旧地方名であるPoitou-Charentes(ポワトゥ・シャラント)地方。2016年に地域圏が再編されることで、大都市Bordeauxを内包するNouvelle-Aquitaine地方に組み込まれました。この北部の中ほどにシャラント県が位置しています。豊かな自然の中で、広大な農地で放し飼いのように育てるブランド鴨。食するものもトウモロコシや麦などを与えることで、旨味が増しています。この鴨胸肉がBenoitに届いているのです。

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 低温調理を施した鴨胸肉を、焼きを入れてから休ませる。この断面のロゼ色の美しさこそ、職人技ともいえる鴨料理の醍醐味。Benoitでは、スライスせずに、このブロックのまま皆様の下へお持ちいたします。好きな厚さでカットすることで、お好みの食感を楽しみながら、噛むほどに溢れる鴨特有の旨味を味わうことができます。プリ・フィックスメニューのディナーのみ、メインディッシュの選択肢の中で+1,200円にてお選びいただけます。

 

Benoitに和牛ブランド「飛騨牛」のランプステーキが登場です。

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 「清流の岐阜」の自然が育んだ逸品。誰しもが知る日本が誇る「和牛ブランド」です。岐阜県の全ての和牛が名乗れるわけではなく、黒毛和種であることはもちろん、飛騨牛銘柄推進協議会の厳しい審査をのりこえた牛肉のみに与えられる称号なのです。その肉質はきめ細かくやわらかで、とろけるような旨味に、舌鼓をうっていただけることでしょう。

 今回は、ランイチという腰の部位を選ばせていただきます。適度に入るサシが肉の旨味を引きたたせる、赤身の多い部位で、ステーキとして楽しむには最適。フランス料理の技法として、特徴的なのが「休ませる」という発想ではないでしょうか。素材を焼き上げた後に、肉でも魚でも必ず「休息の時」を設けます。鉄板焼きの場合には、焼き立てほやほやが提供されますが、Benoitでは、表面を鉄板で焼き色を付けた後に、温かい肉の休息場所へと移されます。肉の中の温まった肉汁は、まさに旨味そのものであり、この休息部屋で過ごす時間は、この旨味をゆっくりと肉に馴染ませるのに必要なひとときなのです。これにより、肉にナイフを入れた時、肉汁があふれでるということが無くなります。カットした一口サイズの肉の塊の中に、美味しさが内包されていることを意味するのです。肉の状態を見極め、切ることなく中の状況を把握せねばならない、まさに職人技。食材の美味しさを、生かすも殺すも調理次第です。飛騨牛の美味しさに感嘆の唸りを上げると同時に、肉の扱いに秀でたフランス料理の真髄を感じ取っていただけるはずです。

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 プリ・フィックスメニューのメインディッシュの選択肢の中で、ランチは+2,500円、ディナーでは+2,000円にてお選びいただけます。

 

岐阜県老舗の和菓子処から“和栗”がBenoitへ、2019年版モン・ブランに姿を変えます。

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 毎年姿を変えるBenoitの栗デザート「モン・ブラン」。2019年はどうなるのか?和栗の収穫を待ち続けてしまったがために、全ての食材がBenoitに集結したのは9月30日、まさに直前だったのです。その2019年版Benoitモン・ブランは、いったいどのように仕上がるのか?今回はBenoitパティシエール田中真理と、アジアを統括するパティシエであるジュリアンのニュアンスが加味されました。ジュリアンはアルザス出身、彼の地は栗デザートです。モン・ブラン発祥の伝統の地でもあるのです。彼の中でイメージしてきたのは、アルザスの伝統的なスタイル「Torche de Marron(トルシュ・ドゥ・マロン)」でした。トルシュとはトーチのことで、トーチの先に輝かんばかりに揺らめいている炎の模した姿のデザートということです。

 昨年に引き続き、岐阜県恵那市の「恵那川上屋」さんより、和栗を炊きほぐしていただいた栗のペーストを送っていただきます。55年間もの間、栗に向き合ってきた彼らの慧眼は本物です。今年は、さらに同県内の大垣市に店を構えること260年という「御菓子のつちや」さんに白羽の矢が立つのです。岐阜県の美味なる栗をつかった「渋皮煮」 を図々しくお願いしたのです。長きにわたり店を盛り立てる和菓子の技術は伊達ではなく、さらりと送っていただいた渋皮煮の美味しいこと美味しいこと。この、岐阜県に綿々と引き継がれる「和の技法」をもって仕上げらえた栗菓子の逸品。この2つの和栗が、Benoitでフランスの栗と出会います。

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 「そのままが美味しいのでは?」と皆様はお思いだと思います。素材が美味しく、確立した技の為せる逸品であり、間違いはありません。しかし、そこのフランスのエッセンスが加味されたとき、和のお菓子とは、一味も二味も違った美味しさを我々に魅せてくれるはずです。2019年のBenoitのモン・ブランは?トルシュの姿だけお披露目いたします。皆様、気になりませんか。

 プリ・フィックスメニューのデザートの選択肢の中で、ランチ・ディナーともに+1,000円にてお選びいただけます。

 

山形県朝日町大谷の遠藤農園さんからりんご「紅玉」」が届きました。

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 自分の 日本国内フルーツ探索が、とうとうリンゴにまで及びました。実りの秋・収穫の秋と言われるだけあり、他の食材に手を取られ、3年間もの期間、手付かずにいた食材です。リンゴはいともやたやすく購入できますが、「紅玉」という品種となると、栽培している方は、軒並み減少します。生食にて、しゃくっとした心地良い食感と甘みに満ちた新品種が続々と登場し、昔ながらの硬く酸っぱいりんごである「紅玉」は敬遠されているようです。しかし、ことデザートとしてリンゴを選ぶ場合、生食にて美味なる日本のリンゴでは、加熱した際に甘すぎて酸味がないため適しません。やはり、紅玉を探さねばなりません。

 今期は山形県朝日町大谷(おおや)の遠藤農園さんから直送していただけることになりました。10月6日に初収穫を迎えたばかりの初物です。この、可愛い小柄な紅玉を、1人2玉半ほど使用して、デザートに仕上げます。皮を剥き、スライスしたものを、ロメルトフというリンゴの形に模した素焼きの器にキレイに盛り込みます。リンゴ以外に加えるものはブラウンシュガーのみ。オーブンで焼くリンゴのそのものの美味しさは、紅玉の心地よい酸味無くして成しえません。今回いただいた遠藤農園さんの逸品を試食した田中は、「見事なバランスで素晴らしい!」と高評価です。過去何度となく直送に失敗した自分の念願が叶い、いよいよ遠藤さんが丹精込めて美味しく実らせた「紅玉をたっぷりつかったオーブン焼き」がBenoitデザートに登場します。

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 プリ・フィックスメニューのデザートの選択肢の中で、ランチ・ディナーともに+800円にてお選びいただけます。

 

 ススキの手招きにも応じず、立ち止まろうともしない「秋」への幽愁の想い。憂愁=幽愁と辞書に記載がありますが、ひねくれものの自分はどうしても調べずにはいられなく、我が家に鎮座する「漢字語源辞典」にて調べてみました。

 憂愁は、「悩み苦しむこと、悲しみ」とある。では、幽愁は「心の奥底の憂い、悲しみ」なのだと。分かったようで分からない、同じような気もします。両者に共通する「愁」は、「愁(うれ)い」とも読み、思い悩むことを意味します。また「憂」も「憂(うれ)い」と読み、同意です。そうすると、憂愁は、ダブルで思い悩むことで苦しい、日々の生活の中で起きうる人間関係や、金銭関係などで苦しみながら思い悩むこと。「幽」には奥深いという意があります。そうすると、自分ではどうすることもできない自然の摂理への、手の届かないどうしようもないことへ思い悩むことなのか。こう考えると、過ぎ去る秋への想いは、「幽愁」こそ相応しいのでしょう。

 Benoit特選食材で仕上げた美味なる料理の数々を逃してしまうことは、憂愁なのか幽愁なのか?ここは、皆様個々の判断にお任せいたします。よく見ると、「愁」の字は、秋に心と書いています。思い悩むことが多いのが秋なのかもしれません。ここはいっそのこと、足の赴くままにBenoitへお越しいただき、愁うことなく旬の食材をお楽しみいただく。そうすれば、憂愁でも幽愁でも、どちらもお構いなしという、全て万事解決に導かれるということでしょう。皆様との再会を、愁うことなく心待ちにしております。

 

いつもながらの長文、最後までお読みいただき誠にありがとうございます。

末筆ではございますは、ご健康とご多幸をお祈りいたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com