kitahira blog

徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

Benoit特選情報「十一月尽」のご案内です。

神無月 ふりみふらずみ 定めなき 時雨ぞ冬の はじめなりけり  よみ人しらず 「後撰集」より

f:id:kitahira:20191127193834j:plain

 「時雨」とは、初冬にかけてパラパラと降ったり止んだりする通り雨のこと。分かったようで分からない、これが正直な意見だと思います。それもそのはず、厳密に時雨とは、都内はもちろん、日本海側全般や太平洋側の海に近い場所では滅多に見ることのできない自然現象なのです。北風が海の湿気を含み、日本列島を縦断している山脈にぶつかり、日本海側に雨をもたらす。乾いた空気はそのまま山を越え太平洋側へ。この山越えの際に、振り落とした雨粒の名残をはらはらと振り撒くのが、時雨なのだという。

 この自然現象を体感できる有名な地は、「北山時雨」の名がつくほどの、京都府です。空が晴れていても、パラパラと風に運ばれてくる雨は、きらきらと美しく輝き、陽射しに温められた顔に、ある種の心地良さを感じることでしょう。しかし、古人にとっては、これから迎える厳しい冬に一抹の不安を覚える時期です。この憂いが、人生の無常観と重なり、何とも言えぬ物寂しさを、時雨に感じるようになったのでしょう。

 樹々の葉には、クロロフィルという緑色とカロチノイドという黄色の色素が介在しています。「黄葉(こうよう)」とは、陽射しが弱まることで、この両者が葉の中で分解されてゆくのですが、クロロフィルが先に消えてしまうために、カロチノイドが姿を現すのです、これが「黄葉」。「紅葉(こうよう)」は、この過程の中で、アントシアニン(赤色)が形成される品種があり、この色が姿を見せること。なるほど、黄葉・紅葉(以下は紅葉と表記)のメカニズムがよく理解できました。が、風情がありません。

 もちろん、この紅葉のメカニズムを古人は知りません。毎年毎年と秋を彩る紅葉をどのように考えていたのでしょうか?そのヒントが「染めの技」にありました。下の画像は、岐阜県郡上市の冬の風物詩「郡上本染の鯉のぼり寒ざらし」です。鯉のぼりの下書きの後に、色付けない箇所には天然の餅糊で「糊置」を行い、そして大豆の搾り汁に顔料を溶いたもので着色を行います。染め上げた鯉のぼりを、一晩清流にさらすことで糊を落とします。真冬で凍える寒さの中での清流が、どれほど冷たいことか。なぜ寒い中にさらすのか?より色鮮やかに仕上がるのだといいます。水がきれいであることが必須条件であることは言うには及びません。だからこそ、郡上八幡の「長良川」の支流である「吉田川」と、さらにその支流である「小駄良川」であり、寒さが一番厳しくなる「大寒」の日が選ばれているのです。この「郡上本染の鯉のぼり寒ざらし」は、岐阜県重要無形文化財に認定されています。

f:id:kitahira:20191127193826j:plain

 郡上本染とは、江戸時代から綿々と400年以上も引き継がれてきた「正藍染(しょうあいぞめ)」を踏襲し、今も天然の藍を使用し、化学素材や化学染料を一切使いません。紺屋(こうや)と呼ばれる、プロ集団の藍染は、着れば着るほどに紺色から青色へと変化してゆくのだといい、この色合こそ「ジャパン・ブルー」と海外で絶賛されているのです。染め工程は、デザインを書き、糊置と続きます。そして、「ジャパン・ブルー」の素となる天然藍の染め液に浸し、清流で濯(すす)ぎます。この染液に浸し濯ぐ行程は、「少しずつ染み込む」という意味から「入」が使われ、1行程を「一入(ひとしお)」といいます。希望の色合いにするために、この「入」は、多い時には十数回にも及び、一入一入で、色合いが深く濃くなるのです。

f:id:kitahira:20191127193823j:plain

 古人はここに着想したようです。紅葉による樹々の彩(いろどり)は、「雨なのだ」と。京都在住であればあれば、寒くなるからこそ姿を現す「時雨」にこそ、紅葉する理由を見出したのです。藍染が、一入一入色合いが濃くなるように、一雨一雨が、樹々を紅葉へと導くと。「八百万(やおよろず)の神々」、「八重桜」や「八方美人」のように、多い数のことを抽象的に「八」と書き記す。晩秋から初冬にかけて、幾度となく樹々を濯ぐ雨のことを「八入(やしお)の雨」という。なんという、風情のある表現なのでしょうか。

「冬は時雨から始まる」

 

 立冬を迎え、暦の上では冬が始まりました。雨が降る度に、気温が下がっていくように感じる季節です。去りゆく「秋」に迎える「冬」、実りの秋でもあるからこそ、多種多様な収穫を得ることができ、これが美味なる料理へと姿をかえてゆく。冬眠を控えるために、動物のDNAには食欲をもたらすことが刻み込まれている。「肥ゆる秋」?いやいや、「口福なる秋」です。11月のお勧めダイジェスト版のご案内です。

「冬はBenoitから始まる」

 

特別プラン!「探訪!日本のテロワール~悠々自適プラン~」のご案内です

 日頃より並々ならぬご愛顧を賜っている上に、さらにはこの長文レポートに目を通していただけている皆様の労に報いなければなりません。そこで、「十一月尽」と銘打って特別プランをご案内させていただきます。期間は、メールを受け取っていただいた日より、1211日までの平日限定。ご予約は、このメールへの返信にてお願いいたします。土日や急ぎの場合には、以下のBenoitメールアドレスより、もちろん電話でもご予約は快く承ります。

 

ランチ

前菜x2+メインディッシュ+デザート

4,800円→4,300円(税サ別)

ディナー

前菜x2+メインディッシュ+デザート

7,100円→6,100円(税サ別)

 日本の食材の素晴らしさを知っていただきたく、「探訪!日本のテロワール」と銘打ってご案内させていただきます。以下は11月に終わりを迎える逸材と、お勧め料理をご紹介させていただきます。12月については、追ってご案内させていただこうと思います。日本の各地方が育んだ食材を通し、まるで彼の地を旅しているかのようにお楽しみいただけると幸いです。

www.benoit-tokyo.com

 

宮城県志津川港より「南三陸産マサバ」が届いています。

f:id:kitahira:20191127100027j:plain

 世界其処彼処に点在する漁場の中でも、やはり魚種が豊富な地域がある。その中でも群を抜いている、ノルウェー沖、カナダ・ニューファンドランド島沖のグランドバング、そして三陸金華山沖(きんかさんおき)が「世界三大漁場」と称されています。この金華山沖は、イワシ・サンマ・カツオ・マグロなあどの回遊魚の好漁場。この海域で育まれた今回の特選食材が

志津川漁港より南三陸のマサバ」

いったいどれほどの特選食材なのか?どのような料理に仕上がるのか?「はてなブログ」に詳細を記載しております。お時間のある時に以下のURLよりご訪問いただけると幸いです。

kitahira.hatenablog.com

  この特選食材を「エスカベッシュ」という料理に仕上げます。スパッとした響きの心地よい名前の料理は、日本でいう南蛮漬けに似ています。ニンジン、タマネギ、セロリといった香味野菜と共に甘酸っぱいスープに漬け込むように仕上げます。しかし、脂がのりにのったマサバを焼いてしまうなどもったいない話であり、旨味を打ち消してしまうような甘酸っぱさなど言語道断。

 そこで、旬の食材を使って、冬らしい逸品に仕上げようと。サバとの相性が抜群の香味野菜の風味はソースとして生かしつつ、少しばかりにヴィネガーに心地良い柑橘の甘さとほろ苦さをアクセントに加える。そう、前述した熊本県のみかん「豊福」が、ここに登場します。厚めにカットしたマサバの切身に、このソースを絡めるように。青魚特有の臭みなどどこ吹く風、香味野菜以上に、ミカンの風味がマサバの美味しさを一層引き立てるのです。日本の南北を代表する旬の食材が、Benoitで一堂に会し、冬ならではの味覚を我々に教えてくれる。これほどまでに、生の「南三陸のマサバ」が美味しいものかと、驚きを隠せない逸品に仕上がるのです。

f:id:kitahira:20191127100036j:plain

MAQUEREAU en escabèche

三陸産マサバのエスカベッシュ

  鮮度抜群の南三陸の旬のマサバ、生でいただけるこの美味しさは、一食の価値あり。ディナーのプリ・フィックスメニューで、前菜の選択肢に入っています。ランチでご希望の方は、ご予約の際にお伝えいただけると幸いです。

 ここまでご案内をしておきながら、昨今の温暖化の影響なのか、海の中が荒れています。すでにサンマの不漁はご存知のことと思いますが、マサバも例外ではございません。水揚げのある際に南三陸町山内鮮魚店さんより直送をお願いいたしますが、お約束できない状況です。豊洲市場の力を借りて、日本全国津々浦々より「マサバ」を購入し、皆様にマサバの美味しさをお楽しみいただこうと考えております。

 南三陸のマサバの美味しさを、どうしても皆様にお楽しみいただきたい!南三陸の漁獲量が回復するかどうかは、海の神々に祈るしかありません。皆様のご期待にお応えできない日があるかと思いますが、なにゆえ自然のこと、ご容赦のほどなにとぞよろしくお願いいたします。

 

飛騨高山の伝統野菜「宿儺かぼちゃ」が届いています。

f:id:kitahira:20191127193801j:plain

 岐阜県の飛騨高山に伝承される鬼神「宿儺(すくな)」の名を冠する伝統野菜がBenoitに届いています。大きなサイズになればなるほど栽培が難しくなると言われるなかで、この見事なサイズにまで育て上げられた逸品は、高山市で「かぼちゃ名人」と称される若林さんの手によるもの。シェフ曰く、「かぼちゃ個々にムラが無い」と。

 薄い表皮を削ると、見事なほどの黄色がかったオレンジ色が姿を見せます。和かぼちゃの多くは、味わいが素朴であるのに対し、この宿儺かぼちゃはそれとは一線を画します。コクのある甘さを持ちながら、後引く旨さに和かぼちゃらしい優しさがあります。ここに、タマネギの甘さとバターのコクを加え、黄金色のとろりとしたスープに仕上げます。

Velouté de POTIRON et fromage frais

岐阜県伝統野菜“宿儺かぼちゃ"のスープ リコッタチーズ

 洋かぼちゃにはない和かぼちゃの美味しさに舌鼓を打つこと間違いありません。ランチのプリ・フィックスメニューで、前菜の選択肢に入っています。11月末にて終わりを迎えます。

 

≪フランス産「栗のスープ」が11月末で終了を迎えます。≫

f:id:kitahira:20191127193830j:plain

 この時期になると、必ず問い合わせがくるのが、「栗のスープ」です。ビロードのようなという意味の「ヴルーテ」という名前にてメニューに名を連ねます。滑らかでフランスの栗らしい甘さとコクがある。洋栗だけではちろん甘くなる。そこで、味わいを引き締めるために加えるのは、栗の渋皮です。赤ワインのタンニンと同じ「渋味」を加えることで、前菜として立ち位置を獲得したのです。なぜ、毎年秋にBenoitのメニューに登場するのか?あまりにも美味しいからです。お問い合わせをいただく理由をご理解いただけるのではないでしょうか。

Velouté de CHÂTAIGNE, garniture mijotée

フランス産栗のスープ

 ディナーのプリ・フィックスメニューで、前菜の選択肢に入っています。

 

岐阜県奥美濃古地鶏」の前菜も11月末にて終わりを迎えます。

 昔も昔の物語。天照大神を岩戸の中に身を隠し、世は闇の中へ。これは一大事と多くの神々が天照大神を岩戸から引き出すために、試行錯誤した様子が古事記に書き記されています。その時に、肌もあらわに踊った天宇受賣命(あまのうずめりみこと)は、芸能の神様として飛騨市河合町の鈿女(うずめ)神社に祀られています。その鳥居の下には「金の鶏」が埋められた。この鶏は天照大神を自ら「天の岩戸」を開けさせるため、気を引くために鳴かせたという「常世の長鳴鳥」だと。そして、この鶏こそ「岐阜地鶏(天然記念物)」の祖先であるという。岐阜県養鶏試験場が、この「岐阜地鶏」をもとに、「神代の味」の再現しようと研究を重ね、並々ならぬ努力の末に生み出したのが、「奥美濃古地鶏(おくみのこじどり)」です。

雄大大自然のなかで、のびのびと育てあげられる奥美濃古地鶏。すべての生産者の鶏が、この名を名乗れるわけではありません。岐阜県では奥美濃古地鶏普及推進協議会を発足し、厳しい基準を順守する生産者のみに与えられるもので、定期的に調査を行うことで品質の維持に努めています。この徹底した管理のもとで育てられた鶏肉は、ほんのり赤みを帯びた歯ごたえのある肉質を生み出し、深みのある旨味に満ち満ちています。

今回は、奥美濃古地鶏の美味しさを十二分にお楽しみいただきたく、シェフのセバスチャンは型の中で重ねていくように仕上げる「プレッセ」という前菜に仕上げました。コクがあり心地良い食感のモモ肉の小ブロックと旨味溢れる胸肉のミンチ、さらにはフランスから届いたフォアグラとトリュフを少々加えたものを、ミンチにしない胸肉で挟み込むように肩に詰めてゆきます。上から軽く押すようにゆっくりと低温で熱加え、冷ますことで完成です。いうなれば、奥美濃古地鶏の奥美濃古地鶏ばさみ。部位の違いは食感や美味しさの違いを生み出し、口に運ぶ場所場所によって、旨さの表情を変えてゆきます。鶏肉の持つ、美味しさを損なうことなくしっとりと仕上げたこの逸品は、「神代の味」を十二分にお楽しみいただけるはずです。時代を超えた神々の世界へ皆様を誘(いざな)うでしょう。

f:id:kitahira:20191008220930j:plain

Pressée de VOLAILLE de Gifu et foie gras de canard, vinaigrette truffée

奥美濃古地鶏"とフォアグラのプレッセ トリュフのビネグレット

 プリ・フィックスメニューの前菜の選択肢の中で、ランチは+1,500円、ディナーでは+1,200円にてお選びいただけます。この前菜もまた、11月末にて終わりを迎えます。

 

千葉県勝山漁港の「キンメダイ」が届いています。

f:id:kitahira:20191008221038j:plain

 千葉県房総半島の先端から、少し内房に入ったところに位置している「勝山(かつやま)漁港」。東京湾への入り口に位置しているため、内房外房の豊かな漁場から、網で巻き上げられた魚、釣り上げられた魚と、多くの種類が水揚げされる漁港です。しかし、過日の台風の惨禍は、例外なくこの漁港にももたらされました。漁船はひっくり返る、電気は止まる。早朝から続く暴風雨になすすべもなく、ただ過ぎ去るのを待つことしかできない漁港の人々の苦悩は想像を絶するものでしょう。その惨禍を目の当たりにしたときは…。しかし、勝山の人々の漁師魂は屈強なもので、彼らに諦めるという選択肢はありません。1週間もかからずに、漁船の出港を可能とし、後は通電を待つのみ。そして、この界隈でいち早く復興を成し遂げたのです。

 養殖業は、壊滅的なダメージを負うも、天然の漁場は豊かなまま。その中から、Benoitが選んだ魚は「キンメダイ」です。夜中に千葉沖で釣り上げられた勝山漁港のキンメダイは、脂ののりがほどほどに、海流にもまれているからなのでしょう、プリっとする食感と旨味は抜群です。さらに、漁港よりBenoitへ直送するため、水揚げ無しというリスクはあるものの、それ以上に「鮮度抜群」という大きな大きなメリットがあるのです。Benoitへ届けられたキンメダイ大きな目の、吸い込まれそうなほどの透明感が全てを物語っています。

f:id:kitahira:20191127193806j:plain

 「キンメダイ」という逸材のお供をするのは、秋の味覚の代表ともいえる「キノコ」です。冬本番を迎えるにまえに、ぜひとも味わっておかねばなりません。今は、ピエ・ブルー(シメジの仲間)、プルーロット(ヒラタケの仲間)、ジロール(アンズ茸の仲間)とトランペット・ドゥ・ラ・モー(「死のトランペット」という名前ですが毒キノコではありません)とシャンピニョン・ドゥ・パリ(マッシュルーム)の5種類が、フランスから飛行機に乗り、載せられBenoitへ届けられています。

f:id:kitahira:20191127193803j:plain

 ワインを語る際に、よく「テロワール」という言葉が出てきます。これは、土地をとりまく自然環境であり気候風土のこと。地方地方で違うのはもちろん、細かく言うと畑の場所場所で違ってくるといいます。斜面や平面、土壌や土壌微生物などもひっくるめて、間違いなく同じ環境などありえません。ブドウの品質に差異が生じるのは、このテロワールに大きな要因があるのだといいます。

 何もこの考えはブドウ栽培だけのことではありません。例えば、お米の「コシヒカリ」という品種は、日本全国津々浦々で栽培されていますが、地方ごとに味わいに違いがあります。米どころ新潟県に限定しても、各地区だけではなく、同地区でも田ごとに違いがあり、格付けがなされています。日本でもテロワールという概念は古来より存在していました。土があり、四季折々の風が吹く、テロワールとは「風土」ということなのではないでしょうか。そして「風土」が育んだ味わいが「風味」となるのです。

 千葉県沖の風土が育んだ、いや「土」ではない。「風海」なのか「風水」なのかが、育んだ「キンメダイ」は、皮目から焼き上げ、休ませることで旨味を逃がさないように仕上げます。そして、それぞれの種類が個性豊かな名立たるキノコは、丁寧に下ごしらえがなされ、鍋の中で一堂に会します。ちゃっちゃと熱を加えることで放たれる芳しい香りと美味しさは、5種それぞれの個性がお互いがお互いを引き立て合うかのよう。そして盛り付けます。

 キノコの絨毯の上に鎮座するキンメダイ。キンメダイのプリっとする食感は、一口ごとに旨味が溢れ出る。それをキノコの豊かな味わいが後押しているかのよう。通常であれば、白ワインを使うでしょう。しかし、赤ワインです。この「海の幸と森の幸」がどれほどの出会いには、赤ワインを使ったソースこそあい相応(ふさわ)しい。

f:id:kitahira:20191127193809j:plain

SÉBASTE du Port de Katsuyama en matelote

千葉県勝山漁港より キンメダイのオーブン焼き マトロートソース

 プリ・フィックスメニューのディナーのみ、魚料理の選択肢として追加料金なくお選びいただけます。ランチでご希望の際は、ご予約の際にお伝えいただけると幸いです。

 

香川県小豆島の「島鱧」が美味なり。

f:id:kitahira:20191126232309j:plain

 香川県小豆島(しょうどしま)。穏やかで温暖な瀬戸内海に浮かぶ県下最大の島です。オリーブ栽培で有名な地ですが、島だけに海産物も豊富。一見穏やかに見える瀬戸内海ですが、小豆島近海は海流が早い。そして、ここはエビ類カニ類が多く生息する海域でもある。ということは、この小豆島近海のハモは、筋肉質で実が締まり、美味しいエビ・カニをたらふく食すことで、ハモ自らが旨味をもつことになるのです。そのハモがBenoitに届いています。

島鱧(しまはも)とは、どのようなものか?「はてなブログ」に詳細を記載しております。お時間のある時に以下のURLよりご訪問いただけると幸いです。

kitahira.hatenablog.com

美味しい島鱧を、Benoitのシェフはどうするか?もちろん、フランスではお目にかからないハモは、シェフのセバスチャンにとって初めてのこと。焼いたり煮たりと試行錯誤の末、ふっと脳裏に浮かぶフランス伝統の逸品、「リヨンのクネル」だ!フランスでは淡水に棲むカワカマスを使用します。我々には馴染みのないこの魚は、小骨が多く、取り除こうとは微塵にも考えたくないもの。そこで、フランス人は考えたのです、「骨ごとミンチにしよう」と。そして、リヨンが内陸の地ゆえにエビはいない。では、代わりにザリガニで濃厚なソースに仕上げ、カワカマスと合わせようとなるわけです。この発想と同じく、小骨の多いハモは、ミンチにし、団子に姿を変えます。しかし、味わいは雲泥の差ほどにハモが勝る。そこで、海には海のエビでソースを仕上げようと。誕生!「島鱧のクネルBenoit風」です。

f:id:kitahira:20191126232302j:plain

QUENELLES à la lyonnaise, bisque légère

香川県小豆島産 “島鱧"のクネル リヨン風

 プリ・フィックスメニューのメインディッシュの選択肢の中で、ランチは+1,000円、ディナーでは+800円にてお選びいただけます。

 

郡上明宝牧場“クラシックポーク”で仕上げるバラ肉のコンフィと自家製ソーセージがランチに。

f:id:kitahira:20191105163117j:plain

 岐阜市から清流長良川を上流へと上がった先に、山間(やまあい)から突如姿を現す古京都を思わせるような街並み、これぞ奥美濃の小京都と称される「郡上八幡(ぐじょうはちまん)」です。県のほぼ中央、飛騨高地の南側に位置し、山々より湧きいずる美しきせせらぎが落ち合い長良川へ。郡上市のほぼ全域が長良川流域ということもあり、この豊富な水資源は、水路として街並みに引き込まれ、「水の町」としての名声は今でも健在です。

 この郡上市の片隅に、明宝牧場の広大な地が広がっています。澄んだ清らかな水と空気という、この類稀なる自然環境中で、さらにモーツアルトを聴きながら、ストレスなく健やかに育った「クラシックポーク」が特選食材です。最初にBenoitに届いたバラ肉が、あまりの美味しさに、シェフを始めスタッフ一同が絶賛。脂と肉のバランスが良く、特に脂の美味しさは「甘く澄んだ美しさ」です。そのまま食してもかなりの美味なるものを、フランスのシャルキュトリーの「技」にて、姿を変えさせていただきます。

この「郡上クラシックポーク」どれほどの特選食材であるか、詳細を「はてなブログ」記載しております。お時間のある時に以下のURLよりご訪問いただけると幸いです。

kitahira.hatenablog.com

 今回は、肩肉とバラ肉を使い、バラ肉は塩ふって一晩置いた後に塩抜きして焼き上げる。この塩でマリネする一手間が、バラ肉の美味しさを引き出すのです。さらに、肩肉を6割以上加えてバラ肉とともに仕上げるBenoit自家製の生ソーセージ。食品添加物を全く使用しない、クラシックポークそのものの旨味を、フランス伝統のシャルキュトリーの手法で引き出したバラ肉のコンフィとソーセージが、美味しくないわけがありません。

f:id:kitahira:20191127193812j:plain

Poitrine rôtie et saucisse de COCHON aux lentilles vertes du Puy

岐阜県郡上の“クラシックポーク" バラ肉のコンフィとソーセージ レンズ豆の煮込み

 プリ・フィックスメニューのランチのみ、肉料理の選択肢としてお選びいただけます。ディナーでのご希望は、ご予約の際にお伝えいただけると幸いです。

 

Benoitに和牛ブランド「飛騨牛」のランプステーキ、11月末までです。

f:id:kitahira:20191008221116j:plain

 「清流の岐阜」の自然が育んだ逸品。誰しもが知る日本が誇る「和牛ブランド」です。岐阜県の全ての和牛が名乗れるわけではなく、黒毛和種であることはもちろん、飛騨牛銘柄推進協議会の厳しい審査をのりこえた牛肉のみに与えられる称号なのです。その肉質はきめ細かくやわらかで、とろけるような旨味に、舌鼓をうっていただけることでしょう。

 今回は、ランイチという腰の部位を選ばせていただきます。適度に入るサシが肉の旨味を引きたたせる、赤身の多い部位で、ステーキとして楽しむには最適。フランス料理の技法として、特徴的なのが「休ませる」という発想ではないでしょうか。素材を焼き上げた後に、肉でも魚でも必ず「休息の時」を設けます。鉄板焼きの場合には、焼き立てほやほやが提供されますが、Benoitでは、表面を鉄板で焼き色を付けた後に、温かい肉の休息場所へと移されます。肉の中の温まった肉汁は、まさに旨味そのものであり、この休息部屋で過ごす時間は、この旨味をゆっくりと肉に馴染ませるのに必要なひとときなのです。これにより、肉にナイフを入れた時、肉汁があふれでるということが無くなります。カットした一口サイズの肉の塊の中に、美味しさが内包されていることを意味するのです。肉の状態を見極め、切ることなく中の状況を把握せねばならない、まさに職人技。食材の美味しさを、生かすも殺すも調理次第です。飛騨牛の美味しさに感嘆の唸りを上げると同時に、肉の扱いに秀でたフランス料理の真髄を感じ取っていただけるはずです。

f:id:kitahira:20191008221113j:plain

プリ・フィックスメニューのメインディッシュの選択肢の中で、ランチは+2,500円、ディナーでは+2,000円にてお選びいただけます。

 

岐阜県老舗の和菓子処から“和栗”がBenoitへ、2019年版モン・ブランに姿を変えます。

f:id:kitahira:20191008221102j:plain

 毎年姿を変えるBenoitの栗デザート「モン・ブラン」。2019年はどうなるのか?和栗の収穫を待ち続けてしまったがために、全ての食材がBenoitに集結したのは9月30日、まさに直前だったのです。その2019年版Benoitモン・ブランは、いったいどのように仕上がるのか?今回はBenoitパティシエール田中真理と、アジアを統括するパティシエであるジュリアンのニュアンスが加味されました。ジュリアンはアルザス出身、彼の地は栗デザートです。モン・ブラン発祥の伝統の地でもあるのです。彼の中でイメージしてきたのは、アルザスの伝統的なスタイル「Torche de Marron(トルシュ・ドゥ・マロン)」でした。トルシュとはトーチのことで、トーチの先に輝かんばかりに揺らめいている炎の模した姿のデザートということです。

 昨年に引き続き、岐阜県恵那市の「恵那川上屋」さんより、和栗を炊きほぐしていただいた栗のペーストを送っていただきます。55年間もの間、栗に向き合ってきた彼らの慧眼は本物です。昔から、「東山道」「中山道」の宿場町として、栗を旅人に振舞ってきた「栗菓子の技」。これを綿々と引き継ぎ今なお輝きを放つ栗菓子の逸品。フランスの洋栗と和栗が、Benoitで出会います。恵那川上屋さんのお話は、「はてなブログ」に詳細を記載しております。お時間のある時に以下のURLよりご訪問いただけると幸いです。

kitahira.hatenablog.com

 「栗きんとんそのままが美味しいのでは?」と皆様はお思いかもしれません。素材が美味しい上に、匠の技の為せる逸品であり、間違いはありません。しかし、そこのフランスのエッセンスが加味されたとき、和のお菓子とは、一味も二味も違った美味しさを我々に魅せてくれるはずです。2019年のBenoitのモン・ブランは?トルシュの姿だけお披露目いたします。皆様、気になりませんか。

 プリ・フィックスメニューのデザートの選択肢の中で、ランチ・ディナーともに+1,000円にてお選びいただけます。

 

山形県朝日町大谷の遠藤農園さんから、最後のりんご「紅玉」」が届きました。

 自分の日本国内フルーツ探索が、とうとうリンゴにまで及びました。実りの秋・収穫の秋と言われるだけあり、他の食材に手を取られ、3年間もの期間、手付かずにいた食材です。リンゴはいともやたやすく購入できますが、「紅玉」という品種となると、栽培している方は、軒並み減少します。生食にて、しゃくっとした心地良い食感と甘みに満ちた新品種が続々と登場し、昔ながらの硬く酸っぱいりんごである「紅玉」は敬遠されているようです。しかし、ことデザートとしてリンゴを選ぶ場合、生食にて美味なる日本のリンゴでは、加熱した際に甘すぎて酸味がないため適しません。やはり、紅玉を探さねばなりません。

f:id:kitahira:20191127193758j:plain

 今期は山形県朝日町大谷(おおや)の遠藤農園さんから直送していただけることになりました。10月6日に初収穫を迎えたばかりの初物です。この、可愛い小柄な紅玉を、1人2玉半ほど使用して、デザートに仕上げます。皮を剥き、スライスしたものを、ロメルトフというリンゴの形に模した素焼きの器にキレイに盛り込みます。リンゴ以外に加えるものはブラウンシュガーのみ。オーブンで焼くリンゴのそのものの美味しさは、紅玉の心地よい酸味無くして成しえません。今回いただいた遠藤農園さんの逸品を試食した田中は、「見事なバランスで素晴らしい!」と高評価です。

 自分の念願が叶った紅玉の直送。遠藤さんが丹精込めて美味しく実らせた秋の特選食材、とうとう最後の便がBenoitに届きました。ご好評につき、12月7日まで販売期間を延長させていただきます。皆様、この機会をお見逃し無きように。

f:id:kitahira:20191127193819j:plain

POMME au four

山形県朝日町のリンゴ“紅玉”のオーブン焼き

プリ・フィックスメニューのデザートの選択肢の中で、ランチ・ディナーともに+800円にてお選びいただけます。

 

 冬は時雨から始まる。冬の様相を見せ始めたようです。皆様、無理は禁物、十分な休息と睡眠をお心がけください。インフルエンザ予防接種もお忘れなきように。いつもながらの長文、最後までお読みいただき誠にありがとうございます。

末筆ではございますは、ご健康とご多幸をお祈りいたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com