Benoitが再開いたしました。そこで、今まで投稿に花々が続いていたので、久しぶりに料理のお話を復活させようかと思います。そして、この料理は、お家でぜひお試しいただきたいのです。
今回は、「タラのブランダード」というお料理です。横文字の名前だけに、なにやらさっぱり分かり難(にく)いものですが、これがまた美味なり。ヨーロッパでは、北欧を主として、塩をたっぷりとまぶし釘が打てるほどに乾燥させた「Morue(モリュ)」という、塩干タラがあります。常温保存が可能な、保存食のひとつ。これをいかに美味しく食べようかという、フランスの伝統と知恵の逸品なのです。同じような料理が、ヨーロッパ各国にあり、大航海時代で言語が伝播するように、世界中に拡がっていきました。
しかし、Benoitのブランダードは塩干タラを使用しません。日本は周囲を海に囲まれており、美味しいマダラが水揚げされています。鮮度が良く美味しいマダラが手に入るのに、塩干タラを使用する理由が見つかりません。
北海道のマダラに塩をまぶし一日お休みです。これにより、、身が引きしまるのと同時に、旨味が出てきます。このタラを少しばかり塩抜きし、牛乳とニンニクの中で煮たものを、ほぐしたジャガイモと混ぜ合わせます。これに半熟卵をのせる。ジャガイモの甘さとホクホクの食感、そこにタラ特有の繊維っぽい身質と旨さが絡みあう。半熟卵のとろりとくる黄身との相性も抜群です。さらに、クリームにニンニクを風味付けしたものをソースとする。これがBenoitスタイルです。
Œuf mollet, brandade de MORUE
タラのブランダードと半熟卵
今月末まで、Benoitのランチプリ・フィックスメニューに名を連ねております。
昨今の新型コロナウイルス災禍は、足の赴くままにBenoitへ向かうことを、やすやすと許しません。そこで、このブランダードをお家で試しませんか? Benoitのように仕上げることは容易ではなくとも、もともとはフランスの家庭料理です。自宅でもできないことはありません。まして、日本には「甘塩タラ」という、すこぶる便利な食材がスーパーに所狭しと並んでいます。これで、塩漬けの一手間がなくなるのです。
家ではいたって簡単に作りましょう。自分でもそれらしくできるのです。「甘塩タラ」が良いですが、「塩タラ」の場合は、水に浸けて塩抜きし他方が良いと思います。画像のように最後は身をほぐしてしまうので、火にかける前に指で潰しても良いので骨を取り除きます。そして皮も取り除きます。
小鍋に牛乳と適当な大きさでカットしたニンニクを入れます。そこに、骨皮取り除いたタラを加え、焦げるので弱火でコトコト煮てゆきます。ジャガイモは、メークインは粘り気が出るので、男爵イモを使い、水から茹でると美味しくなりますが、ラップでレンジでチンでも十分です。
ボールの中に、茹で上がったジャガイモの皮を取り除いたものを入れ、フォークでほぐす。そこへ、小鍋の具であるタラとニンニクを加えます。そして、小鍋の旨味の煮出た牛乳を加えながら混ぜるだけ。あら、家庭版ブランダードの完成です。
このままでも美味しいですが、Benoitのように半熟卵も相性が良いですし、オリーブの実を加えても美味。耐熱の器に入れ、パン粉をふってオーブンで焼き色付け、バケットのスライスを添えると、みんなでつまめる料理にもなる。さらに、これでコロッケを作ってもいいと思います。
タラを牛乳で煮る段階で、お好みのハーブを加えてもアレンジできる。多めに作って冷凍保存しておくのもいいかもしれません。簡単な料理だからこそ、多くのアレンジが可能なのでしょう。ひとつだけ、注意しなければならないことがあります。最重要です。
「タラをケチると、ただのマッシュポテト!」
Stay Home and Let’s play Kitchen
最後まで読んでいいただき、誠にありがとうございます。
末筆ではございますは、ご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より切にお祈り申し上げます。
ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬