kitahira blog

徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

Benoitの「6月営業時間」と「特別プラン」のご案内です。

ぬしなくて 荒れにし屋戸の 庭のおもに ひとり菫の 花さきにけり  藤原公重(きんしげ)

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 「菫(すみれ)」は、日本では北海道から沖縄県まで津々浦々で目にすることができ、紫色の小さな花を咲かせます。あまりにも控えめな姿のため、園芸品種として育種されている「パンジー」の方が有名となってしまい、名こそ知るも、実際にどのような花が咲くものなのか、ご存じない方が多いのではないでしょうか。

 しかし、春の花々が咲き荒れた地に、ひっそりと可憐に咲くスミレの美しさを、古人は見逃しませんでした。日本最古の歌集「万葉集」にも、しっかりと名を残しています。しかし、スミレの葉や花は食することができるため、山菜採りのひとつとして人気を博していたのではないかとも。

 そんな邪推を持ちつつも、菫に対する人々の想いは、古今東西を問わず共通のようです。ヨーロッパでは、「誠実」や「謙虚」の象徴とされる花であり、そのまま花言葉にもなっています。

 冒頭の一句は、平安時代後期に活躍した歌人、藤原公重が詠んだものです。自分の住居を言い表す場合は「宿(やど)」ではなく「屋戸(やど)」であるといいます。長きにわたり留守にしていた我が家に辿り着いた時に、手入れのされていない庭に、ひっそりと咲いている薄紫色の小さな花。あ~スミレだけが待っていてくれたのだ、と愛おしく想う。

 荒れ放題の庭ではあるものの、何かしらの花は咲いていたであろうに、スミレに心奪われるのは、何か奥ゆかしさを、豪華絢爛ではなく可憐さに、感慨深い美しさを見出すのでしょう。ひそやかに咲くスミレの花は、それに気づいた人の心を慰(なぐさ)める。

 

 今回の災禍は、飲食店の弱さをまざまざと見せつけられました。人生を豊かにするうえでもなくてはならないものですが、平穏無事な状況下でしか成り立たないということ。自走できる船とは違い、風を頼りに進む帆船のようです。帆船は、港に停泊するさいに錨をおろし、出発の際にこの碇を巻き上げる力を利用して、行き足をつけます。

 今のBenoitは、このウイルス災禍によって急ぎ帆を閉じ、漂っている帆船のようなもの。経済が停滞しているように、海も凪いでいる。いざ出発しようにも、行き足のつかない帆船では、風が吹かない限りどうすることもできません。約3週間に及ぶ営業自粛で、Benoitの時は止まりました。

 時間をかけて「失われた時」を取り戻すべく、準備を進めるかのように、5月はディナーの営業時間を大幅に短縮し、粛々と営業を再開いたしました。そして今、「緊急事態宣言解除」の報を受け、営業時間の見直しを図らせていただき、6月1日より実行に移させていただきます。

 

≪ランチ≫ 1130分から14時ラストオーダー

≪ディナー≫ 1730分から21時ラストオーダー

 

 日頃より並々ならぬご愛顧を賜っている上に、この長文レポートに目を通していただけている皆様の労に報いるため、≪初夏特別プラン≫をご案内させていただきます。期間は、メールを受け取っていただいた日より、20206月末まで。ご予約は、自分へのメール、もしくは以下のBenoitメールアドレスよりお願いいたします。もちろん電話でも、ご予約は快く承ります。

benoit-tokyo@benoit.co.jp

 

初夏特別プランは6月末日までです!

ランチ

前菜+メインディッシュ+デザート

3,800円→3,530円(税サ別)

ランチ

前菜x2+メインディッシュ+デザート

4,800円→4,460円(税サ別)

ディナー

前菜+メインディッシュ+デザート

6,100円→5,680円(税サ別)

ディナー

前菜x2+メインディッシュ+デザート

7,100円→6,600円(税サ別)

プリ・フィックスメニューの料理内容は、当日にメニューをご覧いただきながらお選びいただきます。ご希望人数が8名様以上の場合は、ご相談させてください。

 

 目に見えないウイルスに対し、医療従事者の皆様は身の危険を顧みず最前線で奮闘してくださっております。新薬開発に向け、寝る間も惜しんで研究を重ねている方々がいらっしゃいます。物流を途絶えないように、そして生活必需品を滞りなく取り揃え我々に提供してくださる方々がいらっしゃいます。彼ら皆様を支えてくださっている保育園や学童、役場など、多くの方々がいらっしゃいます。

 今までの日々の生活が、知らない方々の尽力の上で成り立っていることに気付かされます。この場をお借りし、深く深く御礼申し上げます。Benoitは、営業時間延長を決定いたしました。これまでの皆様の努力を胸に刻み、細心の注意をもって、日々最善を尽くすことをお約束いたします。

 

 非常事態宣言が解除されたものの、「収束」こそ、その兆しが見えつつあるものの、「終息」には程遠く、目に見えないウイルスに怯える日々は、まだまだ続きます。閉塞感がはびこる昨今ではありますが、人は人と触れることで、会話を交わすことで安心感を得るのではないでしょうか。画面越しでの会話では限界がるものです。

 我々の身体は、食べたものからできています。さらに、旬の食材には、我々がその時に欲している栄養価に満ちています。旬の食材を、美味しく口にすることは、満足感を得ることに加え、免疫力の向上をももたらします。

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ひそやかに咲くスミレの花は、それに気づいた人の心を慰(なぐさ)める

 粛々と営業をするBenoitは、お越しいただいた皆様にとって、心の虚しさを慰める存在でありたい。食事の時にはマスクはできません。画面越しの電子の声ではない、ましてマスク越しではない、かつての日常であった人と人との会話がそこにあります。そして、旬の食材をふんだんに使用した料理があります。「口福な食時」のひとときを、皆様に過ごしていただけるよう、万全の準備をもってお迎えいたします。

 元号は「令和」です。日本中の「美しい()」旬の食材は、それに気づいた人の心を和(なご)ませる

 

最後まで読んでいいただき、誠にありがとうございます。

 終息の見えないウイルス災禍です。皆様、油断は禁物です。十分な休息と睡眠、「三密」を極力避けるようにお過ごしください。「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、笑いながらお会いできることを楽しみにしております。

皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より切にお祈り申し上げます。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com