kitahira blog

徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

≪七月尽ディナー特別プラン≫と≪四連休は泡のワイン!≫のご案内です。

 昨今の新型コロナウイルス災禍は、いまだ収束の兆しは見えず、我々は移動の制限を余儀なくされました。何をどうしたら良いのか全く分からない混沌とした世界の中で、このやり場のない鬱憤(うっぷん)をどうしたものか。疲労やストレスの蓄積は、免疫力を下げてゆくといいます。

 そこで、23日から迎える四連休を含め、Benoitの「口福な夕食時」のひとときをお楽しみいただきたいと思います。日頃より並々ならぬご愛顧を賜っている上に、自分よりご案内している長文レポートに目を通していただけている皆様の労に報いるため、前回ご案内しました≪惜夏特別プラン≫を超える、≪七月尽ディナープラン≫を画策いたしました。

 期間は、723日より、2020731日まで、土日祝日含むディナー限定です。ご予約は、自分へのメールをご利用ください。急ぎの場合には、以下のBenoitメールアドレスより、もちろん電話でもご予約は快く承ります。

benoit-tokyo@benoit.co.jp 

ディナー

前菜x2+メインディッシュ+デザート

7,100円→5,300円(税サ別)

ディナー

前菜+メインディッシュx2+デザート

9,100円→6,370円(税サ別)

 プリ・フィックスメニューの料理内容は、当日にメニューをご覧いただきながらお選びいただきます。ご希望人数が8名様以上の場合は、ご相談させてください。

 

 さらに23日(木)から26日(日)まで、≪四連休は泡のワイン!≫と銘打って、こだわりのスパークリングワインを特別価格でご提案させていただきます。この期間中は、ランチとディナーともに、このワインを特別価格でお楽しみいただけます。2020年3月から1年間、Benoitのハウス・スパークリングに採用された、「日本で飲めるのはBenoitだけ」という逸品です。

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クレマン・ド・ブルゴーニュ キュヴ・アニエス  ヴィトー・アルベルティ

7,200円→4,000円(税サ別)

※本数に限りがございます。ご希望の際には、ご予約時にお伝えいただけると幸いです。

 このキュヴェ・アニエスは、スパークリングワインの専門家、ヴィトー・アルベルティが手掛ける最高傑作です。コート・ド・ボーヌとシャロネーズの両地区の葡萄シャルドネ種のみで醸され、瓶内熟成もシャンパーニュに匹敵する3年間。華やかな香りと凛とした酸味のバランスが秀逸、いついかなる時に飲んでも、納得していただける美味しさです。

 Benoitシェフ・ソムリエ永田が直接交渉をすることで、輸入が実現した、思い入れのあるワインです。どれほどの逸品か、気になりませんか?

 

 今回皆様にご提案させていただく≪七月尽ディナープラン≫。8月にはメニューが大幅に変更してしまうため、食べ納めとなる料理が多々ございます。そこで、少しばかり皆様にご紹介させていただきます。当夜には、どれほど美味しく、それほどこだわりがあるのかは、自分が大いに語りに伺わせていただきます。

 

プロヴァンス地方の夏を代表する料理「ラタトゥイユ」が前菜です。≫

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 夏野菜を代表するナス、ズッキーニ、パプリカをトマトで煮込んでいったプロヴァンス伝統料理です。家でも作りやすい料理だからこそ、Benoitらしい「こだわり」を随所に加えてゆきます。

 ナス、ズッキーニ、パプリカとタマネギは、それぞれを絶妙な食感を残すように焼いてゆき、香ばしさと内包する野菜本来の旨味を引き出します。それらの夏野菜と、完熟まで収穫を待った真っ赤なパンパンのトマトが、大鍋で一堂に会する。くたくたと煮込むことは、それぞれの野菜の甘さ凝縮させることになり、甘みが増します。さらに、冷ますことで、味わいが落ち着き、野菜のコクが際立ちます。松の実を加えることで、カリっと心地良い食感と、夏なのでナッツの香ばしさを。ともに盛り付ける半熟卵の、とろりとくる黄身との相性も抜群です。

 良く知っている料理だからこそ、Benoitのラタトゥイユの美味しさを感じ入っていただけるのではないでしょうか。この美味しさに酔いしれた時、宵(よい)のBenoit窓越しから、月夜に照らされた地中海を望むことができるやもしれません。

 パリの赤ペン先生がフランス語表記を修正してきました。「légumes d’été (夏野菜)」から「légumes du soleil (太陽の野菜)」へと。なかなか粋な表現だと思いませんか?

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Ratatouille de légumes du soleil, œuf mollet

夏野菜の冷たいラタトゥイユと半熟卵

 

≪地中海へのオマージュ、「魚のスープ」7月バージョンです。≫

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 7月になると問い合わせが入るBenoit東京の「魚のスープ」。マルセイユの代表料理ですが、Benoitではドロドロしいというよりも滑らかに仕上げています。「魚介」ではなく「魚」のスープは、ワインを使用せず、魚本来の美味しさを引き出す。。エビ・カニ・貝類を一切加えないため、食せば食すほどに魚の旨味を堪能できます。マダイにクロダイ、そしてイトヨリダイ。カサゴにホウボウと贅沢に使用したスープが、美味しくないわけがありません。

 目の前で注がれる、濃厚な茶色を帯びたオレンジの液体は、透明感はないが輝いている。はなたれる香りが、皆様をマルセイユに導くかのよう。Benoitの窓からは、地中海が望めるかもしれません…7月バージョンとは、8月バージョンがあるということ。変わる前に、7月の美味しさをぜひお楽しみください。

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Soupe de POISSON de roche, rouille et croûtons aillés

魚のスープ ルイユとクルトン

 

ビストロには欠かせない前菜、「テリーヌ・ドゥ・カンパーニュ」を忘れてはいけません。

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 豚の肩肉をメインに、豚の背油と鶏のレバーで仕込むテリーヌです。粗挽きによる肉肉しい食感に仕上げるのは、シェフ野口のこだわりから。丁寧に下ごしらえをされたそれぞれの肉は、網脂で包まれながらテリーヌの型の中へ。ゆっくり、ゆっくりと、温度に細心の注意を払いながら熱を加えてゆき、数日冷蔵庫で休ませます。ばらばらだった味わいが馴染み塩っ気が落ち着くのに必要なのが、この休ませる期間です。

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TERRINE DE CAMPAGNE, lentilles vertes au vieux vinaigre

テリーヌ・ド・カンパーニュとレンズ豆のサラダ

 

ランチには、鶏の白レバーをたらふく使ったテリーヌをご用意しております。このレバーのまったりとした味わいを、ディナーでご希望の際には、ご予約の際にお伝えください。

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TERRINE DE FOIE DE VOLAILLE, pain toasté

鶏レバーのテリーヌ

 

≪何も足さず、何も引かず…Benoit自慢のフォアグラのコンフィ7月末まです!≫

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 鴨のフォアグラ、塩、鴨の脂、この3つの素材を使い、3週間という時の長さを必要とする、アラン・デュカスのスペシャリテでもある至高の逸品です。口の中の温かさでとろけるようなフォアグラの仕上がりと、素材の持つ旨味を十二分に引き出した美味しさは、他のフォアグラのコンフィは味気なく感じてしまうことでしょう。この詳細は、後日にお話させていただきます。

 なぜ、アラン・デュカスが巨匠と称されているのか、垣間見ることができるはずです。

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FOIE GRAS de canard confit, pain de campagne toasté

フォアグラのコンフィ パン・ド・カンパーニュのトースト

(追加料金 ディナー+1,000円)

※7月末まで、ランチ・ディナーのプリ・フィックスメニュー前菜として、お選びいただけます。

 

≪魚料理のイサキが夏の到来を教えてくれます。≫

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 夏の訪れを教えにBenoitにやってきた「イサキ」。このパンパンの体系が、旬の美味しさであることを教えてくれているようです。魚の鮮度は目の澄み具合で推し量るといいますが、イサキ鮮度に関係なく目が白濁するといいます。

 Benoitだけに、お刺身で楽しむわけにはゆきません。丁寧に下ごしらえされた、見るも美しい切り身に、最後の一手間をかけることになります。「焼き」という、簡単そうで奥の深い最後の工程です。食材が持ちうる美味しさが、下ごしらえが、全て水泡に帰するかもしれません。「生」ではないが焼き過ぎない。言うは易く行うは難しとは、このことでしょう。職人としての経験に裏打ちされた「焼の技」が、イサキのさらなる美味しさ引き出すのです。

 ディナーでは、アーティチョークをお供に添えます。山菜を食せずして春を終えることのできないのが日本人であれば、アーティチョーク食せずして夏を終えることができないのがヨーロッパの人々。旬の食材をお楽しみください。

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ISAKI au plat, artichauts en barigoule

イサキのソテー アーティチョークと野菜のバリグール風

 

 夏の魚だけに青々とした夏を代表する野菜を添えたいものです。中でも、イサキの下に広げた、ズッキーニを荒く叩くように仕上げたものは、ズッキーニの甘さと心地よい酸味で仕上げたもの。インゲン豆、スナップエンドウ空心菜がイサキの美味しさを引き立てます。

 このランチバージョンをご希望の際は、ご予約の際にお伝えください。

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ISAKI au plat, légumes verts, sucs de cuisson

イサキのソテー 緑野菜

 

≪「Aile de Raie」とは「エイの翼」のこと。Benoitへ飛んできた?≫

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 フランス語で「aile(エル)」とは、翼や羽根のことを意味し、決して「ail(アイユ)」のニンニクではありません。「Aile de Raie」とは「エイの翼」という意味になります。エイの仲間は、海底に佇(たたず)んでいるか、エサを求めて砂地を徘徊していることが多いものです。しかし、たまには羽を伸ばしたくなる時もあるのでしょう、大海原を悠々泳ぐこともあるのです。その姿は、まるで海の中を両翼を広げるように飛んでいるかのよう。なんという的を射たような表現なのか。

 我々には「エイヒレ」という名前の方が分かりやすいかと思います。北海道や青森県のあたりでは、「かすべ」という名で親しまれています。「アカエイ」という種だけに、我々が想像する薄平べったい姿をしているため、焼くというよりも、煮付けにすることが多いようです。乾燥させて焙って食べたりする「エイヒレ」は、酒の肴(さかな)として馴染み深い逸品ではないでしょうか。

 今回は、フランスの北西に位置しているブルターニュ地方から「ガンギエイ」ばがBenoitに届いています。このエイは、アカエイと違い、両翼が短いために肉厚なのが特徴です日本にもいるのですが、海流激しいドーバー海峡で、もまれにもまれたいるからこそ肉厚な逸品です。

 「エイヒレ」は、白身ではあるのですが、弾力のある肉質に加え、少しぷるっとしているのが特徴でしょう。エイに関していえば、長く広いエンガワのようなものであり、ヒレを支える軟骨もコリコリと口中を楽しませてくれます。

 エイヒレを、たっぷりのバターを使って香ばしく焼き上げます。そこへ、レモン、ケッパーとクルトンを加え、心地良い酸味と旨味の加わったバターを、エイへかけ戻しながら仕上げをしてゆきます。ふつふつと泡立つバターと、そこにほのかに香る心地良い酸味は、そばにいるだけで食欲を搔き立てます。エイの姿からは想像もできないほど美味であり、フランスではビストロ料理の定番。そして、この調理方法以外を、自分は知りません。

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Aile de RAIE à la grenobloise, épinards juste tombés

フランス産エイヒレのムニエル グルノーブル風 ほうれん草

(追加料金 ディナー+800円)

 

≪フランス料理といえば、「鴨胸肉」を忘れてはいけません。≫

 フランスから届いた鴨胸肉は、皮目に隠し包丁を入れるようにし、余計な脂を落とすようにゆっくりと焼き上げます。そして、温かい小部屋で休ませることで、この焼色を実現させるのです。鴨らしい食感と味わい、日本では鴨が葱を背負って来るのですが、Benoitはオレンジがおともをします。ソースに混ぜるのではなく、添えるように。オレンジの果肉ばかりでなく、表皮も使うことで、柑橘特有のほろ苦さを生かすように仕上げたマルムラードとの相性は抜群です。

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CANARD à l'orange, fenouil fondant

フランス産鴨胸肉のロースト ウイキョウとオレンジ

 

≪丁寧に焼き上げた仔牛をご堪能ください。≫

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 たっぷりのバターが、熱せられたココットの中で溶けてゆく。そして、ふつふつと泡立ち、甘い香りを放つようになる時、バター液面の淵が焼き色を帯びてくる。仔牛の肉は、焼くことで美味しさを引き出すも、どうして逃げてしまうものもあります。その美味しさを含んだバターを、何度も何度も繰り返しかけ戻すようにする。

 Beigeのシェフ小島が、まだBenoitのシェフに就いていた頃、「美味しさを戻してあげる」のだと語っていたのを思い出す。仕上げのタイミングを計りながら、ゆっくりと焼いてゆく。単調な作業ながら、これがいかに重要な工程であるかは、担当スタッフの眼差しの厳しさに表れています。

 この断面の美しい色が美味しさを物語っているでしょう。豚肉もそうでしたが、仔牛のような白っぽいの肉料理には、オリーブの旨味と塩加減がよく合うものです。細かくカットした黒と緑のオリーブが美味しさを引き立てます。

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Longe de VEAU cuisinée en cocotte, pommes de terre nouvelles et cébettes

仔牛ロース肉のオーブン焼き 新ジャガイモとワケギ

 

香川県ひうらの里から、旬の「すもも」が届いています。≫

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 スモモの特徴でもある酸味を利用し、バニラの風味豊かな熱々のデザート「クラフティ」というスタイルに仕上げていきます。クラフティは、甘酸っぱいグリオットチェリーやルバーブで仕上げることの多いフランス伝統のデザートです。これを、同じく酸味が特徴のスモモで、ましてや飯田桃園さんの逸品であれば、美味しくないわけがありません。

 熱々に焼き上げることで、スモモの酸味がまろやかになり甘さが引き立てられます。この甘酸っぱさが、バニラと卵の甘さとの抜群の相性で我々を魅了し、さらに牛乳アイスクリームと合わせようものならば、我々を「口福な食時」へと誘(いざな)うでしょう。

 飯田桃園さんは、完熟まで収穫を待ち、Benoitへ送り出してくれます。翌日に届く箱を開いた時の香は、丹精込めて完熟までまってるからこそのもの。今は「ソルダム」です。

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Clafoutis aux PRUNES

香川県“ひうらの里のすもも”のクラフティ

(追加料金 ディナー+500円)

 

 最後まで読んでいいただき、誠にありがとうございます。皆様にお召し上がりいただきたい料理を羅列させていただきました。まだまだ言葉足らずなところがございます。何かご要望・質問などございましたら、何気兼ねなく自分へのメールをご利用ください。もちろん電話でも快く承ります。

 

 目に見えないウイルスに対し、医療従事者の皆様は身の危険を顧みず最前線で奮闘してくださっております。新薬開発に向け、寝る間も惜しんで研究を重ねている方々がいらっしゃいます。物流を途絶えないように、そして生活必需品を滞りなく取り揃え我々に提供してくださる方々がいらっしゃいます。彼ら皆様を支えてくださっている保育園や学童、役場など、多くの方々がいらっしゃいます。

 今までの日々の生活が、知らない方々の尽力の上で成り立っていることに気付かされます。この場をお借りし、深く深く御礼申し上げます。Benoitスタッフ一同、これまでの皆様の努力を胸に刻み、細心の注意をもって、日々最善を尽くすことをお約束いたします。

 

 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、笑いながらお会いできることを楽しみにしております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より切にお祈り申し上げます。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com