kitahira blog

徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

2020年秋 ≪コース料金改定≫と≪惜秋特別プラン≫のご案内です。

思ひやれ 真柴のとぼそ おしあけて ひとりながむる 秋の夕ぐれ  後鳥羽院

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 和歌に対する造詣が深く、同時代に藤原定家という天才に恵まれたこともあり、勅撰和歌集の編纂の勅令を下しました。この英断によって、優美を極めた「新古今和歌集」が今に遺ることになります。しかし、1221年の鎌倉時代鎌倉幕府執権の北条義時に対して挙兵するのです。この承久の乱は幕府側の勝利に終わり、後鳥羽院隠岐(おき)の島に配流(はいる)されることになります。

 「思ひ遣(や)る」とは、悲しみや憂いの気持ちを晴らす他に、遠くの人を思いやるという意味もあります。「真柴のとぼそ」とは、柴を編んだ門扉のことで、粗末な住処(すみか)であることを、婉曲に表現しています。

 歌帝が隠岐の島で詠まれたのが、冒頭の一首です。遠い地にいる自分の境遇を思いやってくれはしないか。柴の戸をおしあげ、はっきりと何を見るというわけでもなく、ひとり物思いに耽りながら眺める秋の寂しい夕暮れです。権謀術策うごめく中で、文武両道であったことで頭角を現すも、失脚します。栄枯盛衰の人生を悔いているのか、はたまた世の常として甘受しているのか。古語である「眺(なが)む」とはどのようなものなのか、我々に教えてくれる一首なのではないでしょうか。

 世界中を席巻しているCovid-19災禍は、いまだ収束の兆しは見えません。歴史を振り返ってみると、病原菌や悪性ウイルスによる災禍は、幾度となく繰り返しています。我々は、今できるウイルス対策を粛々とこなしてゆくことしかないのでしょう。大いに悩むも、医療素人の自分に何か解決策があるわけでもありません。

 昼と夜の営業時間の合間に、換気のために非常階段の扉を開けることが常となりました。今、ディナー営業前には秋の夕暮れを眺めることができます。何を見つめてるわけではなく、ただひとり「眺む」、Benoitからの夕暮れです。涼しくなってきた秋の風が、幽愁の思いを導いてくるかのようです。

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101日より、Benoitの料理価格を改定させていただきます。≫

 2020年10月1日より、Benoit料理メニューの価格改定を実施させていただきます。新しい価格については、HPのMENUの項目か、次にご紹介させていただく「惜秋特別プラン」の元値を参照いただけると幸いです。

 日頃より並々ならぬご愛顧を賜っております皆様より大切な時をお預かりすることを、自分を含めスタッフ一同、しっかりと胸に刻み、皆様が「口福な食事」のひとときをBenoitで過ごすことができるよう、最善を尽くさせていただきます。なにとぞご理解賜りますよう、よろしくお願いいたします。

 

≪惜秋特別プランのご案内です。≫

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 降り注ぐ太陽の陽射しが万物を育て上げ、四季折々の風はその土地土地に味わいをもたらせます。その風のもたらした美味しさこそ「風味」であり、風味の満ち満ちたものが旬の食材なのではないでしょうか。この旬の食材は、美味しいばかりではなく、いま我が欲している栄養をも持ち合わせています。

 人の体は食べたものでできています。「美しい(令)」季節の秋食材が「和」する料理の数々。これを美味しく食べることで、人は笑顔になり、体の内側から湧き出でる力となる。そして、我々をウイルス災禍から守ってくれることでしょう。さらに「口福な食時」のひとときが、どのようなものかを知ることができるはずです。

 そこで、日頃より並々ならぬご愛顧を賜っている上に、自分よりご案内している長文レポートに目を通していただけている皆様の労に報いるため、≪惜秋特別プラン≫をご案内させていただきます。期間は、メールを受け取っていただいた日より、202011月末まで。ご予約は、自分へのメールをご利用ください。お急ぎの場合には、以下のBenoitメールアドレスより、もちろん電話でもご予約は快く承ります。

benoit-tokyo@benoit.co.jp

 

ランチ

前菜+メインディッシュ+デザート

4,500円→4,000円(税サ別)

前菜x2+メインディッシュ+デザート

5,500円→5,000円(税サ別)

前菜+メインディッシュx2+デザート

6,800円→6,000円(税サ別)

ディナー

前菜+メインディッシュ+デザート

6,800円→6,200円(税サ別)

前菜x2+メインディッシュ+デザート

7,800円→7,200円(税サ別)

前菜+メインディッシュx2+デザート

9,100円→8,200円(税サ別)

 プリ・フィックスメニューの料理内容は、当日にメニューをご覧いただきながらお選びいただきます。ご希望人数が8名様以上の場合は、ご相談させてください。

 

 秋の夕暮れに吹き抜ける秋の風。真夏の猛暑に疲弊した体には、心地良さを感じるものです。そして、得も言われぬ幽愁(ゆうしゅう)の思いが我々を包み込む。「ひとりながむる」ことで、さらに深くなる。

 「憂愁=幽愁」と辞書に記載があります。憂愁は、「悩み苦しむこと、悲しみ」とある。では、幽愁は「心の奥底の憂い、悲しみ」なのだと。分かったようで分からない、同じような気もします。

 両者に共通する「愁」は、「愁(うれ)い」とも読み、思い悩むことを意味します。「憂」もまた「憂(うれ)い」と読み、同意です。そうすると、憂愁は、ダブルで思い悩むことで苦しい、日々の生活の中で起きうる人間関係や、金銭関係などで苦しみながら思い悩むこと。「幽」には奥深いという意があります。そうすると、自分ではどうすることもできない自然の摂理への、手の届かないどうしようもないことへ思い悩むことなのか。こう考えると、過ぎ去る秋への想いは、「幽愁」こそあい相応しいのでしょう。

 Benoit特選食材で仕上げた美味なる料理の数々を逃してしまうことは、憂愁なのか幽愁なのか?ここは、皆様の判断にお任せいたします。よく見ると、「愁」の字は、秋に心と書いています。思い悩むことが多いのが秋なのかもしれません。

 ここはいっそのこと、足の赴くままにBenoitへお越しいただき、愁うことなく旬の食材をお楽しみいただく。そうすれば、憂愁でも幽愁でも、どちらもお構いなしという、全て万事解決となることでしょう。皆様との再会を、愁うことなく心待ちにしております。

 

 季節のお話から始まる10月特選食材ダイジェストへのご案内です。今回は「手招く尾花」という題目で書かせていただきました。尾花と何の花で、何をおいでおいでと手招きしているのか。ぜひお時間のある時に、以下より季節のお話をご訪問いただけると幸いです。

kitahira.hatenablog.com

 

 夏食材も終わりを告げ、深まりゆく秋に合わせ、Benoitにも秋食材が続々と届けられることになっております。どのような食材が10月に登場するのか?いそぎ知りたい方は以下より、秋の食材ダイジェスト版をご覧ください。

kitahira.hatenablog.com

 

 「涼風(すずかぜ/りょうふう)」というと、夏の季語。秋に感じる涼しさは「新涼(しんりょう)」や「初涼(しょりょう)」というそうです。秋分を迎え、暦の上では秋の最中。もう涼しさを感じていらっしゃることと思います。秋らしい寒暖の差は、知らず知らずのうちに体力を奪ってゆくもの、十分な休息と睡眠をお心がけください。

 そういえば、「女心と秋の空」とはよく耳にいします。しかし、江戸時代には「男心と秋の空」といったそうです。移ろいやすい心の持ち主は、いったいどちらなのでしょうか。

 

 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com