kitahira blog

徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

季節のお話「冬の到来を告げる初音」

コツコツコツ…

 子供たちの楽し気な声が響く公園の中で、片隅の木立に立っていると、熟練の大工さんが細い木槌で樹を連打してるかのような音が耳に入ってきました。この澄んだ音色は、金属と金属が当たる音ではありません。いったい何の音なのか、意識して耳をそばだててみると、意外にも脇にある樹から響いていた。

コツコツコツ…

 樹の幹から伝え響くかのような音。よくよく聞いてみると、なにやら樹の上のほうから伝わってくる。音を頼りに、今度は目を凝らしてみると、なにやら動くものがある。陽射しに邪魔されながらも、小鳥の姿がそこにはあった。

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音の主は「コゲラ」だ!

 キツツキの仲間で、コゲラは日本にいるキツツキ中で、もっとも小さく、スズメほどの大きさ。全国に広く分布し、一部の寒冷地を除き、季節によって移動をしない「留鳥(とどめどり)」です。鋭いかぎ爪のような足は、なかなかの握力らしく、両足と尾を起用に使い、垂直に伸びる樹をひょいひょいと上下にすばやく移動するため、目で追いかけるにはせわしない。

 雑食で、木の実はもちろん、虫を好んで捕食しているようです。春夏には生い茂る葉にいつく虫を、冬には樹の幹に巣食う虫を、高速連打で穴を開ける、はたまた虫が驚いて顔を出したところを捕まえる。

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 「暦(こよみ)」を手に入れた人類は、これに支配されてしまうことになりました。スケジュールに支配される息苦しさは皆様も感じているのではないですか。ただ、暦は人類史上の大発見であり、どれほど便利で日々の生活に欠かせないものであるか。これは今も昔も変わりはありません。

 かつては、農作業の目安は、草木の芽吹きやら花開く時期、小動物や鳥たちの鳴き声や行動パターン、遠く望める山々の冠雪の有無など、自然に教わるものでした。今でも十分に活用でき、気象庁の定める「生物規則観測」などは興味深いものです。通勤途中や散歩などの外出中に、人々の喧騒にもまれる中で、ふっと息つくひとときに、耳に入ってくる「初音(はつね)」には、感慨深いものがあります。

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コツコツコツ…

 ウグイスやホトトギスは、鳴き声で我々に季節の到来を教えてくれます。コゲラは「ギイー、ギイー」と鳴きます。初音は何も鳴き声にばかりではないと思うのです。コゲラの初音は樹をつつく音色でしょう。コゲラのつつきだす澄んだ音色が、冬間近であることを教えてくれています。

 

 連綿と繰り返される自然のサイクルは、その年ごとに何かしらの変化をもたらすことになり、遅いだ早いだなどと我々はその機微に一喜一憂するものです。しかし、四季折々の移ろいを、我々が勝手にカレンダーなるものにあてはめること自体がおこがましいのでしょう。自然はしっかりと語りかけている。それを真摯に受け止めているのが、野生の生き物たちです。

 野生に生きとし生けるもの、あるものは花を咲かせ実を成すことで、あるものは鳴き声で、我々に季節が変わってゆくことを教えてくれています。コゲラは季節の機微を感じ取り、越冬するため糧を得ようと樹をつつく。コツコツコツ…とせかされるようなその音色は、我々に冬の到来を教えてくれています。我々も冬支度をしなければなりません。まもなく、「冬至(とうじ)」を迎えます。そして、時同じくしてクリスマスもやってきます。

 そこで、2020年のクリスマスの提案をさせていただきます。

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一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com