kitahira blog

徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

Benoit特選チーズ「クロミエ」のご紹介です。

 今回ご紹介するチーズは、「Coulommiers(クロミエ)」と名付けられた逸品です。さて、下の画像の中に写っているのですが、どのチーズでしょうか?

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 このチーズの出生は、フランスの首都パリがあるイル=ド=フランス地域圏です。この圏内にセーヌ=エ=マルヌ県があり、その県内にある「クロミエ村」が名前の由来になっています。この「クロミエ」には、チーズ界には珍しく兄弟がいるのです。その名も「団子三兄弟」ならぬ、「ブリ3兄弟」。「クロミエ」なのに、なぜ「ブリ」なのでしょう?

 「ブリ」というのは、「ブリ三兄弟」の長男の名前です。白カビチーズの中で世界最大の大きさを誇り、洗練された女性的な味わいは、チーズの王様と称えられています。これが、「Brie de Meaux(ブリ・ド・モー)」という長男チーズ。なんぴとをも魅了する偉大なチーズだからこそ、三兄弟にその名を冠しているのです。

 次男にはモーより少し小型だが武骨で男性的な味わいと表現される「Brie de Melun(ブリ・ド・ムラン)」。そして末っ子が、今回の特選チーズ「Coulommiers(クロミエ)」です。この3つのチーズで「ブリ3兄弟」です。クロミエと同じく、モーやムランも村の名前が由来になっており、すべてセーヌ=エ=マルヌ県に集まっています。

 このクロミエというチーズ、兄弟の中でも決定的に違う点があります。それは、AOP(原産地名称保護)を取得していないこと。AOPとは、国がその製品の伝統性を認め、原産地や製造方法などを明文化して指定し、固有の呼称と品質の保護・保証するものです

 長男(Brie de Meaux)と次男(Brie de Melun)に関してはAOPを取得しているため、原材料や製造方法等が厳しく規定されています。しかし末っ子であるクロミエは取得していないため、製法に規定がなく、町や村ごとにその土地の特徴を表すクロミエたちが造られているのです。一般的には殺菌乳で造られた優しい味わいのクロミエが出回っていますが、中には無殺菌乳で造られた、その土地の個性を表現した個性的な味わいのクロミエも存在しています。

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 今回、Benoitが皆様にご紹介するクロミエは、もちろん無殺菌乳で造られたものです。熟成が若い内はおとなしい末っ子のような優しくマイルドな味わいですが、熟成するとお兄様であるブリ・ド・モーを彷彿させるような口の中に広がるしっかりとしたミルクの甘みと非常に滑らかでクリーミーな味わいをお楽しみいただけます。

 数々のクロミエを試食しましたが、毎回味わいが異なります。これが無殺菌乳の面白いところだと思います。造られた時の季節や気候、草の状態や牛の健康状態、環境微生物の状態等、製造に関するすべての物事は常に一定ではないため、味わいは常に一定ではありません。ここにチーズの醍醐味である「熟成」が加わることで、さらに複雑な世界へと我々を導いてくれるのです。

「無殺菌乳のクロミエ」を、ぜひBenoitでご賞味ください!

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬 いや、今回は小林健太でした。

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