世の中に たえて桜の なかりせば 春の心は のどけからまし 在原業平(ありわらのなりひら)
世の中に、まったく桜がなくなれば、いつ花開くのか待ち焦がれたり、風が花を散らさないかと気を揉んだり、散れば散ったで惜しんだりと、心を煩(わずら)わせることもなく、ゆっくりと春を過ごすことができるだろうに。今年ほど、この歌が心に染み入る年はないのではないでしょうか。
いまだ終息の見えない「新型コロナウイルス」災禍。この恐るべき流行状況を鑑み、感染拡大防止の観点から、週末のBenoitの営業を自粛することにいたしました。皆様からいただきました温かい応援のメッセージの数々を励みに、少しでもお応えしようとスタッフ一丸となり奮闘してまいりました。しかし、この得体のしれない、目に見えないウイルスに対し、少しでも終息の方向へと向かうのであればと、苦渋の選択をさせていただきました。
2020年4月4日(土)と5日(日)
2020年4月11日(土)と12日(日)
上記の日程の営業を自粛させていただきます。すでに、ご予約をいただいた方々、週末にBenoitでのお食事を楽しもうかとご検討いただいていた皆様には、ご迷惑をおかけすることになりますが、ご理解のほどなにとぞよろしくお願いいたします。「ここ2週間」が、感染拡大の瀬戸際であると信じております。しかし、延長せざるをえない状況に陥ることも考えられます。重ね重ねお詫び申し上げます。
平日に関しては、粛々と営業を継続させていただきます。店内及びスタッフの手洗い消毒を徹底することはもちろん、席間を1テーブル空けることで、「密」を排除いたします。何かご要望・疑問な点などございましたら、何気兼ねなくお問い合わせください。皆様にお会いする機会をいただけるのであれば、万全の準備をもってお迎えさせていただきます。
春山淡冶にして笑うが如く 夏山蒼翠として滴るが如く 秋山明浄にして粧うが如く 冬山惨淡として睡るが如し 郭煕 (臥遊録)
「春山笑い、夏山滴る、秋山粧い、冬山眠る」。山を人にたとえた擬人法などと語るのは風情がないというものでしょう。郭煕はなんと見事に四季折々の風景を短い言葉で言い表したものか。異国の地、郭煕の見た景色と、今我々の眼に映るものとでは別のもの。大いに共感できる「春山笑う」景色とは、花が笑うかのように花が咲き誇ること。しかし、その想い描く美しい風景は十人十色。なぜか、人それぞれの良き思い出が加味されるからです。
「桜は来年も咲きます。」小池都知事の言葉が心に響きます。我々は、各々が思う「美しく花笑う姿」を知っています。今年は耐え忍ばなくてはならない年となりました。しかし、来年もまた花は笑います。
今年の干支は「庚子(かのえね)」です。「庚」は「更」であり、「子」は「坎」でもあると古代中国の賢人はいう。「更始(こうし)=古いものを捨て、初めからやり直すこと」の年である。そして、六十四卦では「坎下坎上(かんげかんじょう)=坎為水」は、「重なる険難はあるが、真実をもって行動すればうまくいく。」ということ我々に教えてくれています。
必ず、笑いながら日々を過ごすことのできる「時」がやってきます。Benoitも、真実をもって行動し続け、粛々とした営業ですが、笑顔で皆様をお迎えいたします。そして、そう遠くないうちに、何も心配することがない、心の底から笑顔になれる日が訪れることを信じております。
お花見自粛を受け、「桜」への想いをつらつらとブログに書かせていただきます。なぜ、ここまで我々は桜に一喜一憂するのでしょうか?お時間のある時に、ご訪問いただけると幸いです。
世の中に、春を彩る食材がなくなれば、ゆっくりと春を過ごすことができるものを、とは夢の中でも思ってはいけません。これはいけません。四季折々の旬の食材は、今我々が必要としている栄養が豊富に含まれており、その時々を無事息災に乗り切ることを手助けしてくれています。生きとし生けるものへと与えられた、自然からの贈り物です。
「春に三日の晴れなし」とはよく言ったもので、日々変わりゆく天気は落ち着きがありません。皆様、無理は禁物、十分な休息と睡眠をお心がけください。ウイルス対策もお忘れなきように。そして、日々の食卓に「旬の食材」を加え、美味しくいただきながら、体の中より免疫向上をお心がけください。
末筆ではございますは、ご健康とご多幸を、青山の地よりお祈り申し上げます。
ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬