kitahira blog

徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

季節のお話「さえの神」

 新しい年を迎え、皆様はご自宅のある地を守る氏神様へ初詣をされたのではないでしょうか。旧年のお礼とご報告、そして新年も引きご加護を賜りますようにとお願いされたことと思います。願いを受ける氏神様におかれましては、「新型コロナウイルス災禍の収束」という願いが一番多かったことでしょう。

 神社仏閣とは、神様を祀(まつ)っている建物と仏様を祀っている建物のことをいいます。前者が神社であり、後者が仏閣です。「お社(やしろ)」に神を祀り、まわりを樹々が囲む。この樹々は杜(もり)と呼ばれ、神格化された地との境をなしているという。「閣」は「たかどの」との訓読みがあり、立派な建物のこといいます。確かに、神社や寺院が集まる信仰の中心地ではない地域であれば、大小さまざまなお社に比べ、お寺さんは大きな建物で数が少ないでしょうか。小さいお社の「祠(ほこら)」とのなると、さらに多くなります。

 仏教信仰の中で、一番多く目にすることができるのは、地蔵菩薩(ぼさつ)を祀る「お地蔵さん」ではないでしょうか。では、神様では「祠」以外にはないものかと思案してみる。皆様のお住いの地でも、大通りに面した地や、家々が密集してる地の辻(つじ)など、其処此処(そこここ)に鎮座し、ひっそりと我々を守ってくれている神様がいます。

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さえの神」です。

 昔の日本人は、疫病などのよからぬ災厄は悪霊の仕業であると考えました。その悪霊が、自分達の村に入らないように、出入り口なる道端に祀ったのが、この「さえの神」です。この神様は「道祖神(どうそじん)」とも呼ばれています。冷徹さが「冴(さ)え」る神様、ではありません。「さえ」は「さう」という動詞の名詞形です。この「さう」は、「障(さは)る」の原型で、「自由な行動の妨げとなる/邪魔をする」ということ。何をどうしたらよいのかさっぱり分からない。そこで、古人は疫病をもたらす悪霊の侵入を防ぐために、村の出入り口「邪魔をしてくださる神」を祀りました。

 ご自宅から出勤や通学されるとき、散策に出かけられるとき、普段は見過ごしてしまう場所に、目を向けていただきたいです。そこに、「さえの神」はひっそりと佇(たたず)み、我々を見守ってくれています。そして、思いのほか数多く、多様な姿で「さえの神」と出会うことができるはずです。そこは、かつては村へ入る道であり、長きにわたり村人の切なる願いを託され、悪霊の村への侵入を「さえ」をしてくださったのです。

 目に見えず得体の知れないものに恐れおののくことは、今も昔も変わりません。しかし、科学の発展は多くのことを解決に導き、我々に安心感を与えてくれました。未曾有の新型コロナウイルスにしても、収束の兆しこそまだ見えないものの、少しずつ解明されてきています。

 日本の新型コロナウイルス罹患者は、ここにきて増加の一途を辿っています。しかし、他国に比べると、感染者の増加は遅々としたもの。これは、「さえの神」が邪魔をしてくれていたのかもしれません。しかし、問題の解決はしてはくれません。「感染の邪魔をし、このウイルスを調べる時間を少しは稼ぐことができたはず。次は君たちの番だ!」と。多くの情報が錯綜するなかで、「さえ」の神は我々に「智慧(ちえ)」をもって情報を見極め、行動に移すことを求めています。

 

 迷惑千万なウイルスが、Benoitに侵入することを妨げる、まさに「Benoitのさえの神」は、10階と11階に鎮座しております。ともに、音を発するわけでもなく、風を巻き起こすわけでもなく、あまりにも静かなために、効果があるのか心配になるほどです。しかし、それぞれの製薬会社さんには十分な実証実験の成果があり、効果のほどが確実なもののようです。

 「ようです」とは、なんとも歯切れの悪い物言いですが、見えない以上、素人には如何せん想像で話すしかありません。小さな小さなウイルスと、無色無味無臭の二酸化塩素との熾烈な戦いがBenoitで繰り広げられているのです。

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 10階では、姿こそ小さいですが、いっさい音を立てず、ウイルスに対して長きにわたり睨(にら)みをきかせる「クレベリン」です。すでにご存じの方も多いのではないでしょうか。場所を取らず・選ばずという優れもの。こざっぱりとしているので、勝手にBenoitシールを貼ってしまいました。

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 そして、11階では「nanoseedα」が広い範囲を包括するように、「除菌」「ウイルス除去」を担っております。これほどの大きさしかないにもかかわらず、100畳の広さに効果を発揮するといいます。

 Benoitでは、スタッフの出勤時の健康チェックはもちろん、終日を通してこまめなスタッフの手指の消毒を徹底。皆様に口に触れるものは、業務用洗浄機を使用することで、80℃以上の高温洗浄。店内では消毒清掃を徹底しております。そして、10階エレベーター前と、11階の階段脇では、「Benoitのさえの神」が、皆様を見守っております。Benoitでの「口福な食時」のひとときに、皆様が少しでも「安心・安全」を感じていただければ幸いです。

 

 医療従事者の皆様は身の危険を顧みず最前線で奮闘してくださっております。新薬開発に向け、寝る間も惜しんで研究を重ねている方々がいらっしゃいます。物流を途絶えないように、そして生活必需品を滞りなく取り揃え我々に提供してくださる方々がいらっしゃいます。彼ら皆様を支えてくださっている保育園、学校や学童など、多くの方々がいらっしゃいます。

 今までの日々の生活が、知らない方々の尽力の上で成り立っていることに気付かされます。この場をお借りし、深く深く御礼申し上げます。Benoitスタッフ一同、これまでの皆様の努力を胸に刻み、細心の注意をもって、コロナウイルス災禍収束を目指し、日々最善を尽くすことをお約束いたします。

 

 昨今の新型コロナウイルス災禍は、飲食店の弱さをまざまざと見せつけられました。人生を豊かにする上で、飲食店はなくてはならないものですが、平穏無事な状況下でしか成り立たないということ。先日発出された「緊急事態宣言」と東京都の要請、さらにBenoitの現状を鑑み、「ディナー営業の自粛」という苦渋の決断をさせていただきます。皆様にはご迷惑をおかけいたしますが、ご理解のほどなにとぞよろしくお願いいたします。

 詳細は、新春特別ランチプランととおもにご案内させていただきます。

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 今年の辛丑が始まりました。その「辛」の字の如く、優しい年ではないかもしれません。しかし、時は我々に新地を用意してくれている気がいたします。思い思いの種を植えることで、そう遠くない日に、希望の芽が姿をみせることになるでしょう。

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 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com