kitahira blog

徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

2021年5月「今宵はBenoitで!」貸切のご案内です。

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 春の陽気に誘われるように新梢が伸び、新緑美しい葉を茂らせた隙間から、ブドウの花が顔を覗かせています。梅雨入り前の天候が不安定な時ですが、ブドウは花開くことを本能的にこの時期であると決めているようです。もう少し早く花笑えば、雨によって受粉を妨げられることもないのに、そう思う今日この頃です。

 その「ブドウの花」。花が果実になるため、房なりのブドウにはさぞや多くの花が咲くのではないか?まるでアジサイのようにぎゅっと小さな花が咲き誇るのではないかとお思いではないですか?実は、皆様の話題にならないほどの、簡素極まりない花をしれっと咲かすのです。

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 ブドウは小さな蕾が密集した花穂(かほ)が、そのまま大きくなって果実の房となります。蕾一つ一つは、帽子をかぶったように守られており、これを脱ぎ捨てると可愛い雄しべと雌しべが顔を出します。花びらが無いため、花のような感じがしないのですが、これが立派なブドウの花です。

 ご覧の通り、あまりにも弱弱しい姿であり、雨が激しければ、もれなく雄しべ雌しべが流れ落ち受粉ができなくなります。雨に優しさがあれば生い茂る葉が傘となるのですが、激しい雨に打ちのめされたり、強風で葉が傘の役割を成さない場合は、結実しません。しかし、果実が熟すまでの期間を考えると、この不安定な時期に花開かなければならない…

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 厳しい自然界で多くの動植物が淘汰されてゆくなか、ブドウは考えた。一度に全ての花を咲かすのではなく、順を追ってゆこうと。これにより、天気のいたずらにより結実無しというリスクを回避できるのではないかと。まばらな実付の房となる結実不良(ミルランダージュ)になろうとも、生存競争を勝ち抜くために、ブドウはこの開花方法を選択した。見てくれを気にするのは我々(ブドウ)ではなく、人間だ!

 

 ブドウは自然界を生き残りました。有史以来、美味しい果実をもたらし、さらには美酒へと姿を変える。その有用性から人類に重宝され、今では温室育ちという過保護な待遇まで受けています。それでも、路地に育つブドウは自然環境と対峙し、立派に生き抜いています。

 昨今の未曾有のコロナウイル災禍は、いまだ収束の兆しが見えておらず、ウイルスとの戦いは厳しさを増すばかりです。「営業自粛」という選択肢が脳裏をよぎる中で、昨年に自粛した3週間に自分が心の拠り所を見失いかけた辛さを思い出し、Benoitは「営業継続」を選びました。どんなに厳しい営業結果になろうとも、考えうるウイルス対策を徹底し、皆様へ門戸を開けておくことで皆様に「美味しい料理」と「語らいの場」を提供し続けよう。そして、Benoitのために尽力してくれている仲卸さんや生産者さんにも少なからず報いたい、そう考えました。

 しかし、ブドウが厳しい自然界を生き抜くために、開花のタイミングをずらすという荒業を成し得たにもかかわらず、Benoitは「ディナー営業中止」という、後ろ向きな選択をしています。Benoitは何かできないものか?そう思案し続けながら夜のとばりがおりてゆく。静まり返るBenoitの店内で、パチパチと永田のパソコンを打つ音が響いている。そこへ、Benoitの代表取締役社長である鈴木から、こう一報が入ったのです。

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ディナーの貸切はどうだ?

 

 闇夜に包まれたBenoitの中には、こうこうと明かりをつけ、さぼっているわけではないが、思案している自分がいる。いるのであれば、Benoit貸切希望の方にご利用いただけば良いではないか。それもこのコロナウイル災禍だからこそ、普段でありえない、定額少人数でBenoit個室ではなくまるまる全部を貸切って楽しんでいただいてもいいのではないか?そこで!

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≪5月平日ディナー限定! Benoitをまるまる貸切りませんか?≫

皆様が気になる価格: 営業補償ということで11万円(税込/サービス料別)

ご利用人数: 人数は問いません。

お時間: 170020:00まで

※この価格はお部屋代ではなく、ご飲食代とお考え下さい。料理の価格はいつものBenoitのディナー価格を参考にしていただけると幸いです。ご予約はもちろん、何かご要望・質問などございましたら、何気兼ねなく北平までお問い合わせください。このメール(kitahira@benoit.co.jp)への返信、電話でも喜んで承ります。ご飲食代…皆様、お察しいただけると幸いです。

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 Benoitで目に入るものは、スタッフ以外はほぼフランスから届いたもの。其処彼処にアンティークが設(しつら)えられ、どこを向いても絵になる内装が自慢です。ここを皆様の仲間内だけで占有していただきたいのです。一般営業では写真撮影が憚(はばか)れることもあるかと思いますが、この日は全くその心配はありません。思い思いのドレスアップでお食事を楽しみ、想い出の写真撮影に興じるのも良いかもしれません。

 昨今のコロナウイル災禍で、結婚式などのお祝いができていない方も多いのではないでしょうか。この機会に、Benoitを占有してみませんか?簡単なドレスであれば、個室を更衣室にしてドレスアップしても良いかと思います。

 人数が少ない場合、ご希望があればBenoitの四隅を利用した完璧なるソーシャルディスタンスも可能です!これは冗談としても、Benoitを10階から11階まですべてを占有できる機会は今しかございません。18日火曜日と31日月曜日を以外は、自分が自慢の料理の数々を語りに伺わせていただきます。ご検討のほど、なにとぞよろしくお願いいたします。

※あまりにも閑散とした雰囲気を回避するため、お食事のテーブル以外も通常のテーブルセットをさせていただきます。

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 ブドウの花は、やがて果実となり、そのまま食して美味しいものです。そのブドウの房を、軽く潰して器に入れておくと、果皮に付着している酵母が動き出し、発酵が始まります…

Avec bon pain, bonne chère et bon vin, on peut envoyer promener la medecine.

「美味しいパン、美味しい料理、美味しワインがあれば、我々は薬を手放すことができる(医者いらず)」

 

 最後まで読んでいいただき、誠にありがとうございます。

 今年の辛丑が始まりました。その「辛」の字の如く優しい年ではないかもしれません。しかし、時は我々に新地(さらち)を用意してくれている気がいたします。思い思いの種を植えることで、そう遠くない日に、希望の芽が姿をみせることになるでしょう。

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 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com