kitahira blog

徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

2021年9月 「立秋」があるからこそ気になる一首…

 8月7日に「立秋」を迎え、暦の上では秋が始まりました。まだまだ猛暑が続く中で、「秋」と言われても…と毎年のようにこの立秋だけは、何とも言えない違和感を覚えるものです。2007年に新たな気象用語がお目見えいたしました。最高気温が25℃以上は「夏日(なつび)」、30℃以上で「真夏日」、35℃以上では「猛暑日」と表現するそうです。ともすると、暦では秋が始まったとはいえ、夏日を超えた真夏日猛暑日が続く8月は、まったく秋の様相を見せてはくれません。昔は違ったのでしょうか?

 月の軌道を基準とした旧暦と太陽の新暦との違いあり、その偏差は40日ほどある。なるほど!旧暦の時代には、秋の訪れはまだまだ先だったのか…と早合点しておりました。

 「立秋」というのは二十四節気の中の一つの季節区分のこと。二十四節気というだけに、1年を24に分け、太陽が真東から昇る「春分点」を起点にして振り分けられます。新暦は太陽の軌道が基準になっているので、毎年この節気に変動はほとんどありません。しかし、旧暦では毎年のように節気が移動するのです。偏差が40日ということで、旧暦では年内に「立春」を迎えることもあるのです。

 二十四節気が、春分点を起点にしているということは、旧暦も新暦も暦の日付は違えども、ほぼ時期を同じくすることを意味しています。そう考えると、昨今の地球温暖化の影響はあるかと思いますが、今も昔もやはり暑かったはずです。

 

立ちよれば すずしかりけり (ははそ)はら 木ずゑは秋の いろならねども  藤原季経(すえつね)

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 柞(ははそ)とは、コナラ、ミズナラクヌギにブナのブナ科の落葉高木群の総称です。今でこそ馴染みのない「柞」という言葉ですが、かつては身近な存在であり、今でも雑木林の重要な一役を担っています。藤原季経は、何のためらいもなく降りそそぐ陽射しから逃れようと、柞(ははそ)が生い茂る木陰に潜り込むと、思いのほか涼しさを感じることができたという。

 日陰に入ることで、茹(う)だるような暑さから逃れることは、今でも常套手段です。ビル群の影でも確かに涼しいものですが、樹々の葉影は一入(ひとしお)の涼しさを感じるものです。コンクリートと土では、気温に与える影響は違うでしょう。しかし、それ以上に涼しさを感じるのは、視覚的効果が大いに関係するのではないかと思うのです。柞の葉隠れは、大小の葉が縁を重ねるように形成されています。そこに陽射しが当たると、その重なり具合によって濃淡の違う緑の叢(むら)の美しさを見せてくれます。さらに、樹々の合間を縫うように吹き抜ける薫風(くんぷう)が、感覚的な涼しさで後押ししてくれているかのようです。

 猛暑の中での、柞の葉影で心安らぐひとときを過ごしたとき、ふと見上げた先で、葉が生い茂る梢(こずえ)へと目が留まる。柞の梢は、まだ秋の色へと変わってはいなせんねと、感慨深い。この秋の色とは、「こうよう」のことですが、柞なので紅葉ではなく黄葉です。

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 余談ですが、万葉の時代は樹々の葉が色を変えることを「もみつ」(動詞)といい、これが名詞のかたちをとると「もみち」なのだといいます。この時代は、まだ「ひらがな」は誕生しておらず、万葉仮名は漢字の音読みを利用して書き綴っています。「もみつ」は「毛美都」、「もみち」は「毛美知」と。しかし、古人の美的感覚はこれを許さなかったのでしょう。「黄変(もみつ)」や「黄葉(もみち)」と書いている歌も多く見かけるのです。いかに、黄葉の柞原が身近にあったことか。我々が慣れ親しんでいる「紅葉(もみじ)」は、万葉集ではほんの一首のみ、市民権を得るには平安時代まで待たねばなりません。

 藤原季経の歌意がなんとなく分かったところで、ふと思う。この歌は、立秋の前に詠まれたのか、後なのか。涼を求めて、柞原に立ち寄る。葉隠れに一息ついた後に、目に留まった梢の葉の色を見て…「まだ夏なのだから、もちろん秋の色ではないよね」なのでしょうか、はたまた「立秋過ぎているのにこの暑さ、秋とは名ばかりで、もちろん秋の色ではないよね」なのでしょうか。「立秋」という節気があるからこそ、ついつい気になってしまうもの。さて、皆様はどう思われますか?

 

9月お勧め料理「エイヒレグルノーブル風」のご紹介です。≫

 エイヒレとはその名の通り「エイの鰭(ひれ)」です。北日本で「かすべ」として親しまれている食材ながら、まだまだ周知されるにいたっておりません。しかし、フランスではエイヒレは馴染みの食材であり、ビストロでは欠かすことができません。。伝統料理として確固たる地位を確立している、「グルノーブル」というスタイルとは、いったいどのような料理なのでしょうか?

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≪エイヒレグルノーブルの出会いについて考えてみました…≫

 フランスのビストロ料理として欠かせない「エイヒレのムニエル」。我々日本人には馴染みのない食材である「エイ」、それがグルノーブルという調理スタイルで仕上げた逸品は、美味しいからなのでしょう、今なお多くの人々に愛され続けられている料理です。そもそも、グルノーブルとは何を意味しているのでしょう。そして、どうしてエイなのでしょう。皆様、気になりませんか?

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≪特選食材「六条大麦」を使ったお勧め料理のご紹介です!≫

 六条大麦の国内シェア約3割を有し、堂々たる全国1位の生産量を誇るのが福井県。6月初旬に麦秋を迎えた「六条大麦」がBenoitに届いています!さあ、この栄養価満点に旬の食材を、Benoitではどのような料理に姿を変えるのでしょうか?

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≪初秋特別プランのご案内です。≫

 気がつけば、蝉の諸声(もろごえ)が止んでいる…

 コロナウイルス災禍が猛威を振るう中でも、季節は巡り去ってゆく。蝉は我々に秋の到来を教えてくれた気がします。そして、季節と同じように、旬と呼ばれる季節の食材も巡り去ってゆきます。彼らに「待つ」という優しはありません。そこで、この機を逃してはならないとの思いから、「初秋」と銘打った特別プランと、個室貸切プランをご案内させていただきます。

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北平のBenoit不在の日

私事で恐縮なのですが、自分がBenoitを不在にしなくてはならない9月の日程を書き記させていただきます。滞りがちだったご案内を充実させるべく、執筆にも勤しませていただきます。ご不便をおかけいたしますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。緊急事態宣言如何によって変更の可能がございます。ご不便をおかけいたしますが、ご容赦のほどなにとぞよろしくお願いいたします。

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 最後まで読んでいいただき、誠にありがとうございます。

 今年の辛丑が始まりました。その「辛」の字の如く優しい年ではないかもしれません。しかし、時は我々に新地(さらち)を用意してくれている気がいたします。思い思いの種を植えることで、そう遠くない日に、希望の芽が姿をみせることになるでしょう。

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 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com