kitahira blog

徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

2022年11月ADT 「二人のシェフが織りなす、一夜限りのトリュフの饗宴」のご案内です。

 最初に。Benoit北平からのご案内ですが、内容は11月22日に自分が赴くアルティザン・ド・ラ・トリュフへのお誘いです。会場はBenoitではございません。

 

 都内にある雑木林ではクヌギミズナラなどが、街路樹でよく見かける「イチョウ」が、美しい黄葉を見せ始めています。そして、これらの黄葉の樹々を追いかけるかのように、カエデやツタ、サクラにニシキギ(下の画像)と紅葉の樹々が、ほのかに色付いてきた感じがいたします。

 「黄葉(こうよう)」と「紅葉(こうよう)」とは、色付きが違うだけなのかと思っていました。ところが、学術的には全くの別物の葉色の変化だったのです。樹々の葉には、クロロフィルという緑色とカロチノイドという黄色の色素が介在しています。ともに陽射しにあたることで力強さを発揮するため、「夏山蒼翠(そうすい)として滴るが如く (郭煕・臥遊録より)」と言われように、夏は深緑の美しい姿です。秋深くなり、陽射しが弱まることで、この両者が葉の中で分解されてゆくといいます。

 ところが、クロロフィルが先に消えてしまうために、今までクロロフィルの濃緑に潜んでいたカロチノイドが姿を現すのです。これが「黄葉」です。この最中に、アントシアニンを生み出す樹々があります。赤ワインで聞き覚えのある単語でしょう、赤い色素の成分です。弱弱しくなるクロロフィルとカロチノイドとは対照的に、活発なアントシアニン。これが「紅葉」です。老後の余生を楽しもうかとする「黄葉」と、なにをなにをと一念発起している「紅葉」とでもいうのでしょうか。

 

 さて、毎月のようにfacebookinstagramで、自分のBenoit不在日を公開しています。今月の不在日の中で、11月「22日(火) ※六本木のアルティザン・ド・ラ・トリュフへ出向」と、ご案内いたしました。どうやら、「いよいよ北平がBenoitを去る時がきたのでは?」と思われた方が多かったようなのです。多々、問い合わせをいただきましたが、今のところ自分の意思でBenoitを去ることはありません。では、22日は、どうしてアルティザン・ド・ラ・トリュフへ赴くのか?

 スタッフのトレーニングなどとは、自分なんぞではおこがましいことで、まして他店舗での研修でもありません。かつて、ホテル・ソフィテル東京時代から多くを教わり、さらに神楽坂で独立するという時にサービススタッフとして声をかけていただき、怒涛のオープニングを経験させていただいた、恩師ともいえるシェフ、クリストフ・ポコ氏がアルティザン・ド・ラ・トリュフでイベントをするというのです。そこで、一念発起している「紅葉」に触発されたか、特に何ができるというわけではないのですが、自分が馳せ参じることにしたのです。

 Benoitの親会社である「株式会社スティルフーズ」には、六本木にアルティザン・ド・ラ・トリュフという、その名の通りトリュフを専門に扱うレストランがあります。ここで、リヨン出身でリヨン料理を神楽坂で切り盛りしているポコシェフが、一夜限りのコラボディナーを開催します!

 

一夜限りの饗宴 ≪Collaboration TRUFFE Dinner

開催地: アルティザン・ド・ラ・トリュフ

日時: 20221122()18:30より受付開始 19:00開演

【コース料理のみ】

お一人様 19,800円 → 17,800 (税込)

【コース料理+ワインペアリング※】

お一人様 27,500円 → 24,750 (税込)

※今回、ポコシェフがお越しいただけるイベントということと、自分がアルティザン・ド・ラ・トリュフへ出向するということで、Benoitの総支配人兼シェフソムリエである永田が一肌脱いでくれました。料理に合わせて、彼がワインペアリングを監修しています。Benoitからもっていくものも含め、料理に合わせて6種のグラスワインを用意いたしました!

 

店舗情報

〒107-0052 東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガーデンテラス1F

03-5413-3830

artisandelatruffeparis.jp

※質問などございましたら、何気兼ねなくお問い合わせ、もしくは返信をお願いいたします。ご予約はこのメールへの返信、もしくはアルティザン・ド・ラ・トリュフ(03-5413-3830)にご連絡いただけると幸いです。お電話でのご予約の際は、「北平のメールを見ました」とお伝えください。

 

 さて、今回の料理を簡単にご紹介させていただきます。ルグドゥノム・ブション・リヨネ(以下Lugdunom)のポコシェフと、アルティザン・ド・ラ・トリュフ(以下ADT)の白川シェフが交互に料理を担当し、それぞれ五感にうったえるかのような渾身の一皿をこしらえます。

 やはり!これですよこれ、ADT白川シェフが手掛ける「ブイヤード」から始めます。なにやら聞き慣れない名前ですが、アルティザン・ド・ラ・トリュフのパリ本店のスペシャリテです。トリュフと抜群の愛称をみせるのが卵!丁寧にとろりと仕上げたスクランブルエッグにトリュフを少々…卵の甘い香りに芳(かぐわ)しいトリュフ…これを卵の殻に詰め、秋の味覚の代表ともいえ栗を添えお持ちいたします。

 2つめは、Lugdunomポコシェフのテリーヌ。彼は、修業時代にシャルキュトリー(豚肉加工屋さん、ソーセージやテリーヌなどの専門店)での苦労話を、笑いながら話してくれたことを思い出します。ソフィテル東京時代に、彼のテリーヌの美味しさに、自分が感動したのを覚えています。そして、Lugdunumをオープンしてからは、さらなる高みを目指すため営業後に夜半まで仕込みを繰り返していたのを思い出します。

 今回は「豚足とフォアグラのテリーヌ」です。リヨンには豚足に詰め物をする伝統料理があります。それをもとに、テリーヌの形に仕上げるというのです。豚足にフォアグラ、さらに豚肉のファルス(香味野菜と共にミンチにしたようもの)が、層になるように組み立ててゆく。添えるのが、Lugdunmで欠かせないレンズマメのサラダ、ここにトリュフ!

 3つめは、「ホタテとトリュフのタルティーヌ」を、ADT白川シェフがこしらえます。タルティーヌとはスライスしたバケットの盛り付ける料理のこと。ホタテには、食感の違うケシの実と胡麻をまとわせ、ハモン・デ・テルエルという美味なる生ハムとともに。もちろんトリュフを忘れてはいけません。

 トリュフのタルティーヌは、映画「大統領の料理人」にも登場する料理です。パンにトリュフを刻みいれたバターを塗り、トリュフを削り加えた、なんとも贅沢なひとしな。これをほおばりながら、ミッテラン大統領は、料理人のオルタンスに心中の苦労を吐露してゆく…世界が全く違う二人の心が通いあう…

 「料理が人と人とを出会わせ、心を紡ぐのです。」と、ADT白川シェフが教えてくれました。今回は、世界は同じでも、それぞれのこだわりを持ちながら、真摯に料理に向かい合っている2人のシェフ。だからこそ、相手へのオマージュを込めてこの料理を、今回のコラボディナーに組み込んだという。だからこそ、美食の街「リヨン」の南に位置するローヌ地方の銘酒、「コンドリュー」でソースを仕上げます。

 4つめは、説明の必要もない「トリュフのリゾット」なり。もちろん、ADT白川シェフが担います。

 5つめは、Lugdunmポコシェフ。「北海道のサケ」が登場です。リヨンは内陸の街で、もちろん海はありません。しかし、ローヌ川中流域にある街だけに、上流域から美味なる川魚が届くのです。サケではなくマスなのです。ある意味、同じような仲間なので、馴染み深い食材なのです。しっとり、しっとりと熱がはいるように低温調理、なんと50℃以下で20分!

 このサケを、トリュフを加えたふわとろのマッシュポテトの上へ。マッシュルームのサラダにイクラをパラパラ、忘れてはいけないトリュフを削ります。いやはや、なんとも贅沢な親子丼…いやいや親子プレートではないですか。

 6つめは、ADT白川シェフのスペシャリテ、「栃木県の下野牛(しもつけぎゅう)フィレ肉の藁(わら)焼き」です。藁を使うことで、めらめらと立ち昇る豪快な炎で表面を焼き上げることができるのです。さらに、肉には燻製のような香りを少しばかりもたせることができる。しかし、炭火でじんわりではなく、まさに炎でぼうぼうと焼くために熟練を要します。

 下野牛のステーキには、同県のジャンボしいたけ「さくら天恵菇(てんけいこ)」のベニエ(洋風天ぷらのよう…)を添えます。まさに同郷だからこその相性をみせるという。さらに、トリュフ香るギンナンが、まるで翡翠(ひすい)のようにお皿の上で輝いている。トリュフを削りかけることを忘れてはいけない…

 デザートは、Lugdunumのポコシェフが担います。説明を聞いたのですが、あまりにもパーツが多く、いったいどのような美味しさになるのか…自分には想像がつかない。ドーム状に焼き上げたメレンゲ、ヘーゼルナッツオイルで香りづけしつつ焼き上げたリンゴ「紅玉」、自家製のカリンのマルムラード、エスプレッソとコーヒーリキュール「カルーア」が浸ったババ生地、蕎麦の実のクリーム、さらに豆乳チョコレートクリーム…

 あ!トリュフがない。組み立てる中に、がしゅがしゅっとした食感のガナッシュが加わる。ガナッシュだけにがしゅ…?アーモンドにヘーゼルナッツ、さらにペカンナッツで作るのですが、ここにトリュフが加わりる!チョコレートとトリュフという組み合わせに甘んじない、ポコシェフらしい組み合わせの妙で、我々を魅了するのでしょう。そういえば、ソフィテル時代も美術館とのコラボで、想像もつかない美味しく面白いデザートをこしらえていた…

 

 皆様、Benoitのイベントではありません!自分がこの日だけ赴くアルティザン・ド・ラ・トリュへのお誘いです。一夜限りの美味なる料理の数々は、あらためて世界三大珍味であるトリュフに魅せられることでしょう。黒を基調にした店内とスタッフ制服の中に、突如姿を現す赤いエプロンに赤いマスク…まるでシャア専用ザクのように…Benoitでは物知り顔に大いに語っている自分が、全く知らない地で右往左往してる姿を見ることのできる貴重な機会です!彼の地でお会いしましょう!

 末筆ながら、紅葉に見とれてしまったがために、一念発起することが遅れてしまい、ご案内が直前になってしまいましたこと、深く深く反省しております。

 

 最後まで読んでいいただき、誠にありがとうございます。

終息の見えないウイルス災禍です。皆様、油断は禁物です。十分な休息と睡眠、「三密」を極力避けるようにお過ごしください。「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、笑いながらお会いできることを楽しみにしております。

 皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より切にお祈り申し上げます。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com