kitahira blog

徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

2023年3月 Benoitミュージックディナー「フレンチでタンゴ」のご案内 ~後編~

Benoitミュージックディナー アルゼンチンタンゴ

日時:202337()8() 18:00より受付開始 18:30開演

料金:ダンススペース周辺のお席をS席、少し離れたA席をご用意させていただきます。

S席24,000

A席19,000

ともに、表示価格はパフォーマンス・ワイン・お食事代・サービス料/税込です。

 

ダンサー:クリスティアン&ナオ

ピアノ:サッコ香織

バンドネオン川波幸恵

ヴァイオリン:専光秀紀

※昨今の不安定な環境下のため、開催日や出演者が変更になる可能性がございます。

 

 当夜は18:30より、食前酒を楽しみながら第1部(約30分)ほどお楽しみいただきます。そして、その余韻に浸りながらBenoitのお食事がスタート。デザートまで提供終了後に、第2部(約40分)を始めます。パフォーマンスとお食事をきっちり分けることで、どちらも十分にお楽しみいただけます。

質問などございましたら、何気兼ねなくお問い合わせ、もしくは返信をお願いいたします。席数に限りがございます。ご予約は北平へのメール(kitahira@benoit.co.jp)への返信、もしくはBenoit(03-6419-4181)にご連絡いただけると幸いです。

 

 今回は、本場の素晴らしさを体感していただきたく、アルゼンチンタンゴの真髄ともいえる「音」を担うタンゴバンドをご紹介させていただきます。

 タンゴ独特の楽器と言えば、間違いないく「バンドネオン」でしょう。2つの本体と、それらを蛇腹折りのようなもので繋いでいる、一見ではアコーディオンのようですが、似て非なるもの。アコーディオンのように左右に広げ押し戻すように空気を吹き込むことで音を奏でるのです。しかし!この押し広げる戻す時で、同じ鍵盤を押していても音が違うのです。なんという楽器をこしらえたのか!これが「悪魔の楽器」と評されている理由なのです。

 これほどの難解な楽器を、ものの見事なまでに使いこなすのが、川波幸恵さんです。2015年アメリカで行われたバンドネオン奏者世界一の栄誉に輝いた実力の持ち主であり、テレビ出演や地方公演などのひっぱりだこの人気者。難解なバンドネオンが、いまなお健在であるということは、この楽器でしか再現できない音色があるからに他なりません。電子音のような軽い音ではない、彼女が奏でる世界が認めた音色は必聴です。

 そして、華やかなふくらみを与えるヴァイオリンは、専光秀紀さん。馴染みの楽器でありながら、タンゴ独特の奏法により音色は、ところどころで深い味わいを残します。弦を指で弾く?弓で弦をこする?文字としてどう表現したものか悩む自分がいます。

先人たちが、切磋琢磨して築き上げてきたクラシック音楽のヴァイオリン技術。しかし、楽器の使用方法という固定概念を払拭し、その楽器の特性を識ることで、さらなる音色を奏でるようになる。その一派を極めていったのがタンゴミュージックなのでしょう。専光さんのヴァイオリンによって、我々はその片鱗を識ることになるのです。

 いかに腕の立つ奏者がそろっていても、皆が勝手気ままに演奏するのでは、人々に感動を与えることができません。そう、オーケストラでは指揮者が奏でられる音に息吹を吹き込むと言っても過言ではないと思います。室内楽のように少人数での編成の場合には、指揮者を立てず奏者の誰かがその役を担うものです。

 今回で10回目を迎えるBenoit「フレンチでタンゴ」で、この大役を担っていただけるのが、ピアニストのSacco香織さんです。選曲に始まり、ダンサーや他の演奏者との打ち合わせ、ストーリーを組み立ててゆきます。さらに、当日の進行までをもこなす。Benoitで開催している「フレンチでタンゴ」では、ほぼすべてにおいて彼女にお願いしているのです。

 初めてお会いした時は、ちゃきちゃきとした大阪っ子の快活な印象をもったものです。しかし、ピアノの前に腰掛け、譜面を開いてからは、雰囲気が豹変するのです。毎回のように、他の奏者との最終調整をBenoitで開宴直前に行います。音合わせ途中で手を止め、言葉を交わしながら譜面台に何かを記入してゆく…素人の自分は、彼女たちの世界に土足で踏み込んではいけないと思っています。だから、「何を書いているのか」質問することはしません。いや、聞いてはいけないと思っています。

 思うに、Saccoさんは譜面を開いた時に、音符の羅列に作曲家の思いを読み取っているのだ。そして、どのように自分は作曲家に応えてゆけばよいのか、自問自答を繰り返しているのではないか。他の奏者も同じ思いのはず。各々が奏でた旋律を、作曲家の思いを加味しながら紡(つむ)いでゆくのではないか。タンゴの曲は、今まで練習も含め幾度となく奏でてきたはずで、譜面を見なくとも演奏できるはずです。しかし、譜面を広げそこへ何かを記入してゆく姿を目にする…

 奏者が大勢いるオーケストラでは、指揮者の思いをそれぞれのパートが応えることによって壮大な世界を我々に聴かせてくれます。これが、指揮者のいない室内楽となると指揮者の代わりが必要になる。それをSaccoさんが担う…今回は、各パート一人の編成であり、各々が経験豊かなメンバーだけに、同じ譜面であってもそれぞれの曲に対する世界観が違っているはず。

 もしかしたら…メンバーが集うその時に、Saccoさんはそれぞれの想い描く景色を理解し、紡いでいっているのではないか。その際に違和感がない曲想となるよう、譜面にメモを取っているのではないでないか。何度も練習したであろう、見慣れた譜面に。メンバーの個性を生かしながら編曲することで、一期一会ともいえる楽曲が生まれ、その曲が我々を楽しませてくれる。まさに、正真正銘の楽曲と出会えることになるのです。

 Benoitで10回目を迎える「フレンチでタンゴ」のうち、8回を彼女にタンゴバンドを率いていただきました。ただ調和を求めるのであれば、Benoitでここまでタンゴイベントを継続できることはなかったでしょう。各々の個性を理解し、相乗効果を生むかのように編曲しているからこそ、我々に感動を与えてくれたのです。ん?過去2回はどうして彼女ではなかったの?と疑問を覚えたのではないでしょうか。そう、彼女はヨーロッパにいた!

 Saccoさんは、活動拠点をイタリア、そしてスペインへと移しているのです。昨年秋に、イタリアのミラノ近郊で行われたコンサートが上の画像です。ヨーロッパへ赴いた最初の地がイタリアだったこともあり、以前活動していたイタリア人メンバーとの演奏もようです。そして、下の画像は、スペインに住んでいるアルゼンチン人の友人の声かけで集まったメンバーでのタンゴショーです。「バレンシア近郊にすむアルゼンチン人がたくさん集まった中でのでした。スペインには本当にたくさんのアルゼンチン人が住んでいて、タンゴの歌が始まると一緒に口ずさむ方も多く、そこにいた皆さんが一つになった、心温まるコンサートでした。翌日がワールドカップ勝戦ということもあり、みんな燃えていました!」と、(笑)マークとともにメッセージが届きました。。

 送っていただいた画像を見て感じたことは、持ち歩けない楽器だけに、日本はもちろん海外でも、グランドピアノがある会場は少ないということです。Benoitでも、最初の開催は電子ピアノでした。そして、「電子ピアノではだめだ…」と自分が反省することになります。力強くもあり、繊細でもある、彼女の指が鍵盤をたたくことで奏でる音色は、電子音で表現はできない。Benoitに入れることのできる大きさでいい、グランドピアノを用意しなければならないと決意した時でもありました。

 今回もBenoitにグランドピアノを導入します。Saccoさんのピアノの音色で導くかのように、川波さんのバンドネオンと専光さんのヴァイオリンが奏でられ、クリスティアン&ナオペアが舞うことで、我々をタンゴの魅力あふれる世界へと誘(いざ)います。Benoitでの二夜限りのタンゴの物語…皆様、思う存分お楽しみください。

 

メンバープロフィール

クリスティアン&ナオ -タンゴダンサー- 】

堤崎尚子

Cristian Andres Lopez 

 2008年よりペアとして本格的に活動を開始。2009年〜2012年の4年連続で、世界選手権サロン・ステージ両部門ファイナリストという快挙。2013年より再び東京を拠点に活動し、2015年6月に南青山にタンゴサロン ブエノスアイレスをオープンする。最近では元宝塚のトップスター達が出演するミュージカルやコンサートに出演、コレオグラファーとしても活躍している。

<主な受賞歴 2008年 Japan Openタンゴダンス選手権サロン部門ステージ部門

共に準優勝/2009年アルゼンチンタンゴ世界選手権アジア大会サロン部門優勝/

世界選手権ステージ部門3位

2010年世界選手権サロン・ステージ両部門3位/

2012年メトロポリターノMILONGUEROS DEL MUNDO 優勝>

 

【Sacco香織 -ピアノ- 】

 ヌエボタンゴをピアソラのピアニストだったPablo Zieglerに師事。単身でアルゼンチンに渡り、ブエノスアイレス市立オーケストラ団員、指導者としても評価の高いHernan Possettiに師事。現地でファーストアルバム“Tango de Buenos Aires”を録音、リリース。その後数回渡亜し、多数コンサートを行う。イタリア在住中は巨匠ダンサーMiguel ZottoやRoberto Herreraと数々のステージを共演。イタリアを中心にカタール、フランスなどでも演奏を展開する。現在はスペインに移住しヨーロッパ大陸を中心に日本全国でも活動中。

 

川波幸恵 -バンドネオン- 】

 第一回チェ・バンドネオン国際コンクール第1位、福岡市在住のメンバーで結成されたタンゴ三姉妹+では、2021年ピアソラ国際コンクールアンサンブル部門で第1位。海外での演奏地域は、20箇所を超える。渡辺えりと出会い、舞台「りぼん」に出演。以来、ジャンルや文化の壁を越え(西城秀樹沢田研二笑福亭鶴瓶らと共演)幅広く活動、「題名のない音楽会」などメディアにも多数出演。オリジナル楽曲「じゃばら体操」や折り紙を通して、音楽と笑顔の国際文化交流を行っている。

 

【専光秀紀 -ヴァイオリン- 】

 3歳からヴァイオリンを始める。東京音楽大学卒。クラシックを三本克郎、篠崎功子に師事。大学在学中より、小松亮太オルケスタティピカツアーに参加し音楽活動を開始。タンゴの世界に深く傾倒する。2012年アルゼンチンに渡りアリエル.エスパンドリオ、ガブリエル.リーバスに師事。日本では数の少ないコルネットヴァイオリンも演奏する。現在タンゴ楽団メンターオや、小松真知子タンゴクリスタル等、様々な楽団で演奏中。

 

最後まで読んでいいただき、誠にありがとうございます。

一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com