徒然草で兼好法師は、「花は盛りに、月は隈なきをのみ見るものかは」と綴っている。「花は満開のときだけを、月は雲がないときだけを見るものであろうか、いやそうではない。」と喝破しているのです。この背景には、往古より「月は雲なきをのみ見る」ことを良しとし、切望していたということがあります。これに異議を唱えたのが、百人一首をご存じの方も多いのではないでしょうか、平安時代後期に活躍した藤原彰輔(あきすけ)がこう詠っています。
秋風に たなびく雲の 絶え間より もれいづる月の かげのさやけさ 藤原顕輔(あきすけ)
月を待ち望むも雲に覆われてしまい落胆している中で、わずかな雲間より「もれいづる」月かげ(月の光)に感嘆の声を上げ、「さやけさ」を覚えると詠っているのです。月を愛でることを切望していたからこそ、その思いは一入(ひとしお)だったことでしょう。そして、彼が正三位(しょうさんみ)という官位をもった歌人だっただけに、まるでたこの一首が投げかけた問いに、歌壇は騒然となったのではないかと思うのです。多くの共感を得るばかりではなく、反論され、異端と陰口をたたかれたことでしょうか。ただ、この歌によって、兼好法師のいう「月は隈なきをのみ見るものかは」という感性が胚胎したと考えても良いのでは…
月に対してのこれほどまでの歌を遺した藤原顕輔を父に持つ清輔(きよすけ)が、薫陶を受けないはずはない。夜の帳(とばり)が下りてくるころ、東の山々へと視線を向けると、その稜線から姿を見せる月がある。上弦の月であれば、明るい中でしれっと昇ってゆく。下弦であれば夜遅くないと姿を見せません。この歌で詠われた月の姿は、きっと満月に近かったはずです。その月を目の当たりにして、彼はこう詠う…
夜とともに 山の端(は)いづる 月かげの こよひ見初(みそ)むる 心ちこそすれ 藤原清輔
煌々(こうこう)と光をはなちながら天高く昇ってゆく姿を目にし、あまりにも清らかな「月かげ(月の光)」であったからか、今宵に初めて出会ったかのような心地を覚えてくるようだ…と藤原清輔はいう。まさに「さやけさ」を感じるひとときではないかと思うのです。清らかで美しいと辞書に記載があるも、この「さやけさ」という言葉には、月の光のように、なにやら畏敬の念が込められた不思議な響きをはなっている気がするものです。
我々にとって、月は子供の頃から知っている、馴染みの存在です。そして、毎月のように、いかなる形であれ目にすることができます。それにもかかわらず、あまりにも月かげ(月の光)が神々(こうごう)しいからなのでしょう、「見初(みそ)むる心地」がするという清輔の感慨に、大いに共感を覚えるものです。神々しく光を放つ月を見ると、なにやら畏敬の念を覚え、ついつい足を止めて見入ってしまう…妖怪「狼男」が誕生するのも分かるような気がするほどに魅せられるものです。
≪テーブルマナーを知っていても、見初(みそ)むる心地のする講習会です!≫
其処彼処(そこかしこ)で開催しているテーブルマナー講習会であれば、自分は皆様へご案内することはありません。
講師である吉門先生とBenoitで開催しているこの講習会は、ついに88回となりました。リピートされている方ばかりであり、あまりにもためになり面白いため、その方がご友人を誘う。それほどに内容が深いものなのです。しかし、Benoit主催ではないため、皆様が知る由(よし)もなく10年もの歳月が過ぎ去ることになるのです…
この講習会を、ぜひにも皆様に紹介させていただきたく、Benoit枠を設けていただくことをお願いしたのが昨年のこと。吉門先生に快諾いただいたことで、今年より自分から皆様へご案内することが叶ったのです。90回近くも開催しているイベントなのに知らなかった…とは、このようないきさつがあったからなのです。
いったいどのような講習会なのか?
当日は、皆様にはBenoitのランチ営業前の11時10分から20分ほどにはお運びいただきます。挨拶をかわしながら席に着き、11時30分から12時10分まで吉門先生の話に耳を傾けていただきます。長いように思うのですが、参加された方の話では、笑いあり涙あり?で思いのほかあっというまの40分間のようです。
ここで、いつもの料理説明を自分が行い、いざ実践の場へと移ります。テーブルマナー講習会は、ある意味「間違える場」でもあるので、気後れしてはいけません。遠慮なく間違い、気さくに指摘してくださる先生から大いに学びましょう!そして、先生が食事中だろうがなかろうが、気になる点や疑問点を気兼ねなく問うべし。少人数だからこそ、都度、質問に的確に答えてくれます。
料理は、残念ながらいつものように選ぶことができません。自分がシェフと相談して決めさせていただくのですが…其処此処(そこここ)に、美しく食事をすることを邪魔するポイントが隠されています。皆様を思ってのことで、決して自分の性格が悪いからではありません…もちろん、陰でほくそ笑んでいることもありません。前菜→スープ→主菜→デザートと流れる料理/デザートに、スパークリングワインと白か赤ワインの2杯をお持ちいたします。もちろん、ノンアルコールドリンクもご用意しております。
15時に終わる予定なのですが、1回とてこの時間で終わったためしはありません。、毎度のように、Benoitランチ終了の15時30分まで、話の盛り上がりが途切れることがないのです。これほどの長時間にもかかわらず、講習を終えられた皆様の表情に疲れは見えず、何かを感じ取ったかのような高揚感が、発せられる言葉の端端に表われている。
どのような話の内容なのか?
ナイフやフォークは外側から使いましょう…というような話がなくもないですが、吉門先生が伝えたい本質はそこではありません。すべての所作には「理由」があり、その理由を識(し)ることで身体が覚えてゆき、知らず知らずに美しさを身にまとうことになる。そして、それがその人の「品位品格」となってオーラを発するようになる。
食事の席というのは、知っている人ばかりとは限らず、知らない人のときもある。そこは、栄養を摂る場所ではなく、語らいの場です。美しい所作が相手に共感を覚えさせる、そして内面からはなたれる品位品格が感動を覚えさせる。これが相手との距離を詰めることとになり、会話が弾む。そこに美味しい料理が加わることで「口福な食時」となる。知性あふれる言の葉が発せられる口が福を呼ぶのか、はたまた舌鼓(したつづみ)を打つほどの美味しい料理によって口中に福を感じるのか。この2つが相まったときの「ひととき」に、我々は幸せを感じるのではないでしょうか。
自分が、学生さんのテーブルマナーの講師を依頼されたときに、吉門先生に相談いたしました。すると、先生からの第一声は…何にも増して「感謝」の気持ちを伝えることを教えてほしと。さあ、いったい何に対して?いつどのように?感謝を伝えればよいのか。1回でも吉門先生の講習を受けると、この答えが鮮明となるばかりか、テーブルマナーの真髄に触れたかのような、まるで「見初むる」心地を覚える…そして、「さやけさ」感じるオーラを放つ人間になる…はずです。
~ 世界基準の一流を学ぶ 「テーブルマナー講座」 ~
開催日
2024年
9月15日(日) / 23日(月・祝日)
10月5日(土) ※
11月22日(金)
すべてが単独での開催で、すべてに申し込む必要はありません。
時間: 11:30より講義を始めます。
※11:10までにお運びください。終了予定は15時15分を予定しております。
料金: 20,000円(サービス料/税込) 食事とワイン2杯を含みます。
※ 10月5日(土)の開催のみ料金18,000円です。
※事前振込制です。ご希望の日程がございましたら、北平宛(kitahira@benoit.co.jp)にご連絡ください。質問なども喜んで承ります。この講習会に関しては、電話でのご予約は受け付けておりません。
講師である吉門憲宏さんは、元日本航空国際線のキャビンスーパーバイザー(チーフパーサー)として世界の空を飛び続けた、飛行距離は地球450周を超えるほど。120万人もの旅客様と笑顔を交わしてきているのです。在職中は、定年退職になるまで飛行機に乗り続けたつわもの。日本文化の礼節を伝える民間外交でもある接客のプロとしての人生を歩んできた、だからこそ、多くの知見があるのです。
先生との自分との出会いは、偶然だったのか必然だったのか…現職を退いてからは、アメリカでのMBA取得のための派遣される某大手企業のスタッフが、欧米の社交界に馴染めるようにとトレーニングをする講師を担っていました。その打合せの席なのか、無事に送り出したお礼のためだったのか、大手企業の人事の方々が選んだのがBenoitでの一席だったのです。そのようなこととは露知らず、自分がいつものように語るは語る…後日に知ることになるのですが…いやお恥ずかしい限りです。
幸いにも、この出会いが、今も続いているBenoitで開催される「テーブルマナー講習会」を導いたのです。日本人が、ついついやってしまうことを、笑いを込めながら教えてくれ、毎度のように「やっちまった~」と笑いが、部屋の仕切りとなるカーテンの隙間から漏れ聞こえてくる。このようなテーブルマナー講習会があったであろうか。だからこそ、皆様にご案内させていただくのです。
バランスの良い美味しい料理を日頃からとることは、病気の治癒や予防につながる。この考えは、「医食同源」という言葉で言い表されます。この言葉は、古代中国の賢人が唱えた「食薬同源」をもとにして日本で造られたものだといいます。では、なにがバランスのとれた料理なのでしょうか?栄養面だけ見れば、サプリメントだけで完璧な健康を手に入れることができそうな気もしますが、これでは不十分であることを、すでに皆様はご存じかと思います。
季節の変わり目は、体調を崩しやすいという先人の教えの通り、四季それぞれの気候に順応するために、体の中では細胞ひとつひとつが「健康」という平衡を保とうとする。では、その細胞を手助けするためには、どうしたらよいのか?それは、季節に応じて必要となる栄養を摂ること。その必要な栄養とは…「旬の食材」がそれを持ち合わせている。
その旬の食材を美味しくいただくことが、心身を健康な姿へと導くことになるはずです。さあ、足の赴くままにBenoitへお運びください。旬の食材を使った、自慢の料理やデザートでお迎えいたします。
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最後まで読んでいいただき、誠にありがとうございます。
「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。皆様のご健康とご多幸を祈念いたします。
ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬