kitahira blog

徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

2025年11月から2026年1月まで 知る人ぞ知る熊本県「やまえ栗」が同県天草のみかんと出会い、Benoitのデザートに姿を見せる!

Benoitの秋冬は、「洋栗に始まり、和栗で終える」

 今の時期ともなると、Benoitのディナーは「栗で始まり、栗で終える。」というプリ・フィックスメニューの流れが多くなります。ときに栗の前菜がスープなために、コース2番目に配することもありますが、気持ちの中ではやはり「栗で始まる」ようなもの。前菜の栗はフランス栗。であればこそ、最後は和栗で終えたいものです。

 そこで、今季も「やまえ栗」を熊本県から送っていただき、デザートに仕上げます。この栗の名前を耳にして、「お!」と思った方は、栗を愛してやまない方か、栗を取り扱う専門家でしょう。もちろん、自分も知りませんでした。そこで、少しばかりこの栗が育まれた地と歴史をご紹介させていただきます。

 「やまえ栗」の「やまえ」とは、熊本県の南部に位置している、球磨郡(くまぐん)山江村の村名です。球磨川を上流へと向かった先にある人吉市。そこから、北に聳(そび)える標高1,302mの仰烏帽子山(のけえぼしやま)へと向かうように山路(やまみち)へと入った先に、この村があります。121㎢という広大な地でありながら、その90%を山林が占めているという。

 山江村は、三方を山で囲まれるかのような地。その山々に源を発する清流「万江川」と「山田川」が、南へと流れる中で彼の地を潤し、そして球磨川(くまがわ)へ落ち合う。そこで、この豊富な水資源と、開けた地の緩やかな傾斜は、かつては山田が拓かれ村が誕生したのでしょう。しかし、如何せん平野部が限られていることもあり、多くの人々を養うことができなかった。

 そこで、この盆地だからこその夏冬・昼夜の寒暖差、さらに山の斜面を利用した果樹の栽培を先人は考えた。しかし、賢人は柑橘ではなく栗を選んだのです…鎌倉時代から明治維新までの約700年間、すでに年貢として栗を納めていたという記録があるほどに、彼の地では特産となっていたといいます。

 時を経てついに!1977年9月、山江村の福山栗園の栗が昭和天皇へ「やまえ栗」として献上されることになるのです。今に至るまで連綿と受け継がれてきた栗栽培が、そして労を惜しまず丹精込めて育ててきた「やまえ栗」が、ついに認められた時がきたのです。どれほど山江村の人々の励みとなり希望となったことか。その年の大阪市場では、「献上栗に輝くやまえ栗」という横断幕が掲げられ、競りの最後に姿をみせた「やまえ栗」を見た村民は、「栗が輝いているようだった」と述懐しています。

 しかし、世相は「やまえ栗」に試練の時を与えたのです。1992年、山江農協が球磨(くま)地域農協合併されたことで、「やまえ栗」は他地域とブレンドされ「球磨栗(くまぐり)」として出荷されるようになるのです。歴史から、「やまえ栗」が消えたのです。

 球磨栗だって十分に美味しい栗です。しかし、山江村の人々は自分達の育んだ栗の美味しさに確固たる自信があったのです。今まで培われてきた栗栽培の歴史に加え、献上栗に選ばれたことが、山江村の誇りを見失うことに歯止めをかけたようです。粛々と時が経つ中で、「栗は命」であると言い切る彼らは、村の中という狭い範囲ですが「やまえ栗」を残し続け、復活の機会を待ち望んでいたのです。

 2008年、ついに世相が山江村の人々に微笑みかけた。時は大量生産から高品質を求めるように。そう、栗も例外ではありませんでした。和栗から球磨栗へ、さらに細分化された栗のブランド化が加速してゆくのです。そして、待ちに待っていたこの機運を、山江村の人々が見逃すわけがありません。ここに、「やまえ栗」の名前が復活を遂げたのです。

 2015年8月の台風15号の直撃し、栗畑は壊滅的な被害を受けました。献上栗に選ばれたころの生産量約400tもあったものが、約40tにまで落ち込んだのです。栽培者にとっては存亡の危機にいたる…心折れるほどのことだったはずです。さらに、翌2016年に熊本地震、2020年の豪雨災害と、度重なる自然の猛威の前に、なすすべなく打ちのめされます。

 しかし、彼らは諦めなかった!「やまえ栗」の品質向上を継続しつつ、「収量200t」との目標を掲げ、「やまえ栗」復興に向けて奮励努力することを厭(いと)わなかった。その結果、今では100tを超える実りを得ることができるに至ります。

 「やまえ栗」は、山江村で丁寧に渋皮を剥き、炊き上げ、ペースト状に加工されてBenoitに届きます。これだけでも十分に美味しいため、巷に溢れる栗尽くしデザートを期待してしまう。確かに、美味しい栗なのでたっぷり使ったデザートは、インパクトがあり美味しいだろう…しかし、人間の味覚というものは単調であると飽きてしまうもの。そこで、アジア圏のエグゼクティブシェフパテシエのアリテアが選んだのが、日本原産の美味なる柑橘、「ミカン」です。

 熊本県の天草といえば、海産物はもちろんですが、島を形成する山の麓を利用した果樹栽培が盛んな地。今回は、彼の地で、荒木さん親子が柑橘を丹精込めて育てあげたミカンをBenoitへ送っていただいています。彼らは、天草の地の利に甘んじることなく、さらなる美味しさを求めて続けています。今は、甘みを出すためにマルチシートという白いビニールシートを園圃全面に敷き詰めています。雨などの水分をギリギリまで与えないことで、みかんが生命を守るために甘みを蓄える、この仕組みを利用した栽培方法。確かに理屈は分かるのですが、昨今の異常競う中では、樹が枯死する可能性もある。それでも、毎日のように樹々の様子を観察しながら実践しているのです。

 今、Benoitに届いているミカンは、熊本県オリジナル品種の極早生「豊福(とよふく)」です。これもまもなく終わりを迎えるので、次は早生品種で、「肥のひかり」という、これまた熊本県のオリジナル品種。どちらも、荒木さん親子によって甘みを増した果実に育まれるのですが、ただ甘いだけではありません。キレイな心地よいミカンらしい酸味が、食べ飽きるという言葉を忘れさせてくれたいます。

 毎年のように、Benoitの栗デザートは「モンブラン」です。しかし、毎年のように姿が変わりこのデザートは、今季は栗のタルトのように仕上げます。土台となるタルト生地に栗粉と栗クリームを加え、サクッと焼き上げる。その生地の上に、栗粉と栗クリームを加えたフラン生地かぶせるようにし、バターで香り付けしたフランス栗そのものとミカンをのせて、オーブンで軽く焼いていく…

 そのタルトの粗熱をとれた後に、モンブランが冠雪するかのように生クリームをのせ、和栗ペーストを細く細く搾りのせ、ミカンを飾り、仕上げにミカンの果皮から作ったパウダーをはらはらっと振りかけて完成!この果皮のパウダーに、緑色を見たら「豊福」で、見なかったら「肥のひかり」。別に添えるミカンソルベを時折はさみながら、お召あがりいただきたいです。

 和栗と洋栗を使って、食感を変え風味を変えながら、層をなすように組み立てらえたタルトです。栗だけでは、まったりと重いデザートになってしまうところを、軽やかに仕上げてる。そして、ミカンの心地よい甘みと酸味によって、食べ進めても飽きがこない…秋ですが…。思う存分、秋の味覚の代表である栗デザートをご堪能いただきたいです。Benoit東京史上、もっとも標高の低いモンブラン!であることは、どうかご容赦ください…

Mont-blanc à notre façon, sorbet mikan

熊本県”やまえ栗“のモンブランBenoit風 ミカンのソルベ

※ランチ/ディナーのプリ・フィックスメニューで、+1,500円でデザートとしてお選びいただけます。

 

 

 バランスの良い美味しい料理を日頃からとることは、病気の治癒や予防につながる。この考えは、「医食同源」という言葉で言い表されます。この言葉は、古代中国の賢人が唱えた「食薬同源」をもとにして日本で造られたものだといいます。では、なにがバランスのとれた料理なのでしょうか?栄養面だけ見れば、サプリメントだけで完璧な健康を手に入れることができそうな気もしますが、これでは不十分であることを、すでに皆様はご存じかと思います。

 季節の変わり目は、体調を崩しやすいという先人の教えの通り、四季それぞれの気候に順応するために、体の中では細胞ひとつひとつが「健康」という平衡を保とうとする。では、その細胞を手助けするためには、どうしたらよいのか?それは、季節に応じて必要となる栄養を摂ること。その必要な栄養とは…「旬の食材」がそれを持ち合わせている。

 その旬の食材を美味しくいただくことが、心身を健康な姿へと導くことになるはずです。さあ、足の赴くままにBenoitへお運びください。旬の食材を使った、自慢の料理やデザートでお迎えいたします。

 

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 猛暑な日々も影を潜めてきたようです。これと入れ替わるかのように季節性インフルエンザやコロナウイルスが猛威を振るっているようです。過ごしやすい日々が訪れますが、ここで気を緩めると猛暑疲れがドッと押し寄せてくるでしょう。さらに、疲労・ストレスなどが原因による免疫力の低下を招きます。皆様、無理は禁物、十分な休息と休養をお心がけください。

最後まで読んでいいただき、誠にありがとうございます。

一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。皆様のご健康とご多幸を祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com

2025年11月 旬食材で仕上げるBenoitのスープ、昼はカボチャで夜は栗!

冬至にはカボチャ、でもその前にBenoitでカボチャ!

 今秋、Benoitのランチで「ご用意しているスープは、栗カボチャです。ねっとりと優しい甘みのあるこのカボチャをたっぷりと使い、なめらかなトロッとするスープに仕上げます。カボチャの美味しさを引き立てるかのように、バターと玉ねぎがいい仕事をしている。フランス料理の世界では、さらっとした液状のスープを「Soup」、とろりとした濃密なものを「Velouté(ヴルーテ)」と表現するようです。もちろん、BenoitのかぼちゃのスープはVeloutéと表現するにあい相応(ふさわ)しいもの。

 カボチャは、とてもとても栄養価の高い野菜。もちうる免疫力を最大限発揮することを促す、カロテンやビタミン類を豊富に含んでいます。さらに、ホルモン調整機能をもったビタミンEが、肩こりなどの更年期障害の症状を改善するといいます。

 夏には恨めしく思っていた陽射しは、これから冬に向かうことで日増しに短く弱くなってきます。ついつい憂鬱な気分に陥ってしまう時期だからこそ、免疫力が下がり体調を崩しやすくなるもの。「冬至にカボチャを食べると病気にならない」とは古人の教えであり、今でも十分に説得力を持っています。しかし、Benoitでは冬至まで待つことはありません。「秋からカボチャを食べることで、きっと病気にならない」と信じております。美味しく食することで、効率よくカボチャの豊富な栄養を摂ることができ、さらに人を笑顔にする。上向きの気持ちの時11月旬食材で仕上げるBenoitのスープ、昼はカボチャで夜は栗!には、病気にはかからないものです。

Velouté de potiron et fromage frais “

かぼちゃ"のスープ リコッタチーズ

※ランチのプリ・フィックスメニュー、前菜としてお選びいただけます。

 

 

秋は時雨(しぐれ)から始まるでも、Benoitの秋は栗で始まる

 秋を代表する食材の中で、料理とデザートで主役を担うことのできるものとして、和洋を問わず筆頭に挙がるのが「栗」でしょう。栗なる木の実を大きく分類すると3つに分けることができ、それぞれに美味しさが異なります。天津甘栗などで有名な「中国栗」、マロングラッセなどには欠かせない「ヨーロッパ栗」、そして、日本の「和栗」です。Benoitには、ヨーロッパ栗と和栗が届いています。

 ヨーロッパ栗は、もちろんフランスから。フランス栗は特有のコクと甘さがあり、フランス伝統菓子のマロングラッセがやはり美味。栗おこわにすると、和だしや醤油の旨味ばかりかもち米の繊細な風味をも奪い去ってしまうことでしょう。そこで、Benoitでは、洋栗をこれでもかと使ったなめらかなスープに仕上げます。

 フランス栗だけでこしらえるスープは、甘さと木の実のコクが強く出ます。だからといって薄くするという発想はありません。Benoitでは栗の渋皮を加えることで、赤ワインの渋みのような味わいを加えるのです。今の時期になると、必ずと言っていいほど「栗のスープはいつからですか?」と皆様から問い合わせが入る逸品です。Benoitの秋は栗で始まる…

Velouté de châtaignes, garniture mijotée

フランス産栗のスープ

※ディナーのプリ・フィックスメニュー、前菜としてお選びいただけます。

 

 そういえば、栗には古今東西を問わず渋皮があります。美味しく食べるには、この渋皮を取り除かねばなりません。フランスで栗の収穫を迎えると、この渋皮剥(む)きは女性の担当だったといいます。この作業を経験した方はご存知かと思いますが、手が渋皮で黒ずんでくるのです。特に爪が黒ばんでくることを、フランス女性たちの美意識が許しませんでした。そこで、考案されたのが「マニキュア」だと…そのような女性たちの想いを感じながら、Benoitの栗料理と栗デザートお楽しみいただくことも一興かと。

 

 バランスの良い美味しい料理を日頃からとることは、病気の治癒や予防につながる。この考えは、「医食同源」という言葉で言い表されます。この言葉は、古代中国の賢人が唱えた「食薬同源」をもとにして日本で造られたものだといいます。では、なにがバランスのとれた料理なのでしょうか?栄養面だけ見れば、サプリメントだけで完璧な健康を手に入れることができそうな気もしますが、これでは不十分であることを、すでに皆様はご存じかと思います。

 季節の変わり目は、体調を崩しやすいという先人の教えの通り、四季それぞれの気候に順応するために、体の中では細胞ひとつひとつが「健康」という平衡を保とうとする。では、その細胞を手助けするためには、どうしたらよいのか?それは、季節に応じて必要となる栄養を摂ること。その必要な栄養とは…「旬の食材」がそれを持ち合わせている。

 その旬の食材を美味しくいただくことが、心身を健康な姿へと導くことになるはずです。さあ、足の赴くままにBenoitへお運びください。旬の食材を使った、自慢の料理やデザートでお迎えいたします。

 

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 猛暑な日々と入れ替わるかのように季節性インフルエンザやコロナウイルスが猛威を振るっているようです。過ごしやすい日々が訪れますが、ここで気を緩めると猛暑疲れがドッと押し寄せてくるでしょう。さらに、疲労・ストレスなどが原因による免疫力の低下を招きます。皆様、無理は禁物、十分な休息と休養をお心がけください。

最後まで読んでいいただき、誠にありがとうございます。

一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。皆様のご健康とご多幸を祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com

2025年11月 Benoit東京お勧めの料理/デザートのご紹介です!

 草木の花々は移りゆく季節の機微を捉え、順を追って咲き誇るもいずれは散りゆきます。食材も同じように「旬」という期間は限られたものであり、「待つ」という優しさはありません。そこで、全ての旬食材は無理でも、Benoitの要望に応えてくれた逸材でこしらえた、まさに「旬の味覚」の料理とデザートをご用意いたしました。その旬の食材とお勧め料理/デザートを、皆様にご紹介させていただきます。

 

 

冬至にはカボチャ、その前にBenoitのカボチャのスープ

 今秋、Benoitのランチで「ご用意しているスープは、栗カボチャです。ねっとりと優しい甘みのあるこのカボチャをたっぷりと使い、なめらかなトロッとするスープに仕上げます。カボチャの美味しさを引き立てるかのように、バターと玉ねぎがいい仕事をしている。フランス料理の世界では、さらっとした液状のスープを「Soup」、とろりとした濃密なものを「Velouté(ヴルーテ)」と表現するようです。もちろん、BenoitのかぼちゃのスープはVeloutéと表現するにあい相応(ふさわ)しいもの。

 カボチャは、とてもとても栄養価の高い野菜。もちうる免疫力を最大限発揮することを促す、カロテンやビタミン類を豊富に含んでいます。さらに、ホルモン調整機能をもったビタミンEが、肩こりなどの更年期障害の症状を改善するといいます。

 夏には恨めしく思っていた陽射しは、これから冬に向かうことで日増しに短く弱くなってきます。ついつい憂鬱な気分に陥ってしまう時期だからこそ、免疫力が下がり体調を崩しやすくなるもの。「冬至にカボチャを食べると病気にならない」とは古人の教えであり、今でも十分に説得力を持っています。しかし、Benoitでは冬至まで待つことはありません。「秋からカボチャを食べることで、きっと病気にならない」と信じております。美味しく食することで、効率よくカボチャの豊富な栄養を摂ることができ、さらに人を笑顔にする。上向きの気持ちの時には、病気にはかからないものです。

Velouté de potiron et fromage frais “

かぼちゃ"のスープ リコッタチーズ

※ランチのプリ・フィックスメニュー、前菜としてお選びいただけます。

 

 

秋は時雨(しぐれ)から始まるでも、Benoitの秋は栗で始まる

 秋を代表する食材の中で、料理とデザートで主役を担うことのできるものとして、和洋を問わず筆頭に挙がるのが「栗」でしょう。栗なる木の実を大きく分類すると3つに分けることができ、それぞれに美味しさが異なります。天津甘栗などで有名な「中国栗」、マロングラッセなどには欠かせない「ヨーロッパ栗」、そして、日本の「和栗」です。Benoitには、ヨーロッパ栗と和栗が届いています。

 ヨーロッパ栗は、もちろんフランスから。フランス栗は特有のコクと甘さがあり、フランス伝統菓子のマロングラッセがやはり美味。栗おこわにすると、和だしや醤油の旨味ばかりかもち米の繊細な風味をも奪い去ってしまうことでしょう。そこで、Benoitでは、洋栗をこれでもかと使ったなめらかなスープに仕上げます。

 フランス栗だけでこしらえるスープは、甘さと木の実のコクが強く出ます。だからといって薄くするという発想はありません。Benoitでは栗の渋皮を加えることで、赤ワインの渋みのような味わいを加えるのです。今の時期になると、必ずと言っていいほど「栗のスープはいつからですか?」と皆様から問い合わせが入る逸品です。Benoitの秋は栗で始まる…

Velouté de châtaignes, garniture mijotée

フランス産栗のスープ

※ディナーのプリ・フィックスメニュー、前菜としてお選びいただけます。

 

 そういえば、栗には古今東西を問わず渋皮があります。美味しく食べるには、この渋皮を取り除かねばなりません。フランスで栗の収穫を迎えると、この渋皮剥(む)きは女性の担当だったといいます。この作業を経験した方はご存知かと思いますが、手が渋皮で黒ずんでくるのです。特に爪が黒ばんでくることを、フランス女性たちの美意識が許しませんでした。そこで、考案されたのが「マニキュア」だと…そのような女性たちの想いを感じながら、Benoitの栗料理と栗デザートお楽しみいただくことも一興かと。

 

 

Benoitがビストロだからこそ欠かせない、自慢のテリーヌ!≫

 ビストロというカテゴリーの飲食店において、日本のみならず本場フランスでも欠かすことができない料理が、「テリーヌ」ではないでしょうか。Benoitにおいても、前菜として不動の地位を得ており、メニューから姿を消すことはありません。これほどまでに馴染みの料理でありながら、これといった決まった素材や調理法があるわけではなく、テリーヌ型といわれる陶器の蓋つき容器を使ってじっくり焼き上げたもの。肉に限らず野菜や魚介でも、この型で焼けばテリーヌということになるのです。

 このようにあいまいなカテゴリーなために、シェフによってさまざまなテリーヌが存在することになります。同じ肉主体でありながら、柔らかく仕上げたものもあれば、ゴロゴロと食感が残るようにこしらえたものもあります。違うからこそ、どのようなテリーヌが供されるのかもまた、楽しみの一つなのでしょう。Benoitシェフの野口は、長い調理人経験の中で試行錯誤を繰り返し、彼の求める美味しさを追求してきました。そのため、他店とはひと味もふた味も違う。テリーヌの素材は、豚肉をメインに鶏レバーの加えて粗挽きでこしらえる。数多(あまた)あるテリーヌもそう変わらない。しかし、野口の肉のブレンド比率とスパイスとハーブの使い方が妙を得ているのでしょう、食感が心地よく旨味あふれる逸品に仕上がってるのです。

 

 ディナーでは、この時期ならではのジビエのテリーヌをご用意いたします。鴨(かも)と猪(いのしし)、さらに鹿というジビエの御三家ともいえる肉に、フォアグラの旨味を加えることで、味わいと深みのあるコクに満ち満ちたものに仕上げています。それぞれの肉を、ごろごろっとした大ぶりにカットするため、口の運ぶ場所場所によって少し異なる味わいをもお楽しみください。

 

Terrine de gibiers, pain toasté

ジビエのテリーヌ

※ディナーのプリ・フィックスメニュー、前菜としてお選びいただけます。

 

 ランチは、豚の肩肉をメインとし、豚の背脂で旨味を加え、鶏のレバーでコクをあたえたもの。Benoitの定番として不動の人気を誇るもの。ディナーでは、Benoitサラダのトッピングとして登場します。

Terrine de campagne, pain toasté

テリーヌ・ド・カンパーニュ

※ランチのプリ・フィックスメニュー、前菜としてお選びいただけます。

 

 

ブランダード?いったいどんな料理?

 ヨーロッパでは、北欧を主として、塩をたっぷりとまぶし釘が打てるほどに乾燥させ保存性を高めたタラ、「Morue(モリュ)」と名付けられた食材があります。これをいかに美味しく食べようかという、フランスの伝統と知恵が作り上げたのが、ブランダードという料理です。同じような料理が、ヨーロッパ各国にあり、大航海時代で言語が伝播するように、世界中に拡がっていきました。いったいどの地が発祥なのか、今となっては知る由もありません。

 日本は周囲を海に囲まれており、鮮度良く美味しいマダラが手に入る環境にあるため、Benoitのブランダードは塩干タラを使用しません。北海道のマダラに塩をまぶし一晩お休みです。これにより、、身が引きしまるのと同時に、旨味が出てきます。このタラを少しばかり塩抜きし、牛乳とニンニクの中で煮たものを、ほぐしたジャガイモと混ぜ合わせます。これに半熟卵をのせる。ジャガイモの甘さとホクホクの食感、そこにタラ特有の繊維っぽい身質と旨さが絡みあう。半熟卵のとろりとくる黄身との相性も抜群です。さらに、クリームにニンニクを風味付けしたものをソースとする。これがBenoitスタイルです。

Œuf mollet, brandade de MORUE

タラのブランダードと半熟卵

※ランチのプリ・フィックスメニュー、前菜としてお選びいただけます。

 

 

≪今秋は旬の美味なる魚をムニエルでいかがですか?≫

 魚料理名の中に、「ムニエル」という言葉が度々姿をみせます。「舌平目のムニエル」などは、いかにもフランスっぽい料理であり、音の響きではないでしょうか。この「ムニエル」とは、料理を意味するのではなく、魚に小麦粉をまぶし、たっぷりのバターで焼き上げる調理法のことです。

 今秋のBenoitのメニューにも、「ムニエル」という単語が登場しています。ココットにバターをたっぷり溶かし込み、ふつふつと泡立つ中に魚を落とし込みます。この時、魚には小麦粉はふらず、シンプルに魚の美味しさを表現します。ココットの中では、熱々のバターをふりかける度にじゅわ~ビチビチと心地良く響く音色に、立ち昇るバターの甘い香りに香ばしい魚の香り…

 

 しっとりと焼き上げる魚に、職人技を垣間見ることができます。旨味の移ったバターに、ニンニクで香りをつけ、心地よいレモンの酸味を加え、さらにアンチョビで旨味を足したものがソース。添えるのがジャガイモを3種の調理方法で仕上げたもの。マッシュポテトにほぐしたジャガイモ、そして透けるかのようなポテトチップス。バターソースなだけに、お皿の中はジャガ&バター…この相性が悪いわけがありません。

 と、ここで気になるのが、旬の魚とは何か?ということでしょう。今季のBenoitは、ランチ/ディナーともに、「カレイ」なのですが、その仲間の中でも群を抜いた美味しさを誇る「マツカワカレイ」です。北海道で水揚げされた「マツカワカレイ」は、見事なまでに美しい背ビレに腹ビレに描かれる帯模様。これぞマツカワガレイなり!ヒラメにも負けないほどの肉厚さながら、やはり肉質は繊細で、優しい旨味に満ち満ちています。

 肉厚ではありますが、3枚に捌いてしまうと「美味しくなる前に火が入っていまう」という。そこで、中骨を残したままぶつ切りにして焼き上げるのです。骨付きだからこそ職人技ともいえる絶妙な火入れを可能とし、旨味を逃がさないのです。骨があって食べにくい?いやいや、骨に沿って魚ナイフをいれていただければ、きれいに身がほろっととれるのです。

Carrelet à la meunière, pommes de terre écrasées

マツカワカレイのムニエル じゃがいものエクラゼ

※ランチとディナーのプリ・フィックスメニュー、主菜としてお選びいただけます。

 

 背びれを上に置き、白い腹目を地につけた時、「左ヒラメに右カレイ」というのが、、ヒラメとカレイを見分ける時の決まり文句です。その眼の向きは、やはり美味しさに違いをもたらします。カレイ目ヒラメ科の仲間がぷりっと堅めの身質であるならば、カレイ目カレイ科はふわりとして柔らかい。ヒラメの仲間は律儀なようですが、カレイ界ではヌマガレイのように左向きがいるのでご注意を!

 

 

佐渡ヶ島から直送!アオリイカはいかが?

 新潟県佐渡ヶ島は、沿岸一周約280kmもあり、東京23区の1.4倍の広さを誇る本州最大の島です。新潟港からカーフェリーで2時間半、ジェットフォイルを使えば1時間ほどで島の両津港へと着岸します。そこから少しばかり北に向かうと、「佐渡魚市場」が姿を見せます。まだ東雲(しののめ)の頃から、次々と水揚げされる魚介の量の多さは、いかに佐渡近海が好漁場であるかを物語っています。

 Benoitは、マルヨシ鮮魚店の石原さんに競りを託します。活気を帯びる市場の中で、彼にお願いしたのは旨味食味が抜群で、イカの中でも最高級の食材と称されている「アオリイカ」です。生きたものしか捕食しないという硬(かた)くなまでのこだわりが、この美味しさを生むのでしょう。夏に生まれたアオリイカが、海水温が下がってくるころから沿岸部から深辺へと移りゆき、ぐんぐんと成長するといいます。確かに、今はまだ小さめだというのですが、いやいやこのサイズだからこその美味しさがあるのです。

 焼き切ってしまえばただの焼きイカ。そこで、Benoitではちゃっちゃと焼きを入れるのみ。半生のようであり、余熱で軽く焼きが入るようでもある。だからこそ、アオリイカが誇る香りの高さに魅せられ、パリッという若々しい弾けるような…そして、イカ特有のムッムッとくる食感、その溢れ出る旨味に酔いしれる…

 石原さんがこのようなメッセージを送ってくれました…「ただただ美味しく召し上がっていただきたいという一心です。良いものを早く処理して一流の料理人に渡す事が魚屋の仕事だと思っています。佐渡ヶ島の旬の逸品をお楽しみください!」と。

 このアオリイカに合わせるのは、やはり旬の食材である「秋ナス」です。しかし、この時期は美味しいけれども、少々皮が厚くなるもの。そこで、Benoitは3種類の調理方法でご用意いたします。一つは、皮を剥いてオーブンでじっくり焼き上げたナスを心地よい酸味のマリネ液に浸したもの。もう一つは、焼くことで旨味したナスを細かく切るように仕上げたところに、爽やかな酸味を少々。さらに、そのナスにゲソを細かく切ることで、アオリイカ特有の旨味を加えたもの。

 

 上述したこの「爽やかな酸味」とは、レモンではありません。この時期ならではの特選食材「スダチ」です。漢字で「酢橘」と書くように、果皮を削ったときの爽やかな香りと青々しい風味。なによりも、きれいにきわだつ酸味が、料理の美味しさを引き立ててくれる。日本のスダチ生産量の9割という、他の追随を許さない驚異的な数字を誇るのが徳島県。今回は、淡路島から徳島線鳴門市に上陸し、高松市を南に望みながら山の中に入っていった地、「神山町の岡本農園のスダチ」がBenoitに届いています。

 神山町は、1940年頃から始まった減反政策によって、棚田の水田がスダチ畑に姿を変えてきました。今では、スダチ農家さんが約400軒…県内でのスダチ収穫量が第1位!ということは、日本一の産地ということ。彼の地で、親子でスダチ栽培に取り組んでいるのが岡本農園さんです。この農園だけで、1シーズンに10tのスダチを収穫するという。

 しかし、いかに酸味のあるスダチとはいえ、時間が経るほどに果皮が黄変し、10月以降の収穫ものでは酸がぼやけてしまうため貯蔵が難しいとうのです。そこで、岡本さんは貯蔵用のため、早い段階の酸がしっかりのっているスダチを収穫し、冷蔵庫保管をしている。その庫内温度についても、段階を追ってゆっくりと下げていくことで、果皮の黄変を防いでいるという。簡単に書きましたが、スダチを観察し、機を見極めなければならない、まさに職人技なのです。

 馴染みのスダチと岡本さんの逸品とは、一線を画す。そのスダチは、果皮を削る、果汁を絞る、さらに果皮果実でコンフィに仕上ると、3種の姿で料理の其処此処に散らされ、アオリイカと秋ナスの美味しさを引き立てている。今まさに旬を迎えている三位一体の一皿をご堪能ください!酸味のスダチだけに…

Calamars au plat, aubergine confite

佐渡ヶ島アオリイカのソテー ナスのコンフィ 柑橘直七

 

秋茄子は嫁に食わすな!?

 体が冷えて流産してはいけないと嫁の体を労(いたわ)った言葉です。夏野菜であるナスは、水分が多い上にカリウムが豊富です。カリウムには利尿作用があり、余分な水分を体外に排出する際に体温を奪っていきます。さらに、ナスのアクも体温を下げるのだといいます。夏であれば良いことも、肌寒くなると困りもの…しかし、秋ナスは格別に美味しい。

 食べ過ぎいけないことはどの食材でも同じこと。アク抜きしたナスを適量であれば、妊婦さんでも美味しくお召し上がりいただけます。まして、ナスから摂れる葉酸を思うと、「秋ナスこそ嫁に食わすべし!」というものです。なにぶん、体が冷えることは体感的に分かっていても、葉酸などの含有成分などわかりようもない時代にあっては致し方ないことなのかもしれません。

 

 

≪ボーノ(美味しい)という名を冠したボーノポーク?!

 「ボーノポーク」は、イタリア語で美味しいという意味の「ボーノ」という言葉を冠し、なんとも軽々しい印象を受けますが、その実は、岐阜県の中濃ミート事業協同組合の威信にかけて育て上げた銘柄豚です。飼育地は、県内の瑞浪(みずなみ)市、山県市、揖斐(いび)市の3地域。3つの種の掛け合わせで誕生した三元豚で、そのひとつが霜降り割合を増加させる能力を持つ、岐阜県が開発育種した「ボーノブラウン」という種豚です。

 抗酸化能とオレイン酸を多く含む植物性原料を含み、飼料中のアミノ酸バランスを調整した専用に開発された飼料を与えています。この飼料を含め、徹底した管理のもとで飼育されることで、霜降り割合が一般的な豚肉の二倍にものぼり、肉自体の旨味を十二分に堪能できる上に、脂の甘味か加味されるのです。さらに、一般に流通している豚肉よりもドリップロスが少なく、肉の旨味が逃げにくいのが特徴といいます。

 飼育した全てが「ボーノポーク」というブランドを冠することはありません。県下の和牛ブランド「飛騨牛」が、霜降り具合を目視によって5等級なのか4等級なのか、はたまた3等級なのかと振り分けるように、この豚もまたロース部位を目視によって判別してゆきます。違う点は、区分けが「ボーノポーク」か「一般的な豚」の2択であるということ。

 皆様が、「ボーノポーク」という豚の名前を耳にしたことがないのも当然、徹底した管理のために多くを飼育できない上に、厳しい選別ゆえに流通量が極端に少ないのです。その、貴重な豚肉がBenoitに届いています!どれほど美味しいのか?それは、Benoitが6年間にもわたり他の豚へ浮気しないことがなによりの証(あかし)です。

 しかし、どれほどのブランド肉でも、豚肉は生では食せず、良く焼くと硬くなります。そこで、ロース肉は時間をかけながら焼いてゆき、焼き疲れを癒すように温かい小部屋で休ませ、断面がうっすらとピンク色となるように仕上げます。この職人技ともいえる焼きの技によって、しっとりとした食感とボーノポークの旨味を十二分に堪能できるのです。

 バラ肉は、フランスの伝統料理でもあるBoudin Noir(ブーダンノワール)へと姿を変えます。通常は、たっぷりの豚の血をたっぷりつかったソーセージのようなもので、しっとりとモフモフした独特の食感に味わいがあり、好き嫌いがはっきでるもの。しかし、Benoitではたっぷりの粗挽きにしたバラ肉を使い、肉々しく仕上げます。

 ただでさえ美味しいボーノポークの粗挽きバラ肉に、豚の顔の部位(耳コリコリ/額プルプル/ホホほくほく)をアクセントになるよう少しばかり。そこへ、豚の血をつなぎにする程度加え、スパイスぱらぱら。腸詰ではなく、チョコレートケーキのように型で焼いてゆく。それを厚めにカットして、表面をパリッと焼き上げ、上記のロースステーキ、このブーダンノワールが、秋野菜と一堂に会するのです。特に、ブーダンノワールは、ともに添えている栗やリンゴ、カボチャとお楽しみいただきたいです!

Cochon de Gifu rôti, garniture d’automne

岐阜県産“ボーノポーク”ロース肉とブーダンノワールのロースト 秋野菜と果物

 

 ボーノポークは、肉質と旨味はもちろんですが、脂が甘くて臭みがないのです。信じられないと思うのですが、この豚肉をしゃぶしゃぶしても、灰汁(あく)がでません。それほどまでに、キレイ美味しさなのです。

 

 

鴨がネギをしょってくる?いやいやBenoitではバレンシアオレンジです。

 

 「津軽かも」、このブランド名からお察しかと思いますが、飼育場は青森県津軽地方です。彼の地に6か所、点在するように飼育場がある。育てられているのは、フランス原産のバルバリー種の鴨。雄大な山々があり、そこより湧きいづる豊富な水資源、四季折々の優しさに厳しさ。この自然環境こそが、鴨にストレスを与えず、健康に育て上げることのできる理由なのでしょう。さらに、平飼い開放鳥舎によって余裕のある飼育面積を確保し、飼料も独自開発したものを与えるという徹底ぶりです。

 バルバリー鴨は、他の鴨と比べて皮下脂肪が薄く、赤身は濃い鮮紅色です。鴨特有の臭みが少ないとはいいますが、やはり鴨は鴨。この独特の臭みの大部分は脂についているため、Benoitでは皮目に隠し包丁を入れ、余計な脂を落とすように焼き、その後は低温でじっくりと、表面がロゼ色になるようにこしらえます。

 「鴨がネギをしょってくる」とは言いますが、Benoitはフランス料理店なので、ここはオレンジをしょってきてほしいもの。しかし、ここで海外のオレンジを選ぶようでは、これほどまで食材にこだわるBenoitの名折れ。そこで、白羽の矢が立つったのが、神奈川県小田原にある江之浦果樹園maruesuさんの「バレンシアオレンジ」です。ここは、日本の柑橘の北限、まさに殿(しんがり)を担う地です。

 この時期に、これほどまでの品質のバレンシアオレンジに出会えるとは。それも露地栽培だからこその濃ゆく甘さに心地よい酸味に果皮の深みのある苦みがあり、ノーワックスとくる。Benoitにとって果肉はもちろん、果皮も重要な食材なのです。このバレンシアオレンジを惜しげもなくまるまると、軽くシロップで加熱したコンフィに、さらに細かくたたくように仕上げたコンディモンへと仕上げてゆきます。コンディモンとは、日本でいう薬味のようですが、味の重大要素を構成するためのアイテムです。

 さらに、北海道真狩村(まっかりむら)の三野農園さんから、丹精込めて育て上げたビーツがBenoitに届いています。往古、甘味料の原料として北海道産ビーツが確固たる地位を獲得していました。しかし、時代は、すっきりとした甘さを求めたことでその地位をサトウキビに譲ることになります。確かに、ビーツは根菜だけに独特の土っぽい雰囲気がある。甘味料としては余分な味わいであっても、それが今回の鴨料理には必要だったのです。蒸し焼くように熱を加えたビーツに、生のスライスも。食感の違いばかりではない、ビーツそのものの美味しさを気づかせてくれる。

 青森県の「津軽かも」と、柑橘のもつ爽やかな香りに、心地よい酸味と果皮の優しいほろ苦さが生かされた江之浦の「バレンシアオレンジ」コンフィとコンディモン。さらに大地の美味しさを表現するかのような、カブとビーツ。地表近くの味わいがカブであれば、ビーツは土深い味わいというのでしょう。これらの旬の食材がBenoitに集うのです。

 なにやら「もみじおろし」のように見えるものが、バレンシアオレンジのコンディモン。あえてソースに柑橘を加えるのではなく、添える。ここにシェフ野口のセンスを感じていただけるはずです。やはり、Benoitの秋は鴨葱ではない…

Canard de Aomori à l’orange, navets et betteraves

青森県産鴨胸肉のロースト カブとビーツ オレンジ風味

※ディナーのプリ・フィックスメニューで、主菜としてお選びいただけます。

 

 

≪仔鳩がフランスから飛んできています!≫

 飛行機で…伝書鳩のごとく日仏間を渡り飛ぶことは、仔鳩には過酷なのです。

 今回の特選食材は、フランス南西部に位置してるLandes(ランド)県から、空港へ運ばれ、飛行機に乗って飛んでくる仔鳩です。とうとう、Benoitに仔鳩料理が姿を見せるのです。シェフの野口は、あえて「Pigeon(ハト)」ではなく「Pigenneau(仔バト)」を選びました。身質が柔らかい上に、優しい旨味に満ち満ちているのです。仔バトとはいえ、ハト肉特有の鉄っぽさというのがあり、好き嫌いが大いに分かれる食材です。

 丁寧に下ごしらえをした胸肉とモモ肉。胸肉は、鉄板でじゅーわーと焼いた後に、温かい小部屋で小休止。もも肉は、低温の脂の中でゆっくりゆっくりと熱を入れてゆくコンフィという調理方法を。それぞれの部位に適した調理方法で、仔バトの持ちうる旨味を引き出していきます。そこへ、フランスで伝統でもあるサルミソースをあわせる。これは、ハトを捌いたガラの部位から、じっくりと旨味を引き出すようにしたジュと呼ばれるソースをとり、そこへハトのレバーを加えることでコクと旨味を加味してゆく。

 旨味の主張が激しい食材なだけに、生半端な添え物では太刀打ちできません。そこで、Benoit東京のシェフ野口が探し待ち望んだものがイタリアから届いたポレンタ粉(トウモロコシを乾燥させ粉末にしたもの)です。細かな粉末状のポレンタ粉ではなく、粗挽き全粒粉の逸品。大小に破砕されたトウモロコシは、絶妙な食感を生み、旨味が違う!

 仔バトの胸肉のローストとモモ肉のコンフィ。それらに旨味を加味するかのようなサルミソース。そして、香ばしくもなめらかなポレンタ。これらが一堂に会する、今の時期ならではの一皿です。ハト料理好きであれば、この機会をお見逃しなく!

PIGEONNEAU en cocotte, polenta crémeuse, sauce salmis

フランス産鳩のロースト クリーミーなポレンタ サルミソース

※ランチ/ディナーのプリ・フィックスメニューで、+1,500円で主菜としてお選びいただけます。

 

 

≪知る人ぞ知る熊本県「やまえ栗」がBenoitのデザートに!

「洋栗に始まり、和栗で終える」

 秋ともなると、Benoitのディナーは「栗で始まり、栗で終える。」というプリ・フィックスメニューの流れが多くなります。ときに栗の前菜がスープなために、コース2番目に配することもありますが、気持ちの中ではやはり「栗で始まる」ようなもの。前菜の栗はフランス栗。であればこそ、最後は和栗で終えたいものです。

 そこで、今季も「やまえ栗」を熊本県から送っていただき、デザートに仕上げます。この栗の名前を耳にして、「お!」と思った方は、栗を愛してやまない方か、栗を取り扱う専門家でしょう。もちろん、自分も知りませんでした。そこで、少しばかりこの栗が育まれた地と歴史をご紹介させていただきます。

 「やまえ栗」の「やまえ」とは、熊本県の南部に位置している、球磨郡(くまぐん)山江村の村名です。球磨川を上流へと向かった先にある人吉市から、北に聳(そび)える標高1,302mの仰烏帽子山(のけえぼしやま)へと向かうように山路(やまみち)へと入った先に、この村があります。121㎢という広大な地でありながら、その90%を山林が占めているという。

 山江村は、三方を山で囲まれるかのような地。その山々に源を発する清流「万江川」と「山田川」が、南へと流れる中で彼の地を潤し、そして球磨川(くまがわ)へ落ち合う。そこで、この豊富な水資源と、開けた地の緩やかな傾斜は、かつては山田が拓かれ村が誕生したのでしょう。しかし、如何せん平野部が限られていることもあり、多くの人々を養うことができなかった。

 そこで、この盆地だからこその夏冬・昼夜の寒暖差、さらに山の斜面を利用した果樹の栽培を先人は考えた。しかし、賢人は柑橘ではなく栗を選んだのです…鎌倉時代から明治維新までの約700年間、すでに年貢として栗を納めていたという記録があるほどに、彼の地では特産となっていたといいます。

 時を経てついに!1977年9月、山江村の福山栗園の栗が昭和天皇へ「やまえ栗」として献上されることになるのです。今に至るまで連綿と受け継がれてきた栗栽培が、そして労を惜しまず丹精込めて育ててきた「やまえ栗」が、ついに認められた時がきたのです。どれほど山江村の人々の励みとなり希望となったことか。その年の大阪市場では、「献上栗に輝くやまえ栗」という横断幕が掲げられ、競りの最後に姿をみせた「やまえ栗」を見た村民は、「栗が輝いているようだった」と述懐しています。

 しかし、世相は「やまえ栗」に試練の時与えたのです。1992年、山江農協が球磨(くま)地域農協合併されたことで、「やまえ栗」は他地域とブレンドされ「球磨栗」として出荷されるようになるのです。歴史から、「やまえ栗」が消えたのです。

 球磨栗だって十分に美味しい栗です。しかし、山江村の人々は自分達の育んだ栗の美味しさに確固たる自信があったのです。今まで培われてきた栗栽培の歴史に加え、献上栗に選ばれたことが、山江村の誇りを見失うことに歯止めをかけたようです。粛々と時が経つ中で、「栗は命」であると言い切る彼らは、村の中という狭い範囲ですが「やまえ栗」を残し続け、復活の機会を待ち望んでいたのです。

 2008年、ついに世相が山江村の人々に微笑みかけたのです。時は大量生産から高品質を求めるように。そう、栗も例外ではありませんでした。和栗から球磨栗へ、さらに細分化された栗のブランド化が加速してゆくのです。そして、待ちに待っていたこの機運を、山江村の人々が見逃すわけがありません。ここに、「やまえ栗」の名前が復活を遂げたのです。

 2015年8月の台風15号の直撃し、栗畑は壊滅的な被害を受けました。献上栗に選ばれたころの生産量約400tもあったものが、約40tにまで落ち込んだのです。栽培者にとっては存亡の危機にいたる…心折れるほどのことだったはずです。さらに、翌2016年に熊本地震、2020年の豪雨災害と、度重なる自然の猛威の前に、なすすべなく打ちのめされます。

 しかし、彼らは諦めなかった!「やまえ栗」の品質向上を継続しつつ、「収量200t」との目標を掲げ、「やまえ栗」復興に向けて奮励努力することを厭(いと)わなかった。その結果、今では100tを超える実りを得ることができるに至ります。

 「やまえ栗」は、山江村で丁寧に渋皮を剥き、炊き上げ、ペースト状に加工されてBenoitに届きます。これだけでも十分に美味しいため、巷に溢れる栗尽くしデザートを期待してしまう。確かに、美味しい栗なのでたっぷり使ったデザートは、インパクトがあり美味しいだろう…しかし、人間の味覚というものは単調であると飽きてしまうもの。そこで、アジア圏のエグゼクティブシェフパテシエのアリテアが選んだのが、日本原産の美味なる柑橘、「ミカン」です。

 熊本県の天草といえば、海産物はもちろんですが、島を形成する山の麓を利用した果樹栽培が盛んな地。今回は、彼の地で、荒木さん親子が柑橘を丹精込めて育てあげたミカンをBenoitへ送っていただいています。彼らは、天草の地の利に甘んじることなく、さらなる美味しさを求めて続けています。今は、甘みを出すためにマルチシートという白いビニールシートを園圃全面に敷き詰めています。雨などの水分をギリギリまで与えないことで、みかんが生命を守るために甘みを蓄える、この仕組みを利用した栽培方法。確かに理屈は分かるのですが、昨今の異常競う中では、樹が枯死する可能性もある。それでも、毎日のように樹々の様子を観察しながら実践しているのです。

 今、Benoitに届いているミカンは、熊本県オリジナル品種の極早生「豊福(とよふく)」です。これもまもなく終わりを迎えるので、次は早生品種で、「肥のひかり」という、これまた熊本県のオリジナル品種。どちらも、荒木さん親子によって甘みを増した果実に育まれるのですが、ただ甘いだけではありません。キレイな心地よいミカンらしい酸味が、食べ飽きるという言葉を忘れさせてくれたいます。

 毎年のように、Benoitの栗デザートは「モンブラン」です。しかし、毎年のように姿が変わりこのデザートは、今季は栗のタルトのように仕上げます。土台となるタルト生地に栗粉と栗クリームを加え、サクッと焼き上げる。その生地の上に、栗粉と栗クリームを加えたフラン生地かぶせるようにし、バターで香り付けしたフランス栗そのものとミカンをのせて、オーブンで軽く焼いていく…

 そのタルトの粗熱をとれた後に、モンブランが冠雪するかのように生クリームをのせ、和栗ペーストを細く細く搾りのせ、ミカンを飾り、仕上げにミカンの果皮から作ったパウダーをはらはらっと振りかけて完成!この果皮のパウダーに、緑色を見たら「豊福」で、見なかったら「肥のひかり」。別に添えるミカンソルベを時折はさみながら、お召あがりいただきたいです。

 和栗と洋栗を使って、食感を変え風味を変えながら、層をなすように組み立てらえたタルトです。栗だけでは、まったりと重いデザートになってしまうところを、軽やかに仕上げてる。そして、ミカンの心地よい甘みと酸味によって、食べ進めても飽きがこない…秋ですが…。思う存分、秋の味覚の代表である栗デザートをご堪能いただきたいです。Benoit東京史上、もっとも標高の低いモンブラン!であることは、どうかご容赦ください…

Mont-blanc à notre façon, sorbet mikan

熊本県”やまえ栗“のモンブランBenoit風 ミカンのソルベ

※ランチ/ディナーのプリ・フィックスメニューで、+1,500円でデザートとしてお選びいただけます。

 

 

≪国産のカマンベールチーズが、ついにこの美味しさにまで!≫

 日本屈指のタカナシ乳業と、フランスはノルマンディー地方のイズニーサントメール酪農協同組合が、本気になった。

 北海道の東南に位置する根釧地区は、酪農の産地として名高い。広大な大地には牧草が青々と生い茂る。暑さに弱い牛にとって、夏をどうしのぐかが悩みの種。皆様が夏の生乳を、軽く感じるのは皆様が夏バテしていて味覚が鈍っているのではなく、牛が夏バテをしてるからです。特に、猛暑を運ぶ南風は如何(いかん)ともしがたいもの。この根釧地区は、南からくる暑い風が、寒流である千島海流によって冷やされ、海霧となったものが根釧地区に吹き込むのです。野菜の栽培には不向きであっても、牛にとってはこれほどの好環境はないのではないでしょうか。

 この地で育まれている牛「ホルスタイン種」に加え、フランスから「ノルマンド種」を連れてきた!イズニーサントメール酪農協同組合の伝統製法と門外不出の乳酸菌を受け継ぎ、ここにタカナシ乳業が培ってきた日本の技術が融合する。「根釧地区らしい、誰も食べたことのない熟成チーズの傑作を皆様に!」という想いのもと、4年にもおよぶ研究の歳月を経て、ついに姿を現しました。

 フランスのノルマンディー地方出身のお方に、このチーズを供した時、彼はこう言った…「カマンベールチーズは、日本が発祥だったかな」と。なんとも嬉しい言葉ではないですか!皆様、気になりませんか?

CAMEMBERT Bries de mer

カマンベール ブリーズ・ド・メール

※ランチでもディナーでも、ご希望の際にはスタッフにお声かけください。800円(税込)~でご用意させていただきます。

 

 

 バランスの良い美味しい料理を日頃からとることは、病気の治癒や予防につながる。この考えは、「医食同源」という言葉で言い表されます。この言葉は、古代中国の賢人が唱えた「食薬同源」をもとにして日本で造られたものだといいます。では、なにがバランスのとれた料理なのでしょうか?栄養面だけ見れば、サプリメントだけで完璧な健康を手に入れることができそうな気もしますが、これでは不十分であることを、すでに皆様はご存じかと思います。

 季節の変わり目は、体調を崩しやすいという先人の教えの通り、四季それぞれの気候に順応するために、体の中では細胞ひとつひとつが「健康」という平衡を保とうとする。では、その細胞を手助けするためには、どうしたらよいのか?それは、季節に応じて必要となる栄養を摂ること。その必要な栄養とは…「旬の食材」がそれを持ち合わせている。

 その旬の食材を美味しくいただくことが、心身を健康な姿へと導くことになるはずです。さあ、足の赴くままにBenoitへお運びください。旬の食材を使った、自慢の料理やデザートでお迎えいたします。

 

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 猛暑な日々と入れ替わるかのように季節性インフルエンザやコロナウイルスが猛威を振るっているようです。過ごしやすい日々が訪れますが、ここで気を緩めると猛暑疲れがドッと押し寄せてくるでしょう。さらに、疲労・ストレスなどが原因による免疫力の低下を招きます。皆様、無理は禁物、十分な休息と休養をお心がけください。

最後まで読んでいいただき、誠にありがとうございます。

一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。皆様のご健康とご多幸を祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com

2025年9月 Benoit自慢の料理のご紹介です!

 我々は、季節の移ろいを、陽射しや風を肌で、順を追って咲き誇る花々や、青々と茂る斑斑(むらむら)の様を目で、風や雨の音を耳で、風が運んでくる香を鼻で、旬の食材で季節の美味しさを口で楽しみます。季節を五感で感じ取ることで、体を季節に順応させているのではないかと思うのです。家にこもってばかりでは体調がすぐれないのは、これが理由ではないかと…

 皆様、日本全国の旬の食材が、今が晩夏であることを教えてくれています。足の赴くままにBenoitへお運びください。自慢の料理で皆様をお迎えいたします。旬の食材には、今我々が欲している栄養が満ち満ちています。これらを美味しくいただくことで、残暑厳しいこの時期をのりきりましょう。

 

冷製ヴィシソワーズスープで残暑をのりきれ!

 お馴染みの食材であるジャガイモですが、Benoitはこの食材にもこだわりたい。今回は、高知県高知市に隣接する吾川郡(あがわぐん)いの町(ちょう)に畑を有する水田Farmさんが、丹精込めて育て上げたジャガイモ「メークイン」です。畑に何も植わっていないときは、まるで赤いフィルター越しに景色をみているかのような錯覚を覚えるほど。この赤土は、ミネラル豊富という利があるものの、湿ると固まる性質がある。そこで、彼らは、意図的に腐植物質を土壌中に増やすようにしてこれを改善。この肥沃な地で、彼らはジャガイモを育て上げる。その逸材が、Benoitで冷製ヴィシソワーズスープへと姿を変える。

VICHYSSOISE rafraîchie, garniture taillée

ジャガイモの冷製スープ “ヴィシソワーズ”

※ランチとディナーのプリ・フィックスメニュー、前菜としてお選びいただけます。

 

≪染み入るような旨さ、魚スープで残暑をのりきれ!

 Soupe de POISSON(魚のスープ)といえば、南フランスの港町マルセイユの伝統的な漁師料理です。ブイヤベースとは違い、煮込んだ魚を食することをせずに、旨味をスープに出しきったもの。Benoitでは、魚そのものの美味しさをお楽しみいただきたく、エビ・カニ・貝類を一切加えず、ワインも使わず、じっくりと時間をかけてこしらえてゆきます。今は、マゴチにホウボウ、オニカサゴ。さらに、小鯛にイトヨリダイ。ごつごつだったり、とげがあったり、ぬるぬるしていたりと、自分のような素人が捌くには難儀な魚たちで、思いのほか可食部が少ないもの。しかし、見た目からでは想像もつかないほど繊細で美味なる身質なのです。さらに、そのごつい頭や骨からは、得も言われぬ上質な旨味をとることができる。

 皆様の目の前で、スープがそそがれた直後から、磯の香りに包まれます。濃厚な茶色を帯びた深みのあるオレンジ色の液体は、透明感こそないですが輝きがある。濃厚ながら、甲殻類のような濃さではなく、さらりとした感さえあるものの、余韻に感じる魚の美味しさに酔いしれ、猛暑に疲れた体を癒してくれるはずです。一口お召し上がりいただき、目を閉じれば潮騒(しおさい)が耳に届き、目を開ければBenoitの窓越しに地中海が望める…かもしれません。

Soupe de poisson de roche, rouille et croûtons aillés   

魚のスープ ルイユとクルトン

※ランチとディナーのプリ・フィックスメニュー、前菜として+1,500円でお選びいただけます。

 

夏野菜の力で残暑をのりきれ!

 夏野菜を代表するナス、ズッキーニ、パプリカをトマトで煮込んでいったプロヴァンス伝統料理です。家でも作りやすいこともあり、馴染みの料理でえはないでしょうか。とはいえ、ご家庭と同じでは「プロの調理人」ではないわけで、Benoitのプリ・フィックスメニューに名を連ねるということは、やはり美味しいということなのです。

 ナス、ズッキーニ、パプリカとタマネギは、それぞれを絶妙な食感を残すように焼いてゆきます。野菜そのものの旨味が、熱が加わることでさらに引き立つかのよう。そして忘れてはいけない食材、、完熟まで収穫を待った真っ赤なパンパンのトマトとともに大鍋で一堂に会するのです。かるく煮込むことは、それぞれの野菜の甘さ凝縮させることになり、甘みが増します。さらに、冷ますことで、味わいが落ち着き、野菜のコクが際立ちます。松の実を加えることで、カリっと心地良い食感と、夏なのでナッツの香ばしさを…さらに、半熟卵のとろりとくる黄身との相性も抜群とくる。

Ratatouille de légumes du soleil, œuf mollet

夏野菜の冷たいラタトゥイユと半熟卵

※ランチのプリ・フィックスメニュー、前菜としてお選びいただけます。

 パリの赤ペン先生がフランス語表記を修正してきました。「légumes d’été (夏野菜)」から「légumes du soleil (太陽の野菜)」へと。なかなか粋な表現だと思いませんか?

 

半夏生でタコを食すならば、残暑もタコでのりきれ!

 関門海峡の川のような海流の中で、もまれにもまれた「関門騎タコ」が、Benoitの直送です。丁寧に下ごしらえされ、やわらかく茹でたマダコ。そして、極力甘さを控えて仕上げたバレンシアオレンジのマルムラード。さらに、ギリシャ風と銘打たれた野菜が一堂に会します。この野菜のギリシャ風とは、セロリ、ニンジン、タマネギ、カリフラワー、それにラディッシュ。レモンにコリアンダーの種を使い、絶妙な火加減で調理してゆき冷蔵庫で一晩休ませたもの。コリアンダーパクチーのことで、苦手の方の多い香草かと思います。しかし、このコリアンダーの種は、うんともすんともいわない味気ない食材。ところが、野菜とともに熱を加えることで、野菜本来の甘さを引き出すのです。

 ぬくいマダコが、野菜それぞれの食感がリズミカルに口中に響き、野菜それぞれが甘さ旨さの旋律を奏でます。そして、江之浦果樹園の甘夏の甘ほろ苦さが、全ての食材を引きあわせ、調和をもたらす。この美味しさに酔いしれ、Benoitの窓へと目を移すと…今度は、エーゲ海がひろがっている…かもしれません。

Poulpe mariné, légumes à la grecque

下関産マダコと野菜のマリネ ギリシャ

※ディナーのプリ・フィックスメニュー、前菜としてお選びいただけます。

 

タコとくればイカ、夏のケンサキイカで残暑をのりきれ!

 「味のアオリイカ、食感のケンサキイカ」と評される2種のイカアオリイカのほうが美味しいの?ということではなく、ともに美味しさ際立つイカであり、甲乙つけがたい。そこで、あえて違いを表現すると…こうなるのです。しかし、それぞれのイカは旬が異なるため、自分の中では「夏のケンサキイカ、秋のアオリイカ」となる。そう、下関の唐戸市場から直送されています!

 ケンサキイカは食感を生かすように、Benoitシェフの野口は「焼き」にこだわりを見せる。焼き切ってしまえば、ただの焼きイカ。そこで、表面をちゃっちゃと軽く焼き、イカがくるっと反るようになった段階で、火から上げてしまうのです。この「mi-cuit(ミ・キュイ)」という焼きこそが、ケンサキイカケンサキイカたらしめる、その美味しさを発揮できるのです。

 このイカの旬の旨さを際立たせるかのような夏野菜。香り良いミルクのまろやかさ。イカ墨のソースで、さらなる旨味を加ええる。さらに、はらはらと振りかかるフランスの旧バスクの地、エスプレット村の特産唐辛子が、ピリりと全体を引き締める。全てが一堂に会する時、そこには旬そのものお楽しみいただける一皿が姿をみせます。

Poêlée de calamars au piment d’Espelette, garniture d’une basquaise

下関産ケンサキイカポワレ パプリカのピペラード バスク

※ランチとディナーのプリ・フィックスメニュー、主菜としてお選びいただけます。

 

知っているようで知らない美味なる魚、オウモンハタで残暑をのりきれ!

 高知県の西端にある宿毛湾。まだまだ夜の帳(とばり)が下りきっている頃に漁船は出港します。月影に照らされていればまだしも、星月夜ではおぼろげにしか望めない陸地を左手にみるように、沖合を目指す。ここ足摺岬(あしずりみさき)の西に広がる海域は、黒潮がもたらす恩恵をうける好漁場。それと、サンゴ礁や藻場が多く成育環境が整っており、1000種以上の魚種が生息しているといわれています。今夏に水揚げのある魚種の中から、与力水産の吉村さんがBenoitのために競り落としてくれるのがオウモンハタです。

 北のハタとは違い、そこまで脂は強くはりません。きれいに脂ののった旨味があり、カサゴのようなプリッとした身質でかなり美味!というのが、自分がオウモンハタを口にした時の感想です。この魚を丁寧に捌き、皮を取り除いた白身をとしっとりと焼き上げます。2種類の調理方法で仕上げた秋ナスを添え、ケッパーとオリーブを加えた、ほのかに甘酸っぱさを感じる魚のソースで仕上げます。夏の疲れを癒すかのような、一皿をお楽しみください。

Blanc de hata doré, aubergine confite, condiment câpres et olives noires

高知県宿毛産ハタのオーブン焼き 茄子のコンフィ ケッパーとオリーブ 

※ディナーのプリ・フィックスメニュー、主菜としてお選びいただけます。

 

牛ホホよりも旨し、豚ホホ煮込みで残暑をのりきれ!

 豚ホホ肉…あまりにも豚肉が身近な食材なだけに、言われてみれば、特段珍しいものでもないはずなのに、見かけることは皆無でないでしょうか。なぜだろうかと考えてみました。思うに、名だたるレストランが牛ホホ肉の料理を提供しているために、豚ホホ肉の価値が見いだせていないのではないかと。お肉屋さんも、販売できない部位ではなく、販売しても売れない部位だから取り扱わない。だから、我々には馴染みがない食材なのでしょう…これほどまでに美味しいのに…

 牛ホホ肉の煮込みでは、赤ワインを使用します。しかし、豚ホホ肉は繊細な旨味があるため、白ワインを使います。香味野菜とともに煮こむこと1時間ほど、ほろりと崩れるようになる。ここでホホ肉を避難し、鍋に残った旨味のスープを煮詰め、フォン・ド・ヴォーを加え煮詰めたてゆく。この旨味そのものであるとろみのあるソースを、避難させていたホホ肉に絡め、ズッキーニとともに盛り付けます。パスタは別添えで。ナイフが必要ないほどに、ほろっと崩れるようにやわらかい豚ホホ肉、Benoitのランチでお楽しみください。

 どうして食材として名が挙がらないのか?と不思議になるほどの美味しさがあります。そう、豚ホホ肉を知ってしまうと、もう牛ホホには戻れなくなる…



Joues de cochon cuisinées longuement, courgettes et pâtes fraîches

豚ホホ肉の煮込み ズッキーニとフレッシュパスタ

※ランチのプリ・フィックスメニュー、主菜としてお選びいただけます。

 

ボーノな上に栄養満点、ボーノポークで残暑をのりきれ!

 「ボーノポーク」は、イタリア語で美味しいという意味の「ボーノ」という言葉を冠し、なんとも軽々しい印象を受けますが、その実は、岐阜県の中濃ミート事業協同組合の威信にかけて育て上げた銘柄豚です。飼育地は、県内の瑞浪(みずなみ)市、山県市、揖斐(いび)市の3地域。3つの種の掛け合わせで誕生した三元豚で、そのひとつが霜降り割合を増加させる能力を持つ、岐阜県が開発育種した「ボーノブラウン」という種豚です。

 抗酸化能とオレイン酸を多く含む植物性原料を含み、飼料中のアミノ酸バランスを調整した専用に開発された飼料を与えています。この飼料を含め、徹底した管理のもとで飼育されることで、霜降り割合が一般的な豚肉の二倍にものぼり、肉自体の旨味を十二分に堪能できる上に、脂の甘味か加味されるのです。さらに、一般に流通している豚肉よりもドリップロスが少なく、肉の旨味が逃げにくいのが特徴といいます。

 飼育した全てが「ボーノポーク」というブランドを冠することはありません。県下の和牛ブランド「飛騨牛」が、霜降り具合を目視によって5等級なのか4等級なのか、はたまた3等級なのかと振り分けるように、この豚もまたロース部位を目視によって判別してゆきます。違う点は、区分けが「ボーノポーク」か「一般的な豚」の2択であるということ。

 皆様が、「ボーノポーク」という豚の名前を耳にしたことがないのも当然、徹底した管理のために多くを飼育できない上に、厳しい選別ゆえに流通量が極端に少ないのです。その、貴重な豚肉がBenoitに届いています!どれほど美味しいのか?それは、Benoitが6年間にもわたり他の豚へ浮気しないことがなによりの証(あかし)です。

 どれほどのブランド肉でも、豚肉は生では食せず、良く焼くと硬くなります。そこで、ロースの部位を厚めにカットするのですが、休ませながら断面がうっすらとピンク色になるように丁寧に焼き上げることで、しっとりとした食感とボーノポークの旨味を十二分に堪能できるのです。さらに、ディジョンマスタードにエシャロットの甘みを加えたものを下に、オリーブとクルミを細かくカットしたものを上に。ボーノポークと会いまった時、その美味しさが際立つかのよう。この味わいのバランスこそが、この料理の神髄です。

Longe de cochon de Gifu en cocotte, pommes de terre farcies

岐阜県産”ボーノポーク”ロース肉のココット焼き ジャガイモのファルシ

※ディナーのプリ・フィックスメニュー、主菜としてお選びいただけます。

 

南フランスを代表する食材、仔羊肉で残暑をのりきれ!

 「品質と特徴が、特殊な地理的環境に起因する」という大原則のもとに、EU加盟国で批准されているのがAOP(原産地呼称保護)。この厳格な基準よりも少しだけゆるくしたものがIGP(Identification Géographique Protégée / 地理的表示保護)というもので、「生産地に起因する品質、社会的評価、特徴がある」という解釈です。基準が緩和されたとはいえ、もちろん生産地が限定され、栽培・飼育に厳しい条件があるのです。

 今回、Benoitに届いている仔羊は、このIGP認定を受けている「Agneau de Lozère (アニョー・ド・ロゼール)」です。南フランスに位置する、かつてのLanguedoc-Roussillon(ラングドック・ルーション)地域圏とMidi-Pyrénées(ミディ・ピレネー)地域圏が合併してできたOccitanie(オクシタニー)地域圏の、北東に位置するのがLozère(ロゼール)県。この山岳部は、石が多く痩せた土壌で乾燥した気候から、2000年以上も前から羊の飼育が盛んだったという歴史を持ちます。

 この飼育環境のもとで、自然に乳離れするまで母羊に哺乳させ、人工飼料は与えないなどという、厳しい規定をクリアしたもののみがアニョー・ド・ロゼールを名乗ることができます。その肉はピンクがかった白色が美しく、肉質は絹のように滑らかで、きめが細かく引き締まっており、脂肪は硬く、ほのかに草の香りがする気がします。

 仔羊は丁寧にトリミングを施し、背肉を表面に焼き色を付け、ふつふつとしたバターをふりかけながら、ゆっくりゆっくり熱を加えてゆく。この魅惑的な香りをどう表現したものか。表面には美味しそうな焼目がつくが、中はまだ生のままです。肉が内包している温まった肉汁を利用し、中からじっくり熱がゆきわたるように、温かい肉部屋で休ませロゼ色に焼きあげます。この美しい焼色なくして、仔羊の美味しさを味わえないでしょう。

 トマト、ズッキーニ、ナスにピキオス(バスクパプリカ)と彩り豊かな夏野菜にパルメザンチーズを振りかけオーブンへ。チーズが溶けてふつふつとしたところで、仔羊とともに盛り付けます。目の前に運ばれてきた時、仔羊の焼き色と夏野菜のグラチネの色のコントラストが目を引き、甘い野菜と焼いたパルメザンチーズの香りが漂います。そこへ、仔羊の旨味の凝縮したソースを、そっとお肉へかけてゆく。全てが一堂に会する時、なぜシェフがお勧めするのか、お分かりいただけるはずです。

Agneau rôti, légumes d’été légèrement gratinés 

フランス産仔羊のロースト 夏野菜のグラチネ

※ランチとディナーのプリ・フィックスメニュー、主菜として+2,000円でお選びいただけます。

※画像は骨付きですが、今は骨なしの背肉に変更しています。

 

夏を代表する果実、白桃で残暑をのりきれ!

 

 「ピーチ・メルバ」は、ブノワでも一二を争う人気のデザート。今季もまた、産地と栽培者にこだわった桃を、お一人に約1玉使用して仕上げます。今季最後を飾るのは、山形県天童市のタキグチフルーツガーデンから届いた「川中島白桃」です。滝口さんには、輸送に耐えうるため、硬めに収穫していただきBenoitへ直送していただいています。受け取ったモモは、ゆっくりと追熟させ、ここぞというタイミングでデザートに姿を変えるのです。

 桃は、フレッシュの果肉はもちろん、甘酸っぱいのペッシュ・ヴィーニュのジュースに漬けてコンポートにしたもの。さらに、低温のオーブンでじっくりと美味しさを凝縮させたものも。ペッシュ・ド・ヴィーニュのピューレ、シャリシャリっとアーモンドスライス、心地よい酸味のライムのソルベとともに盛り付けてゆきます。ひっそりと器の下に盛り付けた、桃のアイスも忘れてはいけない。桃の美味しさもさることながら、それぞれが奏でる美味しさを、かぐわしいアマレット・ディサローノのリキュールの香りと風味が引き立てます。ぜひコースの食べ納めに、夏の食べ納めとなる白桃を!

Pêche Melba à notre façon

ピーチ・メルバ

※ランチとディナーのプリ・フィックスメニュー、デザートとして+1,500円でお選びいただけます。

 

初秋を告げる伝統果実、蓬莱柿(ほうらいし)で残暑をのりきれ!

 イチジクは馴染みの食材ですが、意外にも、中国原産で日本に渡来したのは、つい400年ほど前、江戸時代初期の頃でした。中国語でイチジクを「无花果」と書きます。「无=無」なので、イチジクを「無花果」と書くのは中国語に由来するようです。しかし、当時の人々は、この最初の渡来したイチジクを、「蓬莱柿(ほうらいし)」と名付けたのです。日本原産の美味なる果実「カキ」の字をあてた。カキのようにねっとりと甘い美味しさに驚愕し、プチプチとした新しい食感に感動を覚えたのでしょうか…東にある仙人の住む山「蓬莱」を、「柿」の前にあてがったのです。

 今、イチジク界を席巻しているのが、「桝井ドーフィン」という品種です。なぜ蓬莱柿は市場に出てこないのか?この品種は、果皮が薄く、甘みが強くねっとりとした食感が特徴です。美味しいのだが収量が少なく、果皮が薄い上に、完熟すると十字にぱっくりと口を開いてしまう。そのため流通に耐えられないため、栽培者が激減していったのです。しかし、この「蓬莱柿」の美味しさを知っている人は、香川県まんのう町の羽間という地区で栽培を続けていた!

 どの地でもそうですが、農家さんの高齢化にはなすすべがなく、いかに羽間という地であっても例外ではありません。しかし、このイチジクの美味しさに魅せられ、「羽間イチジクの伝統を絶やしてはいけない」と、一念発起して彼の地で就農した若者がいた。有志を集い、Bettim Farmと名付け農園を切り盛りしている篠原仁一郎さんです。、今では西日本最大のイチジク農園ではないかといわれているほどです。あまりにも繊細は蓬莱柿なため、市場を経由するなどというのんきなことを言ってはいられません。Benoitへは、Bettim Farmから直送してもらいう、まさに「B to B」ですよ。

 この濃密な味わいの「羽間イチジク」を約2玉使い、カカオの風味が際立つル・ショコラ・アラン・デュカスのショコラと組合せます。この両雄がぶつかるわけでもなく融和するでもない、お互いを引き立て合う魅惑の美味しさ。爽やかなオリーブオイルのソルベが、いい役割を担っています。

Figues d’ici, sauce chocolat et vin rouge, glace huile d’olive

香川県羽間イチジクとショコラ オリーブオイルのソルベ

※ランチとディナーのプリ・フィックスメニュー、デザートとして+1,500円でお選びいただけます。

 

 バランスの良い美味しい料理を日頃からとることは、病気の治癒や予防につながる。この考えは、「医食同源」という言葉で言い表されます。この言葉は、古代中国の賢人が唱えた「食薬同源」をもとにして日本で造られたものだといいます。では、なにがバランスのとれた料理なのでしょうか?栄養面だけ見れば、サプリメントだけで完璧な健康を手に入れることができそうな気もしますが、これでは不十分であることを、すでに皆様はご存じかと思います。

 季節の変わり目は、体調を崩しやすいという先人の教えの通り、四季それぞれの気候に順応するために、体の中では細胞ひとつひとつが「健康」という平衡を保とうとする。では、その細胞を手助けするためには、どうしたらよいのか?それは、季節に応じて必要となる栄養を摂ること。その必要な栄養とは…「旬の食材」がそれを持ち合わせている。

 その旬の食材を美味しくいただくことが、心身を健康な姿へと導くことになるはずです。さあ、足の赴くままにBenoitへお運びください。旬の食材を使った、自慢の料理やデザートでお迎えいたします。

 

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ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

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四国八十八果菜巡り ~図子さんの三豊ナス~

 夏を代表する野菜といえば、「ナス」が間違いなく挙がってくるでしょう。お馴染みの野菜で、一年を通して野菜の棚に並ぶ姿には、ある種の安堵感すら覚えるほど。そんな野菜も、実は日本原産ではなくインド東部といい、紀元前には古代中国に、そして奈良時代には日本へ持ち込まれたといいます。平安時代に編纂された「延喜式(えんぎしき)」には、ナスの栽培方法が綴られているほどに、重宝した野菜でした。

 「親の意見と茄子の花には、千に一つも無駄はない。」という諺(ことわざ)があるように、ナスの花は徒花(あだばな)がなく、全て実を成すといいます。さらに暑さに強く、夏の体調を整える作用をもつとも。なるほど、日本全国に伝播していくことにも納得がいくものです。長い月日の中で在来種として地位を獲得してゆき、育まれた地に馴染んだ品種が誕生してゆく。大正時代には33品種、昭和初期には150品種にまで増えたという。

 しかし、時代は多量生産と効率化を求めるようになる。栽培期間の短かさ、収量の多さ、どのようなお土地にでも対応できる屈強さ、これらの優等生が我々の馴染みの品種「千両ナス」。さらに、種苗会社の並々ならぬ努力の賜物ともいえる「F1(えふわん)品種」の登場です。これは、効率よく見栄えのいい野菜を収穫できるようにと、種苗業者が育種した品種で、遺伝子組み換えなどというものとは違います。この説明は、長くなるので割愛しますが、昔に学んだメンデルの法則を活用したもの。簡単に言ってしまえば、種苗業者が選抜に選抜を重ね、形のそろった野菜を効率よく収穫できるようにと育種したもので、一代限りです。

 よくよく考えてみると、兄弟姉妹であっても、似てはいるものの体格に違いがあるもの。確かに、美味しさを求めるために「規格」というものも必要かもしれませんが、これに「見栄え」というものが加わることで、過度に意識してしまうのでしょう。同じ品種であっても、大きさ形に違いがあってあたりまえのこと。しかし、今は農産物が自然の産物であることを忘れ、工業製品のような感覚に捉われすぎている感が今はあることを否めません。そのため、「見栄え」ばかりを意識してしまうのでしょう。在来種は、均一な形での収穫となると難しい…F1品種であっても、採種してF2になると均一とはなりません。

 今でこそ、都内でも丸ナスや長ナスなどの品種を都内でも見かけるようになりましたが、やはり千両ナスが他を圧倒しています。自分の出身地新潟県は、米どころとして名を馳せていますが、子供の頃には、農家さんが数多(あまた)あるナスを品種ごとに籠に盛り、リアカーを引いて販売をするというのが夏の風物詩でした。出荷しないで馴染みの地元の方々に販売する…新潟県はナスの作付面積日本一であっても、自然任せの露地栽培なために、県別出荷ランキングではトップ10に入らないという事象になるのです。

 日本におけるナスをとりまく環境は、栽培や管理がしやすく、効率よく多く果実を収穫できる千両ナスの仲間、それもF1品種が席巻しています。ハウス栽培で、徹底した管理の下で効率よく収穫できるために、一年中お手頃価格でナスを楽しむことができます。何も否定することではなく、ありがたい話。しかし、このようなナス界の中で、粛々と在来種が「伝統野菜」として今なお栽培されていることも事実。新潟県の「長岡巾着(きんちゃく)ナス」や豊栄の焼いていないけど「やきなす」、「十全ナス」や「鉛筆ナス」などなど。京都の「加茂ナス」や大阪の「泉州水ナス」は、すでに全国区の知名度ではないでしょうか。

 なぜ、収量が安定せず、手間暇のかかる在来種のナスを栽培しているのか。一口お召し上がりいただくと、その理由がわかると思います。そう、美味しいからに他なりません。では、なぜ日本全国に伝播しないのか?伝統野菜として名を遺す地ならではの風土が、他に類を見ない美味しさを導いてくる。さらに、誰でも彼の地では美味しい果実を実らせることができるわけでありません。そこで、今回は自分も知らなかった、香川県の伝統野菜のそれもこだわりの栽培者の逸品のご紹介です。

 

「図子さんの三豊ナス」

 

 我々がナスと呼んでいるものは、もちろんナス科に属します。このナス科は、思いのほか馴染みの野菜が多いもので、トマトやピーマン、ジャガイモまでも。プロ農家さんばかりではなく、家庭菜園でも栽培できる野菜ばかりで人気が高い。そのため、多くの栽培ノウハウを紹介した本があるばかりか、ネットでも情報がでるわでるわ。ナスに関しては、「比較的栽培がしやすい」と紹介されています。

 では、三豊ナスも?ということで、Eテレの「やさいの時間」にひっぱりだこで、NHKテキスト「やさいの時間」に毎回のように栽培の秘訣と投稿している野菜栽培のプロフェッショナル、東京農業大学農学部農学科の髙畑健教授に三豊ナスについて聞いてみました。

「三豊ナスですが、私自身栽培したことはありません。知っている内容ですと、確か香川県での大きな丸ナスですよね。特徴としては、普通のナスより2~3倍も大きくなるため、収穫までの日数が長くなること、日持ちがしない(実がやわらかく、皮が薄い)ので、全国には出回りにくいと思われます。地元での消費がほとんどだとか。ですが、とろけるような食感で、とても美味ですよね。栽培は、枝の整理が重要で、1株から数多く採れないので希少なものになります。一つ一つの果実を立派にする必要があるので、葉掻きや肥料の管理など、手間を掛けなければいけません。そういったことで、全国に果実の普及がしにくいのだと思われます。」

 

 野菜を識(し)ることで、いかに野菜を効率よく育て上げるかを考え、家庭菜園でも失敗しないようにと、「やさいの時間」で我々に栽培方法を教えてくれる髙畑教授。彼に、ここまで言わしめる三豊ナスとは?そうとう手間暇かかる上に、栽培が難しいのでしょう。今までの野菜/果物栽培の歴史の中で、こういう面倒なものは誰も手を出さなくなり淘汰されてゆくのが世の常(つね)。しかし、今なお栽培が続けられている理由は、ひとえに「美味しい」からに他なりません。だからといって、誰が育てても美味しくなるのか?もちろん、そんなわけがありません。

 香川県の八百屋「sanukis」鹿庭さんは、「香川で八百屋をするなら三豊茄子は必須。」とまで言い切ります。厚めに切ってじっくり焼き、その上に塩をパラパラッとふりかけるだけで、極上の茄子ステーキが完成します。とろけるかのような食感に心躍らせ、口中に広がる甘味と旨みに驚愕するでしょう。ということで、彼に三豊ナスの魅力を語っていただこうと思います。と、その前に、上の画像の三豊ナスをご覧ください!彼の手に収まらないほどの大きさですよ!

 「三豊茄子は香川の郷土野菜ではありますが、そのルーツは明確にはなっていないのです。通説では昭和初期に朝鮮半島から種を持ち帰った農家さんが栽培を始めたそうなのですが、記録が残っているわけではないのです。昭和初期といえば、案外最近なのですが、栽培や流通の記録がありません。」

 とはいいますが、三豊ナスに魅せられた鹿庭さんが、「そうですか」と終るわけがなく…「三豊ナスの三豊という名前の由来は、今の香川県の西部に広がる三豊市…ではありません。三豊市の前、三豊郡という地名がありました。三豊郡は大きく今の香川の西の端の観音寺市というところも含まれていました。種を持ち帰った農家さんが、三豊郡のどこで栽培を始めたかはわかっておりません。しかし、三豊郡という郡名は明治32年に三野郡と豊田郡が合併して生まれた名前で、もし初めから三豊ナスと呼ばれていたのなら、少なくとも明治32年よりは後に入ってきたのではないかと…」

 往古より連綿と受け継がれてきたナス栽培を考えると、明治にしろ昭和にしろ、そう古い野菜ではありません。まだ千両ナスが跋扈(ばっこ)する前、全国で在来種のナスが群雄割拠するような時代に、この農家さんは何かのご縁で三豊ナスに出会い魅せられたからこそ、日本に持ち帰ったのでしょう。はたまた、在来種の「偶発実生(ぐうはつみしょう)」であるかもしれません。そうなると歴史はもっと深く深くなる…

 どのような歴史があろうが、三豊ナスは香川の西、西讃(せいさん)で栽培が始まりました。しかし、美味しいが「実がやわらかく皮が薄い」ために流通が難しい。そのため、全国どころか、同県東に位置する東讃(とうさん)はもちろんのこと、西讃お隣の中讃(ちゅうさん)ですら、あまり出回らないほどだったといいます。まさに流通地域が、ここまで限定されているからこそ、正真正銘の郷土野菜なのでしょう。

 「今でこそ香川の中心地である高松の市場には入ってきますが、それでも高松のスーパーに並んでいる姿はほとんど見かけません。県内で流通されるようになったのもここ20年くらいのものです。」と鹿庭さん。さらに「1980年に、香川県三豊市出身の大平総理大臣が、三豊ナスを≪大平ナス≫と名付けて関西圏に売り出したことがありましたが、定着しませんでした。やはり、流通や店頭での販売が難しかったのだと思います。」と。

 収穫できる果実の数が少なく収益性が悪い、さらに流通の難しいとくる。さらに追い打ちをかけるように、「現代の流通のカタチ「規格」にまったく合わない特徴をもつのです。それは、同じ木からなる果実の形が、いかんせん不揃いなのです。大きく分けて巾着型と電球型。細かく分けるとそこに卵形というのが入ります。なぜそのような違う形ができるのか、明確にはわかっていません。僕がみたところ木に勢いがある時は巾着型というのが増える気がします。三豊茄子を栽培している農家の中でも本来の形はどっちだ、という派閥のようなものがあるとかないとか…」と鹿庭さんは教えてくれました。

 「栽培に関しては、成長が遅く、花が咲いてから収穫までの期間は千両なすの2倍!収穫量といえばその何分の1にしかならない…まして、果実の大きさは、お馴染みのナスの3倍もあり、皮が薄いため、傷がつきやすく萎(しな)びやすい。さらに、大きさと形が不揃いなため、出荷用の箱に数も入らず、トゲが鋭いため梱包する際にチクリと手指に刺さるリスクまである。今のような梱包技術がない昔はなおのこと、流通には向かなかったのです。

 農を生業とする場合、まず栽培進目に三豊ナスの名は挙がらない。このナスを識る農家さんは、出荷用には一般的な茄子を選び、家庭で楽しむために三豊ナスを栽培してきたといいます。世間一般のナスの規格なるものに適合が難しく、栽培管理に手間がかかるにもかかわらず、西讃の地で粛々と栽培され続けてきました。なぜか?このナスが美味しいからですよ!

 三豊ナスに魅せられ、愛(いと)おしく思う農家さんの中に、この美味しさを皆様にも届けたいと思う有志がでてきた。三豊市の財田町で同志が集い、「三豊ナス研究会」が発足。共に苦難を乗り越え、切磋琢磨しながら栽培のノウハウを共有していく。栽培に関わる人が増えるほどに、その情報は集まりだす。とはいえ、並々ならぬ労力を要する品目なだけに、たやすく人が集まることはない。新進気鋭の若者も未来を担う希望ではあるが、まずは経験豊富なプロフェッショナルを必要とした。

 そこで、白羽の矢がたったののが、同町内で丁寧な農作業で定評のある図子さんだった。三豊ナス研究会の熱心な誘いが功を奏したのか、会社勤めと稲作との兼業農家から専業農家へと移るとき、今から10年ほど前のこと、彼は夏の栽培品目に三豊ナスを選んだ。ここから、彼の手間暇惜しまぬ三豊ナス栽培が始まるのです。そして、八百屋「sanukis」鹿庭さんが、図子さんと出会った…

 図子さんの畑は西讃の三豊市財田町にあります。西讃というだけに、高松市の八百屋sanukisからは、車でゆうに1時間以上を要する。それでも、鹿庭さんは毎日のように彼も元に集荷に向かいます。なぜ?「日常のように三豊茄子が、(高松市在住の方々の)食卓に姿を見せてほしいから」と、さらりと言う。そして、「三豊ナスなら何でもいいわけではなく、図子さんが丹精込めて育てたものを、多くの方に食べていただきたいと思うのです。」と。さらに、理由は「図子さんの畑を見れば一目瞭然!」と鹿庭さんは言う。そこには、彼の真面目で几帳面な性格、そしてと三豊茄子への並々ならぬ愛情が表れているのです。

 冒頭でご紹介した髙畑教授は、「一つ一つの果実を立派にする必要があるので、葉掻きや肥料の管理など、手間を掛けなければいけません。」と教えてくれました。では図子さんはどのように栽培しているのかを、少しご紹介させていただきます。

 畝(うね)に灌水用のパイプを通し、丁寧に白ビニールのマルチシートを張っている。雑草の繫茂を防ぐとともに、水分の無駄な蒸発を防ぐことで、少しでも土の保湿を維持することを目的としている。さらに、太陽光による地熱の上昇を緩和するために色は「白」。そして、畝間は防草シートで覆われている。ナスと雑草による、土壌中の養分や水分の奪い合いを回避することができる上に、草取りの手間がなくなる。

 草取りの労力は、並みならぬものがあります。皆様も庭の草むしりの経験されていることでしょう。まして、炎天下での作業は、他の季節とは比べることができいないほどに体力を消耗するばかりか、熱中症の危険すらあります。庭ではなく畑という規模であればなおのこと。畑全体をシートで覆うことで、コストはかかるが、どれほどの労を省けることか…早合点してはいけません。ここまでしなければ、三豊ナスと対峙できないということです。

 通常のナスの3倍も大きくなるということは、しっかりと支柱に誘引して支えなければ枝が折れることになります。さらに、果実に養分を送るために、光合成の役目を終えた古い葉を搔(か)き、脇目を摘まなければなりません。収穫が終わるまでの期間、まるで終わりがないかのようなこの作業を延々と繰り返すのです。

 さらに、三豊ナスは、多くの水を欲する。図子さんは、ポンプの動力ではなく、貯水槽の高さを利用して、水を落とし込むようにする灌水システムを自作しています。500Lの水が入る貯水槽を軽トラックの荷台に載せ、用水路の水をタンクに汲み入れ畑に戻る。その荷台にある貯水槽に、灌水パイプに繋げて水を送り出すのです。

 夏の盛りであれば、灌水を1日でも切らすと、三豊ナスは艶がなくなり外皮が硬くなるという。そして、種までもが硬くなり、食べる際に口に残るようになる。そうならないように、図子さんは多い時は1日4回灌水をしてくれています。さらに、ナスの葉や実の状態を見て、適切なタイミングで肥料を与え、勢いが弱まらないようにすることも欠かさない。このように、水と養分を切らさないようにこまめな管理を徹底するのです。

 草むしりをしている時間を省くことで、株の管理に時間を費やす。コストをかけてマルチや防草シートで畑をおおわなければ、とてもとても株の管理が行き届かないのです。それほどまでに手間暇を必要として、やっと収穫したのが三豊ナスなのです。しかし、図子さんはここで終わらない。収穫したナスを、食べる人のことを想いながら丁寧かつ厳しい選別を行っているのです。ご覧ください!この愛情あふれる眼差しを。この図子さんの想いが、彼の育てあげた三豊ナスに宿るのです。

 前述した「三豊郡」の中に登場する観音寺市の西隣は愛媛県、その東隣が三豊市です。その三豊市の南側、讃岐山脈を望むことのできる地が、財田町です。この名の示す通り、讃岐山脈に源流をもつ財田川がこの町を横切り、観音寺市へと向かい、瀬戸内海にそそぐ。財田町は、この財田川の恩恵を十二分に受けることで美味なるお米の産地でもある。図子さんの活用する用水路の水源も、この川によるもの。さらに、彼の地は盆地ならではの特徴が大きく、県下でも最高気温を記録するも朝晩は涼しいとくる。この寒暖の差が、美味なる野菜を育むのだという。

 だからといって、誰しもが美味なる三豊ナスを育んでいるのかというと、そうではりません。「茄子の花には、千に一つも無駄はない。」と冒頭で紹介いたしました。徒花がないというのが、ナスの特性なのですが…やはり昨今の猛暑は、屈強なナスであっても夏バテしてしまうようなのです。図子さんの圃場も例外ではありません。ナスが花を落としてしまっているのです。三豊ナス仲間の農家さんから、「図子さんは手をかけすぎるから実が落ちるんぞ」と言われたそうです。この言葉に栽培技術的根拠はありません。いうなれば、傍(はた)から見ても図子さんの手のかけようは並々ならぬものとの証ということです。これこそが、図子さんの三豊ナスが、何人をも魅了する理由なのです。

 多くの三豊ナス農家さんが9月の終わり頃には品質が落ち収穫をやめてしまいますが、図子さんは11月の終わりまで収穫できています。寒くなると夏のような柔らかさはなくなりますが、成長がゆっくりとなるので甘みは増すというのです。まさに秋ナスの醍醐味を堪能できます。

 

 もう一人、鹿庭さんが魅せられた三豊ナス栽培者が、観音寺市柞田(くにた)町にいます。A-styleの秋山さんという、まだ40代のパワフルな農家さんです。三豊ナスの美味しさに惚れ込み、栽培品目に加えたといいます。図子さんのように、灌水と肥料管理を徹底されていて、常にやわらかく大きな三豊ナスを作り続けています。栽培者が減っていく中で、次の世代を担ってくれる香川の希望の星。地元の飲食店からの絶大なる信頼があることが、彼の育て上げたナスが、どれほど美味しいかを物語っています。字数の関係で、秋山さんのご紹介は、割愛させていただきます。

 夏から初秋にかけて日を経るごとに、図子さんと秋山さんの三豊ナスは美味しさを増してくるのです。それも、徹底した栽培によるもので、そうそう真似できるものではありません。やはり、栽培者の思いが産物に宿る、県外にはほぼ流通しない香川の宝をぜひ楽しみください!

 

 ところで、未知なる三豊ナスをどのように調理するのがいいのか?という疑問が頭をもたげます。そこで、八百屋sanukisでお弁当を担当している長尾さんに聞いてみました。定休日以外は、毎日のように旬の野菜を使ってお弁当をつくっているだけに、お勧め料理がでるわでるわ…そこで、まずは試していただきたいものを紹介いただきました。

 三豊ナスの特徴はそのフォルムと大きさ。そしてとてもジューシーで柔らかく、加熱するとトロッとした食感で、間違いなく主役になれる野菜!県内の飲食店さんからも絶大な人気を誇る三豊茄子です。お勧めお召し上がり方が、やはりはステーキです!1.5~2cmくらいの厚さにカットし、表面に賽の目に切り込みを入れて、オイルでソテー。味が濃いので、ぜひお塩だけで食べてみてください。麻婆茄子も千両なすで作るよりも食べ応えがあっておいしいです。

 さらに生でも食べられるので、浅漬けやナムルにも。包丁でカットしてもいいですが、手で割くと表面が凸凹して味なじみがよくなります。ごま油とお塩で軽く揉み込むだけですぐに食べられます!三豊茄子の魅力と味力をぜひ味わっていただきたいと思っております。

 香川では夏になると三豊茄子を使ってくれる料理人さんたちがたくさんいます。シンプルに焼いたり、揚げたり、ソースにしたり、その使い方、味付けはさまざまで、メインになったり引き立て役にもなります。sanukisはそんな料理人さんたちが、品質も味もいい三豊茄子を使えるようにと、ほぼ毎日集荷に行き、店頭に並べます。毎日のように予約も入ります。そして店舗では、「探してもなかなかない三豊ナスが、sanukisには毎日あるので助かります。」と、手に取っていただける主婦のお客様もいらっしゃいます。鹿庭さんは、栽培者の想い、そして購入者のご要望に応えるべく、今日も車に乗り込み、西讃へと集荷に向かっていることでしょう。そこに美味なる三豊ナスがあるから…

 

 バランスの良い美味しい料理を日頃からとることは、病気の治癒や予防につながる。この考えは、「医食同源」という言葉で言い表されます。この言葉は、古代中国の賢人が唱えた「食薬同源」をもとにして日本で造られたものだといいます。では、なにがバランスのとれた料理なのでしょうか?栄養面だけ見れば、サプリメントだけで完璧な健康を手に入れることができそうな気もしますが、これでは不十分であることを、すでに皆様はご存じかと思います。

 季節の変わり目は、体調を崩しやすいという先人の教えの通り、四季それぞれの気候に順応するために、体の中では細胞ひとつひとつが「健康」という平衡を保とうとする。では、その細胞を手助けするためには、どうしたらよいのか?それは、季節に応じて必要となる栄養を摂ること。その必要な栄養とは…「旬の食材」がそれを持ち合わせている。

 その旬の食材を美味しくいただくことが、心身を健康な姿へと導くことになるはずです。さあ、足の赴くままにBenoitへお運びください。旬の食材を使った、自慢の料理やデザートでお迎えいたします。

 

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ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

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2025年7月2日に「半夏生(はんげしょう)」を迎えました…どういうこと?

 2025年6月21日の「夏至(げし)」から数えて11日目、7月2日に「半夏生(はんげしょう)」を迎えました。古人は、見た目に分かりやすい月の満ち欠けによって「(暦の)日」を理解し、月の朔望により「(暦の)月」を理解していました。しかし、地球の太陽周回軌道の「一太陽年」(現行歴)と、月の地球周回軌道の旧暦とでは、なかんかの偏差が生じてくる。そこで、この帳尻を合わるように閏年(うるうどし)を設け、約一月を定期に加えています。

 現行歴のように太陽暦であれば、一太陽年が同じであるために、閏年には2月29日という一日を加えるだけで、一太陽年と暦の誤差を調整するだけですみます。しかし、約

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 一月も加わるとなると、「おいおい」となるわけです。そこで、古人は季節の目安として欠かすことのできないものが「春分」や「夏至」に代表される「二十四節気(にじゅうしせっき)」を導入するのです。

 この二十四節気の基準となる重要な目安が、昼夜の時間が同じになる「春分」です。これと対をなすのが「秋分」。さらに太陽が一番長く姿を見せる「夏至」と、対となる「冬至(とうじ)」。一太陽年が、365日ピッタリではないので、この春分も一日だけずれることもあります。

 この暦の話は、ブログで書いているので、お時間のある時に以下よりご訪問いただけると幸いです。

 冒頭でご紹介した「夏至」が二十四節気であるならば、「半夏生」は雑節(ざつせつ)と呼ばれています。農耕民族である我々のご先祖様は、これらでは物足りないということで、日本の気候風土に合わせた標(しるべ)をこしらえました。それが、「雑節」です。春分秋分の日を中日に前後3日の7日間が「彼岸(ひがん)」です。なんとなく仏教色が濃くインドから伝わったかのようですが、実は日本独自の考え方なため、雑節です。

 雑節は、農や漁を生業にする者のとっては気をつけなければならない日が刻まれています。立春から数えて88日目の日の「八十八夜」は、「八十八夜の別れ霜」「八十八夜の泣き霜」といい、暖かくなったからといって、まだまだ遅霜には気をつけなけなさいと教えてくれる。さらに、210日目は「二百十日(にひゃくとうか)」は、野分(のわけ)が訪れるので海には出るなと教えてくれる。野分とは、いまで言う台風のこと。なんという先人達の知恵なのでしょうか。

 では、「半夏生」とは、いつのことか?さらに古人は我々に何を伝えようとしているのでしょうか?

 例年であれば、半夏生の数日後に梅雨が明け、夏の猛暑が到来します。稲作には豊富な水資源が必要なため、梅雨という長雨はまさに天の恵みともいうべきもの。そして梅雨明けと同時にサンサンと降り注ぐ陽射しが成長を促します。トラクターが姿を見せるまで、田植えは当然ながら手作業で行っていました。どれほどの時間と労力を要したことか…「ちゅう(夏至)をはずせ、はんげ(半夏生)は待つな」というように、田植えを終える目安が半夏生だったようです。これ以降は、「半夏半作」といい、十分な稲穂になるには日数が足りないため、無駄ですよと教えてくれる。

 この田植えの目安以外にも、半夏生の日には「毒が降るから井戸に蓋をしろ」やら、「半夏生の日に採れた野菜などは食べてはいけない」と言伝(ことづて)されています。半夏生の頃ともなると、梅雨も後半へと移り、大雨に見舞われることが例年のこと。西日本では、この大雨のことを「半夏雨(はんげあめ)」といい、この雨により川より溢れ出る水を「半夏水(はんげみず)」という。

 日増しに暑くなる中で、降り続く雨は、カビや雑菌が繁殖するには好都合であり、疫病が蔓延する危険すらあります。半夏雨により濁流となった川水は、飲み水には適さないほど雑菌を含有していることでしょう。それが、井戸に入り込むことで汚染される。さらに、半夏水となって溢れた水が、病原菌を運ぶ役割を担い、野菜に触れることで、人々の口々へと移りゆく。

 境内に設置された茅の輪をくぐることで、病気や禍を払う。6月の終わりに執り行われる「夏越の祓(なごしのはらえ)」という神事があります。高温多湿に加え、梅雨時期(田植え)の疲れが癒えない中で、無事息災に夏を乗り切ることは、神頼みをしなければならいほどに厳しいものだったことの表れです。

 古人は、人々に注意喚起を促すため、半夏(はんげ)という植物に毒があることから、この半夏生には「毒がふる」と。さらに、半夏生の時期は、収穫という農作業をせずに、家でゆっくり休みなさい。そして、病原菌の付着しやすい時期だからこそ、「この日に採れた野菜を食べてはいけない」と言い伝えたのではないでしょうか。諸説ある中で、真相は分かりませんが、あながち間違ってはいない気がします。

 さて、毒だ毒だと迷惑被っている「半夏」という植物。別に半夏にとって毒が有用であるわけでもなく、たまたま人間が口にすると具合が悪いというだけのこと。この可哀想ないや多々ある夏草の中で、歳時記の中に名を遺すいう「半夏」とは、いったいどんな植物なのでしょうか?この話は、次回に持ち越させていただきます。

 

 「半夏生」の与(くみ)する二十四節気の「夏至」の後には、「小暑」さらに「大暑」と1年で最も暑い時期が続きます。そこまで暑い暑い言わんでもわかるわ!と愚痴の一つも言いたくなるところですが、ここはカレンダーに頼ることなく、自然の機微を捉えるように、柔軟に対応してゆかねばなりません。

 空梅雨とはいうものの、梅雨明けはまだ先のこと。自分の体力を過信し、無理な行動は禁物です。十分な休息と睡眠、こまめな給水をお心がけください。木陰に入り、葉の間を抜ける心地よい薫風、陽射しにきらめきながら重なり合う木の葉、なんと美しい光景か、と夢心地に浸るのも良いものです。しかし、夢の(意識の無くなった)世界から抜けることができなくならないよう、ゆめゆめお忘れなきようにお気をつけください。

 バランスの良い美味しい料理を日頃からとることは、病気の治癒や予防につながる。この考えは、「医食同源」という言葉で言い表されます。この言葉は、古代中国の賢人が唱えた「食薬同源」をもとにして日本で造られたものだといいます。では、なにがバランスのとれた料理なのでしょうか?栄養面だけ見れば、サプリメントだけで完璧な健康を手に入れることができそうな気もしますが、これでは不十分であることを、すでに皆様はご存じかと思います。

 季節の変わり目は、体調を崩しやすいという先人の教えの通り、四季それぞれの気候に順応するために、体の中では細胞ひとつひとつが「健康」という平衡を保とうとする。では、その細胞を手助けするためには、どうしたらよいのか?それは、季節に応じて必要となる栄養を摂ること。その必要な栄養とは…「旬の食材」がそれを持ち合わせている。

 その旬の食材を美味しくいただくことが、心身を健康な姿へと導くことになるはずです。さあ、足の赴くままにBenoitへお運びください。旬の食材を使った、自慢の料理やデザートでお迎えいたします。

 

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一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。皆様のご健康とご多幸を祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com

2025年Benoitの夏!「夏熱れ、Benoit自慢の料理でのりきれ!」のご案内です。

草熱れ(くさいきれ)」

 生きとし生けるものにとって欠かすことのできないものが、空気と水、そして太陽光です。とはいうものの、何事にも限度がある。これから続くであろう猛暑な日々に、昆虫や動物であれば日陰に逃げることも許されるが、植物であるとそうはいかない。屈強な樹々とは違い、草となるとあまりにも弱弱しさを感じるものです。そこで、古人は耐え忍んでいるのだとみた。

 そこで、夏の強烈な陽射しを浴び、むわっとする熱気が叢叢(むらむら)よりムラムラと立ち上る光景を、古人は「草熱れ」と表現しました。草が生い茂ることを「叢叢(そうそう)」といいますが、草叢(くさむら)というように、ここはあえて「叢叢(むらむら)」と読みたい…

 「草熱れ」の言葉からにじみ出る、真夏の熱気と夏草の力強さ。過ごしやすい夏などありようもなく、それが夏であり、ありのままを受け入れなさいと、夏草は教えてくれているのでしょうか。どれほど美しい言葉で表現されようとも、暑いものは暑く、知らず知らずのうちに体力を奪ってゆくものです。そこで、皆様にはBenoitでは旬の食材を美味しくお召し上がりいただくことで、今夏の「熱れ」を乗り越えていただきたく、「夏熱(いき)れ!Benoit自慢の料理でのりきれ!」をご紹介させていただきます。

 

夏熱れ、冷製ヴィシソワーズスープでのりきれ!

 冷たいスープで火照った身体を内側から冷まし、食欲を呼び覚ます。かつてアメリカ合衆国で誕生したという冷製「ヴィシソワーズスープですが、どうも英語っぽくはないネーミングではないですか。それもそのはず、考案者であるシェフはフランスのVichy(ヴィシー)の出身だった。この町は、フランスを悠々と流れるロワール川を遡り、遡りさらに遡り、フランスの中央部辺りにまで達したところにヴィシーの街があります。そこで、子供の頃にお母さんが冷たく供してくれたジャガイモのスープが原点にあるのだといいます。

 お馴染みの食材であるジャガイモですが、Benoitはこの食材にもこだわりたい。今回は、高知県高知市に隣接する吾川郡(あがわぐん)いの町(ちょう)に畑を有する水田Farmさんが、丹精込めて育て上げたジャガイモ「デジマ」です。畑に何も植わっていないときは、まるで赤いフィルター越しに景色をみているかのような錯覚を覚えるほど。この赤土は、ミネラル豊富という利があるものの、湿ると固まる性質がある。そこで、彼らは、意図的に腐植物質を土壌中に増やすようにしてこれを改善。この肥沃な地で、彼らはジャガイモ「デジマ」を育て上げる。それを秋に収穫し、自分が全幅の信頼をよせる八百屋sanukisさんが丁寧に冷蔵庫で寝かせに寝かせ、旨さを最大限に引き出した逸品をBenoitに送り出してくれているののです。そして、これが冷製ヴィシソワーズスープへと姿を変える。

 ジャガイモという馴染みの素材が持ちうる繊細な旨味を生かすために、クリームを極力減らし、ミルクでのばしてゆきます。これだけでも美味しいのですが、そこへプルンと鶏ブイヨンジュレが加わることで、味わいに深みが増してきます。そして忘れてはいけないものが、バターをたっぷりつかったクルトンです。「後のせサクサク」とすることで、香ばしさと心地よい食感が生まれるのです。

 全てを混ぜるように馴染ませてお召しあがりいただくのも良いですが、敢えて混ぜないのも一興なり。スプーンですくう場所場所によって多彩な表情を見せてくれます。色とりどりに咲きほこるアジサイならぬ、Benoitヴィシソワーズスープの味彩をお楽しみください。このヴィシソワーズスープ、次に魚のスープをお選びいただいても自分は止めません。というよりも、お勧めしたいぐらいです!

VICHYSSOISE rafraîchie, garniture taillée

ジャガイモの冷製スープ “ヴィシソワーズ”

※ランチとディナーのプリ・フィックスメニュー、前菜としてお選びいただけます。

 

夏熱れ、日本が夏ならばフランスも夏!南仏の伝統料理「Soup de Poisson」でのりきれ!

 Soupe de POISSON(魚のスープ)といえば、南フランスの港町マルセイユの伝統的な漁師料理です。ブイヤベースとは違い、煮込んだ魚を食することをせずに、旨味をスープに出しきったもの。Benoitでは、魚そのものの美味しさをお楽しみいただきたく、エビ・カニ・貝類を一切加えず、ワインも使わず、じっくりと時間をかけてこしらえてゆきます。

 このスープを仕込む魚は、「POISSON de roche」という表現でまとめられます。「roche(岩)」だけに「岩魚」やら「磯魚」との訳をあてています。確かに、荒波の磯でもまれにもまれた魚種は美味しいものが多い。しかし、旨味の多い魚が磯ばかりではないことを、深い魚文化の日本人は知っている。

 とはいえ、Benoitのネットワークをもってしても、日本全国から選りすぐりの旬の魚を、数種にもわたり鮮度良く仕入れることは不可能です。そこで、築地から始まり今は豊洲へ、ゆうに80年を超える歴史を持つ老舗魚卸「大芳」の宇田川さんの目利きに頼ります。

 今は、北九州や四国を水揚げ地とする、マゴチにホウボウ、オニカサゴ。さらに、小鯛にイトヨリダイ。7月も後半になると、北日本青森県や北海道からオニカジカも仲間入りすることでしょう。小鯛やイトヨリダイ以外の4種の魚は、似ても似つかぬ容姿ですが、分類上では「カサゴ目」です。ごつごつだったり、とげがあったり、ぬるぬるしていたりと、自分のような素人が捌くには難儀な魚たちで、思いのほか可食部が少ないもの。しかし、見た目からでは想像もつかないほど繊細で美味なる身質なのです。さらに、そのごつい頭や骨からは、得も言われぬ上質な旨味をとることができる。

 どう調べても確証は得られませんでしたが、「roche」とは、そういう「ごつごつの魚」を総称して名付けたのではないとも思うのです。しかし、オニカサゴにオニカジカ…「オニ」「オニ」と、見たこともないのに、鬼にも魚にも失礼千万な話…

 皆様の目の前で、スープがそそがれた直後から、磯の香りに包まれます。濃厚な茶色を帯びた深みのあるオレンジ色の液体は、透明感こそないですが輝きがある。濃厚ながら、甲殻類のような濃さではなく、さらりとした感さえあるものの、余韻に感じる魚の美味しさに酔いしれ、猛暑に疲れた体を癒してくれるはずです。一口お召し上がりいただき、目を閉じれば潮騒(しおさい)が耳に届き、目を開ければBenoitの窓越しに地中海が望める…かもしれません。

Soupe de poisson de roche, rouille et croûtons aillés   

魚のスープ ルイユとクルトン

※ランチとディナーのプリ・フィックスメニュー、前菜として+1,500円でお選びいただけます。

 

夏熱れ、脂がぱんぱんにのったイサキでのりきれ!

 東北地方以南の海藻生い茂る岩礁域を棲み処にしているイサキ。淡白な味わいの白身で、塩焼きで食べるというイメージをお持ちの方も多いと思います。しかし、旬の名産地のイサキともなると、この固定観念が覆ります。対馬海流や豊後水道でもまれにもまれ、豊富な小エビのようなアミ類やシラスなどの仔魚をたら食(は)んでいるからこそ、きれいな脂がのりにのった黒光りするパンパンの体系なのです。だからこそ、長崎県大分県のイサキは、他に類を見ないほどの美味しさを誇ります。参考までに、魚の鮮度は目の澄み具合で推し量るといいますが、イサキ鮮度に関係なく目が白濁するため、参考になりません。

 Benoitだけに、お刺身で楽しむわけにはゆきません。丁寧に下ごしらえされた、見るも美しい切り身に、最後の一手間である「焼き」という、簡単そうで奥の深い最後の工程が加わります。食材が持ちうる美味しさが、下ごしらえが、全て水泡に帰するかもしれません。「生」ではないが焼き過ぎない。言うは易く行うは難しとは、このことでしょう。職人としての経験に裏打ちされた「焼きの技」が、イサキのさらなる美味しさ引き出すのです。

 この時期のイサキは、「麦わらイサキ」と呼ばれ、夏を告げにくる魚だといいます。そこで、新樹を想わせるような青々とした夏を代表する野菜を添えたいものです。ズッキーニに、インゲン豆やツルムラサキ空心菜などの旬を迎えている緑野菜を細かく切り混ぜ、イサキの下に広げる。野菜それぞれの内包する甘さと心地よいヴィネガーの酸味が、これほどまでに相性が良いものだったのかと思わずにはいられません。

 イサキは「梅雨イサキ」とも呼ばれています。梅雨時期の寒暖乾湿の差が厳しい日々が、知らず知らずのうちに体力を奪ってゆくものです。そこで、夏の到来を教えてくれたイサキと夏の緑野菜を美味しくいただくことで、乗り切ろうではありませんか。旬の食材には、今我々が欲している栄養が満ち満ちているのですから。そうそう、Benoitのイサキは、7月末で夏を告げ終わります!

ISAKI au plat, légumes verts, sucs de cuisson

イサキのソテー 緑野菜

※ランチとディナー、ともにプリ・フィックスメニューの魚料理としてお選びいただけます。

 

夏熱れ、日本が夏ならばフランスも夏!南仏の逸材「Agneau de Lozère」でのりきれ!

 「品質と特徴が、特殊な地理的環境に起因する」という大原則のもとに、EU加盟国で批准されているのがAOP(原産地呼称保護)。この厳格な基準よりも少しだけゆるくしたものがIGP(Identification Géographique Protégée / 地理的表示保護)というもので、「生産地に起因する品質、社会的評価、特徴がある」という解釈です。基準が緩和されたとはいえ、もちろん生産地が限定され、栽培・飼育に厳しい条件があるのです。

 今回、Benoitに届いている仔羊は、このIGP認定を受けている「Agneau de Lozère (アニョー・ド・ロゼール)」です。南フランスに位置する、かつてのLanguedoc-Roussillon(ラングドック・ルーション)地域圏とMidi-Pyrénées(ミディ・ピレネー)地域圏が合併してできたOccitanie(オクシタニー)地域圏の、北東に位置するのがLozère(ロゼール)県。この山岳部は、石が多く痩せた土壌で乾燥した気候から、2000年以上も前から羊の飼育が盛んだったという歴史を持ちます。

 この飼育環境のもとで、自然に乳離れするまで母羊に哺乳させ、人工飼料は与えないなどという、厳しい規定をクリアしたもののみがアニョー・ド・ロゼールを名乗ることができます。その肉はピンクがかった白色が美しく、肉質は絹のように滑らかで、きめが細かく引き締まっており、脂肪は硬く、ほのかに草の香りがする気がします。

 仔羊は丁寧にトリミングを施し、背肉を表面に焼き色を付け、ふつふつとしたバターをふりかけながら、ゆっくりゆっくり熱を加えてゆく。この魅惑的な香りをどう表現したものか。表面には美味しそうな焼目がつくが、中はまだ生のままです。肉が内包している温まった肉汁を利用し、中からじっくり熱がゆきわたるように、温かい肉部屋で休ませロゼ色に焼きあげます。この美しい焼色なくして、仔羊の美味しさを味わえないでしょう。

 トマト、ズッキーニ、ナスにピキオス(バスクパプリカ)と彩り豊かな夏野菜にパルメザンチーズを振りかけオーブンへ。チーズが溶けてふつふつとしたところで、仔羊とともに盛り付けます。目の前に運ばれてきた時、仔羊の焼き色と夏野菜のグラチネの色のコントラストが目を引き、甘い野菜と焼いたパルメザンチーズの香りが漂います。そこへ、仔羊の旨味の凝縮したソースを、そっとお肉へかけてゆく。全てが一堂に会する時、なぜシェフがお勧めするのか、お分かりいただけるはずです。

Agneau rôti, légumes d’été légèrement gratinés 

フランス産仔羊のロースト 夏野菜のグラチネ

※ランチとディナーのプリ・フィックスメニュー、主菜として+2,000円でお選びいただけます。

※産地が変更になることもあります

 

 バランスの良い美味しい料理を日頃からとることは、病気の治癒や予防につながる。この考えは、「医食同源」という言葉で言い表されます。この言葉は、古代中国の賢人が唱えた「食薬同源」をもとにして日本で造られたものだといいます。では、なにがバランスのとれた料理なのでしょうか?栄養面だけ見れば、サプリメントだけで完璧な健康を手に入れることができそうな気もしますが、これでは不十分であることを、すでに皆様はご存じかと思います。

 季節の変わり目は、体調を崩しやすいという先人の教えの通り、四季それぞれの気候に順応するために、体の中では細胞ひとつひとつが「健康」という平衡を保とうとする。では、その細胞を手助けするためには、どうしたらよいのか?それは、季節に応じて必要となる栄養を摂ること。その必要な栄養とは…「旬の食材」がそれを持ち合わせている。

 その旬の食材を美味しくいただくことが、心身を健康な姿へと導くことになるはずです。さあ、足の赴くままにBenoitへお運びください。旬の食材を使った、自慢の料理やデザートでお迎えいたします。

 

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ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

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