kitahira blog

徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

Benoit「2020年1月の特選プランとお勧め料理」のご案内です。

田鶴(たづ)のすむ 沢べの蘆(あし)の したね溶け みぎは萌えいづる 春は来にけり  大中臣能宣(おおなかとみよしのぶ)

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 詠者は平安時代中期に活躍していた歌人。彼が、ある年の祝賀の屏風に添えた歌だといいます。沢のほとりに枯れた姿を残す蘆の群生。その株元を覆っていた雪や氷も溶けはじめ、水際には萌えいずる若草が、まるで春の陽射しに誘(いざな)われているようだ。新春を迎えた喜びと希望を、萌える若草に託し言祝(ことほ)いだのでしょう。

 ところで、「田鶴」とは、どんな鳥なのでしょうか?この答えと、Benoitでの自分の抱負を語らせていただきます。お時間のある時、以下よりご訪問いただけると幸いです。

kitahira.hatenablog.com

 

 綿々と繰り返される自然のサイクルは、寒暖乾湿の差を生み出し、我々に「四季」という概念を刷り込みました。日々の生活に大きな影響をあたえるものですが、あまりにも身近な存在だからこそ、その自然の機微を見過ごしてしまいがちです。しかし、草木は自然から諭されたかのように、芽吹き花開くのです。「旬」といことばは、「季節の食物が最も味の良い時」と辞書にはあります。さらに「旬」には、「10日間」という意味も。1年365日の中の、僅か10日間に食材は旬を迎えるのだと、古人は教えてくれているのでしょうか。見逃してはなりません。

 降り注ぐ太陽の陽射しが万物を育て上げ、四季折々の風はその土地土地に味わいをもたせる。その風のもたらした美味しさこそ「風味」であり、我々はここに「口福な食時」を見出すのです。そして、旬を迎える食材は、人が必要としている栄養に満ちています。そして、人の体は食べたものでできています。

 新春を迎えたとはいえ、まだまだ「寒の内」であり、晩冬の食材が旬を迎えようとしております。「美しい(令)」季節に冬食材が「和」する逸品に出会い、食することで無事息災に新年を過ごしていただきたい。この想いを込め、Benoit1月のお勧め情報をお送りさせていただきます。

 

寒中特別プランは1月末までです!

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 日頃より並々ならぬご愛顧を賜っている上に、さらにはこの長文レポートに目を通していただけている皆様の労に報いなければなりません。そこで、新春を祝し、特別価格でプリ・フィックスメニューをご案内させていただきます。期間は、ブログを読んでいただいた日より、2020131日までの平日限定。ご予約は、自分へのメール、もしくは以下のBenoitメールアドレスよりお願いいたします。もちろん電話でも、ご予約は快く承ります。

www.benoit-tokyo.com

 

ランチ

前菜x2+メインディッシュ+デザート

4,800円→4,300円(税サ別)

ディナー

前菜+メインディッシュ+デザート

6,100円→5,000円(税サ別)

ディナー

前菜x2+メインディッシュ+デザート

7,100円→6,000円(税サ別)

ランチ/ディナー

Champagne alain ducasse 1blle ※要予約

11,500円→6,000円(税サ別)

※プリ・フィックスメニューの料理内容は、当日にメニューをご覧いただきながらお選びいただきます。ご希望人数が8名様以上の場合は、ご相談させてください。

 

シャンパーニュalain ducasse」とは?

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 「プライベートシャンパーニュ」というと、既存のシャンパーニュにエチケットだけオリジナルのものを貼り付けたものをいいます。そう、中身はシャンパーニュを醸しているメゾンの既存品なのです。ところが、このシャンパーニュ「alain ducasse」は違うのです。記憶が定かでないほど時を遡った頃、このシャンパーニュの話を聞いた時、我が耳を疑ったのを鮮明に覚えています。

 「アラン・デュカスグループ専用にブレンドされ、醸造されたシャンパーニュであること。」

 シャンパーニュ造りは、ブドウ品種ごとにワインを醸し、年代(ヴィンテージ)違いも含め、ブレンドして瓶詰めしていきます。これに、ドサージュという甘いシロップを加え2回目の発酵に入ります。この2回目の発酵が、魅惑の泡を生み出し、最低3年瓶の中で熟成させることで、ガスがワインに溶け込むのです。そう、シャンパーニュには、最低でも4年の歳月が必要です。

 各シャンパンメゾンは、自分達の威信にかけてスタンダードのシャンパーニュを醸します。ある醸造責任者のコメントが忘れられません。「ヴィンテージシャンパーニュは、ブドウの出来が良かったときのみ醸せばよい。しかし、スタンダードのラインナップは、どんな年でも最高品質で醸さねばならない。これが一番苦労する。」と。これは、シャンパーニュに限ったことではありません。日本酒でも、本醸造が美味しくなければ、その蔵元の吟醸酒は購入しないでしょう。杜氏が一番気をもみ神経をとがらせるのが、スタンダードの「本醸造」です。お手頃の価格で、その蔵元の威信にかけて美味しさを醸さねばならないのです。

 そのシャンパーニュメゾンに、アラン・デュカスグループが依頼をし、ブレンド・熟成がオリジナルとなる、正真正銘の「プライベートシャンパーニュ」を造り上げたのです。それが、このシャンパーニュ「alain ducasse」なのです。快諾したのかどうかは定かではありませんが、この無理難題を引き受けてくださったのが、大手シャンパーニュメゾンの「LANSON」です。

 プライベートシャンパーニュとはいえ、仕上げたLANSONの評価に影響がでる危険性もあります。それでも、このシャンパーニュが、フランス国内はもちろん、世界各国のグループレストランに送り出されました。なぜでしょうか?答えは明瞭でした。「美味しいから」なのです。

 一般に販売しておらず、グループレストランのみでしか、お楽しみいただけません。そこで、今回1月末までの平日限定として、このシャンパーニュ「alain ducasse」を特別価格でご提案させていただきます。

11,500円→6,000円(税サ別)

※特別なシャンパーニュのため、ストック本数に限りがございます。ご希望の際には、ご予約時にお伝えいただけると幸いです。すでに特別価格なため、ワインの日では割引対象外となることをご了承ください。

 

Benoitに初登場「牡蠣(かき)」の前菜は、1月末までです!

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 カキは豊洲市場に届いた鮮度抜群のものを剥きます。そのため、産地は大きく分けて2か所から。カキ養殖激戦区である瀬戸内海の広島県と、東北のリアス式海岸が特徴の岩手県です。甲乙つけがたい美味しさを共に誇りますが、比較的多くBenoitに届くのは、岩手県のようです。山が海沿いにまでそそり立つリアス式海岸は、山のミネラル豊富な清らかな水が、海へ流れ込み、豊富な植物性プランクトンを育みます。そのプランクトンを食(は)む食(は)むしているカキが、美味しくないわけがありません。瀬戸内海の穏やかな海流が、牡蠣筏による養殖に適しているように、規模こそ小さいですがリアス式海岸の湾もまた然り。

 カキは殻から剥き、しんなりと甘さを引き立てるように熱を加えたポロ葱を、殻中に敷くようにのせます。生のカキ身をポロ葱の上にのせ、シャンパーニュを降り注ぎ、サバイヨンという卵黄を使ったほわほわのソースをかぶせるようにし、オーブンへ。卵の入ったサバイヨンが、焼き色がつくことで、まるで蓋のように。この中では、前述した「ふつふつと沸き起こるカキへの想い」が反映したかのように、シャンパーニュによってふつふつとカキが蒸しあげられてゆくのです。さらに、このサバイヨンの蓋がカキの旨味のスープを逃がしません。テーブルに供された時、芳しい香に魅せられ、口にした時には言葉を失うでしょう。生ガキも良いですが、フランスの伝統が生み出した「カキのグラタン」にこそ、カキの美味しさを最大限に引き出す逸品かもしれません。さあ、シャンパーニュや白ワインが呼んでいます。

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HUÎTRES gratinées au sabayon de Champagne

殻付き牡蠣のグラタン シャンパーニュ

 プリ・フィックスメニューの前菜の選択肢の中で、ランチは+1,000円、ディナーでは+800円にてお選びいただけます。しかし、入荷に限りがあるため、ご予約の際にご希望の数量をお伝えいただけると幸いです。

 

宮城県志津川港より「南三陸産マサバ」が届いています。

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 世界其処彼処に点在する漁場の中でも、やはり魚種が豊富な地域がある。その中でも群を抜いている、ノルウェー沖、カナダ・ニューファンドランド島沖のグランドバング、そして三陸金華山沖(きんかさんおき)が「世界三大漁場」と称されています。この金華山沖は、イワシ・サンマ・カツオ・マグロなあどの回遊魚の好漁場。この海域で育まれた旬の魚が、今回の特選食材です。

志津川漁港より南三陸のマサバ」

 親潮黒潮のぶつかり合う狭間は、素人では予知できぬ潮の流れを生み出します。さらに、リアス式海岸という独特の地形が織り成す複雑怪奇な海流の動向とくる。「天気晴朗なれども波高し」と。この海流の流れに右往左往するのは素人の船乗りなのだろう。玄人は波を読む。海際まで山々がせり出すリアス式海岸は、その山々が育んだ山の養分に満ち満ちたものが流れ出ていることになる。この環境下の中で育て上げた海産物が美味しくないわけがない。その山々の養分に満ちた海水と親潮が出会う。この海域に生きとし生けるものは、エサに恵まれ、海流の早さによって鍛えられることで、他地域には見られない筋肉質は個体へと成長してゆくのです。

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 志津川漁港の山内鮮魚店さんとの出会いがなければ、この特選食材がBenoitのメニューに登場することはなかったでしょう。この海域の海産物の美味しさは周知の事実。うねりゆく海流がこの海域を世界三大漁場となすと同時に、漁師さんにとって危険極まりない海域ともなす。山内鮮魚店さんの扱う魚介類は、漁師さんが命懸けで飼育や捕獲した海産物です。これを皆様が口にした時の、美味しいばかりではない想いの詰まった「感動」をお届けしたい、そう彼らは語ってくれました。

 旬を迎えるこの時期のマサバは、豊富なエサのおかげで脂肪が身にしっかりとのるだけではなく、我々にとっての栄養価が満ち満ちているのだとか。さらに、海水温が低くなることで、身が引き締まり美味しさが格段に良くなるといいます。Benoitへ届く魚体は、見事なサイズに加え、パンパンな胴回り。捌いているキッチンスタッフは、「脂の乗りも素晴らしいですよ」と話しています。これほどの鮮度の良いものが手に入るのであれば、とシェフが考えたのが、生食でした!生食?

 毎年話題になるのは、サバなどを生食することで起こる食中毒です。原因は「アニサキス」によるもの。もちろん、そんな危険なものをBenoitで皆様に供することはできません。では焼くのか?生とかいているが?ということなのです。この食中毒の対処方法は、60℃以上で1分以上加熱すること。と、もう一つ、-20℃で24時間以上凍らすこと。そう、Benoitでは後者の方法をとります。24時間以上凍らせた後に、旨味を逃がさぬようゆっくり解凍、営業直前に表面をバーナーで焙り香ばしさを加えた後に、すぐに冷やすことで中は生のまま。激しい海流にもまれにもまれ、さらに美味しいエサをたらふく食べた、南三陸のマサバの旨さ。これを損なうことの無いよう手間暇を惜しみません。

 ここにもうひとつの待っていた特選食材が登場です。熊本県オリジナル品種の早生温州ミカン「肥のひかり」です。天草の島島々をつなぐ道路は、「柑橘ロード」と呼ばれるほど、多品種が植栽されています。太陽だけに、さんさんと降り注ぐ陽射しに加え、美しい海面が、陽の照り返しを生み出すのでしょう。全国的に見れば生産量は少ないですが、シェフの絶賛するほど美味しいミカンです。マサバが先にブノワに届き、エスカベッシュがスタートするのですが、昨年末に「天草のミカン」が届くことで、一変しています。

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 「エスカベッシュ」という料理。スパッとした響きの心地よい名前の料理は、日本でいう南蛮漬けに似ています。ニンジン、タマネギ、セロリといった香味野菜と共に甘酸っぱいスープに漬け込むように仕上げます。しかし、脂がのりにのったマサバを焼いてしまうなどもったいない話であり、旨味を打ち消してしまうような甘酸っぱさなど言語道断。

 そこで、旬の食材を使って、冬らしい逸品に仕上げようと。サバとの相性が抜群の香味野菜の風味はソースとして生かしつつ、少しばかりにヴィネガーに心地良い柑橘の甘さとほろ苦さをアクセントに加える。そう、前述した熊本県のミカン「肥のひかり」が、ここに登場します。厚めにカットしたマサバの切身に、このソースを絡めるように。青魚特有の臭みなどどこ吹く風、香味野菜以上に、ミカンの風味がマサバの美味しさを一層引き立てるのです。

 鮮度抜群の宮城県三陸のマサバと熊本県天草のミカンが東京のBenoitで一堂に会し、ともに旬である冬ならではの味覚を我々に教えてくれる。旬のマサバを生でいただけるこの美味しさは、一食の価値あり。ディナーのプリ・フィックスメニューで、前菜の選択肢に入っています。ランチでご希望の方は、ご予約の際にお伝えいただけると幸いです。

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MAQUEREAU en escabèche

三陸産マサバのエスカベッシュ

 

福井県六条大麦」と冬野菜がCookpotの中で出会います。

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 アラン・デュカスが、その土地土地で育まれた旬の野菜を、いかに美味しく皆様に供するべきかと思案した結果、考案された器のことで、2010年の春に、世界に点在するアラン・デュカスグループのレストランで使われるようになりました。「このCookpad(クックパッド)とは何ですか?」とよく聞かれますが、レシピ集ではありません。

 1987年に、アラン・デュカスがモナコの「ルイ・キャーンズ」で取り組んだコースメニューが、野菜への敬意を込めた「ジャルダン・ドゥ・プロヴァンス(プロヴァンスの庭)」です。デュカス自らが、プロヴァンスを巡って見つけ出した至高の野菜をお楽しみいただくコース料理。Cookpotは同じエスプリに基づいて誕生したのです。いうなれば、彼の料理原点と哲学を象徴した逸品を仕上げるためのツールというのでしょう。世界各地にある、デュカスグループのレストランで、テロワール(土地特有の気候風土)の恵みと季節感のある料理に仕上げるための「器」であり、「料理名」でもあります。

 

 自然食品への回帰が叫ばれている昨今にあり、食文化を築き上げているフランスももちろん例外ではありません。フランスのアラン・デュカスグループのレストランでも「スペルト小麦」や「キヌア」などの食材が多用されています。もちろん、Benoitも例外ではありません。四季折々の食材が豊かな日本での食材探しが始まったのです。「国産」へのこだわりは、この「六条大麦」との出会いを導いてくれました。この特選食材の生産量日本一を誇るのが、福井県。そこで、その主産地である福井県の「大麦倶楽部」さんよりBenoitへ直送いただいております。

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 麦茶はもちろん、白米とともに炊き上げ食感と栄養を補う役割を担う「六条大麦」。もちろん、ビールや焼酎の原料となる「二条大麦」とは別品種です。二条種は穂を実らせたときの粒の配列が「2列」、ということは六条種は「6列」。六条大麦は二条種よりも小ぶりで、丸粒のプチプチとした食感は病みつきになりそうです。さらに、食物繊維を含めた栄養価も抜群であり、「グルテン」を含まないことも特筆すべきでしょう。

 この六条大麦は、生姜やマスタードシードとともに、野菜のブイヨンで炊き上げるように途中まで仕上げ、Cookpotの器に盛り付けます。冬ならではの根菜、紫・黄・オレンジ色のミニニンジン、黒大根などを、その特有の旨味を引き出すように熱を加え盛り付け、さらに紫ケールの厚みのある葉野菜の食感と美味しさを加えてからオーブンへ。からし菜を、コリアンダーやカルダモンとともに、野菜のブイヨンで煮詰めていったものを、ソースとして注ぎかける。それぞれの野菜の旨味が一堂に会する中で、少しばかりスパイシーなソースが食材を引き立て、我々の食欲を駆り立てるかのよう。

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COOKPOT d'orge et légumes de saison, condiment de feuilles de moutarde

クックポット六条大麦と野菜 からし菜風味

プリ・フィックスメニューの前菜の選択肢の中で、ランチは+1,000円、ディナーでは+800円にてお選びいただけます。

 

ホウボウとヒラメがメニューに加わります

 昨今の気候変動により、気温のみならず海水温の上昇が、思いのほか海洋生物に影響をおよぼしているようです。お世話になっている、海水温が上がり、海流が変わってきているため、今までのように投網すると流されるのだと、これは千葉県の勝山漁港の漁師さんの談。プロの漁師さんでも漁獲時期と量は読めないのだといいます。

 そこで、魚介類に関しては、産地を限定することで、漁獲無しといったご迷惑を皆様におかけしないよう、豊洲の力を借りつつ、美味しい料理を提案させていただこうとも思います。晩冬に登場するのは、日本でも馴染みの2魚種。ともに、海底で優雅にたたずんでいる美味なる魚です。

 

 方々(ほうぼう)さまようように、海底をゆっくり泳ぐからとも、日本の方々(ほうぼう)で水揚げされるからとも、ホウボウというお魚、もちろん諸説あり。美しい姿の風貌ですが、固い頭と骨を持っているため、家で捌くにはなかなかに難儀な魚です。白身で弾力のある身質をプリっと焼き上げた後に、ごつい頭や骨からブイヤベースのように旨味を煮出すように。それを煮詰めたものがソースです。ブイヤベースに欠かせない、ウイキョウとジャガイモとの相性は抜群です。これはランチのプリ・フィックスメニューに登場です。

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ROUGET GRONDIN, fenouil braisé au fumet de bouillabaisse

ホウボウのオーブン焼き ウイキョウとジャガイモ ブイヤベース風味

 

 目を向きにし、右向きカレイで左向きがヒラメと見分けます。ところが、魚河岸の方から衝撃の事実が、「たまに例外があるよ」と。悩んだ時には口の中を覗いて見た方が良いかもしれません。細かな歯が並んでいるのがカレイで、小魚やエビ・カニを食む食むしているだけに、細かな牙がぎっしり並んでいるのがヒラメです。

 お刺身でも焼いても、煮つけても美味しいヒラメを、表面をオリーブオイルで焼き色を付けた後に、オーブンを使って休ませながら、しっとりと旨味を引き出すように焼き上げます。魚から旨味をとったソースにトリュフを少々。この相性に間違いはありません。これは、ディナーのプリ・フィックスメニューに名を連ねます。

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Blanc de TURBOT, poireaux et pommes de terre, truffe noire

平目のオーブン焼き ポロネギとジャガイモ トリュフソース 

 

香川県小豆島の「島鱧」が1月末までです!

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 香川県小豆島(しょうどしま)。この近海のハモは、筋肉質で実が締まり、美味しいエビ・カニをたらふく食すことで、ハモ自らが旨味をもつことになるのです。そのハモがBenoitに届いています。島鱧(しまはも)とは、どのようなものか?「はてなブログ」に詳細を記載しております。お時間のある時に以下のURLよりご訪問いただけると幸いです。

kitahira.hatenablog.com

 美味しい島鱧を、Benoitのシェフはどうするか?もちろん、フランスではお目にかからないハモは、シェフのセバスチャンにとって初めてのこと。焼いたり煮たりと試行錯誤の末、ふっと脳裏に浮かぶフランス伝統の逸品、「リヨンのクネル」だ!フランスでは淡水に棲むカワカマスを使用します。我々には馴染みのないこの魚は、小骨が多く、取り除こうとは微塵にも考えたくないもの。そこで、フランス人は考えたのです、「骨ごとミンチにしよう」と。そして、リヨンが内陸の地ゆえにエビはいない。では、代わりにザリガニで濃厚なソースに仕上げ、カワカマスと合わせようとなるわけです。この発想と同じく、小骨の多いハモは、ミンチにし、団子に姿を変えます。しかし、味わいは雲泥の差ほどにハモが勝る。そこで、海には海のエビでソースを仕上げようと。誕生!「島鱧のクネルBenoit風」です。

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QUENELLES à la lyonnaise, bisque légère

香川県小豆島産 島鱧"のクネル リヨン風

プリ・フィックスメニューのメインディッシュの選択肢の中で、ランチは+1,000円、ディナーでは+800円にてお選びいただけます。

 

岐阜県明宝牧場の郡上クラシックポーク、ロース肉のロースト!今月末までです。

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 この「郡上クラシックポーク」どれほどの特選食材であるか、詳細を「はてなブログ」記載しております。お時間のある時に以下のURLよりご訪問いただけると幸いです。

kitahira.hatenablog.com

 生では食すことのできない豚肉でありながら、焼き過ぎると固くなり、美味しさも逃げてしまう。なかなかに気難しい食材でもあります。今回は、ゆっくりと時間をかけながら低温で焼き上げることで、噛むほどにジュワっとくる豚ロース本体の旨味をお楽しみいただきます。トリミングすることで余計な脂や筋は取り除き、残した脂身には、仕上げにディジョンマスタードを少々。さらには、ソースにはピクルスを加えることで、豚の旨味の凝縮した甘さえ感じるソースに心地よい酸味と食感を加えます。

Longe de COCHON finement panée, sauce charcutière

岐阜県郡上のクラシックポーク" ロース肉の香味焼き シャリュキトリーソース

プリ・フィックスメニューのディナーのみ、肉料理の選択肢としてお選びいただけます。ランチでのご希望は、ご予約の際にお伝えいただけると幸いです。

 

岐阜県奥美濃古地鶏」とフォアグラのマリアージュ、これも1月末までです。

 昔も昔の物語。天照大神を岩戸の中に身を隠し、世は闇の中へ。これは一大事と多くの神々が天照大神を岩戸から引き出すために、試行錯誤した様子が古事記に書き記されています。その時に、肌もあらわに踊った天宇受賣命(あまのうずめりみこと)は、芸能の神様として飛騨市河合町の鈿女(うずめ)神社に祀られています。その鳥居の下には「金の鶏」が埋められた。この鶏は天照大神を自ら「天の岩戸」を開けさせるため、気を引くために鳴かせたという「常世の長鳴鳥」だと。そして、この鶏こそ「岐阜地鶏(天然記念物)」の祖先であるという。岐阜県養鶏試験場が、この「岐阜地鶏」をもとに、「神代の味」の再現しようと研究を重ね、並々ならぬ努力の末に生み出したのが、「奥美濃古地鶏(おくみのこじどり)」です。

 雄大大自然のなかで、のびのびと育てあげられる奥美濃古地鶏。すべての生産者の鶏が、この名を名乗れるわけではありません。岐阜県では奥美濃古地鶏普及推進協議会を発足し、厳しい基準を順守する生産者のみに与えられるもので、定期的に調査を行うことで品質の維持に努めています。この徹底した管理のもとで育てられた鶏肉は、ほんのり赤みを帯びた歯ごたえのある肉質を生み出し、深みのある旨味に満ち満ちています。

 今回は、奥美濃古地鶏の美味しさを十二分にお楽しみいただきたく、胸肉のみを使います。ぱさぱさになりがちなこの部位は、実は火加減さえ間違えなければ、鶏肉本来の美味しさが満ち満ちているのです。しっとりとした食感と、旨味を引き出すために、時間をかけながら低温で調理をしていきます。ここへ、スペインの港町の名を冠する「アルビュフェラ」というソースを絡めるのです。調べると、多くのレシピが登場します。しかし、一味も二味も異なる美味なるソースを、Benoitシェフ野口が仕上げました。ブランデーとマディラ酒で香りとコクを加え、そこへフォアグラを潰しこんだ、口当たり滑らかなソースを鶏胸肉に絡めるのです。

 「昔、アラン・デュカスのレストランで食べたアルビュフェラが、あまりにも美味しくて…」と語る野口が、皆様に提案する冬らしい美味なる逸品です。鶏肉の持つ、美味しさを損なうことなくしっとりと仕上げたこの逸品は、「神代の味」を十二分にお楽しみいただけるはずです。時代を超えた神々の世界へ皆様を誘(いざな)うでしょう。

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VOLAILLE de Gifu, légumes en beaux morceaux, sauce Albuféra

奥美濃古地鶏" 胸肉と冬野菜 フォアグラのアルビュフェラソース

プリ・フィックスメニューの前菜の選択肢の中で、ランチは+1,500円、ディナーでは+1,000円にてお選びいただけます。購入できる数量に限りがございます。ご予約の際に、ご希望数をお伝えいただけると幸いです。ご不便をおかけいたしますが、特選食材ゆえにご理解のほどなにとぞよろしくお願いいたします。

 

柑橘の季節が到来です!

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Coupe AGRUMES, granitéCampari

柑橘のクープ カンパリのグラニ

 Benoitのデザートの中で、クリームもバターも小麦粉も使用しない、唯一ともいえるデザート。プリ・フィックスメニューのデザートの選択肢の中で、ランチ・ディナーともに+500円にてお選びいただけます。

 西日本を中心に次々と姿を現す柑橘は、晩冬から初夏までの長きにわたり、我々の食生活に彩りと爽やかさを与えてくれる。多種にわたる品種は、果肉や果皮の色、味わいジューシーさの違いがあり、組みわせた時にこそ、柑橘デザートの本領を発揮します。柑橘と銘打ったものの、いったい何の柑橘が入っているのか、気になるところではないでしょうか。

 日照時間や快晴日数が国内屈指の宮崎県。県内の柑橘栽培が沿海部に集中している中で、今回は内陸の地、宮崎市から西へ進んだ東諸県郡の綾町から送っていただいています。ここは、町の約80%が森林で、名水百選にも選ばれる水源を有するなど自然豊かな環境に恵まれているうえに、すでに30年以上も前から町全体で有機農法に取り組んでいる地なのです。

 見た目に美しく効率よく大量生産をめざす飽食の時代に、まさに逆行するかのような行動に出たのが、当時の綾町の町長でした。彼の英断は、今でこそ当たり前の農法も、当時は賛否両論だったはずです。反発して町を出てゆく人もいれば、賛同して転入してくる人もいる。それでも、ひたに有機農法を実践し続けたことで、今の名声を得ることができたのです。

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 今、宮城県綾町から送っていただいているのは、「キンカン」です。ハウス栽培から路地物へと移りゆき、あまりある陽射しを、直に受けて育ったキンカンは別格です。皮ごと食べるものだけに、そのまま甘さ控えたシロップで煮込むように作ったコンフィは、これだけでも十分にお楽しみいただける逸品です。というスタイルに仕上げます。食感といい、甘さと心地良いほろ苦さのバランスが美味しさの秘訣。これだけでも十分に美味しい仕上がりです

 マサバ料理の中でご紹介させていただいた熊本県天草の柑橘ロード、ここがもうひとつの特選食材を育む地です。実は、このデザート用にミカンを探し、熊本県の極早生温州ミカン「豊福(とよふく)」と出会ったのが、昨年の10月のことでした。このミカンを試食したシェフ野口が、「美味しい」と絶賛し、料理に使うことを決断したのです。この出会いがなければ、今のマサバの逸品はありませんでした。

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 天草が柑橘ロードであることは、すでに「不知火(しらぬい)」の購入実績があったため知っていました。「きっとミカンも美味しいだろう」との予測の下での購入が、「こんなに美味しいミカンをも育む地だったのか!」へと考えが一変することになるのです。極早生から早生の「肥(ひ)のひかり」へ引き継がれるも、薄皮で甘みが豊かな上に心地良い酸味がある。瑞々(みずみず)しさのある美味しいミカンであることに変わりはありません。

 大玉の国産柑橘は、天草の不知火を待つことにし、今はグレープフルーツの助けをかります。シロップで低温調理を施したキンカンとグレープフルーツの果皮。フレッシュの果肉は、ミカンとグレープフルーツ。マルムラードはミカン。全てが甘さを極力控えることで、それぞれの果実がもっている食感や酸味に甘みを最大限に生かしながら組み立ててゆきます。さらに、カンパリソーダの大きな氷粒のかき氷のようなグラニテで覆いつくします。

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 カンパリは、カンパリオレンジやカンパリグレープフルーツなどのカクテルがある通り、柑橘との相性が合わないわけがありません。まさに、食感のあるカンパリと柑橘のカクテルが完成するのです。オーケストラでいう指揮者がパティシエであるならば、各楽器のパートが奏でる音色は個性ある柑橘の風味であり、打楽器のアクセントはリキュールのカンパリなのでしょう。各々が美味しさの旋律を奏で、紡がれた時、得も言えぬマリアージュをお楽しみいただけるはずです。皆様には春ならではの「口福な食時」なひとときをお約束いたします。

 

岩﨑農園さんの「瀬戸内レモン」とヘーゼルナッツのスフレ、今月末までです。

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 広島県、瀬戸内海に浮かぶ離島「大崎上島(おおさきかみじま)」。サンサンと降り注ぐ陽光に温暖な気候という恵まれた環境の中、飽くなき探求心と努力を積み重ね、類まれなる品質のレモンを育て上げているのが、岩﨑さんご一家です。陽射しばかりでなく、愛情もたっぷり受けて育ったレモンは、まろやかな酸味が特徴で、そのまま食すると皮のほろ苦さと相まって、なんと美味しいことか。すっぱさに顔をしかめる必要はありません。さらに、摘んだそのままを届けていただくため、表皮のワックスを取り除く必要もありません。

 まだ少し緑色がかっていますが、これからゆっくりと美しい輝かんばかりの黄色に変わっていきます。レモン同士をこすった時に、透きとおった爽やかな香りは、すでに十二分おたのしみいただけます。そのまま目を閉じると、遠く潮騒(しおさい)が耳に届き、レモン畑から一望できる瀬戸内海に浮かぶ島々の美しさが脳裏に浮かぶ。

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 さて、自分がBenoitで仕事を始めてこのかた、実は一度として「スフレ」を皆様にお勧めしたことがありません。理由は簡単なもので、一口二口は美味しいと思うも、食感変わらず味わいの変化もなく、飽きてしまうからです。「スフレ」という魅惑的な名前も、毎度の如く色褪せてゆくのです。しかし、今期は違います。自分の中でお勧めすべきでデザートへとBenoitシェフパティシエールの田中が仕上げてきたのです。その大きな要因が、今回の特選食材「瀬戸内レモン」なのです。

 ビスキュイ・ジョコンドという、通常はたっぷりのアーモンドを使うビスキュイ生地を、今回はたっぷりのヘーゼルナッツで焼き上げます。このしっとりと香ばしいビスキュイを器の底におき、瀬戸内レモンもマルムラード、その上にはヘーゼルナッツを加えたスフレ生地。そして、オーブンへ。これほどまで、ヘーゼルナッツを加えることは、風味が濃くなり飽きやすくなる。しかし、ジョコンドとレモンのマルムラードの食感の違いに加え、心地良いレモンの酸味とほろ苦さが、一口一口に違いをもたらし、この絶妙なバランスは飽きがくることなく、ぺろりと一つを完食してしまう。

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Soufflé aux NOISETTES

ヘーゼルナッツのスフレ

 「寒くなってきたから、熱々のスフレ。」ではない、「岩﨑さんの瀬戸内レモンを待っていたから、お勧めのスフレ。」なのです。プリ・フィックスメニューのデザートの選択肢の中で、ランチ・ディナーともに+500円にてお選びいただけます。

 

静岡県掛川の赤い宝石、イチゴ「紅ほっぺ」がBenoitに届きました!

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 誰しもが愛してやまない「イチゴ」。みずみずしく、しゃくしゃくの食感。心地良い酸味がイチゴの優しい甘さを引き立てます。甘いだけではない、イチゴの優劣はこのバランスによって決まるように思います。鮮度を維持することが難しいため、収穫は随時行わなくてはなりません。さらに、水分が多いからこそ輸送に耐え得ないフルーツでもあります。Benoitの席数を考えると、一農家さんからの購入では、イチゴの確保がかなり厳しいのです。

 この難題をいとも簡単に解決に導いてくれ、昨年Benoitの春デザートを席巻したのが、静岡県掛川市にて広大な農園を構えている「赤ずきんちゃんおもしろ農園」赤堀さんが育んだ「紅ほっぺ」でした。一度も滞ることなく、Benoitへ「紅ほっぺ」のみを送り続けていただいています。サイズ指定も購入量も、担当してくださった方の「大丈夫です」という一言に、どれほど安堵したことか。さらに、届いたイチゴの品質にはただただ脱帽するのみ。豊潤な香りをはなちながら、美しい輝かんばかりの赤い色、口中いっぱいに広がる豊潤な甘さに心地よい酸味、いかに丁寧に育てられた「紅ほっぺ」か。自分のみならず、パティシエチーム皆が「美味しい」と納得の逸品です。

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 このイチゴが、早々にデザートに名を連ねました。軽やかに焼き上げたタルトの中に、柚子(ゆず)を加えたカスタードクリームを絞り込みます。その上に、イチゴのマルムラードをたっぷりと。このマルムラードも、既製品のピューレなどは使用せず、可愛い姿の「紅ほっぺ」を、なんのためらいもなく潰してゆくのです。この光景を目にした時には、ため息が漏れることでしょう。さらに、「紅ほっぺ」の粒を、縦半分にカットしたものを、ぎっしりと詰め込んでゆきます。仕上げに、カリカリと黒こしょうを削りふります。そして、柚子のシャーベットとともに。

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Tarte aux FRAISES

イチゴ紅ほっぺのタルト

昨年はレモン、今年は柚子をたずさえて、タルトとしてBenoitに登場です。プリ・フィックスメニューのデザートの選択肢の中で、+800円にてお選びいただけます。

なぜ、柚子なのか?実は数年前からシェフパティシエールの田中から希望を打診されていたのです。しかし、柚子の前に探さなければならなかったのが、イチゴだったのです。幾度となく失敗を重ね、半ば諦めかけていた昨年に運命の歯車がかみ合ったのです。赤ずきんちゃんおもしろ農園の赤堀さんとの出会いです。昨年にイチゴ問題が解決したことで、今期とりかかったのが柚子探しでした。運命とはおもしろいものです。一歩でも踏み出すと、今まで見過ごしていたものが見えてくるものです。出会いました、一級品の柚子と。

 

主役はイチゴだけではない!岐阜県の関市「上之保ゆず」と恵那市「笠置ゆず」。

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 岐阜県のほぼ中央に位置する名刀を叩き上げることで有名な関市。この地を縦断するように流れるのが長良川、その支流の津保川の最上流部に位置しているのが、上之保(かみのほ)村です。総面積の実に89%が山林で占められているといい、北西には女夫(めおと)山、南東には岳(だけ)山という山々に囲まれる。この類稀なる環境は、柑橘栽培に適しており、昔からゆずが庭先に植えられていたようで、今でも県下一の柚子生産量を誇ります。

 上之保に負けず劣らず高品質の柚子を育む地が、県南東部に位置する栗でも有名な恵那市。この地の北西部に位置している笠置(かさぎ)町です。北には笠置山が聳(そび)え、南には木曽川が流れ、ニホンカモシカが姿を見せることもある、自然豊かな地です。ここもまた、昔から県下有数の柚子の産地なのです。

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 山から吹き下ろす適度な風が、樹の疫病などを防ぐと同時に夏陽射しの中で果実が熱せられるのを防ぐ役割をなす。川は適度な水分を保有するのと同時に、照り返しが、陽射しの弱い時期の手助けとなる。柑橘の宝庫でもある、熊本県天草や愛媛県宇和島が山と海であるならば、岐阜県は山と川である。この類稀なる環境が美味しい柚子を育むと伝承していったのが、上之保と笠置であるのでしょう。

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 恵まれた自然環境を活かした、無農薬栽培を頑なに守り続け、もちろん仕上げの表皮へのワックスなどは皆無。見事なまでの美しく、芳しい香りを放つ上之保のゆず。もちろん、ゆず特有の酸味はあるものの、他地域よりも柑橘の甘みがある気がします。この岐阜県の柚子が、東京のBenoitで、静岡県のイチゴと出会います。

 

Benoitシェフに野口貴宏が就任いたしました!

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 Benoitの新たな試みとして、昨年末に野口貴宏が帰参いたしました。以前にBenoitのシェフとして辣腕をふるっていたのですが、いっとき離れることで、アラン・デュカス内で研鑽に励んでおりました。この間に「アラン・デュカスが今の時代に表現したいフランス料理」を肌身で感じたようです。時代に求めに応じて変えていかねばいけないと語っています。皆様、進化するBenoitに、ご期待ください。

 

 過ごしやすい日々が続くなかで、6日に「寒の入り」をいたしました。日増しに寒くなってゆくことでしょう。疲労・ストレスなどが原因で免疫力が下がっている時に、乾燥が加わると、風邪ばかりではなくインフルエンザにも注意が必要です。さらに、肌荒れやかゆみの原因にもなり、体感温度も下がります。健康のためにも、美容のためにも、程よい湿気お忘れなきように。そして、心の潤いも保ちながら、快適にお過ごしください。

 

いつもながらの長文を読んでいいただき、誠にありがとうございます。

末筆ではございますは、ご健康とご多幸を、青山の地よりお祈り申し上げます。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

「2020年新春のご挨拶」Benoit北平

田鶴(たづ)のすむ 沢べの蘆(あし)の したね溶け みぎは萌えいづる 春は来にけり  大中臣能宣(おおなかとみよしのぶ)

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 詠者は平安時代中期に活躍していた歌人。彼が、ある年の祝賀の屏風に添えた歌だといいます。沢のほとりに枯れた姿を残す蘆の群生。その株元を覆っていた雪や氷も溶けはじめ、水際には萌えいずる若草が、まるで春の陽射しに誘(いざな)われているようだ。新春を迎えた喜びと希望を、萌える若草に託し言祝(ことほ)いだのでしょう。ところで、「田鶴」とは、どんな鳥なのでしょうか?

 古来、「田鶴」とはタンチョウを指し、「鶴」はコウノトリのことをいっていたそうです。北海道では留鳥(とどめどり)として生息するも、他の地域では冬鳥として北方から渡ってきます。昔は自然豊かなため、其処彼処で見かけたのかもしれませんが、今ではすっかり姿を見かけなくなったタンチョウです。そのためなのでしょう、故郷が新潟である自分には、「田鶴」とは何か別種の鳥の別称なのではないかと勘ぐってしまうのです。寒くなる頃のぬかるんだ田を訪れるのは、サギだけではありません。田の鶴と称される美しい鳥と聞き、想い描いたのは「ハクチョウ」でした。新潟県は日本有数の白鳥の飛来地なのです。

 ハクチョウは、新潟県に点在する大池を拠点とし、夜が明けて、準備が整ったグループから、ボス鳥を先頭に矢印のような編隊を組みながら、池より羽ばたいてゆきます。誰が決めたのか、順々に飛び立つ姿の美しさに見とれながら、空飛ぶ最大の鳥だけに、その羽音の大きさを体で感じることができます。ふぁ~ふぁ~という鳴き声は、仲間を鼓舞しているのか叱咤しているのか。声が遠のいてゆく先には、餌場となる田んぼが広がっています。画の中に、灰色がかった羽根色の数羽が写っています。他の泥汚れなのではなく、体は大きいですが、まだまだ幼いハクチョウです。自分の姿に警戒して、親鳥が囲い込むように子を守らんとするも、のんきな子鳥たち。

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 暖冬とはいえ、寒さ厳しい時期です。ところが、雨や雪解けによってぬかるむような土壌の中へ手を差し込んでみると、意外にも温かいことに驚かれることでしょう。多くのドジョウやカエルなどにとって、程よい湿度に温(ぬく)い寝床は、快適な越冬生活を約束されているようなもの。しかし、その安眠をぶち壊すように、空より白い鳥が優雅に舞い降りてくるのです。我々はついつい見とれてしまうものですが、田んぼの生きものにとっては、戦々恐々としていることでしょう。

 日本有数の米どころである新潟県には、越後平野が広がりを見せています。畦道で囲われているとはいえ、ほぼ一面が田んぼです。その中に、ハクチョウが集中している田があるのです。よほど美味しい物に恵まれている地なのでしょうか。専門家ではない上に、数か月も観測しているしているわけでもなく、調べきれてもいない中で、ふと思うことがあるのです。

 彼らは、大きな池や沼を寝床としています。この拠点には、多くのハクチョウのグループが存在し、ある種のコミュニティーを形成してるのでないのか、と。生き抜くための餌場を確保するために、留め鳥であれば、ある程度の縄張りがあるかもしれません。しかし、冬鳥ともなると、危険地域や餌場の情報を共有し、厳しい自然の中を皆で生き抜こうとしている気がしてなりません。なぜ、新潟県に湖沼が点在するも、ハクチョウの飛来地は限られています。この湖沼こそ、彼らの情報交換の場であると。皆で外敵に備え、争いがおきないよう調停し、餌場の情報を共有しているのではないか。

 生存競争の只中にいる彼らが、糧(かて)を食べつくしては越冬できずに、全滅の危機を迎えます。そこで、お互いが協力することになり、計画的に糧を得ることを考えるようになるのは、しごく当然の流れではないでないでしょうか。「今日は一緒に、あの田へ行こう」なのか、「俺たちはあっちに行くから、お前らは向こうな」なのか。こう考えると、一面に田畝(でんぽ)が広がる中で、まとまったハクチョウが餌をついばんでいる大グループは前者であり、血気盛んな斥候(せっこう)の役割を担う小グループが後者なのではないか。暗くなる前に寝床である湖沼に舞い戻り、情報を共有しているのでしょう。斥候役の情報を加味し、新たな餌場の開拓を模索する。越冬するために食べつくさないよう、餌場を順序だてるかのように移動することで、コントロールしている。そような気がしてなりません。専門家ではないので、憶測の域を出ませんが、なかなかに説得力があると思いませんか。この真相の究明は、とどのつまり「ハクチョウに聞く」しかありません。

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 都内では星の数ほどのレストランが存在します。世界各国の料理店が切磋琢磨し続けている、美食の街です。ネットで検索しようものなら、これでもかという数のレストランが名を連ね、美味しい料理に対するコメントは事欠きません。終わることの無い美食への追求、日進月歩といえる料理技術、世界中から集(つど)う美味なる食材の数々。四季折々の食材に恵まれ、長きにわたる日本の歴史が「和食」という食文化を育み、なによりも皆様が美味しいものを楽しみたいとの想いが、この類稀なるこの食環境をうみだしたのでしょう。

 ハクチョウの世界での湖沼が、皆様のご家庭であるならば、斥候役の情報とはネットのコメントのことでしょう。その「美味しい」情報を得ることで、訪問すべきレストラン(田畝)を決める。皆様をハクチョウに置き換えることは失礼極まりないことではありますが、生きとし生けるもの全てのシステムは同じなのかもしれません。Benoitは、皆様が求める「口福な食時」のひとときお楽しみいただくための、一つのレストランとなるべく、水面上は優雅でも、水面下で水を足でかいているハクチョウの如く、日々研鑽に励みます。

 アラン・デュカスの料理哲学である「素材を厳選し、その素材の持ちうる香りと味わいを十二分に引き出し、表現すること。」を実践するためには、料理の構想から始まり、それ相応の仕込みに時間を要すること鑑みると、どうしても「日替わりの逸品」は難しいと考えざるをえません。そこで、フランス伝統の逸品を残しつつ、期間限定で季節を反映した料理をご用意することで、「選択」するという楽しみを感じていただければ幸いです。

 旧年を省み、新春を迎えた喜びとBenoitの新たな決意を、大中臣能宣の名句とともに、言祝がせていただきます。皆様におかれましては、令和2年が、萌えいずる若草のように生き生きと、空飛ぶ最大の鳥ハクチョウが羽ばたくように、大きな夢に向かって飛躍する素晴らしき年となるよう、青山の地よりお祈り申し上げます。今年も変わらぬご愛顧のほど、なにとぞよろしくお願いいたします。

 

 2020年1月の「Benoit特選情報」は、以下に記載しております。お時間のある時にご訪問いただけると幸いです。

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 「寒の入り」から9日目に降る雨のことをを「寒九の雨」と古人は名付けました。そして、この雨はその年の秋の豊穣がもたらすものだと信じてきたのです。2020年の寒九は1月15日です。関東では、昼間に陽射しが射しこんだものの、朝より雨模様の一日でした。古人は何かの根拠をもって決めたのかもしれませんが、自分には皆目見当がつきません。新年早々の天気による占いでは、今年は吉が出たようです。

 こう思うと、寒々しい雨でしたが、悪い気がしないものです。幸先が良い年になりそうです。雨に濡れてしまった方々は、今年一年の幸運を身にまとったのかもしれません。風邪をひかぬよう十分に注意しながら、幸先の良さに笑みをこぼしても良いのかもしれません。

 

いつもながらの長文を読んでいいただき、誠にありがとうございます。

末筆ではございますは、寒九の雨にちなみ、皆様のご健康とご多幸を、青山の地よりお祈り申し上げます。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com

「寒中お見舞い」と「新春特別プラン&シャンパーニュ」のご案内です。

寒中お見舞い申し上げます。

 

 初春のご挨拶が遅くなり申し訳ありません。旧年中は並々ならぬご愛顧を賜り、誠にありがとうございました。本年は皆様のご期待にお応えできるよう、さらに口上を磨き、「観梅の心、観桜の目」を座右の銘とし日々研鑽に励みます。2020年も、変わらぬご愛顧のほど、なにとぞよろしくお願い申し上げます。皆様が、そして皆様のご家族ご友人の方々が、幸多き年となりますよう、青山の地よりお祈り申し上げます。

 

 日頃より並々ならぬご愛顧を賜っている上に、さらにはこの長文レポートに目を通していただけている皆様の労に報いなければなりません。そこで、新春を祝し、特別価格でプリ・フィックスメニューをご案内させていただきます。期間は、ご案内をご覧いただいた日より、2020131日までの平日限定。ご予約は、Benoitへメール、もしくはお電話をいただけると幸いです。

www.benoit-tokyo.com

 

ランチ

前菜x2+メインディッシュ+デザート

4,800円→4,300円(税サ別)

ディナー

前菜+メインディッシュ+デザート

6,100円→5,000円(税サ別)

ディナー

前菜x2+メインディッシュ+デザート

7,100円→6,000円(税サ別)

ランチ/ディナー

Champagne alain ducasse 1blle ※要予約

11,500円→8,000円(税サ別)

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※プリ・フィックスメニューの料理内容は、当日にメニューをご覧いただきながらお選びいただきます。ご希望人数が8名様以上の場合は、ご相談させてください。

※アラン・デュカスグループ専用にブレンド/醸造されたシャンパーニュなため、ストック本数に限りがございます。ご希望の際には、ご予約時にお伝えいただけると幸いです。すでに特別価格なため、ワインの日では割引対象外となります。

 

 旧年より引き続き、日本の各地方が育んだ食材を通し、まるで彼の地を旅しているかのようにお楽しみいただきたく、「探訪!日本のテロワール」と銘打ってご案内させていただきます。今回は2点だけご紹介させていただき、残りは数日内にお送りするダイジェスト版をお待ちいただけると幸いです。

 

Benoitに初登場「牡蠣(かき)」の前菜は、1月末までです!

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 岩手県を主軸にBenoitの届けられる鮮度抜群のカキ。殻から剥き、しんなりと甘さを引き立てるように熱を加えたポロ葱を、殻上に敷くようにのせます。生のカキ身をポロ葱の上にのせ、シャンパーニュを降り注ぎ、サバイヨンという卵黄を使ったクリームのソースをかぶせるように。そして、オーブンへ。卵の入ったサバイヨンが、焼き色がつくことで、まるで蓋のように。この中で、シャンパーニュによってふつふつとカキが蒸しあげられてゆくのです。テーブルに供された時、芳しい香に魅せられ、口にした時には言葉を失うでしょう。生ガキも良いですが、フランスの伝統が生み出した「カキのグラタン」こそ、カキの美味しさを最大限に引き出す逸品かもしれません。シャンパーニュや白ワインが呼んでいます。

 プリ・フィックスメニューの前菜の選択肢の中で、ランチは+1,000円、ディナーでは+800円にてお選びいただけます。しかし、入荷に限りがあるため、ご予約の際にご希望の数量をお伝えいただけると幸いです。

 

赤い宝石、イチゴ「紅ほっぺ」がBenoitに届きました

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 昨年にBenoitの春を席巻した、静岡県を代表するイチゴ「紅ほっぺ」が、早々にデザートに名を連ねました。今期もまた掛川市に、日本最大の栽培面積を誇る「赤ずきんちゃんおもしろ農園」さんが丹精込めて育て上げた、見事なイチゴを送っていただいております。今期は、岐阜県関市の「上之保ゆず」をたずさえて、タルトとしてBenoitに登場です。

プリ・フィックスメニューのデザートの選択肢の中で、+800円にてお選びいただけます。

 

 今回は新春初メールということで、毎年恒例の干支(干支)のお話を送らせていただきます。今年の干支のイメージ動物は、「カピバラ」にいたしました。なぜでしょうか?※自分が動物を画像でご紹介すると、職業柄「食材」と思われがちなのですが、間違いなく食材ではありません。

 

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 さらに、古代中国の賢人の英知の結晶である干支「庚子(かのえね)」を、自分なりに解釈してみました。今年の時世を切り抜けるために、いかに人世を過ごしてゆくかのヒントを見つけた気がいたします。詳細は以下よりご訪問いただけると幸いです。

 

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 過ごしやすい日々が続くなかで、1月6日に「寒の入り」をいたしました。日増しに寒くなってゆくことでしょう。疲労・ストレスなどが原因で免疫力が下がっている時に、乾燥が加わると、風邪ばかりではなくインフルエンザにも注意が必要です。さらに、肌荒れやかゆみの原因にもなり、体感温度も下がります。健康のためにも、美容のためにも、程よい湿気お忘れなきように。そして、心の潤いも保ちながら、快適にお過ごしください。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com

2020年 干支「庚子(かのえね)」のお話です。

今年の干支は「庚子(かのえね)」です。

 古の賢人は、毎年の世相を分析し、時代時代を表現する漢字一文字をあて、後世に伝えようとしました。その英知の結晶が「干支」です。甲(こう)・乙(おつ)・丙(へい)…と続く「十干(じっかん)」と、馴染みの子(ね)・丑(うし)・寅(とら)…と十二支。この10と12という数字が、我々の生活の中でどれほど溶け込んでいるか。算数を学ぶ上で、数字の区切りとなるのが10。そして、半日は12時間、1年は12ヶ月。10と12の最小公倍数は「60」。還暦のお祝いとは、この漢字の通り「暦が還(かえ)る」人生60年目の節目を迎えたことを祝うもの。そして、あてがわれた漢字は、それぞれに樹の成長を模したものだというのです。

 2019年の干支のお話は、「はてなブログ」に記載しております。お時間のある時にご訪問いただけると幸いです。

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 人が抗しがたい時世の勢い、世相には10年というサイクルを見出し表現したものが、「十干」だと。1番目の「甲(きのえ)」から始まり、6番目の「己(つちのと)」までは、樹そのものの成長を、7番目の「庚(かのえ)」から最後の「癸(みずのと)」は花を咲かせ種を生み出すことを象(かたど)っているといいます。かたい殻に覆われた状態の「甲 (きのえ)」、芽が曲りながらも力強く伸びるさまが2番目の「乙(きのと)」。芽が地上に出て、葉が張り出て広がった姿が「丙(ひのえ)」。そして「丁(ひのと)」は、重力に逆らうかの如く、ぐんぐんと勢いよく天に向かい成長し、「戊(つちのえ)」に大いに茂る。2019年「己(つちのと)」では、勢いよくぼうぼうに生い茂った樹が、理路整然と体裁を整え、効率よく光合成をおこなうことで養分を蓄えてゆく。

 2020年は7番目の「庚(かのえ)」という、馴染みの無い漢字です。「説文解字(せつもんかいじ)」によると、秋にたわわに実がついた様子を象るのだといいます。「庚」は「己」を継承し、人のへそに象るとも。「庚庚(こうこう)」とは、樹木がしっかりと実をつけたさまを意味するのだといいます。さらに、「釈名(しゃくみょう)」によると、「庚」は「更」であり、固いさまを指し示す。そして、「更」は新しいものへとかえるという意味を含みます。

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 昨年までの成長から、次の世相へ引き継ぐための種を作る過程に入りました。「庚」には「道路」という意味もあります。10年の世相サイクルの中で、6年かけて育まれた時世の勢いによって方向づけられた「道」は、「夷庚(いこう)=平坦な道」となるか「険庚」となるかは、はたまた「夷険(いけん)な庚」となるのか。実を成す初年度なために定かではない、そのために不安が募ります。しかし、「庚」が堅強であり道であるならば、紆余曲折することのない道が続いているはずです。どのような道のりなのか?「各々の心の持ちよう」だと教えてくれるのが、人世を表現する「子」のようです。

 

 人世における栄枯盛衰は世の常であり、繰り返すもの。古人はここに12年を見出します。人生もまた、樹の成長になぞった漢字1文字をあてがいました。2020年は1年目の「子(ね)」です。子供のことでもあり、果実の実や植物の種をも意味する「子」。陽気が滋(しげ)り始めると「説文解字」は教えてくれる。さらに「釈名」では、「子」は「孳(し・じ)」であると。陽気が萌えて下に孳生(じせい)する。「孳」とは、「増える/産み育てる」という意味があり、「子」は「蕃孳(はんし)=おおいに茂ったさま」の状態だといいます。昨年の「亥(い)」が、樹が葉を落とし、種に生命を引き継いだ状態なのだと。さらに、百物を収穫して、その良し悪しの真偽を核(えら)びとる。まだまだ可能性を秘めた種が多いことを示唆しつつ、確固たる種となり越冬(丑)するための準備期間ということなのでしょうか。

 「易経」とは古代中国の賢人が生み出した占い法です。自分が占い師ではないため、詳細は専門家のHPを参照ください。今回、なぜ易経を取り上げたかというと、「子」が易では「坎(かん)」の卦(か)に相当するというからです。易を構成する基本形を八卦(はっか)と呼び、その八卦を上下で組み合わせたものが「六十四卦(ろくじゅうしか)」であるといいいます。この八卦のひとつが「坎」というもの。これを図象化したものが以下に添付した画像です。

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 短い横線が山々となり、山間を流れゆく川。これが「坎」の表現するところのようです。この図象を縦にして眺めると「水」に見えなくもありません。そう、「坎」は「水」を象徴し、「険(けん)=険難」であるというのです。水は高き所から低き所へと流れ続ける忙(せわ)しさもありながら、正確な平を意味する「水平の準拠」ともなります。「坎」の卦が上下に姿を見せる六十四卦では、「坎為水(かんいすい)」と書き記しています。

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 たびたび出てくる「説文解字」と「釈名」という名前。本というよりも辞典と言い表した方が良いかもしれません。しかし、これらが編纂されたのは、古代中国でした。「説文解字」は紀元後100年頃、六書(りくしょ)の区分に基づき、「象形」「指事(指示ではないです)」「会意」「形声」に大別され、さらに偏旁冠脚(へんぼうかんきゃく)によって分類されています。「指事文字」とは、絵としては描きにくい物事や状態を点や線の組み合わせで表した文字をいい、「上」や「下」が分かりやすいと思います。十干の「己」は指事文字です。そして、「会意文字」は、既成の象形文字指事文字を組み合わせたもの。例えば「休」は、「人」と「木」によって構成され、人が木に寄りかかって休むことから。干支の「亥」は会意文字です。「偏旁冠脚」は、漢字を構成するパーツのこと。そのパーツの主要な部分を「部首」と定め、現在日本の漢和辞典は「康熙字典」の214種類を基本にしています。しかし、偏旁冠脚では、漢数字、十干や干支もこのパーツに含まれ、その分類区分は、「一」から始まり「亥」で終わる、総数が540です。気づかれましたか、数あるパーツの中から、殿(しんがり)を担ったのが「亥」です。この後、さらに時は流れ紀元後200年頃、音義説によった声訓で語源解釈を行い編纂されたものが、「釈名」です。

 万物を陰と陽にわける陰陽説と、自然と人事が「木・火・土・金・水」で成り立つとする五行説が合わさった考え方が、陰陽五行説です。兄(え)は陽で弟(と)は陰。陽と陰は、力の強弱ではなく、力の向く方向性の違いのこと。陽は外から内側へエネルギーを取り込むこと、陰は内側から外側へ発することだといいます。運の良い人とは、陽の人であり、外側から自分自身へ力を取り込んでいる人のこと。「運を呼び込め」とはよく耳にいたします。陰の人とは、運が悪いわけではなく、自分自身のみなぎるエネルギーを外に発している人のこと。一方が良くて、他方が悪いわけではなく、すべては陽と陰の組み合わせです。陰陽の太極図を思い浮かべていただきたいです。2つの魂のようなものが合わさって一つの円になる。一方が大きければ、他方は小さくなり、やはり円を形成するのです。森羅万象全てがこの道理に基づくといいます。

 

 2019年は、時世「己(紀)」が教えてくれるように、ひとつの区切りとして人倫の道を外さぬよう、なりふり構わず頑張ったことを省み、紀識(きしき/しるすこと)し紀念(きねん/こころにとどめて忘れないこと)することを促すのだと。忘れ去るのではなく、真摯に受け止め真実の核心となし、次へ引き継いでゆくこと。引き継ぐ先は、自らの人世である「子(ね)」の2020年へ。時世が導いた大通りのどの場所を進むのか?これから4年をかけて次の世相へ続く道の方向は同じでも、道の右側っを通るのか左側を通るのか、はたまた中央なのか。昨年までに学んできた人世の多々ある成果を取捨選択し、選ばなければならないのでしょう。

 「庚」は「更」であることから、2020年は「更始(こうし)=古いものを捨て、初めからやり直すこと」の年であると。時世は成長から継承へと移る中で、先行き見えない不安が募る1年となりそうです。しかし、人世の「子」が時世を乗りきる指針を教えてくれています。「子」は「孳」であり「坎」でもある。「孳孳(しし)」とは勤勉に努めることを意味する。「坎」の卦が上下に姿を見せる、六十四卦でいう「坎下坎上(かんげかんじょう)=坎為水」は、「重なる険難はあるが、真実をもって行動すればうまくいく。」ということを象っているといいます。山間を流れるせせらぎのように、一時に集中するのではなく絶え間なく努力を続けること、そして水でいう「水平」の如き確固たる準則を、いうなれば信念を持って、今年の時世を乗り切りなさいと教えてくれているようです。

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 1984年の「甲子(きのえね)」に幕開けした60年の世相のサイクル。「世」の字には30年という意味が込められていると聞きます。60年の中に30年の2つの世相。2014年「甲午(きのえうま)」からはすでに後半の世相が始まっています。還暦の中には6つの時世と5つの人世。人世における栄枯盛衰は世の常であり、これを乗り越えなくてはなりません。その先に、宝の地図(人世のさらなる高み)を見つけることができるはずです。

 今年の干支の動物には「カピバラ」の画像を使用いたしました。外敵への弛まぬ警戒心も持ち続けるも、家族仲間と無理をせずに悠々自適に日々を過ごす。時に水の中へ、時に陸の上にと、危険をひらりひらりとかわす術は、今年を乗り切るためのヒントが隠されているような気がいたします。水陸を自在にこなす「カピバラ」こそ、まさに理想の「庚(水)」の「子(ねずみ)」であると。

 カピバラのお話は、「はてなブログ」に記載しております。お時間のある時に、以下よりご訪問いただけると幸いです。

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いつもながらの長文を読んでいいただき、誠にありがとうございます。

末筆ではございますは、ご健康とご多幸を、青山の地よりお祈り申し上げます。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

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2020年 干支「子(ねずみ)」のお話です。

 今年の干支のイメージ動物は、「カピバラ」にいたしました。※自分が動物を画像でご紹介すると、職業柄「食材」と思われがちなのですが、間違いなく食材ではありません。

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 2020年は、子(ねずみ)年です。お釈迦様への新年の挨拶に赴いた動物たちの順番が十二支となった、とはある一説のお話。己をよく知る牛は足が遅いことを理解しているために前日早いうちから出発し、一番先に門先に到着するも、その背に乗っていた賢いネズミがひょいと先に門をくぐる。順を追ってぞくぞくと主役が到着する中で、犬猿の仲といわれる両者の仲裁に入ったがためにニワトリは10番目。猫はなぜ登場しないのか?猫はお釈迦様への新年の挨拶の日を忘れ、ネズミに聞いたところ2日だと。翌日に事実を知った猫は怒り、これ以降ネズミを追いかけ続けるのだと。

 

 ネズミと人間との出会いは「ミッキーマウス」から、ではありません。人類が食物を貯蔵する知恵を得た時から始まり、いまだ継続している攻防の歴史なのです。弥生時代に登場する画期的な「高床式倉庫」は、湿気対策に床下を大きくとることに加え、母屋を支える支柱に見る「ねずみ返し」こそ、古代人が悩み考え抜いた末に導き出した妙技なのです。この大発明は、今なお進化を続け、其処彼処にその形跡を見て取れます。寺社仏閣や、船着き場などなど、時に電柱にも。なかなかの厄介者にもかかわらず、昔話やアニメにたびたびと登場する可愛げのある小動物です。

 

 ネズミ、ネズミと言いますが、何がネズミなのでしょうか?学術的には、「げっ歯目」の仲間をネズミと呼んでいます。特徴は、前歯に上下に2本ずつ計4本あり、一生伸び続けます。そのため、何か硬い物をガジガジすることで、前歯をすり減らさないと、自らの前歯によって食物の摂取ができなくなり自滅します。では、この「げっ歯目」にはどのような仲間がいるのでしょうか。「ネズミ科」である、野生の「アカネズミ」や家畜の「ハツカネズミ」が筆頭でしょう。絶滅危惧種にいるヤマネ科の「ヤマネ」も忘れてはいけません。リス科の「リス」や「プレーリードック」も仲間です。

 

 皆様の中には、「ウサギ」もネズミの仲間なの?という疑問がでていきているのではないでしょうか。ウサギを飼われている方は、前歯上下4本あることを知っています。しかし、ウサギはこの前歯の裏側に小さな歯が2本存在しているため、なんと前歯が計6本なのです。そのため、「げっ歯目」ではなく「ウサギ目」なのです。さらに、「ハリネズミ」。ネズミと名付けられていますが、「げっ歯目」ではないので、ネズミの仲間ではありません。

 

 動物園のふれあいコーナーであ馴染みも家畜の「モルモット」。これは「げっ歯目」なので、ネズミの仲間です。テンジクネズミ科に分類されています。この同じ科の中に、最大のネズミの仲間がいるのです。愛らしい姿で人気を誇るネズミ、「カピバラ」です。間違いやすいのですが「パ」ではなく「バ」です。野生のカピバラは、外敵であるジャガーピューマに襲われると、近くの水場に逃げ込みます。よく温泉に浸かってぬくぬくとしている光景を見かけるのは、この特徴からくるものです。

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 今年の干支「庚子(かのえね)」、この世相を表す「庚(かのえ)」には「水」がキーワードのなっているようです。干支「庚子(かのえね)」の詳細は「はてなブログ」に記載いたします。お時間のある時に、ご訪問いただけると幸いです。なぜ、「カピバラ」を選んだのか?ご理解いただけると思います。

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 ネズミらしき動物を見つけた際には、口を開かせ前歯を見ると分類できるようです。動物園のふれあいコーナーで口まわりに指を回そうものなら、間違いなく強靭な前歯で噛まれるために、お勧めいたしません。優しく触れ合うことだけにし、分類は専門家にお任せいたしましょう。噛まれた際には、何ためらうことなく病院へ。破傷風には重々ご注意ください。

 

いつもながらの長文を読んでいいただき、誠にありがとうございます。

末筆ではございますは、ご健康とご多幸を、青山の地よりお祈り申し上げます。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

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令和元年「年末のご挨拶」 Benoit北平

 令和元年、皆様より並々ならご愛顧を賜り、誠にありがとうございます。本年「己亥(つちのとい)」は、時世の勢いが人世を後押しする力強い年だったような気がいたします。人世もまた成熟の極みに達したことで、時世の波をとらえた皆様は、今までの努力が人世の成果として現れたのではないでしょうか。こと自分に至っては、皆様のご期待にお応えすることも、ままならず。時世に荒波の中に何の準備もせずに飛び込み、溺れはしなかったものの、もがき苦しみ右往左往とした不甲斐なさ。至らぬことばかり、おおいに反省しております。

 令和二年では、心機一転、皆様から大切なひと時をお預かりしているという気持ちを心に刻み、さらに皆様がBenoitで「口福な食事」を過ごすことができるよう、そして皆様のご期待に応えることのできるよう、日々研鑽に励みます。変わらぬご愛顧のほど、なにとぞよろしくお願いいたします。

 Benoitは、新年1月1日から3日までお休みさせていただき、万全の準備を持って4日より皆様をお迎えいたします。変則的な営業時間となるため、詳細は以下に記載させていただきます。4日と5日の両日は、フランスでの新年恒例の焼き菓子「ガレット・デ・ロワ」がデザートの選択肢に登場する予定です。何かご要望・疑問な点などございましたら、何気兼ねなく返信ください。

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2020年

ランチ

ディナー

1月4日

12:00~16:00 (15:00ラストオーダー)

17:00~22:00 (20:00ラストオーダー)

1月5日

12:00~17:00 (16:00ラストオーダー)

営業いたしません。

6日以降

通常通りの営業

通常通りの営業

※市場がまだ動きださないため、4日と5日は限定した料理の選択肢であることをご了承ください。6日から、いつものプリ・フィックスメニューをご用意させていただきます。

 

晴れくもる しぐれを冬と かくばかり 定めなき世に たれ定めけん  正徹(しょうてつ)

 詠者は室町時代中期に活躍した歌僧です。室町時代には北山文化から東山文化へと続き、素晴らしい文化芸能が花開いたようです。狩野派による室町水墨画観阿弥世阿弥によって能が大成された時代でもあります。しかし、この華やかさの反面、政治は混乱を極めていました。室町将軍の権威失墜が大きく、1438年(永享10年)に関東で勃発した永享(えいきょう)の乱を皮切りに、落ち着いたかと思った関東で再び内乱が。1454年(享徳3年)から約30年もの長きにわたり「享徳(きょうとく)の乱」が。さらに近畿地方を含む西日本では、将軍の後継者争いをきっかけに、1476年(応仁元年)に「応仁(おうにん)の乱」が勃発しました。この政治の不安定さが下克上を生み出し、世は群雄割拠の戦国時代へと導かれることになるのです。

 正徹は、永享・享徳の乱を耳目に触れ、室町幕府の凋落(ちょうらく)を目の当たりにしたことで、「晴れくもる」不安定な憂世(うきよ)に憂悶(ゆうもん)していたのでしょうか。

 乱世とは、何が正しく何が間違いなのかが分からなくなる混沌なる様、まさに「定めなき世」となる。刻々と過ぎ去ると時の流れの中で、陽が昇り陽が沈む。綿々と繰り返してきたこの流れは変わらないものの、陽の昇る高さが変わることで、気温に違いが生まれ、多様な気象条件を生み出しました。そして、これに呼応するかのように、樹々の移ろいや鳥たちのさえずりなど、生きとし生けるものが動き出す。

 古人は、「季節」という感覚が生まれたのでしょう。これを4つに区分するも、天体の動きが解明されていない時代にあっては、「冬は時雨(しぐれ)から始まる」と、誰かが決めていてくれたおかげで、ただ「寒い日」ではない、冬の到来を感じ取れる。「ありがとう、これで冬(乱世)を乗り切る心構えをもつことができましたよ。」そう正徹は詠ったのでしょう。

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 師走も終わりを迎えようとしております。地球が太陽の周りを1周する、その区切りとして定められた1年の終わりの日が、12月31日。陽が西の稜線に姿を消し、静まり返る闇夜に迎える1月1日午前零時に新年を迎えるも、やはり、陽が顔をのぞかせた時に「新年を迎えた」という実感がわくものです。生きとし生けるものに欠かせない「陽の光」、もちろん我々にとっても。皮膚に太陽が当たらないとビタミンDが形成されないなどと言われますが、それ以上に「心に与える影響」が大きいのではないでしょうか。世界各国に太陽信仰が存在するということが如実に物語っています。

 誰がこの日を「1年の節目」と決めたのでしょうか。「冬至」でも良かった気がいたします。しかし、古人は何かしらの理由をもって、去年今年(こぞことし)という区切りを作りました。1年を振り返ってみると、良きことも悪しきこともあったかと思います。今年1年の反省をもとに、新年を新たな気持ちで迎えることができる。更なる高みへと自分を導く階段の一段なのでしょう。誰が決めたのか分かりませんが、1年の節目があることで、世相に翻弄されることなく、人生の芯となる心構えを再構築することができる。定めなき時世の波を乗り切るためには、挫けない心の強さが必要不可欠であることを、正徹は教えてくれている。

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 古人は、冬に陽射しが降り注ぐ日を、恋しいからでしょう「愛日(あいじつ)」と呼んでいます。春秋左氏伝の「冬の日は愛すべし」からできた言葉のようです。冬は太陽が天高くまで昇らず、陽射しが低い角度で部屋の奥まで差し込むため、寒々しい中に暖かい「陽だまり」ができています。屋外でも、日当たりの良いところでは陽だまりが。まだまだ、今年にやり残したことがあるかと思いますが、ここはひとつ節目をつけ、「日向ぼっこ」で太陽の恩恵を十二分に享受いたしませんか。陽だまりでほっこりと温まるひとときは、何か心まで満たされる気になってしまいます。今年一年の自らを省みる時、暗闇よりも「陽だまり」のほうが、何か明るい未来を見出すことができる。さらに、愛日には「時を惜しむ」や「親に孝行する日々」という意味もあるようです。「陽だまり」の代わりに、「家族の絆」が心の拠り所となり、時世の波を乗り切る活力となるのでしょう。

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 「冬日(ふゆび)」は一日の最低気温が0℃未満の日。「真冬日」は最高気温が0℃未満の日のこと。天気予報での言葉の変化に注意し、日々お過ごしください。まもなく「庚子(かのえね)」の年が幕開けいたします。「難を転じる」、ナンテンの実をもって、今年最後のご挨拶とさせていただきます。

皆様が無事息災に新年を迎えることができるよう、お祈り申し上げます。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

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Benoit特選情報「12月のダイジェスト版」のご案内です。

 「雑木林(ぞうきばやし)」とは、落葉広葉樹で構成された人が作り上げた林のことです。整備された庭園とは違い、樹は薪(まき)や炭としての原材料となり、落ち葉は農産物の肥料として堆肥へと活用されるばかりか、降り積もることで、豊かな土壌を形成することになります。江戸時代に、一面のススキ原に植樹して作り上げたのが「武蔵野の雑木林」。江戸っ子にとっては、生活するうえで欠かすことのできない資源だったことでしょう。

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 其処彼処で目にする雑木林。今年はゆっくりと黄葉・紅葉が進んでいるようで、12月にいたってなお美しい姿を我々に披露してくれています。生地を染色する際、染料に浸すことを「一入(ひとしお)」といい、これを幾度となく繰り返すことで色の濃淡を表現します。紅葉の時期の雨は、「八入(やしお)の雨」といい、雨が一入一入と樹々を色付かせてゆくのだと。最近の雨続きこそ、「八入の雨」だったのでしょうか。近くの雑木林のケヤキが美しい粧いへと姿を変えていました。

 かつては、農作業の目安は、草木の芽吹きやら花開く時期、小動物や鳥たちの鳴き声や行動パターン、遠く望める山々の冠雪の有無など、自然に教わるものでした。今でも十分に活用でき、気象庁の定める「生物規則観測」などは興味深いものです。通勤途中や散歩などの外出中に、人々の喧騒にもまれる中で、ふっと息つくひとときに、耳に入ってくる「初音(はつね)」には、感慨深いものがあります。しかし、暦を手に入れた人類は、この暦に支配されてしまうことになりました。スケジュールに支配される息苦しさは皆様も感じているのではないですか。ただ、暦は人類史上の大発見であり、どれほど日々の生活に欠かせないものであるか。これは今も昔も変わりはありません。

 

花すすき あすは冬野に たてりとも けふはながめむ 秋の形見に  源顕仲(あきなか)

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 暦の上では、11月7日に「立冬」を迎え、冬が始まりました。旧暦との誤差はあるものの、源顕仲は「立冬」の前日「節分」に詠んだのでしょうか。「日」が変わることで「季節」が変わる。「花すすきよ、明日から季節が変わり冬野に立つことになる。今日の秋の姿を瞼(まぶた)にしっかりと焼き付けることにしよう。秋の形見として」。ススキのとっては、日増しに寒くなる「一年の中のただの一日」。しかし、我々にとっては、「秋最後の一日」。暦があればこそ生まれたものであり、この自然と暦との微々たる差を捉えることのできる詠者の美的感覚は、今に至っても十分に深々と感じ入ることができます。四季折々の美しさを誇る日本だからこそ育まれたこの感覚を大切にしなさい。そして、一日とて無駄な日はない。そのようなメッセージが込められている気がいたします。

 秋の七草に含まれている「尾花」とは、ススキの別称です。稲穂に姿が似ていることから、月見の場や五穀豊穣を神々に感謝する秋の祭りには欠かすことのできない花。例年であれば、11月中旬ごろにはススキの花穂が開き、ホワホワとした姿を見せてくれます。しかし、今年は暖かかったからなのでしょうか、今まさにその盛り。そして、ススキは枯れてゆく。枯れてなお、季語として名を残すのがススキ。源顕仲が目にしたのは、このような姿だったのでしょうか、「枯れ尾花」。

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 綿々と繰り返される自然のサイクルは、その年ごとに何かしらの変化をもたらすことになり、我々はその機微に一喜一憂するものです。四季折々の機微なる移ろいは、自然が草木へと語りかけながら決めていることであり、我々が勝手にカレンダーなるものにあてはめること自体がおこがましいのでしょう。旬の食材もまた然(しか)り。やっと冬の食材が姿を見せ始めました。

 秋が我々をそ知らぬ顔で過ぎ去り、冬本番を迎えようとしています。降り注ぐ太陽の陽射しが万物を育て上げ、四季折々の風はその土地土地に味わいをもたせる。その風のもたらした美味しさこそ「風味」であり、我々はここに「口福な食時」を見出すのです。そして、旬を迎える食材は、人が必要としている栄養に満ちています。そして、人の体は食べたものでできています。「美しい(令)」季節に冬食材が「和」する逸品に出会い、食することで無事息災に年末を迎えていただきたい。この想いを込め、Benoit12月のお勧め情報をお送りさせていただきます。

 

Benoitで牡蠣?メニューに初登場です

 この時を、どれほど待ち焦がれたことか。皆様の中にも、どうしてBenoitでは「牡蠣(かき)料理」が供されないのか、疑問に思ったことはないでしょうか。フランスでは、大西洋沿岸では、日本以上に馴染みの食材かもしれません。そして、家族皆が揃うクリスマスでは、お父さんが生ガキを剥くのが恒例の行事のようになっていると聞きます。それほどの食材が、なぜBenoit東京に登場しなかったのか?これには深い深い理由があったのです。

 Benoitシェフ野口と自分は、思いのほかBenoit勤務が長く、かれこれ十数年となりました。何がどうしてなのか想い出すこともできないほど過去のことですが、「アラン・デュカスグループでは牡蠣(以下「カキ」と書かせていただきます。)の使用が禁止されている」と耳にしていたのです。二人ともです。Benoit東京のメニューは、日本からフランス本部のエグゼクティブシェフへメニューのレシピを打診し、了承を得たものが、アラン・デュカスの下に届き承認を得ます。そのため、敢えて禁止と知りえる食材を提案することはしません。もちろん、自分もシェフに提案しません。4~5年前のイベントでカキを使用したものが最初で最後でした、今までは。イベントだからと許可が下りたのだと。

 これが、まったくの誤解であると知ったのは、11月のことです。12月の特選料理を考える中で、ふつふつと沸き起こるカキ料理への想い。シェフも同感の中で、いっそこの想いをフランスへぶつけてみようと。返答は、なんの支障もなく「OK」だったのです。何も禁止されていたのではなく、我々が禁止だと思い込んでいただけだったのです。なんということか!深い深い理由などではなく、なんと浅はかな理由だったのか。今までの10年は何だったのか!と。この失態を省み、12月に、Benoitのプリ・フィックスメニューに、念願のカキ料理が登場したのです。

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 カキは豊洲市場に届いた鮮度抜群のものを剥きます。そのため、産地は大きく分けて2か所から。カキ養殖激戦区である瀬戸内海の広島県と、東北のリアス式海岸が特徴の岩手県です。甲乙つけがたい美味しさを共に誇りますが、比較的多くBenoitに届くのは、岩手県のようです。山が海沿いにまでそそり立つリアス式海岸は、山のミネラル豊富な清らかな水が、海へ流れ込み、豊富な植物性プランクトンを育みます。そのプランクトンを食(は)む食(は)むしているカキが、美味しくないわけがありません。瀬戸内海の穏やかな海流が、牡蠣筏による養殖に適しているように、規模こそ小さいですがリアス式海岸の湾もまた然り。

 カキは殻から剥き、しんなりと甘さを引き立てるように熱を加えたポロ葱を、殻中に敷くようにのせます。生のカキ身をポロ葱の上にのせ、シャンパーニュを降り注ぎ、サバイヨンという卵黄を使ったクリームのソースをかぶせるように。そして、オーブンへ。卵の入ったサバイヨンが、焼き色がつくことで、まるで蓋のように。この中では、前述した「ふつふつと沸き起こるカキへの想い」が反映したかのように、シャンパーニュによってふつふつとカキが蒸しあげられてゆくのです。さらに、このサバイヨンの蓋がカキの旨味のスープを逃がしません。テーブルに供された時、芳しい香に魅せられ、口にした時には言葉を失うでしょう。生ガキも良いですが、フランスの伝統が生み出した「カキのグラタン」こそ、カキの美味しさを最大限に引き出す逸品かもしれません。シャンパーニュや白ワインが呼んでいます。

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HUÎTRES gratinées au sabayon de Champagne

殻付き牡蠣のグラタン シャンパーニュ

プリ・フィックスメニューの前菜の選択肢の中で、ランチは+1,000円、ディナーでは+800円にてお選びいただけます。しかし、入荷に限りがあるため、ご予約の際にご希望の数量をお伝えいただけると幸いです。

 

 

宮城県志津川港より「南三陸産マサバ」が届いています。

 世界其処彼処に点在する漁場の中でも、やはり魚種が豊富な地域がある。その中でも群を抜いている、ノルウェー沖、カナダ・ニューファンドランド島沖のグランドバング、そして三陸金華山沖(きんかさんおき)が「世界三大漁場」と称されています。この金華山沖は、イワシ・サンマ・カツオ・マグロなあどの回遊魚の好漁場。この海域で育まれた今回の特選食材が

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志津川漁港より南三陸のマサバ」

いったいどれほどの特選食材なのか?どのような料理に仕上がるのか?「はてなブログ」に詳細を記載しております。お時間のある時に以下のURLよりご訪問いただけると幸いです。

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 この特選食材を「エスカベッシュ」という料理に仕上げます。スパッとした響きの心地よい名前の料理は、日本でいう南蛮漬けに似ています。ニンジン、タマネギ、セロリといった香味野菜と共に甘酸っぱいスープに漬け込むように仕上げます。しかし、脂がのりにのったマサバを焼いてしまうなどもったいない話であり、旨味を打ち消してしまうような甘酸っぱさなど言語道断。

 そこで、旬の食材を使って、冬らしい逸品に仕上げようと。サバとの相性が抜群の香味野菜の風味はソースとして生かしつつ、少しばかりにヴィネガーに心地良い柑橘の甘さとほろ苦さをアクセントに加える。そう、前述した熊本県のみかん「豊福」が、ここに登場します。厚めにカットしたマサバの切身に、このソースを絡めるように。青魚特有の臭みなどどこ吹く風、香味野菜以上に、ミカンの風味がマサバの美味しさを一層引き立てるのです。日本の南北を代表する旬の食材が、Benoitで一堂に会し、冬ならではの味覚を我々に教えてくれる。これほどまでに、生の「南三陸のマサバ」が美味しいものかと、驚きを隠せない逸品に仕上がるのです。

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MAQUEREAU en escabèche

三陸産マサバのエスカベッシュ

  鮮度抜群の南三陸の旬のマサバ、生でいただけるこの美味しさは、一食の価値あり。ディナーのプリ・フィックスメニューで、前菜の選択肢に入っています。ランチでご希望の方は、ご予約の際にお伝えいただけると幸いです。

 ここまでご案内をしておきながら、昨今の温暖化の影響なのか、海の中が荒れています。すでにサンマの不漁はご存知のことと思いますが、マサバも例外ではございません。水揚げのある際に南三陸町山内鮮魚店さんより直送をお願いいたしますが、ご用意できない場合もございます。ご不便をおかけいたしますが、ご理解のほどなにとぞよろしくお願いいたします。

 

福井県六条大麦」と冬野菜がCookpotで出会います。≫

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 自然食品への回帰が叫ばれている昨今にあり、食文化を築き上げているフランスももちろん例外ではありません。フランスのアラン・デュカスグループのレストランでも「スペルト小麦」や「キヌア」などの食材が多用されています。もちろん、Benoitも例外ではありません。四季折々の食材が豊かな日本での食材探しが始まったのです。「国産」へのこだわりは、この「六条大麦」との出会いを導いてくれました。この特選食材の生産量日本一を誇るのが、福井県。そこで、その主産地である福井県の「大麦倶楽部」さんよりBenoitへ直送いただいております。

 麦茶はもちろん、白米とともに炊き上げ食感と栄養を補う役割を担う「六条大麦」。もちろん、ビールや焼酎の原料となる「二条大麦」とは別品種です。二条種は穂を実らせたときの粒の配列が「2列」、ということは六条種は「6列」。六条大麦は二条種よりも小ぶりで、丸粒のプチプチとした食感は病みつきになりそうです。さらに、食物繊維を含めた栄養価も抜群であり、「グルテン」を含まないことも特筆すべきでしょう。

 この六条大麦は、生姜やマスタードシードとともに、野菜のブイヨンで炊き上げるように途中まで仕上げ、Cookpotの器に盛り付けます。冬ならではの根菜を、その特有の旨味を引き出すように熱を加え盛り付け、オーブンへ。さらに紫ケールの厚みのある葉野菜の食感と美味しさを。からし菜を、コリアンダーやカルダモンとともに、野菜のブイヨンで煮詰めていったものを、ソースとして注ぎかける。それぞれの野菜の旨味が一堂に会する中で、少しばかりスパイシーなソースが食材を引き立て、我々の食欲を駆り立てるかのよう。

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COOKPOT d'orge et légumes de saison, condiment de feuilles de moutarde

“クックポット” 大麦と野菜 からし菜風味

 プリ・フィックスメニューの前菜の選択肢の中で、ランチは+1,000円、ディナーでは+800円にてお選びいただけます。

 

Benoit伝統の逸品、「Notre PÂTÉ EN CROÛTE (パテ・アン・クルート)」が復活です。

 「Benoit Paris」が、フランスで開業したのが107年前のこと。時代に翻弄されながらも、いまだ老舗の雰囲気と味わいは健在です。同じ名を冠する「Benoit東京」の歴史はまだまだ足元には及ばないものの、味への訴求に妥協はありません。本家のパリBenoitに習い、フランスの伝統を昇華させることを日々心掛けております。

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 待望の「Notre PÂTÉ EN CROÛTE (パテ・アン・クルート)」が復活いたしました。鶏・鴨・豚・仔牛肉、豚の背油、フォアグラにトランペット・ドゥ・ラ・モー(きのこ)を、食味良く丁寧に合わせ、生地で包んでゆっくりと焼き上げたものです。それぞれの奏でる味わいを、曖昧にならないよう心明けることで、口に運ばれるパテの場所場所によって、表情を変えていきます。さらに、熱を加えることで肉よりしみ出でる旨みの肉汁を、生地が逃さないよう包み込む。これぞ、パテ・エン・クルートの最大の特徴でしょう。

 プリ・フィックスメニューの前菜の選択肢の中で、ランチ+1,000円、ディナー800円にてお選びいただけます。

 

香川県小豆島の「島鱧」が美味なり。

 

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 香川県小豆島(しょうどしま)。穏やかで温暖な瀬戸内海に浮かぶ県下最大の島です。オリーブ栽培で有名な地ですが、島だけに海産物も豊富。一見穏やかに見える瀬戸内海ですが、小豆島近海は海流が早い。そして、ここはエビ類カニ類が多く生息する海域でもある。ということは、この小豆島近海のハモは、筋肉質で実が締まり、美味しいエビ・カニをたらふく食すことで、ハモ自らが旨味をもつことになるのです。そのハモがBenoitに届いています。

 島鱧(しまはも)とは、どのようなものか?「はてなブログ」に詳細を記載しております。お時間のある時に以下のURLよりご訪問いただけると幸いです。

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 美味しい島鱧を、Benoitのシェフはどうするか?もちろん、フランスではお目にかからないハモは、シェフのセバスチャンにとって初めてのこと。焼いたり煮たりと試行錯誤の末、ふっと脳裏に浮かぶフランス伝統の逸品、「リヨンのクネル」だ!フランスでは淡水に棲むカワカマスを使用します。我々には馴染みのないこの魚は、小骨が多く、取り除こうとは微塵にも考えたくないもの。そこで、フランス人は考えたのです、「骨ごとミンチにしよう」と。そして、リヨンが内陸の地ゆえにエビはいない。では、代わりにザリガニで濃厚なソースに仕上げ、カワカマスと合わせようとなるわけです。この発想と同じく、小骨の多いハモは、ミンチにし、団子に姿を変えます。しかし、味わいは雲泥の差ほどにハモが勝る。そこで、海には海のエビでソースを仕上げようと。誕生!「島鱧のクネルBenoit風」です。

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QUENELLES à la lyonnaise, bisque légère

香川県小豆島産 “島鱧"のクネル リヨン風

 プリ・フィックスメニューのメインディッシュの選択肢の中で、ランチは+1,000円、ディナーでは+800円にてお選びいただけます。

 

郡上明宝牧場“クラシックポーク”、今度はロース肉でディナーに。

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 岐阜市から清流長良川を上流へと上がった先に、山間(やまあい)から突如姿を現す古京都を思わせるような街並み、これぞ奥美濃の小京都と称される「郡上八幡(ぐじょうはちまん)」です。県のほぼ中央、飛騨高地の南側に位置し、山々より湧きいずる美しきせせらぎが落ち合い長良川へ。郡上市のほぼ全域が長良川流域ということもあり、この豊富な水資源は、水路として街並みに引き込まれ、「水の町」としての名声は今でも健在です。

 この郡上市の片隅に、明宝牧場の広大な地が広がっています。澄んだ清らかな水と空気という、この類稀なる自然環境中で、さらにモーツアルトを聴きながら、ストレスなく健やかに育った「クラシックポーク」が特選食材です。最初にBenoitに届いたバラ肉が、あまりの美味しさに、シェフを始めスタッフ一同が絶賛。脂と肉のバランスが良く、特に脂の美味しさは「甘く澄んだ美しさ」です。そこで、今度は「ロース肉」の登場です。

この「郡上クラシックポーク」どれほどの特選食材であるか、詳細を「はてなブログ」記載しております。お時間のある時に以下のURLよりご訪問いただけると幸いです。

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 生では食すことのできない豚肉でありながら、焼き過ぎると固くなり、美味しさも逃げてしまう。なかなかに気難しい食材でもあります。今回は、ゆっくりと時間をかけながら低温で焼き上げることで、噛むほどにジュワっとくる豚ロース本体の旨味をお楽しみいただきます。トリミングすることで余計な脂や筋は取り除き、残した脂身には、仕上げにディジョンマスタードを少々。さらには、ソースにはピクルスを加えることで、豚の旨味の凝縮した甘さえ感じるソースに心地よい酸味と食感を加えます。

Longe de COCHON finement panée, sauce charcutière

岐阜県郡上の“クラシックポーク" ロース肉の香味焼き シャリュキトリーソース

 プリ・フィックスメニューのディナーのみ、肉料理の選択肢としてお選びいただけます。ランチでのご希望は、ご予約の際にお伝えいただけると幸いです。

 

岐阜県奥美濃古地鶏」とフォアグラのマリアージュが登場です。

 昔も昔の物語。天照大神を岩戸の中に身を隠し、世は闇の中へ。これは一大事と多くの神々が天照大神を岩戸から引き出すために、試行錯誤した様子が古事記に書き記されています。その時に、肌もあらわに踊った天宇受賣命(あまのうずめりみこと)は、芸能の神様として飛騨市河合町の鈿女(うずめ)神社に祀られています。その鳥居の下には「金の鶏」が埋められた。この鶏は天照大神を自ら「天の岩戸」を開けさせるため、気を引くために鳴かせたという「常世の長鳴鳥」だと。そして、この鶏こそ「岐阜地鶏(天然記念物)」の祖先であるという。岐阜県養鶏試験場が、この「岐阜地鶏」をもとに、「神代の味」の再現しようと研究を重ね、並々ならぬ努力の末に生み出したのが、「奥美濃古地鶏(おくみのこじどり)」です。

 雄大大自然のなかで、のびのびと育てあげられる奥美濃古地鶏。すべての生産者の鶏が、この名を名乗れるわけではありません。岐阜県では奥美濃古地鶏普及推進協議会を発足し、厳しい基準を順守する生産者のみに与えられるもので、定期的に調査を行うことで品質の維持に努めています。この徹底した管理のもとで育てられた鶏肉は、ほんのり赤みを帯びた歯ごたえのある肉質を生み出し、深みのある旨味に満ち満ちています。

 今回は、奥美濃古地鶏の美味しさを十二分にお楽しみいただきたく、胸肉のみを使います。ぱさぱさになりがちなこの部位は、実は火加減さえ間違えなければ、鶏肉本来の美味しさが満ち満ちているのです。しっとりとした食感と、旨味を引き出すために、時間をかけながら低温で調理をしていきます。ここへ、スペインの港町の名を冠する「アルビュフェラ」というソースを絡めるのです。調べると、多くのレシピが登場します。しかし、一味も二味も異なる美味なるソースを、Benoitシェフ野口が仕上げました。ブランデーとマディラ酒で香りとコクを加え、そこへフォアグラを潰しこんだ、口当たり滑らかなソースを鶏胸肉に絡めるのです。

 「昔、アラン・デュカスのレストランで食べたアルビュフェラが、あまりにも美味しくて…」と語る野口が、皆様に提案する冬らしい美味なる逸品です。鶏肉の持つ、美味しさを損なうことなくしっとりと仕上げたこの逸品は、「神代の味」を十二分にお楽しみいただけるはずです。時代を超えた神々の世界へ皆様を誘(いざな)うでしょう。

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VOLAILLE de Gifu, légumes en beaux morceaux, sauce Albuféra

奥美濃古地鶏" 胸肉と冬野菜 フォアグラのアルビュフェラソース

 プリ・フィックスメニューの前菜の選択肢の中で、ランチは+1,500円、ディナーでは+1,000円にてお選びいただけます。購入できる数量に限りがございます。ご予約の際に、ご希望数をお伝えいただけると幸いです。ご不便をおかけいたしますが、特選食材ゆえにご理解のほどなにとぞよろしくお願いいたします。

 

岐阜県の栗の名店“恵那川上屋さんの和栗”、Benoitへ、2019年版モン・ブランへと姿を変えます。

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 毎年姿を変えるBenoitの栗デザート「モン・ブラン」。2019年はどうなるのか?和栗の収穫を待ち続けてしまったがために、全ての食材がBenoitに集結したのは9月30日、まさに直前だったのです。その2019年版Benoitモン・ブランは、いったいどのように仕上がるのか?今回はBenoitパティシエール田中真理と、アジアを統括するパティシエであるジュリアンのニュアンスが加味されました。ジュリアンはアルザス出身、彼の地は栗デザートです。モン・ブラン発祥の伝統の地でもあるのです。彼の中でイメージしてきたのは、アルザスの伝統的なスタイル「Torche de Marron(トルシュ・ドゥ・マロン)」でした。トルシュとはトーチのことで、トーチの先に輝かんばかりに揺らめいている炎の模した姿のデザートということです。

 昨年に引き続き、岐阜県恵那市の「恵那川上屋」さんより、和栗を炊きほぐしていただいた栗のペーストを送っていただきます。55年間もの間、栗に向き合ってきた彼らの慧眼は本物です。昔から、「東山道」「中山道」の宿場町として、栗を旅人に振舞ってきた「栗菓子の技」。これを綿々と引き継ぎ今なお輝きを放つ栗菓子の逸品。フランスの洋栗と和栗が、Benoitで出会います。恵那川上屋さんのお話は、「はてなブログ」に詳細を記載しております。お時間のある時に以下のURLよりご訪問いただけると幸いです。

kitahira.hatenablog.com

 「栗きんとんそのままが美味しいのでは?」と皆様はお思いかもしれません。素材が美味しい上に、匠の技の為せる逸品であり、間違いはありません。しかし、そこのフランスのエッセンスが加味されたとき、和のお菓子とは、一味も二味も違った美味しさを我々に魅せてくれるはずです。2019年のBenoitのモン・ブランは?トルシュの姿だけお披露目いたします。皆様、気になりませんか。

 プリ・フィックスメニューのデザートの選択肢の中で、ランチ・ディナーともに+1,000円にてお選びいただけます。

 

広島県大崎上島の岩﨑農園さんから「瀬戸内レモン」」が届きました。

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 広島県、瀬戸内海に浮かぶ離島「大崎上島(おおさきかみじま)」。サンサンと降り注ぐ陽光に温暖な気候という恵まれた環境の中、飽くなき探求心と努力を積み重ね、類まれなる品質のレモンを育て上げているのが、岩﨑さんご一家です。陽射しばかりでなく、愛情もたっぷり受けて育ったレモンは、まろやかな酸味が特徴で、そのまま食すると皮のほろ苦さと相まって、なんと美味しいことか。すっぱさに顔をしかめる必要はありません。さらに、摘んだそのままを届けていただくため、表皮のワックスを取り除く必要もありません。まだ時期が早いために少々緑色ですが、これからゆっくりと美しい輝かんばかりの黄色に変わっていきます。レモン同士をこすった時に、透きとおった爽やかな香りが放たれる。そのまま目を閉じると、遠く潮騒(しおさい)が耳に届き、レモン畑から一望できる瀬戸内海に浮かぶ島々の美しさが脳裏に浮かぶ。

 さて、自分がBenoitで仕事を始めてこのかた、実は一度として「スフレ」を皆様にお勧めしたことがありません。理由は簡単なもので、一口二口は美味しいと思うも、食感変わらず味わいの変化もなく、飽きてしまうからです。「スフレ」という魅惑的な名前も、毎度の如く色褪せてゆくのです。しかし、今期は違いました。自分の中でお勧めすべきでデザートへとBenoitシェフパティシエールの田中が仕上げてきたのです。その大きな要因が、今回の特選食材「瀬戸内レモン」だったのです。

 ビスキュイ・ジョコンドという、通常はたっぷりのアーモンドを使うビスキュイ生地を、今回はたっぷりのヘーゼルナッツで焼き上げます。このしっとりと香ばしいビスキュイを器の底におき、瀬戸内レモンもマルムラード、その上にはヘーゼルナッツを加えたスフレ生地。そして、オーブンへ。これほどまで、ヘーゼルナッツを加えることは、風味が濃くなり飽きやすくなる。しかし、ジョコンドとレモンのマルムラードの食感の違いに加え、心地良いレモンの酸味とほろ苦さが、一口一口に違いをもたらし、この絶妙なバランスは飽きがくることなく、ぺろりと一つを完食してしまう。

 「寒くなってきたから、熱々のスフレ。」ではない、「岩﨑さんの瀬戸内レモンを待っていたから、お勧めのスフレ。」なのです。

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Soufflé aux NOISETTES

ヘーゼルナッツのスフレ

プリ・フィックスメニューのデザートの選択肢の中で、ランチ・ディナーともに+500円にてお選びいただけます。

 

岐阜県関市の「上之保ゆず」」が届きました。

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 岐阜県関市の上之保(かみのほ)。ここは長良川の支流、津保川の最上流部に位置し、総面積の実に89%が山林で占められた自然豊かな地です。この類稀なる環境は、柑橘栽培に適しており、昔からゆずが庭先に植えられていたようで、今でも県下一のゆず生産量を誇ります。この地で、ゆずを特産にしようと栽培に取り組んでいる一人の男性と、ひょんな機会に出会いました。上之保ゆず㈱の波多野政廣さんです。

 上之保という恵まれた自然環境を活かした、無農薬栽培を頑なに守り続け、もちろん仕上げの表皮へのワックスなどは皆無。お会いした当初は、ゆずはBenoitで購入するのは難しいかな、との思いでした。数か月も経たないうちに、Benoitパティシエから、「ゆずを探してほしい」と伝えられたのです。運命なのでしょう、出会うべくして出会ったのです。すぐに連絡すると二つ返事で「お送りします」と。

 見事なまでの美しく、芳しい香りを放つ上之保のゆず。もちろん、ゆず特有の酸味はあるものの、他地域よりも柑橘の甘みがある気がします。これほどの逸品を手にし、Benoitパティシエチームが「Non」というわけがありません。購入を即決した上に、すぐに試作に取り掛かったのです。12月9日からメニューに名を連ねました。

Coupe AGRUMES, granitéCampari

柑橘のクープ カンパリのグラニ

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 表記のどこにも「ゆず」が入らない、その理由は「上之保ゆず」だけで仕上げたソルベの試作を待っていたために、メニュー表記が間に合わなかったのです。柑橘特有の果汁の美味しさ、心地良い酸味を生かした、今回のソルベの美味しさは筆舌に尽くしがたく、ぜひ皆様にお楽しみいただきたいもの。この圧倒的な存在感を放つ「ゆず」に、旬を追いかけるかのように、西日本から柑橘がBenoitの続々届くことになっています。ライバルは何か?随時Facebookinstagramを通してご案内させていただきます。

 プリ・フィックスメニューのデザートの選択肢の中で、ランチ・ディナーともに+800円にてお選びいただけます。余談ですが、今回の「上之保ゆず」が、あまりにも美味しかったために、「クリスマスの特別チョコレートデザート」に採用されようとしています!一足先に美味しくいただいてしまいました。後はフランスからの返事待ちという今日この頃、待ち遠しや…

 

 

 雑木林を形成する重要な樹々である、コナラとクヌギ、さらにはミズナラを総称して、古人は「柞(ははそ)」と総称しています。この3種はブナ科に属し、その果実は「ドングリ」です。ドングリが、小動物の糧となり、それを捕食する自然の生態系の根幹をなす。生い茂っていた緑濃かった葉は、黄葉へと姿を変える。雨の一入が葉一枚一枚の緑色を落とすかのように。そして、役割を終え落葉する。堆積した大量の葉は、微生物にとっての快適な生活環境となり、肥沃な大地へと姿を変えてゆきます。

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 川が増水することで、種であるドングリが下流へと流されていったことでしょう。そして、そのドングリが芽を出すことで、下流域に新たな柞林が形成されてゆくことになります。今でこそ馴染み深い「柞」ですが、古人とってはこの「柞」の色の移ろいこそ黄葉だったのでしょう。晩秋から初冬にかけて、「あわれなり」と歌人たちの心を魅了して止まなかったようです。

散らすなよ 老木(おいき)の柞(ははそ) いまひとめ あひ見むまでの露の秋風  正徹(しょうてつ)

この秀歌は、自分に反省を施し、大切なことを教えてくれました。詳細は「はてなブログ」に書いております。お時間のある時に、ご訪問いただけると幸いです。

kitahira.hatenablog.com

 冬は時雨から始まる。少々暖かい気がいたしますが、冬の様相を見せ始めたようです。皆様、無理は禁物、十分な休息と睡眠をお心がけください。インフルエンザ予防接種もお忘れなきように。いつもながらの長文、最後までお読みいただき誠にありがとうございます。

末筆ではございますは、ご健康とご多幸をお祈りいたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com