kitahira blog

徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

2022年6月7月Benoit東京 春過ぎて夏来たるらし…6月7月≪特別プラン≫と≪お勧料≫のご案内です。

 マスクを着けての外出が常態化している昨今にありながら、バニラビーンズを想わせる甘い重厚な香りに散歩の足が止まります。その香りの先には、緑濃い葉の群(むら)の中で大輪を咲かしている樹がありました。厚みのある真っ白な花びらをもつこの花は、曇天だからこそ目を惹く美しさであるばかりか、香りが香りだけにお菓子でできているのではないかと思ってしまうほど。

 日本の「三大香木」とは、花開くと芳しい香りを周囲にはなつ樹のことを指し、春が「ジンチョウゲ」で秋が「キンモクセイ」、夏はこの「クチナシ」です。その花のまわりに漂う「うっとりとする妖艶な香り」は、急いてる気持ちを忘れてしまうほど、リラックスしすぎてしまう、ただただこの香りに溺れてゆく自分がいます。

 日本原産のクチナシ。一重咲きと八重咲きの2種類あり、前者のみ実を成すといいます。この実を乾燥させたものは、「山梔子(さんしし)」や「梔子(しし)」とよばれ、漢方の生薬として活用され、真っ白な花からは想像もつかない、赤みがかった黄色の「梔子(くちなし)色」の染料へ。さらには、染物ばかりではなく、和菓子やたくあんなどの色付けにも使用されています。残念ながら、花から魅惑の香成分はいまだ抽出できていません。

 

春過ぎて 夏来たるらし

 「らし」は客観的な根拠に基づく現在推定の意を持ちます。何かを見て、感じて、味わうことで知り得た情報を根拠に、「春が過ぎて、とうとう夏がやって来たようだな~」という意味になります。

 都会の喧騒の中でも、何気なく目にした草木から季節の到来を感じることができます。桜が咲けば春、黄葉・紅葉は秋、木枯らしで葉を散らした樹々で冬。今の時期では、ドクダミアジサイ、冒頭でご紹介した芳しい香りでも魅了するクチナシは、夏本番を迎えるまえの梅雨時期であることを我々に教えてくれます。

 そして、楽しかった記憶とともに、思い出深い地が脳裏に鮮明に浮かび上がってくるのではないでしょうか。小学校や中学校、近くの公園、家族や友人と訪れた旅先の地などなど…四季折々の風情豊かな日本だからこそ、そしてその地で育ってきたからこそ感じることができるのでしょう。

 「春過ぎて夏来たるらし」、年を経るほどに深まってゆくこの感性を大切にしてゆきたいものです。

 

首夏特別プランのご案内です。

 コロナ禍での不自由な生活も、はや3年目を迎えました。そのような人間を横目に見ながら、四季は巡り去ってゆきます。日本人は、季節の移ろいを、陽射しや風を肌で、順を追って咲き誇る花々や、青々と茂る叢叢(むらむら)の様を目で、風や雨の音を耳で、風が運んでくる香を鼻で、旬の食材で季節の美味しさを口で楽しむ。季節を五感で感じ取ることで、体を順応させているのではないかと思うのです。家にこもってばかりでは体調がすぐれない理由は、これではないかと思うのです。

 そこで、皆様には迎える猛暑な日々を乗り越えていただきたく、「首夏」と銘打った特別プランをご用意いたしまします。旬の食材は、今我々が欲している栄養が満ち満ちている上に、美味しいものです。その一つ一つを味わうことで、「春過ぎて夏来たるらし」と感じ入っていただければ幸いです。

 

首夏特別プラン

期間:土日を含めた2022731()まで

 

ランチ

① 前菜x2+メインディッシュ+デザート

6,000円→5,400円(税込/サービス料別)

※前菜を1つにし、デザートを2つ選べるプランに変更できます。

② 前菜+メインディッシュx2+デザート

7,500円→6,600円(税込/サービス料別)

 

ディナー

③ 前菜x2+メインディッシュ+デザート

8,600円→7,600円(税込/サービス料別)

※前菜を1つにし、デザートを2つ選べるプランに変更できます。

④ 前菜+メインディッシュx2+デザート

10,000円→8,800円(税込/サービス料別)

 

 その他にもケーキ付プランなどもございます。詳細は以下のURLよりBenoitの予約サイトを参照ください。ご希望日のご予約が取れない場合でも、まだお席が残っている可能性もございます。その時は、何気兼ねなく自分へ返信、もしくBenoitへご連絡(03-6419-4181)ください。ご要望や質問なども、喜んで承ります。

 

 

≪季節の話 「白妙(しろたえ)の衣とは?」≫

春過ぎて 夏来たるらし 白妙(しろたえ) 衣乾(ころもほ)したり 天の香具山

 この歌は、万葉集に綴られている持統天皇の秀歌です。おや?と感じた方は、百人一首を諳(そら)んじることのできる方ではないではないでしょうか。平安時代に、一部言葉遣いが変更されているのです。なぜでしょう?解くカギは「白妙の衣」なのですが、そもそもこの言葉はなんのことなのか?昔話ででてくる「天女の羽衣(はごろも)」のことなのか?皆様、気になりませんか?

 

≪旬の食材とお勧め料理のご案内です!≫

 草木の花々は移りゆく季節の機微を捉え、順を追って咲き誇るもいずれは散りゆきます。食材も同じように「旬」という期間は限られたものであり、「待つ」という優しさはありません。そこで、全ての旬食材は無理でも、Benoitの要望に応えてくれた逸材でこしらえた「旬の味覚」をご用意いたしました。お勧め料理を、皆様にご紹介させていただきます。

 

Soupe de POISSON de roche, rouille et croûtons aillés

魚のスープ ルイユとクルトン

※プリ・フィックスメニューの前菜として、ランチ+1,000円/ディナー+800円でお選びいただけます。

 

VICHYSSOISE rafraîchie, garniture taillée

ジャガイモの冷製スープ “ヴィシソワーズ”

※ランチとディナーのプリ・フィックスメニュー、前菜としてお選びいただけます。

 

Ratatouille de légumes du soleil, œuf mollet

夏野菜の冷たいラタトゥイユと半熟卵

※ランチのプリ・フィックスメニュー、前菜としてお選びいただけます。

 

Poulpe marinée, légumes à la grecque

天草産真タコと野菜のマリネ ギリシャ

※ディナーのプリ・フィックスメニュー、前菜としてお選びいただけます。

 

TERRINE DE FOIE DE VOLAILLE, pain toasté

鶏レバーのテリーヌ

※ランチのプリ・フィックスメニューの前菜としてお選びいただけます。ディナーでは、「サラダ・グルマン」の付け合わせとして登場いたします。

 

ISAKI au plat, légumes verts, sucs de cuisson

イサキのソテー 緑野菜

※ランチとディナー、ともにプリ・フィックスメニューの魚料理としてお選びいただけます。

 

Poêlée de calamars au piment d’Espelette, garniture d’une basquaise

下関産剣先イカポワレ パプリカのピペラード バスク

※ランチとディナー、ともにプリ・フィックスメニューの魚料理としてお選びいただけます。

 

AGNEAU rôti, légumes gratinés

仔羊のロースト 野菜のグラチネ

※プリ・フィックスメニューの肉料理として、ランチ+1,500円/ディナー+1,200円でお選びいただけます。

 

Joues de cochon cuisinées longuement, courgettes et pâtes fraîches

豚ホホ肉の煮込み ズッキーニとフレッシュパスタ

※ディナーのプリ・フィックスメニュー、前菜としてお選びいただけます。

 

Longe de cochon de Gifu au sautoir, fenouil cuit et cru

岐阜県ボーノポークロース肉のソテー ウイキョウ タジャスカオリーブ風味

※ディナーのプリ・フィックスメニュー、前菜としてお選びいただけます。

 

CAMEMBERT Bries de mer

カマンベール ブリーズ・ド・メール

※ランチでもディナーでも、ご希望の際にはスタッフにお声かけください。800円(税込)~でご用意させていただきます。

 

 話しが長くなるため、今回は料理の画像と名前だけを紹介させていただきました。これでは物足りない!とお思いの方は、詳細をブログに書き綴っております。どのような食材で、どう調理しているのか?お時間のある時に、以下のURLよりご訪問いただけると幸いです。

 

北平のBenoit不在の日

 私事で恐縮なのですが、自分がBenoitを不在にしなくてはならない7月の日程を書き記させていただきます。滞りがちだったご案内を充実させるべく、執筆にも勤しませていただきます。ご不便をおかけいたしますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。

  関東は梅雨明けを迎えました。猛暑な日々に加え、不安定な天気は、知らず知らずのうちに体力を奪ってゆくものです。さらに、疲労・ストレスなどが原因による免疫力の低下を招きます。皆様、十分な休息と休養をお心がけください。そして、こまめな休憩と給水をお忘れなきように。

 最後まで読んでいいただき、誠にありがとうございます。

 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

http://www.benoit-tokyo.com

2022年6月7月 Benoit「特選食材」と「お勧め料理」のご案内です。

 都会の喧騒の中でも、草木の花々は移りゆく季節の機微を捉え、順を追って咲き誇るもいずれは散りゆきます。今の時期では、ドクダミアジサイ、甘い香りをはなつクチナシの花が、夏本番を迎えるまえの梅雨時期であることを我々に教えてくれます。そして、食材も同じように順を追って収穫を迎え、我々に「旬」の到来をおしえてくれます。

 旬の食材には、今我々が欲している栄養が満ち満ちています。それを美味しくいただくことで、我々は「口福」え得るばかりか、季節をも再認識することができると思うのです。そして、脳みそが身体すみずみに、その季節を乗り越えるための秘策を伝達してゆく。今は、これから迎える猛暑な日々にむけて、身体を順応させるための期間なのです。春は続かない…気づけば夏が来ている…

春過ぎて 夏来たるらし

 Benoitの料理とデザートを通して、この感慨に浸っていただきたいと思います。

そうそう、「旬」という期間は限られたものであり、「待つ」という優しさを持ってはおりません。皆様、この機会をお見逃しなきように…

 

≪フランスの漁師料理、南仏マルセイユは「魚のスープ」です!≫

 この時期になると問い合わせが入るBenoit東京の「魚のスープ」。マルセイユの代表料理ですが、Benoitではドロドロしいというよりも滑らかに仕上げています。「魚介」ではなく「魚」のスープは、ワインを使用せず、魚そのものの美味しさを煮出したもの。エビ・カニ・貝類を一切加えないからこそ、魚のやさしい旨味を十二分にお楽しみいただけます。

 

Soupe de POISSON de roche, rouille et croûtons aillés

魚のスープ ルイユとクルトン

※プリ・フィックスメニューの前菜として、ランチ+1,000円/ディナー+800円でお選びいただけます。

 

 さて、このスープはどのような魚で仕込むのか?

 メニューには、「POISSON de roche」という文言があります。「roche(岩)」だけに「岩魚」やら「磯魚」との訳をあてています。確かに荒波の磯でもまれにもまれた魚種は美味しいもの。しかし、旨味の多い魚が磯ばかりではないことを、深い魚文化の日本人は知っている。

 ごつごつだったり、とげがあったり、ぬるぬるしていたり。自分のような素人が捌くには難儀な、ごつい頭と堅い骨があることでしょう。これが旨味のもととなります。どう調べても確証は得られませんでしたが、「roche」とは、そういう「ごつごつの魚」を総称して名付けたのではないとも思うのです。今は、オニカサゴ(1番目の画像)にホウボウ(2番目の画像)、そしてマゴチ(3番目の画像)。さらにイトヨリダイが、北九州や四国を主産地とし、Benoitに届いています。7月も後半になると、北日本青森県や北海道からオニカジカ(4番目の画像)も仲間入りすることでしょう。

 イトヨリダイ以外の4種の魚は、似ても似つかぬ容姿ですが、分類上では「カサゴ目」です。見た目からでは想像もつかないほど繊細で美味なる身質を持っている魚たちで、そのごつい頭や骨からは、得も言われぬ上質な旨味をとることができるのです。しかし、オニカサゴにオニカジカ…「オニ」「オニ」と、見たこともないのに、鬼にも魚にも失礼千万な話…

 では、Benoitではどうやってこれほどの旬の魚を、鮮度良く仕入れているのでしょうか?ここには、Benoitシェフ野口と、築地から始まり今は豊洲へ、ゆうに80年を超える歴史を持つ老舗魚卸「大芳」の宇田川さんとの、長年にわたって築かれた信頼関係が必要不可欠でした。シェフは魚種の希望を伝えるものの、最終判断は宇田川さんの目利きに頼ります。

 皆様の目の前で、スープがそそがれた直後から、磯の香りに包まれます。濃厚な茶色を帯びた深みのあるオレンジ色の液体は、透明感こそないですが輝きがある。濃厚ながら、甲殻類のような濃さではなく、さらりとした感さえあるものの、余韻に感じる魚の美味しさに酔いしれ、猛暑に疲れた体を癒してくれるはずです。一口お召し上がりいただき、目を閉じれば潮騒(しおさい)が耳に届き、目を開ければBenoitの窓越しに地中海が望める…かもしれません。

 

≪暑い時期だからこそ、ヴィシソワーズスープで始めてもいい…≫

 冷たいスープで火照った身体を内側から冷まし、食欲を呼び覚ます。かつてアメリカ合衆国で誕生したという冷製「ヴィシソワーズスープですが、どうも英語っぽくはないネーミングではないですか。それもそのはず、考案者であるシェフはフランスのVichy(ヴィシー)の出身だった。この町は、フランスを悠々と流れるロワール川を遡り、遡りさらに遡り、フランスの中央部辺りにまで達したところにヴィシーの街があります。そこで、子供の頃にお母さんが冷たく供してくれたジャガイモのスープが原点にあるのだといいます。

 お馴染みの食材であるジャガイモ。この素材が持ちうる繊細な旨味を生かすために、クリームを極力減らし、ミルクでのばしてゆきます。これだけでも美味しいのですが、そこへプルンと鶏ブイヨンジュレが加わることで、味わいに深みが増してきます。そして忘れてはいけないものが、バターをたっぷりつかったクルトンです。「後のせサクサク」とすることで、香ばしさと心地よい食感が生まれるのです。

 全てを混ぜるように馴染ませてお召しあがりいただくのも良いですが、敢えて混ぜないのも一興なり。スプーンですくう場所場所によって多彩な表情を見せてくれます。色とりどりに咲きほこるアジサイならぬ、Benoitヴィシソワーズスープの味彩をお楽しみください。このヴィシソワーズスープ、次に魚のスープをお選びいただいても自分は止めません。というよりも、お勧めしたいぐらいです!

VICHYSSOISE rafraîchie, garniture taillée

ジャガイモの冷製スープ “ヴィシソワーズ”

※ランチとディナーのプリ・フィックスメニュー、前菜としてお選びいただけます。

 

プロヴァンス地方の夏を代表する料理「ラタトゥイユ」が前菜です!

 夏野菜を代表するナス、ズッキーニ、パプリカをトマトで煮込んでいったプロヴァンス伝統料理です。家でも作りやすいこともあり、馴染みの料理でえはないでしょうか。とはいえ、ご家庭と同じでは「プロの調理人」ではないわけで、Benoitのプリ・フィックスメニューに名を連ねるということは、やはり美味しいということなのです。

 ナス、ズッキーニ、パプリカとタマネギは、それぞれを絶妙な食感を残すように焼いてゆきます。野菜そのものの旨味が、熱が加わることでさらに引き立つかのよう。そして忘れてはいけない食材、、完熟まで収穫を待った真っ赤なパンパンのトマトとともに大鍋で一堂に会するのです。くたくたと煮込むことは、それぞれの野菜の甘さ凝縮させることになり、甘みが増します。さらに、冷ますことで、味わいが落ち着き、野菜のコクが際立ちます。松の実を加えることで、カリっと心地良い食感と、夏なのでナッツの香ばしさを…さらに、半熟卵のとろりとくる黄身との相性も抜群とくる。

Ratatouille de légumes du soleil, œuf mollet

夏野菜の冷たいラタトゥイユと半熟卵

※ランチのプリ・フィックスメニュー、前菜としてお選びいただけます。

 パリの赤ペン先生がフランス語表記を修正してきました。「légumes d’été (夏野菜)」から「légumes du soleil (太陽の野菜)」へと。なかなか粋な表現だと思いませんか?

 

Benoit東京で初めて姿を見せる食材…マダコ!≫

 「タコの産地といえば?」という問いに、真っ先に思い浮かぶのが兵庫県の明石(あかし)ではないでしょうか。高品質なうえに、水揚げ量が日本一を誇ります。これほどのタコ銘産地でありながら、存亡の危機に晒された時がありました。今から50年以上も前のこと、この海域に大規模な赤潮が発生し、タコが全滅に近い状況に陥ったのです。タコ産地としての復活を願う明石の漁師さんは、美味しいタコを探すべく全国を行脚したといいます。そして、彼らが選んだのが、熊本県天草のマダコでした。そこで、明石の漁師さんは天草へ船で訪れ、100tほどを譲り受けた後に明石の海に放流したのです。

 Benoitには、この明石の親ダコともいえる「天草のマダコ」が届いています。有明海に面した天草の北側には、「ありあけタコ街道」と愛称がついているほど。噛めば噛むほどに、タコらしい濃ゆい旨味が口に広がります。そして、この天草タコがBenoitで出会うのが、天草のお隣である宇城市の不知火から、のむチャン農園の「河内晩柑(ジューシーオレンジ)」です。同郷のよしみというよりも、このマリアージュは出会うべくして出会う運命にあったのではないかと。そう思ってしまうほどの相性の良さで、我々を魅了してくれます。

 丁寧に下ごしらえされ、やわらかく茹でたマダコ。そして、極力甘さを控えて仕上げた河内晩柑のマルムラード。さらに、ギリシャ風と銘打たれた野菜が一堂に会します。この野菜のギリシャ風とは、セロリ、ニンジン、タマネギ、カリフラワー、それにラディッシュ。レモンにコリアンダーの種を使い、絶妙な火加減で調理してゆき冷蔵庫で一晩休ませたもの。コリアンダーパクチーのことで、苦手の方の多い香草かと思います。しかし、このコリアンダーの種は、うんともすんともいわない味気ない食材。ところが、野菜とともに熱を加えることで、野菜本来の甘さを引き出すのです。

 ぬくいマダコが、天草産がどれほどの逸材であるかを教えてくれる。さらに、野菜それぞれの食感がリズミカルに口中に響き、野菜それぞれが甘さ旨さの旋律を奏でます。そして、河内晩柑の甘ほろ苦さが、全ての食材を引きあわせ、調和をもたらす。この美味しさに酔いしれ、Benoitの窓へと目を移すと…そこにはエーゲ海がひろがっている…かもしれません。

Poulpe marinée, légumes à la grecque

天草産真タコと野菜のマリネ ギリシャ

※ディナーのプリ・フィックスメニュー、前菜としてお選びいただけます。

 

≪まとわりつくようなレバーの美味しさをご堪能ください!≫

TERRINE DE FOIE DE VOLAILLE, pain toasté

鶏レバーのテリーヌ

※ランチのプリ・フィックスメニューの前菜としてお選びいただけます。ディナーでは、「サラダ・グルマン」の付け合わせとして登場いたします。

 

 Benoitがビストロである真髄は、やはり「テリーヌ」にあるのではないでしょうか。あまりにも有名な料理だけに、これといった決まった素材や調理法があるわけではなく、シェフの個性が表現される料理でもあります。Benoitの王道でもある「テリーヌ・ド・カンパーニュ」、そこのけとばかりに6月からメニューに割って入ったのが「鶏レバーのテリーヌ」です。

 鴨のレバーを太らせたものが「フォアグラ」であれば、ニワトリを太らせると「白レバー」です。これをたっぷりと使うのですが、これではレバーペーストになってしまいます。そこで、豚肉で肉肉しい食感と豚の背油で旨味を加えるように、よく混ぜ合わせ、テリーヌの型で焼き上げます。レバーの比率が高いため、熱が入り過ぎればパサパサとなる。断面がほのかにピンク色の、この職人技ともいえる火入れが、まとわりつくような白レバーの旨味を逃がしません。レバー好きにはぜひお楽しみいただきたい逸品です。

 

≪イサキが夏を告げにBenoitへ!≫

 関東近海ではなく、遠く西へ向かった地からBenoitに届けられるイサキは、対馬海流や豊後水道でもまれにもまれ、豊富な小エビのようなアミ類やシラスなどの仔魚をたらふく食しているからこそ、きれいな脂がのりにのった黒光りするパンパンの体系。だからこそ、長崎県大分県のイサキは、他に類を見ないほどの美味しさを誇ります。参考までに、魚の鮮度は目の澄み具合で推し量るといいますが、イサキ鮮度に関係なく目が白濁するため、参考になりません。

 Benoitだけに、お刺身で楽しむわけにはゆきません。丁寧に下ごしらえされた、見るも美しい切り身に、最後の一手間をかけることになります。「焼き」という、簡単そうで奥の深い最後の工程です。食材が持ちうる美味しさが、下ごしらえが、全て水泡に帰するかもしれません。「生」ではないが焼き過ぎない。言うは易く行うは難しとは、このことでしょう。職人としての経験に裏打ちされた「焼の技」が、イサキのさらなる美味しさ引き出すのです。

 夏を告げにきた魚だけに、新樹を想わせるような青々とした夏を代表する野菜を添えたいものです。中でも、イサキの下に広げた、ズッキーニの甘さと心地よいヴィネガーの酸味が、これほどまでに相性が良いものだったのかと思わずにはいられません。イサキの添えものでありながら、ソースのようにともに食した時には、皆様を「口福な食時」へと誘(いざな)うことでしょう。

ISAKI au plat, légumes verts, sucs de cuisson

イサキのソテー 緑野菜

※ランチとディナー、ともにプリ・フィックスメニューの魚料理としてお選びいただけます。

 

≪剣先イカ、シロイカ、アカイカ、皆様いかが?≫

 関門海峡を横切るように架かる瀬戸大橋。その山口県側の下関沿岸、橋のたもとから少し西側へ向かった先に、唐戸市場が開けています。そこでは、毎日のように近海で水揚げされた旬の魚介類が競り落とされ、地方に送られるばかりではなく、その場でも購入することができ、さらには美味しくいただくこともできます。

 彼の地で、鮮魚店を営んでいる道中さんが、まさに旬を迎えている剣先イカをBenoitに送り出してくれます。剣先イカ山口県では「シロイカ」と呼び、島根県では「アカイカ」といいます。その地その地で愛称があるということは、旬の食材として愛着があることの証ではないでしょうか。それでも「白」と「赤」では、違い過ぎるのでは…そう思うも、鮮度の良い剣先イカの姿を見ると、なるほど!と思ってしまう自分がいます。

 バスク風のピペラードとは、パプリカと玉ねぎをしんなりと炒めることで野菜そのものの甘さを引き出し、完熟トマトでコクと心地良い酸味を加え、さらに生ハムで旨味を足したもの。これだけでも美味しい!これをお皿にも盛り付け、ニンニクで香りづけしたほわほわミルクをかぶせ、ぱちんとするかのように焼きを入れた剣先イカをのせます。

 剣先イカの旬の旨さを際立たせるかのような夏野菜。香り良いミルクのまろやかさ。イカ墨のソースで、さらなる旨味を加ええる。さらに、はらはらと振りかかるフランスの旧バスクの地、エスプレット村の特産唐辛子が、ピリりと全体を引き締める。全てが一堂に会する時、そこには旬そのものお楽しみいただける一皿が姿をみせます。昨年の秋に登場した「アオリイカ」とは一味も二味も違う美味しさをお楽しみください。

Poêlée de calamars au piment d’Espelette, garniture d’une basquaise

下関産剣先イカポワレ パプリカのピペラード バスク

※ランチとディナー、ともにプリ・フィックスメニューの魚料理としてお選びいただけます。

 

Benoitでは、年に一度だけ姿を見せる仔羊です。≫

AGNEAU rôti, légumes gratinés

仔羊のロースト 野菜のグラチネ

※プリ・フィックスメニューの肉料理として、ランチ+1,500円/ディナー+1,200円でお選びいただけます。

 

 仔羊の骨付き背肉を表面に焼き色を付け、ふつふつとしたバターをふりかけながら、ゆっくりゆっくり熱を加えてゆく。この魅惑的な香りをどう表現したものか。表面には美味しそうな焼目がつくが、中はまだ生のままです。肉が内包している温まった肉汁を利用し、中からじっくり熱がゆきわたるように、温かい肉部屋で休ませロゼ色に焼きあげます。この美しい焼色なくして、仔羊の美味しさを味わえないでしょう。

 目の前に運ばれてきた時、仔羊の焼き色と夏野菜のグラチネの色のコントラストが目を引き、甘い野菜と焼いたパルメザンチーズの香りが漂います。そこへ、仔羊の旨味の凝縮したソースを、そっとお肉へかけてゆく。全てが一堂に会する時、なぜシェフがお勧めするのか、お分かりいただけるはずです。

 

≪豚ホホ肉を知ると、もう牛ホホ肉には戻れない…≫

Joues de cochon cuisinées longuement, courgettes et pâtes fraîches

豚ホホ肉の煮込み ズッキーニとフレッシュパスタ

※ディナーのプリ・フィックスメニュー、前菜としてお選びいただけます。

 

 豚ホホ肉の繊細な旨味を活かす生かすため白ワインを使い、香味野菜と煮こむこと1時間ほどで、ほろりと崩れるように。ここで豚ホホ肉は避難。鍋に残った旨味のスープを煮詰め、フォン・ド・ヴォーを加え煮詰めたものを、避難させていた豚ホホ肉に絡めます。そしてズッキーニとともに盛り付け、パスタが別添え。ナイフが必要ないほどにやわらかいホホ肉をお楽しみください。

 どうして食材として名が挙がらないのか?と不思議になるほどの美味しさがあります。そう、豚ホホ肉を知ってしまうと、もう牛には戻れなくなる…

 

≪ボーノ(美味しい)という名を冠したボーノポーク?!

 「ボーノポーク」は、イタリア語で美味しいという意味の「ボーノ」という言葉を冠し、なんとも軽々しい印象を受けますが、その実は、岐阜県の中濃ミート事業協同組合の威信にかけて育て上げた銘柄豚です。飼育地は、県内の瑞浪(みずなみ)市、山県市、揖斐(いび)市の3地域。3つの種の掛け合わせで誕生した三元豚で、そのひとつが霜降り割合を増加させる能力を持つ、岐阜県が開発育種した「ボーノブラウン」という種豚です。

 抗酸化能とオレイン酸を多く含む植物性原料を含み、飼料中のアミノ酸バランスを調整した専用に開発された飼料を与えています。この飼料を含め、徹底した管理のもとで飼育されることで、霜降り割合が一般的な豚肉の二倍にものぼり、肉自体の旨味を十二分に堪能できる上に、脂の甘味か加味されるのです。さらに、一般に流通している豚肉よりもドリップロスが少なく、肉の旨味が逃げにくいのが特徴といいます。

 飼育した全てが「ボーノポーク」というブランドを冠することはありません。県下の和牛ブランド「飛騨牛」が、霜降り具合を目視によって5等級なのか4等級なのか、はたまた3等級なのかと振り分けるように、この豚もまたロース部位を目視によって判別してゆきます。違う点は、区分けが「ボーノポーク」か「一般的な豚」の2択であるということ。

 皆様が、「ボーノポーク」という豚の名前を耳にしたことがないのも当然、徹底した管理のために多くを飼育できない上に、厳しい選別ゆえに流通量が極端に少ないのです。その、貴重な豚肉がBenoitに届いています!

 どれほどのブランド肉でも、豚肉は生では食せず、良く焼くと硬くなります。そこで、ロースの部位を厚めにカットするのですが、休ませながら断面がうっすらとピンク色になるように丁寧に焼き上げることで、しっとりとした食感とボーノポークの旨味を十二分に堪能できるように仕上げるのです。さらに、イタリアのタジャスカ村で栽培されているオリーブ「タジャスカ種」を細かくカットし、焼いた豚肉の片面にのせて盛り付けます。このオリーブの旨味と塩っからさが、いい仕事をします。

 

Longe de cochon de Gifu au sautoir, fenouil cuit et cru

岐阜県ボーノポークロース肉のソテー ウイキョウ タジャスカオリーブ風味

※ディナーのプリ・フィックスメニュー、前菜としてお選びいただけます。

 

≪国産のカマンベールチーズが、ついにこの美味しさにまで!≫

 日本屈指のタカナシ乳業と、フランスはノルマンディー地方のイズニーサントメール酪農協同組合が、本気になった。

 北海道の東南に位置する根釧地区は、酪農の産地として名高い。広大な大地には牧草が青々と生い茂る。暑さに弱い牛にとって、夏をどうしのぐかが悩みの種。皆様が夏の生乳を、軽く感じるのは皆様が夏バテしていて味覚が鈍っているのではなく、牛が夏バテをしてるからです。特に、猛暑を運ぶ南風は如何(いかん)ともしがたいもの。この根釧地区は、南からくる暑い風が、寒流である千島海流によって冷やされ、海霧となったものが根釧地区に吹き込むのです。野菜の栽培には不向きであっても、牛にとってはこれほどの好環境はないのではないでしょうか。

 この地で育まれている牛「ホルスタイン種」に加え、フランスから「ノルマンド種」を連れてきた!イズニーサントメール酪農協同組合の伝統製法と門外不出の乳酸菌を受け継ぎ、ここにタカナシ乳業が培ってきた日本の技術が融合する。「根釧地区らしい、誰も食べたことのない熟成チーズの傑作を皆様に!」という想いのもと、4年にもおよぶ研究の歳月を経て、ついに姿を現しました。

 フランスのノルマンディー地方出身のフランス人お方に、このチーズを供した時、彼はこう言った…「カマンベールチーズは、日本が発祥だったかな」と。なんとも嬉しい言葉ではないですか!皆様、気になりませんか?

 

CAMEMBERT Bries de mer

カマンベール ブリーズ・ド・メール

※ランチでもディナーでも、ご希望の際にはスタッフにお声かけください。800円(税込)~でご用意させていただきます。

 

≪季節の話 「白妙(しろたえ)の衣とは?」≫

春過ぎて 夏来たるらし 白妙(しろたえ) 衣乾(ころもほ)したり 天の香具山

 この歌は、万葉集に綴られている持統天皇の秀歌です。おや?と感じた方は、百人一首を諳(そら)んじることのできる方ではないではないでしょうか。平安時代に、一部言葉遣いが変更されているのです。なぜでしょう?解くカギは「白妙の衣」なのですが、そもそもこの言葉はなんのことなのか?昔話ででてくる「天女の羽衣(はごろも)」のことなのか?皆様、気になりませんか?

 

 関東はまもなく梅雨明けを迎えるでしょうか。猛暑な日々に加え、不安定な天気は、知らず知らずのうちに体力を奪ってゆくものです。さらに、疲労・ストレスなどが原因による免疫力の低下を招きます。皆様、十分な休息と休養をお心がけください。そして、こまめな休憩と給水をお忘れなきように。

 最後まで読んでいいただき、誠にありがとうございます。

 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com

2022年6月 季節のお話「白妙(しろたえ)の衣とは?」

春過ぎて 夏来たるらし 白妙(しろたえ) 衣乾(ころもほ)したり 天の香具山  持統天皇 万葉集巻第一・二十八

 

 「大化の改新」の立役者である天智天皇を父とし、「壬申の乱」によって即位した天武(てんむ)天皇を夫とする。天の思し召しなのでしょうか、夫の目指した偉業を成しえようと奮闘するも、世継ぎがうまくゆかず、孫の文武(もんむ)天皇が即位するまでの7年間の政(まつりごと)を司ったのが、詠者の持統天皇です。史上3人目の女性天皇であり、文才はもちろん、相応に聡明であったといいます。

 かつて、推古天皇在位中は、補佐役に聖徳太子がつていました。持統天皇に補佐役は見当たらず、夫である天武天皇に習うかのようにトップダウンによって政をこなしていたようです。ただたんに真似ていたのではなく、政務に優れていたからこそ、藤原京への遷都を成し、日本史上最初の律令法である「飛鳥浄御原令(あすかきよみはらりょう)」を施行する。この律令法は、天武天皇が編纂を命じ、持統天皇治世に完成されたという。残念ながら現存していないため、存在の有無も議論の的となっています。言い換えると、地方豪族が跋扈(ばっこ)するなかで律令法を施行することが、どれほどの偉業であるかを物語っている気がします。

 しかし、持統天皇は、強権を発動するにあたり必須とされる、天武天皇のようなカリスマ性はありませんでした。この点を十分理解していた持統天皇は、由緒ある地や天武天皇ゆかりの地を訪問する「行幸(ぎょうこう)」を数多くこなすこなすことで、先代のカリスマ性にあやかるという策を講じたようなのです。自らの治世を文武天皇に引継ぎを終え、ついに701年に「大宝律令」の成立を迎えます。祖母である彼女が立役者であったことは言うに及ばないでしょう。

 

 「国見/望国(くにみ)」という言葉があります。かつては土俗祭祀のひとつであったようですが、領主が高い所に登り、領地を望み見ることをいい、天皇もこれにならうようになったのだといいます。人々が農作業に勤しむ姿を遠く眺めることで、国力を計っていたのでしょうか。家から立ち上る炊事の煙を見ることで、人民の生活状態を推し量っていたのでしょうか。はたまた、国の地勢を確認し次なる開拓地を検討していたのでしょうか。

 持統天皇が遷都を成し得た藤原京、そこから南東に見えたであろう「天の香具山」。国見のために登ったのか、行幸の途中に立ち登ったのか。道すがら、天の香具山の麓(ふもと)で、風ではためく「白妙の衣」を目にしたのでしょう。その光景が、持統天皇に「春が過ぎて、夏がきているのですね」という感慨を与えたのです。

 「白妙」とは「白栲/白𣑥」とも書き、この「栲/𣑥」とは梶(かじ)やコウゾの木の古名で、今でも和紙の原料となっています。この樹皮から繊維をとり、織り込んで白っぽい布をこしらえ、衣服へと仕立てたものが「白妙の衣」だといいます。生地は、水通ししてから乾かすことで繊維どうしが馴染むものです。しかし、これを天日に晒して乾燥させてしまうとゴワゴワになるので、きっと木陰に干していたのではないかと思うのです。

 

 なるほど!きっと万葉の時代には、首夏の風物詩だったのでしょう。山の麓の木陰にはためく白妙の衣…ベランダにはためく洗濯物ではないですよ…とのどかな光景に浸っている中で、ひとつ疑問が頭をもたげる。春過ぎて、多忙を極めるのが稲作です。夏が来たようだ~とのんきなことを言っている隙などないほど、家族総出で、いや村総出で行わなければならないのが田植です。今のように田植え機などあろうはずもなく、手植えですから。

 初夏に飛来するホトトギスは、美しいこの声で我々に「田植え」の時期であることを教えてくれるので、「時鳥」と書きます。多くの歌人を悩ませるほどのその美声は、稲作農家にとっては田植えの催促だったはずで、雑節「半夏生(はんげしょう)」までに田植えを終えなければ、秋の収穫には間に合わないと言われています。夏至から11日目が半夏生で、変動するもの7月2日前後です。

 このような稲作事情に加え、梅雨前の不安定な時期でもあります。冬に編み込んだ生地を春先のやわらかい陽射しの方が「白妙の衣」を干すのに良い時期なのではないと思うのです。持統天皇の遺したこの歌は、新古今和歌集百人一首では、一部言葉を変えてこう綴られています。

 

春過ぎて 夏来たるらし 白妙の 衣乾したり 天の香具山  持統天皇 「万葉歌」

春過ぎて 夏来にけらし 白妙の 衣乾すてふ 天の香具山 「新古今和歌集」「百人一首

 

 「らし」は客観的な根拠に基づく現在推定で、「けらし」は過去の根拠に基づく過去推定を意味します。白妙の衣を干してある光景を見て、持統天皇は「夏がきているのでしょう」と詠うも、後世では「夏がきたということなのでしょう」という。そして、「たり」は継続や存続を意味する完了の助動詞です。平安時代に「ひらがな」が誕生したこともあり、言葉の多様性が生まれたのでしょう。「てふ」は、「と言う」という意味の女性言葉。

 なぜ書き換えたのか?首夏に衣を干すと自体が、平安時代にはすでに行われていなかった。だから、季節の風物詩としての根拠が薄いため、過去推定の「けらし」へ、そして継続・存続していないから「てふ」に書き換えたのではないかと思うのです。梶(かじ)やコウゾは和紙としても活用され、平安時代では天日干ししていたのではないかとも思う。ともすると、その光景を目にして、持統天皇の秀歌を思い浮かべたのでしょうか。ただ、あ~春過ぎて、夏が来たのだな~と感慨には浸れません。

 ここまでくると、持統天皇は白妙の衣が干してある光景を目にし、この歌を詠ったのかどうか…もしや、誰もが知る何かの比喩として、「白妙の衣」と表現したのではないか?霧深い山に迷い込んだかのよう…いや、春の山間に表れる霞(かすみ)、その深部にさ迷い込んだかのようで、「夏来たるらし」という時期ではあっても晴れる気配はないようです。間違いなく素人の自分に結論が出るような話ではないと思いつつも、考えている自分が楽しくもある。

 そんな折に、平安時代末から鎌倉時代初期と激動の時代を生き抜いた歌僧、西行の一首に出会いました。持統天皇の歌に出会う前であれば、美しい歌だなと感じ入るだけだったかもしれません。そういえば、歴史は古代史から学びます。時の経過とともに移りゆく時代背景を理解しないと、「なぜ?」が解けないからです。西行の前に持統天皇は詠いました…そう思うとなにやら西行のこの一首が意味深長に思えてなりません。

 

まがふべき 月なきころの 卯の花 夜さえさらす 布かとぞみる  西行

 月が姿をみせない「朔(さく)」の頃なのか、夜半過ぎに月が姿をみせる「臥し待ち月」の頃なのか。古文でいう「月かげ」とは、月明かりの事を言い表します。今の都心では、夜中でも街灯が明るく夜道を照らすため、分かりにくいものですが、月明かりは眩い光をはなつわけではありませんが、白々しい影ができるほどに地球を照らします。「月かげ」とは、かくも美しい表現なのかと思います。その月かげがない闇に包まれた山の麓で…咲き誇る卯の花の白々さが、闇の中で浮かんでくる。夜にまで干している布のように見えるではないか…

 「卯の花」は、ウツギの花のこと。かつては、初夏の彩りの一役を担っていた花だといいます。悔しいかな、いまだ自分が都内で見つけることができずに3年が経ち、今年も断念いたしました。いったいどのような花で、どのように咲き誇るのか?

 そこで、栃木県在住の師匠、木村様に相談させていただきました。毎日のように四季折々の草木や風景をインスタグラムで投稿されており、自分も「はっ!」と気づかされることばかり。四季は巡り去ってゆくことを教えてくれます。快く彼女が送ってくださった、ウツギの花の画像を目にした時、なるほど!と感じ入る。クチナシの花でもなく半夏生のような葉でもない。月かげの無い中で、西行が「白い布」と見間違うと詠うウツギの花。点在して花開くのではなく、葉が生い茂る群青の中に、小指の先ほどの大きさの白い花が咲き誇る。それも密集して花開くのですが、アジサイのように丸くまとまるのではない…そう、ウツギの樹に白い布を干しているかのように、縦に延びる帯状に。

 西行の歌の中に意味深な文言が、「まがうべき」の「べき」。この原型は「べし」で、経験や道理などから判断して、そうあるのが当然だろうと確信をもって推量する意をもちます。「まがうべき」とは、あまりにも似ていて間違いやすいに違いない!という現代語訳になります。

 さて、西行は「闇夜で白々しく浮かびあがるウツギの花々」を目にし、これを確信の拠り所として「卯の花」が「白い布」と見間違うのは当然である!と詠った。しかし、視点を変えてみると、「闇夜で白々しく浮かびあがるウツギの花々」を目にし、これを確信の拠り所として「白い布」を「卯の花」と表現することは、見当違いなことではない!?と歌意を汲むこともできなくもない。

 そうなると、西行は眼前に広がる光景から、先人の秀歌を想起し、先人が意図的にウツギを「白い布」と書き遺したのだと喝破したことになります…

 

春過ぎて 夏来たるらし 白妙の 衣乾したり 天の香具山  持統天皇

 持統天皇は、行幸の道半ばで天の香具山の麓で白妙の衣を干している光景を目にし、春が過ぎ夏が来たのですね…と感慨に耽(ふけ)ったのでしょうか。それとも、目にしたの白妙の衣ではなく、麓に咲き誇るウツギの花であり、その花の比喩として白妙の衣と詠ったのではないでしょうか。

 藤原京への遷都を成し、日本史上最初の律令法を施行するほど政務の能力に長けていたといいます。補佐役の名前が挙がらないことからも、持統天皇は多忙極める日々を過ごされていたことでしょう。ふっと息抜きをした時に、庭の片隅に咲き誇るウツギの花を目にされた。政務に追われる中で自然の機微を感じることのできた「ひととき」だったのかもしれません。

 「たり」は継続や存続を意味することから、その日から数日は意識的にウツギの花をご覧になっていたのか…あ~春が過ぎて夏が来たのですね。きっと天の香具山の麓では、このウツギの花が咲き誇っていることでしょう…何の確証もない推論です。

 

 都会の喧騒の中でも、何気なく目にした草木から季節の到来を感じることができます。桜が咲けば春、黄葉・紅葉は秋、木枯らしで葉を散らした樹々で冬。今の時期では、ドクダミアジサイ、冒頭でご紹介した芳しい香りでも魅了するクチナシは、夏本番を迎えるまえの梅雨時期であることを我々に教えてくれます。

 そして、楽しかった記憶とともに、思い出深い地が脳裏に鮮明に浮かび上がってくるのではないでしょうか。小学校や中学校、近くの公園、家族や友人と訪れた旅先の地などなど…四季折々の風情豊かな日本だからこそ、そしてその地で育ってきたからこそ感じることができるのでしょう。

「春過ぎて夏きたるらし」、この感性は大切にしてゆきたいものです。

 

 草木の花々は移りゆく季節の機微を捉え、順を追って咲き誇るもいずれは散りゆきます。食材も同じように「旬」という期間は限られたものであり、「待つ」という優しさはありません。そこで、全ての旬食材は無理でも、Benoitの要望に応えてくれた逸材でこしらえた、まさに「旬の味覚」の料理とデザートをご用意いたしました。その旬の食材とお勧め料理/デザートを、皆様にご紹介させていただきます。

 

 関東はまもなく梅雨明けを迎えるでしょうか。猛暑な日々に加え、不安定な天気は、知らず知らずのうちに体力を奪ってゆくものです。さらに、疲労・ストレスなどが原因による免疫力の低下を招きます。皆様、十分な休息と休養をお心がけください。そして、こまめな休憩と給水をお忘れなきように。

 最後まで読んでいいただき、誠にありがとうございます。

 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

http://www.benoit-tokyo.com

 

2022年7月 「北平がBenoitを不在にする日」のご報告です。

 私事で恐縮なのですが、自分がBenoitを不在にしなくてはならない7月の日程を書き記させていただきます。滞りがちだったご案内を充実させるべく、執筆にも勤しませていただきます。ご不便をおかけいたしますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。

2()

9()

14()

19()

23()

25()

28()

 自分への返信でのご予約はもちろん、BenoitのHPや、他ネットでのご予約の際に、コメントの箇所に「北平」と記載いただけましたら、自慢の料理の数々を語りに伺わせていただきます。自分が不在の日でも、お楽しみいただけるよう万全の準備をさせていただきます。何かご要望・質問などございましたら、何気兼ねなくご連絡ください。

 

 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

http://www.benoit-tokyo.com

 

2022年6月 Benoitミュージックディナー「フレンチでタンゴ」のご案内です。

 動物界においては、自ら動き語ることで、パートナーとの出会いを探し求めるようです。美しく響き渡る小鳥たちのさえずり。さらには、美しくもリズミカルに舞うタンチョウ。どちらも、鳥たちにとっては言葉がなくとも通じる求愛の形です。

 人間の歴史を紐解いてみても、言葉という意思疎通のできるツールが無くとも、リズムを奏で、踊ることで神々と語り、感謝の気持ちを伝え、未来を占ってもらおう、もしくは導いてもらおうとしていることがわかります。力強くもリズミカルな太鼓の音に高ぶる気持ち、激しい舞を躍ることで神と一体化する儀式。神妙なる音楽に任せて、ゆったりと舞う巫女さんの姿には、尊厳の念を感じるものです。ほんの一例ですが、どちらも言葉を必要としません。

 神々への畏怖・畏敬の念から、愛情表現へと変わってゆくことは自然の流れであったはずです。そして、人々が切磋琢磨することで、至上の高みへ達した時、我々を魅了して止まない芸術となる。その一つが、「アルゼンチンタンゴ」です。そこで、「フレンチでタンゴ」と銘打って、皆様に音楽と舞の共演を、お食事も含め、五感を通してBenoitでお楽しみいただこうと思います。

 堤崎尚子さんとCristian Andrés Lópezさんは、2008年よりクリスティアン&ナオとして本格的に活動を開始し、翌年には世界選手権サロン・ステージ両部門でのファイナリストにまで上り詰める。さらにここから2012年まで4年連続での両部門ファイナリストという快挙を成し遂げるのです。

 情熱的・官能的でアクロバティックな踊りがタンゴダンスを思ってしまうのですが、彼らの舞を目の当たりにすることで、このようなタンゴのイメージが瓦解するのは必須。タンゴダンスの原点は「abrazo(抱擁)の舞」、彼らは我々に「パートナーと共に歩む」ことの大切さを伝えようとしている。

 しなやかながら機敏に流れ、一糸乱れぬ見事なステップの織りなす彼らの華麗なるダンス…感情のぶつけ合いや、挑戦的な行為を全て削ぎ、パートナーの優しさを感じることで、共鳴する感情を表現する。水の流れのように…清流のごとく美しくも繊細にしなやかに。さらに、緩急を織り交ぜながら…そうかと思えば、時の流れとともに大きな川へと変わり、緩やかながらも随所に見せる力強さ。そして母なる海へと導かれ、全てがまとめあげられ、見るものに感動と安堵感を与える。これが彼らの表現する舞です。

 飛ぶ跳ねる投げるなどのアクロバティックなものは、華やかに感動を思えるものですが、一見で十分です。彼らのダンスは「魅せる」ものであり、見とれるほどに美しいもの。登場の度に雰囲気を変え、飽きさせることはありません。だからこそ、アルゼンチン、ブエノスアイレスの有名なタンゲリア「Rojo Tango」のレギュラーダンサーとして活躍できていたのです。

 本場の素晴らしさを体感していただきたく、タンゴの音を担っていただくのは、アルゼンチンタンゴバンド。タンゴ独特の音色を奏でるバンドネオンは、2015年アメリカで行われたバンドネオン奏者世界一の栄誉に輝いた川波幸恵さん。悪魔の楽器と評されているバンドネオンを操り奏でる、世界が認めた彼女の音色は必聴です。

 そして、華やかなふくらみを与えるヴァイオリンは、専光秀紀さん。 タンゴ独特の馴染みの楽器でありながら、タンゴ独特の奏法により音色は、ところどころで深い味わいを残します。心地良く心の奥底に響くリズミカルな音色を奏でるピアノの青木菜穂子さんを忘れてはいけません。

 川波さんがアルゼンチンバンドを率い、クリスティアン&ナオと織りなす、Benoitでの一夜限りに物語。いったいどのような構成で我々を魅了するのでしょうか?当夜は、18時30分より第一部を開宴し、その余韻に浸りながらお食事をお楽しみいただきます。そして、いよいよ第二部が始まる…このような流れで、皆様には思う存分タンゴの世界をお楽しみいただこうかと思います。

Benoitミュージックディナー アルゼンチンタンゴ

日時:2022712()18:00より受付開始 18:30開演

料金:ダンススペース周辺のお席をS席、少し離れたA席をご用意させていただきます。

S席22,000(パフォーマンス・ワイン・お食事代・サービス料/税込)

A席19,800(パフォーマンス・ワイン・お食事代・サービス料/税込)

※質問などございましたら、何気兼ねなくお問い合わせ、もしくは返信をお願いいたします。席数に限りがございます。ご予約は北平へのメール、もしくはBenoit(03-6419-4181)にご連絡いただけると幸いです。

 

メンバープロフィール

 

クリスティアン&ナオ -タンゴダンサー- 】

堤崎尚子

Cristian Andres Lopez 

 2008年よりペアとして本格的に活動を開始。2009年〜2012年の4年連続で、世界選手権サロン・ステージ両部門ファイナリストという快挙。2013年より再び東京を拠点に活動し、2015年6月に南青山にタンゴサロン ブエノスアイレスをオープンする。最近では元宝塚のトップスター達が出演するミュージカルやコンサートに出演、コレオグラファーとしても活躍している。

<主な受賞歴 2008年 Japan Openタンゴダンス選手権サロン部門ステージ部門

共に準優勝/2009年アルゼンチンタンゴ世界選手権アジア大会サロン部門優勝/

世界選手権ステージ部門3位

2010年世界選手権サロン・ステージ両部門3位/

2012年メトロポリターノMILONGUEROS DEL MUNDO 優勝>

 

川波幸恵 -バンドネオン- 】

 第一回チェ・バンドネオン国際コンクール第1位、福岡市在住のメンバーで結成されたタンゴ三姉妹+では、2021年ピアソラ国際コンクールアンサンブル部門で第1位。海外での演奏地域は、20箇所を超える。渡辺えりと出会い、舞台「りぼん」に出演。以来、ジャンルや文化の壁を越え(西城秀樹沢田研二笑福亭鶴瓶らと共演)幅広く活動、「題名のない音楽会」などメディアにも多数出演。オリジナル楽曲「じゃばら体操」や折り紙を通して、音楽と笑顔の国際文化交流を行っている。

 

【専光秀紀 -ヴァイオリン- 】

 3歳からヴァイオリンを始める。東京音楽大学卒。クラシックを三本克郎、篠崎功子に師事。大学在学中より、小松亮太オルケスタティピカツアーに参加し音楽活動を開始。タンゴの世界に深く傾倒する。2012年アルゼンチンに渡りアリエル.エスパンドリオ、ガブリエル.リーバスに師事。日本では数の少ないコルネットヴァイオリンも演奏する。現在タンゴ楽団メンターオや、小松真知子タンゴクリスタル等、様々な楽団で演奏中。

 

【青木菜穂子 -ピアノ- 】

 武蔵野音楽大学ピアノ科卒業後アルゼンチンに渡り、ニコラス・レデスマに師事。2年間現地の市立楽団「オルケスタ・エスクエラ・デ・タンゴ」のピアニストとしてTVやラジオ等数々の場で演奏。帰国後自己のグループを率いて活動しその後も度々渡亜。ブエノスアイレスやチリでのフェスティバル、アメリカのバレンタンゴ祭、また世界各国から10人のピアニストを集めたバンクーバーでの10グランズ・ピアノコンサートに2年続けて招聘。現在は『Celeste Septet』『Cuarteto Confeito』主宰。

 

 アルゼンチン生まれのバンドネオン奏者であり名作曲家、アストル・ピアソラ。幼少の頃は、両親の仕事の関係上、ニューヨークにいたそうです。父親がタンゴ好きということが功を奏して、馴染みにある音楽がタンゴ。そして7歳の誕生日にバンドネオンをプレゼントされます。この時、「歴史が動いた」のでしょう。母国に戻った彼は色々なオーケストラでバンドネオン奏者として頭角を現します。

 しかし、彼は古いスタイルのアルゼンチンタンゴになじめず、独自のスタイルを追求すべくフランスへ。クラシックの作曲を勉強したく渡仏したピアソラですが、どうもしっくりこない。ナディア・ブーランジェ先生から、「本来の自分の演奏してみなさい」と言われ、タンゴを披露した所…「これがあなたの音楽よ」と喝破されるのです。それから彼は彼独特のタンゴをどんどん作曲していくことになります。

 当時、ピアソラの楽曲はアルゼンチンには受け入れられず、「タンゴの異端者」とまで酷評されます。しかし、時代とともに評価が変わり、いまでは偉大なタンゴの作曲家に名を連ねています。この彼の才能を見出し、後押ししたのが、フランスでした。ピアソラに限らず、アルゼンチンが軍事政権であった時代に、国を追われ逃れた地がフランスのパリでした。この国の寛容なる音楽への理解なくして、ピアソラの今は有り得なかったでしょう。

 「フレンチでタンゴ」と銘打って始めたBenoitのタンゴイベントが、当初は「なぜ?」と疑問が多かったことは事実であり、自分もその一人でした。しかし、フランスとアルゼンチンタンゴとのこの関係を教えてくれたのは、他でもないフランス人のお客様からでした。この場を借りて御礼申し上げます。

 

 関東の梅雨入りを迎えました。不安定な天気は、知らず知らずのうちに体力を奪ってゆくもの、油断はなりません。さらに、疲労・ストレスなどが原因による免疫力の低下が追い打ちをかける時期です。皆様、こまめな休憩、十分な休息と休養をお心がけください。

 最後まで読んでいいただき、誠にありがとうございます。

 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

http://www.benoit-tokyo.com

 

2022年6月 「北平がBenoitを不在にする日」のご報告です。

 私事で恐縮なのですが、自分がBenoitを不在にしなくてはならない6月の日程を書き記させていただきます。滞りがちだったご案内を充実させるべく、執筆にも勤しませていただきます。ご不便をおかけいたしますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。

 

5()

12()

14()/15()

20()/21()

24()

28()

 

 自分への返信でのご予約はもちろん、BenoitのHPや、他ネットでのご予約の際に、コメントの箇所に「北平」と記載いただけましたら、自慢の料理の数々を語りに伺わせていただきます。自分が不在の日でも、お楽しみいただけるよう万全の準備をさせていただきます。何かご要望・質問などございましたら、何気兼ねなくご連絡ください。

 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com

 

2022年5月Benoit 惜春の想いを込めて≪特別プラン≫と≪迎えし食材≫のご案内です。

散る花の あかぬなごりの なぐさめに 心うつれと さける山吹  藤原宣子(せんし)

 桜の開花期間は、一年との中でほんの1週間ほどのこと。今ではすっかり葉桜となり、花笑う姿は遠い過去の事のように思えるもの。強く待ち望むからこそ、散りゆく姿に虚しい寂しさを覚えてしまうからなのでしょう。

 我々を気にも留めずに花を散らす桜。散り終える頃には、名残惜しさが募るばかりで尽きることはありません。そのような我々を見かねたのでしょう。「慰めてあげるから、私の方へ心を移しなさい!」と、群青の中で輝かんばかりの花を咲かせる山吹が問いかけている。

 コロナ禍での不自由な生活も、はや3年目を迎えました。そのような人間を横目に見ながら、四季は巡り去ってゆきます。日本人は、季節の移ろいを、陽射しや風を肌で、順を追って咲き誇る花々や、青々と茂る叢叢(むらむら)の様を目で、風や雨の音を耳で、風が運んでくる香を鼻で、旬の食材で季節の美味しさを口で楽しむ。季節を五感で感じ取ることで、体を順応させているのではないかと思うのです。家にこもってばかりでは体調がすぐれない、これが理由なのではないかと。

 見失いがちな季節の移ろいを教えてくれるかのように、私に心を移しなさいと「旬の食材」がある。虚しさを慰めてくれるというよりも、虚しくならないように教えてくれるのが「旬の味覚」なのでしょう。そこで、Benoitでは旬の食材を取り入れた料理とデザートをご用意いたしました。「惜春」と銘打った特別プランとともに、その旬の食材を、皆様にご紹介させていただきます。

 

惜春特別プランのご案内です。

 草木の花々は移りゆく季節の機微を捉え、順を追って咲き誇るもいずれは散りゆきます。食材も同じように「旬」という期間は限られたものであり、「待つ」という優しさはありません。そこで、全ての旬食材は無理でも、Benoitに少しだけ顔を向けてくれた食材で、「口福な食時」のひとときをお過ごしいただきたく、「花より団子プラン」を「惜春特別プラン」と名を変え、期間を延長させていただきます。そう、花より団子も良いですが、去りゆく春に思いを馳せながらBenoitの料理をお楽しみください!

 

惜春特別プラン

期間:土日を含めた2022531()まで

ランチ: 前菜x2+メインディッシュ+デザート

6,000円→5,000円(税込/サービス料別)

ディナー: 前菜x2+メインディッシュ+デザート

8,600円→6,800円(税込/サービス料別)

 

 迅速に皆様のご希望にお応えできるよう、専用の予約サイト開設いたしました。以下のURLよりご利用ください。ご希望日のご予約が取れない場合でも、まだお席が残っている可能性もございます。その時は、何気兼ねなく自分へ返信、もしくBenoitへご連絡(03-6419-4181)ください。ご要望や質問なども、喜んで承ります。

ランチのご予約はこちらから

https://www.tablecheck.com/shops/benoit-tokyo/reserve?menu_items=6237d2f1a6b861002577fba4

ディナーのご予約はこちらから

https://www.tablecheck.com/shops/benoit-tokyo/reserve?menu_items=6237d297bd7775002a5834fe

 

≪今期のGWBenoitでワインを楽しみませんか!≫

 ゴールデンウイークに、「待つ」という優しさをもたず、そ知らぬ顔で過ぎ去ってゆく旬の食材をお楽しみいただきたい。それも、フランス料理には欠かすことのできないワインとともに…そこで、429()58()の10日間、ディナー限定でワインリストに記載のある全てのボトルワインを30%割引にて提供させていただきます。ぜひ、「惜春特別プラン」をご利用いただき、Benoitにて「口福な食時」のひとときをお過ごしください。

 

 

≪お母様への感謝の気持ちをBenoitで伝えてみませんか?≫

 バラが美しく咲き誇る時期の到来と、「母の日」が近いということもあり、バラとカーネーションを加えたブーケをご希望の皆様にご用意させていただきます。もちろん、Benoitスタッフが摘んでご用意するわけではありません。本店は表参道でパリにも支店のあるお花屋「Pas de Deux(パ・ド・ドゥ)」にご協力をいただき、3,000(税込)にてご用意させていただきます。

 お母様への感謝の気持ちを込めて贈るも良し、大切な人にお祝いや自分自身への激励として贈るも良し。皆様の人生は二つとないかけがいのないもの。だからこそ、「Pas de Deux(2つとない)」が厳選したブーケはいかがですか?

皆様には状態のいいブーケをお渡ししたいという田島さんの強い意向があります。ご予約日の3日前までに、ご希望をメールか電話にてお伝えいただけると幸いです。

 

新潟県佐渡ヶ島から鰆がBenoitに春を告げに来た!≫

 日本海側を北上し、太平洋側を南下する。海流に乗るかのように日本を回遊する魚だけに、数多(あまた)ある地で水揚げされているのがサワラです。流線型のほっそりとした魚形のため「狭腹(さはら)」である。これが名前の由来という。一年を通して水揚げがあるにもかかわらず、漢字では「鰆」と書く…なぜ?

 サワラは、春に産卵のため瀬戸内海を訪れます。この時期の水揚げ量が多いため、「春」というイメージが根付いたのではないかといいます。瀬戸内海であれば大阪や京都も近いため、かつては春の味覚としての確固たる地位を得たことも分かる気がします。しかし、サワラを愛食している方は、今の時期は日本海側を選ぶといいます。太平洋側や瀬戸内海産に比べ小ぶりではあるが、身質と脂のノリが格別だというのです。

 そこで、Benoitは新潟県佐渡ヶ島で水揚げされたものを直送してもらいます。日本海の荒波にもまれている上に、海水温がまだ低いとこもあり、身が締まり、脂がきれいな「寒サワラ」に近い。旨味が多い魚ですが、この海域は他とは一線を画すほどに美味しい。ここまでくるともう大衆魚でない!ブランド魚だ!

 この美味なるサワラが、鮮度良く、美味しいままBenoitに届いています。新潟県佐渡ヶ島両津港脇にある佐渡水産地方卸売市場で、その日に水揚げのあるサワラを競り落とし、捌かれBenoitへの旅路に着く。この大役を担ってくれているのが、「マルヨシ鮮魚店」の石原さんです。彼の尽力無くして、Benoitに佐渡ヶ島産の美味なるサワラはありません。

 

≪目を見張るほど春に美味しくなるのが目春なり。≫

 メバルは、大きな目で見張っているようなので、「目張」と表記するという。さらに、「目春」とも書く。こちらは、目を見張るほどに春に美味しくなるからなのでしょうか?

 磯釣りでも人気を博すメバルは、赤・白・黒メバルと見た目にはなかなか区別がつきにくい魚。Benoitは、これらのメバルではなく、深場に生息する「ウスメバル」を選びます。この美しく輝くオレンジ色と黒の模様が特徴。クセの無い淡白な白身で、カサゴの仲間らしいぷりぷりの身質。今の時期がひときわ美味しいといわれています。

 生息域は、北海道の南部から、太平洋側は相模湾辺りまで、日本海側は対馬の辺りまで。産地を見ていると、石川県や福井県が多いでしょうか。そうそう、サワラでご紹介した新潟県佐渡ヶ島も忘れてはいけません。産地を特定せずに、その時その時に水揚げされた中から、より美味なるものをプロの目利きで選んでいただきます。

 「我々魚屋は美味しさを、澄んだ目、お腹の張りとエラの色で鮮度を判断します。」

こう教えてくれたのが、豊洲市場へ移転するも、創業70年を誇る仲卸「大芳」宇田川さんです。妥協のない彼の目利きに、Benoitシェフの野口は全幅の信頼を寄せています。

 

≪ボーノ(美味しい)という名を冠したボーノポーク?!

 「ボーノポーク」は、イタリア語で美味しいという意味の「ボーノ」という言葉を冠し、なんとも軽々しい印象を受けますが、その実は、岐阜県の中濃ミート事業協同組合の威信にかけて育て上げた銘柄豚です。飼育地は、県内の瑞浪(みずなみ)市、山県市、揖斐(いび)市の3地域。3つの種の掛け合わせで誕生した三元豚で、そのひとつが霜降り割合を増加させる能力を持つ、岐阜県が開発育種した「ボーノブラウン」という種豚です。

 抗酸化能とオレイン酸を多く含む植物性原料を含み、飼料中のアミノ酸バランスを調整した専用に開発された飼料を与えています。この飼料を含め、徹底した管理のもとで飼育されることで、霜降り割合が一般的な豚肉の二倍にものぼり、肉自体の旨味を十二分に堪能できる上に、脂の甘味か加味されるのです。さらに、一般に流通している豚肉よりもドリップロスが少なく、肉の旨味が逃げにくいのが特徴といいます。

 飼育した全てが「ボーノポーク」というブランドを冠することはありません。県下の和牛ブランド「飛騨牛」が、霜降り具合を目視によって5等級なのか4等級なのか、はたまた3等級なのかと振り分けるように、この豚もまたロース部位を目視によって判別してゆきます。違う点は、区分けが「ボーノポーク」か「一般的な豚」の2択であるということ。

 皆様が、「ボーノポーク」という豚の名前を耳にしたことがないのも当然、徹底した管理のために多くを飼育できない上に、厳しい選別ゆえに流通量が極端に少ないのです。その、貴重な豚肉がBenoitに届いています!この美味しさをご堪能ください。

 

熊本県が誇る柑橘が、Benoitで一堂に会する…

 熊本市から南西に向かうと、天草へと導かれるかのように宇土半島が伸びています。この半島のつけねあたりの南側にあたり、八代海(やつしろかい)に面した場所にある不知火町。そこから西へと向かうと、天草の島並が見えてくる。ともに共通しているのは、熊本県屈指の柑橘産地であるということ。この2地域から、美味なる柑橘がBenoitに届いています。

 季節が過ぎ去ってゆくように、柑橘も順を追って終わりを迎えていきます。熊本県が誇る柑橘がBenoitで一堂に会するのは、今しかありません!5種類の柑橘それぞれを、調和をもたせつつもそれぞれの良さを生かしながら組み立てます。柑橘の奏でる旋律を、ハーモニーを織りなすアンサンブルへと導く。晩春を飾るデザートをお楽しみください。

Coupe aux agrumes

熊本県産柑橘類のクープ

※ランチとディナーのプリ・フィックスメニュー、デザートの選択肢で+800円でお選びいただけます。

 

熊本県の柑橘産地はどのような地なのか?どのような柑橘がBenoitに届いているのか?詳細をブログにてご紹介させていただきます。

kitahira.hatenablog.com

 

静岡県のイチゴといえば「紅ほっぺ」。今期はバジルとともに!?

 Benoitのデザート年間スケジュールの中で、欠かすことのできない食材が3つあります。夏の「桃」に秋の「和栗」、そして春の「イチゴ」です。それぞれの時期になると、その食材の名前が其処此処に掲げられるため、皆様にはさほど驚きはないかと思います。しかし、Benoitを管轄しているアジア圏の統括シェフパティシエであるジュリアン・キンツラーは、フランスのデザート職人らしい組み合わせの妙をもって、皆様の五感にうったえてきます。

kitahira.hatenablog.com

 

≪特選食材をご自宅で楽しみませんか?≫

 皆様にお勧めしていると特選食材の数々。よく「どこかで購入できないの?」との問いをいただきます。そこで、ゴールデンウイークを迎えることもあり、ご自宅で特選食材をお楽しみいただきたく、それぞれの生産者さんにお願いをしてみました。取り急ぎ、今回は3つの地域から皆様がご購入できるように提案をいただきました。

香川県薫農園のアスパラガス「さぬきのめざめ」と旬の野菜セット

熊本県のむちゃん農園から不知火大玉とジューシーオレンジ(河内晩柑)のセット

新潟県佐渡ヶ島のマルヨシ鮮魚店から、鮮度抜群の魚詰め合わせ

詳細は以下よりブログをご訪問ください。

kitahira.hatenablog.com

 

北平のBenoit不在の日

 私事で恐縮なのですが、自分がBenoitを不在にしなくてはならない5月の日程を書き記させていただきます。滞りがちだったご案内を充実させるべく、執筆にも勤しませていただきます。ご不便をおかけいたしますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。

kitahira.hatenablog.com

 

 過ごしやすい日々ではありますが、まだ「春に三日のはれなし」と表現される時期です。この不安定な天気は、知らず知らずのうちに体力を奪ってゆくもの、油断はなりません。疲労・ストレスなどが原因で免疫力が下がっている時に、乾燥が加わると、コロナウイルスばかりではなく、風邪やインフルエンザにも注意が必要です。さらに、肌荒れやかゆみの原因にもなり、体感温度も下がります。健康のためにも、美容のためにも、程よい湿気お忘れなきように。そして、心の潤いも保ちながら快適にお過ごしください。

 最後まで読んでいいただき、誠にありがとうございます。

 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com