草木の花々は移りゆく季節の機微を捉え、順を追って咲き誇るもいずれは散りゆきます。食材も同じように「旬」という期間は限られたものであり、「待つ」という優しさはありません。そこで、全ての旬食材は無理でも、Benoitの要望に応えてくれた逸材でこしらえた、まさに「旬の味覚」の料理とデザートをご用意いたしました。その旬の食材とお勧め料理/デザートを、皆様にご紹介させていただきます。
≪冬至にはカボチャ、その前にBenoitのカボチャのスープ!≫
今秋、Benoitのランチで「ご用意しているスープは、栗カボチャです。ねっとりと優しい甘みのあるこのカボチャをたっぷりと使い、なめらかなトロッとするスープに仕上げます。カボチャの美味しさを引き立てるかのように、バターと玉ねぎがいい仕事をしている。フランス料理の世界では、さらっとした液状のスープを「Soup」、とろりとした濃密なものを「Velouté(ヴルーテ)」と表現するようです。もちろん、BenoitのかぼちゃのスープはVeloutéと表現するにあい相応(ふさわ)しいもの。
カボチャは、とてもとても栄養価の高い野菜。もちうる免疫力を最大限発揮することを促す、カロテンやビタミン類を豊富に含んでいます。さらに、ホルモン調整機能をもったビタミンEが、肩こりなどの更年期障害の症状を改善するといいます。
夏には恨めしく思っていた陽射しは、これから冬に向かうことで日増しに短く弱くなってきます。ついつい憂鬱な気分に陥ってしまう時期だからこそ、免疫力が下がり体調を崩しやすくなるもの。「冬至にカボチャを食べると病気にならない」とは古人の教えであり、今でも十分に説得力を持っています。しかし、Benoitでは冬至まで待つことはありません。「秋からカボチャを食べることで、きっと病気にならない」と信じております。美味しく食することで、効率よくカボチャの豊富な栄養を摂ることができ、さらに人を笑顔にする。上向きの気持ちの時には、病気にはかからないものです。

Velouté de potiron et fromage frais “
かぼちゃ"のスープ リコッタチーズ
※ランチのプリ・フィックスメニュー、前菜としてお選びいただけます。
≪秋は時雨(しぐれ)から始まる…でも、Benoitの秋は栗で始まる…≫

秋を代表する食材の中で、料理とデザートで主役を担うことのできるものとして、和洋を問わず筆頭に挙がるのが「栗」でしょう。栗なる木の実を大きく分類すると3つに分けることができ、それぞれに美味しさが異なります。天津甘栗などで有名な「中国栗」、マロングラッセなどには欠かせない「ヨーロッパ栗」、そして、日本の「和栗」です。Benoitには、ヨーロッパ栗と和栗が届いています。
ヨーロッパ栗は、もちろんフランスから。フランス栗は特有のコクと甘さがあり、フランス伝統菓子のマロングラッセがやはり美味。栗おこわにすると、和だしや醤油の旨味ばかりかもち米の繊細な風味をも奪い去ってしまうことでしょう。そこで、Benoitでは、洋栗をこれでもかと使ったなめらかなスープに仕上げます。
フランス栗だけでこしらえるスープは、甘さと木の実のコクが強く出ます。だからといって薄くするという発想はありません。Benoitでは栗の渋皮を加えることで、赤ワインの渋みのような味わいを加えるのです。今の時期になると、必ずと言っていいほど「栗のスープはいつからですか?」と皆様から問い合わせが入る逸品です。Benoitの秋は栗で始まる…

Velouté de châtaignes, garniture mijotée
フランス産栗のスープ
※ディナーのプリ・フィックスメニュー、前菜としてお選びいただけます。
そういえば、栗には古今東西を問わず渋皮があります。美味しく食べるには、この渋皮を取り除かねばなりません。フランスで栗の収穫を迎えると、この渋皮剥(む)きは女性の担当だったといいます。この作業を経験した方はご存知かと思いますが、手が渋皮で黒ずんでくるのです。特に爪が黒ばんでくることを、フランス女性たちの美意識が許しませんでした。そこで、考案されたのが「マニキュア」だと…そのような女性たちの想いを感じながら、Benoitの栗料理と栗デザートお楽しみいただくことも一興かと。
≪Benoitがビストロだからこそ欠かせない、自慢のテリーヌ!≫

ビストロというカテゴリーの飲食店において、日本のみならず本場フランスでも欠かすことができない料理が、「テリーヌ」ではないでしょうか。Benoitにおいても、前菜として不動の地位を得ており、メニューから姿を消すことはありません。これほどまでに馴染みの料理でありながら、これといった決まった素材や調理法があるわけではなく、テリーヌ型といわれる陶器の蓋つき容器を使ってじっくり焼き上げたもの。肉に限らず野菜や魚介でも、この型で焼けばテリーヌということになるのです。
このようにあいまいなカテゴリーなために、シェフによってさまざまなテリーヌが存在することになります。同じ肉主体でありながら、柔らかく仕上げたものもあれば、ゴロゴロと食感が残るようにこしらえたものもあります。違うからこそ、どのようなテリーヌが供されるのかもまた、楽しみの一つなのでしょう。Benoitシェフの野口は、長い調理人経験の中で試行錯誤を繰り返し、彼の求める美味しさを追求してきました。そのため、他店とはひと味もふた味も違う。テリーヌの素材は、豚肉をメインに鶏レバーの加えて粗挽きでこしらえる。数多(あまた)あるテリーヌもそう変わらない。しかし、野口の肉のブレンド比率とスパイスとハーブの使い方が妙を得ているのでしょう、食感が心地よく旨味あふれる逸品に仕上がってるのです。
ディナーでは、この時期ならではのジビエのテリーヌをご用意いたします。鴨(かも)と猪(いのしし)、さらに鹿というジビエの御三家ともいえる肉に、フォアグラの旨味を加えることで、味わいと深みのあるコクに満ち満ちたものに仕上げています。それぞれの肉を、ごろごろっとした大ぶりにカットするため、口の運ぶ場所場所によって少し異なる味わいをもお楽しみください。

Terrine de gibiers, pain toasté
ジビエのテリーヌ
※ディナーのプリ・フィックスメニュー、前菜としてお選びいただけます。
ランチは、豚の肩肉をメインとし、豚の背脂で旨味を加え、鶏のレバーでコクをあたえたもの。Benoitの定番として不動の人気を誇るもの。ディナーでは、Benoitサラダのトッピングとして登場します。

Terrine de campagne, pain toasté
テリーヌ・ド・カンパーニュ
※ランチのプリ・フィックスメニュー、前菜としてお選びいただけます。
≪ブランダード?いったいどんな料理?≫
ヨーロッパでは、北欧を主として、塩をたっぷりとまぶし釘が打てるほどに乾燥させ保存性を高めたタラ、「Morue(モリュ)」と名付けられた食材があります。これをいかに美味しく食べようかという、フランスの伝統と知恵が作り上げたのが、ブランダードという料理です。同じような料理が、ヨーロッパ各国にあり、大航海時代で言語が伝播するように、世界中に拡がっていきました。いったいどの地が発祥なのか、今となっては知る由もありません。
日本は周囲を海に囲まれており、鮮度良く美味しいマダラが手に入る環境にあるため、Benoitのブランダードは塩干タラを使用しません。北海道のマダラに塩をまぶし一晩お休みです。これにより、、身が引きしまるのと同時に、旨味が出てきます。このタラを少しばかり塩抜きし、牛乳とニンニクの中で煮たものを、ほぐしたジャガイモと混ぜ合わせます。これに半熟卵をのせる。ジャガイモの甘さとホクホクの食感、そこにタラ特有の繊維っぽい身質と旨さが絡みあう。半熟卵のとろりとくる黄身との相性も抜群です。さらに、クリームにニンニクを風味付けしたものをソースとする。これがBenoitスタイルです。

Œuf mollet, brandade de MORUE
タラのブランダードと半熟卵
※ランチのプリ・フィックスメニュー、前菜としてお選びいただけます。
≪今秋は旬の美味なる魚をムニエルでいかがですか?≫

魚料理名の中に、「ムニエル」という言葉が度々姿をみせます。「舌平目のムニエル」などは、いかにもフランスっぽい料理であり、音の響きではないでしょうか。この「ムニエル」とは、料理を意味するのではなく、魚に小麦粉をまぶし、たっぷりのバターで焼き上げる調理法のことです。
今秋のBenoitのメニューにも、「ムニエル」という単語が登場しています。ココットにバターをたっぷり溶かし込み、ふつふつと泡立つ中に魚を落とし込みます。この時、魚には小麦粉はふらず、シンプルに魚の美味しさを表現します。ココットの中では、熱々のバターをふりかける度にじゅわ~ビチビチと心地良く響く音色に、立ち昇るバターの甘い香りに香ばしい魚の香り…
しっとりと焼き上げる魚に、職人技を垣間見ることができます。旨味の移ったバターに、ニンニクで香りをつけ、心地よいレモンの酸味を加え、さらにアンチョビで旨味を足したものがソース。添えるのがジャガイモを3種の調理方法で仕上げたもの。マッシュポテトにほぐしたジャガイモ、そして透けるかのようなポテトチップス。バターソースなだけに、お皿の中はジャガ&バター…この相性が悪いわけがありません。
と、ここで気になるのが、旬の魚とは何か?ということでしょう。今季のBenoitは、ランチ/ディナーともに、「カレイ」なのですが、その仲間の中でも群を抜いた美味しさを誇る「マツカワカレイ」です。北海道で水揚げされた「マツカワカレイ」は、見事なまでに美しい背ビレに腹ビレに描かれる帯模様。これぞマツカワガレイなり!ヒラメにも負けないほどの肉厚さながら、やはり肉質は繊細で、優しい旨味に満ち満ちています。

肉厚ではありますが、3枚に捌いてしまうと「美味しくなる前に火が入っていまう」という。そこで、中骨を残したままぶつ切りにして焼き上げるのです。骨付きだからこそ職人技ともいえる絶妙な火入れを可能とし、旨味を逃がさないのです。骨があって食べにくい?いやいや、骨に沿って魚ナイフをいれていただければ、きれいに身がほろっととれるのです。

Carrelet à la meunière, pommes de terre écrasées
マツカワカレイのムニエル じゃがいものエクラゼ
※ランチとディナーのプリ・フィックスメニュー、主菜としてお選びいただけます。
背びれを上に置き、白い腹目を地につけた時、「左ヒラメに右カレイ」というのが、、ヒラメとカレイを見分ける時の決まり文句です。その眼の向きは、やはり美味しさに違いをもたらします。カレイ目ヒラメ科の仲間がぷりっと堅めの身質であるならば、カレイ目カレイ科はふわりとして柔らかい。ヒラメの仲間は律儀なようですが、カレイ界ではヌマガレイのように左向きがいるのでご注意を!
≪佐渡ヶ島から直送!アオリイカはいかが?≫

新潟県の佐渡ヶ島は、沿岸一周約280kmもあり、東京23区の1.4倍の広さを誇る本州最大の島です。新潟港からカーフェリーで2時間半、ジェットフォイルを使えば1時間ほどで島の両津港へと着岸します。そこから少しばかり北に向かうと、「佐渡魚市場」が姿を見せます。まだ東雲(しののめ)の頃から、次々と水揚げされる魚介の量の多さは、いかに佐渡近海が好漁場であるかを物語っています。
Benoitは、マルヨシ鮮魚店の石原さんに競りを託します。活気を帯びる市場の中で、彼にお願いしたのは旨味食味が抜群で、イカの中でも最高級の食材と称されている「アオリイカ」です。生きたものしか捕食しないという硬(かた)くなまでのこだわりが、この美味しさを生むのでしょう。夏に生まれたアオリイカが、海水温が下がってくるころから沿岸部から深辺へと移りゆき、ぐんぐんと成長するといいます。確かに、今はまだ小さめだというのですが、いやいやこのサイズだからこその美味しさがあるのです。

焼き切ってしまえばただの焼きイカ。そこで、Benoitではちゃっちゃと焼きを入れるのみ。半生のようであり、余熱で軽く焼きが入るようでもある。だからこそ、アオリイカが誇る香りの高さに魅せられ、パリッという若々しい弾けるような…そして、イカ特有のムッムッとくる食感、その溢れ出る旨味に酔いしれる…
石原さんがこのようなメッセージを送ってくれました…「ただただ美味しく召し上がっていただきたいという一心です。良いものを早く処理して一流の料理人に渡す事が魚屋の仕事だと思っています。佐渡ヶ島の旬の逸品をお楽しみください!」と。

このアオリイカに合わせるのは、やはり旬の食材である「秋ナス」です。しかし、この時期は美味しいけれども、少々皮が厚くなるもの。そこで、Benoitは3種類の調理方法でご用意いたします。一つは、皮を剥いてオーブンでじっくり焼き上げたナスを心地よい酸味のマリネ液に浸したもの。もう一つは、焼くことで旨味したナスを細かく切るように仕上げたところに、爽やかな酸味を少々。さらに、そのナスにゲソを細かく切ることで、アオリイカ特有の旨味を加えたもの。
上述したこの「爽やかな酸味」とは、レモンではありません。この時期ならではの特選食材「スダチ」です。漢字で「酢橘」と書くように、果皮を削ったときの爽やかな香りと青々しい風味。なによりも、きれいにきわだつ酸味が、料理の美味しさを引き立ててくれる。日本のスダチ生産量の9割という、他の追随を許さない驚異的な数字を誇るのが徳島県。今回は、淡路島から徳島線鳴門市に上陸し、高松市を南に望みながら山の中に入っていった地、「神山町の岡本農園のスダチ」がBenoitに届いています。

神山町は、1940年頃から始まった減反政策によって、棚田の水田がスダチ畑に姿を変えてきました。今では、スダチ農家さんが約400軒…県内でのスダチ収穫量が第1位!ということは、日本一の産地ということ。彼の地で、親子でスダチ栽培に取り組んでいるのが岡本農園さんです。この農園だけで、1シーズンに10tのスダチを収穫するという。
しかし、いかに酸味のあるスダチとはいえ、時間が経るほどに果皮が黄変し、10月以降の収穫ものでは酸がぼやけてしまうため貯蔵が難しいとうのです。そこで、岡本さんは貯蔵用のため、早い段階の酸がしっかりのっているスダチを収穫し、冷蔵庫保管をしている。その庫内温度についても、段階を追ってゆっくりと下げていくことで、果皮の黄変を防いでいるという。簡単に書きましたが、スダチを観察し、機を見極めなければならない、まさに職人技なのです。

馴染みのスダチと岡本さんの逸品とは、一線を画す。そのスダチは、果皮を削る、果汁を絞る、さらに果皮果実でコンフィに仕上ると、3種の姿で料理の其処此処に散らされ、アオリイカと秋ナスの美味しさを引き立てている。今まさに旬を迎えている三位一体の一皿をご堪能ください!酸味のスダチだけに…

Calamars au plat, aubergine confite
佐渡ヶ島産アオリイカのソテー ナスのコンフィ 柑橘“直七”
秋茄子は嫁に食わすな…!?
体が冷えて流産してはいけないと嫁の体を労(いたわ)った言葉です。夏野菜であるナスは、水分が多い上にカリウムが豊富です。カリウムには利尿作用があり、余分な水分を体外に排出する際に体温を奪っていきます。さらに、ナスのアクも体温を下げるのだといいます。夏であれば良いことも、肌寒くなると困りもの…しかし、秋ナスは格別に美味しい。
食べ過ぎいけないことはどの食材でも同じこと。アク抜きしたナスを適量であれば、妊婦さんでも美味しくお召し上がりいただけます。まして、ナスから摂れる葉酸を思うと、「秋ナスこそ嫁に食わすべし!」というものです。なにぶん、体が冷えることは体感的に分かっていても、葉酸などの含有成分などわかりようもない時代にあっては致し方ないことなのかもしれません。
≪ボーノ(美味しい)という名を冠したボーノポーク?!≫

「ボーノポーク」は、イタリア語で美味しいという意味の「ボーノ」という言葉を冠し、なんとも軽々しい印象を受けますが、その実は、岐阜県の中濃ミート事業協同組合の威信にかけて育て上げた銘柄豚です。飼育地は、県内の瑞浪(みずなみ)市、山県市、揖斐(いび)市の3地域。3つの種の掛け合わせで誕生した三元豚で、そのひとつが霜降り割合を増加させる能力を持つ、岐阜県が開発育種した「ボーノブラウン」という種豚です。
抗酸化能とオレイン酸を多く含む植物性原料を含み、飼料中のアミノ酸バランスを調整した専用に開発された飼料を与えています。この飼料を含め、徹底した管理のもとで飼育されることで、霜降り割合が一般的な豚肉の二倍にものぼり、肉自体の旨味を十二分に堪能できる上に、脂の甘味か加味されるのです。さらに、一般に流通している豚肉よりもドリップロスが少なく、肉の旨味が逃げにくいのが特徴といいます。
飼育した全てが「ボーノポーク」というブランドを冠することはありません。県下の和牛ブランド「飛騨牛」が、霜降り具合を目視によって5等級なのか4等級なのか、はたまた3等級なのかと振り分けるように、この豚もまたロース部位を目視によって判別してゆきます。違う点は、区分けが「ボーノポーク」か「一般的な豚」の2択であるということ。
皆様が、「ボーノポーク」という豚の名前を耳にしたことがないのも当然、徹底した管理のために多くを飼育できない上に、厳しい選別ゆえに流通量が極端に少ないのです。その、貴重な豚肉がBenoitに届いています!どれほど美味しいのか?それは、Benoitが6年間にもわたり他の豚へ浮気しないことがなによりの証(あかし)です。

しかし、どれほどのブランド肉でも、豚肉は生では食せず、良く焼くと硬くなります。そこで、ロース肉は時間をかけながら焼いてゆき、焼き疲れを癒すように温かい小部屋で休ませ、断面がうっすらとピンク色となるように仕上げます。この職人技ともいえる焼きの技によって、しっとりとした食感とボーノポークの旨味を十二分に堪能できるのです。
バラ肉は、フランスの伝統料理でもあるBoudin Noir(ブーダン・ノワール)へと姿を変えます。通常は、たっぷりの豚の血をたっぷりつかったソーセージのようなもので、しっとりとモフモフした独特の食感に味わいがあり、好き嫌いがはっきでるもの。しかし、Benoitではたっぷりの粗挽きにしたバラ肉を使い、肉々しく仕上げます。
ただでさえ美味しいボーノポークの粗挽きバラ肉に、豚の顔の部位(耳コリコリ/額プルプル/ホホほくほく)をアクセントになるよう少しばかり。そこへ、豚の血をつなぎにする程度加え、スパイスぱらぱら。腸詰ではなく、チョコレートケーキのように型で焼いてゆく。それを厚めにカットして、表面をパリッと焼き上げ、上記のロースステーキ、このブーダン・ノワールが、秋野菜と一堂に会するのです。特に、ブーダン・ノワールは、ともに添えている栗やリンゴ、カボチャとお楽しみいただきたいです!

Cochon de Gifu rôti, garniture d’automne
岐阜県産“ボーノポーク”ロース肉とブーダン・ノワールのロースト 秋野菜と果物
ボーノポークは、肉質と旨味はもちろんですが、脂が甘くて臭みがないのです。信じられないと思うのですが、この豚肉をしゃぶしゃぶしても、灰汁(あく)がでません。それほどまでに、キレイ美味しさなのです。
≪鴨がネギをしょってくる?いやいやBenoitではバレンシアオレンジです。≫

「津軽かも」、このブランド名からお察しかと思いますが、飼育場は青森県津軽地方です。彼の地に6か所、点在するように飼育場がある。育てられているのは、フランス原産のバルバリー種の鴨。雄大な山々があり、そこより湧きいづる豊富な水資源、四季折々の優しさに厳しさ。この自然環境こそが、鴨にストレスを与えず、健康に育て上げることのできる理由なのでしょう。さらに、平飼い開放鳥舎によって余裕のある飼育面積を確保し、飼料も独自開発したものを与えるという徹底ぶりです。
バルバリー鴨は、他の鴨と比べて皮下脂肪が薄く、赤身は濃い鮮紅色です。鴨特有の臭みが少ないとはいいますが、やはり鴨は鴨。この独特の臭みの大部分は脂についているため、Benoitでは皮目に隠し包丁を入れ、余計な脂を落とすように焼き、その後は低温でじっくりと、表面がロゼ色になるようにこしらえます。
「鴨がネギをしょってくる」とは言いますが、Benoitはフランス料理店なので、ここはオレンジをしょってきてほしいもの。しかし、ここで海外のオレンジを選ぶようでは、これほどまで食材にこだわるBenoitの名折れ。そこで、白羽の矢が立つったのが、神奈川県小田原にある江之浦果樹園maruesuさんの「バレンシアオレンジ」です。ここは、日本の柑橘の北限、まさに殿(しんがり)を担う地です。

この時期に、これほどまでの品質のバレンシアオレンジに出会えるとは。それも露地栽培だからこその濃ゆく甘さに心地よい酸味に果皮の深みのある苦みがあり、ノーワックスとくる。Benoitにとって果肉はもちろん、果皮も重要な食材なのです。このバレンシアオレンジを惜しげもなくまるまると、軽くシロップで加熱したコンフィに、さらに細かくたたくように仕上げたコンディモンへと仕上げてゆきます。コンディモンとは、日本でいう薬味のようですが、味の重大要素を構成するためのアイテムです。
さらに、北海道真狩村(まっかりむら)の三野農園さんから、丹精込めて育て上げたビーツがBenoitに届いています。往古、甘味料の原料として北海道産ビーツが確固たる地位を獲得していました。しかし、時代は、すっきりとした甘さを求めたことでその地位をサトウキビに譲ることになります。確かに、ビーツは根菜だけに独特の土っぽい雰囲気がある。甘味料としては余分な味わいであっても、それが今回の鴨料理には必要だったのです。蒸し焼くように熱を加えたビーツに、生のスライスも。食感の違いばかりではない、ビーツそのものの美味しさを気づかせてくれる。

青森県の「津軽かも」と、柑橘のもつ爽やかな香りに、心地よい酸味と果皮の優しいほろ苦さが生かされた江之浦の「バレンシアオレンジ」コンフィとコンディモン。さらに大地の美味しさを表現するかのような、カブとビーツ。地表近くの味わいがカブであれば、ビーツは土深い味わいというのでしょう。これらの旬の食材がBenoitに集うのです。
なにやら「もみじおろし」のように見えるものが、バレンシアオレンジのコンディモン。あえてソースに柑橘を加えるのではなく、添える。ここにシェフ野口のセンスを感じていただけるはずです。やはり、Benoitの秋は鴨葱ではない…

Canard de Aomori à l’orange, navets et betteraves
青森県産鴨胸肉のロースト カブとビーツ オレンジ風味
※ディナーのプリ・フィックスメニューで、主菜としてお選びいただけます。
≪仔鳩がフランスから飛んできています!≫

飛行機で…伝書鳩のごとく日仏間を渡り飛ぶことは、仔鳩には過酷なのです。
今回の特選食材は、フランス南西部に位置してるLandes(ランド)県から、空港へ運ばれ、飛行機に乗って飛んでくる仔鳩です。とうとう、Benoitに仔鳩料理が姿を見せるのです。シェフの野口は、あえて「Pigeon(ハト)」ではなく「Pigenneau(仔バト)」を選びました。身質が柔らかい上に、優しい旨味に満ち満ちているのです。仔バトとはいえ、ハト肉特有の鉄っぽさというのがあり、好き嫌いが大いに分かれる食材です。
丁寧に下ごしらえをした胸肉とモモ肉。胸肉は、鉄板でじゅーわーと焼いた後に、温かい小部屋で小休止。もも肉は、低温の脂の中でゆっくりゆっくりと熱を入れてゆくコンフィという調理方法を。それぞれの部位に適した調理方法で、仔バトの持ちうる旨味を引き出していきます。そこへ、フランスで伝統でもあるサルミソースをあわせる。これは、ハトを捌いたガラの部位から、じっくりと旨味を引き出すようにしたジュと呼ばれるソースをとり、そこへハトのレバーを加えることでコクと旨味を加味してゆく。

旨味の主張が激しい食材なだけに、生半端な添え物では太刀打ちできません。そこで、Benoit東京のシェフ野口が探し待ち望んだものがイタリアから届いたポレンタ粉(トウモロコシを乾燥させ粉末にしたもの)です。細かな粉末状のポレンタ粉ではなく、粗挽き全粒粉の逸品。大小に破砕されたトウモロコシは、絶妙な食感を生み、旨味が違う!
仔バトの胸肉のローストとモモ肉のコンフィ。それらに旨味を加味するかのようなサルミソース。そして、香ばしくもなめらかなポレンタ。これらが一堂に会する、今の時期ならではの一皿です。ハト料理好きであれば、この機会をお見逃しなく!

PIGEONNEAU en cocotte, polenta crémeuse, sauce salmis
フランス産鳩のロースト クリーミーなポレンタ サルミソース
※ランチ/ディナーのプリ・フィックスメニューで、+1,500円で主菜としてお選びいただけます。
≪知る人ぞ知る熊本県「やまえ栗」がBenoitのデザートに!≫

「洋栗に始まり、和栗で終える」
秋ともなると、Benoitのディナーは「栗で始まり、栗で終える。」というプリ・フィックスメニューの流れが多くなります。ときに栗の前菜がスープなために、コース2番目に配することもありますが、気持ちの中ではやはり「栗で始まる」ようなもの。前菜の栗はフランス栗。であればこそ、最後は和栗で終えたいものです。
そこで、今季も「やまえ栗」を熊本県から送っていただき、デザートに仕上げます。この栗の名前を耳にして、「お!」と思った方は、栗を愛してやまない方か、栗を取り扱う専門家でしょう。もちろん、自分も知りませんでした。そこで、少しばかりこの栗が育まれた地と歴史をご紹介させていただきます。

「やまえ栗」の「やまえ」とは、熊本県の南部に位置している、球磨郡(くまぐん)山江村の村名です。球磨川を上流へと向かった先にある人吉市から、北に聳(そび)える標高1,302mの仰烏帽子山(のけえぼしやま)へと向かうように山路(やまみち)へと入った先に、この村があります。121㎢という広大な地でありながら、その90%を山林が占めているという。
山江村は、三方を山で囲まれるかのような地。その山々に源を発する清流「万江川」と「山田川」が、南へと流れる中で彼の地を潤し、そして球磨川(くまがわ)へ落ち合う。そこで、この豊富な水資源と、開けた地の緩やかな傾斜は、かつては山田が拓かれ村が誕生したのでしょう。しかし、如何せん平野部が限られていることもあり、多くの人々を養うことができなかった。
そこで、この盆地だからこその夏冬・昼夜の寒暖差、さらに山の斜面を利用した果樹の栽培を先人は考えた。しかし、賢人は柑橘ではなく栗を選んだのです…鎌倉時代から明治維新までの約700年間、すでに年貢として栗を納めていたという記録があるほどに、彼の地では特産となっていたといいます。
時を経てついに!1977年9月、山江村の福山栗園の栗が昭和天皇へ「やまえ栗」として献上されることになるのです。今に至るまで連綿と受け継がれてきた栗栽培が、そして労を惜しまず丹精込めて育ててきた「やまえ栗」が、ついに認められた時がきたのです。どれほど山江村の人々の励みとなり希望となったことか。その年の大阪市場では、「献上栗に輝くやまえ栗」という横断幕が掲げられ、競りの最後に姿をみせた「やまえ栗」を見た村民は、「栗が輝いているようだった」と述懐しています。
しかし、世相は「やまえ栗」に試練の時与えたのです。1992年、山江農協が球磨(くま)地域農協合併されたことで、「やまえ栗」は他地域とブレンドされ「球磨栗」として出荷されるようになるのです。歴史から、「やまえ栗」が消えたのです。
球磨栗だって十分に美味しい栗です。しかし、山江村の人々は自分達の育んだ栗の美味しさに確固たる自信があったのです。今まで培われてきた栗栽培の歴史に加え、献上栗に選ばれたことが、山江村の誇りを見失うことに歯止めをかけたようです。粛々と時が経つ中で、「栗は命」であると言い切る彼らは、村の中という狭い範囲ですが「やまえ栗」を残し続け、復活の機会を待ち望んでいたのです。

2008年、ついに世相が山江村の人々に微笑みかけたのです。時は大量生産から高品質を求めるように。そう、栗も例外ではありませんでした。和栗から球磨栗へ、さらに細分化された栗のブランド化が加速してゆくのです。そして、待ちに待っていたこの機運を、山江村の人々が見逃すわけがありません。ここに、「やまえ栗」の名前が復活を遂げたのです。
2015年8月の台風15号の直撃し、栗畑は壊滅的な被害を受けました。献上栗に選ばれたころの生産量約400tもあったものが、約40tにまで落ち込んだのです。栽培者にとっては存亡の危機にいたる…心折れるほどのことだったはずです。さらに、翌2016年に熊本地震、2020年の豪雨災害と、度重なる自然の猛威の前に、なすすべなく打ちのめされます。
しかし、彼らは諦めなかった!「やまえ栗」の品質向上を継続しつつ、「収量200t」との目標を掲げ、「やまえ栗」復興に向けて奮励努力することを厭(いと)わなかった。その結果、今では100tを超える実りを得ることができるに至ります。

「やまえ栗」は、山江村で丁寧に渋皮を剥き、炊き上げ、ペースト状に加工されてBenoitに届きます。これだけでも十分に美味しいため、巷に溢れる栗尽くしデザートを期待してしまう。確かに、美味しい栗なのでたっぷり使ったデザートは、インパクトがあり美味しいだろう…しかし、人間の味覚というものは単調であると飽きてしまうもの。そこで、アジア圏のエグゼクティブシェフパテシエのアリテアが選んだのが、日本原産の美味なる柑橘、「ミカン」です。

熊本県の天草といえば、海産物はもちろんですが、島を形成する山の麓を利用した果樹栽培が盛んな地。今回は、彼の地で、荒木さん親子が柑橘を丹精込めて育てあげたミカンをBenoitへ送っていただいています。彼らは、天草の地の利に甘んじることなく、さらなる美味しさを求めて続けています。今は、甘みを出すためにマルチシートという白いビニールシートを園圃全面に敷き詰めています。雨などの水分をギリギリまで与えないことで、みかんが生命を守るために甘みを蓄える、この仕組みを利用した栽培方法。確かに理屈は分かるのですが、昨今の異常競う中では、樹が枯死する可能性もある。それでも、毎日のように樹々の様子を観察しながら実践しているのです。

今、Benoitに届いているミカンは、熊本県オリジナル品種の極早生「豊福(とよふく)」です。これもまもなく終わりを迎えるので、次は早生品種で、「肥のひかり」という、これまた熊本県のオリジナル品種。どちらも、荒木さん親子によって甘みを増した果実に育まれるのですが、ただ甘いだけではありません。キレイな心地よいミカンらしい酸味が、食べ飽きるという言葉を忘れさせてくれたいます。

毎年のように、Benoitの栗デザートは「モンブラン」です。しかし、毎年のように姿が変わりこのデザートは、今季は栗のタルトのように仕上げます。土台となるタルト生地に栗粉と栗クリームを加え、サクッと焼き上げる。その生地の上に、栗粉と栗クリームを加えたフラン生地かぶせるようにし、バターで香り付けしたフランス栗そのものとミカンをのせて、オーブンで軽く焼いていく…

そのタルトの粗熱をとれた後に、モンブランが冠雪するかのように生クリームをのせ、和栗ペーストを細く細く搾りのせ、ミカンを飾り、仕上げにミカンの果皮から作ったパウダーをはらはらっと振りかけて完成!この果皮のパウダーに、緑色を見たら「豊福」で、見なかったら「肥のひかり」。別に添えるミカンソルベを時折はさみながら、お召あがりいただきたいです。
和栗と洋栗を使って、食感を変え風味を変えながら、層をなすように組み立てらえたタルトです。栗だけでは、まったりと重いデザートになってしまうところを、軽やかに仕上げてる。そして、ミカンの心地よい甘みと酸味によって、食べ進めても飽きがこない…秋ですが…。思う存分、秋の味覚の代表である栗デザートをご堪能いただきたいです。Benoit東京史上、もっとも標高の低いモンブラン!であることは、どうかご容赦ください…

Mont-blanc à notre façon, sorbet mikan
熊本県”やまえ栗“のモンブランBenoit風 ミカンのソルベ
※ランチ/ディナーのプリ・フィックスメニューで、+1,500円でデザートとしてお選びいただけます。
≪国産のカマンベールチーズが、ついにこの美味しさにまで!≫

日本屈指のタカナシ乳業と、フランスはノルマンディー地方のイズニーサントメール酪農協同組合が、本気になった。
北海道の東南に位置する根釧地区は、酪農の産地として名高い。広大な大地には牧草が青々と生い茂る。暑さに弱い牛にとって、夏をどうしのぐかが悩みの種。皆様が夏の生乳を、軽く感じるのは皆様が夏バテしていて味覚が鈍っているのではなく、牛が夏バテをしてるからです。特に、猛暑を運ぶ南風は如何(いかん)ともしがたいもの。この根釧地区は、南からくる暑い風が、寒流である千島海流によって冷やされ、海霧となったものが根釧地区に吹き込むのです。野菜の栽培には不向きであっても、牛にとってはこれほどの好環境はないのではないでしょうか。
この地で育まれている牛「ホルスタイン種」に加え、フランスから「ノルマンド種」を連れてきた!イズニーサントメール酪農協同組合の伝統製法と門外不出の乳酸菌を受け継ぎ、ここにタカナシ乳業が培ってきた日本の技術が融合する。「根釧地区らしい、誰も食べたことのない熟成チーズの傑作を皆様に!」という想いのもと、4年にもおよぶ研究の歳月を経て、ついに姿を現しました。
フランスのノルマンディー地方出身のお方に、このチーズを供した時、彼はこう言った…「カマンベールチーズは、日本が発祥だったかな」と。なんとも嬉しい言葉ではないですか!皆様、気になりませんか?

CAMEMBERT Bries de mer
カマンベール ブリーズ・ド・メール
※ランチでもディナーでも、ご希望の際にはスタッフにお声かけください。800円(税込)~でご用意させていただきます。
バランスの良い美味しい料理を日頃からとることは、病気の治癒や予防につながる。この考えは、「医食同源」という言葉で言い表されます。この言葉は、古代中国の賢人が唱えた「食薬同源」をもとにして日本で造られたものだといいます。では、なにがバランスのとれた料理なのでしょうか?栄養面だけ見れば、サプリメントだけで完璧な健康を手に入れることができそうな気もしますが、これでは不十分であることを、すでに皆様はご存じかと思います。
季節の変わり目は、体調を崩しやすいという先人の教えの通り、四季それぞれの気候に順応するために、体の中では細胞ひとつひとつが「健康」という平衡を保とうとする。では、その細胞を手助けするためには、どうしたらよいのか?それは、季節に応じて必要となる栄養を摂ること。その必要な栄養とは…「旬の食材」がそれを持ち合わせている。
その旬の食材を美味しくいただくことが、心身を健康な姿へと導くことになるはずです。さあ、足の赴くままにBenoitへお運びください。旬の食材を使った、自慢の料理やデザートでお迎えいたします。
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猛暑な日々と入れ替わるかのように季節性インフルエンザやコロナウイルスが猛威を振るっているようです。過ごしやすい日々が訪れますが、ここで気を緩めると猛暑疲れがドッと押し寄せてくるでしょう。さらに、疲労・ストレスなどが原因による免疫力の低下を招きます。皆様、無理は禁物、十分な休息と休養をお心がけください。

最後まで読んでいいただき、誠にありがとうございます。
「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。皆様のご健康とご多幸を祈念いたします。
ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬
www.benoit-tokyo.com