kitahira blog

徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

2023年4月Benoit 春を代表する野菜は、アスパラガスなり!

 桜前線に一喜一憂する時期も終わり、心穏やかな日々を過ごされている方も多いのではないでしょうか。しかし、アスパラガス前線は、今まさに活況を帯びています!ん?アスパラガス前線…春の陽射しに誘われるかのように芽吹くグリーンアスパラガスの「春芽」は、西日本の早い地では2月から始まり、北海道の6月まで続きます。この動向を「アスパラガス前線」と勝手に自分が命名したもので、どこをどう検索してもどこにもでてきません。

 日本全国で栽培され、春を代表する野菜として確固たる地位を築いているのが「グリーンアスパラガス」。この野菜は、植栽してから地下に根を張り巡らせるように育てあげ、その根に栄養を蓄えたものが春の陽射しに誘われるかのように地面からにょきにょき伸びてくる新芽をいただきます。十分な美味しさと大きさに至るまで、ゆうに3年はかかるというのです。日々の土壌管理を怠ると努力が水泡と帰するため、栽培するには相応の心構えが必須です。露地栽培が少なく、ハウス栽培が主流な理由は、この徹底した土壌管理をしなければいけないためです。

 グリーンアスパラガスは、平均気温が15℃を超えないと姿を見せません。そこで、ハウス栽培では、どのタイミングで加温するのかで収穫時期が変わります。ヒーターで加温することで、北の地方でも早い時期に収穫は可能です。しかし、コストのことを考えると、太陽の陽射しを利用し効率よくハウス内を温めた方が、無理な販売価格にする必要もなくなります。そうなると、北海道が栽培地として有名ですが、初春はやはり西日本からということになるのです。

 鮮度が命とは、どの食材でもいえることかとなのですが、特にアスパラガスは美味しさを左右する一大要素です。そこで、佐賀県有明海に面した杵島(きしま)郡白石町に畑を有する橋本農園さん、瀬戸内海に面した香川県丸亀市の眞鍋さんから、グリーンアスパラをBenoitに直送していただいております。橋本さん、眞鍋さんが丹精込めて育て、そして摘みたてだからこその美味しさは格別です。

※春が去ってゆくように、アスパラガスも「待つ」という優しさをもっていません。ご紹介したお二人の農園も、いずれは夏芽に切り替えるための「立茎」へと移るために、終わりを迎えます。その後、産地は北上し、東北のほうへと向かいます。

 

 旬の味覚であるグリーンアスパラガスは、美味しさばかりではなく、栄養面でも優れものです。抗酸化作用が高く、老化防止、ガン抑制、美容に効果を発揮します。特筆すべきは、野菜の名を冠するアスパラギン酸が豊富に含まれることでしょう。この成分は、体内でのエネルギー生成を促進し、疲労を回復させ、毒性を持つアンモニアを体外へ排出する働きがあります。また、カリウムマグネシウムなどのミネラルを細胞に運び込むというのです。スタミナドリンクの成分に名が挙がることも、このような理由から。確かに、日に5cmほどもぐんぐんと伸ばす新芽の成長を思うと、アスパラギン酸がただものではないことをわかっていただけるのではないでしょうか。

 

 春を迎えると、なんとなく山菜を口にしたくなるのが日本であるならば、ヨーロッパの人々にとって、ホワイトアスパラガスを食せずして春尽きることはないのでしょう。マルシェ(朝市)に山積みにされるこの食材が、人々がいかに待ち望んでいた食材であるかを物語っています。

 アスパラガスをこよなく愛した一人に、フランス国王として全盛を極めた太陽王ルイ14世がいます。彼は、ヴェルサイユ宮殿の庭師に、「一年中収穫できる栽培方法を模索するように」と命じたといわれるほどに。いつの時代もどの国も、権力者はいいたい放題のようです。

 さて、アスパラガスの原産は地中海東部。3000年前のエジプト文明の頃、すでに野生のアスパラガスが食されていたといいます。古代ギリシャ古代ローマ時代にはすでに栽培されていたという。どれほど人々に愛されていた食材だったのか、想像に難くはありません。ヨーロッパがルネッサンスの機運に興隆はなはだしい頃、イタリアからフランスに持ち込まれ、丘陵地での栽培方法が確立したことで、ホワイトアスパラガスが世に姿を見せたのだというのです。

 アスパラガスの栽培には軽い砂地が適しており、フランスではパリ北西に位置しているArgenteuil(アルジャントゥイユ)町から始まりました。今でも栽培されている最古参の品種にその名を遺しています。そして、Val de Loire(ロワール地方)、Aquitaine(アキテーヌ地方)、そしてBassin Méditeranéen(南フランス)へと栽培ノウハウが伝播してゆきます。今回、Benoitに届いているホワイトアスパラガスは、Aquitaine(アキテーヌ)地方のBordeaux(ボルドー)の南に位置しているLandes(ランド)県産です(※輸入状況により産地は変動します)。

 彼の地は、大西洋海流がもたらす温暖な気候…というのは昼間の表情であり、この時期ならではの寒暖の差が大きいことが特徴です。ホワイトアスパラガスは、水はけのよい砂地に植栽されています。作物にとって過酷な気候風土にもかかわらず、古より育種されてきたアスパラガスのたくましさは、これらを甘受したようなのです。彼の地で育まれたホワイトアスパラガスは太く、そして独特のほろ苦さと魅惑的な甘さを内包することになるのです。

 そもそも、なぜホワイトアスパラガスは白いのか?これは、アスパラガスを軟白栽培したものです。この栽培方法は、陽の光に当てないで育てる方法で、柔らかく独特な風味となります。

 東京の特産である「ウド」は、真っ暗な地下室のような場所で栽培されます。ホワイトアスパラガスも暗闇で?ということで、国内の一部の地域では廃坑となった横穴やトンネルに、アスパラガスの根を持って行き発芽を促すところもあります。他にも、遮光フィルムで覆ったりする栽培方法も。しかし、往古より連綿と続いてきた栽培方法は、今も昔も変わらない。このこだわりこそが、彼の地を名産地としているのかもしれません。伝統的な栽培方法とは?日本でお馴染みも長ネギの栽培と、着眼点は同じです。

 長ネギは、成長に合わせて盛り土を施します。上部の土から顔を出した部分は、陽があたることで緑色に変わり、土を盛られた部分は白いまま。盛り土をしなければ、九条ネギや万能ネギなどのように緑の箇所を美味しくいただく野菜であり、馴染みの長ネギは軟白ネギと呼ばれ、白い箇所を美味しくいただきます。

 アスパラガスも、同じように盛り土を施します。いや、Landesが砂地であれば、「盛り砂」というのでしょう。陽に当たったグリーンアスパラに対して、陽に当てないホワイトアスパラガス。新芽を陽射しに当ててしまうと、緑がかってしまうため、まだ暗い夜明け前から、新芽に砂をかぶせるという工程が必須なのです。ご想像通り、これがなかなかに重労働であり、栽培者の弛まぬこの努力こそが、ホワイトアスパラガスを貴重で高級な旬の味覚にしているのでしょう。

 

 我々を急(せ)かすかのように、都内ではサクラ「ソメイヨシノ」の満開を迎え、散ってゆきました。もう少しゆとりをもってくれぬものかと思いあぐねるも、もちろんのように待ってはくれないものであり、時を戻すこともできません。そして、春が我々をそ知らぬ顔で過ぎ去ってゆくのと同じように、春の食材も我々が楽しむまで待ってくれるという「情け」は持ち合わせていないようです。

旬はとまらぬものにぞありける

 

最後まで読んでいいただき、誠にありがとうございます。

一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

http://www.benoit-tokyo.com

2023年4月 「北平がBenoitを不在にする日」のご報告です。

 私事で恐縮なのですが、自分がBenoitを不在にしなくてはならない4月の日程を書き記させていただきます。滞りがちだったご案内を充実させるべく、執筆にも勤しませていただきます。ご不便をおかけいたしますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。

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 上記日程以外は、Benoitを優雅に駆け回る所存です。自分への返信でのご予約はもちろん、BenoitのHPや、他ネットでのご予約の際に、コメントの箇所に「北平」と記載いただけましたら、自慢の料理の数々を語りに伺わせていただきます。自分が不在の日でも、お楽しみいただけるよう万全の準備をさせていただきます。何かご要望・質問などございましたら、何気兼ねなくご連絡ください。

 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

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2023年3月 「北平がBenoitを不在にする日」のご報告です。

 私事で恐縮なのですが、自分がBenoitを不在にしなくてはならない3月の日程を書き記させていただきます。滞りがちだったご案内を充実させるべく、執筆にも勤しませていただきます。ご不便をおかけいたしますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。

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 上記日程以外は、Benoitを優雅に駆け回る所存です。自分への返信でのご予約はもちろん、BenoitのHPや、他ネットでのご予約の際に、コメントの箇所に「北平」と記載いただけましたら、自慢の料理の数々を語りに伺わせていただきます。自分が不在の日でも、お楽しみいただけるよう万全の準備をさせていただきます。何かご要望・質問などございましたら、何気兼ねなくご連絡ください。

 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

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2023年3月 Benoitミュージックディナー「フレンチでタンゴ」のご案内 ~前編~

 人間の歴史を紐解いてみても、言葉という意思疎通のできるツールが無くとも、リズムを奏で、踊ることで神々と語り、感謝の気持ちを伝え、未来を占ってもらおう、もしくは導いてもらおうとしていることがわかります。力強くもリズミカルな太鼓の音に高ぶる気持ち、激しい舞を躍ることで神と一体化する儀式。神々への畏怖・畏敬の念から、愛情表現へと変わってゆくことは自然の流れであったはずです。そして、人々が切磋琢磨することで、至上の高みへ達した時、我々を魅了して止まない芸術となる。その一つが、「アルゼンチンタンゴ」なのでしょう。

フレンチでタンゴ

 こう銘打って始めたBenoitのタンゴイベントが、当初は「なぜ?」と疑問が多かったことは事実です。しかし、コロナ禍によって空白の3年間を挟みながら、今10回目を皆様にご案内できるということは、フランス本部の承認を得ることができたということです。どうして?この疑問はこのご案内の末尾に綴ってみました。それよりも、こうも継続して開催できたということは、皆様のご期待にお応えできるパフォーマンスを実現できたことを物語っています。そう、皆様には音楽と舞の共演を、お食事も含め、五感を通してBenoitでお楽しみいただこうと思います。

 今宵、皆様をアルゼンチンタンゴの世界へと誘(いざな)います…

Benoitミュージックディナー アルゼンチンタンゴ

日時:202337()8() 18:00より受付開始 18:30開演

料金:ダンススペース周辺のお席をS席、少し離れたA席をご用意させていただきます。

S席24,000

A席19,000

ともに、表示価格はパフォーマンス・ワイン・お食事代・サービス料/税込です。

 

ダンサー:クリスティアン&ナオ

ピアノ:サッコ香織

バンドネオン川波幸恵

ヴァイオリン:専光秀紀

※昨今の不安定な環境下のため、開催日や出演者が変更になる可能性がございます。

 

 当夜は18:30より、食前酒を楽しみながら第1部(約30分)ほどお楽しみいただきます。そして、その余韻に浸りながらBenoitのお食事がスタート。デザートまで提供終了後に、第2部(約40分)を始めます。パフォーマンスとお食事をきっちり分けることで、どちらも十分にお楽しみいただけます。

 質問などございましたら、何気兼ねなくお問い合わせ、もしくは返信をお願いいたします。席数に限りがございます。ご予約はこのメールへの返信、もしくはBenoit(03-6419-4181)にご連絡いただけると幸いです。

 

 今回のダンスペアは、堤崎尚子さんとCristian Andrés Lópezさんです。2008年よりクリスティアン&ナオとして本格的に活動を開始し、翌年には世界選手権サロン・ステージ両部門でのファイナリストにまで上り詰める。さらにここから2012年まで4年連続、両部門ファイナリストという快挙を成し遂げるのです。

 情熱的・官能的でアクロバティックな踊りがタンゴダンスを思ってしまうのですが、彼らの舞を目の当たりにすることで、このようなタンゴのイメージが瓦解するのは必須。タンゴダンスの原点は「abrazo(抱擁)の舞」、彼らは我々に「パートナーと共に歩む」ことの大切さを伝えようとしている。

 しなやかながら機敏に流れ、一糸乱れぬ見事なステップの織りなす彼らの華麗なるダンス…感情のぶつけ合いや、挑戦的な行為を全て削ぎ、パートナーの優しさを感じることで、共鳴する感情を表現する。水の流れのように…清流のごとく美しくも繊細にしなやかに。さらに、緩急を織り交ぜながら…そうかと思えば、時の流れとともに大きな川へと変わり、緩やかながらも随所に見せる力強さ。そして母なる海へと導かれ、全てがまとめあげられ、見るものに感動と安堵感を与える。これが彼らの表現する舞です。

 飛ぶ跳ねる投げるなどのアクロバティックなものは、華やかに感動を思えるものですが、一見で十分です。彼らのダンスは「魅せる」ものであり、見とれるほどに美しい。登場の度に雰囲気を変え、飽きさせることはありません。だからこそ、アルゼンチン、ブエノスアイレスの有名なタンゲリア「Rojo Tango」のレギュラーダンサーとして活躍できていたのでしょう。

 本場の素晴らしさを体感していただきたく、タンゴの音を担っていただくのは、アルゼンチンタンゴバンド。Benoit開催の初回から、毎回趣向をこらした内容で皆様にタンゴミュージックを披露してくれるバンドを率いるのが、Sacco香織さんです。アルゼンチンでの経験はもちろん、日本で活躍するものの、さらなる高みを目指し、活動拠点をイタリアに移しました。そう、今回は彼女の来日を調整していただき、実現できたことなのです。

 そして、タンゴ独特の音色を奏でるバンドネオンは、2015年アメリカで行われたバンドネオン奏者世界一の栄誉に輝いた川波幸恵さん。悪魔の楽器と評されているバンドネオンを操り奏でる、世界が認めた彼女の音色は必聴です。そして、華やかなふくらみを与えるヴァイオリンは、専光秀紀さん。馴染みの楽器でありながら、タンゴ独特の奏法により音色は、ところどころで深い味わいを残します。

 今回のタンゴトリオについては、「≪フレンチでタンゴ≫のご案内~後編~」でご紹介させていただきます。こちらへのご案内は、以下の余談の後にご案内させていただきます。なぜ?アルゼンチンタンゴをフレンチのBenoitで開催できたのか。意外に知られていない歴史がそこにはありました…

 

余談ながら、Benoitのタンゴイベントは、同スタッフ河野のこの一言から始まりました。

アルゼンチンタンゴに興味はありませんか?」

 「人前で歌うな」という家訓があるほど、タンゴに限らず音楽に関して、自分はまったくといっていいほどに無知であるといってもいい。しかし、彼女の熱意と自分がイベント好きの性分だからなのか、Benoitでの開催に挑みます。しかし…

 Benoitの華やかな内装の中で、タンゴのメロディーが奏でられダンサーが舞うことを想うと、皆様の感動を得ることには確信がある。しかし、Benoitという名前を冠しているだけに、料理はもちろん、何かイベントごともフランス本部の許可が必要です。タンゴはアルゼンチンを代表する音楽文化だけに、フランスからの承認を得ることができるのか?という不安が拭えませんでした。そう、皆様もフランス料理店でアルゼンチンタンゴ?という疑問を抱いたかと思います。

 そのような悩みを、営業中に笑いながら吐露していた日々が続く中で、一筋の光明が差すことになるのです。Benoitでお会いすることができて、ゆうに12年は経つでしょうか、そのフランス人紳士が自分に教えてくれたのです。「違う違う!フランスとアルゼンチンタンゴは関係深いのだよ!」と。

 かつて、アルゼンチンが軍事政権であった時代、多くの芸能者が迫害から逃れるかのように国を追われます。その彼らが向かう先のひとつが、フランスのパリでした。フランスは、自国の文化に大いなる自信がるからこそ、寛容なのでしょう。パリの人々は、彼らを受け入れ、彼らの才を楽しむように活動を支援してゆくのです。

 そして、アルゼンチンの軍事政権が倒れることで母国へ戻ることができるようになります。彼らの芸能は、フランスで継続していたからこそ、その才が錆びることなく、さらに磨きがかかったかのような輝きをはなっていた。軍事政権で疲弊していた人々に希望と夢を与えることができ、アルゼンチンタンゴの隆興を迎えることになります。

 バンドネオン奏者であり、名作曲家とし名声を博している、アストル・ピアソラも、フランスで開眼したひとりです。彼はアルゼンチン生まれですが、両親の仕事の関係でニューヨークで幼少期を過ごします。父親がタンゴ好きということが功を奏して、馴染みにある音楽がタンゴ。そして7歳の誕生日にバンドネオンをプレゼントされます。母国アルゼンチンに戻った彼は色々なオーケストラでバンドネオン奏者として頭角を現します。

 しかし、彼は古いスタイルのアルゼンチンタンゴに馴染めず、独自のスタイルを追求すべくフランスへ。クラシックの作曲を勉強したく渡仏したピアソラですが、どうもしっくりこない。ナディア・ブーランジェ先生から、「本来の自分の演奏してみなさい」と言われ、タンゴを披露した所…「これがあなたの音楽よ」と喝破されるのです。それから彼は彼独特のタンゴをどんどん作曲していくことになります。

 当時、ピアソラの楽曲はアルゼンチンには受け入れられず、「タンゴの異端者」とまで酷評されます。しかし、時代とともに評価が変わり、いまでは偉大なタンゴの作曲家に名を連ねています。この彼の才能を見出し、後押ししたのが、そうフランスだったのです。

 

 アルゼンチンタンゴをフランス料理店のBenoitで開催できた理由が、少しばかりお分かりいただけたのではないでしょうか。後付けのような話ですが、この事実を知ることで胸を張ってフランス本部へ提案し、二言返事で承認を得ることができたのです。そして、「フレンチカンカンは?」と提案されたのですが…「Mmmm~」さすがにBenoitではないですかね。

 さあ、「フレンチでタンゴ~後編~」では、アルゼンチンタンゴの真髄ともいえる「音」を担うタンゴバンドをご紹介させていただきます。各々のプロフィールも綴っております。お時間のある時に、以下のURLよりご訪問いただけると幸いです。

kitahira.hatenablog.com

 

 最後まで読んでいいただき、誠にありがとうございます。

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ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

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2023年3月 Benoitミュージックディナー「フレンチでタンゴ」のご案内 ~後編~

Benoitミュージックディナー アルゼンチンタンゴ

日時:202337()8() 18:00より受付開始 18:30開演

料金:ダンススペース周辺のお席をS席、少し離れたA席をご用意させていただきます。

S席24,000

A席19,000

ともに、表示価格はパフォーマンス・ワイン・お食事代・サービス料/税込です。

 

ダンサー:クリスティアン&ナオ

ピアノ:サッコ香織

バンドネオン川波幸恵

ヴァイオリン:専光秀紀

※昨今の不安定な環境下のため、開催日や出演者が変更になる可能性がございます。

 

 当夜は18:30より、食前酒を楽しみながら第1部(約30分)ほどお楽しみいただきます。そして、その余韻に浸りながらBenoitのお食事がスタート。デザートまで提供終了後に、第2部(約40分)を始めます。パフォーマンスとお食事をきっちり分けることで、どちらも十分にお楽しみいただけます。

質問などございましたら、何気兼ねなくお問い合わせ、もしくは返信をお願いいたします。席数に限りがございます。ご予約は北平へのメール(kitahira@benoit.co.jp)への返信、もしくはBenoit(03-6419-4181)にご連絡いただけると幸いです。

 

 今回は、本場の素晴らしさを体感していただきたく、アルゼンチンタンゴの真髄ともいえる「音」を担うタンゴバンドをご紹介させていただきます。

 タンゴ独特の楽器と言えば、間違いないく「バンドネオン」でしょう。2つの本体と、それらを蛇腹折りのようなもので繋いでいる、一見ではアコーディオンのようですが、似て非なるもの。アコーディオンのように左右に広げ押し戻すように空気を吹き込むことで音を奏でるのです。しかし!この押し広げる戻す時で、同じ鍵盤を押していても音が違うのです。なんという楽器をこしらえたのか!これが「悪魔の楽器」と評されている理由なのです。

 これほどの難解な楽器を、ものの見事なまでに使いこなすのが、川波幸恵さんです。2015年アメリカで行われたバンドネオン奏者世界一の栄誉に輝いた実力の持ち主であり、テレビ出演や地方公演などのひっぱりだこの人気者。難解なバンドネオンが、いまなお健在であるということは、この楽器でしか再現できない音色があるからに他なりません。電子音のような軽い音ではない、彼女が奏でる世界が認めた音色は必聴です。

 そして、華やかなふくらみを与えるヴァイオリンは、専光秀紀さん。馴染みの楽器でありながら、タンゴ独特の奏法により音色は、ところどころで深い味わいを残します。弦を指で弾く?弓で弦をこする?文字としてどう表現したものか悩む自分がいます。

先人たちが、切磋琢磨して築き上げてきたクラシック音楽のヴァイオリン技術。しかし、楽器の使用方法という固定概念を払拭し、その楽器の特性を識ることで、さらなる音色を奏でるようになる。その一派を極めていったのがタンゴミュージックなのでしょう。専光さんのヴァイオリンによって、我々はその片鱗を識ることになるのです。

 いかに腕の立つ奏者がそろっていても、皆が勝手気ままに演奏するのでは、人々に感動を与えることができません。そう、オーケストラでは指揮者が奏でられる音に息吹を吹き込むと言っても過言ではないと思います。室内楽のように少人数での編成の場合には、指揮者を立てず奏者の誰かがその役を担うものです。

 今回で10回目を迎えるBenoit「フレンチでタンゴ」で、この大役を担っていただけるのが、ピアニストのSacco香織さんです。選曲に始まり、ダンサーや他の演奏者との打ち合わせ、ストーリーを組み立ててゆきます。さらに、当日の進行までをもこなす。Benoitで開催している「フレンチでタンゴ」では、ほぼすべてにおいて彼女にお願いしているのです。

 初めてお会いした時は、ちゃきちゃきとした大阪っ子の快活な印象をもったものです。しかし、ピアノの前に腰掛け、譜面を開いてからは、雰囲気が豹変するのです。毎回のように、他の奏者との最終調整をBenoitで開宴直前に行います。音合わせ途中で手を止め、言葉を交わしながら譜面台に何かを記入してゆく…素人の自分は、彼女たちの世界に土足で踏み込んではいけないと思っています。だから、「何を書いているのか」質問することはしません。いや、聞いてはいけないと思っています。

 思うに、Saccoさんは譜面を開いた時に、音符の羅列に作曲家の思いを読み取っているのだ。そして、どのように自分は作曲家に応えてゆけばよいのか、自問自答を繰り返しているのではないか。他の奏者も同じ思いのはず。各々が奏でた旋律を、作曲家の思いを加味しながら紡(つむ)いでゆくのではないか。タンゴの曲は、今まで練習も含め幾度となく奏でてきたはずで、譜面を見なくとも演奏できるはずです。しかし、譜面を広げそこへ何かを記入してゆく姿を目にする…

 奏者が大勢いるオーケストラでは、指揮者の思いをそれぞれのパートが応えることによって壮大な世界を我々に聴かせてくれます。これが、指揮者のいない室内楽となると指揮者の代わりが必要になる。それをSaccoさんが担う…今回は、各パート一人の編成であり、各々が経験豊かなメンバーだけに、同じ譜面であってもそれぞれの曲に対する世界観が違っているはず。

 もしかしたら…メンバーが集うその時に、Saccoさんはそれぞれの想い描く景色を理解し、紡いでいっているのではないか。その際に違和感がない曲想となるよう、譜面にメモを取っているのではないでないか。何度も練習したであろう、見慣れた譜面に。メンバーの個性を生かしながら編曲することで、一期一会ともいえる楽曲が生まれ、その曲が我々を楽しませてくれる。まさに、正真正銘の楽曲と出会えることになるのです。

 Benoitで10回目を迎える「フレンチでタンゴ」のうち、8回を彼女にタンゴバンドを率いていただきました。ただ調和を求めるのであれば、Benoitでここまでタンゴイベントを継続できることはなかったでしょう。各々の個性を理解し、相乗効果を生むかのように編曲しているからこそ、我々に感動を与えてくれたのです。ん?過去2回はどうして彼女ではなかったの?と疑問を覚えたのではないでしょうか。そう、彼女はヨーロッパにいた!

 Saccoさんは、活動拠点をイタリア、そしてスペインへと移しているのです。昨年秋に、イタリアのミラノ近郊で行われたコンサートが上の画像です。ヨーロッパへ赴いた最初の地がイタリアだったこともあり、以前活動していたイタリア人メンバーとの演奏もようです。そして、下の画像は、スペインに住んでいるアルゼンチン人の友人の声かけで集まったメンバーでのタンゴショーです。「バレンシア近郊にすむアルゼンチン人がたくさん集まった中でのでした。スペインには本当にたくさんのアルゼンチン人が住んでいて、タンゴの歌が始まると一緒に口ずさむ方も多く、そこにいた皆さんが一つになった、心温まるコンサートでした。翌日がワールドカップ勝戦ということもあり、みんな燃えていました!」と、(笑)マークとともにメッセージが届きました。。

 送っていただいた画像を見て感じたことは、持ち歩けない楽器だけに、日本はもちろん海外でも、グランドピアノがある会場は少ないということです。Benoitでも、最初の開催は電子ピアノでした。そして、「電子ピアノではだめだ…」と自分が反省することになります。力強くもあり、繊細でもある、彼女の指が鍵盤をたたくことで奏でる音色は、電子音で表現はできない。Benoitに入れることのできる大きさでいい、グランドピアノを用意しなければならないと決意した時でもありました。

 今回もBenoitにグランドピアノを導入します。Saccoさんのピアノの音色で導くかのように、川波さんのバンドネオンと専光さんのヴァイオリンが奏でられ、クリスティアン&ナオペアが舞うことで、我々をタンゴの魅力あふれる世界へと誘(いざ)います。Benoitでの二夜限りのタンゴの物語…皆様、思う存分お楽しみください。

 

メンバープロフィール

クリスティアン&ナオ -タンゴダンサー- 】

堤崎尚子

Cristian Andres Lopez 

 2008年よりペアとして本格的に活動を開始。2009年〜2012年の4年連続で、世界選手権サロン・ステージ両部門ファイナリストという快挙。2013年より再び東京を拠点に活動し、2015年6月に南青山にタンゴサロン ブエノスアイレスをオープンする。最近では元宝塚のトップスター達が出演するミュージカルやコンサートに出演、コレオグラファーとしても活躍している。

<主な受賞歴 2008年 Japan Openタンゴダンス選手権サロン部門ステージ部門

共に準優勝/2009年アルゼンチンタンゴ世界選手権アジア大会サロン部門優勝/

世界選手権ステージ部門3位

2010年世界選手権サロン・ステージ両部門3位/

2012年メトロポリターノMILONGUEROS DEL MUNDO 優勝>

 

【Sacco香織 -ピアノ- 】

 ヌエボタンゴをピアソラのピアニストだったPablo Zieglerに師事。単身でアルゼンチンに渡り、ブエノスアイレス市立オーケストラ団員、指導者としても評価の高いHernan Possettiに師事。現地でファーストアルバム“Tango de Buenos Aires”を録音、リリース。その後数回渡亜し、多数コンサートを行う。イタリア在住中は巨匠ダンサーMiguel ZottoやRoberto Herreraと数々のステージを共演。イタリアを中心にカタール、フランスなどでも演奏を展開する。現在はスペインに移住しヨーロッパ大陸を中心に日本全国でも活動中。

 

川波幸恵 -バンドネオン- 】

 第一回チェ・バンドネオン国際コンクール第1位、福岡市在住のメンバーで結成されたタンゴ三姉妹+では、2021年ピアソラ国際コンクールアンサンブル部門で第1位。海外での演奏地域は、20箇所を超える。渡辺えりと出会い、舞台「りぼん」に出演。以来、ジャンルや文化の壁を越え(西城秀樹沢田研二笑福亭鶴瓶らと共演)幅広く活動、「題名のない音楽会」などメディアにも多数出演。オリジナル楽曲「じゃばら体操」や折り紙を通して、音楽と笑顔の国際文化交流を行っている。

 

【専光秀紀 -ヴァイオリン- 】

 3歳からヴァイオリンを始める。東京音楽大学卒。クラシックを三本克郎、篠崎功子に師事。大学在学中より、小松亮太オルケスタティピカツアーに参加し音楽活動を開始。タンゴの世界に深く傾倒する。2012年アルゼンチンに渡りアリエル.エスパンドリオ、ガブリエル.リーバスに師事。日本では数の少ないコルネットヴァイオリンも演奏する。現在タンゴ楽団メンターオや、小松真知子タンゴクリスタル等、様々な楽団で演奏中。

 

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一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

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2023年2月 「北平がBenoitを不在にする日」のご報告です。

 私事で恐縮なのですが、自分がBenoitを不在にしなくてはならない2月の日程を書き記させていただきます。滞りがちだったご案内を充実させるべく、執筆にも勤しませていただきます。ご不便をおかけいたしますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。

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ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

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