kitahira blog

徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

2022年4月 季節のお話「竹の秋」…秋!?

 2023年5月6日に「立夏」を迎え、暦の上ではこの日をもって夏が始まります。そこで、今回は晩春の季語になっている「竹の秋」のお話です。「春」の季語なのに「秋」?

 「竹」とは謎多き植物です。あまりにも身近な植物なため、あまり珍しさを感じないものなのですが、学術的には「木」でもなく「草」でもないといいます。イネ科に属する理由の一つとして挙げられるのが、イネ科の特徴でもある茎が空洞を成す「稈(かん)」を持つということ。竹の場合、その「稈」が硬く木質化する「木の特徴」を示すも、そのまま肥大化しないため年輪ができないという「草の特徴」も持ち合わせます。ということは、竹は竹以外のなにものでもなく、草木に分類してはいけないようです。しかし、植物ゆえに花を咲かせ実を付けます。「竹の花」?皆様が疑問に思うのも無理はありません。花の周期は1年ではなく、孟宗竹で60年、真竹で120年というのです。花の後には実を成すも、その後には、竹は枯死するのだというのです。この開花の周期では、一生見かけることがないのも無理はありません。

 「竹の花」が稀では、種から竹が増えてゆくことなく、「竹の子」によって竹林が拡がりを見せることになります。竹林は一本の竹が地下茎を広げ、「竹の子」という新芽が竹林を作り上げます。大きな竹林も地下茎でつながっているため、1本でも病原菌に感染すると、竹林が全滅するというのも、ここに理由があります。この竹の子が地面より顔を出すのが晩春です。和食では欠かすことのできない、この時期の旬の味覚の代名詞的な食材でもあります。「竹偏(へん)」に「旬」と書くと「筍(たけのこ)」とは、なんと的を射た漢字をしつらえることか。そして、4月の末から今に至る期間が、まさに筍の旬。

 今、竹林に赴くと、周りの樹々が新緑美しく青々としているのに対し、黄葉している姿を目にします。竹の地下茎の無数に芽吹いた「筍」に養分を奪われているからです。さらに、収穫や実りを意味するのが「秋」。そのため、冒頭に紹介した「竹の秋」は、晩春の季語になるのです。これに対して、竹の葉が生い茂り翠輝かんばかりの姿を「竹の春」といい、秋の季語。春が秋となり、秋が春となる。この一見ちぐはぐに思える表現に、機知を含ませながら、人々に問う。この自然の機微の捉え方、言い表しの妙は、今でも十分に共感を得るものではないでしょうか。「麦秋」とは夏の季語、もう理由はお分かりかと思います。

 

 季節が過ぎ去ってゆくように、旬食材もさってゆきます。立夏を迎えても、季節は晩春であり、「春食材たけなわ」です。竹のお話だっただけに…さあ皆様、足の赴くままにBenoitへお運びください。旬の食材を使った、自慢の料理やデザートでお迎えいたします。

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 過ごしやすい日々ではありますが、まだ「春に三日のはれなし」と表現される時期です。この不安定な天気は、知らず知らずのうちに体力を奪ってゆくもの、油断はなりません。疲労・ストレスなどが原因で免疫力が下がっている時に、乾燥が加わると、コロナウイルスばかりではなく、風邪やインフルエンザにも注意が必要です。さらに、肌荒れやかゆみの原因にもなり、体感温度も下がります。健康のためにも、美容のためにも、程よい湿気お忘れなきように。そして、心の潤いも保ちながら快適にお過ごしください。

 最後まで読んでいいただき、誠にありがとうございます。

 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com