kitahira blog

徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

きたる2024年4月6日(土)、Benoitにて≪アルチザンによるシャンパーニュの饗宴/競宴≫を開催します!

 「Artisan(アルチザン)」とはフランス語に語源をもち、手工芸で製品を作る職人のことを意味します。往年は、創造的な作品を生み出す「芸術家」と対比した言葉でした。しかし、芸術的な作品も、アルチザンの熟練の技なくして成り立たないと考えるようになると、この言葉は少しニュアンスを変えてきます。今では、工場などで大量生産されるものとの対比として使われるようになるのです。日本でいう「職人」や「匠(たくみ)」という表現が相ふさわしい気がいたします。

Champagneの地からBenoitに集う、3人の若きアルチザン!≫

 シャンパーニュの世界では長らく大手メゾンが主役の座を誇示してきました。彼らがその存在を広く世界に認知させ、愛される特別な飲み物として確固たる地位を築き、シャンパーニュというブランドを確立してきました。この功績は、他に類を見ないほどの成功を収め、シャンパーニュという名前は確固たる地位を獲得することになります。

 この大手メゾンが台頭する中で、家族ぐるみという最小規模で粛々とシャンパーニュを醸し続けていた人々がいる。彼らは、なんのしがらみもなく、ただ自分が美味しいと思うものを追い求め続けことができた。それが、大手メゾンが表現することが難しい個性となり、それが他に類を見ない美味しさを導いてくることになるのです。ここ数年で、シャンパーニュも「造り手」に脚光が浴びるようになってきたことは、この美味しさに多くの人が気づいたことに他なりません。

 確かに、資金面では大手メゾンには遠く及ばないために、大幅な設備投資などはできません。しかし、それでも創意工夫を繰り返しながら、少しずつ醸造設備を整えてゆきます。それよりも、アルチザンが着目したのは、ブドウ栽培のほうでした。ブドウを成長させるのは、太陽であり、その土地土地の土壌であり、そして寒暖差や適度な雨をもたらす気候です。どれほど資金をかけようとも、これらを変えることはできません。そして、人が手塩にかけて成長の手助けをすることで、ブドウは美味しい果実を実らせる。

 ワインは農産物であり、美味しいブドウ無くして、美味しいワインはで醸せません。家族経営だからこそ、目指すべきシャンパーニュの姿が皆に明確に共有される。そして、各々がそれを意識することで、栽培・醸造・熟成という各過程において、細部にまで目を遣(や)ることとなる。そう、「神は細部に宿る」のだ。妥協なく細かなところにも手を抜かないばかりか、弛まぬ努力を継続することが、個性となってシャンパーニュの中に表現される。

 シャンパーニュの銘醸地として名高い3地域。それぞれの地に居を構え、職人的栽培醸造家と称される3人、のアルチザン、Pierre Paillard (ピエール・パイヤール) Antoine(アントワーヌ)氏に、Doyard (ドワイヤール) Guillaume(ギヨーム)氏、そしてCaze Thibaut (カゼ・ティボー) Fabien(ファビアン)氏がBenoitに集(つど)う。すでに世界のワイン評論家から一目置かれている彼らが一堂に会する機会など、そうそうあるものではりません。自分が語るのとはわけが違う、彼らの口から発せられる言の葉一枚一枚によって、彼らの醸したシャンパーニュの輝きが増すはずです。Benoit自慢の料理とともに、大いにお楽しみください。

※以下敬称略

 

アルチザンによるシャンパーニュの饗宴/競宴

開催日: 202446()

時間: 18:00会場 18:30スタート

料金: 25,000(サービス料/税込) ※お食事とワインを含みます。

※生産者が各テーブルに順次着席する ため、皆様には相席をお願することになります。個別のお席がご希望の際は、ご予約時にお伝えいただければ、喜んでご用意させていただきます。

ラインナップ

Pierre Paillard / Doyard / Caze Thibaut、各生産者から2種類ずつ、計6種

※各生産者のご紹介とともに、以下に記載いたします。

 ご予約はもちろん、何かご要望・質問などございましたら、何気兼ねなくご連絡ください。に自分へメール(kitahira@benoit.co.jp)か、もちろん電話(03-6419-4181)でもご予約は快く承ります。

 

< Pierre Paillard (ピエール・パイヤール) >

 シャンパーニュのMontagne de Reims(モンターニュ・ド・ランス)地区の南部に位置する村Bouzy(ブジー)といえば、シャンパーニュグランクリュで最もパワフルなピノ・ノワールを育(はぐく)む地として名を馳せる。Pierre Paillard(以下、ピエール・パイヤール)の所有する畑は、すべてがこの村にある。ブドウ栽培を生業とした1768年からその名を歴史に刻んでゆき、1946年についに醸造所を設立。今は8代目となるアントワーヌとカンタン・パイヤール兄弟を中心に、見事なまでのシャンパーニュを醸し続けています。

 ブジー村はピノ・ノワールグランクリュとして格付けさているだけに、作付面積の約9割がピノ・ノワール、残りにシャルドネが植栽されています。しかし、ピエール・パイヤールは、11haある所有畑の3割以上となる4haにシャ ルドネを植えている…彼の地で育まれたピノ・ノワールから醸された、しっかりとした骨格の濃密で表情豊かな果実味のあるワインに、フレッシュさとエレガンスをもたらすためという。類(たぐい)まれなる このシャルドネ高比率は、ピエール・パイヤールの中で連綿と引き継がれているのです。

 ブドウ栽培は20年前からリュット・レゾネ(減農薬農法)で行っており、自然の野草で覆わ れたブドウ畑では、ここ15年間、化学肥料を一切使っていない。ビオディナミやビ オロジックの手法も取り入れつつも、土壌とブドウの樹のバランスを保つことを最優先にしているため、ビオ認証にはこだわりはない。植樹の際は、クローンではなく、多少なりとも異なる遺伝子をもつ同一品種からなるマッサル・セレクションを採り入れていることは、栽培に苦労はあるものの彼らのワインに複雑さを与える一つの要因になっている。醸造は、区画と品種に分 けて行い、醗酵には主にステンレスタンクを使用するも、一部のワインにはコンク リートタンクも用いている。アルコール発酵後、全てのベースワインはマロラク ティック発酵を経て、澱とともに8ヶ月と長期間熟成させ、瓶詰後も最低42ヶ月という長きにわたり熟成する。

今回Benoitに姿を見せるのは、以下の2本です。

NV Les Parecelles(レ・パルセル)

 ブジー村に所有する複数の区画をブレンドして仕込まれたスタンダードシャンパーニュピノ・ノワール70%にシャルドネ30%というブレンド比率です。なぜシャルドネ種を植栽しているのか?この答えは、これらのシャンパーニュが教えてくれることでしょう。

2019  Blanc de Noirs Maillerettes(ブラン・ド・ノワール マイユレット)

 ブジー村の南西向き斜面の中腹にある、「レ・マイユ レット」という単一区画に1970年に植えたピノ・ノワールのみで醸される。彼らは、「レ・マイユ レット」とシャルドネが植わっている「レ・モトレット」を、≪母なる畑≫と呼んでいる。所有する畑に植樹する苗木には、前述の2つの畑から選ばれた枝を使用するからといいます。彼の地で育まれたピノ・ノワールの実力とはいかがなものなのでしょうか?

 

< Doyard (ドワイヤール) >

 シャンパーニュのCôte des Blanc(コート・デ・ブラン)といえば、シャルドネの聖地とも称されている地域。北のシュイィ村に始まり、南のル・メニル・シュール・オジェまで、特級畑がこれでもかと名を連ねています。ル・メニル・シュール・オジェから南に向かった先にあるのが、Vertus(以下、ヴェルテュ)村です。彼の地に、1927年から自社元詰めのシャンパーニュ造りを続けてき たのがDoyard (以下、ドワイヤール)です。

 ヴェルテュ村の畑は、最上の一級畑(プルミエ・クリュ)と称されており、北に位置する特級畑が東向きであるに対し、この村の辺りから南斜面へと変わってゆくため、太陽の恩恵を十二分に受けることができる。そのため、強固な酸や鋼(はがね)のようなミネラルが出すぎることはなく、温かみのある柔らかさが魅力のシャンパーニュに仕上がるという。

 2006年、ヤニーク・ドワイヤールから、息子であるシャルルへ引き継がれることで、ドワイヤールは更なる高みへと導かれることになります。土壌の活性化を促す「独創的ではない」ビオディナミが栽培の基本。ブドウ樹の仕立て方は、収量を抑えるために、 珍しいコルドンスタイル。ステンレスタンクと樽を併用する醗酵、長期瓶内熟成、低めのガス圧と少量のドサージュ…「自然が与えてくれる以上のものを作ることはできない」と彼は喝破する。

 シャルルの努力は着実に実を結ぶことになり、世界各国の著名なワイン評論家から称賛されるにいたります。しかし、2017年に彼は志半ばで夭逝(ようせい)するのです。深い深い悲しみの中で、父であるヤニークはワイナリーに戻り、弟のギヨームが兄の意思を引き継ぐことを決意します。身近にいたからこそ知りえるシャルルの並々ならぬ努力。その賜物ともいえるドワイヤールのシャンパーニュを、過去のものとしてはいけない。この思いを胸に、ヴェルテュ村に北に連なる特級畑を含める、11ha(90%がシャルドネ/10%がピノ・ノワール)から、彼らはシャルルにも劣らないシャンパーニュを醸し続けています。

今回Benoitに姿を見せるのは、以下の2本です。

NV Cuvée Vendémiaire Brut(キュヴェ・ヴァンデミエール・ブリュット)

 ヴェルテュ1級畑とコート・デ・ブランの4つの特級畑のシャルドネのみで仕込まれた…と記載がありました。なぜ、特級畑よりも先に、1級畑を紹介しているのか?このあたりに、彼らの醸すシャンパーニュへの想いが込められているのでしょうか。真相は、ご本人に聞いてみるしかないでしょう。

2018 Cuvée Clos de l’Abbaye(キュヴェ・クロ・ド・ラベイ)

 ヴェルテュ村にある南東向きの0.5haの区画に、1956年植樹されたシャルドネのみで醸されたシャンパーニュです。樹齢68年にもおよぶ、還暦を超えたVileiies Vignes(古樹)が成す果実はいかほどのものか?なぜ、特級畑でヴィンテージシャンパーニュを仕込まなかったのか…真相はご当主の口から語られることでしょう。

 

< Caze Thibaut (カゼ・ティボー) >

 Vallée de la Marne(ヴァレ・ド・ラ・マルヌ)は、Montagne de Reims (モンターニュ・ド・ランス)や Côte des Blanc (コート・デ・ブラン)と並ぶシャ ンパーニュ重要産地の一つです。この地区は、植栽されているブドウ品種の約7割をピノ・ムニエが占めています。特に西に向かうにつれて谷間の幅が狭まり冷気 が溜まりやすくなるため、遅霜のリスクを避けるためにも、発芽が遅く早熟なムニエ が栽培に適しているのだという。また、東側に比べて粘土の表土が厚く、ふくよかで 重厚感のある味わいとなるのだと。

 彼の地で、Épernay(エペルネ)から西に20kmほど離れたChâtillons-sur-Marne(シャティヨン・シュール・マルヌ)村に居を構えるのが、Caze Thibaut (以下、カゼ・ティボー)です。カゼ・ティボーの歴史は、現当主ファビアンの祖父が1953年に ワイナリーを設立したところから始まります。祖父は自ら元詰めでシャンパーニュ を造っていたが、ファビアンの父は自分では造らず全てのブドウをネゴスに販売していたという。大手が台頭している時代であることを考慮すると、賢明な判断だと思います。しかし、ファビアンは祖父が醸していた時代を懐古するのです。この衝動を抑えることができず、父から引き継いだ2009年 に自身のワイナリーを立ち上げたのです。

 ファビアンは畑の状態を見て、まずは土壌 を改善するべきだと判断した。自然の力を尊重すべきとの考え方から、化学物質を使用せず有機肥料や堆肥を使って土壌を活性化させ、微生物の育つ健康的な土壌造りを行った。3年かけた土壌改良の結果、畑に生えている植物を見てファビアンはやっとこの畑のあるべき姿になったと感じたという。そう、彼のシャンパーニュの初リリースは2018年のこと。

 カゼ・ティボーはマルヌ川右岸に位置する点在する15の区画の、2.6haほどを所有しています。畑の管理はほぼ手作業で、殺虫剤や農薬は使用せず、オーガニック栽培を徹底しています。自然酵母によるアルコール発酵、MLFは全てオー ク樽を使用する。それも、114L、228L、350Lの3種類のサイズを使い分けるという。「土壌への敬意、ワ インへの情熱によってこの土地の個性を表現する」、このファビアンの言葉がすべてを物語っている。

今回Benoitに姿を見せるのは、以下の2本です。

NV Crayères(クレイエール)

 2021年は、ベト病の蔓延により収量が激減しました。そこで、Vin de Réserveを使いシャルドネピノ・ムニエブレンドで仕上げてきた、貴重なシャンパーニュです。初の試みでありながら、納得のいく品質であったため、今回のラインアップに登場です。

2017 Millésime(ミレジム)

 ヴァレ・ド・ラ・マルヌの右岸のシャティオン・シュール・マルヌ村のゴーギ ユーズという区画のピノ・ムニエ100%で作られるブラン・ド・ノワール。これこそが、彼の追い求めるシャンパーニュの姿なのかもしれません。最上のピノ・ムニエで醸されると、いったいどのような美味しさとなるのでしょうか?

 

アルチザンによるシャンパーニュの饗宴/競宴

開催日: 202446()

時間: 18:00会場 18:30スタート

料金: 25,000(サービス料/税込) ※お食事とワインを含みます。

※生産者が各テーブルに順次着席する ため、皆様には相席をお願することになります。個別のお席がご希望の際は、ご予約時にお伝えいただければ、喜んでご用意させていただきます。

 ご予約はもちろん、何かご要望・質問などございましたら、何気兼ねなくご連絡ください。に自分へメール(kitahira@benoit.co.jp)か、もちろん電話(03-6419-4181)でもご予約は快く承ります。

 

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ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com