kitahira blog

徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

2023年5月 Benoit≪価格改定と暮春プラン≫≪お勧めの旬食材≫のご案内です。

 すでに古い話ですが、2023年3月14日、例年よりも早く東京都の開花宣言がなされました。靖国神社の境内にある標本木を、気象庁の方が「1、2…5輪。開花ですね」と数えてゆく光景は、この時期の風物詩といっても良いのではないでしょうか。この桜の開花宣言は、「生物季節観測」という名称で気象庁が実施している公式発表です。アナログとも思える目視や耳を使った確認方法ですが、桜の花を見ることで春の訪れを実感することを思うと、あながち的外れなことでもありません。

 現代人は、「暦(こよみ)」という世紀の大発明があまりにも便利なために、この暦に支配されている感があります。それに対して、自然界に生きる動植物は、我々が見失ってしまっている四季折々の機微を察して行動しています。そこで、彼らの助けを得ながら季節の移ろいを捉えてゆこうというのが、気象庁が実施している「生物季節観測」です。

 気象庁管轄下の全国の気象台と測候所を合わせた58地点で、鳥や昆虫などの動物23種と草木の植物34種を、場所によって観測対象は違えども、1950年年代より70年もの歳月を観測し続けてきたのです。その中でも最重要な植物がサクラであることは、58地点全てで見届けてきたことが物語っています。サクラは、ほぼ全国へと版図を広げたソメイヨシノが選ばれ、この植栽がない地、沖縄地方では「ヒカンザクラ」、北海道北東地方では「エゾヤマザクラ」で観測されます。

 2021年に、この生物季節観測の対象が大幅に縮小されました。開花についてはウメとサクラはもちろん、アジサイとススキを残しました。黄葉・紅葉の対象としてイチョウとカエデ。この6種のみです。動物については、全廃が決定されたのです。

 昨今の住環境の変貌に加え、地球温暖化も影響しているのでしょう。動物を探すことが困難になったことが原因のようです。確かに、都心ではウグイスの鳴き声を耳にしたことはありません。生物学的に言えば、ウグイスの生息数が激減しているか、すでに他地域へ移り住んだという結論で良いですが、生物季節観測では生存地域の確認が目的でないので、致し方ないのかもしれません。

 とはいうものの、70年近い観測結果は、動物環境を計る上での資料。このまま「廃止」という言葉で終えていいものではありません。そこで、「継続すべき」という観点から、この思いが気象庁から環境省へと移管し、2021年に「いきものログ」が立ち上がりました。身近な生きものが人知れず姿を消してゆくことを危惧した環境省が、インターネットを通じて生きもの情報を皆で投稿してゆこうという、「市民参加型調査」です。

https://ikilog.biodic.go.jp/

 気象庁は、どのような基準で生物季節観測を続けてきたのかを公表してくれました。これを、我々が四季の機微を捉えるためのひとつの指針とし、皆様ご自身の備忘録に加筆してゆくのも一興かと。メモ帳でもよい、前述の「いきものログ」でもよい。草木の芽吹き、花開く姿、鳥の初音に小動物たちの初見。時間に追われ、あくせく歩く中にも、ほっと一息入れることで見えてくる景色、移ろいゆく四季の美しさに気づくことになるでしょう。そして、どれほど追いかけようとも季節去ってゆき、また巡ってくることを知ることになります。

 

 「景色」とは、四季を感じる自然景観のことだと、語源辞典「漢辞海」が教えてくれます。その中で、釈名(しゃくみょう/古代中国の賢人が書き遺した語源辞典)では、「景」とは「境」である。明るく照らす場所に境限(=かぎり)があるから。」という。境限があるからこそ、四季があり一年にメリハリがでるのかもしれません。その時々に境限があり、その時々に姿を見せてくれる自然景観が景色なのです。旬の食材とは、ある意味で景色なのかもしれません

 季節の景色に「待つ」という優しさがないように、旬の食材も「待つ」という優しさを持ち合わせておりません。

 

202351日より、コース料金を変更させていただきます。

 このご案内は、ないに越したことがありません。しかし、昨今の食材価格・光熱費の高騰は、我々の努力では如何しがたいところにまで至りました。価格の見直しとは、安直な施策ではりますが、Benoitの料理の品質を維持し、レストランとして皆様にご迷惑がかからぬようにと、考え抜いた末のことです。皆様にはご理解のほど、切にお願い申し上げます。

 そこで、日頃より並々ならぬご愛顧を賜っている上に、自分よりご案内している長文レポートに目を通していただけている皆様の労に報いるため。そして、旬の食材をつかった美味なる料理を食することで、無事息災に日々を過ごしていただきたい、との想いを込め、≪暮春特別プランをご案内させていただきます。期間は、メールを受け取っていただいた日より、2023531()までです。

 

暮春特別プラン

期間:土日を含めた2023531()まで

 

ランチ

前菜x2+メインディッシュ+デザート

7,000円→6,500円(税込/サービス料別)

※前菜を1つにし、デザートを2つ選べるプランに変更できます。

前菜+メインディッシュx2+デザート

8,500円→7,700円(税込/サービス料別)

 

ディナー

前菜x2+メインディッシュ+デザート

9,000円→8,500円(税込/サービス料別)

※前菜を1つにし、デザートを2つ選べるプランに変更できます。

前菜+メインディッシュx2+デザート

11,000円→10,000円(税込/サービス料別)

 

 その他にもケーキ付プランなどもございます。詳細は以下のURLよりBenoitの予約サイトを参照ください。ご希望日のご予約が取れない場合でも、まだお席が残っている可能性もございます。その時は、何気兼ねなく自分へ返信、もしくBenoitへご連絡(03-6419-4181)ください。ご要望や質問なども、喜んで承ります。

https://www.tablecheck.com/shops/benoit-tokyo/reserve

 

≪さらなる高みをテーブルマナー講習会≫

 其処此処で開催しているテーブルマナー講習会であれば、自分は皆様へご案内することはありません。

 講師である吉門さんとは、すでにBenoitで71回もこの講習会を開催しているのです。リピートされている方ばかりであり、あまりにもためになり面白いため、その方がご友人を誘う。それほどに内容が深いものなのです。

 講師である吉門憲宏さんは、元日本航空国際線のキャビンスーパーバイザー(チーフパーサー)として世界の空を飛び続けた、飛行距離は地球450周を超えるほど。120万人もの旅客様と笑顔を交わしてきているのです。在職中は、定年退職になるまで飛行機に乗り続けたつわもの。日本文化の礼節を伝える民間外交でもある接客のプロとしての人生を歩んできた、だからこそ、多くの知見があるのです。

 先生との自分との出会いは、偶然だったのか必然だったのか…現職を退いてからは、アメリカでのMBA取得のための派遣される某大手企業のスタッフが、欧米の社交界に馴染めるようにとトレーニングをする講師を担っていました。その打合せの席なのか、無事に送り出したお礼のためだったのか、大手企業の人事の方々が選んだのがBenoitの一席だったのです。そのようなことは露知らず、自分がいつものように語るは語る…後日に知ることになるのですが…いやお恥ずかしい限りです。

 この出会いが、今も続いているBenoitで開催される「テーブルマナー講習会」を導いていたのです。全ての所作には理由がある。日本人が、ついついやってしまうことを、笑いを込めながら教えてくれる。毎度のように、会場はやっちまった~と「笑い」溢れている。このようなテーブルマナー講習会があったであろうか。もちろん、料理は自分が語りに伺わせていただきます。

 先日開催された講習会の中で、目頭が熱くなるお話を伺いました。自分が見失いつつある思いを、あらためて思い起こさせてくれたのです。日本人であることを誇りに思う…この感動秘話は後日に…キーワードは…

JA8101

 

世界基準の一流を学ぶ 「テーブルマナー講座」

開催日: 2023513() & 614()

時間: 11:30より講義を始めます。 

11:10までにお運びください。終了予定は15時15分を予定しております。

料金: 18,000(サービス料/税込) ※お食事とワイン2杯を含みます。

※事前振込制です。ご希望の日程がございましたら、北平宛(kitahira@benoit.co.jp)にご連絡ください。質問なども喜んで承ります。この講習会に関しては、電話でのご予約は受け付けておりません。

 

≪季節のお話「竹の秋」!?≫

春もたけなわ、皆様いかがお過ごしでしょうか。

2023年5月6日に「立夏」を迎え、暦の上ではこの日をもって夏が始まります。そこで、今回は晩春の季語になっている「竹の秋」のお話を綴ってみました。「春」の季語なのに「秋」?どういうことなのでしょうか。

kitahira.hatenablog.com

 

5月お勧め料理のご紹介です!≫

 春食材もたけなわ…竹のお話の後だけに…

 「風」は季節を導き、彩りばかりではなく、喜怒哀楽をも表現しているかのような美しい「風景」を我々に見せてくれます。そして、四季折々の「風」は国内各地方にその地ならではの「風土」を作り出すことになる。その多様な「風土」で育まれた食材は、同じ野菜であっても味わいに些細な違いがあり、それが「風味」となる。太陽の恩恵を十二分に受け、風味豊かに育ったものこそ、旬の食材です。

 旬を迎える食材は、人が必要としている栄養に満ちています。そして、人の体は食べたものでできています。「美しい(令)」季節に旬食材が「和」する料理の数々に舌鼓を打つ。「令和」という元号には、なにやら深い深い意味が込められているのかもしれません。

 皆様、移ろいゆく春の美しさに見入りながらの散策の後、そのまま足の赴くままにBenoitへお運びください。そして、旬の食材でこしらえられた料理の数々に舌鼓を打つ。春の機微を口中で感じ入ったとき、Benoitでのひとときが「口福な食時」となることでしょう。さあ、自慢の料理の数々を、ご紹介させていただきます。春には関係ない料理もありますが、そこは「期間限定のお勧め」ということで、ご容赦のほどよろしくお願いいたします。

 

Délicat velouté de PETITS POIS et fromage frais

グリーンピースのスープ リコッタチーズ

※ランチとディナー、ともにプリ・フィックスメニューの前菜の選択肢に名を連ねております。

 

GRATINÉE À L'OIGNON

オニオングラタンスープ

※ランチとディナーのプリ・フィックスメニュー、前菜として+1,000円でお選びいただけます。

 

Œuf mollet, brandade de MORUE

鱈のブランダードと半熟卵

※ランチのプリ・フィックスメニュー、前菜としてお選びいただけます。

 

Sawara en escabèche

サワラのエスカベッシュ 柑橘風味

※ディナーのプリ・フィックスメニュー、前菜としてお選びいただけます。

 

Sakuramasu au plat, primeurs de saison, beurre blanc

サクラマスのソテー 春野菜 ブールブランソース

※ランチとディナー、ともにプリ・フィックスメニューの主菜として、お選びいただけます。

 

Dorade au sautoir, asperges vertes, sucs de caisson

真鯛ポワレ グリーンアスパラガス

※ランチとディナー、ともにプリ・フィックスメニューの主菜として、お選びいただけます。

 

Chaudrée de turbot et coquillages, asperges blanches

佐渡ヶ島産ヒラメと貝のショードレ フランス産白アスパラガス

※ランチとディナーのプリ・フィックスメニュー、主菜として+1,500円でお選びいただけます。

 

Longe de cochon de Gifu en cocotte, pommes de terre nouvelles, lard paysan et cébettes

岐阜県ボーノポークロース肉のココット焼き 新ジャガイモと九条ネギ

※ランチとディナー、ともにプリ・フィックスメニューの主菜として、お選びいただけます。

 

Canard de Aomori à l’orange, fenouils cuits et crus

青森県産鴨胸肉のローストとウイキョウ オレンジ風味

※ディナーのプリ・フィックスメニューで、主菜としてお選びいただけます。

 

Crêpe Suzette aux agrumes de saison, glace vanille

国産柑橘のクレープシュゼット バニラアイスクリーム

※ランチとディナーのプリ・フィックスメニュー、デザートとして+800円でお選びいただけます。

 春が去ってゆくように、柑橘の旬も「待つ」という優しさをもっていません。かたくなまでに、国産柑橘にこだわりますが、いずれは終わりを迎えます。6月の中旬には、海外の助けを借りることになります。

 おいおい!いつもは長々と語るのに、これで終わり?と疑問に思われていることと思います。ご安心ください。それぞれの料理に食材の話も含め、思いの丈をつらつらとblogに綴っております。お時間のある時に、以下よりご訪問いただけると幸いです。

kitahira.hatenablog.com

 

北平のBenoit不在の日

 私事で恐縮なのですが、自分がBenoitを不在にしなくてはならない5月の日程を書き記させていただきます。滞りがちだったご案内を充実させるべく、執筆にも勤しませていただきます。ご不便をおかけいたしますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。

kitahira.hatenablog.com

 

 バランスの良い美味しい料理を日頃からとることは、病気の治癒や予防につながる。この考えは、「医食同源」という言葉で言い表されます。この言葉は、古代中国の賢人が唱えた「食薬同源」をもとにして日本で造られたものだといいます。では、なにがバランスのとれた料理なのでしょうか?栄養面だけ見れば、サプリメントだけで完璧な健康を手に入れることができそうな気もします。これでは不十分であることは、すでに皆様ご存じかと思います。

 季節の変わり目は、体調を崩しやすいという先人の教えの通り、四季それぞれの気候に順応するために、体の中では細胞ひとつひとつが「健康」という平衡を保とうとする。では、その細胞を手助けするためには、どうしたらよいのか?それは、季節に応じて必要となる栄養を摂ること。その必要な栄養とは…「旬の食材」がそれを持ち合わせている。

 「春」とはどのような季節なのでしょうか。薬膳の先生の言葉を借ります。「春は陽気に誘われるかのように、気持ちが上ずってしまう時期です。」確かに、寒い冬が終わり、ぽかぽかともなると、花粉症で苦しむ中でも気持ちが高ぶってくるものです。しかし、この高揚感に、身体がついてゆかず、心と体のバランスが崩れることで体調不良を引き起こしてしまうのだというのです。

 そこで、気持ちの高ぶりを落ち着かせるために、薬膳では春には「香りの良いもの」を取り入れる。往古、この時期の日本では山菜を楽しむ習慣があります。この春を代表する山の幸の「やさしいほろ苦さ」も同じ効用だといいます。そして、「シェフは薬膳を知らないと思うけれど、旬の食材で組み立てる料理こそが薬膳の考え方そのもの」なのだと。

 季節が過ぎ去ってゆくように、柑橘も品種を変えながら、産地も西から東へと、順を追って終わりを迎えていきます。さあ皆様、香り高く心地よい酸味の利いた柑橘を、食生活の中に取り入れませんか。美味しくいただくことが、心身を健康な姿へと導くことになるはずです。疲労困憊の時には、足の赴くままにBenoitへお運びください。旬の食材を使った、自慢の料理やデザートでお迎えいたします。

 

 過ごしやすい日々ではありますが、まだ「春に三日のはれなし」と表現される時期です。この不安定な天気は、知らず知らずのうちに体力を奪ってゆくもの、油断はなりません。疲労・ストレスなどが原因で免疫力が下がっている時に、乾燥が加わると、コロナウイルスばかりではなく、風邪やインフルエンザにも注意が必要です。さらに、肌荒れやかゆみの原因にもなり、体感温度も下がります。健康のためにも、美容のためにも、程よい湿気お忘れなきように。そして、心の潤いも保ちながら快適にお過ごしください。

 最後まで読んでいいただき、誠にありがとうございます。

 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com