kitahira blog

徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

2025年11月から2026年1月まで 知る人ぞ知る熊本県「やまえ栗」が同県天草のみかんと出会い、Benoitのデザートに姿を見せる!

Benoitの秋冬は、「洋栗に始まり、和栗で終える」

 今の時期ともなると、Benoitのディナーは「栗で始まり、栗で終える。」というプリ・フィックスメニューの流れが多くなります。ときに栗の前菜がスープなために、コース2番目に配することもありますが、気持ちの中ではやはり「栗で始まる」ようなもの。前菜の栗はフランス栗。であればこそ、最後は和栗で終えたいものです。

 そこで、今季も「やまえ栗」を熊本県から送っていただき、デザートに仕上げます。この栗の名前を耳にして、「お!」と思った方は、栗を愛してやまない方か、栗を取り扱う専門家でしょう。もちろん、自分も知りませんでした。そこで、少しばかりこの栗が育まれた地と歴史をご紹介させていただきます。

 「やまえ栗」の「やまえ」とは、熊本県の南部に位置している、球磨郡(くまぐん)山江村の村名です。球磨川を上流へと向かった先にある人吉市。そこから、北に聳(そび)える標高1,302mの仰烏帽子山(のけえぼしやま)へと向かうように山路(やまみち)へと入った先に、この村があります。121㎢という広大な地でありながら、その90%を山林が占めているという。

 山江村は、三方を山で囲まれるかのような地。その山々に源を発する清流「万江川」と「山田川」が、南へと流れる中で彼の地を潤し、そして球磨川(くまがわ)へ落ち合う。そこで、この豊富な水資源と、開けた地の緩やかな傾斜は、かつては山田が拓かれ村が誕生したのでしょう。しかし、如何せん平野部が限られていることもあり、多くの人々を養うことができなかった。

 そこで、この盆地だからこその夏冬・昼夜の寒暖差、さらに山の斜面を利用した果樹の栽培を先人は考えた。しかし、賢人は柑橘ではなく栗を選んだのです…鎌倉時代から明治維新までの約700年間、すでに年貢として栗を納めていたという記録があるほどに、彼の地では特産となっていたといいます。

 時を経てついに!1977年9月、山江村の福山栗園の栗が昭和天皇へ「やまえ栗」として献上されることになるのです。今に至るまで連綿と受け継がれてきた栗栽培が、そして労を惜しまず丹精込めて育ててきた「やまえ栗」が、ついに認められた時がきたのです。どれほど山江村の人々の励みとなり希望となったことか。その年の大阪市場では、「献上栗に輝くやまえ栗」という横断幕が掲げられ、競りの最後に姿をみせた「やまえ栗」を見た村民は、「栗が輝いているようだった」と述懐しています。

 しかし、世相は「やまえ栗」に試練の時を与えたのです。1992年、山江農協が球磨(くま)地域農協合併されたことで、「やまえ栗」は他地域とブレンドされ「球磨栗(くまぐり)」として出荷されるようになるのです。歴史から、「やまえ栗」が消えたのです。

 球磨栗だって十分に美味しい栗です。しかし、山江村の人々は自分達の育んだ栗の美味しさに確固たる自信があったのです。今まで培われてきた栗栽培の歴史に加え、献上栗に選ばれたことが、山江村の誇りを見失うことに歯止めをかけたようです。粛々と時が経つ中で、「栗は命」であると言い切る彼らは、村の中という狭い範囲ですが「やまえ栗」を残し続け、復活の機会を待ち望んでいたのです。

 2008年、ついに世相が山江村の人々に微笑みかけた。時は大量生産から高品質を求めるように。そう、栗も例外ではありませんでした。和栗から球磨栗へ、さらに細分化された栗のブランド化が加速してゆくのです。そして、待ちに待っていたこの機運を、山江村の人々が見逃すわけがありません。ここに、「やまえ栗」の名前が復活を遂げたのです。

 2015年8月の台風15号の直撃し、栗畑は壊滅的な被害を受けました。献上栗に選ばれたころの生産量約400tもあったものが、約40tにまで落ち込んだのです。栽培者にとっては存亡の危機にいたる…心折れるほどのことだったはずです。さらに、翌2016年に熊本地震、2020年の豪雨災害と、度重なる自然の猛威の前に、なすすべなく打ちのめされます。

 しかし、彼らは諦めなかった!「やまえ栗」の品質向上を継続しつつ、「収量200t」との目標を掲げ、「やまえ栗」復興に向けて奮励努力することを厭(いと)わなかった。その結果、今では100tを超える実りを得ることができるに至ります。

 「やまえ栗」は、山江村で丁寧に渋皮を剥き、炊き上げ、ペースト状に加工されてBenoitに届きます。これだけでも十分に美味しいため、巷に溢れる栗尽くしデザートを期待してしまう。確かに、美味しい栗なのでたっぷり使ったデザートは、インパクトがあり美味しいだろう…しかし、人間の味覚というものは単調であると飽きてしまうもの。そこで、アジア圏のエグゼクティブシェフパテシエのアリテアが選んだのが、日本原産の美味なる柑橘、「ミカン」です。

 熊本県の天草といえば、海産物はもちろんですが、島を形成する山の麓を利用した果樹栽培が盛んな地。今回は、彼の地で、荒木さん親子が柑橘を丹精込めて育てあげたミカンをBenoitへ送っていただいています。彼らは、天草の地の利に甘んじることなく、さらなる美味しさを求めて続けています。今は、甘みを出すためにマルチシートという白いビニールシートを園圃全面に敷き詰めています。雨などの水分をギリギリまで与えないことで、みかんが生命を守るために甘みを蓄える、この仕組みを利用した栽培方法。確かに理屈は分かるのですが、昨今の異常競う中では、樹が枯死する可能性もある。それでも、毎日のように樹々の様子を観察しながら実践しているのです。

 今、Benoitに届いているミカンは、熊本県オリジナル品種の極早生「豊福(とよふく)」です。これもまもなく終わりを迎えるので、次は早生品種で、「肥のひかり」という、これまた熊本県のオリジナル品種。どちらも、荒木さん親子によって甘みを増した果実に育まれるのですが、ただ甘いだけではありません。キレイな心地よいミカンらしい酸味が、食べ飽きるという言葉を忘れさせてくれたいます。

 毎年のように、Benoitの栗デザートは「モンブラン」です。しかし、毎年のように姿が変わりこのデザートは、今季は栗のタルトのように仕上げます。土台となるタルト生地に栗粉と栗クリームを加え、サクッと焼き上げる。その生地の上に、栗粉と栗クリームを加えたフラン生地かぶせるようにし、バターで香り付けしたフランス栗そのものとミカンをのせて、オーブンで軽く焼いていく…

 そのタルトの粗熱をとれた後に、モンブランが冠雪するかのように生クリームをのせ、和栗ペーストを細く細く搾りのせ、ミカンを飾り、仕上げにミカンの果皮から作ったパウダーをはらはらっと振りかけて完成!この果皮のパウダーに、緑色を見たら「豊福」で、見なかったら「肥のひかり」。別に添えるミカンソルベを時折はさみながら、お召あがりいただきたいです。

 和栗と洋栗を使って、食感を変え風味を変えながら、層をなすように組み立てらえたタルトです。栗だけでは、まったりと重いデザートになってしまうところを、軽やかに仕上げてる。そして、ミカンの心地よい甘みと酸味によって、食べ進めても飽きがこない…秋ですが…。思う存分、秋の味覚の代表である栗デザートをご堪能いただきたいです。Benoit東京史上、もっとも標高の低いモンブラン!であることは、どうかご容赦ください…

Mont-blanc à notre façon, sorbet mikan

熊本県”やまえ栗“のモンブランBenoit風 ミカンのソルベ

※ランチ/ディナーのプリ・フィックスメニューで、+1,500円でデザートとしてお選びいただけます。

 

 

 バランスの良い美味しい料理を日頃からとることは、病気の治癒や予防につながる。この考えは、「医食同源」という言葉で言い表されます。この言葉は、古代中国の賢人が唱えた「食薬同源」をもとにして日本で造られたものだといいます。では、なにがバランスのとれた料理なのでしょうか?栄養面だけ見れば、サプリメントだけで完璧な健康を手に入れることができそうな気もしますが、これでは不十分であることを、すでに皆様はご存じかと思います。

 季節の変わり目は、体調を崩しやすいという先人の教えの通り、四季それぞれの気候に順応するために、体の中では細胞ひとつひとつが「健康」という平衡を保とうとする。では、その細胞を手助けするためには、どうしたらよいのか?それは、季節に応じて必要となる栄養を摂ること。その必要な栄養とは…「旬の食材」がそれを持ち合わせている。

 その旬の食材を美味しくいただくことが、心身を健康な姿へと導くことになるはずです。さあ、足の赴くままにBenoitへお運びください。旬の食材を使った、自慢の料理やデザートでお迎えいたします。

 

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 猛暑な日々も影を潜めてきたようです。これと入れ替わるかのように季節性インフルエンザやコロナウイルスが猛威を振るっているようです。過ごしやすい日々が訪れますが、ここで気を緩めると猛暑疲れがドッと押し寄せてくるでしょう。さらに、疲労・ストレスなどが原因による免疫力の低下を招きます。皆様、無理は禁物、十分な休息と休養をお心がけください。

最後まで読んでいいただき、誠にありがとうございます。

一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。皆様のご健康とご多幸を祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com