kitahira blog

徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

2021年8月 「北平がBenoitを不在にする日」のご報告です。

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 私事で恐縮なのですが、自分がBenoitを不在にしなくてはならない8月の日程を書き記させていただきます。滞りがちだったご案内を充実させるべく、執筆にも勤しませていただきます。ご不便をおかけいたしますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。

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  上記日程以外は、Benoitを優雅に駆け回る所存です。自分への返信でのご予約はもちろん、BenoitのHPや、他ネットでのご予約の際に、コメントの箇所に「北平」と記載いただけましたら、自慢の料理の数々を語りに伺わせていただきます。自分が不在の日でも、お楽しみいただけるよう万全の準備をさせていただきます。何かご要望・質問などございましたら、何気兼ねなくご連絡ください。

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 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com

2021年7月 Benoitお勧め料理「清流美どりのバスケーズ」のご紹介です。

暑中お見舞い申し上げます。

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 連日のように猛暑な日々が続きます。暑いからこそ夏であり、夏が暑いからこそ秋が待ち遠しい…とは思うものの、この暑さは度を越しているでしょうか。外出の際は、木陰での休息も良いものです。心地よい風を感じながら顔を上に向けると、陽射しに照らされた樹々の葉が緑の叢(むら)を成すように生い茂っています。この重なり合う葉を「結び葉」と言うそうです。なんと美しい表現だろうか…

 と思うも、ひとときのこと。暑いものは暑い。皆様、無理は禁物、十分な休息と睡眠、こまめな給水と塩分補給をお心がけください。結び葉の美しさに魅せられたまま、永遠の夢の(意識の遠のいた)世界から抜けだせなくならないように…ゆめゆめ忘るることのなきようお心がけください。

 

 今回は、夏の猛暑だからこそ、味わっていただきたい「バスケーズ」という料理のご紹介です。まずは、この料理の発祥の地をご紹介させていただこうかと思います。

 今では地図上に名前見つけることができない地名「Basque(バスク)」。かつては、今のフランスとスペインにまたがる地域の古称です。地名こそないですが、バスクは、フランスの中でも一地方としいての地位を確立しており、連綿と受け継がれてきた伝統が息づいています。そのためか、バスクの人たちは、「我々はバスク人である」との誇りを持っている。

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 まだ、自分の勉強不足でバスク地方の歴史を紐解いていないため、なぜバスクの人たちは旧名バスクの地に固執するのか説明できません。住み慣れた故郷だからといってしまえば、そうなのかもしれませんが、あまりの彼らの想いの強さは何か理由があるのだろうと勘ぐってしまうもの。ただ、今の自分の知識で思い当たる節が一つだけあります。それは「言語」が違うということ。

 フランス語もスペイン語も違う言語です。しかし、ラテン語系の言語としての共通点が多いものです。かつて、ローマ帝国時代に征服者であるローマ人が、役人として派遣されたり、軍隊が駐屯したりするなどで広がりをみせたのがラテン語でした。しかし、難解な言語であったために、各国でラテン語をもとに進化を遂げていったものが、フランス語でありスペイン語であり、英語の原型にもなっているといいます。

 一方、バスク語と呼ばれる言語は、先住民の人々が使っていた言語。ということは、同じアルファベットを使用していても、ルーツが違うため、文法と発音が異なるというのです。海外の方々からは難解言語として名が挙げられる日本語の場合、ひらがな・漢字・カタカナを、意味ある使い分けをしていることが難解と言わしめる要因ではあると思いますが、やはり文法の言葉の並びが違うことこそが、日本語を学ぶ上でまっさきにぶつかる壁なのではないでしょうか。これは、日本人が英語を学ぶことが苦手だということも同じ理由なのだと思います。

 言語学者が英語の言葉の並び体系化したものを「文型」といい、中学・高校でS(主語)V(動詞)C(補語) SVO(目的語)などと5文型を学んだと思います。日本語の場合、SCVやSOVという並びで、動詞が最後にきます。まさにこれと同じ並びがバスク語です。同じアルファベットを使いながら、この大きな文型の違い。田舎育ちの自分には、同じ方言を耳にすると大いに親近感がわいてくる程度のレベルではありません。

 今では、スペイン側バスクスペイン語、フランス側バスクではフランス語が共用語だといいます。こもままでは消えてゆきかねないバスク語を、彼らの古き良き伝統を守るという意味でも、結束したくなることはいたし方ないことなのでしょう。この結束は、言語や文化のみならず、食に関しても郷土料理を作り上げ継承されてきています。地名がないにもかかわらず、今なお世界に周知されている伝統料理が、バスク料理なのです。なぜか?美味しいからです。

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 フランス全土が農業国という中にありながら、南西に位置しているこのバスク地方は、大西洋に面しているものの、大きなくぼみのようなビスケー湾の最奥に位置していることもあり、荒れ狂う外海とは一線を画しているようです。湿気のある心地良い浜風と温暖な気候は農産物にとっては、理想的な環境がそろっているのです。多々栽培している野菜の中で、彼らの食生活に欠かせないと言われているのがパプリカです。その野菜は、夏に旬を迎えます。

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 その数多(あまた)ある伝統料理の中からBenoitが選んだのが、「鶏肉のバスケーズ(バスク風)」です。地方料理で地名が名前に入るとは、知らない人からは「なんと優しくない」と感じるかもしれませんが、地元の人からすれば地産地消の料理で、これぞバスク料理だ!と皆が知っている逸品です。では、どんな料理なのでしょう?

 パプリカとタマネギをしんなりとするまで火にかけてゆくことで、これらの野菜の甘味と旨味を引き出します。そこへ、完熟トマトを加えることで、トマト特有の心地良い酸味とコクを与える。バスク地方といえばビゴール種の豚が有名で、その生ハムが美味しい。現地ではこの生ハムを加えというが、さすがにBenoitでは希少すぎてそれは不可。別地方産ですが、生ハムが加えて旨味を足します。そして、欠かすことのできない香辛料Piment d’Esprette(ピモン・デスプレット)ぱらぱらと。

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 スペインと国境に近い海沿いに、Saint-Jean-de-Luz(サン・ジャン・ド・リュズ)という港町があります。美しい建物が並ぶ港町であり、美食の街とも呼ばれています。この町から東へ山の中を進むこと20kmほどでしょうか、Esprette(エスプレット)とう村に到着します。そう、この村の名を冠したものが、前述したPiment d’Esprette(エスプレット村の唐辛子)で、A.O.P.の認証を受けている逸材です。ワインは、原産地を名乗るためにクリアしなければならない厳しい規定があることはご存知かと思います。A.O.P.とは、原産地を守り、品質を維持するため、フランス政府が保証した食材のこと。チーズもこの部類に入ります。

 このピモン・デスプレットははエスプレット唐辛子などと表現されるのですが、辛いだけではありません。日本の唐辛子よりも一回りも二回りも大きく、パプリカのように肉厚なので、野菜特有の甘味をも兼ねそろえているのです。夏に収穫したものを軒下に、まるで干し柿のように吊るして乾燥させる光景は、この村の風物詩です。窓枠と比較してみると、いかにこのピモン・デスプレットが大きいかお分かりいただけるのではないでしょうか。

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 パプリカ、タマネギ、トマトの夏野菜の凝縮した甘味、さらに生ハムの旨味。そこに、ピモン・デスプレットの軽やかな辛みと旨味が加わることで、味を引き締めると同時に美味しさを際立たせることになる。これを、鶏肉にまとわせるように仕上げます。鶏も地鶏のような食感と味わいが強いものであると、美味しいけれども相乗効果をうまない、そうBenoitシェフの野口は教えてくれた。もちろん、ふつう見かける鶏肉でも同じことです。

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 そこで、Benoitがバスケーズの相棒に選んだ鶏肉は、岐阜県の特別飼育鶏「清流美どり」です。地鶏のような肉肉しい硬さはなく、やわらかい。淡白な味わいかと思いきや、旨味が後を引く美味しさがあります。試食の際に、ついつい自分の口から洩れたのが「美味しい」という一言でした。

 Benoit鶏料理の定番でもある、低温調理を施します。骨付きの、胸肉ともも肉を、肉が硬くならない59℃という低温でじっくり熱を加えてゆきます。骨付きだからこそ、髄から旨味を引き出し、ぱさっとしない絶妙な焼き加減が可能です。鉄板で表面を焼き上げ、夏野菜の旨味満載のバスケーズを絡めて完成です。

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VOLAILLE DE GIFU en fricassée, garniture d'une basquaise

“清流美どり"のフリカッセ バスク

 

 この鶏料理は、ランチのプリ・フィックスメニュー、メインディッシュの選択肢に加わっております。ここまでご案内しながら、7月末までしかご用意できません。誠に申し訳ありません、めまぐるしく変わるBenoitの営業形態の告知を優先させていただいたために、ご案内がこれほどまでに遅くなりました。これほどまでに美味しい料理にもかかわらず…まだ日数はございます。夏の特別プランをご利用いただき、「清流美どりのバスケーズ」をお楽しみください。プランのご案内は以下よりブログをご訪問ください。

kitahira.hatenablog.com

 

 さて、「清流美どり」とはどのような鶏なのか。今回、Benoitが初めて出会った特選食材です。どのような地で育まれ、どのようなこだわりがあるのかを、ブログに書き綴ってみました。お時間のある時にご訪問いただけると幸いです。

kitahira.hatenablog.com

 

  最後まで読んでいいただき、誠にありがとうございます。

 今年の辛丑が始まりました。その「辛」の字の如く優しい年ではないかもしれません。しかし、時は我々に新地(さらち)を用意してくれている気がいたします。思い思いの種を植えることで、そう遠くない日に、希望の芽が姿をみせることになるでしょう。

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 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com

2021年7月 Benoit特選食材「清流美どり」のご案内です。

 生きとし生けるものにとって、空気と水は必要不可欠なものです。地球上に住んでいる以上、空気に隔たりは無いため全ての生命体が共有できます。しかし、水資源となると流動的ではあるものの、限定的であるため、同じ地球上とはいえ豊富な場所とそうではない場所との差は大きいものです。日本はいかに水資源に恵まれていることか。

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 日本は、国土の3/4を山地が占めるといいます。まるで本州を縦断するかのような山脈の一群は、日本海側と太平洋側の気候を隔てる境界線になっています。「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」と書きだしている、川端康成の「雪国」は、何も誇張しているわけではなく、温暖化の影響はあるものの今も変わりません。そして、この広大な山地には樹々が生い茂り、新鮮な空気を生み出すばかりか、豊かな水資源をもたらしてくれています。

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 山々の降り注ぐ雨は、豊かな森をフィルターとするかのように、余計なものは削がれ、山の豊かなミネラルが加わり、山々の其処彼処で湧き出(い)ずる。この小さな清流は、山間を通り、他の小川と落合いながら川となり、さらに他の川と落合いながら名立たる川へと姿を変えてゆく。氾濫という危険と隣り合わせでありながら、人々は河川の流域を拓(ひら)いてきました。そこには豊富な水資源と、その川が運んできた肥沃な土地があったからです。

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 木曽三川とは、岐阜県が誇る3つの川のこと。中心都市である岐阜市の南側を木曽川、西側を揖斐(いび)川、市内を横断するように長良川。この豊かな水資源無くして、豊穣を約束されたかのような濃尾平野はありえません。市内には、標高は329mの金華山が聳(そび)えています。数字だけを見ると、そう高くはないように思うのですが、市街地との高低差が300mもあり、下からは見上げるほどに急峻なもの。その頂(いただき)に鎮座するのが岐阜城です。

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 この岐阜城天守閣からの眺めは見事なもので、岐阜市内はもちろん、木曽三川とその支流が織りなす広大は濃尾平野を望めます。川が海の注ぐのが南側であれば、東西北には大いなる山々が連なり、扇の弧のように平野を囲む。その山には数えきれないほどの場所で水が湧き出で、それが落合い岐阜三川の源流となる。

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 鮎が遡上するほどの清らかな水を誇る木曽三川は、飲料水としてばかりではなく、美濃和紙、関の刃物、陶磁器の美濃焼などの匠の技を育て上げ、1300年以上にのぼる鵜飼の文化を生み出しました。そして、肥沃な濃尾平野で栽培される農産物はもちろん、畜産物にも分け隔てなく恩恵を与えてくれます。生きとし生けるものにとって、空気と水は必要不可欠なものであり、清らかな空気と水で育まれた鶏・豚・牛が美味しくないわけがありません。

 

 今回ご紹介したい食材は鶏肉です。(社)日本食鳥協会が定義するところの特別飼育鶏、「清流美どり」。JAグループが、安心・安全・良質な農畜産物を皆様にお届けしようと岐阜県に立ち上げたのが「岐阜アグリフーズ株式会社」です。県内の山間(やまあい)に2か所の自社飼育農場を持ち、さらに5カ所の契約飼育場があります。

 この7カ所の指定農場では、衛生管理の徹底はもちろん、飼育羽数を減らすことでより自然に近い環境を整えるようにしています。そして、室温と湿度を徹底管理するだけではなく、新鮮な空気を常に鶏舎に取り入れることも怠りません。さらに、人と同じ地面を踏む鶏たちが健やかに育つよう、鶏舎外のおいても除草剤は一切散布しないという徹底です。全ては、鶏に余計なストレスを与えないためといいます。

 人は、食べたもので体ができています。もちろん、鶏も食べたもので体ができてきます。彼らは飼料にもこだわります。「清流美どり」には、飼料用米やトウモロコシなどの穀物類、大豆粕などの植物性油粕類、魚粉などの動物性飼料などを、鶏の成長に合わせて適宜配合して与えていいます。この飼料にEMフィードBAが加えられます。

 なにやら化学薬品のようなネーミング。これは、乳酸菌・酵母などの有用微生物群(Effective Microorganisms)に枯草菌をプラスしたものを、米ぬかなどに加え、活用化させてペレットにした混合飼料のことです。鶏の腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)、腸内フローラとよくいいますが、正常化され有用菌の増殖を促し、有害菌・病原菌を抑制するのです。この効用によって、鶏は健康を維持することにつながるのです。名前こそ、横文字で化学製品のようですが、天然成分の塊のようなもので、安心・安全であることは間違いありません。

 特筆すべきことは、病気予防のためワクチンを投与していますが、全飼育期間において抗生物質や抗菌製剤を一切使用していないことでしょう。いや、これほどまでに飼育環境を整え、鶏の健康維持に尽力していれば、必要のないことなのでしょう。しかし、これを書くということは、いかに多くの飼育場が抗生物質や抗菌製剤を使用しているかということを物語っている気がします。

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 この岐阜アグリフーズの強みは、上記のような徹底した飼育はもちろんですが、ここに生鳥処理からカット・パック包装までの全工程を一か所で行っていることです。加工鮮度が保てるよう温度管理された施設からトラックに積みこまれ、発送されるのです。さらに、より安全・安心な鶏肉を皆様に届けるために、品質保証室を設置し、品質マネジメントシステムの運用、衛生管理の指導ならびに迅速な衛生検査体制を整えるべく、HACCP手法を含んだ国際認証であるSQFを導入し、徹底しています。

 自社飼育農場では、ただ飼育するというのではなく、安心・安全・良質を求め、妥協することなく研究に励む日々。その研究成果は惜しむことなく、各契約飼育場へと伝達されてゆく。皆が丹精込めて育て上げた鶏は、徹底的に衛生管理された施設で、鮮度を損なうことなく迅速に処理され送り出されます。この、どこにも忖度の入りようもない、一貫したシステムだからこそ可能とした、「清流美どり」の美味しさ。一口お召し上がりいただければ、皆様もその美味しさに舌鼓をうつことでしょう。

 岐阜アグリフーズのHPの「ごあいさつ」は、こう締めくくられていました。私たちはこれからも、私たちの製品を通じて、美味しさをつなぐ、笑顔をつなぐ、健康をつなぐ、そして信頼をつなぐ、そんな「つながり」が出来ることを目指して努力してまいります。出会うべくして出会ったのでしょうか。彼らの想いが導いてくれたのでしょうか。Benoitは「清流美どり」と「つながり」ができ、ランチのメニューにその名が登場しています。

 この特選食材をつかった、Benoitのお勧め料理のご案内は以下よりご訪問いただけると幸いです。

kitahira.hatenablog.com

 

余談ですが…

 自分の出身は新潟県です。この「潟」という字は、普段なかなか使うことがなく、いざ書こうにも難儀なものです。しかし、「干潟」のように、まだ用例が思い当たるものです。しかし、「岐阜」という漢字の特に「阜」は…岐阜県にお住まいの方には本当に申し訳ないのですが、この漢字を読むことはできても、いざ書いてみるとなると考え込んでしまうものです。これは、難読漢字に分類されるのではないかと思うのです。歴史にも幾度となく登場し、知名度が高いので、読めるには読めるのだけれども…

 岐阜城は、かつては稲葉山城と呼ばれていました。この城が歴史に登場するのは、斎藤道三が1539年に居城としたところからでしょう。後に織田信長が入城し、「岐阜城」と改名しました。この改名に一役買ったのが、愛知県名古屋にある「政秀寺」を開山した沢彦(たくげん)和尚でした。彼の進言で、信長が城下の「井ノ口」を改名することを決意したといいます。和尚は「岐山」「岐陽」「岐阜」の3つを提案し、信長自身が選んだのが、「岐阜」でした。

 岐山(きざん)とは、中国の陝西(せんせい)省岐山県にある山の名前。古代中国の殷(いん)を亡ぼし、天下を統一した周の都のあった地で、縁起がいいから候補に挙がったのだといいます。天下布武を目指す信長にはうってつけではないかとも思います。しかし、「岐阜」を選びました。

 語源辞典「漢辞海」で調べてみました。「岐」は、岐路という単語もあるように「道が分かれたさま。」という意味がある他に、「よく理解して優れたさま。賢い。」とある。「阜」は「ふ」以外に読みはなく、「小山」であるという。さらに、「肥えてたくましいさま」「豊富である。数が多い。」「旺盛なさま。」「情が厚い」といった意味を持ち合わせています。「阜」が土からできている小山であれば、「山」は岩石でできている大山、「陵」が土でできている大山なのだと。

 信長が岐阜城に入城した時、眼下の広大な濃尾平野雄大に流れる長良川を望んだ時、彼自身が天下布武を成しとげるという覇王への道を見据え、「岐阜」を選んだのではないでしょうか。なにわともあれ、常用漢字表では「阜」の字は、「岐阜」以外に使わないとあります。それほどの難読県名でした。

 

 余談が過ぎました。本題は、Benoitは「清流美どり」と「つながり」によってランチメニューに登場した料理のご案内です。

kitahira.hatenablog.com

 

 最後まで読んでいいただき、誠にありがとうございます。

 今年の辛丑が始まりました。その「辛」の字の如く優しい年ではないかもしれません。しかし、時は我々に新地(さらち)を用意してくれている気がいたします。思い思いの種を植えることで、そう遠くない日に、希望の芽が姿をみせることになるでしょう。

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 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com

2021年7月8月 Benoit「盛夏特別プラン」と「今宵はBenoitで!貸切プラン」のご案内です。

コロナに負けるな!Benoit夏特別プランのご案内です。

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 草木の花々は移りゆく季節の機微を捉え、順を追って咲き誇るもいずれは散りゆきます。食材も同じように「旬」という期間は限られたものであり、「待つ」という優しさはありません。そこで、全ての旬食材は無理でも、Benoitに少しだけ顔を向けてくれた食材で、「口福な食時」ひとときをお過ごしいただきたく、「盛夏特別プラン」と銘打って、皆様にご紹介させていただきます。旬の食材を美味しくお召し上がりいただくことで、体の中から元気になっていただきたい。そして、気心知れたご家族ご友人との、騒ぐではない「語らい」のひとときは、ただ食事をする以上に心満たされることとなり、このコロナ災禍を乗り越える助けになるものと信じています。

 

盛夏特別プラン

期間:土日を含めた2021831()まで

ランチ: 前菜x2+メインディッシュ+デザート

6,000円→5,000円(税込/サービス料別)

ディナー: 前菜x2+メインディッシュ+デザート

8,600円→6,800円(税込/サービス料別)

 

営業時間のご案内

ランチ: 1130分から1530 (1400 ラストオーダー)

ディナー: 1700から2000 (1900 ラストオーダー)

※当面の間、昼夜ともに酒類提供を中止させていただきます。

 

≪「今宵はBenoitで!」 Benoitをまるまる貸切りませんか?≫

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 緊急事態宣言発令を受け、この「今宵はBenoitで!」をご案内させていただきます。そう、夜の帳(とばり)が下りてゆくのをBenoitの窓越しに眺め、美味しい料理に舌鼓をうち、気心知れた仲間内で、騒ぐではない「語らい」のひとときを過ごしていただきたい。この思いから、まだご予約の入っていない平日ディナーはBenoit貸切り、平日および土日のディナーは個室を占有していただきたいと思います。

La viande fait la chair, le pain fait le ventre et le vin même la danse.

「肉料理は体を作り、パンは空腹を満たし、ワインはダンスを踊らせる。」

 旬の食材は、美味しく栄養抜群であるばかりで、我々を「待つ」という優しさを持ち合わせておりません。そこで、旬食材でこしらえた美味なる料理でお腹と心を満たし、レストランなので踊る(ダンス)ではなく、「心躍(こころおどる)る心地」なひとときをお楽しみください。

 

平日ディナー限定! Benoitをまるまる貸切りませんか?

皆様が気になる価格: 営業補償ということで15万円(税込/サービス料別)

期間: 831()までの平日ディナー限定

ご利用人数: 人数は問いません。

お時間: 170020:00まで 

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平日/週末ディナー限定! Benoitの個室を占有しませんか?

皆様が気になる価格: 営業補償ということで8万円(税込/サービス料別)

期間: 831()までのディナー限定

ご利用人数: 人数は問いません。

お時間: 170020:00まで

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 ここで、ポイントとなる「営業補償」を説明させていただきます。これは、お部屋代というわけではなく、提示させていただいた金額をご飲食代でご利用いただきけませんか、というものです。分かり難いので、以下に例をあげて説明させていただきます。以下の価格は、消費税込みサービス料別です。

 

~平日ディナーを11名様でまるまる貸切る場合~

ディナーのプリ・フィックスメニューから、皆様各々がお好みのコースと料理内容をお選びいただきます。食材の鮮度を維持するために、ランチと同じ料理と差し替えられているものもございます。11名様が10,000円(前菜x1主菜x2デザートx1)のコースをご注文いただいた場合は、

10,000x11=110,000

お料理代金の合計は110,000円

貸切の営業補償金額150,000円との差額分40,000円以上のご利用をお願いいたします。

 

~ディナー個室を6名様で占有の場合~

ディナーのプリ・フィックスメニューから、4名様が10,000円(前菜x1主菜x2デザートx1)のコースで2名様が8,600円(前菜x1主菜x2デザートx1)のコースをお選びいただくと、

10,000x4=40,000

8,600x2=17,200

合計は57,200円

メニューの中には、追加料金が必要な料理をお牛ランプのステーキ(+1,500円)やオマールエビ(+1,500円)など、魅力的な料理がメニューに名を連ねております。皆様が何をお選びいただくかにもよるのですが、今回は合計で10,000円ほど追加してみます。

合計は67,200円

営業補償との差額分12,800円以上のご利用をお願いいたします。

 

 営業補償料金はお部屋代ではなく、ご飲食代とお考え下さい。そのため、人数やご注文の量によっては、15万円を超えることになります。極端な例として、50人であればお一人様3,000円で、貸切ご飲食が可能ということではございません。料理の価格はいつものBenoitのディナー価格を参考にしていただけると幸いです。

ご予約はもちろん、何かご要望・質問などございましたら、何気兼ねなく北平までお問い合わせください。このメール(kitahira@benoit.co.jp)への返信、電話でも喜んで承ります。

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 Benoitで目に入るものは、スタッフ以外はほぼフランスから届いたもの。其処彼処にアンティークが設(しつら)えられ、どこを向いても絵になる内装が自慢です。ディナー貸切は、ここを皆様の仲間内だけで占有していただきたいのです。一般営業では写真撮影が憚(はばか)れることもあるかと思いますが、この日は全くその心配はありません。思い思いのドレスアップでお食事を楽しみ、想い出の写真撮影に興じるのも良いかもしれません。

 昨今のコロナウイル災禍で、結婚式などのお祝いができていない方も多いのではないでしょうか。そこで、この機会にBenoitを貸切り、ご家族や仲間内で少人数のパーティーはいかがですか?簡単なドレスであれば、個室を更衣室にしてドレスアップしても良いかと思います。

 そして、いつもであれば、ご利用は小学生以上に限定させていただいておりますが、貸切なのでお断りする理由はございません。離乳食やお子様ランチのご用意はないですが、メニューよりお好みものをお選びいただくが、ご両親様との料理シェアでも良いかと思います。

※あまりにも閑散とした雰囲気を回避するため、お食事のテーブル以外も通常のテーブルセットをさせていただきます。

※個室占有の場合は、他のお客様がいらっしゃるため、多少の制約がでてしまうことをご了承ください。

 

 ブドウの花は、やがて果実となり、そのまま食して美味しいものです。そのブドウの房を、軽く潰して器に入れておくと、果皮に付着している酵母が動き出し、発酵が始まります…人類が初めて口にしたお酒はワインであったといいます。

Avec bon pain, bonne chère et bon vin, on peut envoyer promener la medecine.

「美味しいパン、美味しい料理、美味しワインがあれば、我々は薬を手放すことができる(医者いらず)」

 

 最後まで読んでいいただき、誠にありがとうございます。

 今年の辛丑が始まりました。その「辛」の字の如く優しい年ではないかもしれません。しかし、時は我々に新地(さらち)を用意してくれている気がいたします。思い思いの種を植えることで、そう遠くない日に、希望の芽が姿をみせることになるでしょう。

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 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com

2021年7月/8月 「Benoit特別プラン」と「今宵はBenoitで!」貸切プランのご案内です。

 昨今では気候変動の影響なのか、線状降水帯という聞き慣れない言葉が連日のように天気予報から発せられ、およそ梅雨らしからぬ雨が多かったような気がいたします。皆様におかれましては、無事息災であることを願うとともに、被災地におかれましては、遠く青山の地からではありますが、いち早い復興を祈念いたします。

 関東梅雨明けを迎えました。梅雨とは、生きとし生けるものに欠かすことのできない水資源を与えてくれる大切な時期です。しかし、時に、抗(あがら)うことのできない自然の猛威が牙を剥きます。降水量の多い日本では、大雨による河川の氾濫との歴史であり、どれほどの賢人が果敢に治水事業に挑んだことでしょうか。いまだ画期的な解決策がないことが、いかに難事業であるかを物語っています。

 

酒類提供中止のお知らせです。

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Benoitに鎮座するバッカスの慟哭が聞こえてくる…

Avec bon pain, bonne chère et bon vin, on peut envoyer promener la medecine.

「美味しいパン、美味しい料理、美味しワインがあれば、我々は薬を手放すことができる(医者いらず)」

 日本でも「酒は百薬の長」とはよく言いますが、このフランスの格言は酒(ワイン)だけではなく、美味しいパンと料理が必要不可欠だという。料理もワインもフランスでは歴史深いだけに、この比類なき関係は大いに共感いたします。ワインは飲むというよりも、料理とともに嗜(たしな)むものなのでしょう。料理との相性を「マリアージュ」と呼び話題になることからもお分かりいただけるのではないでしょうか。

 先日、緊急事態宣言が発出されました。昨今のコロナウイルス災禍が収束することを期し、Benoitも宣言に準ずる「酒類提供なしで、時短営業の継続」を選ばせていただきます。そこで、Benoitは「美味しいパン」と「美味しい料理」で皆様をお迎えすることにいたします。

 

ランチ

1130分から1530 (1400 ラストオーダー)

ディナー

1700から2000 (1900 ラストオーダー)

※当面の間、昼夜ともに酒類提供を中止させていただきます。

 

 

コロナに負けるな!Benoit夏特別プランのご案内です。

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 草木の花々は移りゆく季節の機微を捉え、順を追って咲き誇るもいずれは散りゆきます。食材も同じように「旬」という期間は限られたものであり、「待つ」という優しさはありません。

 そこで、全ての旬食材は無理でも、Benoitに少しだけ顔を向けてくれた食材で、「口福な食時」ひとときをお過ごしいただきたく、「盛夏特別プラン」と銘打って、皆様にご紹介させていただきます。旬の食材を美味しくお召し上がりいただくことで、体の中から元気になっていただきたい。そして、気心知れたご家族ご友人との、騒ぐではない「語らい」のひとときは、ただ食事をする以上に心満たされることとなり、このコロナ災禍を乗り越える助けになるものと信じています。

 

 盛夏特別プラン

期間:土日を含めた2021831()まで

 

ランチ: 前菜x2+メインディッシュ+デザート

6,000円→5,000円(税込/サービス料別)

 

ディナー: 前菜x2+メインディッシュ+デザート

8,600円→6,800円(税込/サービス料別)

 

 

≪「今宵はBenoitで!」 Benoitをまるまる貸切りませんか?≫

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 緊急事態宣言発令を受け、この「今宵はBenoitで!」をご案内させていただきます。そう、夜の帳(とばり)が下りてゆくのをBenoitの窓越しに眺め、美味しい料理に舌鼓をうち、気心知れた仲間内で、騒ぐではない「語らい」のひとときを過ごしていただきたい。この思いから、まだご予約の入っていない平日ディナーはBenoit貸切り、平日および土日のディナーは個室を占有していただきたいと思います。

La viande fait la chair, le pain fait le ventre et le vin même la danse.

「肉料理は体を作り、パンは空腹を満たし、ワインはダンスを踊らせる。」

 旬の食材は、美味しく栄養抜群であるばかりで、我々を「待つ」という優しさを持ち合わせておりません。そこで、旬食材でこしらえた美味なる料理でお腹と心を満たし、レストランなので踊る(ダンス)ではなく、「心躍(こころおどる)る心地」なひとときをお楽しみください。

 

平日ディナー限定! Benoitをまるまる貸切りませんか?

皆様が気になる価格: 営業補償ということで15万円(税込/サービス料別)

期間: 831()までの平日ディナー限定

ご利用人数: 人数は問いません。

お時間: 170020:00まで

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平日/週末ディナー限定! Benoitの個室を占有しませんか?

皆様が気になる価格: 営業補償ということで8万円(税込/サービス料別)

期間: 831()までのディナー限定

ご利用人数: 人数は問いません。

お時間: 170020:00まで

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 ここで、ポイントとなる「営業補償」を説明させていただきます。これは、お部屋代というわけではなく、提示させていただいた金額をご飲食代でご利用いただきけませんか、というものです。分かり難いので、以下に例をあげて説明させていただきます。以下の価格は、消費税込みサービス料別です。

 

~平日ディナーを11名様でまるまる貸切る場合~

ディナーのプリ・フィックスメニューから、皆様各々がお好みのコースと料理内容をお選びいただきます。食材の鮮度を維持するために、ランチと同じ料理と差し替えられているものもございます。11名様が10,000円(前菜x1主菜x2デザートx1)のコースをご注文いただいた場合は、

10,000x11=110,000

お料理代金の合計は110,000円

貸切の営業補償金額150,000円との差額分40,000円以上のご利用をお願いいたします。 

~ディナー個室を6名様で占有の場合~

ディナーのプリ・フィックスメニューから、4名様が10,000円(前菜x1主菜x2デザートx1)のコースで2名様が8,600円(前菜x1主菜x2デザートx1)のコースをお選びいただくと、

10,000x4=40,000

8,600x2=17,200

合計は57,200円

メニューの中には、追加料金が必要な料理、牛ランプのステーキ(+1,500円)やオマールエビ(+1,500円)など、魅力的な料理がメニューに名を連ねております。皆様が何をお選びいただくかにもよるのですが、今回は合計で10,000円ほど追加してみます。

合計は67,200円

営業補償との差額分12,800円以上のご利用をお願いいたします。

 

 営業補償料金はお部屋代ではなく、ご飲食代とお考え下さい。そのため、人数やご注文の量によっては、15万円を超えることになります。極端な例として、50人であればお一人様3,000円で、貸切ご飲食が可能ということではございません。料理の価格はいつものBenoitのディナー価格を参考にしていただけると幸いです。

 ご予約はもちろん、何かご要望・質問などございましたら、何気兼ねなく北平までお問い合わせください。このメール(kitahira@benoit.co.jp)への返信、電話(Benoit 03-6419-4181)でも喜んで承ります。

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 Benoitで目に入るものは、スタッフ以外はほぼフランスから届いたもの。其処彼処にアンティークが設(しつら)えられ、どこを向いても絵になる内装が自慢です。ディナー貸切は、ここを皆様の仲間内だけで占有していただきたいのです。一般営業では写真撮影が憚(はばか)れることもあるかと思いますが、この日は全くその心配はありません。思い思いのドレスアップでお食事を楽しみ、想い出の写真撮影に興じるのも良いかもしれません。

 昨今のコロナウイル災禍で、結婚式などのお祝いができていない方も多いのではないでしょうか。そこで、この機会にBenoitを貸切り、ご家族や仲間内で少人数のパーティーはいかがですか?簡単なドレスであれば、個室を更衣室にしてドレスアップしても良いかと思います。

 そして、いつもであれば、ご利用は小学生以上に限定させていただいておりますが、貸切なのでお断りする理由はございません。離乳食やお子様ランチのご用意はないですが、メニューよりお好みものをお選びいただくが、ご両親様との料理シェアでも良いかと思います。

※あまりにも閑散とした雰囲気を回避するため、お食事のテーブル以外も通常のテーブルセットをさせていただきます。

※個室占有の場合は、他のお客様がいらっしゃるため、多少の制約がでてしまうことをご了承ください。

 

 ブドウの花は、やがて果実となり、そのまま食して美味しいものです。そのブドウの房を、軽く潰して器に入れておくと、果皮に付着している酵母が動き出し、発酵が始まります…人類が初めて口にしたお酒はワインであったといいます。

Avec bon pain, bonne chère et bon vin, on peut envoyer promener la medecine.

「美味しいパン、美味しい料理、美味しワインがあれば、我々は薬を手放すことができる(医者いらず)」

ご飲食代とは…

 

北平のBenoit不在の日

 私事で恐縮なのですが、自分がBenoitを不在にしなくてはならない7月の日程を書き記させていただきます。滞りがちだったご案内を充実させるべく、執筆にも勤しませていただきます。ご不便をおかけいたしますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。

kitahira.hatenablog.com

 

 昨今の未曾有のコロナウイル災禍は、いまだ終息にはほど遠いものの、ワクチン接種という希望の兆しもあります。今まで、座るが如く耐え抜いてきました。そして、厳しい状況に変わりませんが、春過ぎるあたりに世相が動きだしたような感があります。災禍を甘く見ての無謀な行動はもちろんご法度(はっと)ですが、一歩踏み出す時がきている気がいたします。その時というのは、「ユリ花笑う時」であると、古人は教えてくれているのかもしれません。さて、何を言っているのか?とお思いの際は、以下よりブログ「季節のお話」をご訪問ください。 kitahira.hatenablog.com

 

 最後まで読んでいいただき、誠にありがとうございます。

 今年の辛丑が始まりました。その「辛」の字の如く優しい年ではないかもしれません。しかし、時は我々に新地(さらち)を用意してくれている気がいたします。思い思いの種を植えることで、そう遠くない日に、希望の芽が姿をみせることになるでしょう。

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 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com

2021年7月 季節のお話「歩く姿は百合の花」に想うこと

 6月7月の梅雨時期は、雲に覆われることの多く、時おり射す陽の光が恋しいものです。しかし、梅雨明けを迎えることで、今度はそのギラギラとした陽射しが「暑い暑い」と恨めしく思うもの。そのような我々の気持ちをよそに、其処彼処で貴婦人の如く微笑みかけてくれている花があります。凛と花咲く姿は、得も言われぬ風格さえ感じてしまうもの。日本人には馴染みの花、ユリです。画像は日本原産の「ヤマユリ」です。

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 ユリは北半球のアジアを中心にヨーロッパやアメリカ大陸にも自生し、多種にわたります。その中で、15種ほどが日本に自生しているといい、その内の5種が日本固有種です。ヨーロッパにも12種類ほどが自生しています。その中でも代表的なものが「ニワシロユリ」、別名を「マドンナリリー」と呼ばれているのです。テッポウユリに似ていますが、花は小ぶりです。この白ユリは、冴える白さが聖母マリアの純潔の象徴とされ、キリスト教の宗教画にたびたび登場しているばかりか、バチカン国の国花になっています。古来よりキリスト教の祭事には、この「ニワシロユリ」が欠かせませんでした。

 ところが、19世紀に「テッポウユリ」がその地位を取って代わることになったのです。なぜ、日本原産の「テッポウユリ」が?

 ヨーロッパに持ち込んだ人がいるのです。1829年の大事件で日本を追放された偉人、「シーボルト」です。彼がヨーロッパに持ち込んだ数多くのコレクションの中に、「テッポウユリ」の球根があったのです。多くのヨーロッパ人が、異国の地よりもたらされた「テッポウユリ」に魅了されたようです。英名では復活祭(イースター)にちなみ、「Easter Lily (イースター・リリー)」と呼び、キリスト教の祭事には欠かせない花となったのです。

 なにもユリを絶賛しているのはヨーロッパばかりでありません。シーボルトを魅了した固有種を有する日本もまた、ユリの美しさに魅せられているのです。いつから語られるようになったのでしょうか。気品と美しさを誇る3つの花になぞらえ、美しい姿と所作を持ち合わせる女性をこう表現しています。きっと耳にしたことがあるのではないでしょうか。

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立てば芍薬(しゃくやく) 座れば牡丹(ぼたん) 歩く姿は百合(ゆり)の花

 

 シャクヤクはアジア大陸北東部が原産で、ボタンの仲間ですが、ボタンが樹であればシャクヤクは草です。花は酷似しているのですが、すらっと伸びた茎の先に、美しい花を咲かせます。「立てば芍薬」とは、良く言い表している気がいたします。しかし、シャクヤクはこれでは終わらないのです。

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 フランスのL’OCCITANE(ロクシタン)は、すでにご存じの方が多いのではないでしょうか。厳選された植物原料とエッセンシャルオイルをベースとし、南仏プロヴァンスを想わせるスキンケア用品を、数々世の送り出しているブランドです。そこに、「Pivoine Flora(ピヴォワン・フローラ)」が登場します。

 英語では「Peony(ピオニー)」といい、美しい妖精「ピオニア」が他の女神の嫉妬を買い、魔法をかけられ一輪の花に変えさせられた。ここに、「ピオニー」の花が誕生しました。だからこそ、美しい花の姿はもちろん、花びらが響き合うようにはなたれる香は、何人をも魅了して止まないのだと。

 さあ、もうお気づきでしょう。この「Pivoine Flora(ピヴォワン・フローラ)」こそ、「シャクヤク」のことです。ロクシタンさんがこの花の香を採用するということは…「le Nez(ル・ネ)」と呼ばれるプロの調香師が認める、心穏やかになる癒しの香りなのでしょう。

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 「なのでしょう」とは?そう、自分はまだシャクヤクに出会えておりません。いったいどのような香りなのかとBenoitでお話していたら、木村様より花の画像が届きました。掲載している写真がいただいたものなのですが、さすがに画像から香りははなたれません。このお楽しみは来年まで持ち越しのようです。

 

 日本人にとって花とは桜のことであり、その想いは一入(ひとしお)です。隣の中国はというと、西北部が原産地というボタンへの想いが他の花の追随を許しません。彼の国では、「百花の王」と称され、唐代の詩人である王叡(おうえい)が、「牡丹妖艶亂人心 一國如狂不惜金 (牡丹妖艶にして人心を乱し 一国狂するが如く金を惜しまず)」とまで詠っています。「不惜金」であり「不借金」ではないのでご注意を。

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 大輪の豪華絢爛に花咲くボタンの花に、狂喜乱舞したのでしょう。百獣の王「獅子」とボタンの花の柄は、「唐獅子牡丹」と呼ばれ、当時の磁器や織物に描かれています。今でいう「美女と野獣」ともいうべき組み合わせが、ここに誕生しているのです。

 日本での開花時期は、もちろんサクラ同様に地方によって差があり、関東では4月半ばから末にかけてのこと。花咲く時期が季語となることを鑑みると、ボタンの季語は晩春と思うのですが…この豪奢な咲きっぷりが、春ではなく夏にこそ相応しいと古人は考えたのでしょう。季語は「初夏」を指し示します。蕾(つぼみ)を意味する「牡丹の目」は初春、蕾が開きかけた「狐の牡丹」は晩春のこと。

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 秋の彼岸には、「おはぎ」をお供えすることで、五穀豊穣と家族を見守ってくれているご先祖様への感謝の意を伝えます。春の彼岸では、「ぼたもち」をお供えすることで、五穀豊穣と家族皆が息災であることをご先祖様にお願いします。この両季節の「あんころ餅」は、その季節を代表する花を使って名付けられました。秋は「秋の七草」の筆頭に上がる「萩(はぎ)」の花から、「お萩」。春は「牡丹餅(ぼたもち)」と。

 「萩」はマメ科の花らしい楕円形の花びらが特徴。「牡丹」が豪快なまん丸の花の形。これが、両季節のあんころ餅の形に反映しています。さらに、幸せを呼ぶ赤い色の小豆(あずき)は、赤飯を代表するように祝い事には欠かせません。その小豆も、収穫したての外皮が柔らかいものは、そのまま「粒あん」となり「お萩」へ。ながらく時を過ごして乾燥した小豆は、漉すようにして「こしあん」となり、「牡丹餅」へ。諸説はあるかと思いますが、ついつい「なるほど」と頷いてしまいます。

 でも、なぜ「桜」でなかったのでしょうか?

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 日本の古神道は、我々が何かを清らかなものをそこに感じた時、そこに神が宿っていると考える。木や石であったり、山そのものが御神体となります。日本の神々は何も語らない、我々も現世のご利益(ごりやく)を求めることはありませんでした。ただ清め祀(まつ)ることで何かを感じ取る、今でいうパワースポットらしきもの。

 しかし、稲作が定住をもたらし、日本が国家として誕生したことで多くの人との接点が生まれた時、人々は自分が何者なのか?どのように人生を全うすべきなのか?死とはどういうことなのか?などの疑問がわくも、答えが見つからない。そのような中で、インドから中国へ移りゆきながら発展してゆき、朝鮮半島を経由して、「言挙(ことあ)げ」してくれる「仏教」が日本に渡ってきました。「言挙げ」とは「論じる」という意味で、説法が当時の知識人にどれほどの感銘を与えたことか。桓武天皇東大寺奈良の大仏を建立し、救いをもとめたということが何よりの証なのではないでしょうか。

 日本人に浸透していった仏教の中では、極楽浄土のある地は「彼岸(ひがん)」で、現世が「此岸(しがん)」というようです。彼岸は、東のはるか遠くにあるといい、太陽が真東から上る「春分」「秋分」の前後3日間、計7日間を「お彼岸」としたのです。「したのです」とは、この「お彼岸」の発送は日本独自のもので、中国にも発祥の地であるインドにもありません。

 日本人が創作した「お彼岸」にもかかわらず、仏教的な要素が強いからだと考えた。か時代は別かと思いますが、中国から持ち込まれ、豪奢の花を彼岸の時期に咲かせるボタンが最適だと考えたのでしょう。だからこそ、春のお彼岸は「桜餅」ではなく「牡丹餅」だったと思うのです。

 

 それぞれの花が、美しく人々を魅了して止まないことを紹介させていただいたところで、今一度このことわざを読み返していただきたいです。姿はもちろん立ち居振る舞いも美しい女性への賛辞を、心地良いリズムを奏(かな)でてくれていると思いませんか?このことわざは江戸時代に生まれたといい、江戸っ子によって伝播されていったようです。

 

立てば芍薬(しゃくやく) 座れば牡丹(ぼたん) 歩く姿は百合(ゆり)の花

 

 この3つの花は、同じ時期に咲くことがありません。シャクヤクが初夏で、ボタンは晩春、ユリは品種が多いので花期は長く、仲夏ばから初秋あたりまで。ということは、「ボタン→シャクヤク→ユリ」という順です。しかし、ことわざでは、「シャクヤク→ボタン→ユリ」とくる。

 すらっと伸びて上向きに豪奢な花を開くシャクヤクから、低木であり大輪の花をもたげるようなボタン、凛とした高貴な雰囲気をはなつユリの花。「立つ➔座る➔歩く」のそれぞれに、花のイメージを合わせると、ことわざの順になる。どういう意図があってこの順になるのか定かではありません。ただ、声に出した時に心地良いリズムを奏で、言葉それぞれが美しい響きをはなつということは間違いありません。

 さて、花開く順にことわざを並べ替えてみると、「座れば牡丹(晩春) 立てば芍薬(初夏) 歩く姿は百合(仲夏~)の花」となります。これ、古人からの我々へのメッセージであるような気がするのです。「座れ(動くな/耐え抜け)→立て(動く準備)→歩け(動きだせ)」と。

 未曾有のコロナウイルス災禍によって、我々の生活は一変いたしました。多々ご意見はあろうかと思いますが、皆が皆、初めての経験であり、「神が与えし人類への試練?」と言えば聞こえは良いですが、言挙げする神でも正しい道筋を我々に諭してはくれませんでした。

 未知なる見えないウイルス災禍なために、我々は真帆片帆と「終息」という目的に向かって順当に進むことができませんでした。それでも、右往左往と完璧ではないにしても、考えうることを1年以上にわたり続けてきたのです。いまだ「収束」の見えない中でありながら、これほどの期間耐え抜き、今生きているということは自らの努力の証なのではないかと思っていいのではないでしょうか。

 まだまだ不安材料はあるものの、ワクチン接種という希望の兆しもあります。今まで、座るが如く耐え抜いてきました。そして、厳しい状況に変わりませんが、春過ぎるあたりに世相が動きだしたような感があります。災禍を甘く見ての無謀な行動はもちろんご法度(はっと)ですが、一歩踏み出す時がきている気がいたします。その時というのは、「ユリ花笑う時」であると、古人は教えてくれているのかもしれません。さて、皆様はどう思いますか?

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 夏も盛りとなるころ、オニユリが凛々(りり)しい姿を我々にみせてくれます。ユリが「歩け」であるならば、オニユリは睨(にら)みを利かせながら「走れ」といっているのでしょうか。ついつい加筆してしまいました…

座れば牡丹 立てば芍薬 歩く姿は百合の花 はやくはやくと急(せ)かす鬼百合

 「夏が終わってしまうよ」とユリの花が一歩踏み出すようにと、そしてオニユリがからと急ぐように教えてくれる。季節は歩を緩めることはなく、旬の食材も我々を待ってくれるという優しさを持ってはいません。そこで、皆様の踏み出す足先がBenoitへ向いていただけるよう、特別プランをご案内させていただきます。

kitahira.hatenablog.com

 

 最後まで読んでいただき、誠にありがとうございます。

 今年の辛丑が始まりました。その「辛」の字の如く優しい年ではないかもしれません。しかし、時は我々に新地(さらち)を用意してくれている気がいたします。思い思いの種を植えることで、そう遠くない日に、希望の芽が姿をみせることになるでしょう。

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 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご多幸とご健康を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com

2021年7月「北平がBenoitを不在にする日」のご報告です。

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 私事で恐縮なのですが、自分がBenoitを不在にしなくてはならない7月の日程を書き記させていただきます。滞りがちだったご案内を充実させるべく、執筆にも勤しませていただきます。ご不便をおかけいたしますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。

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 上記日程以外は、Benoitを優雅に駆け回る所存です。自分への返信でのご予約はもちろん、BenoitのHPや、他ネットでのご予約の際に、コメントの箇所に「北平」と記載いただけましたら、自慢の料理の数々を語りに伺わせていただきます。自分が不在の日でも、お楽しみいただけるよう万全の準備をさせていただきます。何かご要望・質問などございましたら、何気兼ねなくご連絡ください。

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一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com