kitahira blog

徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

2023年11月「月の魅力を少しばかり、≪十三夜≫のお話です。」

昔より なぞ長月の 今宵しも 曇らぬものと 空もしりけん  源俊頼

 昔から、どうして旧暦9月の今宵(十三夜)に限っては、曇ってはならないと空は知っているのであろうか。もちろん、空が我々に都合よく雲を散らしているわけではありません。「中秋の名月」が、あまりにも雲の動向にやきもきするからこそ、「後の名月」の雲ひとつとない空に恵まれることが多く、心も晴れるのでしょうか。地上人の想いを、空が理解してくれたのだと…

 先日、10月27日に「十三夜(じゅうさんや)」を迎えました。「後の名月」とも呼ばれるこの名月は、古代中国から鮮烈にもたらされた文化の中の一つで、旧暦8月15日の「中秋の名月」を愛でることに由来しています。この次に巡ってくる「朔望月(さくぼうげつ)」の名月を楽しもうというもので、日本で誕生した風習です。

 旧暦は月を基準にしており、「朔(さく/新月)」から始まり「朔」で終わる期間が1ヶ月です。そのため、毎月14日目~17日目が満月にあたります。「十三夜」とは、その文字のごとく13日目の月のこと。満月(十五夜)から、少しばかり左が欠けています。この完璧ではない、「少し欠けている」姿に美を見出すところに、日本人らしさがあるような気がします。と書きながら、理由は他にあるのではないかと思うのです。

 月を基準にした旧暦と太陽の新暦では、どうしても偏差が40日ほど生じます。そのため、旧暦8月15日の「中秋の名月」が新暦9月となるのです。まんまると神々(こうごう)しく輝く月を愛でよう…というのも分かるのですが、古来より日本のこの時期は秋雨前線の影響もあり、曇りがち。確かに、毎年のように天気が落ちつかず、名月を鑑賞できない年もあります。

 徒然草兼好法師は、「花は盛りに、月は隈なきをのみ見るものかは。」と綴っている。「花は満開のときだけを、月は雲がないときだけを見るものであろうか、いやそうではない。」と喝破しているのです。この月とは「中秋の名月」のことをいっているのでしょう。雲一つない空に昇る満月は素晴らしいが、雲があってもいいものである…雲が多いときが多いから、そこまで落胆しなくともいいのではないか。往古よりこの日は曇りがちだったことは間違いありません。

 そこで、古代賢人は考えた。経験上、旧暦9月の満月の頃のほうが、空が雲で覆われることが少ないことを知っていた。そこで、「中秋の名月」を愛でることがままならない無念さから、「後の名月」という着想を得た。しかし、旧暦9月は新暦でいう10月あたりであり、今年は暖かいというよりも暑い日々が続いていますが、例年であれば夜半は寒いものです。

 月齢は若いほど、月は早く姿を現します。寒さの耐えうるためには、月齢が早いほうが都合良いが、あまりにも三日月や上弦の月では趣がないもの…そこで、少し欠けた月齢13日にしよう、月齢15日の満月よりも、月が姿を見せるのが早いから…月齢が一日増えるごとに、約30分遅れて月は姿を見せる。ということは、2日間も早めれば、約1時間も早くなる。

 「十三夜」については、諸説あるものの、醍醐天皇が月見の宴を催したのが始まりだといいます。彼(か)の時代は、平安…防寒着もままならない時代のこの季節、いかに風流人であっても、夜半に歌会は寒さが身にこたえるもの。日中が好天に恵まれるということは、月が中天に向かうにつれ放射冷却の影響もあってか寒さが増してくるものです。寒さに凍えているようでは、秀歌を詠う心の余裕などできようはずもありません。いや、極限に身を置いたほうが、頭が冴えるのか?さて、皆様はどう思いますか?

 余談ですが、「十五夜」は「芋名月(いもめいげつ)」という異名を持っています。この芋は、舶来物のジャガイモやサツマイモのことではなく、「里芋」のことです。お月見の団子は、この里芋に模したのだといいます。

 「十五夜(中秋の名月)」と「十三夜(後の名月)」のどちらか一方しか鑑賞しないことを、「片見月(かたみつき)」や「片月見(かたつきみ)」といい、縁起の悪いことと考えれたようです。それに、同じ場所で愛でねばいけないのだとも。そして、「十五夜」と「十三夜」を合わせて「二夜の月(ふたよのつき)」と呼び、この風流を楽しんでいたようです。逢瀬(おうせ)を重ねる人にとっては、格好の口実だったのではないかとも思うものです。十五夜で逢ったならば、十三夜でも逢わなければいけないので…

 

 バランスの良い美味しい料理を日頃からとることは、病気の治癒や予防につながる。この考えは、「医食同源」という言葉で言い表されます。この言葉は、古代中国の賢人が唱えた「食薬同源」をもとにして日本で造られたものだといいます。では、なにがバランスのとれた料理なのでしょうか?栄養面だけ見れば、サプリメントだけで完璧な健康を手に入れることができそうな気もしますが、これでは不十分であることを、すでに皆様はご存じかと思います。

 季節の変わり目は、体調を崩しやすいという先人の教えの通り、四季それぞれの気候に順応するために、体の中では細胞ひとつひとつが「健康」という平衡を保とうとする。では、その細胞を手助けするためには、どうしたらよいのか?それは、季節に応じて必要となる栄養を摂ること。その必要な栄養とは…「旬の食材」がそれを持ち合わせている。

 その旬の食材を美味しくいただくことが、心身を健康な姿へと導くことになるはずです。さあ、足の赴くままにBenoitへお運びください。旬の食材を使った、自慢の料理やデザートでお迎えいたします。

 

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 猛暑な日々も影を潜めてきたようです。これと入れ替わるかのように季節性インフルエンザやコロナウイルスが猛威を振るっているようです。過ごしやすい日々が訪れますが、ここで気を緩めると猛暑疲れがドッと押し寄せてくるでしょう。さらに、疲労・ストレスなどが原因による免疫力の低下を招きます。皆様、無理は禁物、十分な休息と休養をお心がけください。

最後まで読んでいいただき、誠にありがとうございます。

一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。皆様のご健康とご多幸を祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com