kitahira blog

徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

ワインパーティー≪BRANE-CANTENAC≫のご案内です。

 日本の四季折々の節目に執り行われる「宮中祭祀(きゅうちゅうさいし)」と呼ばれる行事の数々。天照大御神の子孫である天皇陛下が、皇居内の神道を祀る宮中三殿にて、三国家と国民の安寧と繁栄を祈ること目的とした祭祀であるといいます。古代日本では、四季は単に過ぎ去る時の流れではなく、「生きる」ためにエネルギーの満ち欠けにかかわる指標だったようです。暑さ寒さの盛りを前に、国民皆が無病息災で乗り切れるようにとの願いを込めたお祓いの行事は、年に2回、6月30日と12月31日に執り行われる「大祓い(おおはらい)」。「生きる」ための糧となる「実り」を得るため、その年の2月17日に豊作を祈願する「祈年祭(きねんさい)」。10月17日は伊勢神宮において初穂を天照大御神にお供えし、五穀豊穣を感謝する「神嘗祭(かんなめさい)」。そして、一番重要な祭祀といわれているのが11月23日に執り行われる「新嘗祭(にいなめさい)」という、直会(なおらい)といわれる神人共食の神事です。季節が正しく移ろえば、稲魂(うけのみたま)も充実する。これに感謝し、新穀を整えて捧げつつ、自らも食し神人ともに、生のエネルギーを満たし、翌年の豊作を願うものです。

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 新嘗祭は、初穂を天照大御神をはじめ、天神地祇(てんじんちぎ)にお供えし、五穀豊穣を感謝したあとに天皇陛下も初穂を召し上がります。これは宮中独特の祭祀ではなく、我々にも馴染みのあるイベントです。そう、初穂を氏神にお供えし五穀豊穣を感謝する「収穫祭」として、地域地域で継承されています。秋の散策では、社の「のぼり旗」に記される感謝の文言を、其処彼処で目にするのではないでしょうか。さらに11月23日は「勤労感謝の日」です。「勤労を尊び、生産を祝い、国民が互いに感謝しあう日」。勤労があってこそ収穫があり、その労を共に分かちあいお互いをねぎらうこと。言葉は変っても、伝えたいことは同じです。氏神との直会という意識だけではなく、お互いに感謝しあうことこそ、忘れてはいけない日本人の大切な感覚なのではないでしょうか。「いただきます」と「ごちそうさま」という短い単語は、深い意味が込められている、なんと素晴らしい言葉ではないでしょうか。

 

 さて、収穫に感謝することは、古今東西かわりません。今は日本でもお馴染みのクリスマス。何の日?という質問に対し、誰しもが、イエス・キリストの生誕日だと答えることでしょう。ところが、ロシア正教のクリスマスは1月7日です。ロシア正教ユリウス暦と西欧諸国のグレゴリオ暦との違いはあるものの、約2週間も誤差があることには、何か理由があるのではないか?そう、かつてカトリックの宣教師が西欧に布教するにあたり、考えたのがそれぞれの地域に根付く「収穫祭」だったといいます。「感謝」の気持ちを分かち合う、さらに闇夜が一番長い冬至の時期でもありため、日に日に日脚が伸びることに、生きることへの希望を見出すことになったのかもしれません。

  そこで、Benoitでは、一足先にフランスの収穫祭をお祝いしようかと思います。実りの中で忘れてはいけないものが「ブドウ」であり、そのほとんどが醸されワインへと姿を変えます。農業国フランスとはいえ、昔から食に困らないほど食が豊かだったわけではなく、平地や肥沃な地では穀物や野菜を栽培していたはずです。そこで、修道士が考えたのが、不毛の地に丈夫なブドウを植栽すること。果実をそのまま楽しむことはもちろんですが、そのみずみずしい果実を絞ることで飲料用の甘いジュース得ることもできました。しかし、ジュースでは腐敗するため、「醸す」という技を駆使し、魅惑な液体へ変貌させます。これを、カトリックの教えとともに皆へ振舞ったのでしょう。そして、この液体は「長期保存」を可能とし、時がさらなる魅力を与えることを知ることになりました。

  この手法は、フランスのプロヴァンス地方を境に、北はブルゴーニュ地方、そしてシャンパーニュ地方へ。西は、ピレネー山脈の麓である南西地方(スュド・ウエスト)で一時代を築くも、さらに進みボルドー地方へ。今回は、ブドウの収穫祭でもあるのですが、新酒ではなく、古の修道士の英知が導き出した「時」が醸し出す、他の醸造酒にはない美味しさを、Benoitに鎮座するワインの神様「ディオニュソス」とお楽しみいただこうと思います。この神様はローマ時代、「バッカス」と呼ばれています。※このイベントは決して宗教がらみではなく、あくまでもBenoitで密かに飾られているバッカスの神様と喜びを分かち合おうというものです。入信への勧誘などはございません、ご安心ください。

  過日、アルザス地方を代表するFamille HUGELのワインイベントを開催いたしました。まだ聞くに新しいのではないでしょうか。その時に、同行していただいたスタッフの中に、Kaoru HUGELさんがいらっしゃいました。ソムリエールでもあり、ワインの醸造にも造詣が深い。この彼女の能力に惚れ込んだボルドーのシャトーが、彼女をアジアマーケティングディレクターとして迎え入れたのです。1855年メドックで、2級に格付けされている、マルゴー村を代表する「Château Brane-Cantenac (シャトー ブラーヌ・カントナック)」。彼女が就任後、初めて日本へ凱旋する場所として白羽の矢を立てたのが、Benoitでした。

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ボルドーの中でも最大級の畑を所有しており、豊富な葡萄の中から厳選された物のみがこのシャトーの名前を名乗ることができます。力強い赤ワインが多いボルドー地方の中で、質の良いメルロー種が収穫できる地だからこそ、力強さの中にも繊細さと気品が感じとることができるのが、マルゴー村であり、だからこそボルドー地方のなかでも群をぬいた人気を誇ります。今回のワイン全て、「シャトー ブラーヌ カントナック」から直送しているため、皆様は最高の品質状態でお楽しみいただくことができるでしょう。中でも1995  Château Brane-Cantenac は4.5リットル=6本分。ボルドーにおいてこのサイズはとても珍しくかなりの貴重品です。料理は、アランデュカスグループ統括ソムリエのジェラール・マルジョンが監修し、これぞというマリアージュをご用意させていただきます。ワインの本数が限られているため30名さまのみの豪華ディナーです。ワインと料理のマリアージュとは?時が醸す美味しさはいかほどのものなのか?このワインパーティーが皆様に答えを導いてくれることでしょう。

 

日時:2018年10月28日(日)  18:30より受付開始 19:00開演

会費:20,000(ワイン・お食事代サービス料込・税別)

※Benoit恒例のワイワイ相席スタイルです。質問などございましたら、何気兼ねなくお問い合わせ、もしくは返信をお願いいたします。席数に限りがございます。ご予約はこのメールへの返信、もしくはBenoit(03-6419-4181)にご連絡いただけると幸いです。

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ラインナップは合計5アイテムと秘密のシャンパーニュです。

2010 Baron de Brane

2011 Château Brane-Cantenac

2006 Château Brane-Cantenac

2000 Château Brane-Cantenac Magnum

1995 Château Brane-Cantenac Réhoboam

 今回のラインナップは、ご当主リュルトン氏とアジアマーケティングディレクターのカオルさんが厳選したリストの中から、Benoitシェフソムリエの永田がピックアップいたしました。当夜は、カオルさんと永田が、どうしてこのラインナップを選んだのか、理由が明かされることでしょう。

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 このシャトーの歴史は古く、18世紀初頭まで遡ることができます。創立はゴルス家ですが、それを、現在のムートン・ロートシルトを所有していたこともあるブラーヌ男爵が1833年に購入しました。彼の名、Baron de Braneはワイン名にもなっており、当時の傑出した評価は、1855年メドック格付け第2級という栄光を導きました。その後、1886年にロイ家に売却され、1級シャトーと同等の売価となり、2級のトップの評価を受けることになります。しかし、 メドック地方最大を誇るブドウ畑は、商業的成功は修めるものの、品質にばらつきが出るという問題点も表面化することになります。

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  今のシャトーを所有するリュルトン家の手に渡ったのは1925年です。現在の当主であるアンリ・リュルトン氏に引き継がれてからは、積極的な技術改良と、畑の改善に、邁進します。この妥協のない取り組みが、このシャトーの評価をさらなる高みへと導いたのです。特に1995年ヴィンテージ以降は、目を見張る品質となっているようです。今回の蔵より直接送られてくるヴィンテージの中で、最古参は1995年です。レオボアムという4.5Lのボトル詰めで熟成させたものが現存していることが、彼がいかほどの自信があったかを如実に物語っているのではないでしょうか。

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  メドック地区で最大の広さを誇る彼の畑は、ゆうに90haを超えるといます。広大な畑にもかかわらず、徹底的な改善と管理を実施し、特徴的な5区画に分け、それぞれテロワールに適したブドウ品種を植栽しています。区画の中でも土質が異なるため、さらに細分化された区分けがなされています。この小さな区分けごとに収穫されたブドウは、2度の選果を経て、ブドウの特質を見極めたうえで、最適と思われる発酵槽、大樽やステンレスタンクと使い分け醸されます。その後、60~70%の新樽率で18ヶ月の期間、熟成という眠りにつきます。絹のような滑らかで、ふくよかで弾力のある味わいは、こうして生み出されるのです。

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 ひと月も前のことですが、9月8日に「白露(はくろ)」を迎えました。昼夜の気温差が大きくなり、夜半に空気中の水蒸気が冷やされ、水滴となり葉や枝に現れたものが「露」です。なかなか都内では見かけることはありませんが、旅行などで山間部に行かれた時の早朝は、陽に照らされきらきらと輝く朝露に、清楚可憐な美しさを目にするのではないでしょうか。だから「白」がつくのかと思うのは、早合点のようです。

  中国で生まれた「五行説」では、1年は「四季」に、季節の変わり目である「土用」が加わり、5つに分けられ、それぞれに色があてがわれています。寒暖乾湿の差が激しい季節の移り変わる時期は、健康管理に注意しなさいよとの警告でしょうか、「土用は黄」です。若葉青々しいというように、かつては緑も青に含まれていましたので、「春は青」。ちなみに「青春」はここから誕生したようです。冷暖房完備の住居など皆無であった古のお宅では、凍てつく大地に緑少なく、寒さ厳しい期間をどう乗り越えてゆこうか、そのような暗雲漂うような心地なのでしょうか。「冬は黒」です。夏を乗り切り、待望の実りの時期であり、紅葉・黄葉と彩り豊かな秋は何色なのか?すでにお気づきかと思いますが、「白」なのです。それぞれの季節に吹く風もまた色があり、秋に吹く風は白い風。分かるようで分かりにくい。

  「秋の風」は「色無き風」ともいわれ、「白」は真っ白のカラーというよりも、透明なことを表現しているというのです。秋は白色ではなく、澄み渡る空気に包まれる季節。空は青々しく、山々はくっきりと姿を見せ、草木の花々、木の実や果実、葉の色が鮮やかに映える。もちろん、夜空に輝く「星月夜」も。歳時記の中で「月」といえば「秋」を指し、その名の通り「中秋の名月」は、白い秋にこそ美しさを際立たせます。日本では、秋を司る神は、「竜田姫(たつたひめ)」です。彼女は染色と裁縫が特技とされ、秋の野を駆け回るように染め上げる。この錦秋(きんしゅう)の女神の為せる業(わざ)を際立たせる色こそが、日本の秋の「白」なのでしょう。

  白秋の美しき頃は、五穀豊穣の実りを、さらに山の幸や海の幸の恩恵を十二分に堪能できる時期です。生きとし生けるもの、越冬するために栄養を蓄えなければいけないと、DNAが教えてくれる時期でもあります。どうせ食するならば、美味しくいただきたいもの。そこで、Benoitでは、白ではなく「赤色」の美味しい提案をさせていただきます。皆様を、「口福な食時」へとご案内いたします。

 

いつもながらの長文、最後までお読みいただき誠にありがとうございます。末筆ではございますは、皆様のご健康とご多幸を、青山の地よりお祈り申し上げます。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」

150-0001 東京都渋谷区神宮前5-51-8 ラ・ポルト青山10階  TEL 03-6419-4181 

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