kitahira blog

徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

2018年の干支「戊戌(つちのえいぬ)」の話です。

 今年もはや10月の半ばを迎えようとしています。日々楽しく2018年を過ごされているかと思いまが、何かやり残したことはありませんか?志をもって取り組んでいることはございませんか?何か壁にぶつかって思案に更けていませんか?そう、2018年はなんとしても頑張り抜いて新年を迎えていただきたいのです。なぜか?今年が皆様にとって「追い風」になるような気がするのです。

  毎年のことなのですが、新年を迎えた際に、「干支」についてあれこれと考えをめぐらします。古代中国の賢人が、「漢字」を使って後世に残したメッセージだと思うのです。そう勝手に当てはめているとは思いません。そこで、漢字の語源などを紐解き、世相を考えてみようとの試みです。もちろん、自分は陰陽五行や四柱推命に長けていえるわけではなく、占い師でもありません。これから記載することに、「漢字の語源辞典」以外に何の根拠もありません。ただ、7年も続けて書いていると、なるほどと妙に納得してしまうものです。

  そこで、その世界を皆様にご紹介したいと思います。すでにご存じの方も、残り2ヶ月半を悔いの無いようにするために、今一度目を通していただけると幸いです。何度も書きますが、自分は占い師ではありません。まして、壺や幸運グッズを販売しているわけでもありません。仮にご希望があっても、扱っておりません。それでは、どうして2018年は皆様にとって「追い風」となると考えるのか、理由は以下の本編に記載いたしました。

 

 

 2018年は、戌(いぬ)年です。お釈迦様への新年の挨拶に赴いた動物たちの順番が十二支となった、とはある一説のお話。己をよく知る牛は足が遅いことを理解しているために前日早いうちから出発し、一番先に門先に到着するも、その背に乗っていた賢いネズミがひょいと先に門をくぐる。順を追ってぞくぞくと主役が到着する中で、犬猿の仲といわれる両者の仲裁に入ったがためにニワトリは10番目。猫はなぜ登場しないのか?猫はお釈迦様への新年の挨拶の日を忘れ、ネズミに聞いたところ2日だと。翌日に事実を知った猫は怒り、これ以降ネズミを追いかけ続けるのだと。そのようなわけで、イヌは11番目の十二支だといいます。よくできた話ですが、これは十二支に動物を配当するのは、多くの人に理解してもらうために考えられたといいます。

f:id:kitahira:20181012162929j:plain

  今回の画像は、東京都庁の近くにある十二社(じゅうにそう)熊野神社末社、大鳥三社の守りを長年にわたって務めている狛犬(こまいぬ)です。1727年(享保12年)、「角筈村上野百姓店児講中」より寄進されたもの。世界史上類を見ない文化を興した江戸時代、その初期の石彫りの狛犬を「江戸はじめ」といい、東京の戦禍を逃れた貴重なものといいます。小ぶりで座っている姿、特に胴体の下の部分がくりぬかれていないことが特徴。彫が浅く、勇ましさを感じるもののなんとも愛らしい表情ではありませんか。さて、この狛犬は、獅子像と狛犬像が対になった昔ながらの伝統にのっとっています。さて、どちらから狛犬でしょうか?

  日本の狛犬のルーツを辿ると、仏様を守る役割で台座に刻まれる形でインドに登場した獅子像へ行き着きます。これが獅子座思想という形で中国へもたらされ、龍や麒麟という空想上の守護獣としての獅子が誕生したようです。遣唐使により日本にもたらされた獅子座思想は、唐獅子と呼ばれる勇ましい姿の一対を成す獅子像として定着していきました。さらに、仏様を守るための獅子座思想が日本の宮中に伝わり、今度は天皇を守る守護獣としての役割を担うとき、左右非対称配列を好む日本の美意識ともいうべき感覚と、仏寺を守る仁王像阿吽に影響を受けたのでしょう。神様から見て左手につるっとした頭で少し口の開いた阿の「獅子像」、右手には頭に角を生やし口を閉じた吽の「狛犬像」が。そう、ここに「神殿狛犬」が誕生します。時は平安時代後期といいます。この宮中で生まれた「獅子・狛犬」の構図が、今の神社へと引き継がれていきます。現在、神社仏閣によって、「獅子・獅子」か「獅子・狛犬」、「中国伝来の典型的な同じ姿の一対」か「阿吽の一対」かは様々です。この違いを意識しながらの神社仏閣巡りも、また一興なのではないでしょうか。

  

 今年の干支は「戊戌(ぼじゅつ)」です。古の賢人は、毎年の世相を分析し、時代時代を表現する漢字一文字をあて、後世に伝えようとしました。その英知の結晶が「干支」です。甲・乙・丙…と続く「十干(じっかん)」と、馴染みの子・丑・寅…と十二支。この10と12という数字が、我々の生活の中でどれほど溶け込んでいるか。算数を学ぶ上で、数字の区切りとなるのが10。そして、半日は12時間、1年は12ヶ月。10と12の最小公倍数は「60」。還暦のお祝いとは、この漢字の通り「暦が還(かえ)る」人生60年目の節目を迎えたことを祝うものです。

  人が抗しがたい時世の勢い、世相には10年というサイクルを見出し表現したものが、「十干」。今年は「戊(つちのえ)」です。武器の象徴でもある「戈(ほこ)」を含み、何やら穏やかならぬ言葉かと思いきや、戊の5画は六甲五龍が絡み合う象形文字。戊は丁を継承し、人の脇に象(かたど)る。「戊」は「茂」だともいう。そして、五行では「土」。干支には60の組み合わせがあり、そこに「甲」の文字が入るのは6つ、これが「六甲」。この中に「辰(龍)」が5つ。戊辰(つちのえ・たつ)は中央を守る黄龍、庚辰(かのえ・たつ)は西方を守る白龍、壬辰(みずのえ・たつ)は北方を守る黒龍、甲辰(きのえ・たつ)は東方を守る青龍、丙辰(ひのえ・たつ)は南方を守る赤龍。この守護神五龍が、六甲のもとで絡みまとまる、しめ縄のようなご様子。十干は樹の成長を模した姿といいます。かたい殻に覆われた状態の「甲 (きのえ)」、芽が曲りながらも力強く伸びる様「乙(きのと)」、芽が地上に出て、葉が張り出て広がった姿、「丙(ひのえ)」。そして、4番目の「丁」は、重力に逆らうかの如く、ぐんぐんと勢いよく天に向かい成長する、そして「戊」は大いに茂る。時世は円熟期に達し、抗しがたい勢いの中に包み込む優しさをも持ち合わせる。そして、五龍の力は人の傍らにあるという。

  人世における栄枯盛衰は世の常であり、繰り返すもの。古人はここに12年を見い出します。人生もまた、樹の成長になぞった漢字1文字をあてがいました。「戌(いぬ)」、万物がすべて成熟することを意味し、陽気は土中に還る。五行において、「土」は「戊」から生じ「戌」で最盛を迎える。「戊(=土)」に「一(=陽気)」が入るように構成されたものが「戌」といい、恤(じゅつ)であると。「矜恤」とは収穫したものを哀れみ慈しむということ。「未(ひつじ)」は葉が茂った中に隠れた一枝の成長を、「申(さる)」は果実が成熟して固くなっていく様であるならば、昨年の「酉(とり)」は果実が成熟したことを表す。今年はいよいよこの果実の収穫です。

  万物を陰と陽にわける陰陽説と、自然と人事が「木・火・土・金・水」で成り立つとする五行説が合わさった考え方が、陰陽五行説です。昨年の「丁酉」の丁は「ひ(火)のと(弟)」、酉は「金」を指し示す。火は金を溶かす、相手を抑え込む五行相克。今年の「戊戌」の場合、戊は「つち(土)のえ(兄)」で「土」、戌もまた「土」をさす。同じ土の気同士、ますます盛んになることを暗示する「五行比和」にあたります。戊から生じて戌に最盛を迎えるとは前述しました。兄(え)は陽で弟(と)は陰。陽と陰は、力の強弱ではなく、力の向く方向性の違いのこと。陽は外から内側へエネルギーを取り込むこと、陰は内側から外側へ発することだといいます。運の良い人とは、陽の人であり、外側から自分自身へ力を取り込んでいる人のこと。「運を呼び込め」とはよく耳にいたします。陰の人とは、運が悪いわけではなく、自分自身のみなぎるエネルギーを外に発している人のこと。

  2018年の「戊戌」とは、時世の勢いが最高潮に達しながら、円熟期を迎えることで力強さと優しさを介在している。さらには五龍の力添えを得ることのできる貴重な年。昨年までの時世の勢いがあまりにも強く、人世もまた成熟を迎えるにもかかわらず、その時世の勢いが凌駕する年でした。今年は、時世の勢いは変わらずとも、人世を受け入れる寛容さを持ち、同じ方向に流れてゆく。昨年まで頑張り続けたことを、時世が後押ししてくれる、それも他の年とは比べ物にならないほど強く。そして人世もまた成熟期を迎えながら、陽の時世のエネルギーを受け入れることで、ますます力強くなる。諦めることなく努力し続けることが、大いなる結果をもたらす年なのではないでしょうか。1984年の「甲子(きのえね)」に幕開けした60年の時世のサイクル。「世」の字には30年という意味が込められていると聞きます。60年の中に30年の2つの世相。2014年「甲午(きのえうま)」からはすでに後半の世相が始まっています。時世と人世が同じ方向なため、昨年とは違い優しさを感じるため、ここで甘えが生じることは、それを後押しする時世がある分、取り返しのつかない30年を迎えることになるかもしれません。「戌」に配当された「犬」には、優しさという意味に加え、優柔不断もまた。ここは、いぬ年でありながら狛犬の如く、吽のように歯を食いしばりながらもうひと踏ん張り頑張ることが良い、努力は報われると教えてくれている気がいたします。そして、この収穫に対し感謝と慈しみと忘れてはいけないとも。

 

いつもながらの長文を読んでいいただき、誠にありがとうございます。

末筆ではございますは、ご健康とご多幸を、獅子・狛犬が皆様をお守りくださるよう、青山の地よりお祈り申し上げます。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」北平敬

150-0001 東京都渋谷区神宮前5-51-8 ラ・ポルト青山10

TEL 03-6419-4181

www.benoit-tokyo.com