kitahira blog

徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

Benoit「余寒特別プラン」のご案内です。

 暦の上では、2月3日が「寒の明け」、翌4日には「立春」を迎え、春が始まりました。今期は、「寒中」でありながら肌身で暖冬を感じていたために、暦の春を受け入れやすかったのではないでしょうか。

 しかし、古人はこの時期を「三寒四温」であると、我々に注意を促しています。その漢字の如く、3日寒い日の後に、4日暖かい日が続く。春の兆しは感じ取れるも、まだまだ暖かさはゆっくりと訪れるのだと。そう考えると、先日の寒波の到来による冬の再訪もわからないものでもありません。しかし、あまりにも激しい気温差は、やはり気候変動の影響なのかもしれません。

 この時期は、衣替えをいつはじめようかと思い悩むものです。暖かな陽射しに誘われるかのように、冬の衣類を天日干し、はたまた陰干しして仕舞い支度を始めるも、数日後には寒さがぶり返すし、せっかく仕舞いこんだもの引っ張り出すことに。誰しもが、このような経験をされているのではないでしょうか。今では、冬物から春物へと衣類の入れ替えを行いますが、昔は少しばかり違った様相を見せています。

 かつての着衣は着物であり、これは「袷(あわせ)」と「単衣(ひとえ)」に大別されます。簡単に説明すると、生地を2枚重ねて仕立てた「袷」と、生地一枚の「単衣」というのでしょう。冷房のない時期だけに、真夏の猛暑の時には、「薄物(うすもの)」が登場します。では、寒い時はどうするのか?「袷」だけでは耐えきれません。

 そこで、「羽織」が登場します。「羽織る」という動詞にまでなる防寒着です。しかし、厚手の生地ではありますが、今のような防寒防水に優れた素材を使っているわけではありません。厳冬の間はどうするのか。羽織の下に重ね着をすることで、寒さをしのいでいたようです。寒ければ、羽織の下に幾重にも着込んでいたのではないでしょうか。春の陽射しによって、日増しに暖かくなるにつれ、この重ね着の枚数が減っていったのです。

 かつて、旧暦2月は「如月(きさらぎ)」と学びました。新暦では2月後半から4月あたりにあたり、まさに春の不安定な天候が続く日々。「如(ジョ/ニョ)」とは、依(よ)り従うという意味があると、古代中国の賢人は言う。寒暖の差が激しい時期だけに、逆らうことなく「寄り添い」「従う」のだと言いたかったのでしょうか。この意を汲んだ上で、古き日本人は異名として、この漢字を当てました。

「衣更着(きさらぎ)」

 ようやく暖かくなってきたと着衣を一枚脱いだところへ、寒さがぶり返し、あらためて着重ねをする、そのような月が2月なのだと。自然の機微を的確に捉え、見事なまでに表現する。「言い得ての妙」とは、このことなのでしょう。そうすると、この名句の印象が、趣深いものへと変わってゆきます。

 

衣更着(きさらぎ)の 冴えつる風の よのまにも また薄こほる 池のおもかな  藤原家隆

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 春の陽射しによって、日を追うごとに暖かさを増してゆく中、着重ねていた1着、また1着と脱いでゆき、仕舞い支度を始めてゆく。突然に迫ってきた寒波によって凍えるような風が吹きすさび、闇に覆われた「夜の間」に、さらには、竹の節間のように短い間隔を意味する、つかの間の「節(よ)の間」に、池の面(おも)にうっすらとした氷が姿を見せる。

 朝起きた家隆が、庭先の池を眺めた時に詠ったものなのでしょうか。寒さはいっとき、時間的な短さなのだと知りながら、「仕舞いこんだ着衣を、また着こまないといけないなあ~」と。待ちわびる春爛漫を前に、この不安定な日々の天気は当然のこと。「寒い寒い」と感じつつも、ほくそ笑んでいる家隆がいる。2月だからこそ、「衣更着」を大いに楽しんでいる、そう思えてしまうのは、自分だけではないのではないでしょうか。

 

 2月が「きさらぎ」であり、寒暖の差が激しいがために、「衣更着」を頻繁に繰り返さなければなりません。そして、「如月」とは、この不安定な天気に逆らわず、依り従うことを促す月なのだと読み解く。そこで、Benoitは考えました。惜しまれつつ「一度終えてしまったプラン」を、先日の寒波の到来に呼応するように、復活させよう。短期間ではなく、2月いっぱい寄り添おうと。

 

 先月は、日頃より並々ならぬご愛顧を賜っている上に、さらにはこの長文レポートに目を通していただけている皆様の労に報いようと、新春特別価格でプリ・フィックスメニューをご案内させていただきました。これを ≪余寒特別プラン≫ と銘打って継続させていただきます。期間は、メールを受け取っていただいた日より、2020228日までの平日限定。ご予約は、自分へのメール、もしくは以下のBenoitメールアドレスよりお願いいたします。もちろん電話でも、ご予約は快く承ります。

www.benoit-tokyo.com

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余寒特別プランは2月末までです!

ランチ

前菜x2+メインディッシュ+デザート

4,800円→4,300円(税サ別)

ディナー

前菜+メインディッシュ+デザート

6,100円→5,000円(税サ別)

ディナー ※

前菜x2+メインディッシュ+デザート

7,100円→6,000円(税サ別)

 プリ・フィックスメニューの料理内容は、当日にメニューをご覧いただきながらお選びいただきます。ご希望人数が8名様以上の場合は、ご相談させてください。

 ※このプラン価格で、前菜x1+メインディッシュ+デザートx2「夢のダブルデザート」も承ります。

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 皆様にすぐにでもお伝えしたい情報、お勧めの料理については、SNSの力を利用しご案内させていただこうかと考えております。facebookでは、「takashi kitahiraの検索ワードでたどり着くことが可能です。しかし、kitaharaの場合は、演歌歌手がでてくるのでご注意ください。Instagramでは「kitahira」の検索でコビトカバ登場いたします。まだまだ不慣れではありますが、ご迷惑をおかけしないよう、そして興味深い情報をお伝えできるよう最善を尽くさせていただきます。

 

 「立春」に到来した寒波が、北日本をすっぽりと覆いつくしております。関東でも、毎朝の天気予報で耳にする「氷点下」という言葉。この冷え込みによって、池の面(おも)にはうっすらと薄氷が張っていました。この「薄氷」を、「はくひょう」と読むと、その字の如く、薄い氷のことを意味します。何を当たり前のことをいっているのか?この単語は読み方によって意味合いが異なってくるという、古人の言葉遊びが含まれているのです。では、どう読むのでしょう?

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 春に寒さがぶり返すことで凍る薄い氷のことを、「薄氷」と書きます。漢字の組み合わせは同じでも、「うすらひ」と読む。すると、この「薄氷」が春の季語へと様相をかえるのです。今回の寒波によって、其処此処の池や水たまりに薄く氷がはっていることでしょう。ここはひとつ、朝食後に散策に出かけるのも一興ではないでしょうか。春の陽射しに輝く池の面の薄氷(うすらひ)は、古人の考えし言葉の妙(みょう)を教えてくれるはずです。

 

 古代中国を発祥とする二十四節気では、四季の始まりを「立春」「立夏」「立秋」「立冬」と記しています。このそれぞれの日を迎えるまでの18日間の「季節の移り変わる期間」が「土用」です。「土用」は「土旺」とも書き、大地の勢いが旺盛になる時といい、。土をいじくるような地鎮祭上棟式なイベントは行わず、さらにかつての土葬なども避けていたようです。農耕民族らしい、大地への畏敬の表れでもあるようです。

 土用は、変化に伴う強大なエネルギーに満ち。大地は、人が太刀打ちできないほどの自然の力を備えている期間。何やら新興宗教のような話になってきていますが、土用の期間というのは「季節の変わり目」であり、とかく寒暖・乾湿が大きく、不安定な天気が続きます。ここで無理をすると、大病を患いますよ、という先人たちからの我々へのメッセージなのでしょう。我々は農耕民族ですから、土をいじくるなということは、「無理に農作業をしないで、体を休めなさい」ということを意味しています。

 この土用の期間には、「土用干し」を行うことを慣わしとしていました。「三日三晩の土用干し」と言われる、夏の梅干しづくりとは違い、「土用干し」といえば「虫干し」のことをいいます。昨今話題になった世界規模での昆虫食の推進の一環で、昆虫を乾燥させて保存食を作ろう!というものではありません。

 「虫干し」とは、天気の良い乾燥した日を選んで行われる「陰干し」のことをいいます。衣類はもちろん、書画などの美術品の数々を、陰干しすることで虫害やカビ害から防ぐことを目的にしています。7月下旬の夏の土用には、夏に発生しやすい害虫防除を。9月下旬からの秋の土用は、夏の間に住み着いた害虫を除去するために。奈良の正倉院の虫干しはあまりにも有名です。そして、1月下旬からの冬の土用は、「寒干し」ともいい、冬の乾燥を利用して湿気を取り除くために行います。

 4月下旬から始まる春の土用は、「虫干しカレンダー」に記載がありません。寒暖の差が激しい時期に加え、「春雨」「催花雨」やら「菜種梅雨」などと、多く雨の異名がある時期です。おいおいと「虫干し」している場合ではありません。ましてや、移りゆく寒暖な日々は、仕舞いこんだものを再度引き出さなければならないものです。では、5月に行うが良いのか?「五月雨(さみだれ)」を忘れてはいけません。新暦では、天気が良い日が続きますが、旧暦では梅雨へ入り込む時期。「虫干し」している場合ではありません。

 

 「暑さ寒さも彼岸まで」とはよく言ったもので、まだまだ油断はできません。皆様、十分な休息と睡眠をお心がけください。インフルエンザを代表とするウイルス対策もお忘れなきように。何かご要望・疑問な点などございましたら、何気兼ねなくご連絡ください。いつもながらの長文を読んでいいただき、誠にありがとうございます。

 

末筆ではございますは、ご健康とご多幸を、青山の地よりお祈り申し上げます。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com