kitahira blog

徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

2022年10月11月Benoit 今秋は旬の美味しい魚をムニエルでいかがですか?

 フランス料理店で魚料理名に、「ムニエル」という言葉が度々姿をみせます。「舌平目のムニエル」などは、いかにもフランスっぽい料理であり、音の響きではないでしょうか。この「ムニエル」とは、料理を意味するのではなく、魚に小麦粉をまぶし、たっぷりのバターで焼き上げる調理法のことです。

※下の画像はエイヒレ…今秋は関係ありません。

 今秋のBenoitのメニューにも、「ムニエル」という単語が登場しています。ランチとディナーで魚種を変え、ほぼ同じスタイルの旬の魚料理です。ココットにバターをたっぷり溶かし込み、ふつふつと泡立つ中に魚を落とし込みます。この時、魚には小麦粉はふらず、シンプルに魚の美味しさを表現します。ココットの中では、熱々のバターをふりかける度にじゅわ~ビチビチと心地良く響く音色に、立ち昇るバターの甘い香りに香ばしい魚の香り。

 しっとりと焼き上げる魚に、職人技を垣間見ることができます。旨味の移ったバターにアンチョビを加えたのがソースとなり、添えるのがジャガイモを3種の調理方法で仕上げたもの。マッシュポテトにほぐしたジャガイモ、そしてポテトチップス。バターソースなだけに、お皿の中はジャガ&バターです。この相性が悪いわけがありません。

 

 さて、主役となる旬の魚とは何か?

 背びれを上に置き、白い腹目を地につけた時、「左ヒラメに右カレイ」なのだといいます。ヒラメとカレイを見分ける時の決まり文句ですが仲間の中でも例外がいる上に、自然界のか中では稀にひねくれものもいるようです。どちらにせよ、ともに美味しい魚に変わりはありません。と、コメントしていては、飲食業を生業とはできません。

 眼の向きは、やはり美味しさに違いをもたらしますが、エビ・カニ・小魚を捕食することで蓄えられる旨味は甲乙つけがたいもの。しかし、その肉質には大きな違いがあります。カレイ目ヒラメ科の仲間がぷりっと堅めであるならば、カレイ目カレイ科はふわりとして柔らかい。

※上の画像がカレイで、下がヒラメです。

 今回は、カレイの仲間の中で、美味しさが群を抜いている「マツカワガレイ」が、北海道からBenoitに届いています。見事なまでに美しい背ビレに腹ビレに描かれる帯模様。これぞマツカワガレイなり!ヒラメにも負けないほどの肉厚さながら、やはり肉質は繊細で、優しい旨味に満ち満ちています。

 肉厚ではありますが、3枚に捌いてしまうと「美味しくなる前に火が入っていまう」ものです。そこで、中骨を残したままぶつ切りにして焼き上げるのです。骨付きだからこそ職人技ともいえる絶妙な火入れを可能とし、旨味を逃がさないのです。骨があって食べにくい?いやいや、骨に沿って魚ナイフをいれていただければ、きれいに身がほろっととれるのです。

Carrelet à la meunière, pommes de terre écrasées

カレイのムニエル じゃがいものエクラゼ

※ディナーのプリ・フィックスメニュー、主菜としてお選びいただけます。

 

 ランチは、北海道や青森県で水揚げされた「タラ」でご用意いたします。塩で身を締めること一晩、塩抜きをしてムニエルにすることで、タラ特有のぷるっと身がほぐれるように。ディナーのマツカワガレイとはまた違った美味しさをお楽しみいただけます。

Pavé de cabillaud à la meunière, pommes de terre écrasées

タラのムニエル じゃがいものエクラゼ

※ランチのプリ・フィックスメニュー、主菜としてお選びいただけます。

 

 日ましに秋めく今日この頃。目に見える季節の移ろいの加え、秋風は秋の薫りも運んできます。ここはひとつ、文明の利器を遠慮し、五感を利かせて秋を探してみるのも一興ではないでしょうか。そして、秋の味覚が恋しくなった際には、足の赴くままにBenoitへお越しください。深まり行く秋と歩調を合わせるように、旬の食材がメニューをもって皆様をお迎えいたします。

 最後まで読んでいいただき、誠にありがとうございます。

 終息の見えないウイルス災禍です。皆様、油断は禁物です。十分な休息と睡眠、「三密」を極力避けるようにお過ごしください。「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、笑いながらお会いできることを楽しみにしております。

 皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より切にお祈り申し上げます。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com