kitahira blog

徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

2022年6月7月 Benoit「特選食材」と「お勧め料理」のご案内です。

 都会の喧騒の中でも、草木の花々は移りゆく季節の機微を捉え、順を追って咲き誇るもいずれは散りゆきます。今の時期では、ドクダミアジサイ、甘い香りをはなつクチナシの花が、夏本番を迎えるまえの梅雨時期であることを我々に教えてくれます。そして、食材も同じように順を追って収穫を迎え、我々に「旬」の到来をおしえてくれます。

 旬の食材には、今我々が欲している栄養が満ち満ちています。それを美味しくいただくことで、我々は「口福」え得るばかりか、季節をも再認識することができると思うのです。そして、脳みそが身体すみずみに、その季節を乗り越えるための秘策を伝達してゆく。今は、これから迎える猛暑な日々にむけて、身体を順応させるための期間なのです。春は続かない…気づけば夏が来ている…

春過ぎて 夏来たるらし

 Benoitの料理とデザートを通して、この感慨に浸っていただきたいと思います。

そうそう、「旬」という期間は限られたものであり、「待つ」という優しさを持ってはおりません。皆様、この機会をお見逃しなきように…

 

≪フランスの漁師料理、南仏マルセイユは「魚のスープ」です!≫

 この時期になると問い合わせが入るBenoit東京の「魚のスープ」。マルセイユの代表料理ですが、Benoitではドロドロしいというよりも滑らかに仕上げています。「魚介」ではなく「魚」のスープは、ワインを使用せず、魚そのものの美味しさを煮出したもの。エビ・カニ・貝類を一切加えないからこそ、魚のやさしい旨味を十二分にお楽しみいただけます。

 

Soupe de POISSON de roche, rouille et croûtons aillés

魚のスープ ルイユとクルトン

※プリ・フィックスメニューの前菜として、ランチ+1,000円/ディナー+800円でお選びいただけます。

 

 さて、このスープはどのような魚で仕込むのか?

 メニューには、「POISSON de roche」という文言があります。「roche(岩)」だけに「岩魚」やら「磯魚」との訳をあてています。確かに荒波の磯でもまれにもまれた魚種は美味しいもの。しかし、旨味の多い魚が磯ばかりではないことを、深い魚文化の日本人は知っている。

 ごつごつだったり、とげがあったり、ぬるぬるしていたり。自分のような素人が捌くには難儀な、ごつい頭と堅い骨があることでしょう。これが旨味のもととなります。どう調べても確証は得られませんでしたが、「roche」とは、そういう「ごつごつの魚」を総称して名付けたのではないとも思うのです。今は、オニカサゴ(1番目の画像)にホウボウ(2番目の画像)、そしてマゴチ(3番目の画像)。さらにイトヨリダイが、北九州や四国を主産地とし、Benoitに届いています。7月も後半になると、北日本青森県や北海道からオニカジカ(4番目の画像)も仲間入りすることでしょう。

 イトヨリダイ以外の4種の魚は、似ても似つかぬ容姿ですが、分類上では「カサゴ目」です。見た目からでは想像もつかないほど繊細で美味なる身質を持っている魚たちで、そのごつい頭や骨からは、得も言われぬ上質な旨味をとることができるのです。しかし、オニカサゴにオニカジカ…「オニ」「オニ」と、見たこともないのに、鬼にも魚にも失礼千万な話…

 では、Benoitではどうやってこれほどの旬の魚を、鮮度良く仕入れているのでしょうか?ここには、Benoitシェフ野口と、築地から始まり今は豊洲へ、ゆうに80年を超える歴史を持つ老舗魚卸「大芳」の宇田川さんとの、長年にわたって築かれた信頼関係が必要不可欠でした。シェフは魚種の希望を伝えるものの、最終判断は宇田川さんの目利きに頼ります。

 皆様の目の前で、スープがそそがれた直後から、磯の香りに包まれます。濃厚な茶色を帯びた深みのあるオレンジ色の液体は、透明感こそないですが輝きがある。濃厚ながら、甲殻類のような濃さではなく、さらりとした感さえあるものの、余韻に感じる魚の美味しさに酔いしれ、猛暑に疲れた体を癒してくれるはずです。一口お召し上がりいただき、目を閉じれば潮騒(しおさい)が耳に届き、目を開ければBenoitの窓越しに地中海が望める…かもしれません。

 

≪暑い時期だからこそ、ヴィシソワーズスープで始めてもいい…≫

 冷たいスープで火照った身体を内側から冷まし、食欲を呼び覚ます。かつてアメリカ合衆国で誕生したという冷製「ヴィシソワーズスープですが、どうも英語っぽくはないネーミングではないですか。それもそのはず、考案者であるシェフはフランスのVichy(ヴィシー)の出身だった。この町は、フランスを悠々と流れるロワール川を遡り、遡りさらに遡り、フランスの中央部辺りにまで達したところにヴィシーの街があります。そこで、子供の頃にお母さんが冷たく供してくれたジャガイモのスープが原点にあるのだといいます。

 お馴染みの食材であるジャガイモ。この素材が持ちうる繊細な旨味を生かすために、クリームを極力減らし、ミルクでのばしてゆきます。これだけでも美味しいのですが、そこへプルンと鶏ブイヨンジュレが加わることで、味わいに深みが増してきます。そして忘れてはいけないものが、バターをたっぷりつかったクルトンです。「後のせサクサク」とすることで、香ばしさと心地よい食感が生まれるのです。

 全てを混ぜるように馴染ませてお召しあがりいただくのも良いですが、敢えて混ぜないのも一興なり。スプーンですくう場所場所によって多彩な表情を見せてくれます。色とりどりに咲きほこるアジサイならぬ、Benoitヴィシソワーズスープの味彩をお楽しみください。このヴィシソワーズスープ、次に魚のスープをお選びいただいても自分は止めません。というよりも、お勧めしたいぐらいです!

VICHYSSOISE rafraîchie, garniture taillée

ジャガイモの冷製スープ “ヴィシソワーズ”

※ランチとディナーのプリ・フィックスメニュー、前菜としてお選びいただけます。

 

プロヴァンス地方の夏を代表する料理「ラタトゥイユ」が前菜です!

 夏野菜を代表するナス、ズッキーニ、パプリカをトマトで煮込んでいったプロヴァンス伝統料理です。家でも作りやすいこともあり、馴染みの料理でえはないでしょうか。とはいえ、ご家庭と同じでは「プロの調理人」ではないわけで、Benoitのプリ・フィックスメニューに名を連ねるということは、やはり美味しいということなのです。

 ナス、ズッキーニ、パプリカとタマネギは、それぞれを絶妙な食感を残すように焼いてゆきます。野菜そのものの旨味が、熱が加わることでさらに引き立つかのよう。そして忘れてはいけない食材、、完熟まで収穫を待った真っ赤なパンパンのトマトとともに大鍋で一堂に会するのです。くたくたと煮込むことは、それぞれの野菜の甘さ凝縮させることになり、甘みが増します。さらに、冷ますことで、味わいが落ち着き、野菜のコクが際立ちます。松の実を加えることで、カリっと心地良い食感と、夏なのでナッツの香ばしさを…さらに、半熟卵のとろりとくる黄身との相性も抜群とくる。

Ratatouille de légumes du soleil, œuf mollet

夏野菜の冷たいラタトゥイユと半熟卵

※ランチのプリ・フィックスメニュー、前菜としてお選びいただけます。

 パリの赤ペン先生がフランス語表記を修正してきました。「légumes d’été (夏野菜)」から「légumes du soleil (太陽の野菜)」へと。なかなか粋な表現だと思いませんか?

 

Benoit東京で初めて姿を見せる食材…マダコ!≫

 「タコの産地といえば?」という問いに、真っ先に思い浮かぶのが兵庫県の明石(あかし)ではないでしょうか。高品質なうえに、水揚げ量が日本一を誇ります。これほどのタコ銘産地でありながら、存亡の危機に晒された時がありました。今から50年以上も前のこと、この海域に大規模な赤潮が発生し、タコが全滅に近い状況に陥ったのです。タコ産地としての復活を願う明石の漁師さんは、美味しいタコを探すべく全国を行脚したといいます。そして、彼らが選んだのが、熊本県天草のマダコでした。そこで、明石の漁師さんは天草へ船で訪れ、100tほどを譲り受けた後に明石の海に放流したのです。

 Benoitには、この明石の親ダコともいえる「天草のマダコ」が届いています。有明海に面した天草の北側には、「ありあけタコ街道」と愛称がついているほど。噛めば噛むほどに、タコらしい濃ゆい旨味が口に広がります。そして、この天草タコがBenoitで出会うのが、天草のお隣である宇城市の不知火から、のむチャン農園の「河内晩柑(ジューシーオレンジ)」です。同郷のよしみというよりも、このマリアージュは出会うべくして出会う運命にあったのではないかと。そう思ってしまうほどの相性の良さで、我々を魅了してくれます。

 丁寧に下ごしらえされ、やわらかく茹でたマダコ。そして、極力甘さを控えて仕上げた河内晩柑のマルムラード。さらに、ギリシャ風と銘打たれた野菜が一堂に会します。この野菜のギリシャ風とは、セロリ、ニンジン、タマネギ、カリフラワー、それにラディッシュ。レモンにコリアンダーの種を使い、絶妙な火加減で調理してゆき冷蔵庫で一晩休ませたもの。コリアンダーパクチーのことで、苦手の方の多い香草かと思います。しかし、このコリアンダーの種は、うんともすんともいわない味気ない食材。ところが、野菜とともに熱を加えることで、野菜本来の甘さを引き出すのです。

 ぬくいマダコが、天草産がどれほどの逸材であるかを教えてくれる。さらに、野菜それぞれの食感がリズミカルに口中に響き、野菜それぞれが甘さ旨さの旋律を奏でます。そして、河内晩柑の甘ほろ苦さが、全ての食材を引きあわせ、調和をもたらす。この美味しさに酔いしれ、Benoitの窓へと目を移すと…そこにはエーゲ海がひろがっている…かもしれません。

Poulpe marinée, légumes à la grecque

天草産真タコと野菜のマリネ ギリシャ

※ディナーのプリ・フィックスメニュー、前菜としてお選びいただけます。

 

≪まとわりつくようなレバーの美味しさをご堪能ください!≫

TERRINE DE FOIE DE VOLAILLE, pain toasté

鶏レバーのテリーヌ

※ランチのプリ・フィックスメニューの前菜としてお選びいただけます。ディナーでは、「サラダ・グルマン」の付け合わせとして登場いたします。

 

 Benoitがビストロである真髄は、やはり「テリーヌ」にあるのではないでしょうか。あまりにも有名な料理だけに、これといった決まった素材や調理法があるわけではなく、シェフの個性が表現される料理でもあります。Benoitの王道でもある「テリーヌ・ド・カンパーニュ」、そこのけとばかりに6月からメニューに割って入ったのが「鶏レバーのテリーヌ」です。

 鴨のレバーを太らせたものが「フォアグラ」であれば、ニワトリを太らせると「白レバー」です。これをたっぷりと使うのですが、これではレバーペーストになってしまいます。そこで、豚肉で肉肉しい食感と豚の背油で旨味を加えるように、よく混ぜ合わせ、テリーヌの型で焼き上げます。レバーの比率が高いため、熱が入り過ぎればパサパサとなる。断面がほのかにピンク色の、この職人技ともいえる火入れが、まとわりつくような白レバーの旨味を逃がしません。レバー好きにはぜひお楽しみいただきたい逸品です。

 

≪イサキが夏を告げにBenoitへ!≫

 関東近海ではなく、遠く西へ向かった地からBenoitに届けられるイサキは、対馬海流や豊後水道でもまれにもまれ、豊富な小エビのようなアミ類やシラスなどの仔魚をたらふく食しているからこそ、きれいな脂がのりにのった黒光りするパンパンの体系。だからこそ、長崎県大分県のイサキは、他に類を見ないほどの美味しさを誇ります。参考までに、魚の鮮度は目の澄み具合で推し量るといいますが、イサキ鮮度に関係なく目が白濁するため、参考になりません。

 Benoitだけに、お刺身で楽しむわけにはゆきません。丁寧に下ごしらえされた、見るも美しい切り身に、最後の一手間をかけることになります。「焼き」という、簡単そうで奥の深い最後の工程です。食材が持ちうる美味しさが、下ごしらえが、全て水泡に帰するかもしれません。「生」ではないが焼き過ぎない。言うは易く行うは難しとは、このことでしょう。職人としての経験に裏打ちされた「焼の技」が、イサキのさらなる美味しさ引き出すのです。

 夏を告げにきた魚だけに、新樹を想わせるような青々とした夏を代表する野菜を添えたいものです。中でも、イサキの下に広げた、ズッキーニの甘さと心地よいヴィネガーの酸味が、これほどまでに相性が良いものだったのかと思わずにはいられません。イサキの添えものでありながら、ソースのようにともに食した時には、皆様を「口福な食時」へと誘(いざな)うことでしょう。

ISAKI au plat, légumes verts, sucs de cuisson

イサキのソテー 緑野菜

※ランチとディナー、ともにプリ・フィックスメニューの魚料理としてお選びいただけます。

 

≪剣先イカ、シロイカ、アカイカ、皆様いかが?≫

 関門海峡を横切るように架かる瀬戸大橋。その山口県側の下関沿岸、橋のたもとから少し西側へ向かった先に、唐戸市場が開けています。そこでは、毎日のように近海で水揚げされた旬の魚介類が競り落とされ、地方に送られるばかりではなく、その場でも購入することができ、さらには美味しくいただくこともできます。

 彼の地で、鮮魚店を営んでいる道中さんが、まさに旬を迎えている剣先イカをBenoitに送り出してくれます。剣先イカ山口県では「シロイカ」と呼び、島根県では「アカイカ」といいます。その地その地で愛称があるということは、旬の食材として愛着があることの証ではないでしょうか。それでも「白」と「赤」では、違い過ぎるのでは…そう思うも、鮮度の良い剣先イカの姿を見ると、なるほど!と思ってしまう自分がいます。

 バスク風のピペラードとは、パプリカと玉ねぎをしんなりと炒めることで野菜そのものの甘さを引き出し、完熟トマトでコクと心地良い酸味を加え、さらに生ハムで旨味を足したもの。これだけでも美味しい!これをお皿にも盛り付け、ニンニクで香りづけしたほわほわミルクをかぶせ、ぱちんとするかのように焼きを入れた剣先イカをのせます。

 剣先イカの旬の旨さを際立たせるかのような夏野菜。香り良いミルクのまろやかさ。イカ墨のソースで、さらなる旨味を加ええる。さらに、はらはらと振りかかるフランスの旧バスクの地、エスプレット村の特産唐辛子が、ピリりと全体を引き締める。全てが一堂に会する時、そこには旬そのものお楽しみいただける一皿が姿をみせます。昨年の秋に登場した「アオリイカ」とは一味も二味も違う美味しさをお楽しみください。

Poêlée de calamars au piment d’Espelette, garniture d’une basquaise

下関産剣先イカポワレ パプリカのピペラード バスク

※ランチとディナー、ともにプリ・フィックスメニューの魚料理としてお選びいただけます。

 

Benoitでは、年に一度だけ姿を見せる仔羊です。≫

AGNEAU rôti, légumes gratinés

仔羊のロースト 野菜のグラチネ

※プリ・フィックスメニューの肉料理として、ランチ+1,500円/ディナー+1,200円でお選びいただけます。

 

 仔羊の骨付き背肉を表面に焼き色を付け、ふつふつとしたバターをふりかけながら、ゆっくりゆっくり熱を加えてゆく。この魅惑的な香りをどう表現したものか。表面には美味しそうな焼目がつくが、中はまだ生のままです。肉が内包している温まった肉汁を利用し、中からじっくり熱がゆきわたるように、温かい肉部屋で休ませロゼ色に焼きあげます。この美しい焼色なくして、仔羊の美味しさを味わえないでしょう。

 目の前に運ばれてきた時、仔羊の焼き色と夏野菜のグラチネの色のコントラストが目を引き、甘い野菜と焼いたパルメザンチーズの香りが漂います。そこへ、仔羊の旨味の凝縮したソースを、そっとお肉へかけてゆく。全てが一堂に会する時、なぜシェフがお勧めするのか、お分かりいただけるはずです。

 

≪豚ホホ肉を知ると、もう牛ホホ肉には戻れない…≫

Joues de cochon cuisinées longuement, courgettes et pâtes fraîches

豚ホホ肉の煮込み ズッキーニとフレッシュパスタ

※ディナーのプリ・フィックスメニュー、前菜としてお選びいただけます。

 

 豚ホホ肉の繊細な旨味を活かす生かすため白ワインを使い、香味野菜と煮こむこと1時間ほどで、ほろりと崩れるように。ここで豚ホホ肉は避難。鍋に残った旨味のスープを煮詰め、フォン・ド・ヴォーを加え煮詰めたものを、避難させていた豚ホホ肉に絡めます。そしてズッキーニとともに盛り付け、パスタが別添え。ナイフが必要ないほどにやわらかいホホ肉をお楽しみください。

 どうして食材として名が挙がらないのか?と不思議になるほどの美味しさがあります。そう、豚ホホ肉を知ってしまうと、もう牛には戻れなくなる…

 

≪ボーノ(美味しい)という名を冠したボーノポーク?!

 「ボーノポーク」は、イタリア語で美味しいという意味の「ボーノ」という言葉を冠し、なんとも軽々しい印象を受けますが、その実は、岐阜県の中濃ミート事業協同組合の威信にかけて育て上げた銘柄豚です。飼育地は、県内の瑞浪(みずなみ)市、山県市、揖斐(いび)市の3地域。3つの種の掛け合わせで誕生した三元豚で、そのひとつが霜降り割合を増加させる能力を持つ、岐阜県が開発育種した「ボーノブラウン」という種豚です。

 抗酸化能とオレイン酸を多く含む植物性原料を含み、飼料中のアミノ酸バランスを調整した専用に開発された飼料を与えています。この飼料を含め、徹底した管理のもとで飼育されることで、霜降り割合が一般的な豚肉の二倍にものぼり、肉自体の旨味を十二分に堪能できる上に、脂の甘味か加味されるのです。さらに、一般に流通している豚肉よりもドリップロスが少なく、肉の旨味が逃げにくいのが特徴といいます。

 飼育した全てが「ボーノポーク」というブランドを冠することはありません。県下の和牛ブランド「飛騨牛」が、霜降り具合を目視によって5等級なのか4等級なのか、はたまた3等級なのかと振り分けるように、この豚もまたロース部位を目視によって判別してゆきます。違う点は、区分けが「ボーノポーク」か「一般的な豚」の2択であるということ。

 皆様が、「ボーノポーク」という豚の名前を耳にしたことがないのも当然、徹底した管理のために多くを飼育できない上に、厳しい選別ゆえに流通量が極端に少ないのです。その、貴重な豚肉がBenoitに届いています!

 どれほどのブランド肉でも、豚肉は生では食せず、良く焼くと硬くなります。そこで、ロースの部位を厚めにカットするのですが、休ませながら断面がうっすらとピンク色になるように丁寧に焼き上げることで、しっとりとした食感とボーノポークの旨味を十二分に堪能できるように仕上げるのです。さらに、イタリアのタジャスカ村で栽培されているオリーブ「タジャスカ種」を細かくカットし、焼いた豚肉の片面にのせて盛り付けます。このオリーブの旨味と塩っからさが、いい仕事をします。

 

Longe de cochon de Gifu au sautoir, fenouil cuit et cru

岐阜県ボーノポークロース肉のソテー ウイキョウ タジャスカオリーブ風味

※ディナーのプリ・フィックスメニュー、前菜としてお選びいただけます。

 

≪国産のカマンベールチーズが、ついにこの美味しさにまで!≫

 日本屈指のタカナシ乳業と、フランスはノルマンディー地方のイズニーサントメール酪農協同組合が、本気になった。

 北海道の東南に位置する根釧地区は、酪農の産地として名高い。広大な大地には牧草が青々と生い茂る。暑さに弱い牛にとって、夏をどうしのぐかが悩みの種。皆様が夏の生乳を、軽く感じるのは皆様が夏バテしていて味覚が鈍っているのではなく、牛が夏バテをしてるからです。特に、猛暑を運ぶ南風は如何(いかん)ともしがたいもの。この根釧地区は、南からくる暑い風が、寒流である千島海流によって冷やされ、海霧となったものが根釧地区に吹き込むのです。野菜の栽培には不向きであっても、牛にとってはこれほどの好環境はないのではないでしょうか。

 この地で育まれている牛「ホルスタイン種」に加え、フランスから「ノルマンド種」を連れてきた!イズニーサントメール酪農協同組合の伝統製法と門外不出の乳酸菌を受け継ぎ、ここにタカナシ乳業が培ってきた日本の技術が融合する。「根釧地区らしい、誰も食べたことのない熟成チーズの傑作を皆様に!」という想いのもと、4年にもおよぶ研究の歳月を経て、ついに姿を現しました。

 フランスのノルマンディー地方出身のフランス人お方に、このチーズを供した時、彼はこう言った…「カマンベールチーズは、日本が発祥だったかな」と。なんとも嬉しい言葉ではないですか!皆様、気になりませんか?

 

CAMEMBERT Bries de mer

カマンベール ブリーズ・ド・メール

※ランチでもディナーでも、ご希望の際にはスタッフにお声かけください。800円(税込)~でご用意させていただきます。

 

≪季節の話 「白妙(しろたえ)の衣とは?」≫

春過ぎて 夏来たるらし 白妙(しろたえ) 衣乾(ころもほ)したり 天の香具山

 この歌は、万葉集に綴られている持統天皇の秀歌です。おや?と感じた方は、百人一首を諳(そら)んじることのできる方ではないではないでしょうか。平安時代に、一部言葉遣いが変更されているのです。なぜでしょう?解くカギは「白妙の衣」なのですが、そもそもこの言葉はなんのことなのか?昔話ででてくる「天女の羽衣(はごろも)」のことなのか?皆様、気になりませんか?

 

 関東はまもなく梅雨明けを迎えるでしょうか。猛暑な日々に加え、不安定な天気は、知らず知らずのうちに体力を奪ってゆくものです。さらに、疲労・ストレスなどが原因による免疫力の低下を招きます。皆様、十分な休息と休養をお心がけください。そして、こまめな休憩と給水をお忘れなきように。

 最後まで読んでいいただき、誠にありがとうございます。

 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com