kitahira blog

徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

2023年5月Benoit マダイとグリーンアスパラガスがBenoitで出会う!

 日本全国津々浦々、日本人にとって欠かすことのできない魚が、真鯛ではないでしょうか。美味しいだけではなく、その威風堂々たる姿は、魚の王様と称されるに相応しい。丁寧に捌き、皮を取り除いた白身をしっとりと焼き上げます。この逸材に、春の味覚「グリーンアスパラガス」を添えます。

 そこで、今季はアスパラガスを茹でるのではなく、「焼く」という調理方法をとります。水分を多く含んだ野菜だけに、焼きすぎてはべたっとなる。いい塩梅の焼き加減が、しゃくっという食感と、アスパラガス本来のコクを引き出すことになり、焼き目が香ばしさを与えるのです。さらに、鮮度が良いからこそ、生のグリーンアスパラガスをスライスし、サラダのように盛り付けます。思いのほか生アスパラガスは美味しいもので、しゃりしゃりっとした食感の心地よさに加え、春らしいさわやかさを感じることのできる一皿に仕上がります。

※アスパラガスは、時期のよって佐賀県から香川県へ、さらに東北へと移行します。

 なにやら、謎のものがマダイの脇にあります。これは、シェフの野口が、マダイ料理の味のバランを考えたとき、ふっと閃いたものらしい。焼いたアスパラガスを細かく切り、そこにエシャロットの甘み、さらにカキで特有の旨味を加えたもの。カキは柿ではなく牡蠣です。確かに!これがいい仕事をする。皆さま、気になりませんか?

 どうやら、ブノワ東京の春は西日本からやってくるようです。

Dorade au sautoir, asperges vertes, sucs de caisson

真鯛ポワレ グリーンアスパラガス

※ランチとディナー、ともにプリ・フィックスメニューの主菜として、お選びいただけます。

 

 バランスの良い美味しい料理を日頃からとることは、病気の治癒や予防につながる。この考えは、「医食同源」という言葉で言い表されます。この言葉は、古代中国の賢人が唱えた「食薬同源」をもとにして日本で造られたものだといいます。では、なにがバランスのとれた料理なのでしょうか?栄養面だけ見れば、サプリメントだけで完璧な健康を手に入れることができそうな気もします。これでは不十分であることは、すでに皆様ご存じかと思います。

 季節の変わり目は、体調を崩しやすいという先人の教えの通り、四季それぞれの気候に順応するために、体の中では細胞ひとつひとつが「健康」という平衡を保とうとする。では、その細胞を手助けするためには、どうしたらよいのか?それは、季節に応じて必要となる栄養を摂ること。その必要な栄養とは…「旬の食材」がそれを持ち合わせている。

 「春」とはどのような季節なのでしょうか。薬膳の先生の言葉を借ります。「春は陽気に誘われるかのように、気持ちが上ずってしまう時期です。」確かに、寒い冬が終わり、ぽかぽかともなると、花粉症で苦しむ中でも気持ちが高ぶってくるものです。しかし、この高揚感に、身体がついてゆかず、心と体のバランスが崩れることで体調不良を引き起こしてしまうのだというのです。

 そこで、気持ちの高ぶりを落ち着かせるために、薬膳では春には「香りの良いもの」を取り入れる。往古、この時期の日本では山菜を楽しむ習慣があります。この春を代表する山の幸の「やさしいほろ苦さ」も同じ効用だといいます。そして、「シェフは薬膳を知らないと思うけれど、旬の食材で組み立てる料理こそが薬膳の考え方そのもの」なのだと。

 季節が過ぎ去ってゆくように、柑橘も品種を変えながら、産地も西から東へと、順を追って終わりを迎えていきます。さあ皆様、香り高く心地よい酸味の利いた柑橘を、食生活の中に取り入れませんか。美味しくいただくことが、心身を健康な姿へと導くことになるはずです。疲労困憊の時には、足の赴くままにBenoitへお運びください。旬の食材を使った、自慢の料理やデザートでお迎えいたします。

 

 過ごしやすい日々ではありますが、まだ「春に三日のはれなし」と表現される時期です。この不安定な天気は、知らず知らずのうちに体力を奪ってゆくもの、油断はなりません。疲労・ストレスなどが原因で免疫力が下がっている時に、乾燥が加わると、コロナウイルスばかりではなく、風邪やインフルエンザにも注意が必要です。さらに、肌荒れやかゆみの原因にもなり、体感温度も下がります。健康のためにも、美容のためにも、程よい湿気お忘れなきように。そして、心の潤いも保ちながら快適にお過ごしください。

 最後まで読んでいいただき、誠にありがとうございます。

 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com