kitahira blog

徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

2023年5月Benoit サクラマスの美味しさを知ってしまったので、今年もメニューに名を連ねます!

 川で生まれたマスは、1年ほどその川で育まれる。後に、川の残る個体と川を下る個体とに分かれるというが、どのように決まるのかは、自然の神秘のベールに包まれていて、いまだ解明されていません。川に残ったものが「ヤマメ」であるならば、果敢に大海原へ向かうのが「サクラマス」です。

 サクラマスは、ベーリング海峡へと向かい、オキアミなどを大いに食して成長してゆきます。そして、1年後に母川(ぼせん)を目指し日本へ向かいます。この遡上する時期が、桜咲くころなので「サクラマス」と古人は名付けました。今この時期だからこそ、その極まった美味しさを堪能できる。「サクラマス」の旬は、今をおいて他にはありません。

 3年かけて母線回帰するサケとは違い、1年で戻ってくるサクラマスは、やはり脂のりが優しいもの。焼いてしまえば、ぱさぱさな鮭。そこで、身の中心まで火を通さないmi-cuit(ミ・キュイ)という調理方法を採用。これにより、しっとりとしながら、ほろっと崩れるように仕上げます。

 サクラマスの上には、甘さを引き出した新玉ねぎ、シャリシャリのスプラウトカリカリの細切りジャガイモをのせることで、味わいにアクセントを加える。ソースには、バターのコクと甘さに、心地よい白ワインと瀬戸内レモンの酸味が加わったブールブラン。そう、フランスはロワール地方の伝統料理を思わせる逸品です。

Sakuramasu au plat, primeurs de saison, beurre blanc

サクラマスのソテー 春野菜 ブールブランソース

※ランチとディナー、ともにプリ・フィックスメニューの主菜として、お選びいただけます。

 

 バランスの良い美味しい料理を日頃からとることは、病気の治癒や予防につながる。この考えは、「医食同源」という言葉で言い表されます。この言葉は、古代中国の賢人が唱えた「食薬同源」をもとにして日本で造られたものだといいます。では、なにがバランスのとれた料理なのでしょうか?栄養面だけ見れば、サプリメントだけで完璧な健康を手に入れることができそうな気もします。これでは不十分であることは、すでに皆様ご存じかと思います。

 季節の変わり目は、体調を崩しやすいという先人の教えの通り、四季それぞれの気候に順応するために、体の中では細胞ひとつひとつが「健康」という平衡を保とうとする。では、その細胞を手助けするためには、どうしたらよいのか?それは、季節に応じて必要となる栄養を摂ること。その必要な栄養とは…「旬の食材」がそれを持ち合わせている。

 「春」とはどのような季節なのでしょうか。薬膳の先生の言葉を借ります。「春は陽気に誘われるかのように、気持ちが上ずってしまう時期です。」確かに、寒い冬が終わり、ぽかぽかともなると、花粉症で苦しむ中でも気持ちが高ぶってくるものです。しかし、この高揚感に、身体がついてゆかず、心と体のバランスが崩れることで体調不良を引き起こしてしまうのだというのです。

 そこで、気持ちの高ぶりを落ち着かせるために、薬膳では春には「香りの良いもの」を取り入れる。往古、この時期の日本では山菜を楽しむ習慣があります。この春を代表する山の幸の「やさしいほろ苦さ」も同じ効用だといいます。そして、「シェフは薬膳を知らないと思うけれど、旬の食材で組み立てる料理こそが薬膳の考え方そのもの」なのだと。

 季節が過ぎ去ってゆくように、柑橘も品種を変えながら、産地も西から東へと、順を追って終わりを迎えていきます。さあ皆様、香り高く心地よい酸味の利いた柑橘を、食生活の中に取り入れませんか。美味しくいただくことが、心身を健康な姿へと導くことになるはずです。疲労困憊の時には、足の赴くままにBenoitへお運びください。旬の食材を使った、自慢の料理やデザートでお迎えいたします。

 

 過ごしやすい日々ではありますが、まだ「春に三日のはれなし」と表現される時期です。この不安定な天気は、知らず知らずのうちに体力を奪ってゆくもの、油断はなりません。疲労・ストレスなどが原因で免疫力が下がっている時に、乾燥が加わると、コロナウイルスばかりではなく、風邪やインフルエンザにも注意が必要です。さらに、肌荒れやかゆみの原因にもなり、体感温度も下がります。健康のためにも、美容のためにも、程よい湿気お忘れなきように。そして、心の潤いも保ちながら快適にお過ごしください。

 最後まで読んでいいただき、誠にありがとうございます。

 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com