kitahira blog

徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

2022年2月 季節のお話「雪間の草に春を見る」

花をのみ 待つらん人に 山里の 雪間の草の 春をみせばや  藤原家隆(いえたか)

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 藤原家隆のいう花とは、桜のことなのか梅のことなのか。彼は、まだ雪積もっている中で地面が顔をのぞかせる場所に目をやった。そこには、雪解けを待ち望んでいるかのように地から草が健気な姿をみせていたのでしょう。花が咲くことだけを待っているであろう人に、山里の雪間から姿を見せる草の春をみせることができたらな~と詠っている。

 桜は日本固有種であり、暦が周知されていない時代にあり花咲く頃が「田起こし」の目安となっていたという。お馴染みのソメイヨシノが江戸時代に育種された品種であることを考えると、「ヤマザクラ」の類だったのでしょう。万葉の時代になり、唐風文化と共に渡来した「白梅」は、漢文が宮中を席巻したように、花といえば「白梅」を指し示すようになりました。そして、時が下り平安時代「桜」が花の地位に返り咲いたのです。花だけに…山里には雪が残る時期だけに、この花は梅であるような気もします。まあ、梅でも桜でも、家隆にとってはどちらでもよく、彼が歌に込めた思いは別にあると思う。

 家隆は、花鳥風月のもつ「美」とは違うのだ!という思いを、「花をのみ待つらん人に」の「のみ」と「らん」に込めた気がします。「らん」とは平安時代の中期ごろに使われていた表現で、現在推量の「らむ」と同義だと古語辞典は教えてくれる。「(今頃は)~ているであろう」という意味になるのですが、ここに含みがあるのがこの言葉でした。視界外現在推量といい、目に見えていない現在の事柄について推量しているということ。

 梅も桜も美しい花を咲かせ、我々に愛(め)でる楽しさを与えてくれることは、間違いありません。寒々とした冬の期間を過ごしたからこそ、待ち望む春の兆しが梅であれば、春の到来を確信するのが桜なのでしょう。誰しもが春の花開くのを待ち望むのは、今も昔も変わりません。しかし、時代の潮流に流されている人々は梅や桜に執着することとなり、いまだ見えないこれらの花だけを待っている。花鳥風月を愛でる風流人は、其処彼処(そこかしこ)に見る春の兆しを見過ごしてはいけない。そう家隆は教えてくれている気がします。

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 「観梅の心 観桜の目」とは、自分が座右の銘としているものです。どこでいつ目にしたのか定かではないのですが、何か気になって調べたものの、いまだ明快な解説に出会っていません。「おまえはそれを座右の銘にしているのか?」とお叱りを受けそうなものです…四季折々のメッセージを皆様に送り続けるために、四季の移ろいを古人に教わるようになったからなのかもしれませんが、心に深く印象づいた文章でした。いったい何を言いたいのだろうか?

 そこで、考えてみました。梅の花は、まるで春という季節に問いかけるように一輪一輪と順に花開きます。桜の花は、春の到来を待ってましたといわんばかりに、いっきに満開を迎えます。この両花の特徴から思うに、「観梅の心」とは、花一輪の美しさを愛でるかのような心、そう細やかな心配りを持ちなさい。「観桜の目」とは、満開となる桜の堂々たる美しさを望む目、小さなことにとらわれない大局を見据えることのできる目を鍛えなさい。そして、花開く機を逸するな…

 勝手気ままな解釈ですが、そう大きな間違いはないような気もします。「観梅の心 観桜の目」とは、自分のようなサービスマンばかりではなく、人生を豊かにし人間社会で生きてい行くために欠かせない素質であると思うのです。さあ、皆様はどうおもわれますか?座右の銘にお悩みの方、ぜひ採用のほどなにとぞよろしくお願いいたします。

 

 立春とは名ばかりで、まだまだ寒い日は続くことでしょう。疲労・ストレスなどが原因で免疫力が下がっている時に、乾燥が加わると、コロナウイルスばかりではなく、風邪やインフルエンザにも注意が必要です。さらに、肌荒れやかゆみの原因にもなり、体感温度も下がります。健康のためにも、美容のためにも、程よい湿気お忘れなきように。そして、心の潤いも保ちながら快適にお過ごしください。

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 最後まで読んでいいただき、誠にありがとうございます。

 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

 

www.benoit-tokyo.com