kitahira blog

徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

2022年10月11月 Benoitお勧め料理「天草産真タコ」を少しでも多くの方に!可能な限り延長します

 「タコの産地といえば?」という問いに、真っ先に思い浮かぶのが兵庫県の明石(あかし)ではないでしょうか。高品質なうえに、水揚げ量が日本一を誇ります。これほどのタコ銘産地でありながら、存亡の危機に晒された時がありました。今から50年以上も前のこと、この海域に大規模な赤潮が発生し、タコが全滅に近い状況に陥ったのです。タコ産地としての復活を願う明石の漁師さんは、美味しいタコを探すべく全国を行脚したといいます。そして、彼らが選んだのが、熊本県天草のマダコでした。そこで、明石の漁師さんは天草へ漁船で訪れ、100tほどを譲り受けた後に明石の海に放流したのです。

 有明海に面した天草の北側には、「ありあけタコ街道」と愛称がついているほど。しかし、Benoitに届けられるのは上天草の南に位置している柳漁港で水揚げされたものです。先の画像は、上天草と天草本島の間です。をご覧いただくと分かるように、島々がひしめいている。画像の右上の島のさらに右へと向かった先に、柳漁港があります。

 島嶼郡(とうしょぐん)の海の下は複雑な岩礁地帯を形成しており、小エビやカニがこれでもかと棲みついている。そして、これがタコの餌となり、たらふく食べたこの海域のタコの旨味となるのです。さらに、海流が速い海域でだけに、タコの身がしまる。丁寧に下ごしらえされ、やわらかく茹でたマダコは、噛めば噛むほどにタコらしい濃ゆい旨味が口に広がります。

 柔らかく茹でた天草のマダコは、温(ぬく)いまま、ギリシャ風と銘打たれた野菜と一堂に会します。この野菜のギリシャ風とは、セロリ、ニンジン、タマネギ、カリフラワー、それにラディッシュ。レモンにコリアンダーの種を使い、絶妙な火加減で調理してゆき冷蔵庫で一晩休ませたもの。コリアンダーパクチーのことで、苦手の方の多い香草かと思います。しかし、このコリアンダーの種は、うんともすんともいわない味気ない食材。ところが、野菜とともに熱を加えることで、野菜本来の甘さを引き出すのです。

 この前菜は、天草産がどれほどの逸材であるかを教えてくれる。さらに、野菜それぞれの食感がリズミカルに口中に響き、野菜それぞれが甘さ旨さの旋律を奏でます。この美味しさに酔いしれ、Benoitの窓へと目を移すと…そこにはエーゲ海がひろがっている…かもしれません。

Poulpe marinée, légumes à la grecque

天草産真タコと野菜のマリネ ギリシャ

※11月末まで!? ランチのプリ・フィックスメニュー、前菜としてお選びいただけます。

 日ましに秋めく今日この頃。目に見える季節の移ろいの加え、秋風は秋の薫りも運んできます。ここはひとつ、文明の利器を遠慮し、五感を利かせて秋を探してみるのも一興ではないでしょうか。そして、秋の味覚が恋しくなった際には、足の赴くままにBenoitへお越しください。深まり行く秋と歩調を合わせるように、旬の食材がメニューをもって皆様をお迎えいたします。

 最後まで読んでいいただき、誠にありがとうございます。

終息の見えないウイルス災禍です。皆様、油断は禁物です。十分な休息と睡眠、「三密」を極力避けるようにお過ごしください。「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、笑いながらお会いできることを楽しみにしております。

 皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より切にお祈り申し上げます。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com