kitahira blog

徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

2023年6月7月Benoit「南仏の港町マルセイユといえば、フランスの漁師料理 ≪ 魚のスープ ≫ なり!」

 Soupe de POISSON(魚のスープ)といえば、南フランスの港町マルセイユの伝統的な漁師料理です。ブイヤベースとは違い、煮込んだ魚を食することをせずに、旨味をスープに出しきったもの。Benoitでは、魚そのものの美味しさをお楽しみいただきたく、エビ・カニ・貝類を一切加えず、ワインも使わず、じっくりと時間をかけてこしらえてゆきます。

 このスープを仕込む魚は、「POISSON de roche」という表現でまとめられます。「roche(岩)」だけに「岩魚」やら「磯魚」との訳をあてています。確かに、荒波の磯でもまれにもまれた魚種は美味しいものが多い。しかし、旨味の多い魚が磯ばかりではないことを、深い魚文化の日本人は知っている。

 とはいえ、Benoitのネットワークをもってしても、日本全国から選りすぐりの旬の魚を、数種にもわたり鮮度良く仕入れることは不可能です。そこで、築地から始まり今は豊洲へ、ゆうに80年を超える歴史を持つ老舗魚卸「大芳」の宇田川さんの目利きに頼ります。

 今は、北九州や四国を水揚げ地とする、マゴチにホウボウ、オニカサゴ。さらに、小鯛にイトヨリダイ。7月も後半になると、北日本青森県や北海道からオニカジカも仲間入りすることでしょう。小鯛やイトヨリダイ以外の4種の魚は、似ても似つかぬ容姿ですが、分類上では「カサゴ目」です。ごつごつだったり、とげがあったり、ぬるぬるしていたりと、自分のような素人が捌くには難儀な魚たちで、思いのほか可食部が少ないもの。しかし、見た目からでは想像もつかないほど繊細で美味なる身質なのです。さらに、そのごつい頭や骨からは、得も言われぬ上質な旨味をとることができる。

 どう調べても確証は得られませんでしたが、「roche」とは、そういう「ごつごつの魚」を総称して名付けたのではないとも思うのです。しかし、オニカサゴにオニカジカ…「オニ」「オニ」と、見たこともないのに、鬼にも魚にも失礼千万な話…

 皆様の目の前で、スープがそそがれた直後から、磯の香りに包まれます。濃厚な茶色を帯びた深みのあるオレンジ色の液体は、透明感こそないですが輝きがある。濃厚ながら、甲殻類のような濃さではなく、さらりとした感さえあるものの、余韻に感じる魚の美味しさに酔いしれ、猛暑に疲れた体を癒してくれるはずです。一口お召し上がりいただき、目を閉じれば潮騒(しおさい)が耳に届き、目を開ければBenoitの窓越しに地中海が望める…かもしれません。

Soupe de POISSON de roche, rouille et croûtons aillés

魚のスープ ルイユとクルトン

※ランチとディナーのプリ・フィックスメニュー、前菜として+1,000円でお選びいただけます。

 

 バランスの良い美味しい料理を日頃からとることは、病気の治癒や予防につながる。この考えは、「医食同源」という言葉で言い表されます。この言葉は、古代中国の賢人が唱えた「食薬同源」をもとにして日本で造られたものだといいます。では、なにがバランスのとれた料理なのでしょうか?栄養面だけ見れば、サプリメントだけで完璧な健康を手に入れることができそうな気もしますが、これでは不十分であることを、すでに皆様はご存じかと思います。

 季節の変わり目は、体調を崩しやすいという先人の教えの通り、四季それぞれの気候に順応するために、体の中では細胞ひとつひとつが「健康」という平衡を保とうとする。では、その細胞を手助けするためには、どうしたらよいのか?それは、季節に応じて必要となる栄養を摂ること。その必要な栄養とは…「旬の食材」がそれを持ち合わせている。

 その旬の食材を美味しくいただくことが、心身を健康な姿へと導くことになるはずです。さあ、足の赴くままにBenoitへお運びください。旬の食材を使った、自慢の料理やデザートでお迎えいたします。

 

 関東はまだまだ梅雨の最中です。この寒暖乾湿の差は、知らず知らずのうちに体力を奪ってゆくもの。さらに、疲労・ストレスなどが原因による免疫力の低下を招きます。皆様、十分な休息と休養をお心がけください。そして、こまめな休憩と給水をお忘れなきように。

最後まで読んでいいただき、誠にありがとうございます。

一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。皆様のご健康とご多幸を祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com