kitahira blog

徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

2025年Benoitの夏!「夏熱れ、Benoit自慢の料理でのりきれ!」のご案内です。

草熱れ(くさいきれ)」

 生きとし生けるものにとって欠かすことのできないものが、空気と水、そして太陽光です。とはいうものの、何事にも限度がある。これから続くであろう猛暑な日々に、昆虫や動物であれば日陰に逃げることも許されるが、植物であるとそうはいかない。屈強な樹々とは違い、草となるとあまりにも弱弱しさを感じるものです。そこで、古人は耐え忍んでいるのだとみた。

 そこで、夏の強烈な陽射しを浴び、むわっとする熱気が叢叢(むらむら)よりムラムラと立ち上る光景を、古人は「草熱れ」と表現しました。草が生い茂ることを「叢叢(そうそう)」といいますが、草叢(くさむら)というように、ここはあえて「叢叢(むらむら)」と読みたい…

 「草熱れ」の言葉からにじみ出る、真夏の熱気と夏草の力強さ。過ごしやすい夏などありようもなく、それが夏であり、ありのままを受け入れなさいと、夏草は教えてくれているのでしょうか。どれほど美しい言葉で表現されようとも、暑いものは暑く、知らず知らずのうちに体力を奪ってゆくものです。そこで、皆様にはBenoitでは旬の食材を美味しくお召し上がりいただくことで、今夏の「熱れ」を乗り越えていただきたく、「夏熱(いき)れ!Benoit自慢の料理でのりきれ!」をご紹介させていただきます。

 

夏熱れ、冷製ヴィシソワーズスープでのりきれ!

 冷たいスープで火照った身体を内側から冷まし、食欲を呼び覚ます。かつてアメリカ合衆国で誕生したという冷製「ヴィシソワーズスープですが、どうも英語っぽくはないネーミングではないですか。それもそのはず、考案者であるシェフはフランスのVichy(ヴィシー)の出身だった。この町は、フランスを悠々と流れるロワール川を遡り、遡りさらに遡り、フランスの中央部辺りにまで達したところにヴィシーの街があります。そこで、子供の頃にお母さんが冷たく供してくれたジャガイモのスープが原点にあるのだといいます。

 お馴染みの食材であるジャガイモですが、Benoitはこの食材にもこだわりたい。今回は、高知県高知市に隣接する吾川郡(あがわぐん)いの町(ちょう)に畑を有する水田Farmさんが、丹精込めて育て上げたジャガイモ「デジマ」です。畑に何も植わっていないときは、まるで赤いフィルター越しに景色をみているかのような錯覚を覚えるほど。この赤土は、ミネラル豊富という利があるものの、湿ると固まる性質がある。そこで、彼らは、意図的に腐植物質を土壌中に増やすようにしてこれを改善。この肥沃な地で、彼らはジャガイモ「デジマ」を育て上げる。それを秋に収穫し、自分が全幅の信頼をよせる八百屋sanukisさんが丁寧に冷蔵庫で寝かせに寝かせ、旨さを最大限に引き出した逸品をBenoitに送り出してくれているののです。そして、これが冷製ヴィシソワーズスープへと姿を変える。

 ジャガイモという馴染みの素材が持ちうる繊細な旨味を生かすために、クリームを極力減らし、ミルクでのばしてゆきます。これだけでも美味しいのですが、そこへプルンと鶏ブイヨンジュレが加わることで、味わいに深みが増してきます。そして忘れてはいけないものが、バターをたっぷりつかったクルトンです。「後のせサクサク」とすることで、香ばしさと心地よい食感が生まれるのです。

 全てを混ぜるように馴染ませてお召しあがりいただくのも良いですが、敢えて混ぜないのも一興なり。スプーンですくう場所場所によって多彩な表情を見せてくれます。色とりどりに咲きほこるアジサイならぬ、Benoitヴィシソワーズスープの味彩をお楽しみください。このヴィシソワーズスープ、次に魚のスープをお選びいただいても自分は止めません。というよりも、お勧めしたいぐらいです!

VICHYSSOISE rafraîchie, garniture taillée

ジャガイモの冷製スープ “ヴィシソワーズ”

※ランチとディナーのプリ・フィックスメニュー、前菜としてお選びいただけます。

 

夏熱れ、日本が夏ならばフランスも夏!南仏の伝統料理「Soup de Poisson」でのりきれ!

 Soupe de POISSON(魚のスープ)といえば、南フランスの港町マルセイユの伝統的な漁師料理です。ブイヤベースとは違い、煮込んだ魚を食することをせずに、旨味をスープに出しきったもの。Benoitでは、魚そのものの美味しさをお楽しみいただきたく、エビ・カニ・貝類を一切加えず、ワインも使わず、じっくりと時間をかけてこしらえてゆきます。

 このスープを仕込む魚は、「POISSON de roche」という表現でまとめられます。「roche(岩)」だけに「岩魚」やら「磯魚」との訳をあてています。確かに、荒波の磯でもまれにもまれた魚種は美味しいものが多い。しかし、旨味の多い魚が磯ばかりではないことを、深い魚文化の日本人は知っている。

 とはいえ、Benoitのネットワークをもってしても、日本全国から選りすぐりの旬の魚を、数種にもわたり鮮度良く仕入れることは不可能です。そこで、築地から始まり今は豊洲へ、ゆうに80年を超える歴史を持つ老舗魚卸「大芳」の宇田川さんの目利きに頼ります。

 今は、北九州や四国を水揚げ地とする、マゴチにホウボウ、オニカサゴ。さらに、小鯛にイトヨリダイ。7月も後半になると、北日本青森県や北海道からオニカジカも仲間入りすることでしょう。小鯛やイトヨリダイ以外の4種の魚は、似ても似つかぬ容姿ですが、分類上では「カサゴ目」です。ごつごつだったり、とげがあったり、ぬるぬるしていたりと、自分のような素人が捌くには難儀な魚たちで、思いのほか可食部が少ないもの。しかし、見た目からでは想像もつかないほど繊細で美味なる身質なのです。さらに、そのごつい頭や骨からは、得も言われぬ上質な旨味をとることができる。

 どう調べても確証は得られませんでしたが、「roche」とは、そういう「ごつごつの魚」を総称して名付けたのではないとも思うのです。しかし、オニカサゴにオニカジカ…「オニ」「オニ」と、見たこともないのに、鬼にも魚にも失礼千万な話…

 皆様の目の前で、スープがそそがれた直後から、磯の香りに包まれます。濃厚な茶色を帯びた深みのあるオレンジ色の液体は、透明感こそないですが輝きがある。濃厚ながら、甲殻類のような濃さではなく、さらりとした感さえあるものの、余韻に感じる魚の美味しさに酔いしれ、猛暑に疲れた体を癒してくれるはずです。一口お召し上がりいただき、目を閉じれば潮騒(しおさい)が耳に届き、目を開ければBenoitの窓越しに地中海が望める…かもしれません。

Soupe de poisson de roche, rouille et croûtons aillés   

魚のスープ ルイユとクルトン

※ランチとディナーのプリ・フィックスメニュー、前菜として+1,500円でお選びいただけます。

 

夏熱れ、脂がぱんぱんにのったイサキでのりきれ!

 東北地方以南の海藻生い茂る岩礁域を棲み処にしているイサキ。淡白な味わいの白身で、塩焼きで食べるというイメージをお持ちの方も多いと思います。しかし、旬の名産地のイサキともなると、この固定観念が覆ります。対馬海流や豊後水道でもまれにもまれ、豊富な小エビのようなアミ類やシラスなどの仔魚をたら食(は)んでいるからこそ、きれいな脂がのりにのった黒光りするパンパンの体系なのです。だからこそ、長崎県大分県のイサキは、他に類を見ないほどの美味しさを誇ります。参考までに、魚の鮮度は目の澄み具合で推し量るといいますが、イサキ鮮度に関係なく目が白濁するため、参考になりません。

 Benoitだけに、お刺身で楽しむわけにはゆきません。丁寧に下ごしらえされた、見るも美しい切り身に、最後の一手間である「焼き」という、簡単そうで奥の深い最後の工程が加わります。食材が持ちうる美味しさが、下ごしらえが、全て水泡に帰するかもしれません。「生」ではないが焼き過ぎない。言うは易く行うは難しとは、このことでしょう。職人としての経験に裏打ちされた「焼きの技」が、イサキのさらなる美味しさ引き出すのです。

 この時期のイサキは、「麦わらイサキ」と呼ばれ、夏を告げにくる魚だといいます。そこで、新樹を想わせるような青々とした夏を代表する野菜を添えたいものです。ズッキーニに、インゲン豆やツルムラサキ空心菜などの旬を迎えている緑野菜を細かく切り混ぜ、イサキの下に広げる。野菜それぞれの内包する甘さと心地よいヴィネガーの酸味が、これほどまでに相性が良いものだったのかと思わずにはいられません。

 イサキは「梅雨イサキ」とも呼ばれています。梅雨時期の寒暖乾湿の差が厳しい日々が、知らず知らずのうちに体力を奪ってゆくものです。そこで、夏の到来を教えてくれたイサキと夏の緑野菜を美味しくいただくことで、乗り切ろうではありませんか。旬の食材には、今我々が欲している栄養が満ち満ちているのですから。そうそう、Benoitのイサキは、7月末で夏を告げ終わります!

ISAKI au plat, légumes verts, sucs de cuisson

イサキのソテー 緑野菜

※ランチとディナー、ともにプリ・フィックスメニューの魚料理としてお選びいただけます。

 

夏熱れ、日本が夏ならばフランスも夏!南仏の逸材「Agneau de Lozère」でのりきれ!

 「品質と特徴が、特殊な地理的環境に起因する」という大原則のもとに、EU加盟国で批准されているのがAOP(原産地呼称保護)。この厳格な基準よりも少しだけゆるくしたものがIGP(Identification Géographique Protégée / 地理的表示保護)というもので、「生産地に起因する品質、社会的評価、特徴がある」という解釈です。基準が緩和されたとはいえ、もちろん生産地が限定され、栽培・飼育に厳しい条件があるのです。

 今回、Benoitに届いている仔羊は、このIGP認定を受けている「Agneau de Lozère (アニョー・ド・ロゼール)」です。南フランスに位置する、かつてのLanguedoc-Roussillon(ラングドック・ルーション)地域圏とMidi-Pyrénées(ミディ・ピレネー)地域圏が合併してできたOccitanie(オクシタニー)地域圏の、北東に位置するのがLozère(ロゼール)県。この山岳部は、石が多く痩せた土壌で乾燥した気候から、2000年以上も前から羊の飼育が盛んだったという歴史を持ちます。

 この飼育環境のもとで、自然に乳離れするまで母羊に哺乳させ、人工飼料は与えないなどという、厳しい規定をクリアしたもののみがアニョー・ド・ロゼールを名乗ることができます。その肉はピンクがかった白色が美しく、肉質は絹のように滑らかで、きめが細かく引き締まっており、脂肪は硬く、ほのかに草の香りがする気がします。

 仔羊は丁寧にトリミングを施し、背肉を表面に焼き色を付け、ふつふつとしたバターをふりかけながら、ゆっくりゆっくり熱を加えてゆく。この魅惑的な香りをどう表現したものか。表面には美味しそうな焼目がつくが、中はまだ生のままです。肉が内包している温まった肉汁を利用し、中からじっくり熱がゆきわたるように、温かい肉部屋で休ませロゼ色に焼きあげます。この美しい焼色なくして、仔羊の美味しさを味わえないでしょう。

 トマト、ズッキーニ、ナスにピキオス(バスクパプリカ)と彩り豊かな夏野菜にパルメザンチーズを振りかけオーブンへ。チーズが溶けてふつふつとしたところで、仔羊とともに盛り付けます。目の前に運ばれてきた時、仔羊の焼き色と夏野菜のグラチネの色のコントラストが目を引き、甘い野菜と焼いたパルメザンチーズの香りが漂います。そこへ、仔羊の旨味の凝縮したソースを、そっとお肉へかけてゆく。全てが一堂に会する時、なぜシェフがお勧めするのか、お分かりいただけるはずです。

Agneau rôti, légumes d’été légèrement gratinés 

フランス産仔羊のロースト 夏野菜のグラチネ

※ランチとディナーのプリ・フィックスメニュー、主菜として+2,000円でお選びいただけます。

※産地が変更になることもあります

 

 バランスの良い美味しい料理を日頃からとることは、病気の治癒や予防につながる。この考えは、「医食同源」という言葉で言い表されます。この言葉は、古代中国の賢人が唱えた「食薬同源」をもとにして日本で造られたものだといいます。では、なにがバランスのとれた料理なのでしょうか?栄養面だけ見れば、サプリメントだけで完璧な健康を手に入れることができそうな気もしますが、これでは不十分であることを、すでに皆様はご存じかと思います。

 季節の変わり目は、体調を崩しやすいという先人の教えの通り、四季それぞれの気候に順応するために、体の中では細胞ひとつひとつが「健康」という平衡を保とうとする。では、その細胞を手助けするためには、どうしたらよいのか?それは、季節に応じて必要となる栄養を摂ること。その必要な栄養とは…「旬の食材」がそれを持ち合わせている。

 その旬の食材を美味しくいただくことが、心身を健康な姿へと導くことになるはずです。さあ、足の赴くままにBenoitへお運びください。旬の食材を使った、自慢の料理やデザートでお迎えいたします。

 

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最後まで読んでいいただき、誠にありがとうございます。

一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。皆様のご健康とご多幸を祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com