kitahira blog

徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

≪ひうらの里のすもも≫のクラフティのご案内です。

行く先も まだ遥かなる 山みちに まだき聞こゆる ひぐらしのこゑ  藤原輔伊(すけただ)

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 山道を歩いていると、目的地にはほど遠いにもかかわらず、早くもヒグラシの声が聞こえてきたではないか。ヒグラシの寂しい声が山間に響き渡る。かなかなかな…独特の澄んだ声色は、夕暮れが迫ってきていることを教えてくれる。さあ、闇夜になる前に先を急ごうではないか。

 今の世は、「三密」を回避せよと識者の方々が連日のように口にする。真言宗の開祖である空海は、我々に「三密」の大切さを説く。空海の出生地は讃岐の国、いまでいう香川県。今回ご紹介する特選食材を育んだ地も香川県。なにかと繋がりを感じるのは、ただの偶然なのでしょうか。空海の「三密」とはいかに?

 今回は「香川県ひうらの里の旅物語」と銘打ち、前編≪いざ!飯田桃園さんへ≫、中編≪飯田桃園さんのご紹介≫、後編≪さあ、結願へ≫をブログに書いてみました。このご案内は、このメールの最後にリンク先を添付させていただきます。

 

 さて、香川県といえば、「讃岐うどん」と真っ先に思い浮かべるのではないでしょうか。香川県の人にとっては欠かすことのできない料理であり、もちろん美味しいとくる。シンプルな料理だからこそ、素材やうどん制作過程に手を抜いてはいけないもので、なかなか奥が深いものです。

 そのうどんの名声に隠れてしまっているのですが、香川県には美味しい食材が豊富にあるのです。瀬戸内海の海産物はもちろん、讃岐平野には多種多様の美味なる農産物が育まれています。「グリーンアスパラガス≪さぬきのめざめ≫」は、Benoitの春の食材として確固たる地位を得ております。

 この平野の特徴は、平野部に丘陵が点在していること。香川県は北側を瀬戸内海と面しているため、この海を背にした南側の斜面を利用することで、美味しい果実を実らせることがきるのです。そこで、昨年に続き、今年も、さぬき市で長年にわたり代々モモとスモモ栽培を手掛けるのが、飯田桃園さんからスモモを購入させていただいております。

 輸送に耐えることのできる完熟具合ぎりぎりまで収穫を待ち、Benoitへ送り出す彼らのスモモは、芳醇な香り、弾力のある食感に溢れ出てくる果汁、スモモらしい心地良い酸味。品種が変わるたびごとに、その美味しさに魅せられます。飯田桃園さんの果樹園は「ひうらの里」と呼ばれ、江戸時代からモモ・スモモの栽培を続けているのだといいます。

 代々続く栽培の歴史は、ひうらの里で美味しいモモとスモモが実ることを証明しているようなもの。飯田桃園さんが、どのような果樹園なのか?気になることと思います。そこで、どれほどの果樹園であるのか?さぬき市の旅路とともにブログでご紹介させていただきます。リンク先はこのメール最後に記載いたします。

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 飯田桃園さんより直送されるスモモは、アラン・デュカスグループのアジア圏を統括するフランス人パティシエを納得させるに十分な美味しさです。今年のデザート年間計画を立てる際に、「昨年のスモモは今年も購入できますか?」と自分に問いてきたほど。もちろん、返事は「もちろん、喜んで!」です。飯田さんに何も確認せずに勝手に返事を…

 7月のスモモ「大石早生」から始まり、「新大石」「フランコ」「ソルダム」と続き、今は「太陽」です。画像のスモモが白く粉拭いて見えるのですが、これは残った農薬などではありません。キュウリやブドウなどにも見ることができる、「ブルーム」と呼ばれるものです。健全な植物自体がもっている、抗菌能力のひとつです。手間暇を惜しまず、健全に育てているかの証でもあります。

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 今期もまた、スモモの特徴でもある酸味を利用し、バニラの風味豊かな熱々のデザート「クラフティ」というスタイルに仕上げていきます。クラフティは、甘酸っぱいグリオットチェリーやルバーブで仕上げることの多いフランス伝統のデザート。これを、同じく酸味が特徴のスモモで、ましてや飯田桃園さんの逸品であれば、美味しくないわけがありません。

 Cookpotと名付けられた耐熱の器の中に、アーモンドパウダーをたっぷりと。フルーツは、果皮の内側と種の周りに美味しさが蓄えられます。さすがにスモモの種は大きいので、取り除きますが、果皮を残してくし切りにし、器の中に盛り付けてゆきます。

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 そこへ、卵にクリームを加えたアパレイユと呼ばれる生地をそそぎ入れ、そしてオーブンへ。いたってシンプルな理由は、スモモの美味しさを最大限に生かすためであり、シンプルだからこそスモモが美味しくなければ、美味しいデザートには仕上がりません。

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 焼き上がったスモモのクラフティは、魅惑的なバニラの甘い香りをはなってきます。口に含むと、卵とクリームの焼き上がった時の、あの優しくも滑らかな味わい、さらにアーモンドの香ばしさが加勢する。ごろごろと入っているスモモは、熱が入ることで甘みが引き立ち、酸味がまろやかになり、これまた美味なり。

 レ・リボーと呼ばれる、低脂肪発酵ミルクで仕上げたヨーグルトのようなアイスクリームとともに、皆様のテーブルへお持ちいたします。熱々のスモモのクラフティの上に、このアイスクリームをのせてお召し上がりいただくと、溶けかけのアイスクリームとの得も言われぬ相性をお楽しみいただけると思います。

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Clafoutis aux PRUNES

香川県“ひうらの里のすもも”のクラフティ

 

 ランチでもディナーでも通常のプリ・フィックスメニューの選択肢の中で+500円でお選びいただいております。しかし、この長文メールを受け取っていただいている皆様には、この追加料金なくお楽しみいただきたいと思います。2020年Benoitの「スモモのクラフティ」は、9月末までの予定です。

 ここ最近の動向の読めない台風の数々、天候の亜熱帯化が、どれほど飯田桃園さんのスモモに影響を及ぼすか予想がつきません。そこで、ご予約の際に、「スモモ希望」とお伝えいただければ、準備できる数が少ない場合には確保させていただきます。このメールへの返信、土日や急ぎの場合には、

benoit-tokyo@benoit.co.jp

よりお願いいたします。もちろん電話でもご予約は快く承ります。なにゆえ自然のことゆえ、ご理解のほどなにとぞよろしくお願いいたします。

 香料や化学調味料でも加えない限り、素材以上の美味しさを出すことはできません。その素材の持ちうる美味しさを、生かすも殺すも調理人しだい。優れた調理人とは、素材を見極め、その旨味を最大限に引き出すこと。なぜ2年続けて飯田桃園さんのスモモをBenoitが購入しているのか?飯田桃園さんが丹精込めて育てたスモモが、あまりにも美味だからです。皆様、気になりませんか?

 

 今回の特選食材を育んだ、香川県さぬき市。思いのほか歴史深い地でした。昨今の新型コロナウイルス災禍は、旅行という楽しみを奪ってしまったこともあり、今回は旅をするようにお楽しみいただこうと、「香川県ひうらの里の旅物語」と銘打ち、前編≪いざ!飯田桃園さんへ≫、中編≪飯田桃園さんのご紹介≫、後編≪さあ、結願へ≫とブログでご紹介させていただきます。

 讃岐国で聖を受けた、真言宗の開祖である空海は、我々に「三密」の大切さを説く。今回ご紹介する特選食材を育んだ地も讃岐国。なにかと繋がりを感じるのは、ただの偶然なのでしょうか。はて空海の「三密」とはいかに?そして、今回は冒頭の一句に、さらなる感慨深さを感じ取っていただけると思います。

kitahira.hatenablog.com

 

 香川県さぬき市の旅路は時間のあるときにし、飯田桃園さんがどのような果樹園なのか?気になる方は、一足先に中編≪飯田桃園さんのご紹介≫をご訪問いただけると幸いです。

kitahira.hatenablog.com

 

 立秋を迎え、暦の上では秋が始まっています。しかし、まだまだ猛暑な日々が続くようです。自分の体力を過信し、無理な行動は禁物です。十分な休息と睡眠、こまめな給水と塩分補給をお心がけください。木陰に入り、葉の間を抜ける心地よい薫風(くんぷう)、陽射しにきらめきながら重なり合う結び葉、なんと美しい光景かと夢心地となるも良いですが、夢の(意識の無くなった)世界から抜けることができなくならないよう、ゆめゆめお忘れなきようにお気をつけください。

 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com