寒中お見舞い申し上げます。
旧年中は並々ならぬご愛顧を賜り、誠にありがとうございます。新年を迎え、皆様より賜りましたご温情は徒(あだ)や疎(おろそ)かにせず、倦(う)まず弛(たゆ)まず研鑽の日々に努めます。「観梅の心、観桜の目」を忘れることなく、少しでも皆様のご期待のお応えできるよう、万全の準備をもってお迎えいたします。何かご要望・質問などございましたら、何気兼ねなくご連絡ください。皆様が、そして皆様のご家族ご友人の方々が、幸多き年となりますよう、青山の地よりお祈り申し上げます。
「冬至 冬中 冬はじめ」とはよく言ったもので、2021年1月5日「小寒」、20日「大寒」と2月3日までの「立春」までは、暦の上でもまだまだ冬であり、寒さ厳しい期間です。明治時代に太陰太陽暦からグレゴリオ暦へと改暦したこともあり、多少の季節の誤差があろうとも、今も昔もこの時期は寒かったはずです。
かつて暖房器具が乏しい頃にあり、暖を取る方法は薪(たきぎ)を燃やすことでした。しかし、屋内では火災の危険が付きまといます。昔の日本は住居が密集しているため、一歩間違うと町自体が焼け野原となり消滅してしまう可能性すらありました。そこで、先人たちは、「炭」という画期的な逸材を発明したのです。
この炭の登場が、どれほど人々の生活を変えたことでしょうか。暖房器具としては、今のストーブとは比べてはいけないほど微力ながら、古くは平安時代に始まり、戦後の高度成長時代にまでの長きにわたり、我々の生活に密接にかかわってきました。
この炭の利点は、囲炉裏や火鉢の中で、尉(じょう)の中で種火の残った炭を保管することができたことです。火鉢の中で、炭を最後まで燃しきった時、グレーがかった白い灰となる。これが尉である、この中に火のついた炭を埋(うず)めておくことで、種火を残しておけるのです。これを「埋み火(うずみび)」や「埋(い)け火」といいます。ライターなどあろうはずもなく、火を起こすことが難儀な時代です。なんという生活の知恵でしょうか。
埋(うづ)み火の あたりに冬は 円居(まどゐ)して むつがたりする ことぞ嬉しき 隆元(りゅうげん)
昼間なのか夜更けなのか、寒さ厳しい中で、さあ火鉢を囲もうではないか。埋み火を熾(おこ)し、手をあてて暖をとろうではないか。この親しい仲間と火鉢を囲みながらの「語らい」とは、なんという嬉しいひとときではないか。
今年の年始は、ご自宅で過ごされた方が多いのではないでしょうか。火鉢や囲炉裏は無くとも、家族で食卓やコタツを囲んだ時に、普段は気にも留めないことが話題となり、心地良いひとときを過ごされたのではないでしょうか。この「むつがたり」が嬉しいことは、今も昔も変わりません。
昨今のコロナウイルス災禍で失いつつあるのが、この「むつがたり」、「語らい」ではないでしょうか。オンラインでの里帰りは、確かに便利で有用でした。しかし、画面の向こうには本人がいるにもかかわらず、違和感を覚えずにはいられません。これが行き過ぎた場合、現実と架空の世界の区別がなくなってしまう気がするのです。AIの発達により、画面の向こう側に新しい世界ができないとも言い切れません。極論を言ってしまえば、画面の向こうに映る人が、今生きているのかどうかすら分からなくなる。
なぜ、人は人と会いたくなるのか。オンラインは、どんなに声色が似ていても、やはり電子音である。音には耳が聞き取れなくとも、響く音階があるはずです。だから、目と目を合わせ、触れることのできる距離で語らい合うことを欲しているのではないでしょうか。馴染みの言葉で、聞き慣れた声色は、なんと安心感を与えてくれることでしょうか。
かつて、古代日本人が、漢字という文字を知った時、どれほどの感銘を覚えたことでしょうか。すぐに取り入れることになり、大和朝廷の公文書などは「漢字」で記載されることになります。唐風文化が大和朝廷を席巻する中で、額田王(ぬかたのきみ)を筆頭に、万葉歌人の活躍が今の日本語の礎を築いたと考えています。言語が発展途上であるとき、人は歌によって気持ちを伝えてゆきました。中国語では漢詩であり、日本語では和歌でした。漢字の伝来が、書き記すことを容易にしたこともあり、天皇を含めた公家の中では、漢詩が教養の基本となりました。
しかし、この圧倒的なこの漢字文明の中にあり、日本の言語は中国語になっていません。当時の先人たちは、漢字の読みを当て字にするように、和歌を書き遺したのです。ここに万葉仮名が誕生し、日本最古の歌集「万葉集」が誕生します。今馴染みの「ひらがな」は、平安時代まで待たねばなりません。なぜ、中国語にならなかったのでしょう。
いまでこそ「山」に「川」と漢字で書き記しますが、かつては「や・ま」に「か・わ」であり、この「や」や「か」に何か意味があるということでもなく、「やま」や「かわ」という音の響きが、日本人の心に染み入ったのでしょう。この言葉には、日本人が読み取ることのできる「温もり」が含まれているのです。この感覚は、教えられるものでもなく、ましてAIに表現できるものでもありません。日本語でありながら、この心に響く言葉こそが、「大和言葉」です。我々は、知らず知らずに連綿と受け継いできたのです。
温もりのある言葉での「語らい」の場を、失ってはいけません。この思いの下、Benoitを語らいの場としていただきたく、新春特別プランをご用意させていただきました。皆様に安心安全にお運びいただけるよう、コロナウイルス対策に万全を尽くしお出迎えさせていただきます。
≪新春特別プランのご案内です。≫
降り注ぐ太陽の陽射しと、その土地土地に吹く風が育て上げた「美しい(令)」季節の冬食材は、ありあまるほどの「風味」を内包しています。その風味豊かな食材の「和」する料理の数々は、美味しさが満ち溢れています。それを、騒ぐではなく、笑顔で「語らい」ながらの食事こそ、体の内側から湧き出でる力となり、我々をウイルス災禍から守ってくれることでしょう。「口福な食時」のひとときこそ、我々の心身を活力ある本来の姿へと、導いてくれるはずです。
そこで、日頃より並々ならぬご愛顧を賜っている上に、自分よりご案内している長文レポートに目を通していただけている皆様の労に報いるため、旬の食材をつかった美味なる料理を食することで、無事息災に日々を過ごしていただきたい、との想いを込め、≪新春特別プラン≫をご案内させていただきます。期間は、メールを受け取っていただいた日より、2021年1月末まで。ご予約は、このメール(kitahira@benoit.co.jp)への返信をご利用ください。お急ぎの場合には、Benoitメールアドレス(benoit-tokyo@benoit.co.jp)より、もちろん電話でもご予約は快く承ります。
新春特別プラン
ランチ |
前菜x2+メインディッシュ+デザート |
5,500円→4,500円(税サ別) |
ディナー |
前菜x2+メインディッシュ+デザート |
7,800円→6,800円(税サ別) |
ランチ/ディナー |
Crémant de Bourgogne Cuvée Agnès |
4,000円(税サ別) |
※プリ・フィックスメニューの料理内容は、当日にメニューをご覧いただきながらお選びいただきます。ご希望人数が8名様以上の場合は、ご相談させてください。
さらに、Benoitシェフソムリエからのお誘いがございます。蔵元さんと直接交渉をすることで、輸入が実現した、Benoitでしか購入できないスパークリングワインを、新春特別プランととともにお楽しみいただきたく、特別価格にてご案内させていただきます。
Crémant de Bourgogne Cuvée Agnès Vitteaut-Alberti 4,000円(税サ別)
このキュヴェ・アニエスは、スパークリングワインの専門家、ヴィトー・アルベルティが手掛ける最高傑作です。コート・ド・ボーヌとシャロネーズの両地区の葡萄シャルドネ種のみで醸され、瓶内熟成もシャンパーニュに匹敵する3年間。華やかな香りと凛とした酸味のバランスが秀逸、いついかなる時に飲んでも、納得していただける美味しさです。
※本数に限りがございます。ご希望の際には、このメールへの返信でご希望本数をお伝えいただけると幸いです。
≪2021年の干支「辛丑(かのとうし)」のお話です。≫
昨年に端を発した新型コロナウイルス災禍は、今なおこの災禍は猛威を振るっており、収束の兆しが見えておりません。先行き不安の中で迎えた今年の干支は、「辛丑(かのとうし)」です。毎年のように、古代中国の賢人が干支に託したメッセージを読み解くべく、語源辞典片手に過ごした日々。腑に落ちる解釈に辿り着きました。お時間のある時に、ブログをご訪問いただけると幸いです。
≪2021年冬の特選食材のご案内です。≫
太陽の恩恵を十二分に受け、風味豊かに育ったものこそ、旬の食材であり、美味しいばかりではなく、いま我が欲している栄養をも持ち合わせています。2021年冬の特選食材をご紹介させていただきます。昨年末に公開したものです。料理の詳細は、後日改めてご案内させていただきます。
≪北平のBenoit不在の日≫
私事で恐縮なのですが、自分がBenoitを不在にしなくてはならない1月の日程を書き記させていただきます。滞りがちだったご案内を充実させるべく、執筆にも勤しませていただきます。ご不便をおかけいたしますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。
16日(土)・17(日)
22日(金)
24日(日)
26日(火)
31日(日)
上記日程以外は、Benoitを優雅に駆け回る所存です。自分への返信でのご予約はもちろん、BenoitのHPや、他ネットでのご予約の際に、コメントの箇所に「北平」と記載いただけましたら、自慢の料理の数々を語りに伺わせていただきます。
皆様にお会いする機会を賜りながら、自ら放棄する無礼、ご容赦のほどよろしくお願いいたします。自分が不在の日でも、お楽しみいただけるよう万全の準備をさせていただきます。何かご要望・質問などございましたら、何気兼ねなくご連絡ください。
過ごしやすい日々が続くなかで、1月5日に「寒の入り」をいたします。日増しに寒さ厳しくなることでしょう。疲労・ストレスなどが原因で免疫力が下がっている時に、乾燥が加わると、コロナウイルスばかりではなく、風邪やインフルエンザにも注意が必要です。さらに、肌荒れやかゆみの原因にもなり、体感温度も下がります。健康のためにも、美容のためにも、程よい湿気お忘れなきように。そして、心の潤いも保ちながら快適にお過ごしください。
最後まで読んでいいただき、誠にありがとうございます。
「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。
ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬