kitahira blog

徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

2021年12月 コゲラが我々に音で告げるもの…

コツコツ…

 子供たちの楽し気な声が響く公園の中で、片隅の木立に立っていると、熟練の大工さんが細い木槌で樹を連打してるかのような音が耳に入ってきました。この澄んだ音色は、金属と金属が当たる音ではありません。いったい何の音なのか、意識して耳をそばだててみると、意外にも脇にある樹から響いてる…

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コツコツコツ…

 樹の幹から伝え響くかのような音。よくよく聞いてみると、なにやら樹の上のほうから伝わってくる。音を頼りに、今度は目を凝らしてみると、なにやら動くものが。陽射しに邪魔されながらも、小鳥の姿がそこにはあった。音の主は「コゲラ」だ!

 キツツキの仲間で、コゲラは日本にいるキツツキ中で、もっとも小さく、スズメほどの大きさ。全国に広く分布し、一部の寒冷地を除き、季節によって移動をしない「留鳥(とどめどり)」です。鋭いかぎ爪のような足は、なかなかの握力らしく、両足と尾を起用に使い、垂直に伸びる樹をひょいひょいと上下にすばやく移動するため、目で追いかけるにはせわしない。

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 雑食で、木の実はもちろん、春夏には生い茂る葉にいつく虫を、冬には樹の幹に巣食う虫を捕食しているようです。高速連打によって幹に穴を穿(うが)つことで、はたまた虫が驚いて顔を出したところを捕まえる。樹にとっては、死活問題ともなりかねない虫の浸食に比べれば、つつかれることは痛くもかゆくもないでしょう。

コツコツコツコツ…

 

 自然の機微を捉え、厳しい自然界を生きる野生の動植物たち。彼らにはカレンダーがあるわけでもなく、温度計があるわけでもありません。しかし、草花を見てみると毎年のように芽吹き、花咲かせ、枯れてゆきます。何を基準にタイミングを計っているのか?「本能」であるとは一言で終えことができない神秘性を感じるものです。

 この「本能」ともいうべき能力を我々は失っているのではないか?と思っていましたが、今では人間として生まれた時点で、この能力を持ち合わせていないのではないと考えるようになりました。寒暖乾湿は肌で感じることができますが、季節の移ろいなどは、どうしても何かの助けを得ねばなりません。「暦(こよみ)」という世紀の大発明により一年という概念が生まれたものの、毎日伝えられる天気予報や予報士さんのアドバイスにどれほど頼っていることか。

 では、そのような科学的な情報もない昔にあってはどうしていたのか?古人は野生動植物の動きを見ることで季節を悟っていました。草木は芽吹き、花咲き、実を結び、葉を落とす。鳥たちは声音を奏(かな)で、動物はいななく。虫たちは姿を見せたり、音色を奏でたり。古人は自然の機微を捉えることができないことを知っていた。だから、野生の動植物の動向を観察し、季節の動向を知ろうとする。思うに、この観察によって得ることのできた情報を、我々は「季語」と呼んでいる。

 

 初音(はつね)とは、その季節に初めて聞いた鳥獣や昆虫の鳴き声のこと。ウグイス(春)やホトトギス(夏)は、鳴き声で我々に季節の到来を教えてくれます。コゲラは「ギイー、ギイー」と鳴く。初音は何も鳴き声にばかりではないと思うのです。コゲラの初音は、樹をつつく音色なのでしょう。

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 コゲラは季節の機微を感じ取り、越冬するため糧を得ようと樹をつつく。雑木林に心地良くこだまするかのように、心地よく耳に響くこの澄んだ音は、冬本番が間近であることを我々に教えてくれています。そして、コツコツコツ…と我々に冬支度を急かしているかのよう。まもなく、「冬至(とうじ)」を迎えます。そして、時同じくしてクリスマスもやってきます。

 そこで、2021年のクリスマスを、ご自宅お楽しみいただくための提案をさせていただきます。

kitahira.hatenablog.com

 

 最後まで読んでいいただき、誠にありがとうございます。

 今年の辛丑が終わりを迎えようとしています。その「辛」の字の如く優しい年ではありませんでした。しかし、時世は我々に新地(さらち)を用意してくれていた気がいたします。思い思いの種を植えることで、そう遠くない日に、希望の芽が姿をみせることになるでしょう。

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 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com