kitahira blog

徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

いざ行(ゆ)かん。恵那市明智町へ!

 木曽三川とは、岐阜県の誇る主流の3つの川です。中心都市である岐阜市の南側が木曽川、遠く西側を揖斐(いび)川、市内を横断するように長良川。この豊かな水資源無くして、豊穣を約束されたかのような濃尾平野はありえません。川の話から「恵那川上屋さんの栗」、そして「栃久保棚田の笠置ゆず」と話を書いてみました。木曽三川については、まだまだ書き足りないのですが、ここで川の話は終了です。

 さて、冒頭でも幾度となく登場している「岐阜」という漢字。岐阜県にお住まいの方には本当に申し訳ないのですが、この漢字を読むことはできても、いざ書いてみるとなると考え込んでしまうものです。よくよく考えると、これは難読漢字に分類されるのではないかと思うのです。「岐」は、ひと漢字で「ぎ」と読めるのか。まして、「阜」はあまりにも馴染みが無いもの。岐阜県知名度が高いので、読めるには読めるのだけれども…

 

 岐阜市内に金華山あります。標高は329mなのですが、市街とは300mの高低差があるため、まるで聳え立っているかのよう。その頂(いただき)に鎮座するのが岐阜城で、かつては稲葉山城と呼んでいました。この城が歴史に登場するのは、斎藤道三が1539年に居城としたところからでしょう。後に織田信長が入城し、「岐阜城」と改名したといいます。

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 この改名に一役買ったのが、愛知県名古屋にある「政秀寺」を開山した沢彦(たくげん)和尚でした。彼の進言で、信長が城下の「井ノ口」を改名することを決意したといいます。和尚は「岐山」「岐陽」「岐阜」の3つを提案し、信長自身が選んだのが、「岐阜」だったといいます。

 岐山(きざん)とは、中国の陝西(せんせい)省岐山県にある山の名前。古代中国の殷(いん)を亡ぼし、天下を統一した周の都のあった地で、縁起がいいから候補に挙がったのだといいます。天下布武を目指す信長にはうってつけではないかとも思います。しかし、「岐阜」を選びました。

 語源辞典「漢辞海」で調べてみました。「岐」は、岐路という単語もあるように「道が分かれたさま。」という意味がある他に、「よく理解して優れたさま。賢い。」とある。「阜」は「ふ」以外に読みはなく、「小山」であるという。さらに、「肥えてたくましいさま」「豊富である。数が多い。」「旺盛なさま。」「情が厚い」といった意味を持ち合わせています。「阜」が土からできている小山であれば、「山」は岩石でできている大山、「陵」が土でできている大山なのだと。

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 信長が岐阜城に入城した時、眼下の広大な濃尾平野雄大に流れる長良川を望んだ感想であり、彼自身が天下布武を成しとげるという強い意志が加味され、「岐阜」を選んだのではないでしょうか。なにわともあれ、常用漢字表では「阜」の字は、「岐阜」以外に使わないとあります。それほどの難読県名でした。

 

 さて、皆様にご紹介したいのは、今回のご案内で幾度となく名が挙がる「恵那市」です。岐阜県の南東、南北に伸びたおうに位置しています。この市は、恵那市岩村町、山岡町、明智町、串原村、上矢作町市町村合併で誕生しました。もともとの恵那市が、現在の市の北部に位置していることもあり、何度か話題に出ている風光明媚な「恵那峡」はもちろん、今回の特選食材「恵那川上屋さんの栗」と「栃久保棚田の笠置ゆず」もまた、ともに市北部にあります。

 この旧恵那市は、東京の日本橋から歩みを進め、「中津川宿」の次、数えて46番目の宿場町である「大井宿」のあった地です。JR恵那駅にほどなく近い場所に、格式高い門構え大井宿本陣跡が遺されています。さらに、続く道並みには格子戸のある庄屋宅や、「うだつ」と黒壁の美しい旧家が軒を連ねており、当時がいかに賑わっていたかを感じ取ることができるでしょう。

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 今回は恵那市を縦断するように走る「明知鉄道」に乗り込み、南へと向かおうと思います。この路線は、岐阜県のローカル鉄道の一つで、JR恵那駅に隣接する明知鉄道恵那駅から終点の明智駅まで、所要時間は約1時間ほどです。食堂車が連結されており、、車窓の景色を楽しみながら季節のお料理を堪能できるのです。

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 明知鉄道に乗り込み、恵那駅から6番目に我々を迎えてくれる「岩村駅」。ここは、岩村城を頂に据えた城下町が美しく保存されている地です。往年を偲ばせる商家や旧家、なまこ壁などの古い町並みが美しく、その全長は約1.3kmにも及びます。その見事なまでの景観から、国の「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されています。NHK朝の連続テレビ小説半分、青い。」のロケ地となったのでご存知の方も多いのではないでしょうか。

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 この町のシンボルともいえる岩村城は、城址として石垣などが遺されているのみです。日本城郭協会により「日本100名城」に選定されている上に、大和の高取城(奈良県)備中の松山城(岡山県)と並ぶ日本三大山城の一つに数えられているのです。城郭はないものの、標高717mの築城は、江戸諸藩の府城の中でも最も高所だといい、高低差180mの地形を利用することで天嶮の堅硬な要塞と化していたというのです。周囲に立ち込める霧をも城の防御に活かしていたといい、「霧ケ城」という別名をもっています。

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 岩村城を名城たらしめている要因は、この堅牢な山城というよりも、日本史上稀に見る長き歴史をもっていることにあります。1185年源頼朝重臣「加藤景廉(かげかど)」がこの地に地頭として着任した時に築城されたのが始まりです。その後、鎌倉・室町・戦国時代と過ぎてゆき、江戸時代が瓦解し、明治時代に廃城令が施行されるまでの、ゆうに700年もの間、連綿と核時代の城主に受け継がれてきたのです。

 

 岩村駅より再び明知鉄道に乗り込み、さらに3駅過ぎると、そこは「明智駅」です。恵那市大井を起点とし、東美濃の山間をぬうように南下する全長25.1kmの列車旅の終着駅でもあります。

 蚕糸(さんし)産業が興ったことが、この町の姿を大きく変えました。時は明治時代半ば、時の勢いをそのまま建物へ移すかのように、洋館が建ち並びます。それも、古き良き建物は残しながら。和洋が織りなす街の景観は、まさにその時代を反映しているのでしょう。

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 元号は昭和となる、日本は高度経済成長期に入ります。その渦中にあり、明智の人々は、大正時代の情緒を色濃く残す街並みを保存する、という英断を下し「日本大正村」と命名しました。これにより、1906年(明治39年)に建築された大正村役場は当時のままに、多くの文化人が通った天久(てんきゅう)カフェは天久資料館として復元され、訪れた我々に往時を偲ばせてくれます。

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 明知鉄道の終着駅は「明智」です。なぜ、この地を訪れたのか、もうお察しいただいたのではないでしょうか。間もなく最終話を迎えるNHK大河ドラマ麒麟がくる」の主人公、明智光秀の生誕地であると言われているのです。鉄道名は「明知」で、地名は「明智」と、なにやら誤植のようですが、間違いではありません。言うなれば、今は「明智」と統一したほうが良いのかとも思うのです。

 日本史上では、下克上を体現するかのように「本能寺の変」で主君を裏切り、短いながらも天下をとった奸臣(かんしん)のように描かれています。この天下を騒がす大事件の追求を恐れたために、この地の「明智」姓を冠する豪族は、「明知」としたのだといいます。足利幕府からの書状の中には、「遠山庄明智村」や「明智遠山景保」といったように、「明智」と書き記されています。ところが、江戸時代になると「明知遠山氏」というように、「明知」となっているのです。そして、昭和の市町村合併恵那市に編集されるに際し、「明知町」は「明智町」と名を変えた、いや「戻した」のです。

 この恵那市明智町には、標高570mの山に明知城址があります。別名は「白鷹(しろたか)城」。織田軍と武田軍による激しい攻防が繰り返され、激戦が繰り返された城主が代わる代わる関ヶ原まで続き、1615年の「一国一城令」によって廃城となり今に至るのです。

 この城の北側に、明智遠山家の菩提寺「龍護寺(りょうごじ)」があり、その境内には明智光秀の供養塔があります。「悲痛な思い」でことごとく割れると言われている通り、彼の供養碑は斜めに大きくひび割れているという。城の南には、光秀が若かりし頃に京都嵯峨天龍寺の雲水・勝恵という学僧を招き、ここで学問に精進したという天神神社。さらに進むと、悲運の最後を遂げた実母「於牧(おまき)の方」の墓所があります。南西に進むと、落合砦と呼ばれている土岐明智城址があり、ここには光秀の産湯(うぶゆ)として使われたされる井戸が現存しています。

 これほどまでに、明智光秀と縁ある地が多いからこそでしょう。NHK大河ドラマ麒麟がくる」の放映期間に合わせ、お城の西側にある「大正ロマン館」で「麒麟がくる ぎふ恵那 大河ドラマ館」を開催しています。本来であれば、すでに終了しているのですが、大河ドラマの延期に伴い、2021年2月14日まで開催中です。

 行きたいけれど、なかなか赴けないのが現状ではないでしょうか。そこで、Benoitにお運びいただきました際に、このイベント開催の限定記念バックをプレゼントさせていただきます。中には、岐阜県観光案内や明智光秀に関する旅のご案内などが入っております。凛々しく描かれている中央は明智光秀、左は織田信長と、これは表裏をなす紙バック。右手がシックに仕上げた布製のバックです。ぜひご希望を自分へ直接お伝えください。

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「歴史は勝者が作る。」

 事の真相は多くの識者が、この光秀の行動を分析検証するも、いまだ謎のままです。タイムマシンでもない限り、過去に遡(さかのぼ)り歴史を変えることはできません。しかし、人間には類稀なる「想像力」という力が備わっています。そこで…

「歴史を自由に検証する。」

 ということを、大いに楽しもうではありませんか。例えば、明智光秀という人物は、謎多き人物ですが、伝承やゆかりの地が今も遺(のこ)されています。火のない所に煙は立たぬというように、何かしらの理由があって伝承されているのです。今はなかなか旅路に着くことはできませんが、その前に予習をしておくのも一興ではないでしょうか。

 

 毎年のように、秋冬にかけてBenoitのメニューに堂々と名を連ねるデザート「モンブラン」。なんと美しく心に響く音色でしょうか。西ヨーロッパアルプス最高峰のMont-Blancが、このデザートの名前の由来といいます。これほどに壮大なネーミングなだけに、Benoitではシェフパティシエールの田中が毎年苦悩しながら組み立ててゆきます。今期のBenoitのモンブランはいかようなものか、ご紹介させていただきます。

kitahira.hatenablog.com

 

 西ヨーロッパの中央に、7か国にまたがる壮大な峰々がアルプス山脈です。交通の難所でありながら、この山脈に端を発しいる大河川は、ヨーロッパの人々に貴重な水資源を提供しています。そして、その山の端の中で、際立つように聳(そび)えているのが、名にし負うモンブラン」です。

 この山脈を源流とし、フランスを悠々と流れるのが「ローヌ河」。食の都「リヨン」の脇を流れるように南下してゆき、地中海に注ぎます。この河の中流域、ちょうどフランスの中央高地の南東部に、Ardèche(アルデシュ)県があります。Auvergne-Rhône-Alpes(オーベルニュ-ローヌ-アルプ)地域圏に属しており、その名の如く、アルプス山脈の麓(ふもと)に位置しています。この「アルデシュ」と聞いて、ピンときた方はかなりの栗好きの方ではないでしょうか。フランス国内でも栗の産地として有名で、ワインと同じように原産地を名乗ることのできる政府保証付きの銘産地なのです。

 そういえば、日本にも日本アルプスと呼ばれる峰々が本州中央に鎮座しています。これは、北アルプス飛騨山脈中央アルプス木曽山脈、そして南アルプス赤石山脈という3つの山塊で構成され、それぞれを源流とする河川が大地を潤しています。特に、前者2つは豊穣な濃尾平野を形成しているのです。さらに、中央アルプスを源流とする木曽川が、濃尾平野に流れ込む手前、ここは日本でも有数の栗の銘産地です。

kitahira.hatenablog.com

 

 フランスのパリにある老舗Benoitの「Mont Blanc」が、フランス栗を使うのであれば、同じ名を冠するBenoit東京の「モンブラン」は和栗をつかいます。フランスでは、モンブランにアクセントとなる酸味を加えるべくカシスやレモンを加えます。これが洋栗とのマリアージュを成すのだといいます。では、Benoit東京では何を加えるのか…これもまた、今回の特選食材です。

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 最後まで読んでいただき、誠にありがとうございます。

 今年の辛丑が始まりました。その「辛」の字の如く優しい年ではないかもしれません。しかし、時は我々に新地(さらち)を用意してくれている気がいたします。思い思いの種を植えることで、そう遠くない日に、希望の芽が姿をみせることになるでしょう。

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 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご多幸とご健康を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com

Benoit特選食材「栃久保棚田の笠置ゆず」のご案内です。

 フランスでは、アルプス山脈を源流とするローヌ河の中流域にある、Ardèche(アルデシュ)県が栗の銘産地のひとつ。日本では、中央アルプスを源流とする木曽川の上流域にある、岐阜県の恵那・中津川が栗の銘産地のひとつ。両「アルプス」からの水資源によって育まれた洋栗と和栗と、なにやら不思議なご縁があります。

 フランスのパリにある老舗Benoitの「Mont Blanc」が、フランス栗を使うのであれば、同じ名を冠するBenoit東京の「モンブラン」は和栗をつかいます。フランスでは、モンブランにアクセントとなる酸味を加えるべくカシスやレモンを加えます。これが洋栗とのマリアージュを成すのだといいます。では、Benoit東京では何を加えるのか…

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「柚子(ゆず)」

 

 中央アルプスとは、地図でいう木曽山脈のこと。この地を源流としている木曽川は南へ向かうも、岐阜県中津川市のあたりから西へと向きを変えます。この辺りにくると、峰々に端を発した多くの支流がこの木曽川に注ぎ込むことで、もはや「せせらぎ」とは言い難いほどの、水量と勢いがあり、山間(あまあい)をぬうように流れることで山肌を侵食し、ものの見事な渓谷の景観を我々に見せてくれます。

 この水量と渓谷の地形に着目したのが、後に電力王と称えられた福澤桃介(ももすけ)でした。名古屋電灯を買収し社長に就いたことを機に、この木曽川に国内初となる水力発電用のダムの建設に取り組んだのです。数々の困難を乗り越え、大正13年(1924年)に「大井ダム」が完成するに至ります。

 このダムの完成は、堰堤(えんてい)より上流域にダム湖形成されることになります。ダム以前から日本有数の渓谷美を誇る恵那峡なだけに、このダム湖によって、水面からそそり上がる渓谷美が一層際立つことになったのです。さらに、四季折々の景観を、我々は身近に楽しむことができるようになったのです。

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 この恵那峡が今回の特選食材の地ではありません。ここから木曽川を少し下ったところに、「笠置(かさぎ)」という地があります。恵那市の北西部に、木曽川の北岸に位置しています。遠くに望(のぞ)める「笠置山」の南麓にあり、自然豊かなことはもちろん、笠置峡とも相まって、風光明媚な地域です。

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 この笠置山の標高は1,128m。山頂からは、恵那市内や中央アルプスはもちろん、晴れた日には伊勢湾まで一望できるといいます。そう、天然記念物のニホンカモシカに出会えるかもしれません。。

 

 この笠置町に河合という地があり、渓谷の斜面を利用した見事な棚田が目に飛び込んできます。これぞ、岐阜の棚田21選に選定されているほどの美しさを誇る「栃久保(とちくぼ)棚田」です。ここは、江戸時代に中期の頃に切り拓いたという歴史を持ち、いまなおその役割を全うしています。急峻な地形は、生半可な開拓では成しようもなく、大小さまざまな石によって組まれた頑強な石垣は一見の価値あり。随所にみられる石垣に築かれた石の階段は、先人たちの知恵そのもの。

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 稲作において、もっとも大切なことは灌漑(かんがい)をどうするかということ。水田は、稲の田植えから成長段階に至る期間、多くの水を必要とします。しかし、この生育期間でも途中水を抜く時もあり、さらには稲刈りの前には水を必要としません。水は高き所から低き所へ流れるのは自明の理。山の麓(ふもと)の斜面を利用しようとするのは至極当然のことです。昔々の田は「山田」であり、和歌などにもよく登場します。

 とはいえ、この栃久保棚田のある地は、想像を絶する程の急峻に築かれているのです。昔は、狩猟と畑作であったのかもしれません。しかし、多くの村人を養うには「稲作」が必要でした。そこで、笠置山から湧き出ずる水を利用し、棚田を作ったのでしょう。一朝一夕で成せる事業ではありません。この地で生きるという強い意志を連綿と引き継ぎ、何代にもわたって築いてきたのだと思います。

 この棚田で丹精込めて育て上げられた特選食材がBenoitのメニューに登場しています。棚田ですがお米ではなく…

 

栃久保棚田の笠置ゆず」

 水を引かなければ、斜面ならではのその水はけの良さがあります。そして、渓谷だからこその、吹き抜ける風と川面(かわも)の照り返しは、この地ならではの自然環境を成しています。さらに、山深いからこその寒暖の差は、稲作はもちろんですが、果樹の栽培にも適しているのです。

 かつては、自宅の脇にユズを植栽していたといい、美味しく実ることを知っていました。そこで、彼らは棚田の脇を利用することをお思い立ち、ユズを植栽していったのです。自然の機微を知り、作物の特性を熟知していた先人たちの先見の明というのでしょうか。

 「桃・栗三年、柿八年、柚子の大馬鹿十八年」と言われるほど、ユズが実るまでには時を必要とします。どれほど笠置の人々は待ったのでしょうか。この心労に、見事に実ったユズが応えてくれるのです。「笠置ゆず」と命名され、ひとつのブランドにまでなったのです。ユズ園の入り口には、「ゆずもちゃん」が皆様を出迎えてくれます。

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 しかし、急峻という立地は、耕作面積をたやすく増やせるというものではなく、収量には限りがありました。どれほど名声を得たとしても、生産量の少なさを補うことはできません。県外や他の地域が、植栽面積をぐんぐん広げるなかで、一歩も二歩も遅れをとることになり、全国で名を馳せることが難しくなってゆきます。

 それでも、地元の人々はユズの栽培を辞めることはありませんでした。手間暇かけて育て上げた「笠置ゆず」は、他地域にも負けないユズに育つということを知っているからです。渓谷の斜面は、ユズにとっては好立地ですが、栽培者にとっては難儀なもの。そのような苦労など、百も承知といわんばかりに、彼らは無農薬栽培をも徹底しているのです。

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 太陽をさんさんと浴びることで、生い茂る葉は光合成をし、美味しさをなす栄養を果実に送り続けます。果実は、暴風雨にあたるために傷がつきやすい。しかし、この自然に鍛え抜かれることで、農薬に頼ることなく自らが持ちうる病原菌への抵抗力を生かしながら熟してゆきます。

 最後に、Benoitのために、畑を回りながらユズの生育具合を教えれてくださり、収穫されたユズを厳選しBenoitへ送ってくださった、かさぎゆず組合理事遠藤さん。この場をお借りして、深く深く御礼申し上げます。遠藤さんのご尽力無くして、Benoitにこれほどまでに美味なる「笠置ゆず」はありませんでした。マスク姿での作業風景の中で、自分はマスク無しで撮っていただいたこの一枚を掲載させていただきます。

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 2020年より続いているBenoitの冬メニュー。どこを探してもメニューに「ユズ」の記載はありません。しかし、しっかりとデザートで美味しさを我々に教えてくれています。2021年2月14日までは、「モンブラン」、それ以降は「パリブレスト」に。なぜ、これほどの特選食材にもかかわらず、メニューに記載しないのでしょうか?実はBenoitの問題でいろいろあるのです。気になる方は、ぜひBenoitで自分にお声をおかけください。「なるほど」という回答を用意してお待ちしております。

 

 毎年のように、秋冬にかけてBenoitのメニューに堂々と名を連ねるデザート「モンブラン」。なんと美しく心に響く音色でしょうか。西ヨーロッパアルプス最高峰のMont-Blancが、このデザートの名前の由来といいます。これほどに壮大なネーミングなだけに、Benoitではシェフパティシエールの田中が毎年苦悩しながら組み立ててゆきます。今期のBenoitのモンブランはいかようなものか、ご紹介させていただきます。

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 西ヨーロッパの中央に、7か国にまたがる壮大な峰々がアルプス山脈です。交通の難所でありながら、この山脈に端を発しいる大河川は、ヨーロッパの人々に貴重な水資源を提供しています。そして、その山の端の中で、際立つように聳(そび)えているのが、名にし負うモンブラン」です。

 この山脈を源流とし、フランスを悠々と流れるのが「ローヌ河」。食の都「リヨン」の脇を流れるように南下してゆき、地中海に注ぎます。この河の中流域、ちょうどフランスの中央高地の南東部に、Ardèche(アルデシュ)県があります。Auvergne-Rhône-Alpes(オーベルニュ-ローヌ-アルプ)地域圏に属しており、その名の如く、アルプス山脈の麓(ふもと)に位置しています。この「アルデシュ」と聞いて、ピンときた方はかなりの栗好きの方ではないでしょうか。フランス国内でも栗の産地として有名で、ワインと同じように原産地を名乗ることのできる政府保証付きの銘産地なのです。

 そういえば、日本にも日本アルプスと呼ばれる峰々が本州中央に鎮座しています。これは、北アルプス飛騨山脈中央アルプス木曽山脈、そして南アルプス赤石山脈という3つの山塊で構成され、それぞれを源流とする河川が大地を潤しています。特に、前者2つは豊穣な濃尾平野を形成しているのです。さらに、中央アルプスを源流とする木曽川が、濃尾平野に流れ込む手前、ここは日本でも有数の栗の銘産地です。

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 山間を流れていた木曽川は、美濃加茂(みのかも)市の南東、可児(かに)市の北部のあたりで、が濃尾平野に流れ着きます。そして、この地で北アルプスこと飛騨山脈に端を発した飛騨川が落合います。急流から悠々と流れる「大河」へと姿を変え西へ西へと流れゆき、岐阜城を北に眺めながら、ほどなくして南に向きを変え、伊勢湾に注ぎ込みます。

 「大河」、そういえばNHKさんの大河ドラマ明智光秀を主人公に据えた「麒麟(きりん)がくる」です。「歴史は勝者が作る」というだけあって謎が多く、なんと魅力に満ちた武将でしょうか。木曽川の「大河」の話をしてきたので、少しばかり明智光秀の出生の地をご紹介させていただきます。

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 最後まで読んでいただき、誠にありがとうございます。

 今年の辛丑が始まりました。その「辛」の字の如く優しい年ではないかもしれません。しかし、時は我々に新地(さらち)を用意してくれている気がいたします。思い思いの種を植えることで、そう遠くない日に、希望の芽が姿をみせることになるでしょう。

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  「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご多幸とご健康を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com

Benoit特選食材「恵那川上屋さんの和栗」のご紹介です。

 毎年のように、秋冬にかけてBenoitのメニューに堂々と名を連ねるデザート「モンブラン」。なんと美しく心に響く音色でしょうか。西ヨーロッパアルプス最高峰のMont-Blancが、このデザートの名前の由来といいます、しかし、どこをどう見てもデザートのモンブランと、山のモンブランでは似ても似つかない、そう思うのは自分だけではないはずです。もしや、。「Mont(山)」「Blanc(白い)」という名だけに、雪を冠した姿は目を見張るほどに美しい。比類なきこのデザートの美味しさを讃えるために、人々を魅了してやまない山の名前をあてたのでしょうか。

 「食材の美味しさ以上の料理・デザートは作り出すことはできない。その食材を生かすも殺すも調理人しだい。」、これが自分の持論です。化学調味料をたっぷり使えば、美味しく感じるものです。しかし、それは化学的に調合されたもので、本来の美味しい料理とは、まったくかけ離れたもの。「料理」とは「理(ことわり)」を「料(はか)る」もの。食材をよくよく理解し、その美味しさである個性を生かすこと。

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 世界に名立たるモンブランとはいえ、主役となる「栗」という食材に個性豊かな美味しさがなければなりません。フランス産の栗ペーストは、確かに美味しいのですが、これで仕上げたモンブランは、どれも画一的な味となります。それはそれで良いとは思いますが、Benoitでは食材にこだわりたいものです。そこで、洋栗ちょいちょい、たっぷり「和栗」でモンブランをこしらえました。その「和栗」とは?

 

 ブナ科クリ属の果実は、日本ではすでに縄文時代から食料として重宝されていたようです。これは日本に限ったことではありません。世界には大きく分けて四つの品種があり、その自生している大陸名が品種名になっています。フランスのマロングラッセでも有名なヨーロッパグリ、天津甘栗の中国グリ、今はほとんど栽培されていないアメリカグリ、そして和栗こと日本グリです。

 和栗は世界に誇る栗の品種です。ヨーロッパの洋栗や天津甘栗で有名な中国栗とは一味違った優しい甘さだからこそ栗の風味を十分に感じ取れ、瑞々(みずみず)しさが特徴。栗おこわのように、お米との相性は抜群なのはもちろん、栗きんとんも忘れてはいけません。栗そのものの美味しさを生かす和の技法は、すでに何百年も前から伝統として確立しているのです。

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栗の産地は日本全国多々あります。それぞれの地が、ブランドの栗を有し、美味なる栗を産することに誇りを持つがゆえに、そのブランドを壊さぬよう細心の注意を払っています。その中でも、圧倒的な歴史と実績を持った地が、岐阜県東南部に位置している、「中津川市」と「恵那市」です。ここは、山栗を使った料理やお菓子が評判となり、茶巾で包む「栗きんとん」の発祥の地でもあることから、「栗菓子の里」として大いに賑わいを見せてたといい、今でも栗の銘産地として名を馳せています。

 Benoitが協力を仰いだのが、その恵那市に居を構え、創業以来「美味しい栗無くして美味しい栗菓子はなし」という信念のもと、恵那山の麓の広大な地に栗の木を植栽し続けている、「恵那川上屋」さんです。伝統にあぐらをかくことなく、栽培を担う人がより良い栗を育めるよう環境づくりを整え、その栗の美味しさをいかんなく発揮できる栗菓子を追求する、スタッフ皆が自らの担当する分野において日々研鑽に励み、美味なる栗菓子をこしらえ続けているのです。

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「地元に栗を呼び戻そう」

 今でこそ恵那川上屋さんの名前を知る人は多いですが、彼らの軌跡は順風満帆だったわけではありません。これほどの伝統と、栗の銘産地としての名声がありながら、人々の「農業離れ」には逆らうことができず、生産量が最盛期の10分の1にまで激減した時代があったといいます。栗無くして栗菓子はできず、まして素材以上の美味しさなどありえません。この現実が、恵那川上屋さんに重くのしかかってきたのです。

 思い倦(あぐ)ねる中、鎌田真悟さんが恵那川上屋の代表に就いた1998年、時(とき)が動き始めます。栗の確保と品質追求という難題を、良質の栗を栽培することで解決しようと考えたのです。至極まっとうな考えでありながら、自らが栗栽培を熟知してるわけではなく、さらに恵那川上屋さんだけで成し得ることができることでもありません。しかし、鎌田さんは諦めることはなかったのです。

 地元で栗栽培を生業とする12戸の農家さんと全量購入の契約を結び、ともに品質向上に取り組んだのです。この志(こころざし)はJA東美濃も同じこと。鎌田さんの働きかけもあり、地元で昔から親しまれている美味なる栗を復活させ、ブランドとして確立させようと動き出します。

 JA東美濃は、特選栗評議会のメンバーの中から優れた栗生産者を認定し「超特選栗部会」という精鋭チームを発足いたしました。これは、栗栽培名人である塚本實(つかもとみのる)先生の「低樹高栽培」を学び、自らも指導者としてこの栽培ノウハウを仲間に教え伝えていくプロ集団です。「地元に栗を呼び戻そう」のメッセージのもと、「栗の名産地」復権をめざし、地元一丸となり労を惜しまない日々。この取り組みが功を奏し、栗の生産量も回復を見ることになりました。

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「恵那栗」

 恵那の栗は、長年培われてきた伝統の上に、途方もない人智が加味されたもの。この英知をまとめ上げ、次世代への引継ぎを担う栗博士、塚本實さんがたどり着いた栽培方法が「低樹高栽培」という、並々ならぬ手間暇と技術を要する手法です。剪定方法だけを見てみても、心配になるほど厳しく低く実施します。新梢を含めた枝の管理の徹底は、効率の良い陽射しと適度な風通りをもたらします。これにより、病気になることも少なくなり、栗は大きく美味しく、たわわに実ることに。さらに、年配の方や子供でも日々の手間暇をかけやすくなり、危険も減ることになりました。

 文字で書いてしまうと、あまりにもあっさりとしたものです。しかし、庭木の選定をされている方は、剪定作業がいかに難しいかがお分かりかと思います。厳しすぎると徒長枝というビュンビュン伸びた枝を生み、剪定が緩いとだらだら葉だけが茂り、ともに実をなさないのです。実をなさいということは、農を生業としている者にとっては死活問題。時には厳しく、時には優しく、まるで子育てのようです。まして、樹は画一的なものではなく、人と同じように十人十色。樹1本1本と向かい合わなくてはなりません。

 順調に思えたこの取り組みも、「高齢化」の潮流に逆らうことができませんでした。プロ集団の「超特選栗部会」の平均年齢は65歳だったのです。一難去ってまた一難、このままでは20年いや30年後には地元の栗が消滅してしまうのではないかとすら感じてしまう。

 そこで、恵那川上屋代表の鎌田さん自らが学び、一人の栗栽培者として、この恵那栗の魅力を伝えてゆくことを決意します。そして、2004年に農業生産法人「恵那栗」を発足するのです。20haもの耕作放棄地に6,000本の恵那栗の樹を植栽し、有志の若手を募(つの)ります。この取り組みにより、栗栽培のプロ集団が誕生し、岐阜県のみならず他県へまでこのノウハウを伝播するまでに成長するのです。ここに至るまでにどれほどのご苦労があったことか、計り知れません。

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 徹底した管理のもとで実った恵那栗は、成熟し自然に落ちるのを待ち、朝一番で収穫。栗栽培を知り尽くした職人の眼下の元で選別されるのです。この厳しい選果基準を満たしたものだけが、「超特選恵那栗」として工房へ届けらます。ここに待ち受けるのは、栗調理職人チームです。栗の実はもちろんですが、渋皮の旨味までも生かすように、優しく丁寧に炊き上げる。そして、栗が熱々状態で手作業で栗を外皮と渋皮を取り除いてゆきます。

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 この地方発祥でもある「栗きんとん」は、栗と砂糖のブレンドです。シンプルだからこそ、その美味しさを左右するのは栗の品質なのです。恵那川上屋さんの栗への想いの原点はここにあります。そして、もうひとつ忘れてはいけない食材が「砂糖」でした。栗に対しての愛着があればこそ、相棒にもそれ相応のものを求めてしまうもの。

 栗の確保のめどがたった時、ふと思うことは「美味しい砂糖は確保できるのか」という問題でした。居ても立っても居られなくなった鎌田さんは、砂糖探しの旅に出ることを決めたといいます。南へ南へと向かい、沖縄県に足を踏み入れるも、難題多く断念。次に向かった先が、鹿児島県「種子島」でした。

 これが運命なのでしょう、出会うべくして出会ったのが砂糖杜氏の竹之内和香さんです。彼の黒糖を口にした時、まさにその瞬間に「10年かけて黒糖製造の技術を教えてください」と鎌田さんが申し出たのだといいます。伝統技能の保有者は、その技を伝承しなければならない宿命にある。出会って10年後、竹之内さんは区切りを付ける英断を下し、全てを鎌田さんに託したのです。

 種子島「里の菓工房」として本格的に稼働したのが2006年。伝承の技に甘んじることなく、さらなる品質向上を模索する日々が、ついに褐色美しい無添加の黒糖を作り上げたのです。サトウキビだけが表現できる甘い中に、自然の優しさを感じ取ることのできる、やはり素材に勝る美味しさはありません。

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 丁寧に炊き上げられた栗は、ほぐされた後に、ほんの少しだけ種子島「里の菓工房」の黒糖が加えられます。それを茶巾を使って、ひとつひとつ手絞りで仕上げたものが、恵那川上屋さんの栗きんとんです。栗の品種や収穫時期によって、加減を調整しながらの作業は、栗を熟知している彼らだからこそ可能な職人技。いつ口にしても美味しい「恵那川上屋さんの栗きんとん」の秘密はここにあるのです。

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 「素材を厳選し、その素材の持ちうる香りと味わいを十二分に引き出し、表現すること。」とは、アラン・デュカスの料理哲学です。やはり、その道を究めんとする人は、同じような考えをもっているのだと、感じ入るばかりです。

 Benoitには、のと、その2種類を送っていただいています。

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 画像左側は、、Benoit用にまったく加糖せずに栗を炊きほぐしただけのもの。栗色が美しく、団粒のようにほろほろと、優しさを感じる中に和栗らしい甘さが口中いっぱいに広がります。右側が、恵那川上屋さん自慢の「栗きんとん」そのもの。種子島「里の菓工房」の黒糖が加わることで、サトウキビからの香ばしいながらほのぼのとする甘さが、栗の風味を引き立てる、まさに栗菓子の「栗きんとん」です。この2種類を、そのまま食べても美味しいことは、むべなるかなかと思います。

 丹精込めて育ててくれる栽培家、栗を知り尽くした熟練した技術工房スタッフ、そして栗を愛するお客様。恵那川上屋さんは、栗を通して大きな喜びの和となることを目指し、栗を愛する皆様をこうと名付けました。。

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栗人(くりうど)」

 その和に、快くBenoitを加えていただけたのです。我々が栗の栽培ができないのはもちろん、栗の選別や下ごしらえなどは、経験に裏打ちされている経験がものをいい、さらに途方もない手間暇がかかるのです。その、貴重な栗のペーストを、Benoitへ送っていただいております。皆様にも、Benoitの栗のデザートを通し、「栗人の和」への仲間入りをいたしませんか?

 

 毎年のように、秋冬にかけてBenoitのメニューに堂々と名を連ねるデザート「モンブラン」。なんと美しく心に響く音色でしょうか。西ヨーロッパアルプス最高峰のMont-Blancが、このデザートの名前の由来といいます。これほどに壮大なネーミングなだけに、Benoitではシェフパティシエールの田中が毎年苦悩しながら組み立ててゆきます。今期のBenoitのモンブランはいかようなものか、ご紹介させていただきます。

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 フランスのパリにある老舗Benoitの「Mont Blanc」が、フランス栗を使うのであれば、同じ名を冠するBenoit東京の「モンブラン」は和栗をつかいます。フランスでは、モンブランにアクセントとなる酸味を加えるべくカシスやレモンを加えます。これが洋栗とのマリアージュを成すのだといいます。では、Benoit東京では何を加えるのか…これもまた、今回の特選食材です。

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 山間を流れていた木曽川は、美濃加茂(みのかも)市の南東、可児(かに)市の北部のあたりで、が濃尾平野に流れ着きます。そして、この地で北アルプスこと飛騨山脈に端を発した飛騨川が落合います。急流から悠々と流れる「大河」へと姿を変え西へ西へと流れゆき、岐阜城を北に眺めながら、ほどなくして南に向きを変え、伊勢湾に注ぎ込みます。

 「大河」、そういえばNHKさんの大河ドラマ明智光秀を主人公に据えた「麒麟(きりん)がくる」です。「歴史は勝者が作る」というだけあって謎が多く、なんと魅力に満ちた武将でしょうか。木曽川の「大河」の話をしてきたので、少しばかり明智光秀の出生の地をご紹介させていただきます。

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 最後まで読んでいただき、誠にありがとうございます。

 今年の辛丑が始まりました。その「辛」の字の如く優しい年ではないかもしれません。しかし、時は我々に新地(さらち)を用意してくれている気がいたします。思い思いの種を植えることで、そう遠くない日に、希望の芽が姿をみせることになるでしょう。

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 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご多幸とご健康を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com

2021 Benoit≪新春特別テイクアウトボックス≫のご案内です。

 「冬至 冬中 冬はじめ」とはよく言ったもので、2021年1月5日「小寒」、20日大寒」と2月3日までの「立春」までは、暦の上でもまだまだ冬であり、寒さ厳しい期間です。明治時代に太陰太陽暦からグレゴリオ暦へと改暦したこともあり、多少の季節の誤差があろうとも、今も昔もこの時期は寒かったはずです。

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 かつて暖房器具が乏しい頃にあり、暖を取る方法は薪(たきぎ)を燃やすことでした。しかし、屋内では火災の危険が付きまといます。昔の日本は住居が密集しているため、一歩間違うと町自体が焼け野原となり消滅してしまう可能性すらありました。そこで、先人たちは、「炭」という逸材を発明したのです。

 この炭の登場が、どれほど人々の生活を変えたことでしょうか。暖房器具としては、今のストーブとは比べてはいけないほど微力ながら、「火鉢」や「掘りこたつ」、そして「囲炉裏(いろり)」という、画期的な発明をもたらしました。古くは平安時代に始まり、戦後の高度成長時代にまでの長きにわたり、我々の生活の中で活躍していたのです。

 寒い季節の中、炭を利用して暖をとるために、、それらの発明品を囲むとき、そこには家族や、親しい仲間との楽しい会話が生まれます。知らず知らずのうちに、我々に「語らい」の場を提供してくれていました。

 今後しばらく外出を控え、ご自宅で過ごされた方が多いのではないでしょうか。火鉢や囲炉裏は無くとも、家族や親しい友人と食卓やコタツを囲むことで、普段は気にも留めないことが話題となり、心地良いひとときを過ごすことができます。密を避け、十分なウイルス対策を講じ、騒ぐではなく「語らう」ことは、忌避すべきことではないはずです。

 そこで、Benoitで「新春特別テイクアウトボックス」をこしらえたみました。皆様のご自宅での「語らい」をするために、一翼を担わせていただきたいのです。今回のテイクアウトボックスは、ご自宅で一手間かけねばなりません。さらに、別途お野菜などを購入することで彩りも美味しさも増してきます。自信を持ってお勧めする料理の数々が、「語らい」のキッカケとなれば幸いです。

 

≪季節のお話「鴛鴦の鴛を目にしたときの兼昌の想いとは?」≫

 漢字検定準一級に属する難読漢字である「鴛(おし)」。さらに「鴦(おう)」という、これまた難読漢字が加わる「鴛鴦(えんおう)」とは、鳳凰(ほうおう)のように何やら空想世界に羽ばたく鳥なのでしょうか。この鳥を題材に源兼昌が詠った歌が心を打ちました。昨年は見過ごしていた一首ですが、今年は大いに輝きを放っています。

 詳細は、以下よりブログをご訪問いただけると幸いです。兼昌は、我々に何を語ろうとしているのでしょうか?

kitahira.hatenablog.com

 

≪新春特別テイクアウトボックスのご案内です。≫

 緊急事態宣言の発出により、今後しばらく外出を控え、ご自宅で過ごされた方が多いのではないでしょうか。ご家族皆様にBenoitへお運びいただきたくことは憚(はばか)れる昨今にあり、少しでもご自宅での「語らい」の場をこしらえていただきたく、新春特別テイクアウトボックスをご紹介させていただきます。Benoitでのお食事が、「口福な食時のひととき」であるならば、このテイクアウトは「口福のおすそ分け」とでもいいましょうか。

 新型コロナウイルス災禍が及ぼす皆様の心労は、並々ならぬものとお察しいたします。さらに、先日の緊急事態宣言を鑑みての営業時間変更と、ご迷惑をおかけしてばかりです。そこで、このテイクアウトボックスは特別価格でご案内させていただきます。皆様にはご自宅で少しばかりに調理とアレンジが必要になります。お弁当とは違い、この一手間が加味されることで、なおいっそう美味しくお召し上がりいただけるはずです。

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新春特別テイクアウトボックス

提供期間 : 2021121()228()

最終受付 : 2021227()

価格 : 1名様セット 4,320(税別) ※何名様のご用意も可能です。

お受渡し時間 : 平日は11:3016:00 土日祝日は11:3019:30

申込方法 : このメール(kitahira@benoit.co.jp)への返信をご利用ください。お急ぎの場合にはBenoitメールアドレスより(benoit-tokyo@benoit.co.jp)より、もちろん電話(03-6419-4181)でもご予約は快く承ります。ご希望の商品と数量、お渡し時間をお知らせ下さい。メールでのご注文の場合は、受け取り希望日の前日16時までに送信をお願いいたします。こちらからの電話またはメールによる返信にて、受注確定とさせていただきます。

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Menu

テリーヌ・ド・カンパーニュ

香川県ブロッコリーのヴルーテ

フランス産鴨モモ肉のコンフィ または 豚ほほ肉の煮込み

パン・ド・カンパーニュ 1/4

ル・ショコラ・アラン・デュカス 東京工房のショコラ ブラウニー

※料理の画像はイメージです。ご自宅で少しばかりの調理が必要です。副材は含まれておりません。

※鴨肉は、季節のお話で添付した画像の鴨ではありません。

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 メニューは上記の通りですが、どれほど自慢で、どれほど美味しいのか、字面ではなかなか伝わらないものです。そこで、それぞれの料理を少しばかりブログにご紹介させていただきます。テイクアウトをご検討の方も、検討されていない方も、お時間のある時にご訪問いただけると幸いです。

kitahira.hatenablog.com

 

 さらに、Benoitシェフソムリエからのお誘いがございます。蔵元さんと直接交渉をすることで、輸入が実現した、Benoitでしか購入できないスパークリングワインを、新春特別テイクアウトボックスとともにお楽しみいただきたく、特別価格にてご案内させていただきます。

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Crémant de Bourgogne Cuvée Agnès  Vitteaut-Alberti  4,000(税別)

 このキュヴェ・アニエスは、スパークリングワインの専門家、ヴィトー・アルベルティが手掛ける最高傑作です。コート・ド・ボーヌとシャロネーズの両地区の葡萄シャルドネ種のみで醸され、瓶内熟成もシャンパーニュに匹敵する3年間。華やかな香りと凛とした酸味のバランスが秀逸、いついかなる時に飲んでも、納得していただける美味しさです。

※スパークリングワインの特別価格でのご提供は、2月7日までとさせていただきます。

 

≪北平のBenoit不在の日≫

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 私事で恐縮なのですが、自分がBenoitを不在にしなくてはならない1月の日程を書き記させていただきます。滞りがちだったご案内を充実させるべく、執筆にも勤しませていただきます。ご不便をおかけいたしますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。

20日(水)

22日(金)

24日(日)

26日(火)

28日(木)

 上記日程以外は、Benoitを優雅に駆け回る所存です。自分への返信でのご予約はもちろん、BenoitのHPや、他ネットでのご予約の際に、コメントの箇所に「北平」と記載いただけましたら、自慢の料理の数々を語りに伺わせていただきます。

 皆様にお会いする機会を賜りながら、自ら放棄する無礼、ご容赦のほどよろしくお願いいたします。自分が不在の日でも、お楽しみいただけるよう万全の準備をさせていただきます。何かご要望・質問などございましたら、何気兼ねなくご連絡ください。

 

最後まで読んでいただき、誠にありがとうございます。

 今年の辛丑が始まりました。その「辛」の字の如く優しい年ではないかもしれません。しかし、時は我々に新地(さらち)を用意してくれている気がいたします。思い思いの種を植えることで、そう遠くない日に、希望の芽が姿をみせることになるでしょう。

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 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご多幸とご健康を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com

2021 Benoit≪新春特別テイクアウトボックス≫を語らせていただきます。

 緊急事態宣言の発出により、今後しばらく外出を控え、ご自宅で過ごされた方が多いのではないでしょうか。ご家族皆様にBenoitへお運びいただきたくことは憚(はばか)れる昨今にあり、少しでもご自宅での「語らい」の場をこしらえていただきたく、新春特別テイクアウトボックスをご紹介させていただきます。Benoitでのお食事が、「口福な食時のひととき」であるならば、このテイクアウトは「口福のおすそ分け」とでもいいましょうか。

 新型コロナウイルス災禍が及ぼす皆様の心労は、並々ならぬものとお察しいたします。さらに、先日の緊急事態宣言を鑑みての営業時間変更と、ご迷惑をおかけしてばかりです。そこで、このテイクアウトボックスは特別価格でご案内させていただきます。皆様にはご自宅で少しばかりに調理とアレンジが必要になります。お弁当とは違い、この一手間が加味されることで、なおいっそう美味しくお召し上がりいただけるはずです。

 

≪新春特別テイクアウトボックス

提供期間 : 2021121()228()

最終受付 : 2021227()

価格 : 1名様セット 4,320(税別) ※何名様のご用意も可能です。

お受渡し時間 : 平日は11:3016:00 土日祝日は11:3019:30

申込方法 : 自分へのメール(kitahira@benoit.co.jp)をご利用ください。お急ぎの場合にはBenoitメールアドレス(benoit-tokyo@benoit.co.jp)より、もちろん電話(03-6419-4181)でもご予約は快く承ります。ご希望の商品と数量、お渡し時間をお知らせ下さい。メールでのご注文の場合は、受け取り希望日の前日16時までに送信をお願いいたします。こちらからの電話またはメールによる返信にて、受注確定とさせていただきます。

 

Menu

テリーヌ・ド・カンパーニュ

香川県ブロッコリーのヴルーテ

フランス産鴨モモ肉のコンフィ または 豚ほほ肉の煮込み

パン・ド・カンパーニュ 1/4

ル・ショコラ・アラン・デュカス 東京工房のショコラ ブラウニー

※料理の画像はイメージです。ご自宅で少しばかりの調理が必要です。副材は含まれておりません。

 

 メニューは上記の通りですが、どれほど自慢で、どれほど美味しいのか、字面ではなかなか伝わらないものです。そこで、それぞれの料理を少しばかり以下にご紹介させていただきます。テイクアウトをご検討の方も、検討されていない方も、少しばかりお時間を割いていただけると幸いです。

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 フランス料理の定番であり、ビストロには欠かすことのできない前菜は、これを置いて他にはありません。「テリーヌ・ドゥ・カンパーニュ」です。多種多様なテリーヌがある中で、Benoitは粗挽きの肉肉しさが詰まっています。豚の肩肉をメインに、豚の背脂に鶏のレバーを加え、じっくりゆっくりとオーブンで焼いてゆきます。このままでも美味しいですが、Benoitのこだわりはここから。器に入ったまま粗熱をとり、塊のまま冷蔵庫で長き眠りにつくことになります。味わいが落ち着いてくるのに1週間ほど。まさに時がなせる美味しさなのです。

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 可能な限り、断面を空気に触れさせないようにするため、ご希望人数に合わせた大きなブロックでご用意いたします。冷たすぎると、テリーヌ本来の味わいが閉じこもってしまうため、お食事の前に冷蔵庫より出しておき、お召し上がりの直前に切り分けてください。ディジョンマスタードとの相性は抜群なので、ご用意いただくことをお勧めいたします。さらに、簡単なサラダを添えることで、前菜ひと品が完成します。

 

 旬の食材は待ってはくれません。「ブロッコリー」、皆様にとって馴染みの食材であるからこそ、美味しいものにこだわりたいもの。そこで、今回は香川県から直送です。香川県都道府県の中で、一番面積が小さいため、農産物県別ランキングではなかなか上位に県名が上がりません。しかし、八百屋さんやスーパーでは、彼の地のブロッコリーが所狭しと並んでいるのを目にするはずです。

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 香川県の讃岐平野が香南町に畑を有する河田薫さんの育て上げたブロッコリーは、鮮度抜群はもちろんのこと、シェフも絶賛する美味しさです。このブロッコリーのみで、緑鮮やかでなめらかなスープに仕上げました。余計なハーブや調味料などは一切加えない、それほどに河田さんのブロッコリーは、甘く味わい深いのです。

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 ご自宅で熱くすると風味が変ってしまうので、湯煎で温めていただきたいです。仕上げにオリーブオイルを少しだけ振りかけることで、よりいっそう美味しくお召し上がりいただけます。湯がいたブロッコリーを添えるのも良いかと思います。ブロッコリーは寒さ厳しい頃に美味しさが際立ちます。しかし、このスープの香りや味わいは、春が到来したのかというような錯覚すら覚えます。

 

 メインのお料理は、2種の中よりお選びいただきます。フランスのビストロ料理の代名詞的な存在が、この「鴨モモ肉のコンフィ」ではないでしょうか。これに対する「豚ほほ肉の煮込み」は、豚ほほという馴染みのない食材でありながら、これを知ってしまうと、もう牛ホホ肉には戻れないかもしれません。

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 鴨モモ肉は、美味しい食材でありながら、どうしても肉質が硬く、ただたんに焼くという調理方法では食べにくいものです。そこで、フランス伝統の技「コンフィ」を駆使して仕上げます。鴨の脂の中に落とし込んだモモ肉を、70℃ほどの温度を維持しながらゆっくりゆっくりと熱を加えてゆきます。ニワトリよりも肉肉しい、噛むほどに鴨モモ肉のコクのある旨味が口中に広がります。

 この料理は、湯煎温めた後に、オーブントースターで焼くという、一手間を必要とします。湯煎だけでも美味しいのですが、やはり皮目に焼きをいれるほうが、香ばしい香りが食欲をそそり、パリっとした皮目とモモ肉との食感の違いが、美味しいばかりではない、さらなる「口福」へと導くはずです。

 サラダも良いですが、やはりフライドポテトを添えることでフランスらしさをお楽しみいただけるはずです。テリーヌ・ド・カンパーニュでも登場した、ディジョンマスタードとの相性は抜群です。

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 しかし、選択肢には「豚ほほ肉の煮込み」があります。豚ホホ肉は繊細な味わいなため、下ごしらえには白ワインを使用します。香味野菜とともに煮込んでゆきますが、1時間ほどもすると崩れ始めるので、ここで豚ほほ肉は避難です。旨味の煮出たスープは、煮詰めてゆき、とろみが出たところで、避難していた豚ほほ肉にまとわせ、冷ますことで味わいを馴染ませます。

 湯煎で温めることで、ナイフを必要としない、やわらかな豚ほほ肉をお召し上がりいただけます。画像では白いんげん豆の煮込みを添えています。ご自宅ではショートパスタを茹で、オリーブオイルと粉チーズをまぶしたものや、八百屋さんに並ぶ野菜を茹で、オリーブオイルを絡めたものなどが良いかと思います。

 豚のホホ肉とは、あまりにも馴染みが無い食材ですが、これを知ってしまうと、前述したように牛ホホ肉には戻れなくなるかもしれません。

 

 Benoitの料理で欠かすことができないものは、パンではないでしょうか。1種類しかないために、テイクアウトも同じ「パン・ド・カンパーニュ」をご用意させていただきます。しかし、Benoitのこのパンは、「ルヴァン種」と呼ばれる天然酵母がこしらえた種生地を使用します。この気まぐれな酵母を相手に、5日間かけてルヴァン種を仕上げ、別で小麦とライ麦の生地に小分けするようにして、翌日に焼き上げます。

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 培養酵母である、イースト菌などを使用すれば、簡単にパンを作ることができます。しかし、Benoitは、敢えて手間暇のかかる、さらに気まぐれ天然酵母ゆえに、その機微を見極める職人技を必要とする方法をとっています。なぜか?料理との相性抜群な、美味しいパンが焼きあがるからです。

 

 日本橋に堂々した工房を構える、「ル・ショコラ・アラン・デュカス 東京工房」。ここからBenoitへ送られてくるのが、カカオ含有量75%のショコラです。心地よいほろ苦さにコク、得も言われぬ魅了する香り。このショコラをたっぷりと使い、アクセントにペカンナッツがごろごろと入ったブラウニーに仕上げます。

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 そのままでも十分に美味しいでが、オーブントースターで表面をかりっと焼いて、もしくは電子レンジで10秒ほど温めて、お召し上がりいただくと風味豊かなブラウニーをお楽しみいただけます。バニラアイスクリームを添えることで、デザートらしいひと皿に仕上がります。

 

≪新春特別テイクアウトボックス

提供期間 : 2021121()228()

最終受付 : 2021227()

価格 : 1名様セット 4,320(税別) ※何名様のご用意も可能です。

お受渡し時間 : 平日は11:3016:00 土日祝日は11:3019:30

申込方法 : 自分へのメール(kitahira@benoit.co.jp)をご利用ください。お急ぎの場合にはBenoitメールアドレス(benoit-tokyo@benoit.co.jp)より、もちろん電話(03-6419-4181)でもご予約は快く承ります。ご希望の商品と数量、お渡し時間をお知らせ下さい。メールでのご注文の場合は、受け取り希望日の前日16時までに送信をお願いいたします。こちらからの電話またはメールによる返信にて、受注確定とさせていただきます。

 

 さらに、Benoitシェフソムリエからのお誘いがございます。蔵元さんと直接交渉をすることで、輸入が実現した、Benoitでしか購入できないスパークリングワインを、新春特別テイクアウトボックスとともにお楽しみいただきたく、特別価格にてご案内させていただきます。

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Crémant de Bourgogne Cuvée Agnès  Vitteaut-Alberti  4,000(税別)

 このキュヴェ・アニエスは、スパークリングワインの専門家、ヴィトー・アルベルティが手掛ける最高傑作です。コート・ド・ボーヌとシャロネーズの両地区の葡萄シャルドネ種のみで醸され、瓶内熟成もシャンパーニュに匹敵する3年間。華やかな香りと凛とした酸味のバランスが秀逸、いついかなる時に飲んでも、納得していただける美味しさです。

※スパークリングワインの特別価格でのご提供は、2月7日までとさせていただきます。

 

 漢字検定準一級に属する難読漢字である「鴛(おし)」。さらに「鴦(おう)」という、これまた難読漢字が加わる「鴛鴦(えんおう)」とは、鳳凰(ほうおう)のように何やら空想世界に羽ばたく鳥なのでしょうか。この鳥を題材に源兼昌が詠った歌が心を打ちました。昨年は見過ごしていた一首ですが、今年は大いに輝きを放っています。

 詳細は、以下よりブログをご訪問いただけると幸いです。兼昌は、我々に何を語ろうとしているのでしょうか?

kitahira.hatenablog.com

 

最後まで読んでいただき、誠にありがとうございます。

 今年の辛丑が始まりました。その「辛」の字の如く優しい年ではないかもしれません。しかし、時は我々に新地(さらち)を用意してくれている気がいたします。思い思いの種を植えることで、そう遠くない日に、希望の芽が姿をみせることになるでしょう。

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 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご多幸とご健康を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

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季節のお話「鴛鴦の鴛を目にした時の兼昌の想い」

山川に ともなき鴛(をし)は 影をみて ひとつがひある 心ちすらしも  源兼昌(かねまさ)

 漢字検定準一級に属する難読漢字である「鴛(おし)」。さらに「鴦(おう)」という、これまた難読漢字が加わる「鴛鴦(えんおう)」とは、鳳凰(ほうおう)のように何やら空想世界に羽ばたく鳥なのかと思ってしまいます。ところが、鴛鴦なる鳥は身近な存在で、「おしどり」のこと。一部国外から渡ってくるものもあるようですが、日本国内を北に南にと住み替える漂鳥(ひょうちょう)に分類されています。関東では越冬するため南下した姿を見ることができます。

 いつも雌雄で行動していることから、「鴛鴦」とはこの「つがい」そのものを意味しています。派手な冠羽や羽色で飾った「鴛」は雄で、地味ながら可愛げのある「鴦」は雌のオシドリのこと。そのため、この2文字の成句は、夫婦愛の象徴であるという解釈がなされています。「鴛鴦の偶(ぐう)」とは、相愛の夫婦のことを言い表します。そう言えば、「おしどり夫婦」とは、よく結婚式で耳にする言葉ではないでしょうか。

 ところが、生物学者の性(さが)というものでしょうか。長年にわたり観察することで、オシドリは年ごとに「つがい」は異なるということを発見してしまうのです。雌雄仲良きオシドリが好きで好きで研究をはじめ、途方もない時間をかけて知ってしまう真実は、じつに寂しいことではないでしょうか。とはいえ、これは人間が勝手気ままにイメージを付けただけのことで、当のオシドリは苛烈な生存競争を生き抜くためには必要不可欠なことなのです。

 毎年、つがいが異なるということは、お相手を見つけることができない雄「鴛(おし)」が出てくることになるのです。兼昌は、オシドリのこの習性を知っていたのでしょうか?きっとそこまでは知らず、つがいでいる鴛鴦がなぜか鴛だけで水辺にいることを、鴦とは自然の厳しさゆえに死別したのだと見ていたのではないでしょうか。

 山川にひっそりと佇(たたず)む相手のいない一羽だけの鴛。水面(みなも)に映る自分の姿を見たときに、雌雄のつがいとなっている心地にひたっているのではないだろうか。

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 この画像は、オシドリではなく、カルガモです。昨今のコロナウイルス災禍によって、探し求めることが憚(はなか)れるため、同じ鴨の仲間ということで、ご容赦のほどなにとぞよろしくお願いいたします。

 

なぜ、人は人と会いたくなるのでしょうか。

 目と目を合わせ、触れることのできる距離で「語らい」合うことを求めているから。馴染みの言葉で、聞き慣れた声色は、得も言われぬ安心感を与えてくれます。オンラインでも可能ではないか?とも思いますが、画面の向こうには本人がいるにもかかわらず、違和感を覚えずにはいられません。どんなに声色が似ていても、一度は「0」「1」というパソコン語に変換された電子音です。濃縮還元ジュースのように、似てはいても別ものです。発せられる声には、耳が聞き取れなくとも、心に響く音階があるはずです。

 オンラインは、確かに便利で有用でした。冒頭の詠者である兼昌のみた鴛のように、水面に映る姿を愛しい相手と見、寂しく思うのであれば良いですが、そこで満足してしまうと、空想と現実とが区別できなくなるのということが危惧されるのです。AIの発達により、画面の向こう側に新しい世界ができないとも言い切れません。極論を言ってしまえば、画面の向こうに映る人が、いま生きているのかすら分からなくなる可能性があるのです。

 昨今のコロナウイルス災禍で失いつつあるのが、この「語らい」ではないでしょうか。お隣さん同士での門口での「語らい」や、お盆やお正月に親族で集まる「語らい」などがあります。さらに、それぞれの町内や市内で開催される「祭り」などは、地域結束も含めた大いなる「語らい」の場です。その場を失うことで、心にゆとりがなくなり、疑心暗鬼となることでSNSなどでの誹謗中傷や陰口といったような、言葉の暴力が絶えないという負の連鎖に陥っているような気がしてなりません。

 現実と架空の世界の区別がなくなってしまう気がすることが、思い過ごしであることを切に願っております。

 

(うづ)み火の あたりに冬は 円居(まどゐ)して むつがたりする ことぞ嬉しき  隆元(りゅうげん)

 

 今後しばらく外出を控え、ご自宅で過ごされた方が多いのではないでしょうか。火鉢や囲炉裏は無くとも、家族や親しい友人と食卓やコタツを囲むことで、普段は気にも留めないことが話題となり、心地良いひとときを過ごすこことができるはずです。密を避け、十分なウイルス対策を講じ、騒ぐではなく「語らう」ことは、忌避すべきことではないはずです。

 そこで、Benoitで「新春特別テイクアウトボックス」をこしらえたみました。皆様のご自宅での「語らい」をするために、一翼を担わせていただきたいのです。今回のテイクアウトボックスは、ご自宅で一手間かけねばなりません。さらに、別途お野菜などを購入することで彩りも美味しさも増してきます。自信を持ってお勧めする料理の数々が、「語らい」のキッカケとなれば幸いです。

 「むつがたりする ことぞ嬉しき」は、今も昔も変わりません。

kitahira.hatenablog.com

 

最後まで読んでいただき、誠にありがとうございます。

 今年の辛丑が始まりました。その「辛」の字の如く優しい年ではないかもしれません。しかし、時は我々に新地(さらち)を用意してくれている気がいたします。思い思いの種を植えることで、そう遠くない日に、希望の芽が姿をみせることになるでしょう。

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 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご多幸とご健康を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com

2021年 Benoit≪営業時間の変更≫と≪新春特別プラン≫のご案内です。

 新しい年を迎え、皆様はご自宅のある地を守る氏神様へ初詣をされたのではないでしょうか。旧年のお礼とご報告、そして新年も引きご加護を賜りますようにとお願いされたことと思います。願いを受ける氏神様におかれましては、「新型コロナウイルス災禍の収束」という願いが一番多かったことでしょう。

 仏教信仰の中で、一番多く目にすることができるのは、地蔵菩薩(ぼさつ)を祀る「お地蔵さん」ではないでしょうか。では、神様では「祠(ほこら)」以外にはないものかと思案してみる。皆様のお住いの地でも、大通りに面した地や、家々が密集してる地の辻(つじ)など、其処此処(そこここ)に鎮座し、ひっそりと我々を守ってくれている神様がいます。

 さて、この神様とは?詳細はブログに書き綴っております。お時間のある時にご訪問いただけると幸いです。

kitahira.hatenablog.com

 

≪営業時間変更のお願いです。≫

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 昨今の新型コロナウイルス災禍は、飲食店の弱さをまざまざと見せつけられました。人生を豊かにする上で、飲食店はなくてはならないものですが、平穏無事な状況下でしか成り立たないということ。順風満帆とは程遠い状況下に陥りました。今のBenoitは、この災禍の嵐に抗すべく、急ぎ帆を閉じ荒海の中に漂っている帆船のようなものでしょうか。

 自走できる船とは違い、風を頼りに進む帆船は、港に停泊するさいに錨をおろし、出発の際にこの碇を巻き上げる力を利用して、行き足をつけます。海が凪(な)いでいるとき、いざ出発しようにも、行き足のつかない帆船では、弱弱しい風ではどうすることもできません。

 そこで、Benoitは暴風雨の際には帆をたたみ、碇を海に沈めることで耐え抜き、少しでも海が穏やかになったときに、碇を巻き上げることで行き足を付け、皆様のご期待という風を受けとめるように、真帆片帆(まほかたほ)と大海原を進んでゆこうと思います。

 昨今の日本の状況を鑑み、誠に勝手ながら、Benoitの「平日ディナー営業を自粛」させていただきます。皆様には、多大なご迷惑をおかけいたしますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。期限につきましては、緊急事態宣言および、都の要請に従わせていただきます。

 未曾有のウイルス災禍の収束に、緊急事態宣言は致し方ないことだと十分に理解しております。しかし、漂ってばかりでは一向に前へ進むことはできません。さらに、旬の食材は時を待ってはくれません。Benoitでは、前述しました考えうるウイルス対策を徹底し、ランチの時間は営業を継続させていただきます。

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≪ランチ≫ 1130分から1600 (1430 ラストオーダー)

≪平日ディナー≫ 営業を自粛させていただきます。

≪週末・祝日ディナー≫ 1700分から2000 (1900 ラストオーダー)

 

≪新春特別プランのご案内です。≫

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 万物を育て上げ、四季折々の風はその土地土地に味わいをもたせる。その風のもたらした美味しさこそ「風味」であり、我々はここに「口福な食時」を見出します。そして、旬を迎える食材は、人が必要としている栄養に満ちています。そして、人の体は食べたものでできています。「美しい(令)」季節に冬食材が「和」する逸品に出会い、

 そこで、日頃より並々ならぬご愛顧を賜っている上に、自分よりご案内している長文レポートに目を通していただけている皆様の労に報いるため、旬の食材をつかった美味なる料理を食することで、無事息災に日々を過ごしていただきたい、との想いを込め、≪新春特別プラン≫をご案内させていただきます。期間は、メールを受け取っていただいた日より、202127日(日)まで。ご予約は、このメール(kitahira@benoit.co.jp)への返信をご利用ください。お急ぎの場合には、Benoitメールアドレス(benoit-tokyo@benoit.co.jp)より、もちろん電話でもご予約は快く承ります。

 

新春特別プラン

ランチ

前菜x2+メインディッシュ+デザート

5,500円→4,200円(税サ別)

週末・祝日ディナー

前菜x2+メインディッシュ+デザート

7,800円→6,200円(税サ別)

※プリ・フィックスメニューの料理内容は、当日にメニューをご覧いただきながらお選びいただきます。ご希望人数が8名様以上の場合は、ご相談させてください。

 

 さらに、Benoitシェフソムリエからのお誘いがございます。蔵元さんと直接交渉をすることで、輸入が実現した、Benoitでしか購入できないスパークリングワインを、新春特別プランととともにお楽しみいただきたく、特別価格にてご案内させていただきます。

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Crémant de Bourgogne Cuvée Agnès  Vitteaut-Alberti  4,000(税サ別)

 このキュヴェ・アニエスは、スパークリングワインの専門家、ヴィトー・アルベルティが手掛ける最高傑作です。コート・ド・ボーヌとシャロネーズの両地区の葡萄シャルドネ種のみで醸され、瓶内熟成もシャンパーニュに匹敵する3年間。華やかな香りと凛とした酸味のバランスが秀逸、いついかなる時に飲んでも、納得していただける美味しさです。

※本数に限りがございます。ご希望の際には、このメールへの返信でご希望本数をお伝えいただけると幸いです。

 

≪北平のBenoit不在の日≫

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 私事で恐縮なのですが、自分がBenoitを不在にしなくてはならない1月の日程を書き記させていただきます。滞りがちだったご案内を充実させるべく、執筆にも勤しませていただきます。ご不便をおかけいたしますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。

17(日)

22日(金)

24日(日)

26日(火)

 上記日程以外は、Benoitを優雅に駆け回る所存です。自分への返信でのご予約はもちろん、BenoitのHPや、他ネットでのご予約の際に、コメントの箇所に「北平」と記載いただけましたら、自慢の料理の数々を語りに伺わせていただきます。

 皆様にお会いする機会を賜りながら、自ら放棄する無礼、ご容赦のほどよろしくお願いいたします。自分が不在の日でも、お楽しみいただけるよう万全の準備をさせていただきます。何かご要望・質問などございましたら、何気兼ねなくご連絡ください。

 

 最後まで読んでいただき、誠にありがとうございます。

 今年の辛丑が始まりました。その「辛」の字の如く優しい年ではないかもしれません。しかし、時は我々に新地(さらち)を用意してくれている気がいたします。思い思いの種を植えることで、そう遠くない日に、希望の芽が姿をみせることになるでしょう。

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 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご多幸とご健康を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com