kitahira blog

徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

夏は夜 月のころはさらなり「八月尽特別プラン」のご案内です。

 雑節「半夏生」が、田植えの終える目安となっていたことは、季節の話の中でご紹介させていただきました。この稲作一大事業を終えた後は、家主が皆の苦労を労(ねぎら)うために、宴(うたげ)を開いたのだといいます。「早苗(さなえ)振る舞い」と言っていたものが、この難読漢字へ。

早苗饗(さなぶり)

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 すでに幾度となく自分のブログに登場しているので、ピンときた方も多いのではないでしょうか。「さ・なぶり」というわけで、田の神への感謝の気持ちと、今期の豊穣を願い意味もあるお祝いでもありました。「さ」については、以前ブログに書き記しております。お時間のある時に、以下よりご訪問いただけると幸いです。

kitahira.hatenablog.com

 

 昨今の新型コロナウイルス災禍は、いまだ収束の兆しは見えず、我々は移動の制限を余儀なくされました。何をどうしたら良いのか全く分からない混沌とした世界の中で、このやり場のない鬱憤(うっぷん)をどうしたものか。疲労やストレスの蓄積は、免疫力を下げてゆくといいます。

 今年はなかなか梅雨明けしなかったこともあり、皆様にとっての「早苗饗」は、いまだ開催されていないのではないかと思います。そこで、ささやかながらその饗宴の会場に、Benoitをご利用いたしませんかとお誘いすることにいたしました。外では怖いほどの陽射しもBenoitに差し込むことで、開放的な雰囲気を演出しているランチも良し。しかし、清少納言は「枕草子」の中でこう言っています。

夏は夜 月のころはさらなり

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 さすが日本三大随筆を執筆しているだけに、説得力があります。そこで、先月に大好評を賜った特別プランの一部を、今月末まで、「八月尽特別プラン」と銘打って延長することにいたしました。夏本番の食材がそろっている中で、Benoitで「口福な食時」のひとときをお楽しみいただきたいと思います。

 期間は、メールを読んでいただいた日より、2020831日まで、土日祝日含むプランです。ご予約は、自分へのメールをご利用ください。急ぎの場合には、以下のBenoitメールアドレスより、もちろん電話でもご予約は快く承ります。

benoit-tokyo@benoit.co.jp

 

≪八月尽ランチプラン≫

前菜+メインディッシュ+デザート

3,800円→3,530円(税サ別)

前菜x2+メインディッシュ+デザート

4,800円→4,460円(税サ別)

前菜+メインディッシュ+デザートx2

夢のダブルデザート 4,460円(税サ別)

 

≪八月尽ディナープラン≫

前菜x2+メインディッシュ+デザート

7,100円→5,300円(税サ別)

前菜+メインディッシュ+デザートx2

夢のダブルデザート 5,300円(税サ別)

 

 プリ・フィックスメニューの料理内容は、当日にメニューをご覧いただきながらお選びいただきます。ご希望人数が8名様以上の場合は、ご相談させてください。

 

 少しばかり、皆様に8月にメニューをご紹介させていただきます。特にデザートでは役者がそろった感があり、「夢のダブルデザートプラン」を復活させていただきました。これら以外にも、皆様に語りたい、いや語らなくてはならない料理がまだまだございます。どれほど美味しく、それほどこだわりがあるのかは、Benoitへお越しの際に、自分がお話に伺わせていただきます。

 

≪「魚のスープ」が、皆様を地中海へと誘(いざな)います!≫

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 この時期になると問い合わせが入るBenoit東京の「魚のスープ」。マルセイユの代表料理ですが、Benoitではドロドロしいというよりも滑らかに仕上げています。「魚介」ではなく「魚」のスープは、ワインを使用せず、魚本来の美味しさを引き出す。エビ・カニ・貝類を一切加えないため、食せば食すほどに魚の旨味を堪能できます。

 マダイにクロダイ、そしてイトヨリダイ。カサゴにホウボウと贅沢に使用した7月から、8月9月はさらに、夏の味覚のマゴチ、オニカジカとオニカサゴが加わります。いかつい姿だからといって、「オニ」「オニ」と、見たこともないのに、鬼にも魚にも失礼千万な話。しかし、この3種は姿からは想像もつかないほど繊細で美味なる身質を持っている魚たちです。

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 「POISSON de roche」という表記に、「roche(岩)」だけに「岩魚」やら「磯魚」との訳をあてています。確かに荒波の磯でもまれにもまれた魚種は美味しいもの。しかし、旨味の多い魚が磯ばかりではないことを、深い魚文化の日本人は知っています。ごつごつだったり、とげがあったり、ぬるぬるしていたり。

 8月に仲間入りした魚たちの特徴といえば、自分のような素人が捌くには難儀な、ごつい顔と堅い骨があることでしょう。これが旨味のもととなります。「roche」とは、そういう「ごつごつの魚」を総称して名付けたのではないとも思うのです。どう調べても確証は持てませんが、そのような気がしてならないのは、あまりにもBenoitの「魚のスープ」が美味しいからです。

 皆様の目の前でそそがれた直後から、磯の香りに包まれる。濃厚な茶色を帯びた深みのあるオレンジ色の液体に、透明感はないが輝いている。濃厚ながら、甲殻類のような濃さではなく、さらりとした感さえあるものの、余韻に感じる魚の美味しさに酔いしれることになるでしょう。目を閉じれば潮騒(しおさい)が耳に届き、目を開ければ、Benoitの窓からは地中海が望める…かもしれません。

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Soupe de POISSON de roche, rouille et croûtons aillés

魚のスープ ルイユとクルトン

(追加料金 ランチ+800円 / ディナー+600円)

 

≪待望の桃のデザート、それも新作で登場です。≫

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 毎年のように、7月からメニューに登場していた桃のデザート「ピーチ・メルバ」を、今期Benoitで見ることはありません。桃のデザートを諦めたわけでもありません。満を持して、8月に新しいスタイルでプリ・フィックスメニューに名を連ねました。今までは、お一人分に桃半実を使用していましたが、今期は一玉半です!

 果実は、外皮の内側に美味しさがあるのですが、皮をむくことでこの美味しさも取り除いてしまうことになります。そこで、今期は外皮をつけたまま、デザートへと仕上げてゆきます。オーブンで低温3時間「焼かれ」た桃は凝縮した味わいとなり、フランスから届いた酸味のあるペッシュ・ドゥ・ヴィーニュという桃のピューレを絡めます。さらに、くし形にカットした皮付きの桃を、にバーナーで表面を「炙った」ものは、ほのかな香ばしさをまとい、内包する旨味を引き立てるかのよう。そして、これでもかと桃を加えたソルベは、桃そのものを食すよりも桃を味わうことができるでしょう。

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 生で食するのであれば、家で切り分ければ十分だと思います。しかし、デザートとして皆様に提案する場合には、思いもつかない、それも美味な、逸品に仕上げなければなりません。なぜ、毎年のように、7月から桃デザートをご用意しなかったのか?しなかったのではなく、できなかったのです。桃の美味しさを表現するにどうしたものかと試行錯誤の日々が必要だったのです。そして、ついに皆様にご案内できる日を迎えました。

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Vacherin aux PÊCHES

岐阜県飛騨もものヴァシュラン

(追加料金 ディナー+800円)

 

 今期の梅雨の長期化と日照不足は、多くの作物に影響を与えています。桃も例外ではありません。8月早々に、岐阜県の「飛騨もも」をご用意する予定でおりました。しかし、亀山さんの「Benoitへは美味しい桃を送りたい」との、強い想いがあり、収穫が遅れております。到着しだい、facebookinstagramでご案内させていただきます。

 「亀山さんとは誰ですか?」と、お思いではないでしょうか。岐阜県高山市に居を構える亀山果樹園さんの園主です。どのような果樹園なのか、ご紹介させていただこうとブログを執筆中です。今少しのお時間をいただきますこと、なにとぞよろしくお願いいたします。

 

≪すももとももはべつのもも!≫

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 香川県さぬき市には「ひうらの里」という地があります。彼の地は、江戸時代から続くモモ栽培地だといいます。生産量を県別でみると、スモモは群を抜いて山梨県です。しかし、代々続く栽培の歴史は、ひうらの里で美味しいモモとスモモが実ることを教えてくれます。

 このひうらの里で、代々モモとスモモ栽培を手掛けるのが、飯田桃園さんです。完熟まで収穫を待ち、Benoitへ送り出す彼らのスモモは、芳醇な香り、弾力のある食感に溢れ出てくる果汁、スモモらしい心地良い酸味。品種が変わるたびごとに、その美味しさに魅せられます。

 画像のスモモが白く粉拭いて見えるのですが、これは残った農薬などではありません。キュウリやブドウなどにも見ることができる、「ブルーム」と呼ばれるものです。健全な植物自体がもっている、抗菌能力のひとつです。手間暇を惜しまず、健全に育てているかの証でもあります。

 スモモの特徴でもある酸味を利用し、バニラの風味豊かな熱々のデザート「クラフティ」というスタイルに仕上げていきます。クラフティは、甘酸っぱいグリオットチェリーやルバーブで仕上げることの多いフランス伝統のデザート。これを、同じく酸味が特徴のスモモで、ましてや飯田桃園さんの逸品であれば、美味しくないわけがありません。

 Cookpotと名付けられた耐熱の器の中に、アーモンドパウダーをたっぷりと。そこに、外皮を残してくし切りにしたスモモをごろごろと加えてゆきます。そこへアパレイユと呼ばれる、焼きプリンのような生地をそそぎ入れ、熱々に焼いてゆきます。

 焼き上げることで、スモモの酸味がまろやかになり甘さが引き立てられます。卵とクリームの焼き上がった時の優しい香りの中に、バニラとアーモンドの甘い香り、さらにスモモの甘酸っぱい香りが。ふるっとした食感の生地の中に、甘酸っぱいスモモが…

 レ・リボーと呼ばれる、低脂肪発酵ミルクで仕上げたヨーグルトのようなアイスクリームとともにお楽しみいただきたいです。きっと皆様を「口福な食時」へと誘(いざな)うことでしょう。

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Clafoutis aux PRUNES

香川県“ひうらの里のすもも”のクラフティ

(追加料金 ディナー+500円)

 

≪レモンのタルト…レモン…≫

 これほどまで国産食材を愛し、旬を追い求めている自分が、Benoitパティシエチームに膝を屈しました。

 自分が皆様にメニューをご紹介する際に、旬の食材のものではない、ましてシェフの、シェフパティシエのこだわりを感じ得なかった場合は、お勧めしていないことをご存知かと思います。今、日本は猛暑の時期にあり、柑橘類は皆無です。そこに、レモンのタルト、なんと!レモンが登場したのです。正直に言ってしまうと、まったく興味がありませんでした。なぜこの時期に…ところが、美味しい…

 レモンクリームをタルトに載せただけではなかったのです。見ただけでは分からない、タルトとレモンクリームの間に、チョコレートが隠れていたのです。Benoitが使用するチョコレートといえば、アラン・デュカスのチョコレート工房の逸品です。74%カカオのコクと心地よい甘さとほろ苦さ、さらにグリュエ・ドゥ・カカオのガリッとした食感と香ばしい風味が加わっていたのです。

 Benoitパティシエチームに、美味しさの感想と時同じく、謝罪の意を伝えたことを、ここにご報告させていただきます。

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Tarte au CITRON

レモンのタルト

(追加料金 ディナー+500円)

 

≪営業終了時間変更のご報告です。≫

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 東京都の要請を受け、営業終了時間を22時とさせていただきます。皆様にはご不便をおかけいたしますが、ご理解のほどなにとぞよろしくお願いいたします。

 

≪ウイルス除去空気清浄機を導入いたしました。≫

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 目に見えないウイルスに対し、二酸化塩素の効果を利用した、「除菌」「ウイルス除去」を目的とした空気清浄機「nanoseedα」を導入いたしました。これほどの大きさしかないにもかかわらず、100畳の広さに効果を発揮するといいます。Benoitでの「口福な食時」のひとときに、皆様が少しでも「安心・安全」を感じていただければ幸いです。

 医療従事者の皆様は身の危険を顧みず最前線で奮闘してくださっております。新薬開発に向け、寝る間も惜しんで研究を重ねている方々がいらっしゃいます。物流を途絶えないように、そして生活必需品を滞りなく取り揃え我々に提供してくださる方々がいらっしゃいます。彼ら皆様を支えてくださっている保育園や学童、役場など、多くの方々がいらっしゃいます。

 今までの日々の生活が、知らない方々の尽力の上で成り立っていることに気付かされます。この場をお借りし、深く深く御礼申し上げます。Benoitスタッフ一同、これまでの皆様の努力を胸に刻み、細心の注意をもって、日々最善を尽くすことをお約束いたします。

 

 最後まで読んでいいただき、誠にありがとうございます。皆様にお召し上がりいただきたい料理の一部をご紹介させていただきました。まだまだ言葉足らずなところがございます。何かご要望・質問などございましたら、何気兼ねなく自分へのメールをご利用ください。もちろん電話でも快く承ります。

 

 今年の干支である「庚(かのえ)」という漢字を使った「庚伏(こうふく)」という言葉があります。夏の一番暑い時期という意味なのですが…考えすぎでしょうか、今夏は十分な暑さ対策が必要なのかもしれません。

 外すことのできないマスクは、体の暑さを逃す妨げになるばかりか、水を飲む行為すら億劫(おっくう)にいたします。今夏は、意識的にというよりも計画的に、こまめな水分補給と少しばかりの塩分補給をお心がけください。

  「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com