kitahira blog

徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

2021年3月 Benoit特別プランとお勧めシャンパーニュ、そして旬の食材のご案内です。 

 2021年3月14日、例年よりも早く東京都の開花宣言が発せられました。靖国神社の境内にある標本木を、気象庁の方が「1、2…5輪。開花ですね」と数えてゆく光景は、この時期の風物詩といっても良いのではないでしょうか。この桜の開花宣言や、ウグイスやセミなどの初音などは、「生物季節観測」という名称で気象庁が実施している公式発表です。アナログとも思える目視や耳を使った確認方法ですが、桜の花を見ることで春の訪れを実感することを思うと、あながち的外れなことでもありません。

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 昔々の日本では、いつどのようなタイミングで農作業を始め、終えれば良いかを、自然の動植物に頼っていたようです。桜の開花は、田起こしを始めることを教えてくれます。東北の方では桜の開花が遅いため、コブシの花が咲いたこを目安としていたといいます。そのため、この樹は「田打ち桜」という別称を持っています。

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 「さ」は「農耕の神」を、「くら」は「座」を意味します。そう、山より舞い下りた神が宿る場が、「さ・くら」です。農耕民族である日本人が桜の開花に一喜一憂する理由は、日本人のDNAに刻み込まれた、古代の「田の神」信仰なのでしょう。神が舞い降りたことへの感謝の気持ちを表した「お祭り」こそ、「花見」のルーツなのだといいます。

 現代人は、「暦(こよみ)」という世紀の大発明があまりにも便利なために、この暦に支配されている感があります。それに対して、自然界に生きる動植物は、我々が見失ってしまっている四季折々の機微を察して行動しています。そこで、彼らの助けを得ながら季節の移ろいを捉えてゆこうというのが、今の「生物季節観測」です。

 気象庁管轄下の全国の気象台と測候所を合わせた58地点で、鳥や昆虫などの動物23種と草木の植物34種を、場所によって観測対象は違えども、1950年年代より70年もの歳月を観測し続けてきたのです。その中でも最重要な植物がサクラであることは、58地点全てで見届けてきたことが物語っています。

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 昨年の2020年11月10日、この生物季節観測の対象が大幅に縮小することが発表されました。開花についてはウメとサクラはもちろん、アジサイとススキを残しました。黄葉・紅葉の対象としてイチョウとカエデ。この6種のみです。動物については、全廃が決定されました。

 昨今の住環境の変貌に加え、地球温暖化も影響しているのでしょう。動物を探すことが困難になったことが原因のようです。確かに、都内でウグイスの鳴き声を耳にしたことはありません。生物学的に言えば、ウグイスの生息数が激減しているか、すでに他地域へ移り住んだという結論で良いですが、生物季節観測では生存地域の確認が目的でないので、致し方ないのかもしれません。

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 今年中に、気象庁はどのような基準で生物季節観測を続けてきたのかを公表してくれると言います。我々が四季の機微を捉えるためのひとつの指針としたいものです。そして、マスクを付けながらの散策ではありますが、周囲に芽吹く、花開く草木を、皆様自身でそのリストに加筆してゆくことをお勧めいたします。翌年には、そのリストが皆様に移ろいゆく四季の美しさを教えてくれるはずです。

 

営業時間変更のお知らせ。

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 昨今の新型コロナウイルス災禍は、飲食店の弱さをまざまざと見せつけられました。人生を豊かにする上で、飲食店はなくてはならないものですが、平穏無事な状況下でしか成り立たないということ。順風満帆とは程遠い状況下に陥りました。今のBenoitは、この災禍の嵐に抗すべく、急ぎ帆を閉じ荒海の中に漂っている帆船のようなものでしょうか。

 自走できる船とは違い、風を頼りに進む帆船は、港に停泊するさいに錨をおろし、出発の際にこの碇を巻き上げる力を利用して、行き足をつけます。海が凪(な)いでいるとき、いざ出発しようにも、行き足のつかない帆船では、弱弱しい風ではどうすることもできません。そこで、Benoitは暴風雨の際には帆をたたみ、碇を海に沈めることで耐え抜き、少しでも海が穏やかになったときに、碇を巻き上げることで行き足を付け、皆様のご期待という風を受けとめるように、真帆片帆(まほかたほ)と大海原を進んでゆこうと思います。

 昨今の日本の状況を鑑み、誠に勝手ながら、Benoitの「営業時間を短縮」させていただきます。皆様には、ご不便をおかけいたしますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。期限につきましては、緊急事態宣言および、都の要請に従わせていただきます。

ランチ

1130分から1530 (1400 ラストオーダー)

ディナー

1700から2100 (1930 ラストオーダー)

 

花より団子特別プランのご案内です。

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 万物を育て上げ、四季折々の風はその土地土地に味わいをもたせる。その風のもたらした美味しさこそ「風味」であり、我々はここに「口福な食時」を見出します。そして、旬を迎える食材は、人が必要としている栄養に満ちています。そして、人の体は食べたものでできています。「美しい(令)」季節に春食材が「和」する逸品に出会い、

 そこで、日頃より並々ならぬご愛顧を賜っている上に、自分よりご案内している長文レポートに目を通していただけている皆様の労に報いるため、旬の食材をつかった美味なる料理を食することで、無事息災に日々を過ごしていただきたい、との想いを込め、花より団子特別プランをご案内させていただきます。期間は、メールを受け取っていただいた日より、2021331()まで。ご予約は、このメール(kitahira@benoit.co.jp)への返信をご利用ください。お急ぎの場合には、Benoitメールアドレス(benoit-tokyo@benoit.co.jp)より、もちろん電話でもご予約は快く承ります。

花より団子特別プラン

ランチ

前菜x2+メインディッシュ+デザート

5,500円→4,200円(税サ別)

ディナー

前菜x2+メインディッシュ+デザート

7,800円→6,200円(税サ別)

※プリ・フィックスメニューの料理内容は、当日にメニューをご覧いただきながらお選びいただきます。ご希望人数が8名様以上の場合は、ご相談させてください。

 

シャンパーニュAYALA≫を特別価格でいかがですか?

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 旧名シャンパーニュ地方のアイ村に1860年から本拠地を持つ老舗シャンパーニュメゾン「AYALA(アヤラ)」。彼らのシャンパーニュの特徴はシャルドネ種にあり。アイ村のシャルドネは果実味があり、酸味が柔らか。そこに、ピノ・ノワール種を合わせてつくる、その作りは常にエレガントであり人々を魅了し続けています。

 そこで、Benoitシェフソムリエ永田からのお誘いがございます。この美味なるシャンパーニュをBenoitの料理とともに楽しまれませんか、それも特別価格にて…

AYALA BRUT MAJEUR  6,000(税サ別)

 「フレッシュでエレガント、控えめなドサージュ」というメゾンスタイルを最も表したスタンダード・キュヴェ。平均3年の瓶内熟成を行い、打栓後さらに4~6ヵ月間の瓶熟後、リリースされるためまろやかなピノ・ノワールの味わいが前面に感じられます。そこにシャルドネが生き生きとした風味を与えているため、重さを感じない仕上がりです。アヤラの名刺代わりの1本。

  そして、ディナー限定で2007年のヴィンテージシャンパーニュをご案内させていただきます。

AYALA BRUT MILLÉSIMÉ 2007  10,000(税サ別)

 良年のみ醸されるミレジム。2007年の出来は称賛に値する、素晴らしい香りと堂々とした味わいピノ・ノワールの力強さとアルコール感に、シャルドネによる魅力的なフレッシュ感とエレガントさが加わっています。 ハチミツ・アカシア・トースト香・クリのデリケートな香りです。このミレジムはアイ村・特級のピノ・ノワール種をベースとしており、熟成感も感じられ、素晴らしい香りと堂々とした味わいの見事なシャンパーニュです。

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※本数に限りがございます。ご希望の際には、このメールへの返信でご希望本数をお伝えいただけると幸いです。

 

イタリアから飛行機に乗って「グリーンピース」が届いています。

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 日本でもお馴染みの春食材の「グリーンピース」。ところが、缶詰の普及がこの食材への偏見を導き、好き嫌いの多い食材になってしまったことは否めません。しかし、鮮度の良いグリーンピースの美味しさは格別で、春にしか楽しむことができない旬の味わいです。

 グリーンピースが完熟すると「えんどう豆」。未熟だから栄養が貧弱かと思いきや、このグリーンピースの栄養価はまさにエリート級です。豊富なビタミンB群は糖質や脂質の代謝を盛んにし抵抗力を、さらにビタミンCとの相乗効果で感染症から守ってくれます。特筆すべきはカリウムと食物繊維の豊富さです。便秘解消、生活習慣病の予防にも最適。まさに春の美容と健康のためにあるような食材です。

 国産の食材を愛する自分ですが、今回ばかりは驚きの美味しさを誇る、地中海の太陽をさんさんと浴びて育ったイタリア産に席を譲るしかありません。船便では間に合わないため、飛行機で運んできた逸品です。もちろん、品種が違うといえば違うのですが、あまりにも国産を凌駕する甘みのある美味しさは、一食の価値あり。生の鞘(さや)を口にすると、鞘の筋が口中に残るものの、春らしい甘さを堪能しながらポリポリと食べることができるのです。鞘がそれほどまでに美味しいということは、中の粒粒はいかほどのものか。

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Délicat velouté de PETITS POIS et fromage frais

グリーンピースのスープ リコッタチーズ

※ランチとディナー、ともにプリ・フィックスメニューの前菜の選択肢に名を連ねております。

 

Benoitの春の目覚めは讃岐から!

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 香川県農業試験場で試験栽培を重ねた末、2005(平成17)年にオリジナル品種として誕生したのが「さぬきのめざめ」です。アスパラガスは、種をまいて数ヶ月で収穫できる野菜ではなく、植えてから収穫までに3年間を要します。この期間、アスパラガスはわさわさとした葉を成し、香川県ならではの陽射しを十二分に受けることで、根に栄養を蓄えていき枯れてゆく。これを毎年繰り返すことで、大地に根を広げてゆかねばなりません。そう、まだ産声を上げたばかりの特選食材なのです。

 今回Benoitに送っていただいているアスパラガスは、県庁所在地のある高松市の南に位置している香南町から。この地の畑を展開している、「薫る農園」さんからです。栽培者は、香川の農業女子として活躍中の河田薫さん。Benoitに届けられる、彼女の手掛けた「さぬきのめざめ」は、穂先がきゅっと締まった美しい姿、根元までやわらかいが歯ごたえはシャクシャク。鮮度が良いので、みずみずしいのはもちろん、にじみ出でるアスパラガスのジュースには野菜特有の甘さを感じとれます。

 香川県の自然と、河田さんの弛まぬ努力が育んだ「春一番の美味しいめざめ」は、東京のBenoitで出会うのは、北海道の天然サクラマスなり。

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SAKURAMASU sur la peau, asperges vertes cuites et crues

サクラマスポワレ グリーンアスパラガスさぬきのめざめ

※ランチとディナー、ともにプリ・フィックスメニューの魚料理の選択肢に名を連ねております。

 

≪西の「あまおう」、東の「とちおとめ」、やはりBenoitは「紅ほっぺ」。

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 多くのイチゴ品種が誕生する中で、1980年代には≪東(栃木県)の「女峰」、西(福岡県)の「とよのか」≫」という二大勢力が台頭するも、ここに「章姫」が割り込んできます。時が過ぎ、2000年前後ともなると、≪東(栃木県)の「とちおとめ」、西(福岡県)の「あまおう」≫へと移り行く。そして、ここに章姫と「紅ほっぺ」が姿を見せます。日本のイチゴ生産量の1位栃木県2位福岡県に負けじと健闘しているのが、地理的にも中間に位置している静岡県(4位)。イチゴ勢力図を二分する中に、割って入るかのように登場する≪章姫≫と≪紅ほっぺ≫という品種を生み出したのも、静岡県。甘さでは「あまおう<とちおとめ」、酸味では「あまおう>とちおとめ」。「紅ほっぺ」はどちらも中間に位置しているのだといいます。甘みと酸味を兼ね揃え、酸味があるからこそ甘みも冴えるのです。

 静岡県掛川の「赤ずきんちゃんおもしろ農園」の赤堀さんが丹精込めて育て上げた「紅ほっぺ」は、みずみずしくしゃくしゃくの食感であることはもちろん、心地良い酸味がイチゴの優しい甘さを引き立てています。甘いだけではない、イチゴの優劣はこのバランスによって決まる。Benoitに送っていただいているイチゴの品質にはただただ脱帽するのみ。豊潤な香りをはなちながら、美しい輝かんばかりの赤い色、口中いっぱいに広がる豊潤な甘さに心地よい酸味、いかに丁寧に育てられた「紅ほっぺ」であることか。自分のみならず、パティシエチーム皆が「美味しい」と納得の逸品です。

 今年は、イチゴパフェにように盛り付けてゆきます。既製品のイチゴのシロップもピューレも使用しない、赤堀さんの「紅ほっぺ」だけを使用した逸品です。バニラビーンズをたっぷり加えた濃厚なバニラアイスクリームをアクセントに、軽やかな生クリームが味わいをまとめてくれているようです。

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FRAISE MELBA

静岡県紅ほっぺのメルバ

※ランチとディナー、ともにプリ・フィックスメニューのデザートとして、+800円でお選びいただけます。

 

北平のBenoit不在の日

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 私事で恐縮なのですが、自分がBenoitを不在にしなくてはならない3月の日程を書き記させていただきます。滞りがちだったご案内を充実させるべく、執筆にも勤しませていただきます。ご不便をおかけいたしますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。

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 上記日程以外は、Benoitを優雅に駆け回る所存です。自分への返信でのご予約はもちろん、BenoitのHPや、他ネットでのご予約の際に、コメントの箇所に「北平」と記載いただけましたら、自慢の料理の数々を語りに伺わせていただきます。自分が不在の日でも、お楽しみいただけるよう万全の準備をさせていただきます。何かご要望・質問などございましたら、何気兼ねなくご連絡ください。

 

≪季節のお話 「雪や氷がとける、どう書きますか?」≫

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 昨今のコロナウイルス災禍で身動きが取れない中で、故郷新潟から一枚の写真が送られてきました。春の陽射しが「雪どけ」を促し、その合間からフキノトウが芽吹いていました。懐かしい、恋しいと思いつつ、「とける」という言葉が気なってしまったのです。雪や氷が「とける」と書く時、「溶ける」、「融ける」、はたまた「解ける」?

 皆様はどう思われますか。今の時期に…そう、この難問に何とか答を見出そうと悪戦苦闘しておりました。あくまでも推測の域を出ませんが、自分なりに結論が出たような気がいたします。詳細はブログに綴っております。以下よりご訪問いただけると幸いです。

kitahira.hatenablog.com

 

 最後まで読んでいただき、誠にありがとうございます。

 今年の辛丑が始まりました。その「辛」の字の如く優しい年ではないかもしれません。しかし、時は我々に新地(さらち)を用意してくれている気がいたします。思い思いの種を植えることで、そう遠くない日に、希望の芽が姿をみせることになるでしょう。

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 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご多幸とご健康を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com