夏山 蒼翠(そうすい)として滴(したた)るが如く (臥遊録 郭煕)
さんさんと降りそそぐ陽射しを避けようと、木陰を探し一息つく。樹々の間を吹き抜ける優しい風は、冷たいわけではないが、涼しさを感じるものです。さらに、この風は、夏の香りを運んでくれる。「薫風(くんぷう)」とはこのことをいうのでしょう。
木陰から見上げてみると、そこには何か別世界が広がっているかのような錯覚にとらわれます。熱波に負けず、青々と美しい樹々は、まるで夏を喜んでいるかのようです。生い茂る葉々に陽射しがあたることで、透けるように目に映る「結び葉」。重なり具合による、葉色の青と緑のうつろいに、光と影が加わり、なんと幻想的な世界が身近にあることか。
「蒼(そう)」は青色のことを意味し、五行では春の色。「蒼蒼(そうそう)」とは、空の青々しい色であり、草木が青々と生い茂っている様をいう。春も終わりを迎えることで、その蒼さがいっそう深まるからなのか、蒼蒼とは夏こそあい相応しい。「翠(すい)」はカワセミの美しい羽色に由来する青緑色のこと。「滴(てき)」は、液体がしずくとなり、したたり落ちることであり、「滴滴(てきてき)」は色や光が満ち満ちたるさまをいう。そう、語源辞典「漢辞海」が教えてくれる。
空の蒼蒼としたさま。結び葉は、カワセミの羽色のように翠の色合いのグラデーションをなす。蒼蒼としているから翠が冴える。ともに、滴滴しているのが、夏の盛りであり、蒼と翠が滴るだと、郭煕は教えてくれる。「夏滴る」とは、なんと素晴らしい、美しい表現なのでしょうか。夏滴る情景は、猛暑に疲弊している我々に、なにか「癒し」のようなものを与えてくれます。
関東「梅雨明け」が宣言され、はや8月7日には二十四節気の「立秋」を迎えました。しかし、秋は名ばかり、まだまだ猛暑日が続くようです。無理は禁物、十分な休息と睡眠、こまめな給水と塩分補給をお心がけください。陽光に照らされた木々の葉の美しさを眺めながら、永遠の夢の(意識の遠のいた)世界から抜けだせなくならないように…ゆめゆめ忘るることのなきようお心がけください。
さて、この太陽の恩恵を、嫌というほど受けながら、愚痴一つこぼさない草木たち。生きる上で必要な太陽光ではありますが、何事にも限界があり、一日中めいっぱい光合成していると草木も疲れてしまいます。陽射しが強いからといって、日陰に逃げることも許されず、樹はまだ頑強そうですが、草は生命力が強いといっても草ですから、必死に耐え忍んでいるのでしょう。夏の強烈な陽射しを浴び、むわっとする熱気が草草より立ち上る光景を、古人はこう表現しました。
「草熱れ(くさいきれ)」
この言葉からにじみ出る、真夏の熱気。猛暑であれば猛暑で、夏の陽射しを恨めしく思う。冷夏であれば冷夏で、秋の実りへの不安を感じる。なんだかんだと、過ごしやすい夏などありようもない。それが夏であり、ありのままを受け入れなさい。このようなメッセージを、古人は「草熱れ」に込めたのでしょうか。
生きとし生けるものは、栄養をとらなくては生きてはいけません。そこで、Benoitでは旬の食材を美味しくお召し上がりいただくことで、皆様に「熱(いき)れ」を乗り越えていただこうと考えました。
「夏熱(いき)れ、乗り切れBenoitで!」
美味しいと感じることで、心が満たされ、体の中から湧き出(い)でる生命力。旬の食材には、今我々が欲している栄養が満ち満ちています。そこで、この旬の食材を、皆様に順次ご紹介させていただきます。
まずは、皆様にとっての「早苗饗(さなぶり)」は、いまだ開催されていないのではないかと思います。そこで、ささやかながらその饗宴の会場に、Benoitをご利用いだけないものかと、清少納言の「夏は夜 月のころはさらなり」という名言を拝借し、「八月尽特別プラン」を再度ご案内させていただきます。
期間は、メールを読んでいただいた日より、2020年8月31日まで、土日祝日含むプランです。ご予約は、自分へのメールをご利用ください。急ぎの場合には、以下のBenoitメールアドレスより、もちろん電話でもご予約は快く承ります。
≪八月尽ランチプラン≫
前菜+メインディッシュ+デザート |
3,800円→3,530円(税サ別) |
前菜x2+メインディッシュ+デザート |
4,800円→4,460円(税サ別) |
前菜+メインディッシュ+デザートx2 |
夢のダブルデザート 4,460円(税サ別) |
≪八月尽ディナープラン≫
前菜x2+メインディッシュ+デザート |
7,100円→5,300円(税サ別) |
前菜+メインディッシュ+デザートx2 |
夢のダブルデザート 5,300円(税サ別) |
プリ・フィックスメニューの料理内容は、当日にメニューをご覧いただきながらお選びいただきます。ご希望人数が8名様以上の場合は、ご相談させてください。
≪Benoitシェフソムリエ永田の秘蔵のコレクションを、特別価格で皆様へ!≫
ワインの銘醸地として、名高いブルゴーニュ地方。南北に拡がる彼の地の、ほぼ中央に位置しているのが「Beaune (ボーヌ)」の街。そこに、1750年から素晴らしいテロワールを表現したワイン造りを行なっている老舗があります。45haの自社畑を所有し、そのうちの殆どがプルミエ・クリュとグラン・クリュ。また、パートナーの契約農家から供給されるブドウで自社畑産ワイン同様に高品質なワインを醸しているこの造り手は…
「Domaine CHANSON (ドメーヌ・シャンソン)」
さて、なぜDomaine CHANSONの話をしているのか。いつもであれば、ご当主が来日し、Benoitでワインパーティー開催!と告知するのですが、昨今の状況はこれを許しません。そこで、皆様には、この老舗が醸すワインをBenoitのお食事とともに、皆様のご都合で、お楽しみいただこうと。特選ワインを特別価格で、皆様にご提案させていただこうと思います。Benoitシェフ・ソムリエ永田の、この一言から始まりました。
「このような逸品が、ワインセラーの奥底に眠っているのです」と。
≪白ワイン≫
2015 Chassagne-Montrachet 1er cru Les Chenevottes |
16,000円(税サ別) |
2015 Puligny-Montrachet 1er cru Les Folatières |
16,000円(税サ別) |
≪赤ワイン≫
2012 Corton grand cru |
16,000円(税サ別) |
※すでに特別価格なため、ワインの日では割引対象外となることをご了承ください。
希少な逸品なために、もちろん各1箱(12本)しか保有しておりません。ご希望の際は、すぐに返信またはBenoitへご一報をいただけると幸いです。2020年10月末までに、Benoitへお越しいただきますこと、なにとぞよろしくお願いいたします。ご予約日まで、希望数を大切に保管させていただきます。
どれほど美味しいワインなのでしょうか?ワインごとに自慢話をブログに書き記させていただきます。少しでも参考になれば幸いです。
≪待望の桃デザートが、新たな姿で登場です!≫
待望の桃のデザートのご案内です。今年は「ピーチ・メルバ」ではありません。ついにBenoitパティシエールチームが新作を登場させたのです。デザート名は、「岐阜県“飛騨もも”のヴァシュラン」。はて、ヴァシュランとは?
≪岐阜県の亀山果樹園さんとは?≫
岐阜県高山市に居を構える亀山果樹園さん。「飛騨もも」と称される桃、収穫の早い順から「みさか白鳳」、「白鳳」、「あかつき」そして「昭和白桃」と栽培しています。いったいどのような地で、どのような果樹園なのでしょうか?
≪季節のお話「半夏生~後編~」です。≫
8月をすでに過ぎながら、7月1日の雑節「半夏生」を、ブログ「季節のお話」として先日にご案内させていただきました。その続編となる「半夏生~後編~」です。「ハンゲショウ」は「半夏生」?それとも「半化粧」?お時間のある時に、ブログをご訪問いただけると幸いです。
其処彼処で目にするサクラの樹。桜色に咲き誇った時期は終わり、今は緑生い茂る堂々たる姿へ。涼を得るため木陰に入り、きらきら輝く心地良い木漏れ日に誘われるかのように上を見上げると、太陽に照らされ透けんばかりに輝く一葉一葉。手を取り合うかのように重なる葉を「結び葉」というようです。
暑い日々が続きますが、ここは昔の日本を偲(しの)びながら「結び葉」を楽しむという散策も一興なのでは?そして、この「結び葉」探訪の「結びは」Benoitだということをお忘れなきように。旬の食材が皆様をお待ちしております。
「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。
ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬