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徒然なるままに、Benoitへの思いのたけを書き記そうかと思います。

2022年1月 Benoit「去りゆく(1月31日までの)晩冬お勧め料理/デザート」のご案内です。

 風が季節を導き、彩りばかりではなく、喜怒哀楽をも表願しているかのような美しい「風景」を我々に見せてくれます。そして、四季折々の風は国内各地方にその地ならではの「風土」を作り出すことになる。その多様な「風土」で育まれた食材は、同じ野菜であっても味わいに些細な違いがあり、それが「風味」となる。太陽の恩恵を十二分に受け、風味豊かに育ったものこそ、旬の食材です。

 コロナウイルス災禍によって、我々の日常が停滞したとしても、季節は巡り去ってゆきます。各季節には、旬を迎える食材があり、我々を待ってくれるという「優しさ」は持ち合わせていません。旬の食材でこしらえた料理の数々は美味しいばかりではなく、いま我々が欲している栄養をも持ち合わせており、見過ごすという選択は、あまりにももったいないものです。

 そこで、「去りゆく(131日までの)晩冬お勧め料理」をご紹介させていただきます。

 

≪寒いからこそ、牡蠣(かき)のグラタン!≫

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 岩手県から届けられるカキ。海から断崖絶壁がそそり立つリアス式海岸は、山のミネラル豊富な清らかな水が海へと流れてゆき、豊富な植物性プランクトンを育みます。そのプランクトンを食(は)むカキが、美味しくないわけがありません。瀬戸内海の穏やかな海流が、牡蠣筏による養殖に適しているように、規模こそ小さいですがリアス式海岸の湾もまた好適地なり。

 カキは殻から剥き、その殻の中に、しんなりと甘さを引き立てるように熱を加えた下仁田葱を盛ります。カキ身をポロ葱の上にのせ、シャンパーニュを降り注ぎ、サバイヨンという卵黄を使ったクリームのソースをかぶせるようにし、オーブンへ。焼き色がつくことで蓋ようになったサバイヨンの下では、シャンパーニュによってふつふつとカキが蒸されてゆくのです。さらに、このサバイヨンの蓋が牡蠣の旨味のスープを逃がしません。

 生ガキも良いですが、フランスの伝統が生み出した「カキのグラタン」こそ、カキの美味しさを最大限に引き出す逸品かもしれません。あ~シャンパーニュや白ワインがよんでいる…テーブルに供された時に「3つもある!」というお言葉をいただきます。しかし、一口お召し上がりいただいた後には…その美味しさから「3つしかない…」と口から漏れ出ます。

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HUÎTRES gratinées au sabayon de Champagne

殻付き牡蠣のグラタン シャンパーニュ

 プリ・フィックスメニューの前菜の選択肢の中で、ランチは+1,200円、ディナーでは+1,000円にてお選びいただけます。しかし、入荷に限りがあるため、ご予約の際にご希望の数量をお伝えいただけると幸いです。

 

香川県から、鮮度抜群のブロッコリーが直送されています!≫

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 香川県香南町の薫農園さんから届けられるブロッコリーは、緑美しく、ずっしりと重い。鮮度が良い上に、味わいが素晴らしとシェフは言う。ちょっとばかり調べてみると、良いブロッコリーの見分け方には、「花蕾(からい/頭のこんもりしている花のつぼみ)が密で濃い緑色である」「外葉(茎から伸びている小さな若葉)がしおれていない」「茎が変色しておらず、≪す≫が入っていない」ものが良いといいます。段ボールに入っていた多くのブロッコリー、どれ一つとして当てはまらないものはない。

 鶏のフォンで湯がき、ミキサーにかける。素材が美味しいので、余計なことは何もしない。とろりとしたスープに仕上げるも、この中にクリームもミルクも加えない。だからこそ、ブロッコリーそのものの美味しさを堪能できます。季節は冬にもかかわらず、緑鮮やかな色、口中に広がる香とブロッコリーらしい甘さは、一足先に春の訪れを想わせるかのようです。

Velouté de BROCOLI, fromage frais

香川県河田さんのブロッコリーのスープ リコッタチーズ

 ブロッコリーの実力といえば、毎日でも食卓に並べたいほど。カロテンとビタミンCが豊富であるばかりか、体内の解毒酵素や抗酸化酵素の生成を促進し、体の抗酸化力や解毒力を高める「スルフォラファン」を含んでいます。美味しくいただきながら、身体にも良き栄養を!ランチ・プリ・フィックスメニューの前菜の選択肢としてお選びいただけます。

 薫農園さんをブログでご紹介しております。お時間のある時に、以下よりご訪問いただけると幸いです。

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≪フランスから飛行機に乗ってマッシュルーム到来!≫

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 「マッシュルーム」は、すでに日本でもお馴染みのキノコです。キノコが好きな日本人なだけに、シイタケ、シメジやマイタケなどの美味なるキノコが一年中店頭に並ぶ上に、地方に赴くとあるわあるわ多種多様なキノコたち。この風味豊かな強豪ひしめく中に割って入るかのように渡来してきたのが、マッシュルーム。可愛い姿で優しい味わいのキノコという印象をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

 この概念が覆(くつがえ)ります。なぜ、Benoitは国産ではなくフランス産を購入するのか?生鮮食材は鮮度が要(かなめ)です。しかし、この鮮度を犠牲にしてでも飛行機に乗せてフランスから届いたマッシュルームは、国産とは別のキノコではないかと思えるほどに違いがあります。

 Benoitでは、フランスのマッシュルームの美味しさを十二分にご堪能いただきたく、ヴルーテと表現されるなめらかなスープに仕上げます。こにれでもかとたっぷりとフランスのマッシュルームを使用します。色こそ地味ながら、スープボールに注がれた時の芳しい香りに魅せられ、コクのある味わいに驚かれることでしょう。ディナー・プリ・フィックスメニューの前菜の選択肢としてお選びいただけます。

Velouté de CHAMPIGNONS DE PARIS

フランス産マッシュルームのスープ

 

≪「ヒラスズキ」というスズキの仲間がディナーに登場。どんな魚?≫

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 スズキ目に分類される魚群は多種多様に及び、スズキはもちろん、サバの仲間であるカツオやマグロ、タイの仲間も忘れてはいけません。さらに、イサキやハゼにまで。馴染みの魚名ばかりではないでしょうか。餌が多く、産卵と子育ての場所として便利な沿岸部をほぼ独占しているようなもの。さらに回遊魚として他の環境下にも進出しているのです。

 今回の特選食材は、スズキ目スズキ科のスズキ。ではなく、同目同科に身を置く「ヒラスズキ」です。見た目には、そっくりなスズキとヒラスズキですが、その生態に大いに違いがありました。スズキは、日本沿岸の其処彼処で出会える魚で、餌となるエビや小魚を追い求めるように、春ほどに内湾に移動し、夏には河口や汽水域に入ります。ヒラスズキは、千葉県沿岸から南にかけての海域にしか生息せず、河口や汽水域には入り込みません。

 この生態の違いこそ、スズキとヒラスズキの美味しさの違いを生み出しているのです。行動範囲が広く、イワシの群れを追うかのように内湾へと入り込むスズキは、夏を代表する食材であり、味わいが濃く旨味に満ちています。汽水に入スズキは、淡水魚のような臭みを感じるため、我々日本人はあまり良いイメージを持っていないのではないでしょうか。しかし、濃厚な味わいは、洋食ではソースとの相性が抜群であり、欠かせない食材です。

 ヒラスズキは、いまだ生態が解明されていない謎多き魚。外洋に面した沿岸部の岩礁海域、いうなれば凪(なぎ)とは無念な海域で耐え忍ぶように生きている。そして、海水が冷たくなることで回遊してくるサバやサンマ、さらに岩礁に棲むエビ・カニ類を餌にしているのでしょう。冬にその美味しさの本領を発揮します。なぜ我々に馴染みがないのか。それは生息域が限られていることもあり、漁獲量があまりにも少ないからです。

 

≪「ヒラスズキ」のブイヤベース風味とは?≫

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 この切り身は、マダイのようですが、ヒラスズキです。捌く手にまとう美しい脂の輝き、うっすらピンクがかる透き通るような身色、そして弾力のある身質。荒波にもまれにもまれているからこその美味しさが、ここに内包されているのです。

 鉄板で焼き色を付けた後に、オーブンを使いふんわりと焼き上げます。捌いた後の魚から、香味野菜で磯臭さを抑えながら魚の旨味を煮出すようにスープをとります。ここに、トマトとサフランが加わることでブイヤベースのように仕上がるのです。このスープを煮詰めとろみがでたものを、焼き上げたヒラスズキにまとわせてお皿に盛り付けます。相性抜群の野菜「ウイキョウ」との相性もお楽しみください。

HIRASUZUKI, fenouil au fumet de bouillabaisse

ヒラスズキのオーブン焼き ウイキョウとジャガイモ ブイヤベース風味

 ディナー・プリ・フィックスメニューの主菜の選択肢としてお選びいただけます。ランチは北海道産のマダラです。一晩塩で身を締め塩抜きして焼き上げることで、ぷりっとした食感と旬のタラ本来の美味しさをお楽しみいただけます。

 

≪寅年だからこそ、肉食なり!≫

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 どうですか!この見事な食べっぷり。上野動物園にお住いのスマトラトラです。美しい毛並みに魅かれるのですが、お肉を嗜んでいる姿を間近で見ると、筋肉隆々とした体つきに恐怖すら覚えてしまいます。確かに大きな猫だといえなくもないですが、獲物を押さえる前足の先から肩までのなんとたくましいことか…肉を食らい、骨のまわりの肉を舐め削ぐ。最後は、ガリガリ、ボリボリと骨を喰らう。本能が食材を無駄にしてはいけないと訴えているのかもしれない。

 Benoitでは、さすがに骨を食べることはありません。フランスから届いた鴨胸肉は、皮目に隠し包丁をいれることで、余計な脂を落としながらゆっくりと焼き上げます。焼きすぎも焼かなすぎも硬くなる身質だけに、このロゼ色の焼色こそが鴨胸肉を美味しくお召し上がりいただくための秘訣です。

 日本では「鴨が葱を背負って来る」と言いますが、フランス料理では「鴨がオレンジを背負ってくる」と、言いませんが抜群の相性をみせます。しかし、海外産では防腐剤が果皮に塗られているため、これを取り除かなければ果皮は使用できません。そこで、多種多様の柑橘を誇る日本だからこそ、安心安全な路地ものを選びたいもの。白羽の矢が立ったのが熊本県不知火の「のむちゃん農園」でした。彼らが丹精込めて育て上げたスウィートスプリングが届いています。

 野菜「アンディーブ」は、陽射しに当てず、東京のウドのように軟白化させるように育てた葉野菜で、シャリッという食感と軟白化特有のほろ苦さが特徴です。スウィートスプリングの果肉の優しい甘さに果皮の苦みを生かしたマルムラードとコンフィ、さらに鴨胸肉・・・一堂に会する時、そこに口福な一皿が姿を見せます。ディナー・プリ・フィックスメニューの主菜の選択肢としてお選びいただけます。

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CANARD à l'orange, endives fondants

鴨胸肉のロースト 熊本県産柑橘とアンディーブ

 

≪今期のBenoitモンブランは、和栗とミカン!?

 毎年のように秋から冬にかけてBenoitのメニューに登場する人気デザートが「Mont Blanc à notre façon

モンブラン ブノワ風」です。

 Benoitでは、料理もデザートも、我々の一存で決めることができません。試作をし、レシピを起こし、フランス本部のエグゼクティブシェフチームに送り調整を図ります。栗の時期になると、モンブランがデザート候補の意の一番に名が挙がるのですが、フランスへのレシピ提案を怠ると、栗とカシスのモンブランに確定してしまいます。

 フランスでは、栗とカシスが最高の相性をみせると言われています。しかし、これを鵜呑みにし和栗と組み合わせてしまうと、カシスが強い風味のために栗感が姿を消した見るも無残なデザートになってしまうのです。これを阻止するために、Benoitでは柑橘との組み合わせを、毎年のようにフランスへ提案しています。そのため、字面は同じでも、中身が毎年のように変わるのです。一昨年が「レモン」で、昨年は「ユズ」。今年は…「ミカン」です。

 この意外とも思える組み合わせですが、フランスにミカンに似た柑橘「クレモンティーヌ」というものがあり、これと栗の組み合わせのモンブランが存在していました。これを和栗とミカンで組み立てようというのが、今期のBenoitモンブランです。しかし、難題が待ち構えていたのです。

 9月中旬の和栗の収穫を待ち、いざ10月から新モンブラン!と計画を立てた矢先に、ハウス栽培のミカンでは、果皮が厚く苦すぎるので露地栽培のミカンを使わなければならない、とシェフ・パティシエールの田中から告げられたのです。10月と言えば、極早生ミカンのハウス栽培が出始める時期です。露地もの?これは難しいと探しあぐねている自分がおりました。

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 今回は運命を感じました。熊本県不知火で果樹園を営んでいる野村さんと出会えたのです。野村さんのご紹介は次回に!この出会いによって、Benoitは露地栽培のミカン「汐風みかん」を得ることができたのです。

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 陽射しをサンサンと浴びて育ったミカンは、果皮果肉をそのまま使用し、マルムラードに仕上げます。オレンジではないミカンだからこその優しい甘さにみずみずしさ。露地栽培だからこその果皮の薄さがあり、これがほどよいほろ苦さを生み出します。器上の焼き上げたメレンゲの中に、栗のコンフィと栗ペーストを盛りつけ、このミカンのマルムラードをたっぷりと絞り込みます。

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 このマルムラードを覆い隠すかのように、軽やかな生クリームを。その上から、かぶせるように栗のペーストを絞ります。和栗と洋栗のブレンド比率は毎年のように変わるのはもちろん、Benoitに届く和栗の品質によっても微調整がなされるという。今期は、おおよそ和栗:洋栗=7:3です。

 まったりと甘い栗と、ミカンの優しい甘みと酸味のマリアージュ。テーブルのお持ちした時、爽やかなミカンの香りの演出も忘れてはいけません。和栗とミカンのモンブラン…「百聞は一食に如(し)かず」ですよ、皆様!まもなく終わりを迎えてしまいます。この機会をお見逃し無きように!

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Mont Blanc à notre façon

モンブラン ブノワ風

 ランチ・ディナーのプリ・フィックスメニュー、デザートの選択肢として+1,000円でお選びいただけます。

 

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 最後まで読んでいいただき、誠にありがとうございます。

 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

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2022年1月 Benoit特選食材「薫農園さんのブロッコリー」のご紹介です。

 今回は自然の機微に依り従いながら、丹精込めて野菜を育て上げている一人の女性、香川県香南(こうなん)町「薫る農園」の園主、河田薫さんのご紹介です。

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 「うふふ」と、園芸を楽しむとはわけが違い、農作業という力仕事をこなし、自らが園主としいて切り盛りする経営者です。天候に一喜一憂しながら、栽培する野菜の選択と栽培管理、スタッフ皆への気遣いとまとめ上げる統率力。美味しく安全な野菜を育てあげるべく、飽くなき探求心は、県外にまで学びに行き教えを請うという行動力を生み出しています。

 当然のことながら、彼女の育てあげた農産物は美味しく、周知されるようになります。諸先輩方からは、「若いのに大したもんだ」と一目置かれるようになり、「農業女子」としての名声を得るのです。農業は思いのほか重労働であり、猛暑極寒や暴風雨に関係なく、作物と向き合わなければなりません。農を生業とするということはそれ相応の覚悟と体力を必要とします。「農業女子」とは、陣頭指揮を執って自ら農産物に向き合う彼女の姿への賞賛の表れなのです。

 

 香川県の県庁所在地である高松市、この南部に位置しているのが香南町です。2006年1月10日に高松市編入合併された、比較的新しい町。この町の南には、香南台地を切り拓いた「高松空港」があり、まさに香川県の「空の玄関口」。この空港の滑走路の南には「さぬきこどもの国」という大型児童館があり、公園や自転車コースを始め、プラネタリウムや大型遊具設備も備え、休日はもちろん平日も子どもの親子連れで賑わっているといいます。

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 高松空港のある香南台地は、標高185mもの高さがあり、この地より北には讃岐平野が広がります。かつては、秋にもなると、稲穂が頭(こうべ)を垂れた、金色の地が一望できたのではないでしょうか。今ではかつてほどではないにしても、香南町は、讃岐平野の一端を担うだけに、農地面積が町全体の5割近くを占めています。お米や野菜はもちろん、丘陵地を利用しての果樹栽培や畜産も盛んです。

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 香南町という地域だけで、これほど多種多様な一次産業があるということは、生産供給機能が十分にあるばかりではなく、自然環境の保全機能をも兼ね揃えているということになります。高松市・香南町合併協議会の資料によると、「“田園環境と空港を生かした快適生活、新産業創造交流ゾーン”として位置づけることとします。」と書き記されています。

 

 限られた圃場(ほじょう)で、同目同科の作物を栽培することを「連作」といいます。園芸をされているかたは、大いに経験していることかと思いますが、連作は病気や害虫の発生を招き、収穫がなくなることもあります。水田の場合は、乾田とした後に寒い冬が訪れることで田が休まり、この連作障害を防ぎます。野菜の場合は、稲よりも栽培期間が少ないため、栽培計画をしっかりたてなければ、この障害を引き起こすことになります。

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 農薬がすべて悪いとは考えていません。農を生業とする以上は、収穫を得なければならず、必要不可欠のものであるはずです。しかし、農薬が良いとは思いません。必要以上に摂取することで、体に支障をきたすことになります。そして、農薬の過剰使用は、圃場を枯らします。連作障害を農薬で解決しようと試みることは、負の連鎖を導くことになるのです。

彼の地で農を営む河田さん、もちろん生産供給と自然環境保全とを両立させる「循環型農業」に取り組んでいます。循環型農業とは、環境への負荷に配慮した農業のこと。土作りから始まり、土作りで終わる。作物の根付く土の徹底的な管理こそが、農薬をほとんど使用しない安心安全な作物を育て上げるのです。

 

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 連作を避けるために、他目他科の作付けの計画を立てる中で、収益の出ない「ソルゴー」を組み込んでいます。ソルゴー(ソルガム)は、イネ科の一年草で、モロコシの一変種といいます。これを育て、刈り込み、土に混ぜることで緑肥とする。さらに、アブラムシやアザミウマを捕食するテントウムシやヒメハナカメムシの宿り場にもなるのです。最近は、「ひまわり」もこの仲間に加わったといいます。緑肥効果ばかりではなく、畑一面に咲き誇るひまわりの美しい景観は、夏の暑さに辟易しているすさんだ心を癒してくれるかのよう。昨年は近隣3軒の農業者でしたが、今年は4軒で取り組むといいます。

 緑肥が作物の健康のためならば、美味しい実りを得るための土作りも必要です。そこで欠かすことができないのが、「堆肥」です。健全な堆肥を得るために協力してくれているのが、同じ香南町にある赤松牧場です。その堆肥のいただくかわりに、河田さんは、所有する圃場(ほじょう)の一部で牛の飼料となる「稲WSC(稲ホールクロップサイレージ)を栽培し、赤松牧場へお渡ししているといいます。稲WSCとは、飼料に適した稲を穂と茎葉まるごと刈り取ってロール状に成型し、フィルムでラッピングしたもの。これを赤松牧場さんが、乳酸発酵を促します。栄養価を上げると同時に、牛にとって消化が良く、食が進むのだというのです。まあ美味しいかどうかは、牛に聞いてみるしかありません。

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 河田さんからすると「循環型農業」ですが、赤松牧場さんからすると「循環型酪農」となるのです。この耕畜連携は、机上ではいとも簡単なのですが、別の業態だからこそ大いに面倒なことのはず。しかし、お互いが安心安全で美味しい農産物やミルクを皆様に届けたいとする思いが、この連携を可能としているのです。さらに、香南町という小さな地域に農業と酪農が相まっているからこそ可能なのかもしれません。2030年までに世界が目指す国際目標、SDGs(持続可能な開発目標)を、ひたに実践しているということなのです。

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 Benoitに届いた見事なまでのブロッコリーは、緑美しく、ずっしりと重い。素晴らしい品質だとシェフは言う。ちょっとばかり調べてみると、良いブロッコリーの見分け方には、「花蕾(からい/頭のこんもりしている花のつぼみ)が密で濃い緑色である」「外葉(茎から伸びている小さな若葉)がしおれていない」「茎が変色しておらず、≪す≫が入っていない」ものが良いといいます。段ボールに入っていた多くのブロッコリー、どれ一つとして当てはまらないものはありませんでした。

 ブロッコリーの実力といえば、毎日でも食卓に並べたいほど。カロテンとビタミンCが豊富であるばかりか、体内の解毒酵素や抗酸化酵素の生成を促進し、体の抗酸化力や解毒力を高める「スルフォラファン」を含んでいます。だからでしょうか、収穫したてのブロッコリーはあまりにも勢いが強いため、扱いが難しいといいます。確か、香川県の農協から出荷する際には、クラッシュアイスをたっぷりと詰め込んで出荷している。この出荷方法を考案したのは香川県で、他県が模倣するようになるのです。

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 河田さんが危惧していた点はここにありました。あまりにも真摯に目の前の栽培中の野菜に向き合うがために、Benoitに送るために氷漬けにするという手間をかけることができないほどに多忙だったのです。どうする?

 昨年にBenoitは空白の春を迎えたことは前述いたしました。大々的に告知はしなかったものの、河田さんのグリーンアスパラガスは随時購入させていただいておりました。アスパラガスの時期は、ブロッコリーとは比較にならないほど多忙を極める期間だったのです。前年の夏から根に蓄えていた栄養を糧に、ぐんぐん芽を出す「さぬきのめざめ」は、河田さんに休息を与えません。そこで、彼女が提案してしてくれたのが、「信用のおける」八百屋さんだったのです。

 高松市を拠点に、移動販売も手掛けるsanukisの鹿庭大智さん。行動範囲は四国4県に及び、自らが美味しいと納得のいく生産者さんのものしか扱っていないという、四国野菜のスペシャリストだったのです。ご紹介いただいた当初は分からなかったのですが、すでに2年近くお付き合いさせていただく中で、なぜ河田さんがBenoitに鹿庭さんを紹介したのか、今では大いに納得するばかりです。

 

 河田さんは、Benoitにブロッコリーを送るにあたり、鹿庭さんと一考してくれました。Benoitへは、収穫後すぐに鹿庭さんが受け取りに赴き、彼の保有する冷蔵庫でゆっくりと休ませ、翌日に発送してくれたのです。もちろん、寒波の折には、鮮度を維持するためにすぐに発送でした。

 この行動は、野菜に素人である自分はもちろんですが、野菜の美味しさにこだわるシェフにとっても知らないところ。どうでもよいと思うのであれば、そのまま送ればいいのです。しかし、それを1日鮮度が落ちるということを鑑みても、敢えてすぐに送らないところに、河田さんと鹿庭さんの心意気がある。Benoitに「美味しいブロッコリーを届けたい。」と。この思いが込められたブロッコリーが、美味しくないわけがありません。言い換えると、この二人なくして、美味しいブロッコリーはBenoitに届いておりません。

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 鹿庭さんは収穫された野菜からその栽培者の力量を計り、彼が美味しいと思うもののみを扱っています。「販売するために野菜を取りに行くんのではない。美味しい野菜がそこにあるから取りに行く。」自らが現地に集荷に赴き、栽培者あの方と顔を合わせることの重要性を説いています。以前、彼と果実の話をしている時に、こう教えてもらいました。「香川の方もどんな気候でも味のブレが少ないように努力されています。そして、糖度より味の方に力を入れております。」と。

 栽培者の皆様は、自然に依り従いながら、最高のものを育て上げるようにと、日々最善を尽くしています。昨今は、ただ「甘い」ということを追究する果実が多いものです。しかし、口にした時の美味しさは、甘さはもちろん、酸味と瑞々(みずみず)しさとのバランスがとれていないと食べ飽きてしまうものです。このバランスは、品種の特性を識(し)り、丁寧に育て収穫時期を見誤らない。その土地土地によって風土は異なるために、培ってきた経験あればこそ可能なことです。

 「気候の変動でも味のブレが少ない」、栽培者はいつでも美味しいものを我々に届けようとの想いが伝わります。しかし、この言葉の裏には、「我々は味のブレない作物」を希求していることになります。確かに、いつでも美味しいものをと考える自分がいます。よくよく考えると、画一的な産物は、工場でしかできません。

 ワインにヴィンテージという考えがあり、その年は良かった悪かっただのと語ります。これは、ワインは農産物であるブドウから醸されるため、そのブドウの良し悪しがワインの味わいに反映するからです。では、なぜ他の農産物に、この考えが及ばないのでしょうか。

 季節によって産地によって、その年の天候によって違いがあって当然のこと。消費者である我々こそ、スーパーや八百屋さんで所狭しと並ぶ野菜が、自然に依り従いながら育てられた産物であることを理解しなければなりません。この理解は、栽培を担う方々が、無理に体裁を整えるために農薬を使うことを避けることにもなるでしょう。そして、それが自らの口から体に入った時に、我々に大いなる健康と幸福をもたらしてくれることになるはずです。

 

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 最後まで読んでいただき、誠にありがとうございます。

 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご多幸とご健康を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

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2022年1月 Benoit≪新春特別プラン≫と≪特選ワイン≫のご案内です。

寒中お見舞い申し上げます。

 

 旧年中は並々ならぬご愛顧を賜り、誠にありがとうございます。新年を迎え、皆様より賜りましたご温情は徒(あだ)や疎(おろそ)かにせず、倦(う)まず弛(たゆ)まず研鑽の日々に努めます。「観梅の心、観桜の目」を忘れることなく、少しでも皆様のご期待にお応えできるよう、万全の準備をもってお迎えいたします。何かご要望・質問などございましたら、何気兼ねなくご連絡ください。皆様が、そして皆様のご家族ご友人の方々が、幸多き年となりますよう、青山の地よりお祈り申し上げます。

 

 降り注ぐ太陽の陽射しが万物を育て上げ、四季折々の風はその土地土地に味わいをもたせる。その風のもたらした美味しさこそ「風味」であり、我々はここに「口福な食時」を見出します。そして、旬を迎える食材は、人が必要としている栄養に満ちています。そして、人の体は食べたものでできています。「美しい(令)」季節に冬食材が「和」する逸品に出会い、食することで無事息災に日々を過ごしていただきたい。この想いを込め、Benoitのご案内をお送りさせていただきます。

 

2022年の干支「壬寅(みずのえとら)」のお話です。

 漢字とは、一文字が実質的な意味を持つ表意文字です。古代中国の賢人は、毎年の世相を分析し、時代時代を表現する漢字一文字をあて、後世に伝えようとしました。この漢字の組み合わせは「干支」と名付けました。今年は「壬寅(みずのえとら)」です。賢人は、漢字に何を託し、我々に伝えようとしたのでしょうか?

 語源辞典片手に、古人の想いを読み解こうと…毎年恒例となっている干支の話も、12年目となりました。お時間のある時にブログをご訪問いただけると幸いです。※自分は占い師ではありません。

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新春特別プランのご案内です。

 

 草木の花々は移りゆく季節の機微を捉え、順を追って咲き誇るもいずれは散りゆきます。食材も同じように「旬」という期間は限られたものであり、「待つ」という優しさはありません。そこで、全ての旬食材は無理でも、Benoitに少しだけ顔を向けてくれた食材で、「口福な食時」のひとときをお過ごしいただきたく、「新春特別プラン」と銘打って、皆様にご紹介させていただきます。

 

新春特別プラン

期間:土日を含めた2022131()まで

ランチ: 前菜x2+メインディッシュ+デザート

6,000円→5,000円(税込/サービス料別)

ディナー: 前菜x2+メインディッシュ+デザート

8,600円→6,800円(税込/サービス料別)

 

 ご予約はもちろん、何かご要望・質問などございましたら、何気兼ねなく自分へメール(kitahira@benoit.co.jp)をお送りください。お急ぎの場合には、Benoitメール(benoit-tokyo@benoit.co.jp)より、もちろん電話(03-6419-4181)でもご予約は快く承ります。

 

20221月は、この特選シャンパーニュで口福なひとときを!≫

 「高貴なシャンパーニュを造るには時間と自然環境 と忍耐力が必要。その全てが揃うことは非常に稀。私達は全てを持っている。」と言い切るのは、家族経営を貫き通している「A.R.LENOBLE」というシャンパーニュ・メゾンです。現当主は3代目の「アンヌ」「アントワンヌ」兄弟。彼らの求めるシャンパーニュの個性は、「豊かさ」と「上品さ」なり。

Champagne A.R.LENOBLE intense Mag17  6,800(税込・サービス料別)

詳細は以下よりブログを参照ください。

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Benoitの秘蔵ワイン「Dom.SAINT-PRÉFERT」のご案内です。≫

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「将来的に伝説になる」

 こう称賛されているワイナリーが南ローヌに居を構える「Domaine SAINT-PRÉFER(ドメーヌ サン・プレフェール)」です。将来的に…そう、まだここの歴史は深くない。このワイナリーは、創業者が今なお現役。彼女の名は、Isabel FERRANDO(イザベル・フェランド)さん。

 実は、イザベルさんが初来日をした際に、ワインディナーを行ったのがBenoit東京でした。語られた一言一言に重みがあり、彼女の人柄やワインへの想いに大いに感銘を受けたものです。これは自分だけではありません。そのワインディナーを導き実現させたBenoit東京のシェフソムリエ永田にあっては一入(ひとしお)のこと。ひっそりと惚れ込んだワインをセラーの奥底に隠し持っていたのです。

 今回は、その秘蔵ワインを皆様にご案内させていただきます。ブルゴーニュボルドーだけではない、ローヌ地方の最高峰のワインをお楽しみください。

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≪赤ワイン≫

2016  Châteauneuf du Pape Collection Charles Giraud     19,800(税込・サービス料別)

≪希少な白ワイン≫

20142015 Châteauneuf du Pape Blanc Vieilles Clairettes     55,000(税込・サービス料別) 1.5ℓのマグナムボトル

2018 Châteauneuf du Pape Blanc     12,000(税込・サービス料別)

 

 フランス料理文化の中では、料理とワインとの相性が良いことをマリアージュと表現し、重要視しています。この密接な関係性は、活力の源である料理が「陽」であれば、引き立てるワインは「陰」であるのかもしれません。そこで、月食の話を交えながら、世界中のワインラバーにとって、垂涎(すいぜん)の的ともいうべきワインです。永田のコメントとともに、ブログにてご紹介させていただきます。

kitahira.hatenablog.com

 

Benoitで共に働いてくれる仲間を探しています。

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 Benoitは、ウイルス対策を継続しつつですが、賑やかなビストロらしい活気を取り戻すべく、スタッフの増員をすることにいたしました。皆様のお知り合いの中で、飲食の仕事にご興味のある方がいらっしゃったら、ご紹介いただけないでしょうか。ごの場でお願いすることではないことは重々承知しております。ご理解いただきますこと、なにとぞよろしくお願いいたします。

 

北平のBenoit不在の日

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 私事で恐縮なのですが、自分がBenoitを不在にしなくてはならない1月の日程を書き記させていただきます。滞りがちだったご案内を充実させるべく、執筆にも勤しませていただきます。ご不便をおかけいたしますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。

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 上記日程以外は、Benoitを優雅に駆け回る所存です。自分への返信でのご予約はもちろん、BenoitのHPや、他ネットでのご予約の際に、コメントの箇所に「北平」と記載いただけましたら、自慢の料理の数々を語りに伺わせていただきます。自分が不在の日でも、お楽しみいただけるよう万全の準備をさせていただきます。何かご要望・質問などございましたら、何気兼ねなくご連絡ください。

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 最後まで読んでいいただき、誠にありがとうございます。

 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

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2022年1月Benoit 特選シャンパーニュ≪A.R.LENOBLE≫で口福なひとときを!

 長い歴史の中で、シャンパーニュ・メゾンは買収と合併を繰り返してきました。そのため、今では多くのメゾンに出資者でもあるオーナー企業が名を連ねます。このような状況下にあり、ただひたすらに家族経営を続け、一切出資を受け付けず、自分達のスタイルを貫いている珍しいメゾンがあります。

A.R.LENOBLE (A.R.ルノーブル)

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 「第一次世界大戦の直後、1920 年から 1度も他資本が入った事がない。だから自分達独自の考え方で全てを決められる」と彼らはいう。現当主は3代目の「アンヌ」「アントワンヌ」兄弟。今もなお、家族経営ならではの独自の考えを貫いています。

 シャンパーニュの個性は「豊かさ」と「上品さ」のバランスだとアントワンヌは考える。「高貴なシャンパーニュを造るには時間と自然環境と忍耐力が必要。その全てが揃うことは非常に稀。 私達は全てを持っている。」と言い切る。彼のシャンパーニュ造りに対し、「シャンパー ニュである前にワイン」であることを重視する。この言葉を裏付けるように、シャンパーニュの規定では最低熟成期間は15ヶ月。しかし、「A.R.ルノーブル」は最低36ヶ月も熟成させる。そして、泡が溶け込み開き始めたのを見極め、満を持して出荷されるのです。

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 ラベルに書いてある「Mag17」の「Mag」とはマグナムボトル(1.5L)でリザーヴワインを保存するということを意味します。「A.R.ルノーブル」では、木樽+ステンレスタンク+マグナムボトルでリザーヴワインを管理。マグナムボトルでリザーヴワインを保存することにより、フレッシュ感、若々しさがあり、それでいて複雑味を犠牲にしない。ただし、一本ずつボトルを開栓する作業を繰り返すとても大変な作業であるため、現在はボランジェ社とルノーブルの2社のみが実践する希少な製法。

 

Champagne A.R.LENOBLE intense Mag17  6,800(税込・サービス料別)

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 リンゴや梨、黄色い果実の香りなどが感じられ、凛としたミネラルがあるシャンパーニュ。なによりも、このボトルには彼らの想いが詰まっています。持ちうる五感をフルに使い、どれほどのものかをご堪能いただきたいと思います。2022年は、Benoitの料理と、シャンパーニュ「A.R.ルノーブル」とのマリアージュをお楽しみください。

 期間は、2022131()まで。本数に限りがあるため、予約はお早めにご検討ください。ご予約はもちろん、何かご要望・質問などございましたら、何気兼ねなくご連絡ください。に自分へメール(kitahira@benoit.co.jp)をお送りください。もちろん電話(03-6419-4181)でもご予約は快く承ります。

※すでに特別価格でのご案内のため、Benoitのワイン割引はご利用いただけません。他のネットプランや割引の併用もできません。しかし、別でご案内しました「新春特別プラン」はご利用いただけます。プランの詳細は以下より別ブログを参照ください。

kitahira.hatenablog.com

 

最後まで読んでいいただき、誠にありがとうございます。

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一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

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2022年干支「壬寅(みずのえとら)」のお話です。

2022年の干支(えと)は、「壬寅(みずのえとら)」です。

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 むかしむかしのこと、お釈迦様が動物たちに「新年の挨拶に赴いた順番を十二支にしよう」と語ったのだといいます。そこで、動物たちは我さきにと、お釈迦様の下へと馳せ参じることになる。己をよく知る牛は足が遅いことを理解しているため、前日からすでに出発します。一番先に門口(かどぐち)に到着するも、その背に乗っていた賢いネズミがひょいと先に門をくぐる。順を追ってぞくぞくと主役が到着する中で、犬猿の仲といわれる両者の仲裁に入ったがためにニワトリは10番目。猫はなぜ登場しないのか?猫はお釈迦様への新年の挨拶の日を忘れ、ネズミに聞いたところ2日だと。翌日に事実を知った猫は怒り、これ以降ネズミを追いかけ続けるのだとか。

 干支の中にある「寅」という漢字に、トラという意味もあるため、其処彼処(そこかしこ)で目にするトラの姿。猛々(たけだけ)しい姿もあれば、愛嬌のある姿もある、さらにはトラ柄の商品までも。しかし、「とら」には「虎」という立派な象形文字が存在していることを考えると…前述の口伝は、干支を生み出した古代中国の賢人が周知してもらうため、身近な動物にあてはめた際に寅に虎の意をあてたのではないかと思う。そう言えば、辰(龍)という架空の生物も含まれていますが、当時は深くその存在が信じられていたことの証でしょう。

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 虎は山中の獣の王であり、中国では野生の虎に恐れおののくこともしばしば。賢人は干支に何を託し、我々に何を伝えようとしているのでしょうか?勇ましい年なのか?恐怖なのか?故事では「虎の威を借る狐」ですが、干支の世界では「虎の威を借る寅年」ということなのでしょうか。はたまた、単に「虎の意を借る寅年」なのでしょうか。

 

 世界の言語は、「絵画文字」、「表音文字」、「表意文字」などに大別されます。絵画文字は、古代文明に書き記された絵文字を代表とし、表音文字はアルファベット(音素文字)や日本の仮名(音節文字)などがあります。そして、表意文字は、一文字が単語を成し、実質的な意味を持つもの。それが「漢字」です。

 古代中国の賢人は、毎年の世相を分析し、時代時代を表現する漢字一文字をあて、後世に伝えようとしたのではないかと思うのです。そこで、十干(じっかん)と十二支の組み合わせた干支というものこしらえた。甲(こう)・乙(おつ)・丙(へい)…と続く「十干(じっかん)」と、馴染みの子(ね)・丑(うし)・寅(とら)…の十二支。

 この10と12という数字が、我々の生活の中でどれほど溶け込んでいることか。算数を学ぶ上で、数字の区切りとなるのが10。そして、半日は12時間、1年は12ヶ月。10と12の最小公倍数は「60」。還暦のお祝いとは、この漢字の通り「暦が還(かえ)る」人生60年目の節目を迎えたことを祝うもの。

 表意文字だからこそ、漢字は一文字一文字に意味があります。さらに、干支にあてがわれた漢字は、それぞれに樹の成長を模したものだといいます。賢人は、今年の世相をどのように分析し見定め、干支という形で我々に遺したのでしょうか。漢字を読み解くことで、我々がいかに無事息災に、はたまた多くの幸を見過ごさないために、この古(いにしえ)の賢人の想いを知ることができると思うのです。素人ながら、漢字語源辞典「漢辞海」を片手に書き綴ってみようかと思います。

 

 干支が十干と十二支の組み合わせであることは前述いたしました。2つの漢字一文字ごとに意味があり、2つの立ち位置の違う世相を組み合わせているのだと考えます。最初の漢字の世相は、人が抗しがたい「時世」の勢いであり、賢人は10年というサイクルを見出し、「十干」をあてがう。人生とは栄枯盛衰を繰り返すもの、これが「人世」である。賢人は、その人世を12年であるとし、十二支をあてる。干支とは、古代中国の賢人が「時世」と「人世」を読み解くことで導いた、その年ごとの世相のこととみる。

 時世を意味する十干を、樹の成長になぞらえて漢字をあてています。最初から6番目までは樹そのものの成長期間、残る4つは次の時世への引継ぎを準備する期間であるという。かたい殻に覆われた状態の「甲 (きのえ)」、芽が曲りながらも力強く伸びるさまが2番目の「乙(きのと)」。芽が地上に出て、葉が張り出て広がった姿が「丙(ひのえ)」。そして「丁(ひのと)」は、重力に逆らうかの如く、ぐんぐんと勢いよく天に向かい成長し、「戊(つちのえ)」で大いに茂る。成長最後は、勢いよくぼうぼうと生い茂った樹が、理路整然と体裁を整え、効率よく光合成をおこなうことで養分を蓄えてゆく「己(つちのと)」です。

 2020年の7番目「庚(かのえ)」から最後の「癸(みずのと)」の期間は、花を咲かせ種を生み出すにいたります。秋にたわわに実がついた様子を象るのだといいます。「庚」は「己」を継承し、人のへそに象るとも。「庚庚(こうこう)」とは、樹木がしっかりと実をつけたさまを意味するのだといいます。

 2021年は8番目の「辛(かのと)」。「辛い」としか思い浮かばないかもしれませんが、意外な意味が含まれてることを語源辞典は教えてくれます。「説文解字(せつもんかいじ)」によると、「会意文字」で秋の万物が成長して熟すとある。さらに、「釈名(しゃくみょう)」によると、「辛」は「新」であるという。「はじめは新たなものがみな収まってしまう」、そう書き記されている。

 今年2022年は9番目の「壬(みずのえ)」で、いよいよ佳境に入る。「説文解字」によると、「指事文字」であるという。巧みで美しいという象形文字「エ」という漢字の中央に「ー」が加わる。「巫」という漢字は、両袖を広げて美しく舞っている姿を象(かたど)るのという。すると、「壬」は両手を広げるというよりも、指事文字だけに両手で中央を指し示しているように見えなくもない。

 北の方角に位置している「壬」。北の陰の気が極まると陽の気が生ずる。易経(えききょう)では、陰の気そのものである「坤卦(こんか)」極まり、陰陽の竜が外で戦うと伝えている。戦うとはいささか物騒ではありますが、これは交接を意味しており、お腹に子を宿すこと。妊娠の「妊」の漢字に「壬」が見て取れる。「壬」の両手は、新たな時世を宿したお腹を指し示していることに、ついつい納得してしまいます。

 

 人世における栄枯盛衰に、賢人は12年を見い出し、樹の成長にならった漢字をあてがいました。2020年は人世一年目の「子(ね)」。子供のことでもあり、果実の実や植物の種をも意味します。「釈名」では、「子」は「孳(し・じ)」であると。陽気が萌えて下に孳生(じせい)する。「孳」とは、「増える/産み育てる」という意味があり、「子」は「蕃孳(はんし)=おおいに茂ったさま」の状態だといいます。

 昨年2021年の「丑(うし)」は「象形文字」であり、手をぎゅっと紐(むす)ぶす姿を象るといいます。さらに、「釈名(しゃくみょう)」によると、「丑」は「紐」である。寒気がみずから屈紐(くっちゅう=ちぢこまること)のである。「易経」では「艮卦(ごんか)」に相当するという。「艮」は「限」であり、この時節に物が生まれるということを聞かない。生誕を限止(=制限)するという。

 2022年は十二支の3番目「寅」は、「説文解字」によると「会意文字」という。陰暦の正月に陽気が動き始めて地下の黄泉の国から地上に出ようとするも、陰気が強く叶わない。ウ冠(=屋根)があって突き抜けられず、地下に退けられるさまを象る。さらに「釈名」によると、「寅」は「演」であるといい、「物を演(ひ)いて誕生させる」のだという。多少の違いこそあれ、何かが誕生したことに間違いはないようです。

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 「演」は、「劇や演技を行う」という、今でも馴染みの漢字です。しかし、部首に「さんずい」が入っていることから、元々の意味は、水に関わることを意味していたはずで、川の名称だったという説もあります。「長距離を流れる/遠くへ流れる」という原義から、「展開する/広がる」という意も含むことに。「水土通演」は、「すいどつうジうるおフ」と読むことからも、「湿る・潤う」という意味がある。脚本をもとに効果的に上演や撮影の工夫を加えることを「演出」といいますが、もともとは「変わって新たに生まれること」を意味する、そう語源辞典は教えてくれます。

 

 「易経」とは古代中国の賢人が生み出した占い法です。自分が占い師ではないため、詳細は専門家のHPを参照ください。易を構成する基本形を八卦(はっか)と呼び、その八卦を上下で組み合わせたものが「六十四卦(ろくじゅうしか)」であるとう。「壬」ででてきた「坤卦(こんか)」とは、この八卦のひとつ。これを図象化したものが下の画像です。

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 横3列で表現される卦にあり、全てが半ばに切れ間のある陰が並ぶ。「坤卦」の象意は「地」、母であり女性である。「坤元(こんげん)」とは万物を生む大地のことを、「坤徳(こんとく)」とは大地が万物を育てる力のこと。「母なる大地」とは、ここからきているのか?性質は「順(=すなお)」で消極的。体は「腹」を象徴する。六十四卦で、この卦が上下に並ぶ(坤下坤上)は、「坤為地(こんいち)」と呼ばれ、「従順さであらゆる事柄を受け入れることにより、大いに順調にゆくこと」を暗示しているという。

 昨年は「艮卦(ごんか)」でした。「艮」は「山」を象徴し、「限=制限する」であるといいます。天命である自らの道のりを、動かざること山の如し、俯瞰(ふかん)するように好機を見極め、動き止まる。その判断は、昨年に培われてきた良識を基準にせよと教えてくれました。この「艮卦」を図表化したものが下の画像です。下2列の陰の勢いを抑えるかのように、一番上に陽がくる。まるで、万物を山が受け止めているかのような姿です。

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 昨年にこの「艮卦」を考えた時、横棒1本は山であるならば、その下2列の半ばに切れ間のある2本が川に思えてなりませんでた。川は山間(やまあい)を流れ、谷を形作る。言い換えると、山が川の流れを抑え込むこことで、水の路を作っている。上下の2本が横棒であれば、真ん中の切れ間のある1本は上流域の川なのだろう。そう考えると、「艮卦」は山間から扇状地へと抜ける中流域に、そして「坤卦」は平野をゆったりと流れる下流域に思えなくもない。

 水の勢いは、人が抗することが難しいほどに力強い。日本の歴史は治水の歴史ではないかと思えるほど、現代に至っても水害がなくなることはありません。山間から湧き出でた「か細い」水の流れも、落合い落合い川へと姿を変えます。山が侵食されながらも水の勢いを制し、川の路を作り上げていく。平野に行き着いた川は、大いに大地を潤/演(うるお)し、種の芽吹きを促し、成長させてゆく。

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 「ゆく川の 流れは絶えずして しかも もとの水にあらず~」とは、あまりにも有名な「方丈記」の冒頭です。湖沼と違い、水の流れがあるから川である。とうとうと流れる川面(かわも)を見つめた時、変わらないような姿でありながら、今の水は先ほどの水とは違う。鴨長明は、川の流れをもって、目には見えない時世と人世の流れを説いているのではないか。すると、前述した「卦」が、なにやら意味深いものに思えてしまう。同じように新年を迎えるも、昨年とは違う時世・人世の流れに身を置いている。そう、川の流れを山が抑え込んでいた昨年とは違い、今年の「坤卦」は、川が大地を覆うかのように広がり、潤/演(うるお)しているかのように見えなくもない。

 

 2019年は、時世「己(紀)」が教えてくれるように、ひとつの区切りとして人倫の道を外さぬよう、なりふり構わず頑張ったことを省み、紀識(きしき=しるすこと)し紀念(きねん=こころにとどめて忘れないこと)することを促すのだと。忘れ去るのではなく、真摯に受け止め真実の核心となし、次へ引き継いでゆく。

 「庚」は「更」であることから、2020年は「更始(こうし)=古いものを捨て、初めからやり直すこと」の年でした。時世は成長から継承へと移る中で、先行きの見えない世相の一年でした。賢人は我々に人世は「子」であると教えてくれました。「子」は「孳」であり「坎(かん)」でもある。「孳孳(しし)」とは勤勉に努めることを意味します。「坎」の卦が上下に姿を見せる、六十四卦でいう「坎下坎上(かんげかんじょう)=坎為水」は、「重なる険難はあるが、真実をもって行動すればうまくいく。」ということを象っているといいます。

 2021年は「辛丑」。時世の「辛」には、「辛艱(しんかん)=苦しむ・難儀する」や「辛苦」「辛酸」など厳しい単語が多いもの。未曾有のコロナウイルス災禍は今なお猛威を振るっていることもあり、この漢字が心に突き刺さります。全ての希望に楔(くさび)を打ち込んでくる。しかし、「辛」は「新」でもある。何事も新しいことの門出には苦労や厳しさがつきものです。「新地(さらち)」となった時世には、新しいものが何でもいくらでも植えることができる。しかし、どのような種を植えるかの取捨選択は各々にまかせられている。

 そして今年2022年は「壬寅」。時世の「壬」は「妊」であり、人の妊娠の姿を象る。人世の「寅」は「演」であり、物を演(ひ)いて誕生させるという意味も含む。偶然なのか必然なのか、時世も人世も新しいものが誕生していることを暗示している。人智及ばぬものが時世であり、人がどこうできるようなものではありません。2020年の「辛」を受け注いだ「壬」、新しい時世が誕生してはいるものの、まだまだ赤子のような姿で、どのような性格を持ち合わせているのかは定かではありません。

 そして、時世と歩調を合わせるかのように、それぞれの人世も育まれているかのようです。ついに地に植えた「種」が動き出す。混沌とした世界の中で、もがき苦しみ行動してきたことが実を結び、種となす。陰の気が極まった姿が「壬」であるならば、八卦では陰気そのものである「坤卦」ということ。「坤卦」の象意が「地」であるのであれば、時世は我々に肥沃な地を用意してくれたことになる。そして、川がその大地を演(うるお)すことで、我々個々が育んだ種の芽が演出する(=新たに生まれる)。

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 古代中国で生まれた五行説では、時世の「壬」は「水」であり、人世の「寅」は「木」である。水は木を生み出すという…五行相生(ごぎょうそうじょう)という相性のいい関係。言葉遊びのように思える干支の話も、ここまでくると何やら意味深いものと思えてしまうもの。しかし、ただただ時世に流されただけの人世であれば芽を出さないのかもしれません。芽が出だとしても、どのような芽で、どのように成長し実を成すのかは、千差万別であり、その人の努力の賜物ということなのでしょうか。

 昨年の「艮卦」は、止まるべき時に止まり、行うべき時には行う。動くも止まるも、時(天命)を見失わなければ、その道の見通しは明るい、と伝えていた。では今年の「坤卦」は?従順さであらゆる事柄を受け入れることにより、大いに順調にゆく、そう教えてくれる。「寅」の漢字が、陰が極まり陽気が誕生するも、ウ冠(=屋根)の陰気が強く突き抜けることができないさまであれば、地が潤い、各々の種が芽吹き始めるも、時世に寄り添うように身をゆだねながら、機を待てといっているのかもしれません。

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 「ゆく川の 流れは絶えずして しかも もとの水にあらず~」、そう「時(とき)」は止まることなく流れ続けています。「待て」と言われても…すでに賽は投げられた…いや、種が蒔(ま)かれた。水の流れのように、一時に集中するのではなく絶え間なく努力を続けること、そして水でいう「水平」の如き確固たる準則を、いうなれば信念を持って、今年の時世を乗り切りなさいと教えてくれている気がします。新しい時世と人世がその姿を見せるのは、もう少し時が経たなければならないのかもしれません。

 1984年の「甲子(きのえね)」に幕開けした60年の世相のサイクル。「世」の字には30年という意味が込められていると聞きます。60年の中に30年の2つの世相。2014年「甲午(きのえうま)」からはすでに後半の世相が始まっています。世相における栄枯盛衰は世の常であり、これを乗り越えなくてはなりません。その先で、我々は宝の地図(人世のさらなる高み)を必ず見つけることができるはずです。

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 蛇足ながら、「寅」は「演」であると前述しました。そして、この「演」は「延」であると「釈名」は書き遺しています。この字は、「長くする」や「続く」に加え、「蔓延して広がる」という意味が込められています。皆様は、まっさきに「コロナウイルス」を思い浮かべたのではないでしょうか。

 1年ほど前に、医薬品製造に携わっていた方から、このようなことを教えてくれました。「ウイルスも馬鹿じゃないからね、毒性が強いと感染した人が亡くなってしまうことで自滅してしまう。そこで、追々は毒性を弱くして感染力を強くすることになる。」なるほど!昨今のコロナウイルスのオミクロン株が、すでにその兆候をみせているようでなりません。

 100年ほど前にパンデミックを起こしたスペイン風邪も、姿を変えながらインフルエンザウイルスとして、いまだ地球上に存在しているという。ウイルスを根絶することが難しいのであれば、上手く付き合ってゆくしかありません。そこで、「蔓延する」の主語をこう変えてみてはいかがでしょうか?「コロナウイルス」から「コロナウイルス対策」へと。病は気からとはよく言ったもので、心の持ちようひとつで、未来は変わってゆくかもしれません。さて、皆様はどう思われますか?

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 本文中に出てくる用語を少しだけご紹介させていただきます。

 たびたび出てくる「説文解字」と「釈名」という名前。本というよりも辞典と言い表した方が良いかもしれません。しかし、これらが編纂されたのは、古代中国でした。「説文解字」は紀元後100年頃、六書(りくしょ)の区分に基づき、「象形」「指事(指示ではないです)」「会意」「形声」に大別され、さらに偏旁冠脚(へんぼうかんきゃく)によって分類されています。

 「象形文字」は、実物を絵として描き、その形体に沿って曲げた文字。「指事文字」とは、絵としては描きにくい物事や状態を点や線の組み合わせで表した文字をいい、「上」や「下」が分かりやすいと思います。十干の「己」は指事文字です。そして、「会意文字」は、既成の象形文字指事文字を組み合わせたもの。例えば「休」は、「人」と「木」によって構成され、人が木に寄りかかって休むことから。干支の「壬」は指事文字、「寅」は会意文字です。

 「偏旁冠脚」は、漢字を構成するパーツのこと。そのパーツの主要な部分を「部首」と定め、現在日本の漢和辞典は「康熙字典」の214種類を基本にしています。しかし、偏旁冠脚では、漢数字、十干や干支もこのパーツに含まれ、その分類区分は、「一」から始まり「亥」で終わる、総数が540です。数あるパーツの中から、殿(しんがり)を担ったのが「亥」です。十二支の最後もまた「亥」です。この後、さらに時は流れ紀元後200年頃、音義説によった声訓で語源解釈を行い編纂されたものが、「釈名」です。

 万物を陰と陽にわける陰陽説と、自然と人事が「木・火・土・金・水」で成り立つとする五行説が合わさった考え方が、陰陽五行説です。兄(え)は陽で弟(と)は陰。陽と陰は、力の強弱ではなく、力の向く方向性の違いのこと。陽は外から内側へエネルギーを取り込むこと、陰は内側から外側へ発することだといいます。運の良い人とは、陽の人であり、外側から自分自身へ力を取り込んでいる人のこと。「運を呼び込め」とはよく耳にいたします。陰の人とは、運が悪いわけではなく、自分自身のみなぎるエネルギーを外に発している人のこと。一方が良くて、他方が悪いわけではなく、すべては陽と陰の組み合わせです。陰陽の太極図を思い浮かべていただきたいです。2つの魂のようなものが合わさって一つの円になる。一方が大きければ、他方は小さくなり、やはり円を形成するのです。森羅万象全てがこの道理に基づくといいます。

 

 最後まで読んでいいただき、誠にありがとうございます。

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 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

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2022年1月 「北平がBenoitを不在にする日」のご報告です。

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 私事で恐縮なのですが、自分がBenoitを不在にしなくてはならない1月の日程を書き記させていただきます。滞りがちだったご案内を充実させるべく、執筆にも勤しませていただきます。ご不便をおかけいたしますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。

 

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 上記日程以外は、Benoitを優雅に駆け回る所存です。自分への返信でのご予約はもちろん、BenoitのHPや、他ネットでのご予約の際に、コメントの箇所に「北平」と記載いただけましたら、自慢の料理の数々を語りに伺わせていただきます。自分が不在の日でも、お楽しみいただけるよう万全の準備をさせていただきます。何かご要望・質問などございましたら、何気兼ねなくご連絡ください。

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 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

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2021年Benoit 「年末のご挨拶」と「新春特別プランと特選シャンパーニュ」のご案内です。

 今年もまた、新型コロナウイルス災禍に翻弄され続けた一年であり、今なおこの災禍は収束の兆しがみえておりません。何が正しく、何が間違ってるのか手探りの中で、安心安全に過ごすことのみに費やした日々ではなかったでしょうか。皆様の、ご家族や仲間、すれ違う見知らぬ人々を想うからこその行動が、世界の国々とは違う、今の日本の現状を導いてきているのでしょう。皆様のご辛労は並々ならぬものだとお察しいたします。

 コロナ災禍の下、「営業してることへの罪悪感」すら感じることもありました。絶望の淵に立たされていた時、我々を励ましてくれたのが皆様からのお言葉でした。どれほど心に染み入り、励まされたことか。そして、この未曾有の災禍の中で、能天気とも思える自分からお送りしているBenoitのご案内を、拒否せず受け取っていただけること。さらに、時短営業や酒類提供中止などにより、食材や飲材の購入中止や変更を余儀なくされたにもかかわらず、生産者の方々からの温かいお言葉。目頭が熱くなる思いでおります。深く深く御礼申し上げます。

 新年を迎えるにあたり、皆様より賜りましたご温情は徒(あだ)や疎(おろそ)かにいたしません。そして、自分の本年の至らぬ行動を省み、倦(う)まず弛(たゆ)まず努力を続け、少しでも皆様のご期待のお応えできるよう最善を尽くすことをお約束いたします。皆様におかれましては、Benoitへの変わらぬご愛顧のほど、なにとぞよろしくお願いいたします。

 降り注ぐ太陽の陽射しが万物を育て上げ、四季折々の風はその土地土地に味わいをもたせる。その風のもたらした美味しさこそ「風味」であり、我々はここに「口福な食時」を見出します。そして、旬を迎える食材は、人が必要としている栄養に満ちています。そして、人の体は食べたものでできています。「美しい(令)」季節に冬食材が「和」する逸品に出会い、食することで無事息災に日々を過ごしていただきたい。この想いを込め、今後もBenoitのご案内をお送りさせていただきます。

 

Benoit年末年始のご案内です。≫

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 2021年のBenoitは、12月31日(金)まで駆け抜けようと思います。30日までは通常営業ですが、31日は20時ラストオーダーの22時クローズとさせていただきます。ランチの営業は変わりません。

 迎えし2022年は1月1日から4日までお休みをいただき、心機一転5日(水)より、万全の準備をもって皆様をお迎えいたします。何かご要望・疑問な点などございましたら、何気兼ねなく返信ください。

 

新春特別プランのご案内です。

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 草木の花々は移りゆく季節の機微を捉え、順を追って咲き誇るもいずれは散りゆきます。食材も同じように「旬」という期間は限られたものであり、「待つ」という優しさはありません。そこで、全ての旬食材は無理でも、Benoitに少しだけ顔を向けてくれた食材で、「口福な食時」ひとときをお過ごしいただきたく、「新春特別プラン」と銘打って、皆様にご紹介させていただきます。

 

新春特別プラン

期間:土日を含めた2022131()まで

ランチ: 前菜x2+メインディッシュ+デザート

6,000円→5,000円(税込/サービス料別)

ディナー: 前菜x2+メインディッシュ+デザート

8,600円→6,800円(税込/サービス料別)

 

 期間は、メールを受け取っていただいた日より、2022131()まで。ご予約はもちろん、何かご要望・質問などございましたら、何気兼ねなくご連絡ください。に自分へメール(kitahira@benoit.co.jp)をお送りください。お急ぎの場合には、Benoitメール(benoit-tokyo@benoit.co.jp)より、もちろん電話(03-6419-4181)でもご予約は快く承ります。

 

特選シャンパーニュとともに、Benoitで口福なひとときを!

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 長い歴史の中で、シャンパーニュ・メゾンは買収と合併を繰り返してきました。そのため、今では多くのメゾンに出資者でもあるオーナー企業が名を連ねます。このような状況下にあり、ただひたすらに家族経営を続け、一切出資を受け付けず、自分達のスタイルを貫いている珍しいメゾンがあります。

A.R.LENOBLE (A.R.ルノーブル)

 「第一次世界大戦の直後、1920 年から 1度も資本が入った事がない。家族だけだから自分達独自 の考え方で全てを決められる」と、彼らはいう。

 現当主は 3 代目の「アンヌ」「アントワンヌ」兄弟。今もなお、家族経営ならではの独自の考えを貫いています。シャンパーニュの個性は「豊かさ」と「上品さ」のバランスだとアントワンヌは考えています。「高貴なシャンパーニュを造るには時間と自然環境 と忍耐力が必要。その全てが揃うことは非常に稀。 私達は全てを持っている。」と、言い切る。彼のシャンパーニュ造りに対し、「シャンパー ニュである前にワイン」であることを重視する。この言葉を裏付けるように、シャンパーニュの規定では最低熟成期間は 15 ヶ月。しかし、「A.R.ルノーブル」は最低 36 ヶ月も熟成させる。そして、泡が溶け込み開き始めたのを見極め、満を持して出荷される。

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 ラベルに書いてある「Mag17」の「Mag」とはマグナムボトル(1.5L)でリザーヴワインを保存するということを意味します。「A.R.ルノーブル」では、木樽+ステンレスタンク+マグナムボトルでリザーヴワインを管理。マグナムボトルでリザーヴワインを保存することにより、フレッシュ感、若々しさがあり、それでいて複雑味を犠牲にしない。ただし、一本ずつボトルを開栓する作業を繰り返すとても大変な作業であるため、現在はボランジェ社とルノーブルの2社のみが実践する希少な製法です。

 

Champagne A.R.LENOBLE intense Mag17  6,800(税込・サービス料別)

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 リンゴや梨、黄色い果実の香りなどが感じられ、凛としたミネラルがあるシャンパーニュ。なによりも、このボトルには彼らの想いが詰まっています。持ちうる五感をフルに使い、どれほどのものかをご堪能いただきたいと思います。2022年は、Benoitの料理と、シャンパーニュ「A.R.ルノーブル」とのマリアージュをお楽しみください。

 期間は、メールを受け取っていただいた日より、2022131()まで。本数に限りがあるため、予約はお早めにご検討ください。ご予約はもちろん、何かご要望・質問などございましたら、何気兼ねなくご連絡ください。に自分へメール(kitahira@benoit.co.jp)をお送りください。お急ぎの場合には、Benoitメール(benoit-tokyo@benoit.co.jp)より、もちろん電話(03-6419-4181)でもご予約は快く承ります。

※すでに特別価格でのご案内のため、Benoitのワイン割引はご利用いただけません。他のネットプランや割引の併用もできません。しかし、先にご案内しました「新春特別プラン」はご利用いただけます。

 

Benoitで共に働いてくれる仲間を探しています。

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 いまだ終わりを見せないコロナウイルスとの闘い。その災禍にありながらも、我々は日常を取り戻そうと日々模索しています。Benoitは、ウイルス対策を継続しつつですが、賑やかなビストロらしい活気を取り戻しつつあると感じています。そこで、皆様にご満足いただけるビストロとなるように、新しいサービスとキッチンの仲間を探しております。

 皆様のお知り合いの中で、飲食のサービスの仕事にご興味のある方がいらっしゃったら、ご紹介いただけると幸いです。ごの場でお願いすることではないことは重々承知しております。ご理解いただきますこと、なにとぞよろしくお願いいたします。

 

 これからは徐々に陽脚が伸びてくるのですが、古来より「畳の目ほど」と表現するほど微々たるもの。「冬至、冬なか、冬はじめ」というだけあり、本格的な寒さはこれから。木々は余計な体力を使わないよう冬籠りの準備中、まさに「山眠る」光景です。

 古人は、冬に陽射しが降り注ぐ日を、恋しいからでしょう「愛日(あいじつ)」と呼んでいます。春秋左氏伝の「冬の日は愛すべし」からできた言葉のようです。冬は太陽が天高くまで昇らず、陽射しが低い角度で部屋の奥まで差し込むため、寒々しい中に暖かい「陽だまり」ができています。屋外でも、日当たりの良いところでは陽だまりが。

 まだまだ、今年にやり残したことがあるかと思いますが、ここはひとつ節目をつけ、「日向ぼっこ」で太陽の恩恵を十二分に享受いたしませんか。陽だまりでほっこりと温まるひとときは、何か心まで満たされる気になってしまいます。今年一年の自らを省みる時、暗闇よりも「陽だまり」のほうが、間違いなく明るい未来を見出すことができるはずです。さらに、愛日には「時を惜しむ」や「親に孝行する日々」という意味もあるようです。「陽だまり」が導く「家族の絆」が心の拠り所となり、この乱世の波を乗り切る活力となることと信じております。

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 樹々は葉を落とし、草は冬枯れし、閑散とした光景の公園と思うも、其処此処(そこここ)で常緑樹が緑濃い葉を茂らせている。花こそ少ないが、不思議と赤い樹の実が目につく。冬の公園はもの静かなものと思いながら…この時期は、我々が年越し準備に忙しいように、公園の中もなかなかに忙しいご様子。

 2021年の最後を飾る「季節のお話」は、多忙を極める年の瀬は、今も昔も自然界も変わらない…ということを書いてみました。お時間のある時に以下のURLよりブログをご訪問いただけると幸いです。

kitahira.hatenablog.com

 

 最後まで読んでいいただき、誠にありがとうございます。

 今年の辛丑が終わりを迎えようとしています。その「辛」の字の如く優しい年ではありませんでした。しかし、時世は我々に新地(さらち)を用意してくれていた気がいたします。思い思いの種を植えることで、そう遠くない日に、希望の芽が姿をみせることになるでしょう。

 「一陽来復」、必ず明るい未来が我々を待っております。そう遠くない日に、マスク無しで笑いながらお会いできる日が訪れることを願っております。皆様のご健康とご多幸を、一刻も早い「新型コロナウイルス災禍」の収束ではなく終息を、青山の地より祈念いたします。

 

ビストロ「ブノワ(BENOIT)」 北平敬

www.benoit-tokyo.com